生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_皮膚常在菌の生態系バランス調整剤
出願番号:2005199481
年次:2007
IPC分類:A61K 33/06,A61K 8/19,A61K 8/00,A61K 33/14,A61P 17/00,A61P 17/16


特許情報キャッシュ

森 辰実 高宮 ます美 中江 岩和 JP 2007015983 公開特許公報(A) 20070125 2005199481 20050708 皮膚常在菌の生態系バランス調整剤 株式会社ノエビア 000135324 小川 篤子 594044059 森 辰実 高宮 ます美 中江 岩和 A61K 33/06 20060101AFI20061222BHJP A61K 8/19 20060101ALI20061222BHJP A61K 8/00 20060101ALI20061222BHJP A61K 33/14 20060101ALI20061222BHJP A61P 17/00 20060101ALI20061222BHJP A61P 17/16 20060101ALI20061222BHJP JPA61K33/06A61K7/00 BA61K7/00 WA61K33/14A61P17/00A61P17/16 1 OL 7 特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年5月23日 日本防菌防黴学会発行の「第32回 年次大会要旨集」に発表 4C083 4C086 4C083AB101 4C083AB102 4C083AB362 4C083AC112 4C083AD282 4C083CC01 4C083CC02 4C083DD23 4C083EE12 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA04 4C086HA17 4C086HA24 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA89 この発明は、皮膚常在菌の生態系バランス調整剤、すなわち、有益菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対しては殺菌作用を示さず、有害菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対しては殺菌若しくは増殖抑制作用を有する、皮膚常在菌の生態系バランス調整剤に関する。 健全な皮膚が有益な常在菌からなる生態系により保護されている。それら有益菌による作用は以下の通りである。(1)保湿成分を守り、乾燥肌を防ぐ。(2)紫外線吸収作用を有し、有害な紫外線から皮膚を守る。(3)活性酸素を分解し、老化を防ぐ。(4)有害菌の侵入を防ぎ、炎症を防ぐ。(5)線維芽細胞増殖作用を示し、シワを防ぐ。(6)表皮のpHを調整し、抵抗力を高める。 しかしながら、何らかの原因で有益な菌が減少,死滅してしまったり、バランスが崩れ有害菌の割合が多くなると、上記作用が発揮されなくなり、皮膚疾患を惹き起こすこともあった。そのためかかる有害菌を除去する目的で、抗菌剤や殺菌剤が皮膚に適用されてきた。 特に黄色ブドウ球菌は、嘔吐を伴う食中毒や各種膿瘍の原因となるグラム陽性菌である。これにより産生されるエンテロトキシン(腸管毒)は食中毒の原因となる他、エンテロトキシンBや毒性ショック症候群毒素のようにスーパー抗原として、アトピー性皮膚炎の増悪などアレルギー性疾患に関与するものが知られている。エンテロトキシンBはスーパー抗原として、抗原提示細胞によるプロセッシングを受けることなく、抗原提示細胞上の主要組織適合遺伝子複合体のクラスII分子と、T細胞受容体のVβ領域とに直接結合する特性を有し、そのスーパー抗原と結合する特定のVβを表現するT細胞群を一気に活性化して大量のサイトカインの産生を促し、生体の免疫反応に顕著な影響を与えるものと考えられている。黄色ブドウ球菌のスーパー抗原であるエンテロトキシンBやTSST-1は、皮膚のランゲルハンス細胞やマクロファージを刺激して、インターロイキン-1,腫瘍壊死因子,インターロイキン-12を産生させ、インターロイキン-12は活性化されたT細胞に皮膚ホーミングレセプターの皮膚リンパ球結合抗原(CLA)の発現を誘導する。 上記のように、黄色ブドウ球菌により産生されたエンテロトキシンが食中毒の他にアレルギー性疾患にも関与することが明らかになるにつれ、黄色ブドウ球菌に対し抗菌もしくは殺菌作用を有する薬剤のスクリーニングが活発に行われてきた。かかる薬剤として、最近ではマンネンタケ子実体傘部抽出物(特許文献1参照)、クローブ,オールスパイス,オレガノ等の抗菌性香辛料(特許文献2参照)、クジン抽出物(特許文献3参照)、ジャックフルーツ抽出物(特許文献4参照)、アルトカルピン及びソフォラフラバノンG(特許文献5参照)、キサントン誘導体(特許文献6参照)、カバノタケ抽出物(特許文献7参照)、キトサン誘導体(特許文献8参照)、光触媒活性を有する微粒子酸化チタン(特許文献9参照)、ステビア抽出物(特許文献10参照)、アルケニルイソチオシアナート化合物(特許文献11参照)、ホップ,レンギョウ,シナレンギョウ,チョウセンレンギョウ,トウキンセンカ,キンセンカ,スイカズラ,ウグイスカグラ,サルビア及びその変種,クチナシ及びその同属植物,クマザサ,イラクサ,ミヤマイラクサ,ヒキオコシ,クロバナヒキオコシより選択した1種又は2種以上の植物の抽出物(特許文献12参照)などが開示されている。 また、黄色ブドウ球菌の除去を目的とするN-アシルグルタミン酸塩を含有する洗浄剤(特許文献13参照)や、鉄結合型ラクトフェリンを含有する細菌性エンテロトキシン中和剤(特許文献14参照)も知られている。 しかしながら上記した技術は、ほとんどが黄色ブドウ球菌の静菌又は殺菌もしくは除去を図るもので、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis),バクテイオイズ属(Bacteroides属),エウバクテリウム属(Eubacterium属),連鎖状球菌(Streptococcus)属,ビフィズス属(Bifidobacterium属)といった皮膚や腸内における常在菌にも静菌,殺菌作用を及ぼしたり、これらを除去してしまうため、常在菌叢の変化をきたして、皮膚や腸のホメオスタシスに影響を及ぼし、日和見感染を招く危険性の生じることがあった。また、ラクトフェリンを主成分とするエンテロトキシン中和剤はタンパク質製剤であるため、安定な製剤を得る上で制約も多く、感作性の発現も危惧される。 そこで、健康な皮膚の常在細菌叢の代表菌である、表皮ブドウ球菌の生育よりも、病害菌として注目されている黄色ブドウ球菌の生育を選択的に阻害する物質のスクリーニングも行われており、例えば皮膚由来バクテリア、プロピオニバクテリウム・グラニュローサム菌から得られた抗菌性組成物(特許文献15参照)、ボタンピ、カンゾウ、ウーロン茶、ローズマリー、クララ、オオレン、オオバク、タイム、アロエ、ナンキンハゼ、マングーシ、冬虫夏草、センソウ、ミツガシワ、リョウブ、エンレイソウ、トウガラシから選ばれる植物抽出エキスの1種又は2種以上を配合することを特徴とする選択的抗菌組成物(特許文献16参照)などが開示されている。しかしながら、これらは天然物由来の成分であり、品質のばらつきが大きく商品化が困難であったり、有効量を得るには多量の適用が必要であるといった問題があった。特開平6−116162号公報特開平7−267873号公報特開平8−73364号公報特開平8−73368号公報特開平8−73372号公報特開平9−110688号公報特開平10−120589号公報特開平10−158305号公報特開平11−5729号公報特開平11−43443号公報特開平11−137949号公報特開2001−226280号公報特開平11−80781号公報特開平11−279076号公報特開平9−20638号公報特開2001−226213号公報 本発明の目的は,健康な肌に常在する表皮ブドウ球菌と皮膚疾患を持つ皮膚上に存在する有害な黄色ブドウ球菌を区別し、常在する有益な表皮ブドウ球菌の生育には影響を与えず、有害な黄色ブドウ球菌のみに抗菌作用を有することによって,アトピー性皮膚炎等のひづ疾患の治療及び予防に充分な効果を発揮する皮膚常在菌の生態系バランス調整剤を提供することにある。 本発明で挙げられる有害菌の黄色ブドウ球菌と、有益菌の表皮ブドウ球菌は、分類学上かなり類似した菌であり、一般的にこの両者を区別して殺菌又は発育抑制することは、極めて難しい。しかしながら、本発明者は、鋭意検討の結果、2000種以上の外用剤有効成分から塩化マグネシウム若しくはマグネシウムイオンに、有害菌の黄色ブドウ球菌の生育だけを抑制して、有益な表皮ブドウ球菌の生育には影響を与えないことを見いだし、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明における皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、塩化マグネシウム若しくはマグネシウムイオンを有効成分として配合することを特徴とする。 無機塩の皮膚常在菌の生態系バランス調整効果について、以下の通り測定を行った。[被検物質] 市販の塩化マグネシウム(試薬 級)、硫酸マグネシウム(試薬 級)、塩化ナトリウム(試薬 級)、塩化カリウムを被検物質とした。[供試菌株] 有害菌として、特にアトピー性皮膚炎の増悪の原因とされる黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:NBRC No.13276)を、有益菌として表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis:NBRC No.12993)を採択した。[選択的抗菌性の評価] 24穴マイクロプレートに、普通ブイヨン培地(日水製薬製)で所定濃度に希釈した被検物質溶液1mLを投入する。続いておよそ105cfu/mLに調整した黄色ブドウ球菌0.5mLと、表皮ブドウ球菌0.5mLを同時に滴下した。37℃で8時間浸透培養後、細菌検出用寒天培地(SCDLP、日水製薬製)に希釈塗抹し、各菌の生菌数を測定した。結果を表1に示す。 表1に示した通り、塩化ナトリウム、塩化カリウムは、有害菌である黄色ブドウ球菌に対する抗菌力は小さいが、有益菌である表皮ブドウ球菌に対し、高い抗菌作用を示した。これに対し、マグネシウムイオンを含有する塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムは、表皮ブドウ球菌に対する抗菌作用は塩化ナトリウムや塩化カルシウムよりはるかに小さいものであった。また、黄色ブドウ球菌に対しては、塩化マグネシウムにおいて高い抗菌作用が認められた。 以上のことより、マグネシウムイオンは、表皮ブドウ球菌に対し、温和な抗菌作用を発揮すること、また塩化マグネシウムは黄色ブドウ球菌に対し高い抗菌作用を発揮することが示された。 すなわち、本発明の皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、健康な肌に常在する表皮ブドウ球菌と皮膚疾患を有する肌に存在する黄色ブドウ球菌を区別し、有益な表皮ブドウ球菌の生育には影響を与えず、有害な黄色ブドウ球菌にのみ抗菌効果を有する。また本発明の皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、上記選択的な抗菌効果をもつもので、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の治療及び予防に充分な効果を発揮することができる。 本発明において用いる塩化マグネシウムとしては、純度95%以上の精製されたものが使用できる。また、マグネシウムイオンとしては、水溶性の観点から塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムを溶解させて用いるのが便利であるが、好ましくは塩化マグネシウム由来のものを用いることが、黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用の点から好ましい。 本発明における皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、そのまま皮膚に適用することができる。また必要に応じて油性成分,界面活性剤,保湿剤,顔料,紫外線吸収剤,抗酸化剤,香料,防菌防黴剤等の一般的な医薬品及び化粧料用原料や、皮膚細胞賦活剤,抗炎症剤,美白剤等の生理活性成分をも含有させることができる。さらに、ローション剤,乳剤,ゲル剤,クリーム剤,軟膏剤,粉末剤,顆粒剤等、種々の剤型で提供することができる。また、化粧水,乳液,クリーム,美容液,パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション,メイクアップベースクリーム等の下地化粧料、乳液状,油性,固形状等の各剤型のファンデーション,アイカラー,チークカラー等のメイクアップ化粧料、クレンジングクリーム,クレンジングローション,クレンジングフォーム,洗顔石鹸,ボディシャンプー等の皮膚洗浄料、ヘアーシャンプー,ヘアーリンス,ヘアートリートメント等の毛髪用化粧料等としても提供することができる。 本発明に係る皮膚常在菌の生態系バランス調整剤は、低刺激性で毒性及び感作性を示さないため、特に皮膚において局所的に外用するのに適しており、アトピー性皮膚炎の増悪など、スーパー抗原の関与するアレルギー性疾患の増悪防止又は症状緩和や、に有用である。 表2に示した処方にて本発明の実施例1及び比較例1に係るゲル剤を調製した。ゲル剤は全成分を混合,溶解,均一化することにより調製した。 本発明の上記実施例1及び比較例1について臨床試験を行った。掻痒感及び皮疹等の皮膚症状を呈するアトピー性皮膚炎患者10名を1群とし、各群に実施例及び比較例をブラインドにて、実施例1及び比較例1について1日2回、3日間患部に塗布させて、掻痒感及び皮膚症状の改善状況を評価した。掻痒感及び皮膚症状の改善状況は、使用開始前の状態に比べて、それぞれ「改善:3点」,「やや改善:2点」,「変化なし:1点」,「悪化:0点」の4段階にて評価し、評価店の平均値にて、表2に示した。 表2に示した通り、本発明の実施例1使用群においては、掻痒感、皮膚症状ともやや改善以上の良好な効果を発揮していた。これに対し、比較例1使用群では、明確な改善を示したパネラーは存在せず、約半数のパネラーで変化が認められなかった。塩化マグネシウム若しくはマグネシウムイオンを有効成分とする、皮膚常在菌の生態系バランス調整剤。 【課題】 有益菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対しては殺菌作用を示さず、有害菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対しては殺菌若しくは増殖抑制作用を有する、皮膚常在菌の生態系バランス調整剤を提供する。【解決手段】 塩化マグネシウム若しくはマグネシウムイオンを有効成分とする、皮膚常在菌の生態系バランス調整剤。【選択図】 なし


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