生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_合成樹脂エマルジョン中の酸基分布測定法
出願番号:2005186331
年次:2007
IPC分類:G01N 27/416


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冨士川 亘 山口 征志 中村 勝義 JP 2007003454 公開特許公報(A) 20070111 2005186331 20050627 合成樹脂エマルジョン中の酸基分布測定法 大日本インキ化学工業株式会社 000002886 河野 通洋 100124970 冨士川 亘 山口 征志 中村 勝義 G01N 27/416 20060101AFI20061208BHJP JPG01N27/46 356G01N27/46 341M 7 OL 10 本発明は、合成樹脂エマルジョンの特性を解析するのに重要な合成樹脂エマルジョン中の酸基分布の測定法に関する。従来、合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を測定する方法として、全酸量を測定した後、水相の酸成分を半透膜にて分離測定したり、エマルジョンの粒子部分を分離測定したりする方法があるが、非常に煩雑な操作で、分析する前の前処理に長時間を必要とし、手分析で精度が低くなる等の問題を有する。 また、電導度滴定を用いたJ.Henの方法(J.Colloid Interface Sci.,vol.49,425−432,1974)があり、また、共重合体ラテックスの酸量を測定した例がある(例えば、特許文献1参照。)。ポリスチレンラテックスのような堅いエマルジョン粒子に対する測定に限定され、ジエン系を含むSBRラテックスのような比較的柔らかいエマルジョン粒子に対しては、測定誤差が大きく、また再現性も悪く適切な方法ではない。さらに、被測定液内に滴定溶液が滴下されたとき、電導度滴定法は被測定溶液内の液態変化に鈍感で、電導度値が安定するのに時間がかかる。そのため、単位時間あたりの滴定数が限られ、一度の測定で得られるデータ数が少なく、測定精度が低下した。特開2002−53602号公報(実施例) 本発明の目的は、合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を精度良く測定する方法を解決することである。 エマルジョン粒子の堅さによらず、合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を精度良く測定するという課題を解決するため、鋭意検討の結果、以下の知見を得た。1.電位差滴定は、電導度滴定と比較して、滴定による液態変化に対し敏感である。2.そのため、電位差滴定法は滴定溶液の濃度を低くし、単位時間あたりの滴定回数を増やすことができ、測定精度を上げることができる。 前記2点の知見から、自動化された電位差滴定を用い、合成樹脂エマルジョンに濃度既知の無機塩基溶液を適当量加え、被測定液をつくり、濃度既知の無機酸溶液を用いて前記被測定液を逆滴定することで、前記課題の解決方法を見出した。 即ち、本発明は、酸基含有合成樹脂エマルジョンに濃度既知の無機塩基溶液を所定量加え、pHがアルカリ側に調整された被測定液を得た後、無機酸溶液を用いて前記被測定液を電位差滴定して、酸基含有合成樹脂中の酸基分布を算出することを特徴とする合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を測定する方法を提供する。 本発明により、自動化された電位差滴定装置を用い、濃度既知の無機塩基を適当量加え、合成樹脂エマルジョン中の酸基分布測定法を開発し、再現性、及び分析精度に優れた効果を得た。また、測定試料の合成樹脂エマルジョンに添加する濃度既知の無機塩基溶液量によって、エマルジョン粒子表面酸基量と水相酸基量の測定が可能となり、さらに、エマルジョン中の合成に用いた全酸基量の測定が可能となった。さらに、また、市販の自動化された電位差滴定装置を用いることで、測定試料の前処理は人手をようするものの、それ以後の滴定操作、終点の決定、データ処理、レポーティング等は自動化でき、簡単な操作で敏速、かつ精度良く測定できる合成樹脂エマルジョン中の酸基分布測定法を提供するものことができる。 本発明において、測定対象となる試料合成樹脂エマルジョンとしては、酸基を有するアクリルエマルジョン、アクリルスチレンエマルジョン、ブタジエン系、イソプレン系、クロロプレン系等の合成ゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン、酢酸ビニルアクリルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニルエマルジョン、塩化ビニル樹脂エマルジョン、塩化ビニリデン樹脂エマルジョン等の乳化重合型のエマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、フェノキシ樹脂エマルジョン、フェノール樹脂エマルジョン、アルキッド樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、フッ素樹脂エマルジョン、ポリオレフィン樹脂エマルジョン等、或いはこれらの共重合樹脂エマルジョン、ハイブリッド樹脂エマルジョン、変性樹脂エマルジョン等がある。 また本発明において、測定対象となる酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、サルフェート基、リン酸基等がある。 前記の試料の採取量は、試料が含有する酸基の濃度によるところが大であるが、被測定液として試料が固形分として0.5%から60%が好ましく、特に、3%から10%が好ましい。具体的には、固形分3〜10gの試料と水性媒体30〜300gが好ましい。 滴定は、電位差自動滴定装置を用いて行うのが好ましい。 データ処理は、得られた滴定データをXY座標のX軸に酸滴下量ml、Y軸にpHをとってXY座標を作成し、図1とすると3つの変曲点、X座標の小さい方から順にP1、P2、P3および滴定開始点P0、滴定終了点P4を有する滴定曲線が得られる。この4つの変曲点から解析することもできるが、変曲点が不明確なことが多いので、X軸に滴下量ml、Y軸に△E/mlをとってXY座標を作成し、滴定の微分曲線図2を得る。 図2には図1と同様に、しかも明確な3つの変曲点P1、P2およびP3が得られる。X座標がP0〜P1まで、P1からP2まで、P2からP3までおよびP3〜P4までの4区分し、変曲点P1、P2およびP3の値を自動印字される数字を読み、X座標即ち滴下量(A1、A2、A3、A4)を図1に転記する。 そこで、A1はエマルジョン中の酸基の中和に寄与していない無機塩基を滴定するに要する滴定量である。(A2−A1)はエマルジョン粒子表面酸基を中和するに使われている中和剤塩基を滴定するに要する滴定量である。(A3−A2)はエマルジョン中の強い酸即ち水相中の酸を中和するに使われている中和剤塩基を滴定するに要する滴定量である。(A3−A1)はエマルジョン粒子表面酸基量と水相酸基量を合わせた滴定量である。つまり、P1〜P2はエマルジョン粒子表面酸基量、P2〜P3はエマルジョン内水相酸基量、P1〜P3はエマルジョン酸基量(エマルジョン粒子表面酸基量と水相酸基量の合計値)を示す。また、滴定に用いた酸の濃度を基にmeq/gに換算し、酸基量とする。前記の測定試料に添加する濃度既知の無機塩基添加量によって、測定される酸基量が異なる。これは、無機塩基溶液を添加し、エマルジョン粒子表面酸基と水相酸基が中和されたあと、過剰の無機塩基によってエマルジョン粒子内部酸基をも中和され、エマルジョン粒子表面に酸基が引き出されることにより、エマルジョン粒子表面酸基として測定されるからである。 そこで、エマルジョン粒子内部酸基が測定されない条件を探索するため、濃度既知の無機塩基添加量を変化させたところ、次のようなpH―エマルジョン酸基量の関係のグラフが得られる。このグラフによると、pH11から11.6の間で、pHの変化に対するエマルジョン酸基量の変化率が小さく、エマルジョン粒子内部酸基が測定されない条件である。一般的に、エマルジョン粒子内部酸基が測定されない条件とは、pH―エマルジョン内酸基量のグラフから、pHが0.1上昇したときの酸基量の変化率が0.02の場合とし、さらに変化率が0.01以内のときが好ましい。この条件において、エマルジョン粒子表面酸基量と水相酸基量の測定が可能となる。 さらに、大過剰の無機塩基を添加したとき、エマルジョン粒子内部の酸基がエマルジョン粒子表面に引き出され、エマルジョン中の全酸基量を測定することが出来る。大過剰の無機塩基量とは合成時に用いた酸基量の1当量以上が好ましく、さら20倍当量が好ましい。 ビーカー等の滴定容器に上記試料を精秤採取後、水性媒体にて希釈する。ビーカー等の測定容器はイオン性の物質が溶出しないプラスチック等、例えばポリエチレン製の容器が好ましい。 等量点が不明確な場合は被測定試料にアミンを添加することで、等量点が明確になり、測定精度を上げることができ、アミンとしては、アンモニア、エタノールアミン、トリエチルアミンが好ましい。 添加する無機塩基としては、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムが好ましいが、とくに水酸化カリウムが好ましい。 滴定に使用する無機酸としては、塩酸または硫酸が好ましいが、とくに硫酸が好ましい。 加える無機塩基の濃度は0.1〜2モル/リットル(以下、mol/lと記す。)が好ましいが、特に0.5〜1mol/lが好ましい。滴定に使用する無機酸の濃度は0.1〜2mol/lが好ましい。次に実施例によって、本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の「部」、「%」はそれぞれ重量部、重量%を示す。 測定方法を以下に示す。 被検サンプルの固形分3gをポリスポイトにて300mlのポリエチレン製ビーカーに秤量して、秤量値を小数点第4位(0.0001gレンジ)まで正確に記録する。次いで、そのポリエチレン製ビーカー内にイオン交換水を100gになるまで注入する。さらに、撹拌子を入れて、マグネチックスターラーにセットし撹拌する。そして、電極と温度保証電極を浸す。滴定ノズルの先は液面より高く、滴定試薬が電極にかからないように電極から2センチ位離す。表5に示したメソッドファイルを指定する。試薬1mol/l水酸化カリウム水溶液を適当量ピペットで正確に注入する。10分間撹拌後、パソコンより電位差自動滴定装置に滴定開始を指示する。測定終了後、得られた滴定曲線に自動印字された当量点の滴定量からmeq/gを算出する。 合成例1 撹拌装置を備えた耐圧重合容器に、水90部、ニューコール271A〔アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、日本乳化剤(株)製〕0.7部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.15部、ブタジエン29部、スチレン68部、アクリル酸3部、t−ドデシルメルカプタン0.5部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度を60℃に昇温し、重合容器内温度が60℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.15部を添加して反応を開始させた。1時間後、反応温度58℃に変更し3時間反応させ、その後75℃で2時間反応させた。(2時間過硫酸アンモニウム0.2部を添加して、80℃に昇温し、さらに7時間反応させ、冷却を行なって重合率99.3%のSBRラテックス(3)を得た。 合成例2 アクリル酸3部をアクリル酸1部とした以外は、合成例1と同様にしてSBRラテックス(1)を得た。 合成例3 アクリル酸3部をアクリル酸2部とした以外は、合成例1と同様にしてSBRラテックス(2)を得た。 合成例4 アクリル酸3部をアクリル酸4部とした以外は、合成例1と同様にしてSBRラテックス(4)を得た。 合成例3 アクリル酸3部をアクリル酸5部とした以外は、合成例1と同様にしてSBRラテックス(5)を得た。 実施例1 前記SBRラテックス(3)についてし、電位差滴定法で測定を行った。1mol/l−水酸化カリウム水溶液の添加量を変化させ、測定直前のpHを横軸に、測定された酸基量の合計値を縦軸にとり、図5を得た。このグラフから明らかなようにpHが11.5以下であるとき、測定される酸基量が一定になる。これは、前記で述べたように、エマルジョン粒子内部酸基が中和されない条件である。 次いで、1mol/l−水酸化カリウム水溶液を添加してpH11.3に調整したSBRラテックス(3)を本発明の電位差滴定を用いた酸基分布測定法を用い測定を行った。得られた結果を表1に示す。同時に、同じ方法で測定を繰り返して、測定時のばらつきを調べた。得られた結果を表2−1に示す。 次いで、エマルジョン中の全酸基量を測定するため、1mol/l―水酸化カリウム水溶液を過剰に添加した。横軸に添加した1mol/l−水酸化カリウム水溶液量、測定された酸基の合計値を縦軸にとり関係を図6に示した。図6の各測定点の測定値を表4に示す。図6と表4より、1mol/l―水酸化カリウム水溶液の添加量が4mlを超えた部分で酸基量が一定値を示すことがわかった。この一定値は、SBRラテックスの理論酸基量(計算値)0.409meq/gとほぼ一致し、精度良く測定することがわかった。前記SBRラテックスの理論酸基量は0.409meq/gであり、測定値と理論値が一致し、精度良く測定することができた。 さらに、合成例2〜5で得たSBRラテックス(1)、SBRラテックス(2)、SBRラテックス(4)、SBRラテックス(5)について、合成時に用いた酸基量の1当量以上が好ましく、さら20倍当量の無機塩基量を添加し、測定した。表5に得られた結果を示す。 また、本発明の電位差滴定を用いる酸基測定方法で、アミンを添加することによって等量点が明確になり測定精度が向上する。SBRラテックス(3)に、アンモニアを添加し、電位差滴定を行った。前記に示したP1〜P3のエマルジョン酸基量の測定値は0.501meq/gで、添加したアンモニア量0.10meq/gを差し引き換算すると、0.401meq/gとなり、計算値とほぼ一致し、さらに精度よく測定できることがわかった。そのアンモニア添加前後のpHの微分曲線を図7、8に示すが、アンモニア添加後の方が、それぞれのピークが明確であることが判る。 比較例1 実施例1において、電位差滴定法を用いる代わりに、特開2002−53602号公報に記載された電導度滴定を用いる以外実施例1と同様の方法で前記SBRラテックスの酸基を測定した。結果を表1と表6に示す。 表1より、SBRラテックスのpHが11.5以下であるとき、測定される酸基量は、電位差滴定法と同じ結果が得られる。 表2と表6の測定値の標準偏差から、比較例1の電導度滴定法は、本発明の電位差滴定法に比べ、ばらつきが大きいことが判った。X軸に酸滴下量ml、Y軸にpHをとって電位差滴定を行った際のpH曲線である。図1のpH曲線の微分曲線である。実施例1におけるpH―エマルジョン酸基量(meq/g)の関係である。実施例1における水酸化カリウム添加量とエマルジョン酸基量の関係である。実施例1におけるpH―酸基量(meq/g)のである。実施例1におけるpH―酸基量(meq/g)の関係である。実施例1における微分曲線(アミン添加前測定)である。実施例1における微分曲線(アミン添加後測定)である。酸基含有合成樹脂エマルジョンに濃度既知の無機塩基溶液を所定量加え、pHがアルカリ側に調整された被測定液を得た後、無機酸溶液を用いて前記被測定液を電位差滴定して、酸基含有合成樹脂中の酸基分布を算出することを特徴とする合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を測定する方法。前記被測定液の固形分が0.5〜60重量%になるように調整した被測定液を用いる請求項1記載の合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を測定する方法。更に、アミンを被測定液に添加して電位差滴定を行う請求項1または2記載の合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を測定する方法。濃度既知の無機塩基の濃度が0.1〜2mol/l、且つ無機酸の濃度が0.1〜2mol/lである請求項1、2または3記載のエマルジョン中の酸基分布を測定する方法。無機塩基が水酸化カリウムである請求項1記載のエマルジョン中の酸基分布を測定する方法。無機酸が硫酸である請求項1〜6にいずれか1項記載のエマルジョン中の酸基分布を測定する方法。被測定液のpHが11〜14である請求項1〜8のいずれか1項記載のエマルジョン中の酸基分布を測定する方法。 【課題】 酸基を有するアクリルエマルジョン、アクリルスチレンエマルジョン、ブタジエン系、イソプレン系、クロロプレン系等の合成ゴムラテックス等の合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を精度良く、且つ、迅速に測定する方法を提供すること。【解決手段】 酸基含有合成樹脂エマルジョンに濃度既知の無機塩基溶液を所定量加え、pHがアルカリ側に調整された被測定液を得た後、無機酸溶液を用いて前記被測定液を電位差滴定して、酸基含有合成樹脂中の酸基分布を算出することを特徴とする合成樹脂エマルジョン中の酸基分布を測定する方法。【選択図】 なし。


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