生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_風味強化果汁
出願番号:2005204194
年次:2007
IPC分類:A23L 2/52,A23L 2/02,C12G 3/04


特許情報キャッシュ

三浦 裕 JP 2007020433 公開特許公報(A) 20070201 2005204194 20050713 風味強化果汁 アサヒビール株式会社 000000055 正林 真之 100106002 三浦 裕 A23L 2/52 20060101AFI20070105BHJP A23L 2/02 20060101ALI20070105BHJP C12G 3/04 20060101ALN20070105BHJP JPA23L2/26A23L2/02 BC12G3/04 14 OL 9 4B015 4B017 4B015LG02 4B015LH01 4B015LH03 4B015NB01 4B017LC02 4B017LG01 4B017LG02 4B017LL01 4B017LP10 4B017LP18 本発明は、飲料等に果実本来の香りを付与できる風味強化果汁およびその製造方法に関し、特に、チューハイ等の強い香り立ちが求められる飲料に好適に用いることができる風味強化果汁およびその製造方法に関する。 飲料業界では、爽やかな柑橘果実の香りを有する飲料が好まれている。例えば、近年、市場を拡大しているチューハイ飲料においても、レモン、グレープフルーツ等の風味を付与したものは最もよく飲用されており、その他にもオレンジ、ライム等の風味を付与したものがよく飲用されている。これは、酸味の効いたクセの少ない柑橘果実の爽やかな風味が、スッキリとした飲み口を与えているからである。 飲料に柑橘系の香りを付与する場合には、柑橘系の合成香料を使用することが多い。柑橘系の天然香料は、十分な強さの香気を有していないからである。特に、チューハイ等のアルコール炭酸飲料は、清涼飲料と比較して甘味が少ないので、香り立ちが一般的に弱い。このため、強い香り立ちが求められ、合成香料を使用する傾向が顕著である。 合成香料は、柑橘系果汁の香気成分を分析して特徴的な香気成分を明らかにし、それら香気成分を化学的手段で合成して調合することにより得られる。従って、目的とする柑橘系果汁と同様の香りを有しており、近年、香気成分の分析技術や合成技術の進歩により、天然よりも本物らしい強い特徴香を有する合成香料が製造されている。 しかしながら、合成香気成分のみを配合した合成香料を飲料に用いた場合には、人工的な香気になる傾向があるうえ、香料の力価が強くなり過ぎて使い難い。このため、天然香料に、合成香気成分を上乗せして添加することにより得られた合成香料が一般的に用いられている。 また、合成香気成分のみを配合した合成香料に果汁を添加し、風味および新鮮味を備えた合成香料も開発されている。例えば、特許文献1には、柑橘系合成香料に柑橘系果汁を1%〜50%程度添加し、これを高圧処理することによって、搾りたての風味と新鮮味とを備えた高品質の香料が得られる旨が記載されている。特許第3487938号公報 しかしながら、天然香料に合成香気成分を上乗せ添加して得られた合成香料は、本来の柑橘果実の香りを完全に再現しているとは言えず、上乗せした合成香気成分の特徴香のみが突出して飽きっぽい香りとなりがちであった。また、天然香料をベースとして使用しているので、コスト的にも高いといった不都合があった。 また、合成香料に果汁を添加して得られた香料は、果汁の量が合成香料の量よりも少なく、果汁をベースとしたものではない。さらには、香料を製造する際に100MPa〜400MPaの高圧を必要とするので、設備が大掛かりなものとなり、作業も煩雑でコスト的にも高いといった不都合があった。 従って、果汁をベースとして特徴香のみが突出することがなく、柑橘系果実本来の香りを有し、さらには、添加量1/100以下と力価を高めた風味強化果汁はこれまでに知られていない。 本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、合成香気成分を調合した合成香料にありがちな特徴香が突出したバランスの悪さを是正し、果実本来の調和のある香りを飲料等に付与することができる力価の高い風味強化果汁を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、果汁に合成香気成分を調合してなる合成香料を添加し、これをホモジナイズして果汁中に均質分散させることで、柑橘系果実本来の調和のある香りを有し、また、添加量1/100以下と力価の高い風味強化果汁が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。 (1) 果汁に合成香気成分を該香気成分の水に対する溶解度以上の量を混合してホモジナイズすることにより得られる風味強化果汁。 (2) 前記香気成分の混合量は、前記果汁に対して0.001質量%以上5質量%以下である(1)に記載の風味強化果汁。 (3) 前記合成香気成分は合成リモネンを含むものであり、前記果汁はパルプを含む(1)または(2)に記載の風味強化果汁。 (4) 前記合成リモネンは、水に対する溶解度以上の量が混合されている(3)に記載の風味強化果汁。 (5) 前記合成リモネンの混合量は、前記果汁に対して0.001質量%以上5質量%以下である(3)または(4)に記載の風味強化果汁。(6) 前記ホモジナイズは、150〜250kg/cm2の高圧ホモゲナイザー条件下または、超高圧ホモゲナイザーであるマイクロフィルタイザーで250〜1000kg/cm2行われるもの、または高速ミキサーで1000〜6000rpmの回転数で行うもの、コロイドミルで行うものである(1)から(5)いずれか記載の風味強化果汁。 (7) 前記果汁は、柑橘系果汁である(1)から(6)いずれか記載の風味強化果汁。 (8) (1)から(7)いずれか記載の風味強化果汁を飲料に添加して得られる風味強化飲料。 (9) 前記飲料は、炭酸飲料、アルコール飲料、およびアルコール炭酸飲料よりなる群から選ばれる少なくとも一種である(8)に記載の風味強化飲料。 (10) 果汁に合成香気成分を0.001質量%以上1質量%以下混合してホモジナイズすることにより、風味が強化された果汁を得る風味強化果汁の製造方法。 (11) 前記合成香気成分はリモネンを含み、前記果汁はパルプを含む(10)に記載の風味強化果汁の製造方法。 (12) ある果汁にパルプを含有させてパルプ含有果汁とし、該パルプ含有果汁に合成香気成分を混合してホモジナイズすることにより、前記ある果汁の風味を強化する果汁風味強化方法。 (13) 前記合成香気成分の混合量は、0.01質量%以上0.5質量%以下である(12)に記載の果汁風味強化方法。 (14) 前記ある果汁は柑橘系果汁であり、前記合成香気成分は合成リモネンを含む(12)または(13)に記載の果汁風味強化方法。 本発明によれば、ベースとなる果汁に合成香気成分を混合してホモジナイズしているので、合成香料にありがちな特徴香が突出したバランスの悪さが是正され、柑橘系果実本来の調和のある香りを有する風味強化果汁が得られる。また、香料並の力価を有しているので、天然香料と同様に添加量1/100以下で使用でき、作業も簡便でコスト的にも有利である。具体的には、天然香料をベースに使用することなく、天然香料に合成香気成分を上乗せして調合した合成香料よりも、50倍程度の高力価での使用ができるので、コストも1/5以下に低減できる。 また、合成香気成分としてリモネンを用い、パルプを含有する果汁を用いた場合には、これらを混合してホモジナイズすることによりリモネンがパルプに吸着され、果汁中に均質に分散され安定化される。これによって、リモネンが分離して遊離することがなく、リモネンの存在によって、果汁中に含有された合成香料の各香気成分の突出がより一層是正され、果実本来の香りが再現できる。さらには、リモネンは揮発性が高いので、容器開栓時のトップフレーバーの立ちが良くなると共に、他の香り成分の揮発性も高める効果があるため、全体に果実の香りが強くなり、フレッシュ感が増大する。 また、添加する合成香気成分の種類や量等に調和を与えることより、天然では入手困難な香りのものを製造でき、嗜好性の高い飲料等を自由にしかも大量に製造することができる。 以下、本発明について具体的に説明する。 本発明の風味強化果汁は、果汁に合成香気成分やリモネンを添加し、ホモジナイズして果汁中に合成香気成分、リモネンを均質に分散させることによって得られる。 本発明の風味強化果汁のベースとなる果汁は、柑橘類、リンゴ、梨、ブドウ、パイナップル等各種の果汁が適宜使用されるが、柑橘類の果汁がより好ましい。柑橘類としては、グレープフルーツ、ネーブルオレンジ、伊予柑、八朔、夏柑、甘夏柑、温州蜜柑、レモン、スダチ、キンカン、ザボン、オレンジ等が例挙される。この果汁は、全果(皮等も含めた果実全体)をインライン搾汁機等を用いて果汁分と果皮を含む残渣とに圧搾分離し、この圧搾分離した果汁を濃縮、殺菌及び冷却する方法、あるいは全果を果皮部と果肉部とに分離し、または半切した後果肉部だけを搾汁し、濃縮や殺菌及び冷却を行なう方法等、果実飲料の原料用果汁として一般的に製造されている方法によって製造される。そして、適当なパルプ(果実の粉砕物中の皮等の不溶物)を含み、果汁の濃度が40〜70°Brixに濃縮された混濁濃縮果汁が好ましく使用される。 本発明において合成香気成分としては、柑橘類等の果実の香気成分を分析して、特徴的な香気成分を明らかにして、これらの香気成分をイソプレン、ベンゼン、スチレン、アセチレン、カテコール、テラピン油などの石油化学工業やパルプ工業などから安価で大量に得られる基礎的化学製品を原料として、科学的手段で合成した炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、フェノールエーテル類、ラクトン類、キノン類、各種有機酸等である。また、多くの成分の複雑な混合体である天然精油から蒸留、冷凍分離、化学処理などの方法で分離したもの(例えば、柑橘油(オレンジ油、みかん油)から得られるd−リモネン、薄荷油から得られるl−メントール、シトロネラ油から得られるシトロネラール等)や市販の着香料も適宜使用可能である。この合成香気成分は単用または併用して、柑橘類等の果実の香りと同じ香りを呈するように調合されて用いられる。例えば、柑橘類のグレープフルーツ様合成香料としては、αターピネオール、グレープフルーツメルカプタン、スチラリルイソブチレート、リナロールネロール、グラニオール、ゲラニアール、ノナナール、ネリルアセテート、ゲラニルアセテート等の合成香気成分を所定割合で配合して調製される。尚、合成香気性成分としては、天然香料の香気性成分と全く同じ化合物を化学的に合成したものや天然香料の成分中には見出されていないが、香りが非常によく似ている化合物の合成および独特の香気を持つ全く新しい有香物質の合成品も含むものとする。 合成香気成分は、合成香気成分の純品を直接果汁中のパルプ質に吸着安定化させる場合もあるが、1種単独または2種以上を調合して柑橘類等の果実様の香りに調整したものを55〜95%アルコール溶液に溶解させてアルコール合成香料の形で用いることもある。アルコールに溶解したアルコール合成香料とすることで、果汁に添加する作業が容易となり、また、果汁に溶解しやすくなる。 本発明においてリモネンとしては、オレンジ油、レモン油、マンダリン油、ライム油、ベルガモット油、カラウェー油、ウイキョウ油などの植物油を使用することができる。d−リモネン原液は、下記化学式1で示されるd−リモネンを、主成分として約50質量%以上を含むものであればよい。更にd−リモネン原液は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。好ましいd−リモネン原液は、柑橘油である。柑橘油は、通常柑橘類の果実の皮を圧搾して得られる搾汁を抽出処理し精製して得られる。該搾汁の抽出処理および精製処理を施すことは必ずしも必要不可欠ではないが、施すことが望ましい。柑橘油の主要成分は、d−リモネンが70〜90容量%の割合で含有され、他の成分は、他のテルペン類、C5物質であるイソプレノイド構造を有する化合物、樟脳型のC10物質の酸化誘導体であるC10H6などである。 柑橘類の果実皮、場合によっては皮のついた果実全体を圧搾して得られる搾汁中には浮遊懸濁固形分、塵挨等が多少なりとも含まれる。好ましくはこの浮遊懸濁固形分、塵挨等を濾別除去する。そしてこの搾汁中の目的物であるd−リモネンは、水への溶解度が本来は極く小さい油状物質であるが、該搾汁中に僅かに夾雑しているアミノ酸や糖誘導体による乳化作用に起因してO/W型エマルジョン液が1部生成し易くなっている。該アミノ酸や糖誘導体の排除することが望ましく、また、これらアミノ酸や糖誘導体は水相中に存在する割合が多いので、抽出された油相は水洗いすることが好ましい。 本発明において、合成香気成分は、柑橘類等の果汁に対して0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜1質量%添加される。0.001質量%より少ないと、香料としての力価が低いことになる。また、5質量%より多いと、人工的な香気になるおそれがあること、および力価が高くなりすぎて使用し難くなる等で好ましくない。尚、果汁に対して添加する合成香気成分としては、グレープフルーツ果汁に対してはグレープフルーツ様合成香料のように、同種のものとするのが通常であるが、その組み合わせを変えてもよいし、あるいはグレープフルーツ様合成香料の他にフラワー様合成香料その他各種の合成香料を使用してもよく、バラエティーのある風味強化果汁を製造することができる。ここで、グレープフルーツ様合成香料とは、合成香気成分を調合してグレープフルーツ様の香りとした香料のことを意味する。 また、リモネンは、柑橘類等の果汁に対して0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜1質量%添加される。0.001質量%より少ないと、リモネン感が感じられない。また、5質量%より多いと、リモネン感が強すぎる等で好ましくない。 このリモネンを添加することで、柑橘合成香気成分を添加することによる各香気成分の特徴香が突出するのがより一層抑制され、調和ある本物の果実の香りが再現されることになる。また、リモネンは揮発性が高いので、容器開栓時のトップフレーバーの立ちが良くなると共に、他の香り成分の揮発性も高める効果があるため、全体に香りが強くなり、フレッシュ感が増加することになる。 次に、本発明の風味強化果汁を製造する方法について説明する。 本発明の風味強化果汁は、合成香気成分を調合してなる合成香料を柑橘類等の果汁に添加してホモジナイズすることにより製造される。 先ず、柑橘類等の果実の香気成分を分析し、化学的に合成された合成香気成分を55〜95%エタノール溶液に溶かして、1/10万程度の高力価の果実様の香りを呈するアルコール合成香料を作成する。この合成香気成分は、柑橘類等の果実の香りと同じ様な香りを呈するように、1種または2種以上を所定割合で調合して調整される。 次に、このアルコール合成香料を柑橘類等の果汁に0.001〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%添加し、これをホモジナイズして果汁中に合成香気成分を均質に分散させる。これによって、合成香気成分は果汁中に均質に分散され、合成香気成分が遊離することのない安定化された風味強化果汁を得ることができる。ここで、ホモジナイズとは、液体分散媒中に存在する乳濁物質、粒子状物質を機械的に破砕・微細化し、液分離(分離浮上、沈殿など)を抑え、液中に均質に分散させることをいい、ホモジナイザー(均質機)により行われる。このホモジナイザーとしては、一般に高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等の高圧高速型、ホモミキサー、コロイドミル等の高速回転型、超音波ホモジナイザー、連続乳化分散機等のキャビテーション型、プロペラ撹拌、タービン撹拌等の撹拌分散型等が挙げられるが、高速ホモミキサーでよく攪拌均一化した後、高圧ホモジナイザーで更に微粒子化するのが好ましく用いられる。このホモジナイズは、使用するホモジナイザーの種類にもよるが、例えば、高速ホモミキサーで3000rpm、15分間良く攪拌均一化した後、高圧ホモジナイザーで、圧力250kg/cm2の条件でより微細にし、均質化を行うことができる。 こうして得られた風味強化果汁は、通常の香料並みの1/1000程度の力価を有しているので、この風味強化果汁をチュ−ハイ等の飲料に0.1〜0.5%程度添加することにより、飲料は十分な柑橘類等の果実の香りが得られる。また、この方法で製造することで、通常使用が難しい高力価な合成香気成分を使用することができるので、果実飲料等の製造作業が簡便である。また、果汁や合成香気成分は天然香料に比べて低コストであるので、コスト的にも有利である。 また、果汁にパルプを含有させたものを用いて、リモネンを0.1〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%添加し、上述のアルコール合成香料を0.001〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%添加し、さらにホモジナイズして果汁中に合成香料を均質に分散させる。ホモジナイズは、上述したように、リモネンと合成香料を添加した後のホモジナイズは高速攪拌ホモミキサーと高圧ホモジナイザーで行うことができる。果汁にパルプが含有されていると、このホモジナイズによって、リモネンは微細化され、果汁中のパルプに吸着されて、果汁中に均質に分散され、リモネンの浮きが生じない安定した風味強化果汁を得ることができる。 尚、リモネンと合成香気成分とは、同時に添加してホモジナイズしてもよい。この場合のホモジナイズは、上述と同様に行うことが出来る。これによっても、リモネンは微細化され、果汁中のパルプ質に吸着されて、果汁中に均質に分散され、リモネンの浮きが生じない安定した風味強化果汁を得ることができる。 このリモネンは、柑橘類特有の香りを有しているが、55%エタノール溶液にほとんど溶けないために、アルコールエッセンスタイプの合成香料に使用されることがなかったのが、このホモジナイズによって、果汁中に均質に分散されて安定化され、パルプから分離して遊離することがなくなり、使用できることになる。 本発明の風味強化果汁は、果汁がベースとなっており、合成香料にありがちな特徴香の突出したバランスの悪さを是正し、柑橘類等の果実本来の調和のある香りを有する。また、添加量1/100以下で使用可能という天然の香料並の力価を有しているので、天然の香料と同じように使用できる。また、リモネンを含有させることで、果汁中に含有された合成香料の各香気成分の突出がより一層是正され、本物の果実の香りが再現される。さらに、トップフレーバーの立ちが良くなると共に、全体に果実の香りが強くなり、フレッシュ感が増大することになる。 このため、本発明の風味強化果汁を各種飲料に所定量添加することにより、柑橘類等の果実本来の調和のある香りを有す果実飲料を効果的且つ工業的に製造することができる。例えば、柑橘類の風味強化果汁を、アルコール飲料等の飲料に0.1〜0.5質量%程度配合することで、柑橘系の風味を呈する酸味の効いたクセのない爽やかな風味で、スッキリとした飲み口のチューハイや発泡酒、ノンアルコール飲料、炭酸飲料等を製造できる。 また、風味強化果汁を製造する際に、果汁と合成香気成分との種類を変えたりして、従来未知の新しい風味を有する各種のハイブリッド果実飲料を適宜製造できるという著効も併せ奏される。 以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 <実施例1> 先ず、合成香気成分として、αターピネオール、グループフルーツメルカプタン、スチラリルイソブチレート、リナロールネロール、ゲラニオール、ゲラニアール、ノナナール、ネリルアセテート、ゲラニルアセテートを55%エタノール溶液に総量で2質量%添加して溶解し、力価1/10万のグレープフルーツ様の香りを呈するアルコール合成香料Aを作成する。 次いで、グレープフルーツ6倍濃縮混濁果汁に、上記のアルコール合成香料Aを1質量%添加し、高速ホモミキサーを使用して3000rpmの条件で15分間、攪拌ホモジナイズしたあと、高圧ホモジナイザーで250kg/cm2の圧力で、更に微細、均一化し、合成香気成分が果汁中に均質に分散され、安定化されたグレープフルーツ風味強化果汁を得た。 得られたグレープフルーツ風味強化果汁は、グレープフルーツから抽出された天然香料並の1/1000程度の力価を有していた。尚、力価は糖酸液に添加して希釈し、官能検査により測定した。 そして、得られた風味強化果汁をチューハイに1質量%加えることにより、フレッシュな香気のグレープフルーツ風味のチューハイを得ることができた。 <実施例2> 先ず、実施例1と同様にして、力価1/10万のグレープフルーツ様のアルコール合成香料Aを作成する。 次いで、グレープフルーツ6倍濃縮混濁果汁に、上記アルコール合成香料Aを1質量%と、d−リモネンを0.5質量%とを添加し、高速ホモミキサーを使用して3000rpmの条件で15分間、攪拌ホモジナイズしたあと、高圧ホモジナイザーで250kg/cm2の圧力で、更に微細、均一化し、合成香気成分が果汁中に均質に分散され、安定化されたグレープフルーツ風味強化果汁を得た。 得られたグレープフルーツ風味強化果汁は、グレープフルーツから抽出された天然香料並の1/1000程度の力価を有していた。尚、力価は実施例1と同様の方法により測定した。また、この果汁は、保存中にリモネンが分離してオイル浮きすることも無かった。 そして、実施例1と同様に、得られた風味強化果汁をチューハイに1質量%加えることにより、調和のとれた新鮮なグレープフルーツ風味のチューハイを得ることができた。 <比較例1> アルコール7%、砂糖3%、クエン酸0.25%、グレープフルーツ果汁5%のチューハイを作り、これに、天然香気成分と合成香気成分を含有する標準的なグレープフルーツアルコールエッセンス香料(アルコール55%)を0.1%添加して、良く攪拌後、炭酸ガスを加えて、2.3volとして、缶に詰めて、缶チューハイとした。 実施例1、実施例2で得られた風味強化果汁を添加した各チューハイの天然果実由来の香りの強さについて、評価試験を実施した。評価はパネリスト8人による官能試験により行い、結果を表1に示した。試験は缶に充填されたそれぞれのチューハイの香りの強さを比較することにより行った。 官能試験の結果、実施例1、実施例2のチューハイは比較例1と比べて十分な香りの強さがあるだけでなく、容器開缶時のトップ香も強く、極めてグレープフルーツ感のあるものであった。 果汁に合成香気成分を該香気成分の水に対する溶解度以上の量を混合してホモジナイズすることにより得られる風味強化果汁。 前記香気成分の混合量は、前記果汁に対して0.001質量%以上5質量%以下である請求項1に記載の風味強化果汁。 前記合成香気成分は合成リモネンを含むものであり、前記果汁はパルプを含む請求項1または2に記載の風味強化果汁。 前記合成リモネンは、水に対する溶解度以上の量が混合されている請求項3に記載の風味強化果汁。 前記合成リモネンの混合量は、前記果汁に対して0.001質量%以上5質量%以下である請求項3または4に記載の風味強化果汁。 前記ホモジナイズは、150〜250kg/cm2の高圧ホモゲナイザー条件下または、超高圧ホモゲナイザーであるマイクロフィルタイザーで250〜1000kg/cm2行われるもの、または高速ミキサーで1000〜6000rpmの回転数で行うもの、コロイドミルで行うものである請求項1から5いずれか記載の風味強化果汁。 前記果汁は、柑橘系果汁である請求項1から6いずれか記載の風味強化果汁。 請求項1から7いずれか記載の風味強化果汁を飲料に添加して得られる風味強化飲料。 前記飲料は、炭酸飲料、アルコール飲料、およびアルコール炭酸飲料よりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載の風味強化飲料。 果汁に合成香気成分を0.001質量%以上1質量%以下混合してホモジナイズすることにより、風味が強化された果汁を得る風味強化果汁の製造方法。 前記合成香気成分はリモネンを含み、前記果汁はパルプを含む請求項10に記載の風味強化果汁の製造方法。 ある果汁にパルプを含有させてパルプ含有果汁とし、該パルプ含有果汁に合成香気成分を混合してホモジナイズすることにより、前記ある果汁の風味を強化する果汁風味強化方法。 前記合成香気成分の混合量は、0.01質量%以上0.5質量%以下である請求項12に記載の果汁風味強化方法。 前記ある果汁は柑橘系果汁であり、前記合成香気成分は合成リモネンを含む請求項12または13に記載の果汁風味強化方法。 【課題】合成香気成分を調合した合成香料にありがちな特徴香の突出したバランスの悪さを是正し、果実本来の調和のある香りを飲料等に付与することができる力価の高い風味強化果汁を提供する。【解決手段】果汁に柑橘類等の果実の香気成分を分析して、化学的に合成した合成香気成分を0.001質量%以上5質量%以下混合してホモジナイズすることにより得られる。更に、リモネンを0.001質量%以上5質量%以下混合してホモジナイズすることにより得られる。これによって、柑橘類等の果実の香りが合成香料にありがちな特徴香の突出したバランスの悪さを是正し、柑橘類等の果実本来の調和のある香りを有する風味強化果汁となる。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_風味強化果汁

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_風味強化果汁
出願番号:2005204194
年次:2010
IPC分類:A23L 2/52,A23L 2/64,A23L 2/00,A23L 2/02,C12G 3/04


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三浦 裕 JP 4563272 特許公報(B2) 20100806 2005204194 20050713 風味強化果汁 アサヒビール株式会社 000000055 正林 真之 100106002 三浦 裕 20101013 A23L 2/52 20060101AFI20100922BHJP A23L 2/64 20060101ALI20100922BHJP A23L 2/00 20060101ALI20100922BHJP A23L 2/02 20060101ALI20100922BHJP C12G 3/04 20060101ALN20100922BHJP JPA23L2/26A23L2/28A23L2/00 BA23L2/02 BC12G3/04 A23L 2/00−2/84 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) WPI G−Search 食品関連文献情報(食ネット) FOODLINE/FSTA(DIALOG) 特開平08−173081(JP,A) 特開2005−124567(JP,A) 特開昭61−274670(JP,A) 特開昭50−155651(JP,A) 特開昭49−007445(JP,A) 8 2007020433 20070201 10 20080516 鳥居 敬司 本発明は、飲料等に果実本来の香りを付与できる風味強化果汁およびその製造方法に関し、特に、チューハイ等の強い香り立ちが求められる飲料に好適に用いることができる風味強化果汁およびその製造方法に関する。 飲料業界では、爽やかな柑橘果実の香りを有する飲料が好まれている。例えば、近年、市場を拡大しているチューハイ飲料においても、レモン、グレープフルーツ等の風味を付与したものは最もよく飲用されており、その他にもオレンジ、ライム等の風味を付与したものがよく飲用されている。これは、酸味の効いたクセの少ない柑橘果実の爽やかな風味が、スッキリとした飲み口を与えているからである。 飲料に柑橘系の香りを付与する場合には、柑橘系の合成香料を使用することが多い。柑橘系の天然香料は、十分な強さの香気を有していないからである。特に、チューハイ等のアルコール炭酸飲料は、清涼飲料と比較して甘味が少ないので、香り立ちが一般的に弱い。このため、強い香り立ちが求められ、合成香料を使用する傾向が顕著である。 合成香料は、柑橘系果汁の香気成分を分析して特徴的な香気成分を明らかにし、それら香気成分を化学的手段で合成して調合することにより得られる。従って、目的とする柑橘系果汁と同様の香りを有しており、近年、香気成分の分析技術や合成技術の進歩により、天然よりも本物らしい強い特徴香を有する合成香料が製造されている。 しかしながら、合成香気成分のみを配合した合成香料を飲料に用いた場合には、人工的な香気になる傾向があるうえ、香料の力価が強くなり過ぎて使い難い。このため、天然香料に、合成香気成分を上乗せして添加することにより得られた合成香料が一般的に用いられている。 また、合成香気成分のみを配合した合成香料に果汁を添加し、風味および新鮮味を備えた合成香料も開発されている。例えば、特許文献1には、柑橘系合成香料に柑橘系果汁を1%〜50%程度添加し、これを高圧処理することによって、搾りたての風味と新鮮味とを備えた高品質の香料が得られる旨が記載されている。特許第3487938号公報 しかしながら、天然香料に合成香気成分を上乗せ添加して得られた合成香料は、本来の柑橘果実の香りを完全に再現しているとは言えず、上乗せした合成香気成分の特徴香のみが突出して飽きっぽい香りとなりがちであった。また、天然香料をベースとして使用しているので、コスト的にも高いといった不都合があった。 また、合成香料に果汁を添加して得られた香料は、果汁の量が合成香料の量よりも少なく、果汁をベースとしたものではない。さらには、香料を製造する際に100MPa〜400MPaの高圧を必要とするので、設備が大掛かりなものとなり、作業も煩雑でコスト的にも高いといった不都合があった。 従って、果汁をベースとして特徴香のみが突出することがなく、柑橘系果実本来の香りを有し、さらには、添加量1/100以下と力価を高めた風味強化果汁はこれまでに知られていない。 本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、合成香気成分を調合した合成香料にありがちな特徴香が突出したバランスの悪さを是正し、果実本来の調和のある香りを飲料等に付与することができる力価の高い風味強化果汁を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、果汁に合成香気成分を調合してなる合成香料を添加し、これをホモジナイズして果汁中に均質分散させることで、柑橘系果実本来の調和のある香りを有し、また、添加量1/100以下と力価の高い風味強化果汁が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。 (1) 果汁に合成香気成分を該香気成分の水に対する溶解度以上の量を混合してホモジナイズすることにより得られる風味強化果汁。 (2) 前記香気成分の混合量は、前記果汁に対して0.001質量%以上5質量%以下である(1)に記載の風味強化果汁。 (3) 前記合成香気成分は合成リモネンを含むものであり、前記果汁はパルプを含む(1)または(2)に記載の風味強化果汁。 (4) 前記合成リモネンは、水に対する溶解度以上の量が混合されている(3)に記載の風味強化果汁。 (5) 前記合成リモネンの混合量は、前記果汁に対して0.001質量%以上5質量%以下である(3)または(4)に記載の風味強化果汁。(6) 前記ホモジナイズは、150〜250kg/cm2の高圧ホモゲナイザー条件下または、超高圧ホモゲナイザーであるマイクロフィルタイザーで250〜1000kg/cm2行われるもの、または高速ミキサーで1000〜6000rpmの回転数で行うもの、コロイドミルで行うものである(1)から(5)いずれか記載の風味強化果汁。 (7) 前記果汁は、柑橘系果汁である(1)から(6)いずれか記載の風味強化果汁。 (8) (1)から(7)いずれか記載の風味強化果汁を飲料に添加して得られる風味強化飲料。 (9) 前記飲料は、炭酸飲料、アルコール飲料、およびアルコール炭酸飲料よりなる群から選ばれる少なくとも一種である(8)に記載の風味強化飲料。 (10) 果汁に合成香気成分を0.001質量%以上1質量%以下混合してホモジナイズすることにより、風味が強化された果汁を得る風味強化果汁の製造方法。 (11) 前記合成香気成分はリモネンを含み、前記果汁はパルプを含む(10)に記載の風味強化果汁の製造方法。 (12) ある果汁にパルプを含有させてパルプ含有果汁とし、該パルプ含有果汁に合成香気成分を混合してホモジナイズすることにより、前記ある果汁の風味を強化する果汁風味強化方法。 (13) 前記合成香気成分の混合量は、0.01質量%以上0.5質量%以下である(12)に記載の果汁風味強化方法。 (14) 前記ある果汁は柑橘系果汁であり、前記合成香気成分は合成リモネンを含む(12)または(13)に記載の果汁風味強化方法。 本発明によれば、ベースとなる果汁に合成香気成分を混合してホモジナイズしているので、合成香料にありがちな特徴香が突出したバランスの悪さが是正され、柑橘系果実本来の調和のある香りを有する風味強化果汁が得られる。また、香料並の力価を有しているので、天然香料と同様に添加量1/100以下で使用でき、作業も簡便でコスト的にも有利である。具体的には、天然香料をベースに使用することなく、天然香料に合成香気成分を上乗せして調合した合成香料よりも、50倍程度の高力価での使用ができるので、コストも1/5以下に低減できる。 また、合成香気成分としてリモネンを用い、パルプを含有する果汁を用いた場合には、これらを混合してホモジナイズすることによりリモネンがパルプに吸着され、果汁中に均質に分散され安定化される。これによって、リモネンが分離して遊離することがなく、リモネンの存在によって、果汁中に含有された合成香料の各香気成分の突出がより一層是正され、果実本来の香りが再現できる。さらには、リモネンは揮発性が高いので、容器開栓時のトップフレーバーの立ちが良くなると共に、他の香り成分の揮発性も高める効果があるため、全体に果実の香りが強くなり、フレッシュ感が増大する。 また、添加する合成香気成分の種類や量等に調和を与えることより、天然では入手困難な香りのものを製造でき、嗜好性の高い飲料等を自由にしかも大量に製造することができる。 以下、本発明について具体的に説明する。 本発明の風味強化果汁は、果汁に合成香気成分やリモネンを添加し、ホモジナイズして果汁中に合成香気成分、リモネンを均質に分散させることによって得られる。 本発明の風味強化果汁のベースとなる果汁は、柑橘類、リンゴ、梨、ブドウ、パイナップル等各種の果汁が適宜使用されるが、柑橘類の果汁がより好ましい。柑橘類としては、グレープフルーツ、ネーブルオレンジ、伊予柑、八朔、夏柑、甘夏柑、温州蜜柑、レモン、スダチ、キンカン、ザボン、オレンジ等が例挙される。この果汁は、全果(皮等も含めた果実全体)をインライン搾汁機等を用いて果汁分と果皮を含む残渣とに圧搾分離し、この圧搾分離した果汁を濃縮、殺菌及び冷却する方法、あるいは全果を果皮部と果肉部とに分離し、または半切した後果肉部だけを搾汁し、濃縮や殺菌及び冷却を行なう方法等、果実飲料の原料用果汁として一般的に製造されている方法によって製造される。そして、適当なパルプ(果実の粉砕物中の皮等の不溶物)を含み、果汁の濃度が40〜70°Brixに濃縮された混濁濃縮果汁が好ましく使用される。 本発明において合成香気成分としては、柑橘類等の果実の香気成分を分析して、特徴的な香気成分を明らかにして、これらの香気成分をイソプレン、ベンゼン、スチレン、アセチレン、カテコール、テラピン油などの石油化学工業やパルプ工業などから安価で大量に得られる基礎的化学製品を原料として、科学的手段で合成した炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、フェノールエーテル類、ラクトン類、キノン類、各種有機酸等である。また、多くの成分の複雑な混合体である天然精油から蒸留、冷凍分離、化学処理などの方法で分離したもの(例えば、柑橘油(オレンジ油、みかん油)から得られるd−リモネン、薄荷油から得られるl−メントール、シトロネラ油から得られるシトロネラール等)や市販の着香料も適宜使用可能である。この合成香気成分は単用または併用して、柑橘類等の果実の香りと同じ香りを呈するように調合されて用いられる。例えば、柑橘類のグレープフルーツ様合成香料としては、αターピネオール、グレープフルーツメルカプタン、スチラリルイソブチレート、リナロールネロール、グラニオール、ゲラニアール、ノナナール、ネリルアセテート、ゲラニルアセテート等の合成香気成分を所定割合で配合して調製される。尚、合成香気性成分としては、天然香料の香気性成分と全く同じ化合物を化学的に合成したものや天然香料の成分中には見出されていないが、香りが非常によく似ている化合物の合成および独特の香気を持つ全く新しい有香物質の合成品も含むものとする。 合成香気成分は、合成香気成分の純品を直接果汁中のパルプ質に吸着安定化させる場合もあるが、1種単独または2種以上を調合して柑橘類等の果実様の香りに調整したものを55〜95%アルコール溶液に溶解させてアルコール合成香料の形で用いることもある。アルコールに溶解したアルコール合成香料とすることで、果汁に添加する作業が容易となり、また、果汁に溶解しやすくなる。 本発明においてリモネンとしては、オレンジ油、レモン油、マンダリン油、ライム油、ベルガモット油、カラウェー油、ウイキョウ油などの植物油を使用することができる。d−リモネン原液は、下記化学式1で示されるd−リモネンを、主成分として約50質量%以上を含むものであればよい。更にd−リモネン原液は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。好ましいd−リモネン原液は、柑橘油である。柑橘油は、通常柑橘類の果実の皮を圧搾して得られる搾汁を抽出処理し精製して得られる。該搾汁の抽出処理および精製処理を施すことは必ずしも必要不可欠ではないが、施すことが望ましい。柑橘油の主要成分は、d−リモネンが70〜90容量%の割合で含有され、他の成分は、他のテルペン類、C5物質であるイソプレノイド構造を有する化合物、樟脳型のC10物質の酸化誘導体であるC10H6などである。 柑橘類の果実皮、場合によっては皮のついた果実全体を圧搾して得られる搾汁中には浮遊懸濁固形分、塵挨等が多少なりとも含まれる。好ましくはこの浮遊懸濁固形分、塵挨等を濾別除去する。そしてこの搾汁中の目的物であるd−リモネンは、水への溶解度が本来は極く小さい油状物質であるが、該搾汁中に僅かに夾雑しているアミノ酸や糖誘導体による乳化作用に起因してO/W型エマルジョン液が1部生成し易くなっている。該アミノ酸や糖誘導体の排除することが望ましく、また、これらアミノ酸や糖誘導体は水相中に存在する割合が多いので、抽出された油相は水洗いすることが好ましい。 本発明において、合成香気成分は、柑橘類等の果汁に対して0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜1質量%添加される。0.001質量%より少ないと、香料としての力価が低いことになる。また、5質量%より多いと、人工的な香気になるおそれがあること、および力価が高くなりすぎて使用し難くなる等で好ましくない。尚、果汁に対して添加する合成香気成分としては、グレープフルーツ果汁に対してはグレープフルーツ様合成香料のように、同種のものとするのが通常であるが、その組み合わせを変えてもよいし、あるいはグレープフルーツ様合成香料の他にフラワー様合成香料その他各種の合成香料を使用してもよく、バラエティーのある風味強化果汁を製造することができる。ここで、グレープフルーツ様合成香料とは、合成香気成分を調合してグレープフルーツ様の香りとした香料のことを意味する。 また、リモネンは、柑橘類等の果汁に対して0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜1質量%添加される。0.001質量%より少ないと、リモネン感が感じられない。また、5質量%より多いと、リモネン感が強すぎる等で好ましくない。 このリモネンを添加することで、柑橘合成香気成分を添加することによる各香気成分の特徴香が突出するのがより一層抑制され、調和ある本物の果実の香りが再現されることになる。また、リモネンは揮発性が高いので、容器開栓時のトップフレーバーの立ちが良くなると共に、他の香り成分の揮発性も高める効果があるため、全体に香りが強くなり、フレッシュ感が増加することになる。 次に、本発明の風味強化果汁を製造する方法について説明する。 本発明の風味強化果汁は、合成香気成分を調合してなる合成香料を柑橘類等の果汁に添加してホモジナイズすることにより製造される。 先ず、柑橘類等の果実の香気成分を分析し、化学的に合成された合成香気成分を55〜95%エタノール溶液に溶かして、1/10万程度の高力価の果実様の香りを呈するアルコール合成香料を作成する。この合成香気成分は、柑橘類等の果実の香りと同じ様な香りを呈するように、1種または2種以上を所定割合で調合して調整される。 次に、このアルコール合成香料を柑橘類等の果汁に0.001〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%添加し、これをホモジナイズして果汁中に合成香気成分を均質に分散させる。これによって、合成香気成分は果汁中に均質に分散され、合成香気成分が遊離することのない安定化された風味強化果汁を得ることができる。ここで、ホモジナイズとは、液体分散媒中に存在する乳濁物質、粒子状物質を機械的に破砕・微細化し、液分離(分離浮上、沈殿など)を抑え、液中に均質に分散させることをいい、ホモジナイザー(均質機)により行われる。このホモジナイザーとしては、一般に高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等の高圧高速型、ホモミキサー、コロイドミル等の高速回転型、超音波ホモジナイザー、連続乳化分散機等のキャビテーション型、プロペラ撹拌、タービン撹拌等の撹拌分散型等が挙げられるが、高速ホモミキサーでよく攪拌均一化した後、高圧ホモジナイザーで更に微粒子化するのが好ましく用いられる。このホモジナイズは、使用するホモジナイザーの種類にもよるが、例えば、高速ホモミキサーで3000rpm、15分間良く攪拌均一化した後、高圧ホモジナイザーで、圧力250kg/cm2の条件でより微細にし、均質化を行うことができる。 こうして得られた風味強化果汁は、通常の香料並みの1/1000程度の力価を有しているので、この風味強化果汁をチュ−ハイ等の飲料に0.1〜0.5%程度添加することにより、飲料は十分な柑橘類等の果実の香りが得られる。また、この方法で製造することで、通常使用が難しい高力価な合成香気成分を使用することができるので、果実飲料等の製造作業が簡便である。また、果汁や合成香気成分は天然香料に比べて低コストであるので、コスト的にも有利である。 また、果汁にパルプを含有させたものを用いて、リモネンを0.1〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%添加し、上述のアルコール合成香料を0.001〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%添加し、さらにホモジナイズして果汁中に合成香料を均質に分散させる。ホモジナイズは、上述したように、リモネンと合成香料を添加した後のホモジナイズは高速攪拌ホモミキサーと高圧ホモジナイザーで行うことができる。果汁にパルプが含有されていると、このホモジナイズによって、リモネンは微細化され、果汁中のパルプに吸着されて、果汁中に均質に分散され、リモネンの浮きが生じない安定した風味強化果汁を得ることができる。 尚、リモネンと合成香気成分とは、同時に添加してホモジナイズしてもよい。この場合のホモジナイズは、上述と同様に行うことが出来る。これによっても、リモネンは微細化され、果汁中のパルプ質に吸着されて、果汁中に均質に分散され、リモネンの浮きが生じない安定した風味強化果汁を得ることができる。 このリモネンは、柑橘類特有の香りを有しているが、55%エタノール溶液にほとんど溶けないために、アルコールエッセンスタイプの合成香料に使用されることがなかったのが、このホモジナイズによって、果汁中に均質に分散されて安定化され、パルプから分離して遊離することがなくなり、使用できることになる。 本発明の風味強化果汁は、果汁がベースとなっており、合成香料にありがちな特徴香の突出したバランスの悪さを是正し、柑橘類等の果実本来の調和のある香りを有する。また、添加量1/100以下で使用可能という天然の香料並の力価を有しているので、天然の香料と同じように使用できる。また、リモネンを含有させることで、果汁中に含有された合成香料の各香気成分の突出がより一層是正され、本物の果実の香りが再現される。さらに、トップフレーバーの立ちが良くなると共に、全体に果実の香りが強くなり、フレッシュ感が増大することになる。 このため、本発明の風味強化果汁を各種飲料に所定量添加することにより、柑橘類等の果実本来の調和のある香りを有す果実飲料を効果的且つ工業的に製造することができる。例えば、柑橘類の風味強化果汁を、アルコール飲料等の飲料に0.1〜0.5質量%程度配合することで、柑橘系の風味を呈する酸味の効いたクセのない爽やかな風味で、スッキリとした飲み口のチューハイや発泡酒、ノンアルコール飲料、炭酸飲料等を製造できる。 また、風味強化果汁を製造する際に、果汁と合成香気成分との種類を変えたりして、従来未知の新しい風味を有する各種のハイブリッド果実飲料を適宜製造できるという著効も併せ奏される。 以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 <参考例> 先ず、合成香気成分として、αターピネオール、グループフルーツメルカプタン、スチラリルイソブチレート、リナロールネロール、ゲラニオール、ゲラニアール、ノナナール、ネリルアセテート、ゲラニルアセテートを55%エタノール溶液に総量で2質量%添加して溶解し、力価1/10万のグレープフルーツ様の香りを呈するアルコール合成香料Aを作成する。 次いで、グレープフルーツ6倍濃縮混濁果汁に、上記のアルコール合成香料Aを1質量%添加し、高速ホモミキサーを使用して3000rpmの条件で15分間、攪拌ホモジナイズしたあと、高圧ホモジナイザーで250kg/cm2の圧力で、更に微細、均一化し、合成香気成分が果汁中に均質に分散され、安定化されたグレープフルーツ風味強化果汁を得た。 得られたグレープフルーツ風味強化果汁は、グレープフルーツから抽出された天然香料並の1/1000程度の力価を有していた。尚、力価は糖酸液に添加して希釈し、官能検査により測定した。 そして、得られた風味強化果汁をチューハイに1質量%加えることにより、フレッシュな香気のグレープフルーツ風味のチューハイを得ることができた。 <実施例> 先ず、参考例と同様にして、力価1/10万のグレープフルーツ様のアルコール合成香料Aを作成する。 次いで、グレープフルーツ6倍濃縮混濁果汁に、上記アルコール合成香料Aを1質量%と、d−リモネンを0.5質量%とを添加し、高速ホモミキサーを使用して3000rpmの条件で15分間、攪拌ホモジナイズしたあと、高圧ホモジナイザーで250kg/cm2の圧力で、更に微細、均一化し、合成香気成分が果汁中に均質に分散され、安定化されたグレープフルーツ風味強化果汁を得た。 得られたグレープフルーツ風味強化果汁は、グレープフルーツから抽出された天然香料並の1/1000程度の力価を有していた。尚、力価は参考例と同様の方法により測定した。また、この果汁は、保存中にリモネンが分離してオイル浮きすることも無かった。 そして、参考例と同様に、得られた風味強化果汁をチューハイに1質量%加えることにより、調和のとれた新鮮なグレープフルーツ風味のチューハイを得ることができた。 <比較例1> アルコール7%、砂糖3%、クエン酸0.25%、グレープフルーツ果汁5%のチューハイを作り、これに、天然香気成分と合成香気成分を含有する標準的なグレープフルーツアルコールエッセンス香料(アルコール55%)を0.1%添加して、良く攪拌後、炭酸ガスを加えて、2.3volとして、缶に詰めて、缶チューハイとした。 参考例、実施例で得られた風味強化果汁を添加した各チューハイの天然果実由来の香りの強さについて、評価試験を実施した。評価はパネリスト8人による官能試験により行い、結果を表1に示した。試験は缶に充填されたそれぞれのチューハイの香りの強さを比較することにより行った。 官能試験の結果、参考例、実施例のチューハイは比較例1と比べて十分な香りの強さがあるだけでなく、容器開缶時のトップ香も強く、極めてグレープフルーツ感のあるものであった。 パルプを含む果汁に対して0.5質量%以上5質量%以下の合成リモネンと他の香気成分とからなる合成香気成分を、前記パルプを含む果汁に対して0.5質量%以上5質量%以下の量で混合してホモジナイズすることにより得られる風味強化果汁。 前記ホモジナイズは、150〜250kg/cm2の高圧ホモゲナイザー条件下または、超高圧ホモゲナイザーであるマイクロフィルタイザーで250〜1000kg/cm2行われるもの、または高速ミキサーで1000〜6000rpmの回転数で行うもの、コロイドミルで行うものである請求項1に記載の風味強化果汁。 前記果汁は、柑橘系果汁である請求項1または2に記載の風味強化果汁。 請求項1から3いずれか記載の風味強化果汁を飲料に添加して得られる風味強化飲料。 前記飲料は、炭酸飲料、アルコール飲料、およびアルコール炭酸飲料よりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項4に記載の風味強化飲料。 パルプを含む果汁に対して0.5質量%以上1質量%以下の合成リモネンと他の香気成分とからなる合成香気成分を、前記パルプを含む果汁に対して0.5質量%以上1質量%以下混合してホモジナイズすることにより、風味が強化された果汁を得る風味強化果汁の製造方法。 ある果汁にパルプを含有させてパルプ含有果汁とし、該パルプ含有果汁に対して0.5質量%以上5質量%以下の合成リモネンと他の香気成分とからなる合成香気成分を、該パルプ含有果汁に対して0.5質量%以上5質量%以下の量で混合してホモジナイズすることにより、前記ある果汁の風味を強化する果汁風味強化方法。 前記ある果汁は柑橘系果汁である請求項7に記載の果汁風味強化方法。


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