タイトル: | 公開特許公報(A)_フコイダンオリゴ糖組成物含有抗真菌剤 |
出願番号: | 2005172193 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K31/737,A61K31/702,A61P31/04,C08B37/00 |
酒井 武 中西 芳邦 加藤 郁之進 竹迫 一任 JP 2005263812 公開特許公報(A) 20050929 2005172193 20050613 フコイダンオリゴ糖組成物含有抗真菌剤 株式会社糖鎖工学研究所 592195001 タカラバイオ株式会社 302019245 井上 昭 100087022 中本 宏 100078503 酒井 武 中西 芳邦 加藤 郁之進 竹迫 一任 7A61K31/737A61K31/702A61P31/04C08B37/00 JPA61K31/737A61K31/702A61P31/04C08B37/00 H 1 1994027589 19940201 OL 8 4C086 4C090 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA24 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA06 4C086ZB35 4C090AA04 4C090BA64 4C090BB54 4C090BC04 4C090CA15 4C090CA31 4C090DA23 本発明はフコイダンを酸性条件下で加水分解することにより得られるフコイダンオリゴ糖組成物を含有する抗真菌剤に関する。 フコイダンは褐藻類に含まれている硫酸化多糖の総称であり、硫酸化フコースを構成糖として含む物である。フコイダンは様々な褐藻類から分離され、癌増殖抑制活性、癌転移抑制活性、抗凝血活性、抗ウイルス感染活性等の生物活性が確認されている。これらの生物活性の検討に用いられた天然物由来のフコイダンは分子量分布が広く、かつ分子量は非常に大きな物である。 フコイダンの生物活性を検討する際、分子量分布が広いと、再現性に問題を生じ、また該巨大分子であるフコイダンは強い抗凝血活性を持つ。また巨大分子のフコイダンから夾雑するタンパク質分子を除去するのは極めて困難である。 フコイダンを低分子化し更に分子量分画により分子を比較的均一にする方法については、硫酸、酵素、ガンマ線、超音波等によりフコイダンを分解後、分子量分画する方法(特表平4−506089号)や、塩酸で加水分解後分子量分画する方法〔ジャーナル オブ アンドロロジー(Journal of Andrology) 、第13巻、第519〜525頁(1992)〕などがある。しかしながら、前者は抗凝血活性の強いフコイダンオリゴ糖を得る方法であり、得られるオリゴ糖の分子量も5000より大きい。また後者は、反応生成物として得られる微量のオリゴ糖を利用する方法に過ぎず、極めて収率が悪い。特表平4−506089号公報「Journal of Andrology」、第13巻、第519〜525頁(1992) フコイダンは種々の生理活性を有し、医薬としての開発が期待されている。しかしながら抗凝血活性が高いこと、分子量分布が広く、均一な製品の調製が困難なこと、巨大分子であり、夾雑するタンパク質の除去が困難であること等の問題点を有している。 本発明の目的は、フコイダンの生物活性を保持しながら、抗凝血活性が除去され、分子量分布的にも均一で、生物活性の再現性も良く、安全性の高い低分子化フコイダンを含有する抗真菌剤を提供することにある。 本発明を概説すれば、本発明は、下記の理化学的性質を有するフコイダンオリゴ糖組成物を含有することを特徴とする抗真菌剤に関する。(1)分子量分布:5×103 以下〔セルロファインGCL−25(生化学工業株式会社製)を用いたゲルろ過法による〕(2)タンパク含量:検出されない(3)抗凝血活性:5000μg/mlで抗凝血活性を示さない 本発明者らは、褐藻類由来のフコイダンが有機酸の存在下、加水分解処理により、極めて収率よく低分子化し、分子量分画により調製した本発明のフコイダンオリゴ糖組成物は医薬品として用いる際に問題となる抗凝血活性が実質的に除去され、かつ該組成物は抗真菌剤として有用であるという新用途を見出し、本発明を完成した。 本発明により、抗凝血活性、また夾雑タンパクによる抗原性の除去されたフコイダンオリゴ糖組成物、及びその効率的な製造方法が提供される。該フコイダンオリゴ糖組成物は溶解性、生体への吸収性共に優れ、かつ、天然物由来で安全性も高く、抗真菌剤として有用であり、また食品への適用も可能な新規組成物である。 以下本発明を具体的に説明する。 本発明に使用されるフコイダンの種類は特に限定される物ではなく、例えばヒバマタ由来(シグマ社製)の物、マコンブ由来の物、その他すべての褐藻類由来の物を使用することができる。 フコイダンの有機酸による加水分解には、酢酸、ギ酸、プロピオン酸等の揮発性の有機酸、シュウ酸、クエン酸、コハク酸等の固体の有機酸等を使用することができる。 フコイダンの加水分解は、原料のフコイダン溶解液をこれらの有機酸でpH調製し行う。フコイダンの溶解は通常の方法で行えば良く、溶解液中のフコイダン濃度はその最高溶解濃度でも良いが、通常はその粘性を考慮して決定すれば良い。フコイダン溶解液としては水、緩衝液等より目的に応じ選択すれば良い。溶解液のpHは通常pH5以下、好ましくはpH1〜4の範囲に選定し、前記の有機酸により調製する。加水分解は該pH調製液を60℃〜120℃、通常は100℃で加温し、分子量5×103 以下の目的のフコイダンオリゴ糖組成物が調製できるまで行えば良い。また、加水分解して得られるフコイダンオリゴ糖の分子量は処理液のpHに依存し、例えば同じ酸を使用する場合pHを3.5にするより2.5にした方が分子量の小さなフコイダンオリゴ糖が得られる。同じpHで処理する場合、酸の種類により低分子化の程度に差が生じる場合もあるが、生成物の分子量の制御は加水分解時間の調製により容易である。 次に低分子化フコイダンは分子量分画することにより、更に均一な分子量分布のフコイダンオリゴ糖組成物を調製することができる。分子量分画には通常よく使用されている方法を適用することができ、例えばゲルろ過法や分子量分画膜を使用すれば良い。得られた組成物は、必要に応じて脱塩処理、無菌処理を行い、凍結乾燥をすることにより、本発明のフコイダンオリゴ糖組成物の乾燥品を得ることもできる。(A)本発明のフコイダンオリゴ糖組成物の分子量の測定方法は次のとおりである。 セルロファインGCL−25(生化学工業社製)のカラム(4.1×97cm)に分子量標準物質として重合度2〜7までのマルトース及びプルラン(分子量約1,000〜10,000のもの)を流し分子量と溶出ボリュウムの関係をグラフに表し、フコイダンオリゴ糖組成物の溶出ボリュウムからその分子量を求める。 本発明のフコイダンオリゴ糖組成物は分子量5×103 以下である。(B)本発明のフコイダンオリゴ糖組成物のタンパク含量の測定方法は次のとおりである。 フコイダンオリゴ糖組成物を含有する試料溶液0.1mlにプロテインアッセイキットI(バイオラッド社製)の染色液を5倍希釈した溶液5.0mlを加え、かくはん後5分以上室温で放置した後、595nmの吸光度を測定する。別に、牛血清アルブミン水溶液を用いて上記と同じ操作を行い、タンパク質の標準曲線を得、得られた標準曲線から試料溶液のタンパク含量を求める。 本発明のフコイダンオリゴ糖組成物はタンパクを含有しない。(C)本発明のフコイダンオリゴ糖組成物の抗凝血活性の測定方法は次のとおりである。抗凝血活性の測定方法(活性化部分トロンボプラスチン時間) 試薬は活性トロンボファックス、コントロール血漿としては、オーソ凝固コントロールI(共にオーソ・ダイアグノスティック・システムズ社製)を用い、方法はアグリカルチュラル アンド バイオロジカル ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)、第55巻、第791〜796頁(1991)記載の方法を参考に行う。 すなわち、12×75mmの試験管に100μlのコントロール血漿、10μlのフコイダンオリゴ糖組成物の溶液(0.9%食塩水中)、及び100μlの活性トロンボファックスを加え混合し、37℃の恒温槽中で3分間保持し、あらかじめ37℃に保温しておいた20mMの塩化カルシウムを100μlを加えると同時にストップウォッチを始動させ激しく混和し37℃で20秒間保温する。次に試験管を恒温槽から取り出し、ゆっくりと前後に振りゲル塊の出現と同時にストップウォッチを止める。この時に要した時間を活性化部分トロンボプラスチン時間とする。 また結果の判定は、フコイダンオリゴ糖組成物を加えなかったときの活性化部分トロンボプラスチン時間と比較して有意に延長を認めないときに抗凝血活性がないと判定する。 フコイダン(シグマ社製)は50μg/mlで抗凝血活性を有するが、本発明のフコイダンオリゴ糖組成物は5000μg/mlで抗凝血活性を示さず、本発明のフコイダンオリゴ糖組成物は実質的に抗凝血活性を保有しない。 本発明によるフコイダンオリゴ糖組成物は、抗真菌剤として使用することができる。 従来、真菌感染症の治療剤としては、アンホテリシンB、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾールのほか多数あるが、効力及び毒性若しくは耐性菌の点で問題がある。特に、近年増加傾向にある全身感染に有効な低毒性の薬剤は少ない。本発明のフコイダンオリゴ糖組成物は天然物由来で安全性も高く、新しいタイプの抗真菌剤である。 また親物質のフコイダンやヘパリンにも抗真菌作用が見出され、硫酸化多糖の新規用途が開発された。 本発明のフコイダンオリゴ糖組成物を有効成分とする抗真菌剤においては、該有効成分の含有率は対応する製剤の種類により異なるが、一般に有効成分として、0.1〜100%含有することが好ましい。該有効成分を用いての抗真菌剤は通常の製剤、例えば錠剤、カプセル剤、丸剤、注射剤、シロップ剤等に製剤化して経口及び非経口的に投与することができる。 このための手段として、医薬品を製造するために用いる慣用の賦形剤及び添加剤を用いることができる。慣用の賦形剤としては、例えば水、生理食塩水、アルコール、ポリエチレングリコール、グリセロールエステル、ゼラチン、炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が挙げられる。また、慣用の添加剤として、防腐剤、滅菌剤、潤滑剤、コーティング剤、湿潤剤、乳化剤、着色剤、マスキングフレーバー、及び芳香剤等が挙げられる。 本発明による抗真菌剤は、その薬剤の投与形態、投与回数、患者の状態、患者の体重、病気の軽重により変化するが、投与量は体重1kg当り0.1mgから150mg、好ましくは0.5mgから100mgを、1日に数回に分けて投与することが好ましい。 投与回数も薬剤の形態、投与回数、患者の状態、体重、病気の軽重により定められるが、1日当り1〜3回の投与が好ましく、場合においては、連続静脈内滴注により投与することもできる。 本発明による抗真菌剤は真菌症の治療、予防に有効である。また本発明のフコイダンオリゴ糖組成物は、種々の食品にそれらの特性を変化させること無くして添加することもできる。この場合、例えば冷菓、パン、ゼリー等の固形状の食品ばかりでなく牛乳、果汁等の液状食品にも安定的に添加することが可能である。 また、本発明のフコイダンオリゴ糖組成物の1群6匹のマウス(C57BL/6)における静脈内投与による急性毒性試験の結果では、後述する実施例記載の組成物は、いずれも500mg/kgの投与で全例共、全く毒性症状を示さなかった。したがって、本発明のフコイダンオリゴ糖組成物の静脈内投与によるLD50(50%致死量)は、いずれも500mg/kg以上である。 以下に本発明を実施例をもって示すが、本発明が以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。参考例1 フコイダン(シグマ社製)2gを100mlの水に溶解しそのpHを酢酸にてpH3.0に調整後100℃で3時間処理した。この加水分解物をセルロファインGCL−25(生化学工業社製)によるゲルろ過で分子量分画し分子量5,000以下の画分をマイクロアシライザーG3(旭化成社製)により脱塩後凍結乾燥を行い1.98gの生成物を得た。 本物質の抗凝血活性を測定したところ10mg/ml以下では抗凝血活性を持たなかった。参考例2 フコイダン(シグマ社製)2gを100mlの水に溶解し、そのpHをクエン酸にてpH3.0に調整後100℃で3時間処理した。この加水分解物をセルロファインGCL−25によるゲルろ過で分子量分画し、分子量5,000以下の画分を5分画(分子量5,000〜3,000超、3,000〜2,000超、2,000〜1,000超、1,000〜500超、500以下)した。更にこれらの画分をマイクロアシライザーG3(旭化成社製)により脱塩後凍結乾燥を行い各画分それぞれ290、243、511、329、431mg得た。 これらの物質の抗凝血活性を測定したところ、分子量5,000〜3,000超のもの、及び3,000〜2,000超のものは5mg/mlまで、その他の画分は10mg/ml以下では抗凝血活性を持たなかった。参考例3 フコイダン(シグマ社製)2gを100mlの水に溶解し、そのpHをギ酸にてpH3.6に調整後100℃で3時間処理した。この加水分解物をセルロファインGCL−25によるゲルろ過で分子量分画し、分子量5,000以下の画分を4分画(分子量5,000〜3,000超、3,000〜2,000超、2,000〜1,000超、1,000以下)した。更にこれらの画分をマイクロアシライザーG3(旭化成社製)により脱塩後凍結乾燥を行い各画分それぞれ466、162、500、244mgを得た。 これらの物質の抗凝血活性を測定したところ、分子量5,000〜3,000超のもの、及び3,000〜2,000超のものは5mg/mlまで、その他の画分は10mg/ml以下では抗凝血活性を持たなかった。実施例1 カンジダ アルビカンス(Candida albicans) TIMM 1768株を37℃、1夜培養後、集菌、生理食塩水に2×107 個/mlとなるように懸濁した。フコイダン(シグマ社製)、実施例2で調製した分子量5,000〜3000超のフコイダンオリゴ糖組成物、ヘパリン(和光純薬社製)をそれぞれ生理食塩水に、8mg/mlの濃度に溶解した。この各種溶液と上記菌懸濁液を1:1の割合で混ぜ、その0.2ml(1×106 個)をICR系マウス(5週令、雌)の尾静脈より接種した。なお対照として、生理食塩水を用いた。 14日間、マウスの生死を観察し、各サンプルの抗カンジダ活性を測定した。延命率は下記式(数1)により算出した。結果を表1に示す。延命率=〔{(各サンプル+カンジダ アルビカンス)投与群の平均生存日数} /{(生理食塩水+カンジダ アルビカンス)投与群の平均生存日数} ×100 表1に示すようにカンジダ アルビカンスに対してはヘパリン、フコイダンとも明らかな延命効果がみられた。フコイダンの抗カンジダ作用はフコイダンオリゴ糖組成物においても保持され、フコイダンオリゴ糖組成物はフコイダンと同等の活性を示した。実施例2 参考例1に記載の分子量5000以下のフコイダンオリゴ糖組成物の凍結乾燥品25mgに、乳糖、でんぷん、ステアリン酸マグネシウムを加え、充分混合した後、カプセルに充てんし、カプセル剤を製造した(表2)。 参考例2、3にそれぞれ記載されている各フコイダンオリゴ糖組成物についても同様にカプセル剤を製造した。実施例3 参考例2に記載の分子量5000〜3000超のフコイダンオリゴ糖組成物の凍結乾燥品500mgにオートクレーブにより殺菌した生理食塩水を加えて溶解し、全量を10mlに調製した後、乾熱滅菌したアンプル瓶に封入し、10mlの液剤を製造した。 参考例2に記載の他のフコイダンオリゴ糖組成物、参考例1、3にそれぞれ記載の各フコイダンオリゴ糖組成物についても同様に液剤を製造した。実施例4 参考例3に記載の分子量5000〜3000超のフコイダンオリゴ糖組成物の凍結乾燥品に、乳糖及びでんぷんを加えて混合した。10%のでんぷんのりを混合物に加え、かくはんして顆粒を製造した。乾燥後、整粒し、これにタルク及びステアリン酸マグネシウムを混合し、常法により打錠して200mg錠剤を製造した(表3)。 参考例3に記載の他のフコイダンオリゴ糖組成物、参考例1、2にそれぞれ記載の各フコイダンオリゴ糖組成物についても同様に錠剤を製造した。 下記の理化学的性質を有するフコイダンオリゴ糖組成物を含有することを特徴とする抗真菌剤。(1)分子量分布:5×103以下〔セルロファインGCL−25(生化学工業株式会社製)を用いたゲルろ過法による〕(2)タンパク含量:検出されない(3)抗凝血活性:5000μg/mlで抗凝血活性を示さない 【課題】 フコイダンの生物活性を保持しながら、抗凝血活性が除去され、分子量分布が均一な低分子化フコイダンの抗真菌剤としての用途を提供する。【解決手段】 5×103 以下の分子量分布〔セルロファインGCL−25(生化学工業株式会社製)を用いたゲルろ過法〕を有し、タンパク含量が検出されず、5000μg/mlで抗凝血活性を示さないフコイダンオリゴ糖組成物を含有する抗真菌剤。【効果】 溶解性、生体への吸収性に優れ、生物活性の再現性が良く、安全性も高い。【選択図】 なし