タイトル: | 公開特許公報(A)_間質性膀胱炎の治療薬 |
出願番号: | 2005188313 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 31/194,A61P 13/10 |
荒木 徹 JP 2006045200 公開特許公報(A) 20060216 2005188313 20050628 間質性膀胱炎の治療薬 荒木 徹 504288155 森 廣三郎 100075960 森 寿夫 100114535 中務 茂樹 100113181 荒木 徹 JP 2004219428 20040628 A61K 31/194 20060101AFI20060120BHJP A61P 13/10 20060101ALI20060120BHJP JPA61K31/194A61P13/10 9 OL 6 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA34 4C206KA12 4C206MA01 4C206MA02 4C206MA03 4C206MA04 4C206MA72 4C206NA05 4C206NA06 4C206NA07 4C206NA10 4C206NA14 4C206ZA81 本発明は、間質性膀胱炎ならびに間質性膀胱炎類似の症状を呈する膀胱痛症候群やBCG膀胱炎(以下「間質性膀胱炎等」という。)の内服治療剤からなる間質性膀胱炎の新しい治療薬に関する。 間質性膀胱炎(interstitial cystitis,IC)は、慢性、進行性、原因不明の膀胱の炎症である。その患者数も決して少なくはなく、性別・年齢を問わず発症し、患者数は我国では25万人以上、米国では100万人以上と推定されている。間質性膀胱炎は膀胱に尿が溜まると膀胱に強い痛みを生じ、排尿すると軽減する。進行するにつれて、膀胱が萎縮し膀胱容量が減少する。それらの結果、患者は著しい頻尿となり、毎日数10回もの頻尿と膀胱および膀胱周辺の激しい痛みに苦しむ。間質性膀胱炎の原因は不明である。通常の膀胱炎と異なり細菌感染はなく、結石・腫瘍など明らかな疾患も認められない。上記症状の原因は膀胱粘膜構造の異常変化に起因すると推察されているが、なぜその異常が生じるのかは、未だ解明されていない。 その治療は、薬剤内服、薬剤の膀胱内注入療法、膀胱水圧拡張、電気刺激治療、高度の萎縮膀胱に対する外科的治療などが行われる。患者の精神的・身体的負担が少ない内服薬治療には、抗うつ剤(アミトリプチリン)、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ステロイド剤、重曹等が使用されている。 特許文献でみてみると、例えば、特許文献1には、オキシブチニン、ドクソルビシン、イミプラミンなどを活性物質として粘液接着性のゲルに担持させた間質性膀胱炎の治療薬が記載され、特許文献2には、ヒアルロン酸の特定分子量範囲のものが間質性膀胱炎に有効であるとの記載がみられる。また、特許文献3には、その必要のある哺乳類に1日当たり30−150mgの有効量のデュロキセチンを投与することを含んでなる哺乳類の間質性膀胱炎又は尿道症候群の治療または予防方法が提案されている。 しかし、これらの治療法はいずれも多くの患者に共通する有効性を欠き、また膀胱内注入療法等は患者に苦痛を与える欠点がある(非特許文献1、2参照)。こうした現状から、より有効な間質性膀胱炎の治療法、できれば上記症状に苦しむ患者の身体的・精神的・経済的負担が少ない内服治療薬の開発が求められている。また、間質性膀胱炎類似の症状を呈する膀胱痛症候群やBCG膀胱炎に対しても同様である。BCG膀胱炎は、最近注目されはじめた疾患であり、結核予防薬としてのBCGを膀胱癌の再発予防治療として頻繁に用いられてから、しばしば発生する副作用の弊害が問題となってきた。 クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウムあるいはこれらとクエン酸との配合製剤であるウラリット−U(日本ケミファ株式会社の登録商標)及びウラリット(同社の登録商標)錠は、痛風、高尿酸血症における酸性尿ならびにアシドーシスの改善剤として、我国を含め世界中で広く使用されている薬剤である。(非特許文献3参照)。間質性膀胱炎患者の一部には尿をアルカリ性にすると症状が改善されることは一部で知られていたが、これらウラリット−U(登録商標)又はウラリット(登録商標)錠が間質性膀胱炎等の治療剤として有効であることは全く知られてはいなかった。特表2001−519787公報特表平10−513476号公報特表2000−506863公報日本間質性膀胱炎研究会編 間質性膀胱炎−疫学から治療まで− 医学図書出版、2003年排尿障害プラクティス 特集 間質性膀胱炎 11巻1号 7−62、2003年上田泰ほか 尿アルカリ化剤CG−120(ウラリット−U(登録商標))の臨床評価 臨床評価9巻、421−433、1981年 しかしながら、以上の技術によれば、いずれの治療法も多くの患者に共通する有効性を欠き、また膀胱内注入療法等は患者に苦痛を与える欠点がある(非特許文献1、2参照)。この現状から、より有効な間質性膀胱炎の治療法、できればその症状に苦しむ患者の身体的・精神的・経済的負担が少なく安全な内服治療薬の開発が求められている。 そこで、本発明は、間質性膀胱炎等の著しい頻尿と膀胱ならびに膀胱周辺の激しい痛みの症状に苦しむ患者に対して、身体的・精神的・経済的負担が少なく、しかも安全な、内服治療剤の開発を目的とし、発売後すでに20年を経過してその安全性が十分に確認されているクエン酸塩を有効成分とするウラリット−U(登録商標)とウラリット(登録商標)錠を基本薬剤に用いることにより、間質性膀胱炎等に有効かつ安全な治療薬を提供することを課題とする。 以上の課題を解決するために、本発明は、尿をアルカリ化することが一部の間質性膀胱炎患者の症状を改善することにヒントを得て、クエン酸のアルカリ塩を有効成分とする薬剤が間質性膀胱炎等に有効かつ安全な治療薬であることをみいだし、本発明を完成した。 すなわち、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムを主剤とする、内服治療剤からなる間質性膀胱炎の治療薬である。 また、本発明は、更にこれらクエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムを主剤とする、間質性膀胱炎類似の症状を呈する膀胱痛症候群の内服治療剤としても有効であることをみいだしたのである。同様に間質性膀胱炎類似の症状を呈するBCG膀胱炎にも有効であることが認められた。 更に、これらクエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムなどのアルカリ塩にクエン酸を添加したものを主剤とする内服治療剤からなる間質性膀胱炎又は間質性膀胱炎類似の症状を呈する膀胱痛症候群やBCG膀胱炎の内服治療剤の治療薬である。 ここで、クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウム2成分系のモル比が1:0.2〜4で効果があり、好ましくは、モル比が1:0.4〜3、更に好ましくは、モル比が1:0.5〜2である。クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムのモル比が1:0.2〜4の範囲より外れる、すなわち、クエン酸カリウムが多ければ、血液中のカリウムが増え、高度の腎障害者には高カリウム血症を生じて好ましくない。逆にクエン酸ナトリウムが多いと、血液中のナトリウムが増えて血圧を上げる原因となり、高血圧患者には好ましくない結果をもたらす。 クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びクエン酸の3成分系では、これらのモル比が1:0.2〜4:0.1〜2で効果があり、好ましくは、モル比が1:0.5〜2:0.3〜3、更に好ましくは、モル比が1:0.2〜3.5:0.3〜3である間質性膀胱炎類似の症状を呈する膀胱痛症候群の内服治療剤からなる間質性膀胱炎の治療薬である。内服治療剤は種々の形態で投与できるが、通常の粉剤、錠剤、又はシロップ剤の形を、目的に応じて自由に選択実施できる間質性膀胱炎等の治療薬となっている。これら2成分系、3成分系及びこれらを含有する市販の薬剤を総称して「クエン酸薬剤」という。 尿アルカリ化に用いられている重曹は1日6−10g以上という大量の内服を必要とする。そのため、内服しにくく、さらにナトリウムを多量に含有するため、血圧上昇を招きやすいので、高血圧患者には適さない(非特許文献3参照)。 クエン酸塩製剤は、筋肉細胞におけるTCAサイクル(グリコーゲンから乳酸への代謝)で蓄積した乳酸による筋肉疲労を防ぐ効果が期待できる。したがって、クエン酸塩製剤は、単に尿のアルカリ化のみならず、これと同様のメカニズムが膀胱筋細胞にも作用して、間質性膀胱炎等の症状改善及び治癒に貢献するのではないかと思われる。 これまで、間質性膀胱炎等の著しい頻尿と膀胱ならびに膀胱周辺の激しい痛みの症状に苦しむ患者は、身体的・精神的・経済的負担が多くあったのが、簡単な内服治療剤のウラリット−U(登録商標)とウラリット(登録商標)錠等を基本薬剤に用いることにより、間質性膀胱炎に有効かつ安全な治療薬を提供することができた。 ウラリット−U(登録商標)及びウラリット(登録商標)錠は、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウムあるいはこれらとクエン酸との配合製剤であり、痛風、高尿酸血症における酸性尿ならびにアシドーシスの改善剤として、我国を含め世界中で広く使用されている薬剤である。たしかに、間質性膀胱炎患者の一部には尿をアルカリ性にすると症状が改善されることは一部で知られていたが、ウラリット−U(登録商標)又はウラリット(登録商標)錠が間質性膀胱炎の治療剤として有効であることは全く知られてはいなかったのが、本発明によって、その薬効が立証され、有効成分としての特定範囲も明らかになった。 クエン酸製剤としてのウラリット−U(登録商標)及びウラリット(登録商標)錠は、発売後すでに20年を経過してその安全性が十分に確認されているクエン酸塩を有効成分とするから、本発明の内服剤も安全性においては確実に保証されているものである。クエン酸製剤として同様の痛風、高尿酸血症における酸性尿ならびにアシドーシスの改善剤としては、ウタゲン(高田製薬株式会社登録商標)、トロノーム(大原製薬登録商標)、ピナロック(メルクホエイ社登録商標)があり、いずれも有効に作用するものである。 以下、本発明の間質性膀胱炎の治療薬の臨床例について、具体的に説明する。 本発明で使用する間質性膀胱炎等の新しい内服治療薬であるクエン酸製剤としての、ウラリット−U(登録商標)およびウラリット(登録商標)錠の成分は下記の通りである。 ウラリット(登録商標)錠は1錠中に下記成分を(乾燥重量として)含有する。 クエン酸カリウム 231.5mg (日局)クエン酸ナトリウム 195.0mgクエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムのモル比は1:0.844である。 ウラリット−U(登録商標)は、1g中に下記成分を(乾燥重量として)含有する散剤である。 クエン酸カリウム 463mg (日局)クエン酸ナトリウム 390mg 従って、クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムのモル比は1:0.842で両者共に近い成分割合である。 これらは市販後20年を経ており、その安全性は日本国内外で広く確認されている。 [実施例1] 間質性膀胱炎患者17人に患者の同意を得て、他の治療を変更することなく、ウラリット−U(登録商標)またはウラリット(登録商標)錠を1−2ヶ月間、1日3−4回経口追加投与したところ、15名(88%)の患者の間質性膀胱炎特徴的症状である痛み・頻尿がともに改善した。表1にその結果を示す。 全例、有害事象は認めなかった。症状改善例の半数は現在まで既に数年間、本剤を継続服用しているが、それらにも有害事象は認めていない。また、間質性膀胱炎の外に治療中の疾患をもつ患者もいたが、本剤の内服がそれら疾患に影響することもなかった。 [実施例2] 膀胱痛症候群患者の10例にも、上記のウラリット−U(登録商標)、ウラリット(登録商標)錠は有効であった。結果を表2に示す。 [実施例3] BCG膀胱炎患者の9例にもウラリット−U(登録商標)、ウラリット(登録商標)錠は有効であった。結果を表3に示す。 以上の結果から、ウラリット−U(登録商標)、ウラリット(登録商標)錠は間質性膀胱炎等に対する安全、且つ、新たな内服治療薬として大変有用であることが判明した。その他、3成分系で、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムクエン酸の成分比率が、2:2:1のものや、1:1.5:1.5についても約70%以上の著明改善が認められた。これらのクエン酸製剤の安全性に関しては、尿アルカリ化剤・アシドーシス改善剤として発売後既に20年、我国内外で広く使用され安全性が確認されている。 市販のウラリット−U(登録商標)、ウラリット(登録商標)錠の投与量は、1日3−6gまたは6−12錠を3−4回に分けて服用するのが一般であるが、症状の程度によって内服量は適宜加減される。間質性膀胱炎に対するクエン酸製剤の投与量は1日3−4gの3−4分服で十分な効果を発揮する。服用を続けるうち、症状が改善すれば1日1−2gの服用で十分となる患者もあり、中には服薬を必要としなくなる患者や治癒した患者もある。膀胱痛症候群、BCG膀胱炎患者に対しても同様であった。 本発明の間質性膀胱炎等のクエン酸製剤は内服薬なので、これまで、重い症状に対応していた膀胱内注入療法や外科的療法のような苦痛を患者に与えない。加えて、間質性膀胱炎の他の治療剤・治療法との併用も可能である等の特徴的有用性をも併せ持つ。従って、本発明は、間質性膀胱炎に苦しむ多くの患者を救う新治療薬として大いに期待できる。また、膀胱痛症候群患者やBCG膀胱炎を救う新治療薬としても期待できる。クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムを主剤とする、内服治療剤からなる間質性膀胱炎の治療薬。クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムを主剤とする、間質性膀胱炎類似の症状を呈する膀胱痛症候群の内服治療剤からなる間質性膀胱炎の治療薬。クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムを主剤とする、間質性膀胱炎類似の症状を呈するBCG膀胱炎の内服治療剤からなる間質性膀胱炎の治療薬。クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びクエン酸を主剤とする、内服治療剤からなる間質性膀胱炎の治療薬。クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びクエン酸を主剤とする、間質性膀胱炎類似の症状を呈する膀胱痛症候群の内服治療剤からなる間質性膀胱炎の治療薬。クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びクエン酸を主剤とする、間質性膀胱炎類似の症状を呈するBCG膀胱炎の内服治療剤からなる間質性膀胱炎の治療薬。クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムのモル比が1:0.2〜4である請求項1〜3のいずれか記載の間質性膀胱炎の治療薬。クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びクエン酸のモル比が1:0.2〜4:0.1〜2である間質性膀胱炎類似の症状を呈する膀胱痛症候群の内服治療剤からなる請求項4〜6のいずれか記載の間質性膀胱炎の治療薬。内服治療剤が、通常の粉剤、錠剤、カプセル剤又はシロップ剤である請求項1〜8のいずれか記載の間質性膀胱炎の治療薬。 【課題】 間質性膀胱炎等の著しい頻尿と膀胱ならびに膀胱周辺の激しい痛みの症状に苦しむ患者に対して、身体的・精神的・経済的負担が少なく、しかも安全な、内服治療剤を提供する。【解決手段】クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム又はクエン酸を主剤とするクエン酸製剤、例えばウラリット−U(登録商標)とウラリット(登録商標)錠を間質性膀胱炎等の有効かつ安全な内服治療剤とする。このクエン酸製剤は間質性膀胱炎のみならず、膀胱痛症候群やBCG膀胱炎にも有効である。【選択図】 なし