生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アルコール代謝促進飲料
出願番号:2005204193
年次:2007
IPC分類:A23L 1/305,A23L 1/302,A61K 31/198,A61P 3/00,C12G 3/04


特許情報キャッシュ

三浦 裕 JP 2007020432 公開特許公報(A) 20070201 2005204193 20050713 アルコール代謝促進飲料 アサヒビール株式会社 000000055 正林 真之 100106002 三浦 裕 A23L 1/305 20060101AFI20070105BHJP A23L 1/302 20060101ALI20070105BHJP A61K 31/198 20060101ALI20070105BHJP A61P 3/00 20060101ALI20070105BHJP C12G 3/04 20060101ALI20070105BHJP JPA23L1/305A23L1/302A61K31/198A61P3/00C12G3/04 9 OL 11 4B015 4B018 4C206 4B015LG02 4B015LH11 4B018LB08 4B018LE05 4B018MD19 4B018MD23 4B018ME14 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA53 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA36 4C206MA72 4C206NA14 4C206ZC21 本発明は、アルコール代謝促進飲料に関し、特に、アスパラギン酸が生体内におけるアルコール代謝を促進することを利用するアルコール代謝促進飲料に関する。 酒類に対しては、強い人もいれば、弱い人もいて、一般的に日本人は酒類に対してそれ程強くないと言われているが、これは酵素の強さによるものといわれている。すなわち、アルコールは、体内で酵素アルコールデヒドロゲナーゼ(以下、ADHと略する)によりアセトアルデヒドに変換され、変換されたアセトアルデヒドは、酵素アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(以下、ALDHと略する)により酢酸に分解されて代謝されていく。日本人の中には、遺伝的にALDHのアミノ酸配列が一箇所、グルタミン酸からリジンへ変異を起こしているものを持っている人がいることが知られている。ところが、この変異した酵素はアルコール代謝能力が無い。日本人の40%以上が2種類あるADLH遺伝子の内、少なくとも片方が不完全であると言われている。そのためアセトアルデヒドの代謝が正常な場合の半分しか進まず、飲酒時の生理的負担が大きくなることになる。この負担を少しでも軽減することは健康上も意義のあることである。 飲酒時のアルコールの代謝は、このように遺伝的な酵素の活性によるところが大きいが、酵素は外部から補うことは難しい。しかし、酵素を手助けする補酵素は補うことは可能で、これを補うことによって、酵素の働きを順調にすることができる。 そこで、アルコール代謝における代表的な補酵素であるビタミンB群を補うために、ビタミンB群を含有させた清涼飲料水等が開発されている(例えば、特許文献1)。また、アルコールを多く摂取する者は、このビタミンB群の中で特に、ビタミンB1やナイアシン(ビタミンB6)が欠乏していることが多く、飲酒時の栄養補給としても重要である。このため、例えば、特許文献2のように、ビタミンB群他の栄養素を添加して体質改善につながるアルコール飲料も開発されている。特表2002−530100号公報特開2002−330748号公報 ビタミンB1は飲酒時にアセトアルデヒドの代謝により消費されることが知られており、また、ナイアシン(ビタミンB6)は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADと略する)となり、ADHやALDHの補酵素として還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADHと略する)に還元されることで、アルコールからアセトアルデヒドへ、アセトアルデヒドから酢酸へと分解していくのに役立っている。 しかし、この際、生成されるNADHが速やかに酸化されてNAD+に変換されないと、ADHやALDHの酵素が十分にあっても、新たなアルコールの分解は進まないことになるため、アルコール代謝における律速は、酵素活性よりもむしろNAD+の不足にあると言われている。 また、アルコール代謝で大量に発生したNADHは、脂肪合成に使用され、アルコール太り、脂肪肝、高脂血症の原因となる。また、ピルビン酸から乳酸の発生を促し、低血糖や高乳酸血症、高尿酸血症の原因となる。 そこで、NADHを速やかにNAD+に変換する代謝回路の活性化が求められている。 本発明の目的は、アルコール代謝によって、大量に発生するNADHを速やかに酸化してNAD+に変換することによって、アルコール代謝経路を滞りなく進めることができるアルコール代謝促進飲料を提供することにある。 本発明者は、アスパラギン酸がトランスアミナーゼにより、オキザロ酢酸に変換され、このオキザロ酢酸がリンゴ酸に変換される過程で、NADHが酸化されてNAD+に変換されることに着目して、アスパラギン酸を補給することで、アルコール代謝が促進されることを見出して本発明を完成するに至った。 より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。 (1) アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸を含有するアルコール代謝促進飲料。 (2) 前記アルコール代謝促進飲料に対する前記アスパラギン酸の含有量が、0.02%以上2%以下である(1)に記載のアルコール代謝促進飲料。 (3) ビタミンB1および/またはビタミンB6からなるビタミンB群をさらに含有する(1)または(2)に記載のアルコール代謝促進飲料。 (4) 前記アルコール代謝促進飲料1リットル中の前記ビタミンB群の含有量が、厚生省の食事摂取基準における成人の一日の所要量の1/3以上3倍以下である(3)に記載のアルコール代謝促進飲料。 (5) コエンザイムQをさらに含有する(1)から(4)いずれか記載のアルコール代謝促進飲料。 (6) 前記アルコール代謝促進飲料1リットル中の前記コエンザイムQの含有量が、10mg以上300mg以下である(5)に記載のアルコール代謝促進飲料。 (7) エタノールをさらに含有する(1)から(6)いずれか記載のアルコール代謝促進飲料。 (8) アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸を含有するアルコール代謝促進剤。 (9) 飲料に、アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸を添加することにより、前記飲料にアルコール代謝促進効果を付与する方法。 本発明によれば、飲料はアルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸を含有するので、飲用することで補給されるアスパラギン酸は細胞質でトランスアミナーゼによりオキザロ酢酸を生成し、オキザロ酢酸はリンゴ酸に変換される。この過程でNADHは酸化されてNAD+に変換される。この変換されたNAD+がアルコールをアセトアルデヒドに変換し、アセトアルデヒドを酢酸に変換するのに使われて、アルコール代謝経路を滞ることなく進めることができる。この結果、アルコール代謝で発生した二日酔いの原因物質とされるアセトアルデヒドが速やかに消失され、二日酔いになり難い。また、大量に生成されたNADHはNAD+に変換されるので、脂肪酸の合成やピルビン酸からの乳酸の発生が抑えられ、脂肪肝、アルコール太り、高脂血症、低血糖、高尿酸血症等になり難い。 また、ビタミンB1および/またはビタミンB6からなるビタミンB群を含有するので、ビタミンB1はアルコールをアセトアルデヒドに変換する際に消費されて、アルコールのアセトアルデヒド変換が促進される。また、ビタミンB6はアスパラギン酸をオキザロ酢酸に変換するトランスアミラーゼの補酵素として働き、アミノ基転移が促進され、添加されたアスパラギン酸をオキザロ酢酸に変換して、オキザロ酢酸を増大させる。この増大されたオキザロ酢酸がリンゴ酸に変換される過程で、NADHからNAD+への変換がさらに行われて、アルコール代謝がより一層促進される。更に、アスパラギン酸とビタミンB6は、細胞質とミトコンドリアの行き来を行う、いわゆるリンゴ酸−アスパラギン酸シャトルを活性化させることになる。 また、コエンザイムQ10(以下、CoQと略する)を含有するので、電子を運ぶ役目を果たす補酵素のCoQが増加することになり、ミトコンドリア内の電子伝達系が活性化され、ミトコンドリア内のNADHをNAD+に戻す代謝を促進することになる。この結果アルコール代謝が促進される。また、電子伝達系が活性化されることで、アデノシン三リン酸(以下、ATPと略する)の合成が促進される。これによって生体内のエネルギー産生が活性化されることになる。 本発明に係るアルコール代謝促進飲料は、アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸が含有されているので、アルコール代謝によって、大量に発生するNADHが速やかに酸化されてNAD+に変換され、アルコール代謝経路を滞ることなく進めることができることになる。この結果、アルコール代謝で発生した二日酔いの原因物質とされるアセトアルデヒドが速やかに消失され、二日酔いになり難い。また、大量に生成されたNADHはNAD+に変換されるので、脂肪酸の合成やピルビン酸からの乳酸の発生が抑えられ、脂肪肝、アルコール太り、高脂血症、低血糖、高尿酸血症等になり難い。 以下、本発明について具体的に説明する。 本発明のアルコール代謝促進飲料は、アスパラギン酸をアルコール代謝促進の有効成分として含有する。さらに、ビタミンB1および/またはビタミンB6からなるビタミンB群を含有する。さらに、CoQを含有する。アスパラギン酸はトランスアミナーゼと呼ばれる酵素によって、オキザロ酢酸に変換され、更にリンゴ酸に変換されるが、この過程でNADHが酸化されてNAD+に変換され、この変換されたNAD+がさらにアルコール代謝を行うものと考えられる。 アルコール代謝促進飲料中には、アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸が含有されており、その含有量としては、飲料に対して0.02〜2%であるのが好ましく、更に好ましくは0.1〜1%である。アスパラギン酸の含有量が0.02%未満ではアルコール代謝が十分に得られないからであり、2%を超えると味が強すぎて、まずくなるからである。本発明のアルコール代謝促進飲料を摂取してアスパラギン酸を体外から補うことで、オキザロ酢酸の生成が増大し、上記のオキザロ酢酸とリンゴ酸の回路も増大することになる。これによって、NADHからNAD+への変換が増大され、アルコール代謝が促進されることになる。 このアスパラギン酸は、アスパラギンあるいはその塩も含むものであってよい。塩としては、塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。アスパラギン酸は、アスパラギン酸アミノフェラーゼという酵素の働きで、グルタミン酸のアミノ基がオキザロ酢酸に転移してできるアミノ酸で、豆類、特にもやしのように発芽しかけた豆類や砂糖だいこん、砂糖きび、アスパラガスなどに多く含まれている。このアスパラギン酸とアンモニア、アデノイド三リン酸にアスパラギン合成酵素が働くと、アスパラギンが合成される。また逆に、アスパラギンに酵素が作用すると、アスパラギン酸に変化する。 これらアスパラギン酸は、植物性タンバク質を、加水分解し、分離して得ることができる。工業的製造では発酵又は酵素法により得られる。 アルコール代謝促進飲料には、アルコール摂取により消失される栄養を補給するためのビタミンB1が含有されているのが好ましい。このビタミンB1は、C−C結合を切断するいくつかの反応の補酵素、チアミン2リン酸の前駆体で、エネルギー生産する糖質の代謝に不可欠なものであって、その含有量は、厚生省の食事摂取基準における成人の一日の所要量の1/3以上1倍以下の範囲、すなわち飲料1リットル中に0.35〜3.3mgが好ましく、更に好ましくは0.5〜1mgである。成人の一日の所要量の1/3の0.35mg/1l未満では栄養補強が十分に得られないからであり、3倍の3.3mg/1lを超えるとビタミン臭が目立つからである。 また、アルコール代謝促進飲料には、ビタミンB6が含有されているのが好ましい。このビタミンB6は、アスパラギン酸をオキザロ酢酸に変換するトランスアミラーゼの補酵素として働き、アミノ基転移を促進させることになる。これによって、添加されたアスパラギン酸をオキザロ酢酸に変換して、オキザロ酢酸を増大させる。この増大したオキザロ酢酸がリンゴ酸に変換される過程で、NADHからNAD+への変換がさらに行われる。そして、変換されたNAD+がアルコールの代謝に利用される。このビタミンB6の含有量は、飲料1リットル中に厚生省の食事摂取基準における成人の一日の所要量の1/3以上3倍以下の範囲、すなわち0.5〜4.8mgが好ましく、更に好ましくは1〜2mgである。成人の一日の所要量の1/3の0.5mg/1l未満では添加されたアスパラギン酸がオキザロ酢酸を生成するのに十分でないからであり、3倍の4.8mg/1lを超えると日常的に摂取するほどの量に相当しないからである。 また、アルコール代謝促進飲料には、さらにCoQが含有されているのが好ましい。このCoQは、2,3位にメトキシ基、6位にイソプレノイド基を有する1,4ベンゾキノン構造をした化合物であって、ユビキノンともいわれる。イソプレノイドの側鎖の長さは生物によって異なり、人間では10個のイソプレン単位を有することからCoQ10(ユビキノン10)と呼ばれている。CoQ10は、分子量が863.36で、融点が約48℃の黄色からだいだい色の結晶性の粉末で、においおよび味はない。エーテルに溶けやすく、光によって分解し、着色が強くなる。CoQ10は、高等動物において有効な補酵素であるが、イソプレノイドの側鎖の長さが10以外では高等動物以外の生物において有効な補酵素とされる場合もある。尚、CoQは、これらを含む総称であってよい。 CoQは、自然界においては、酵母、鯖、鰯、小麦胚芽、骨格筋肉、心臓に多く含まれ、熱水、含水アルコール、アセトン等の有機溶媒によって抽出することができる。工業的製造では一般的には発酵法、合成法がある。発酵法では酵母に発酵生産させ抽出、精製され、旭化成社、協和発酵社から市販されている。また、合成的には、植物葉中の成分を出発原料に、合成、精製され、日清ファルマ社、カネカ社から市販されている。 CoQは、ミトコンドリアの内膜に存在し、電子(e−)を伝達したり、水素イオン(H+)を膜間スペースに汲み出す役割を果たす補酵素であり、TCA回路(クエン酸回路)等で産生されたNADHやコハク酸が酸化されて放出される電子を伝達する。CoQを体外から補うことで、電子を伝達する補酵素のCoQが増え、ミトコンドリア電子伝達系が活性化され、ミトコンドリア内において、NADHからNAD+への変換が促進される。更に、電子伝達が活性化されるに伴い、水素イオンが膜電位に逆らって、膜間部への輸送が増大し、その結果、水素イオン濃度勾配が、膜間部とマトリックスに間に、ミトコンドリア内膜を隔てて生ずる。この水素イオン濃度勾配を利用してアデノシン三リン酸(以下、ATPと略する)の合成が促進される。これによって生体内のエネルギー産生が活性化されることになる。 CoQの含有量は、飲料1リットル中に10〜300mgであるのが好ましい。更に好ましくは30〜100mgである。10mg未満ではミトコンドリア電子伝達系の活性化が十分に得られないからであり、300mg超えると味が強すぎるからである。 アルコール代謝促進飲料は、エタノールを含有したものであってよく、具体的には、チューハイ、梅酒、カクテルであってもよい。これら酒類にアスパラギン酸等が含有されているので、飲酒と同時にアスパラギン酸等が補われ、アルコール代謝によって大量に発生するNADHは速やかにNAD+に変換される。このため、アルコール代謝を滞りなく進めることができる。その結果、アルコール代謝で発生した二日酔いの原因物質とされるアセトアルデヒドを速やかに消失することができ、二日酔い防止に役立つ。 アルコール代謝促進飲料は、甘みを調整するために、甘味料を含有していてもよい。甘味料は糖であってもよく、糖としては、砂糖、葡萄糖、果糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。あるいは、糖の代わりに、アスパラテーム、サッカリン、等の合成甘味料が添加されていてもよい。 アルコール代謝促進飲料は、クエン酸等の酸味料を含有していてもよい。酸味料としては、例えば、クエン酸、DL−リンゴ酸、L−酒石酸、乳酸、リン酸等が挙げられる。 アルコールは飲むとすぐにアセトアルデヒドに変換され、ついでALDHにより酢酸、アセチルCoAへと変換され、最後はクエン酸回路に入ってエネルギーを産生しながら二酸化炭素と水に分解されるが、クエン酸を体外から摂取することで、クエン酸が糖の分解酵素の働きを抑え、細胞内にたまっていた疲労物質乳酸をアセチルCoAへと変化させて、たまっていた乳酸をエネルギー源へと変えるので、乳酸が次々に解消され、疲労が回復することになる。 また、アルコール代謝促進飲料は、レモン、ライム、オレンジ等のシトラス油、オレンジ油等の香料を含有していてもよい。香料は天然香料であっても、合成香料であってもよい。 本発明は、アスパラギン酸を有効成分とするアルコール代謝促進剤が提供される。このアルコール代謝促進剤は、飲料であってもよく、飲料に対して0.02〜1%程度のアスパラギン酸を含有するのが好ましい。更には0.05〜2%含有するのがより好ましい。また、ビタミンB1および/またはビタミンB6からなるビタミンB群を飲料1リットル中に厚生省の食事摂取基準における成人の一日の所要量の1/3〜3倍含有されていてもよい。更にCoQを飲料1リットル中に10〜300mg含有されていてもよい。また、飲料には、上述の酸味料を含有することが好ましく、香料を含有していてもよい。 アルコール代謝促進剤は、錠剤、カプセル、粉末であってもよい。また、健康食品のようにゼリー状、スティック状、板状であってもよい。錠剤または粉末のアスパラギン酸高含有食品は、一つの容器から少量ずつ何回にも分けて使用できるのでアルコール代謝促進食品として、簡便に利用できる利点がある。アルコール代謝促進剤には、アスパラギン酸は1重量%以上、98重量%以下含まれることが好ましく、更に2重量%以上、80重量%以下含まれることが好ましい。例えば、約5重量%のアスパラギン酸を含むこともできる。 次に、本発明のアルコール代謝促進飲料を摂取したことによるアルコールの代謝について説明する。 一般に、エタノールは、ADH系、ミクロソーム・エタノール酸化系(以下、MEOSと略する)、およびカタラーゼ(過酸化水素分解)酵素系のような3つの独立した代謝経路を経て、酸化されてアセトアルデヒドになる、と理解されている。図1(「適正飲酒ガイドブック」(社団法人アルコール健康医学協会発行)より)に示されるように、エタノール代謝の中心的および主要なメカニズムは、補助因子としてNAD+を伴うADH系の反応である。ADH活性は、主として肝細胞の細胞質にあるが、他の組織、特に胃腸においても見られる。また、一般に、ADH系によるエタノールからアセトアルデヒドへの代謝は、NAD+からNADHへの還元を伴う。アルコールの代謝は、主にこのADHにより行われるが、一部として、ミクロソーム(小胞体)において、補助因子としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(以下、NADPと略する)を伴うMEOSとの反応でも行われる。尚、この補助因子としてNADPHを使用しエタノールおよび他の第1アルコールを酸化するシトクロムP450依存モノオキシゲナーゼは、誘導可能であり、且つエタノールに対しより高いミカエリス定数(Km)を有するので、MEOSは、慢性アルコール中毒およびエタノールの高濃度状態のときに、より重要な役割を果たし得る。 結果としてエタノールから生成されるアセトアルデヒドは、非常に有毒で、直ちに除去されるべきであり、これに対してはALDHが関連している。アセトアルデヒドからアセテート(酢酸)への転換には、NAD+の相伴う還元が必要である。従って、アセトアルデヒドを介しての、エタノールからアセテート(酢酸)への連続的代謝では、細胞質のNADH/NAD+状態が非常に重要である。 このように、ADHおよびALDHによるエタノール代謝は、細胞質のNAD+を消費し、よって、細胞のNADH/NAD+比が上昇する。上昇した細胞質のNADH/NAD+比は、組織における多くの生化学的変化を引き起こし得る。細胞質でのNAD依存デヒドロゲナーゼの全ての反応が影響を受けるため、比率の変化は、乳酸生成、脂肪酸の合成、およびアセトアルデヒド蓄積の増加をもたらし、高乳酸血症、高尿酸血症、低血糖症や太りすぎ、脂肪肝、高脂血症等の症状を引き起こす原因となる。この点からも、細胞のNADH/NAD+比を戻すためにNADHを酸化してNAD+に変換することが重要となる。 この変換は、図2(「アルコールと栄養」(日本栄養食料学会編)より)に示されるように、オキザロ酢酸がリンゴ酸に変換される過程で、NADHが酸化されてNAD+に変換されることによって行われる。このオキザロ酢酸は、アスパラギン酸がトランスアミナーゼによりアミノ基転移されて生成される。こうして生成したオキザロ酢酸は、ミトコンドリア内膜を移動出来ないので、リンゴ酸に変換されて、リンゴ酸としてミトコンドリア外からミトコンドリア内へ輸送されるリンゴ酸−アスパラギン酸シャトルに入る。このリンゴ酸−アスパラギン酸シャトルは、細胞質で生じたNADHの還元等量をミトコンドリア内に輸送し、ATP産生に利用しかつNAD+を変換するシャトル(往復輸送系)の一つで、細胞質に生じたNADHは直接ミトコンドリア内膜を通過できないので、その還元当量は間接的な方法で内部に運ぶ回路である。すなわち、NADHは細胞質のオキザロ酢酸を還元してリンゴ酸を生成する。このリンゴ酸はミトコンドリア膜を通過して、ミトコンドリア内でオキザロ酢酸に酸化される。オキザロ酢酸は膜を通過できないのでアスパラギン酸となって、ミトコンドリア外に運ばれ、さらに細胞質でオキザロ酢酸に戻りシャトルが完成する。これによって、総体してみると、細胞質のNADHがミトコンドリア内で酸化されることになり、アルコール代謝で生成されたNADHは酸化されてNAD+に変換されることになる。従って、この経路は、細胞質で使い尽くされたNAD+をNADHから変換するのに最も重要である。 ここで、アスパラギン酸を添加して体外から補うと、オキザロ酢酸の生成が増大し、細胞質内のオキザロ酢酸の濃度が上昇し、リンゴ酸への変換が増大することになり、リンゴ酸−アスパラギン酸シャトルが増加することになる。そして、オキザロ酢酸からリンゴ酸が生成される過程で行われるNADHからNAD+への変換が一層促進さる。その結果として、変換されたNAD+は、エタノールの更なる分解に使用されて、アルコールの代謝がさらに促進されることになる。この際に、トランスアミナーゼの補酵素の作用を果たすビタミンB6を添加すると、アスパラギン酸のアミノ基転移が促進され、添加により増加されたアスパラギン酸がオキザロ酢酸に変換されて、オキザロ酢酸がより一層増大することになる。その結果として、リンゴ酸−アスパラギン酸シャトルがより一層増大されるので、NADHからNAD+への変換がより一層促進され、アルコール代謝も更に促進されることになる。 また、リンゴ酸−アスパラギン酸シャトルにおいて、ミトコンドリア内で、リンゴ酸がオキザロ酢酸に戻される際に、リンゴ酸がミトコンドリア内のNAD+に電子を渡してNADHが産生される。このNADHは、受け取った電子を放出してNAD+に変換されるが、この電子がCoQに伝達されミトコンドリア電子伝達系で、順次エネルギーが低くなるような一連の酵素系(複合体I〜IV)の連鎖を経て、最終受容体である酸素(O2)に渡されて水(H2O)になる。すなわち、NADHとして運ばれた水素イオン(H+)は複合体Iから膜間部へ移動し、同時にCoQへ電子が伝達され、最終的に、シトクロムを経て電子が酸素(O2)に渡されて、マトリックス内の水素イオンと結合して水(H2O)が生成される。そして、水素イオンはCoQを介してミトコンドリアのマトリックスから膜間部に汲み出され、内膜を隔てて水素イオンの高度勾配が発生する。この水素イオン濃度勾配で生じる化学ポテンシャルを利用してATPが合成され、合成されたATPがエネルギー産生を活性化させる。 CoQを添加することにより、NADHから電子を受け取って伝達する役目の補酵素のCoQが増加するので、ミトコンドリア内の電子伝達系が活性化され、ミトコンドリア内でのNADHからNAD+への変換が促進される。これに伴って、リンゴ酸からNAD+への電子の受け渡しが活発になり、リンゴ酸−オキザロ酢酸シャトルが増大する。従って、添加されたアスパラギン酸、ビタミンB6がリンゴ酸−オキザロ酢酸シャトルに有効に利用されることになる。その結果、脂肪質内でのNADHからNAD+の変換がより一層促進される。また、ミトコンドリア内でも、電子伝達系が活性化されるので、ATPの合成が促進され、エネルギー産生が活性化される。 このように、アスパラギン酸を添加により増加させることで、リンゴ酸−アスパラギン酸シャトルが増大され、細胞質でのエタノールの分解を促進し、NAD+の変換サイクルを助長できる。このメカニズムは、飲酒後の組織においてエタノールレベルを低下させること、およびエタノール並びにアセトアルデヒド、または上昇した細胞質NADH/NAD+比のいずれかによるアルコール性損傷の防止に寄与する。 また、図3(「アルコールと栄養」(日本栄養食料学会編)より)に示されるように、アルコール代謝によって生じたNADHからNAD+への変換は、ジヒドロキシアセトンリン酸がα−グリセロリン酸に変換される過程でも行われる。NADHの高エネルギーの電子がα−グリセロリン酸に移動し、このα−グリセロリン酸がα−グリセロリン酸−ジヒドロキシアセトンリン酸シャトルに入り、ミトコンドリア内に輸送される。ミトコンドリア内でのα−グリセロリン酸からジヒドロキシアセトンリン酸への変換される際に、α−グリセロリン酸がFADに電子を渡し、FADH2が生ずる。このFADH2は電子をCoQに渡して、FADに戻る。一方、α−グリセロリン酸から変換されたジヒドロキシアセトンリン酸は、細胞質に拡散により移行し、元に戻り、α−グリセロリン酸−ジヒドロキシアセトンリン酸シャトルが完成する。これによって、総体してみると、細胞質のNADHがミトコンドリア内で酸化されることになり、脂肪質のNADHは酸化されてNAD+に変換されることになる。 尚、この際に、CoQが添加されることにより、ミトコンドリアにおいてα−グリセロリン酸からFADへの電子の受け渡しが活発になり、α−グリセロリン酸−ジヒドロキシアセトンリン酸シャトルが活性化されることになる。その結果、NADHからNAD+の変換が促進される。また、ミトコンドリア内では、電子伝達系によるATPの合成が促進され、エネルギー産生が活性化される。 以上、本発明のアルコール代謝促進飲料は、アルコールおよびアセトアルデヒドの代謝を促進し、組織内にそれらが残存する時間を短くするアルコールの代謝分解によって上昇した細胞質NADH/NAD+比をもとに戻する。それゆえ、二日酔いを防止することができる。また、組織損傷、NADH/NAD+比の変化によって引き起こされる代謝の非平衡状態を防止または軽減すること並びに、長期にわたるアルコール中毒による肝疾患および疾病を防止、緩和または軽減することができる。 以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。<実施例1> 醸造用95.5%アルコール76ml、55%果糖ぶどう糖液糖30g、クエン酸3g、アスパラギン酸1g、ビタミンB1、1.1mg、ビタミンB6、1.6mg、コエンザイムQ10、30mgに水を加えて1000mlに調製した。ついで、この調製した液に炭酸ガス2.3VOL含ませて、アルコール炭酸ガス入りアルコール7%の缶350mlのチューハイを作成した。<比較例1> 比較例として、実施例1において、アスパラギン酸、ビタミンB1、ビタミンB6、コエンザイムQ10を抜いた以外は同様にして、アルコール炭酸ガス入りアルコール7%の缶350mlのチューハイを作成した。 そして、年齢・性別についてランダムに選んだ被験者8人について、実施例の試験チューハイと比較例の対照チューハイとをそれぞれ3本を一時間かけて飲用してもらい、呼気中のアルコール濃度を経時的に測定し、その濃度推移を図4に示した。被験者8名の内4名は実施例の試験チューハイを飲用し、残りの4名は比較例の対照チューハイを飲用してもらった。被験者には、どちらが試験チューハイであるか判らないようにして供した。また、飲酒時にはおつまみ等のお酒以外のものの飲食はしていない。尚、呼気中のアルコール濃度は、北川式ガス検知器法で測定した。 図4に示すように、被験者の平均値を取ると、アスパラギン酸等を含有していない対照チューハイを飲用した被験者では呼気中のアルコールがゼロになるのに、4.5時間かかったのに対して、試験チューハイを飲用した被験者は一時間短い3.5時間で呼気中アルコールはゼロとなった。また、対照チューハイを飲用した被験者は4.5時間を経過した後も疲労感が残ったが、試験チューハイを飲用した場合では、疲れは残らなかった。肝臓におけるエタノールの代謝とそれに伴って生ずる代謝位相の変化を示す説明図である。ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD+)の変換に係る、リンゴ酸−オキザロ酢酸シャトルを示す模式図である。ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD+)の変換に係る、α−グリセロリン酸−ジヒドロキシアセトンリン酸シャトルを示す模式図である。本発明によるアスパラギン酸を含有したアルコール飲料と含有しないアルコール飲料についての飲酒後における呼気中のアルコール濃度の推移を示した図である。 アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸を含有するアルコール代謝促進飲料。 前記アルコール代謝促進飲料に対する前記アスパラギン酸の含有量が、0.02%以上2%以下である請求項1に記載のアルコール代謝促進飲料。 ビタミンB1および/またはビタミンB6からなるビタミンB群をさらに含有する請求項1または2に記載のアルコール代謝促進飲料。 前記アルコール代謝促進飲料1リットル中の前記ビタミンB群の含有量が、厚生省の食事摂取基準における成人の一日の所要量の1/3以上3倍以下である請求項3に記載のアルコール代謝促進飲料。 コエンザイムQをさらに含有する請求項1から4いずれか記載のアルコール代謝促進飲料。 前記アルコール代謝促進飲料1リットル中の前記コエンザイムQの含有量が、10mg以上300mg以下である請求項5に記載のアルコール代謝促進飲料。 エタノールをさらに含有する請求項1から6いずれか記載のアルコール代謝促進飲料。 アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸を含有するアルコール代謝促進剤。 飲料に、アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸を添加することにより、前記飲料にアルコール代謝促進効果を付与する方法。 【課題】アルコール代謝によって、大量に発生するHADHを速やかにNADに再生することによって、アルコール代謝経路を滞りなく進めることができるアルコール代謝促進飲料を提供する。【解決手段】アルコール代謝の促進に有効な量のアスパラギン酸を含有するアルコール代謝促進飲料であって、アルコール代謝促進飲料に対して0.02%以上2%以下のアスパラギン酸を含有させる。さらに、アルコール代謝促進飲料1リットル中にビタミンB1および/またはビタミンB6からなるビタミンB群を厚生省の食事摂取基準における成人の一日の所要量の1/3以上3倍以下含有させる。さらに、アルコール代謝促進飲料1リットル中にコエンザイムQを10mg以上300mg以下含有させる。【選択図】 なし


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