タイトル: | 公開特許公報(A)_測定感度を向上させるための組成物 |
出願番号: | 2005163545 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 33/531 |
川井 淳 黒板 敏弘 井上 浩明 西井 重明 JP 2006126166 公開特許公報(A) 20060518 2005163545 20050603 測定感度を向上させるための組成物 東洋紡績株式会社 000003160 川井 淳 黒板 敏弘 井上 浩明 西井 重明 JP 2004173544 20040611 JP 2004289963 20041001 JP 2004289964 20041001 JP 2004289965 20041001 G01N 33/531 20060101AFI20060414BHJP JPG01N33/531 B 16 OL 16 本発明は、免疫アッセイに用いる免疫反応を促進するための組成物に関する。 今日、抗体を使った解析手法は、免疫学の枠を超え、生物学全般の研究分野において、必要不可欠な技術となっている。さらに、近年においては、ヒトをはじめとした様々な生物種のゲノム情報の解析が次第に進み、ゲノム情報の解析、いわゆるポストゲノミクスが注目されるにつれ、その中でも特にタンパク質の機能解析や相互作用解析がますます重要視されるようになっていたこともあり、抗体を用いた免疫アッセイ法の役割がより一層高まってきている。 抗体を用いた免疫アッセイ法としての古くから知られているものは、組織中に存在する抗原(タンパク質など)を蛍光色素、酵素などを用いて可視化する免疫組織化学(Immunohistochemistry: IHC)、タンパク質を電気泳動し、特異的な抗体で可視化することによりタンパク質の発現パターンや分子量を測定するウェスタンブロッティング(Western Blotting: WB)、抗原あるいは抗体を反応プレートに固相し、酵素標識した抗原あるいは抗体をもちいて、試料中の微量な抗原あるいは抗体を検出する酵素免疫測定(Enzyme Immunoassay: EIA)、蛍光標識した抗体で細胞を染色し、細胞から発せられる蛍光を指標として解析や細胞の分離を行うフローサイトメトリーなどがあり、いずれも企業や研究機関の研究室等で広く用いられている技術である。また、抗体を使ってタンパク質を特異的に精製する方法として、抗体カラムによる精製法や、免疫沈降法なども良く用いられている。更に近年においては、ファージディスプレイ法などを用いた抗体によるタンパク質スクリーニング法、抗体を用いた医薬なども開発され、免疫学的手法はその需要の増大とともに用途も急速に広まりつつある。 一方、抗体には、単一の抗原における複数の抗原決定基に結合するそれぞれの抗体の混合物であるポリクローナル抗体と、単一の抗原決定基に結合する一種類の抗体からなるモノクローナル抗体とがあり、それぞれ作成方法が異なる。ポリクローナル抗体は、抗原との反応性が強く、抗原の立体構造の変化等に対する影響が少ないことから、免疫組織染色、ウェスタンブロッティング等により適している。また、モノクローナル抗体は、反応性がより限定されているため、ポリクローナル抗体よりも厳密な検討を行うのに適しており、またロット間差が安定しているという利点もある。それぞれ長所・短所があり、使用目的により使い分けられている。 抗体は、同一の抗原に対する抗体であっても、作成毎に性能が大きく異なることが良く知られている。そのため、さまざまな会社から同一の抗原に対する抗体が市販されているものの、使用に際しては各社の抗体をそれぞれ比較することが重要となる。また、ポリクローナル抗体に関しては、上記のような理由からロット間の比較も必要となってくる。しかしながら、各社、あるいはロット毎の比較を広く行うには、膨大なコストと時間を要し、本来目的とする免疫学的測定に際して、予備検討を行うのが非常に負担となるという現状があった。更に、抗原の種類によっては性能の良い抗体を作るのが非常に難しい場合があることも知られており、ヒスチジンタグやリン酸化セリン・スレオニンに対する抗体は、使用頻度が非常に高いものの、良好な性能を持つ抗体が存在しないというのが現状であった。 一方、抗原抗体反応を用いた免疫アッセイは、検出しようとする抗原に直接結合する抗体(一次抗体)と、一次抗体に特異的に結合する抗体(二次抗体)を用いて、さらに二次抗体には検出用の標識体(色素や酵素など)を付加しておいたものを用いることによって、シグナルを増幅させる方法(間接法)が頻繁に用いられる。しかしながら、この方法では、一次抗体に直接標識体を付加しておいたものを用いる方法(直接法)に比べて、二次抗体由来の非特異的なシグナルも増幅されるため、高いシグナル対ノイズ比が得られにくいという欠点があるのが現状であった。 また一方、抗体をポリエチレングリコールを含有した水溶液で希釈することにより、抗体の保存安定性が悪くなることが以前から知られていた。そのため、ポリエチレングリコールを含有した水溶液により抗体を希釈したものを用いて抗原抗体反応を行う際には、抗体の希釈は操作開始の直前に行わなければならず、同一の操作を数回に分けて実施する際には、その都度、抗体希釈操作を行わなければならないというのが現状であった。 このように、免疫学的手法の需要が増大し、学問的・応用的用途が次第に広まってゆく傾向にある中で、抗体を従来よりも効率的に抗原と反応させる方法が求められていた。 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、反応系中にブロッキング剤およびポリエチレングリコールを適正な濃度で添加することにより抗原抗体反応効率が向上することおよび抗体の保存安定性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち本発明は、「[項1] 免疫反応を促進するための組成物であって、重量%濃度が0.01%以上のブロッキング剤および重量%濃度が1〜10%の平均分子量が2,000〜26,000のポリエチレングリコールを含有することを特徴とする免疫反応促進用組成物。[項2] ブロッキング剤が、人工合成ポリマー、正常血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、カゼインから選択されるいずれか1種以上のブロッキング剤であること特徴とする項1に記載の免疫反応促進用組成物。[項3] ブロッキング剤が、カゼインであることを特徴とする項1または2に記載の免疫反応促進用組成物。[項4] 塩濃度が40〜400mMであることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。[項5] 2以上の組成物の組み合わせからなる、項1〜4に記載の免疫反応促進用組成物。[項6] 組成物の組み合わせが、一次抗体反応促進用組成物と二次抗体促進用組成物の組み合わせである、項5に記載の免疫反応促進用組成物。[項7] 塩濃度が40〜100mMの一次抗体反応促進用組成物と、150〜400mMの二次抗体促進用組成物の組み合わせからなることを特徴とする項4〜6のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。[項8] 塩が塩化ナトリウムであることを特徴とする項4〜7のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。[項9] 重量%濃度が0.001〜0.2%非イオン系界面活性剤を含有することを特徴とする項1〜8のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。[項10] 非イオン系界面活性剤が、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートから選択されるいずれか1種以上の非イオン系界面活性剤であることを特徴とする項9に記載の免疫反応促進用組成物。[項11] 抗体の保存安定性が向上していることを特徴とする項1〜10のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。[項12] 項1〜11のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物を含む、免疫アッセイに用いるためのキット。[項13] 項1〜11のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物を用いて、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、免疫組織染色、酵素免疫測定、放射免疫測定、免疫沈降、フローサイトメトリー等の免疫アッセイを行う方法。[項14] 免疫反応が、ウェスタンブロッティングまたはドットブロッティングにおける免疫反応であることを特徴とする項1に記載の免疫反応促進用組成物。[項15] 免疫反応が、酵素免疫測定(ELISA、EIA)における免疫反応であることを特徴とする項1に記載の免疫反応促進用組成物。[項16] 免疫反応が、免疫染色における免疫反応であることを特徴とする項1に記載の免疫反応促進用組成物。」である。 本発明は免疫アッセイを行うための免疫反応促進用組成物である。 本願発明における免疫反応とは、ある抗原と、それに対して特異的に結合する性能を持つ抗体とが、特異的に結合する反応、すなわち抗原抗体反応を指し、また免疫アッセイとは、抗原抗体反応を利用することにより、抗原あるいは抗体の特異的検出や精製を行うことを指す。 免疫反応を利用する解析手法には種々のものがあるが、本願発明は原則としていかなる手法においても適用することができる。特にウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、免疫染色(免疫組織染色、免疫細胞染色)、酵素免疫測定(ELISA、EIA)、放射免疫測定においては、抗原抗体反応系において特別な成分は特に必須とされず、本願発明の組成物を適用するのが容易であるとの理由により好適に利用することができる。 なお、これらの免疫反応に用いる抗原、抗体をはじめとする反応に必要な構成は、特に制限されるものではない。当業者は、用いる実験手法に応じて、これらを適宜選択し、さらに必要に応じて適当な手段により加工する(たとえば、標識化する)等、通常なしうる技術を用いて、反応系を構築することができる。 本願発明における保存安定性は、実施例3に示されるように、本願発明の組成物を用いて抗体を適宜濃度に希釈したものを、37℃で2週間保存した後に、該組成物を、免疫反応を利用する実験手法に適用したときの反応の程度を比較することにより判断することができる。より具体的には、同濃度の抗体を本願発明により希釈したものと、一般的に抗体の希釈に用いられる緩衝液、より具体的にはトリス緩衝生理塩水(TBS)またはリン酸緩衝生理塩水(PBS)等により希釈したものとを、37℃で2週間保存した後に、該組成物により酵素免疫測定(EIA)を行うことにより、抗体の抗原への結合力の低下度合いを定量的に測定することができる。 本願発明に用いるポリエチレングリコールの含有量は1重量%以上10重量%以下であり、好ましくは2重量%以上9重量%以下、より好ましくは3重量%以上8重量%以下である。あまり含有量が低いと抗原抗体反応効率向上に対する効果がなく、あまり含有量が高いと非特異反応が増大し、さらに濃度が高いと抗原抗体反応に対して阻害的に作用する。また、抗原と抗体との組み合わせにより、特異的な結合と非特異的な結合の比、いわゆるS/N比を最大にするための最適なポリエチレングリコール濃度が異なるため、抗原と抗体の組み合わせによりポリエチレングリコールの濃度を前述の範囲内で変えるのが好ましい。また、本願発明に用いるポリエチレングリコールは、平均分子量が2,000〜26,000である。好ましくは2,500〜15,000である。あまり平均分子量が低いかもしくは高いと、抗原抗体反応効率向上に対する効果がなく、また濃度が高い場合には抗原抗体反応に対して阻害的に作用する。 これらはいずれも市販品などを用いることができる。ポリエチレングリコールの定量は種々の公知の方法、より具体的には屈折率測定法、クロマトグラフィー法などで行うことができる。また、ポリエチレングリコールの平均分子量は種々の公知の方法、より具体的には、クロマトグラフィー法(GPC法)、粘度法、束一的性質を利用した方法(蒸気圧法・浸透圧法・沸点上昇法)、光散乱法、沈降速度法(超遠心法)などの方法を用いて行うことができる。 本願発明のブロッキング剤とは、抗原が存在しない部位への抗体タンパク質の非特異的な吸着を防ぎ、特異的な抗原抗体反応を増強するためのものであって、その濃度は好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.01%以上5%以下、さらに好ましくは0.01%以上1%以下、最も好ましくは0.01%以上0.5%以下である。あまり含有量が低いと抗原抗体反応効率向上または非特異的反応の低減に対する効果がなく、あまり含有量が高いと抗原抗体反応に対して阻害的に作用する。ここで言うブロッキング剤とは、抗体が抗原の存在しない部位への非特異的吸着を防止するために、抗体反応の前に抗原を含む検体を前処理する場合や、抗体の非特異的な反応を防止するために、抗体反応用の希釈液への添加に用いられるものであって、その形態は特に限定されず、どのような物質を用いても良いが、免疫反応においては一般的に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体などの人工合成ポリマー、ウサギ、ヤギ等の動物由来正常血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、カゼイン、界面活性剤などが多用されており、本願発明においても、これらから選択されるいずれか1種以上のブロッキング剤を用いるのが好ましく、カゼインがより好ましい。 これらはいずれも、適当な緩衝液に該ブロッキング剤抗体を添加し、該組成物を、免疫反応を利用する実験手法に適用したときの非特異反応の程度を比較することにより判断することができる。より好ましくは、酵素免疫測定(EIA)において、該ブロッキング剤を一般的に用いられる緩衝液、より具体的にはトリス緩衝生理塩水(TBS)またはリン酸緩衝生理塩水(PBS)等により希釈したものを、抗体反応前の抗原を含む検体へ滴下し、37℃で1時間インキュベートした後に、抗体反応を行うことにより、抗体の非抗原への非特異的吸着の度合いを定量的に測定することができる。 これらはいずれも市販品などを用いることができる。 本願発明のカゼインとは、乳タンパク質の主体をなすタンパク質を指し、その形態は特に限定されないが、牛乳から精製されたものが特に好適に用いられる。カゼインは電気泳動的にα、β、γの3成分からなることが知られているが、本願発明に用いるカゼインは、これらのうち一種類であってもよく、混合物であっても良い。また、酵素的に加水分解したものであっても良い。また、本願発明に用いるカゼインの含有量は0.01重量%以上である。本願発明の組成物に含まれるカゼインは、電気泳動などで容易に測定することが可能である。 本願発明の組成物には、非イオン系界面活性剤を含有することができる。非イオン系界面活性剤の濃度は、好ましくは0.001〜0.2重量%である。あまり濃度が高いと抗原抗体反応に対して阻害的に作用し、あまり低いと非特異反応が増大する。また本願発明における非イオン系界面活性剤は、その形態は限定されないが、好ましくはエーテル型、より具体的にはポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル等、またはエステルエーテル型、より具体的にはポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等から選択されるいずれか1種以上の非イオン系界面活性剤が用いられる。 これらはいずれも市販品などを用いることができる。 上記の塩および非イオン系界面活性剤は、いずれか一方含有しても良いし両方含有しても良いが、両方含有している方がより好ましい。 本願発明の組成物には、塩を含有することができる。組成物の塩濃度は、特に限定されるものではないが、好ましくは40〜400mM、さらに好ましくは40〜350mM、さらに好ましくは45〜320mMである。あまり塩濃度が高いと抗原抗体反応に阻害的に作用し、あまり低いと非特異反応が増大する。また本願発明における塩は、その形態は限定されないが、特に好ましくは塩化ナトリウムが用いられる。 これらはいずれも市販品などを用いることができる。塩濃度の測定は種々の公知の方法、より具体的には、沈殿試薬を用いる重量法、キレート試薬や比色試薬を用いる滴定法や比色法、金属イオンの炎色を利用する炎光分析法、イオン選択性電極を用いた電極法、散乱光方式による塩化イオンセンサーを用いる方法、SPQやMQAEのような蛍光試薬を用いる方法などで行うことが出来る。 本発明は免疫アッセイを行うための免疫反応促進用組成物であり、2以上の組成物の組み合わせ、たとえば一次抗体反応促進用組成物と二次抗体反応促進用組成物の組み合わせからなるものであってもよい。その場合における各組成物の塩濃度は、特に限定されるものではないが、好ましくは40〜400mMである。 さらに好ましくは、本願発明の上記各組成物における塩濃度は、一次抗体反応促進用組成物は40〜100mM、二次抗体反応促進用組成物は150〜400mMである。ここでいう一次抗体とは、二段階の抗原抗体反応によって抗原の検出感度を増大させる場合において、検出すべき抗原に直接結合する抗体を言い、また二次抗体とは、一次抗体に特異的に結合する抗体を言い、二次抗体には検出のための酵素、色素などが付加されている場合が多い。一次抗体反応促進用組成物の塩濃度が高いと抗原抗体反応に阻害的に作用し、二次抗体促進用組成物の塩濃度が低いと非特異反応が増大する。また、抗原に直接結合する抗体に酵素、色素等が付加されたものを用いて、一段階の抗原抗体反応により検出を行う際の塩濃度は150〜400mMが好ましい。また本願発明における塩は、その形態は限定されないが、特に好ましくは塩化ナトリウムが用いられる。 これらはいずれも市販品などを用いることができる。塩濃度の測定は種々の公知の方法、より具体的には、沈殿試薬を用いる重量法、キレート試薬や比色試薬を用いる滴定法や比色法、金属イオンの炎色を利用する炎光分析法、イオン選択性電極を用いた電極法、散乱光方式による塩化イオンセンサーを用いる方法、SPQやMQAEのような蛍光試薬を用いる方法などで行うことが出来る。 また、本願発明の組成物には、適用する種々の実験手法に応じてさらに、本願発明に好ましい効果をもたらす他の物質を含有あるいは選択することができる。具体的には、緩衝剤(緩衝液)、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、酵素安定化剤、タンパク質分解酵素阻害剤、ホスファターゼ阻害剤等が挙げられる。更に、緩衝液のより具体的な例としては、グリシン、フタル酸、クエン酸、β,β’−ジメチルグルタル酸、コハク酸、酢酸、ヒスチジン、マレイン酸、カコジル酸、β−グリセロリン酸、イミダゾール、リン酸、ヒ酸、トリエタノールアミン、5,5−ジエチルパルビツル酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、グリシルグリシン、ピロリン酸、ホウ酸、炭酸、またはグッドバッファー等が挙げられ、グッドバッファーのより具体的な例としては、MES、HEPPS、MOPSO、POPSO、ビス−トリス、ADA、PIPES、ACES、コラミンクロリド、BES、MOPS、TES、HEPES、アセトアミドグリシン、トリシン、TAPS、ビシン、CHES、CAPSなどが挙げられる。その中でも好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リン酸、HEPES、炭酸などを用いることが出来る。 本発明により提供される免役反応用組成物を用いることにより、従来法に比べて抗原抗体反応の効率が向上し、高い検出感度や精製効率を持つ免疫アッセイを行うことができる。 本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。 実施例1 ウェスタンブロッティングによる従来組成との比較 抗原は、無細胞タンパク質合成キットPROTEIOS(東洋紡績社製)で合成したヒトERK2タンパク質を用いた。タンパク質合成は、PROTEIOSの標準プロトコル(重層法)に従い、23℃で16時間行った。合成完了したタンパク質溶液をTBS(0.1%Tween−20含有)を用いて段階希釈し、PAGミニ「第一」(15−25%、13%)ポリアクリルアミドゲル(第一化学社製)を用いて、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。サンプルのアプライは、2倍希釈、4倍希釈、8倍希釈、16倍希釈、32倍希釈の5種のサンプルをそれぞれアプライし、無細胞タンパク質合成を行わなかったPROTEIOS反応組成液をネガティブコントロールとしてアプライし、分子量マーカーをアプライし、再び5種のサンプルとネガティブコントロールをアプライした。また、電気泳動は、15mAで90分間行った。その後、電気泳動を行ったゲルから、Immun−Blot PVDF Membrane(Bio−Rad社製)へタンパク質をトランスファーした。トランスファーは、膜の面積x0.8mAで、60分間行った。膜をTBS(0.1%Tween−20含有)を用いて洗浄し、続いてブロッキング反応を行った。ブロッキングは、スキムミルク(Difco社製)をTBS(0.1%Tween−20含有)に5重量%で溶解させたブロッキング液を用い、ブロッキング液中に膜を浸して37℃で一時間インキュベートして行った。その後、膜をTBS(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて一次抗体反応を行った。一次抗体反応は、以下のようにして行った。まず、1xPBS(−)に、最終濃度0.1重量%の加水分解カゼイン溶液(ICNバイオメディカル社製)および最終濃度4%のポリエチレングリコール#6,000を加えた混合液を調製した(A液)。また、ウェスタンブロッティングにおける抗体希釈液として汎用される、TBS(0.1%Tween−20含有)を対照として用いた(B液)。それぞれの混合液を用い、抗His−probeウサギIgG(Santa Cruz社製)を2000倍希釈したものを調製し、一次抗体溶液とした。ブロッキング後の膜を、分子量マーカーを電気泳動したレーンではさみで切り離し、左側をA液による抗体希釈液、右側をB液による抗体希釈液に浸し、37℃で一時間インキュベートして反応を行った。各膜をTBS(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて二次抗体反応を行った。二次抗体反応は、一次抗体反応で用いたものと同組成の混合液を抗体希釈液として用いて行った。二次抗体としては抗ウサギIgGヤギIgG(HRP標識)(Santa Cruz社製)を用い、各混合液で20,000倍希釈して反応を行った。その後、各膜をTBS(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて酵素基質反応を行った。基質液としてECL Plus(Amersham Biosciences社製)を用い、室温で5分間インキュベートして反応させた。その反応終了後の膜について、発光イメージアナライザーFAS−1000(東洋紡績社製)を用いて、発光シグナルの検出を行った。 その結果を図1に示す。本発明に基づいて組成したA液により抗体を希釈して測定を行ったものは、従来法で用いられるB液を使用した場合の測定結果と比較して、測定感度は格段に高いことが確認された。 実施例2 免疫染色による従来組成との比較 染色するサンプルは、ヒト正常大動脈血管内皮細胞(東洋紡績社製)をメタノール固定したものを用いた。続いてブロッキング反応を行った。ブロッキングは、スキムミルク(Difco社製)を1xPBS(−)に1重量%で溶解させたブロッキング液を用い、ブロッキング液をサンプルに滴下し室温で一時間行った。その後、サンプルを1xPBS(−)で洗浄し、続いて一次抗体反応を行った。一次抗体反応は、以下のようにして行った。まず、1xPBS(−)に、最終濃度0.1重量%の加水分解カゼイン溶液(ICNバイオメディカル社製)および最終濃度4%のポリエチレングリコール#6,000を加えた混合液を調製した(A液)。また、上記のブロッキング液を対照として用いた(B液)。それぞれの混合液を用い、抗ヒトVon Willebrand FactorマウスIgG(Dako社製)を50倍希釈したものを調製し、一次抗体溶液とした。ブロッキング後のサンプルに、それぞれの抗体希釈液を滴下し、室温で30分間反応を行った。各サンプルを1xPBS(−)で洗浄し、続いて二次抗体反応を行った。二次抗体反応は、一次抗体反応で用いたものと同組成の混合液を抗体希釈液として用いて行った。二次抗体としては抗マウスIgGビオチン化抗体(東洋紡績社製)を用い、各混合液で100倍希釈して反応を行った。その後、各サンプルを1xPBS(−)で洗浄し、続いてアビジン−ビオチン複合体溶液を滴下して、室温で30分間反応させた。その後、各サンプルを1xPBS(−)で洗浄し、酵素基質反応を行った。基質液としてHRP Immunostaining Kit(東洋紡績社製)に付属の基質液を用い、室温で10分間インキュベートして反応させた。その反応終了後のサンプルについて、蒸留水で洗浄を行った後、グリセリンで封入し、光学顕微鏡観察を行った。 その結果を図2および図3に示す。本発明に基づいて組成したA液により抗体を希釈して測定を行ったものは、従来法で用いられるB液を使用した場合の測定結果と比較して、測定感度は格段に高いことが確認された。 実施例3 ELISA(Enzyme−linked Immunosorbent Assay)による従来組成との比較 抗原は、MAP kinase p42(FL)(Santa Cruz社製)を用いた。抗原溶液を炭酸バッファー(15mM 炭酸ナトリウム、35mM 炭酸水素ナトリウム)を用いて2,000倍希釈し、96穴ELISAプレートに100μlずつ分注し、37℃で一時間インキュベートして抗原の固相化を行った。その後、ウェルを1xPBS(−)で洗浄し、続いてブロッキング反応を行った。ブロッキングは、スキムミルク(Difco社製)を1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)に3重量%で溶解させたものを用い、各ウェルに250μlずつ分注して、37℃で一時間インキュベートして行った。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて一次抗体反応を行った。一次抗体反応は、以下のようにして行った。まず、1xPBS(−)に、最終濃度0.001重量%〜1重量%の濃度系列の加水分解カゼイン溶液(ICNバイオメディカル社製)および最終濃度4%のポリエチレングリコール#6,000を加えた混合液を調製した(A液シリーズ)。また、1xPBS(−)に、0.01重量%の加水分解カゼイン溶液を加えた混合液を調製した(B液)。それぞれの混合液を用い、抗His−probeウサギIgG(Santa Cruz社製)を2000倍希釈したものを調製し、一次抗体溶液とした。それぞれの一次抗体溶液を各ウェルに100μlずつ分注し、37℃で一時間インキュベートした。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて二次抗体反応を行った。二次抗体反応は、一次抗体反応で用いたものと同組成の混合液を抗体希釈液として用いて行った。二次抗体としては抗ウサギIgGヤギIgG(HRP標識)(Santa Cruz社製)を用い、各混合液で20,000倍希釈して反応を行った。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて酵素基質反応を行った。基質液としてTMB(BioFX社製)を用い、各ウェルに100μl加え、37℃で20分間インキュベートした。その後、1規定の硫酸を各ウェルに100μl加え、反応を停止させた。その反応終了液について、プレートリーダで450nmの吸光度を測定した。 その結果を図4に示す。ポリエチレングリコールを加えたA液シリーズにより抗体を希釈して測定を行ったものは、カゼインの濃度により明らかに測定感度が異なることが確認された。また、図5に示すポリエチレングリコールを加えなかったB液の測定結果と比較して、ポリエチレングリコールを加えたA液シリーズの測定感度は格段に高いことが確認された。 実施例4 ELISA(Enzyme−linked Immunosorbent Assay)による従来組成との比較 抗原は、MAP kinase p42(FL)(Santa Cruz社製)を用いた。抗原溶液を炭酸バッファー(15mM 炭酸ナトリウム、35mM 炭酸水素ナトリウム)を用いて2,000倍希釈し、96穴ELISAプレートに100μlずつ分注し、37℃で一時間インキュベートして抗原の固相化を行った。その後、ウェルを1xPBS(−)で洗浄し、続いてブロッキング反応を行った。ブロッキングは、スキムミルク(Difco社製)を1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)に3重量%で溶解させたものを用い、各ウェルに250μlずつ分注して、37℃で一時間インキュベートして行った。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて一次抗体反応を行った。一次抗体反応は、以下のようにして行った。まず、1xPBS(−)から塩化ナトリウム濃度を50mMに減らした溶液を元に、最終濃度0.01重量%の加水分解カゼイン溶液(ICNバイオメディカル社製)および最終濃度4%のポリエチレングリコール#6,000を加えた混合液を調製した(C液)。またまず、1xPBS(−)から塩化ナトリウム濃度を300mMに増やした溶液を元に、最終濃度0.01重量%の加水分解カゼイン溶液(ICNバイオメディカル社製)および最終濃度4%のポリエチレングリコール#6,000を加えた混合液を調製した(D液)。それぞれの混合液を用い、抗His−probeウサギIgG(Santa Cruz社製)を2000倍希釈したものを調製し、一次抗体溶液とした。それぞれの一次抗体溶液を各ウェルに100μlずつ分注し、37℃で一時間インキュベートした。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて二次抗体反応を行った。二次抗体反応は、一次抗体反応で用いたものと同組成の混合液を抗体希釈液として用いて行った。二次抗体としては抗ウサギIgGヤギIgG(HRP標識)(Santa Cruz社製)を用い、各混合液で20,000倍希釈して反応を行った。一次抗体反応と二次抗体反応は、一次抗体反応でC液またはD液を用いたもの、二次抗体反応でC液またはD液を用いたものの組み合わせで、計4系列の組み合わせで比較検討を行った。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて酵素基質反応を行った。基質液としてTMB(BioFX社製)を用い、各ウェルに100μl加え、37℃で20分間インキュベートした。その後、1規定の硫酸を各ウェルに100μl加え、反応を停止させた。その反応終了液について、プレートリーダで450nmの吸光度を測定した。 その結果、一次抗体反応:二次抗体反応の組み合わせがC:C、C:D、D:C、D:Dのそれぞれについて、シグナル対ノイズ比(S/N比)の値はC:D>D:D>C:C>D:Cの順になった。このことから、二次抗体反応液の塩濃度を一次抗体反応液より高めることにより最も高いS/N比を得ることが確認された。 実施例5 抗体の希釈による保存安定性の比較 抗原は、MAP kinase p42(FL)(Santa Cruz社製)を用いた。抗原溶液を炭酸バッファー(15mM 炭酸ナトリウム、35mM 炭酸水素ナトリウム)を用いて2,000倍希釈し、96穴ELISAプレートに100μlずつ分注し、37℃で一時間インキュベートして抗原の固相化を行った。その後、ウェルを1xPBS(−)で洗浄し、続いてブロッキング反応を行った。ブロッキングは、スキムミルク(Difco社製)を1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)に3重量%で溶解させたものを用い、各ウェルに250μlずつ分注して、37℃で一時間インキュベートして行った。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて一次抗体反応を行った。一次抗体反応は、以下のようにして行った。まず、1xPBS(−)に、最終濃度0.01重量%の加水分解カゼイン溶液(ICNバイオメディカル社製)および最終濃度4%のポリエチレングリコール#6,000を加えた混合液を調製した(E液)。また、1xPBS(−)に、最終濃度4%のポリエチレングリコール#6,000を加えた混合液を調製した(F液)。また、1xPBS(−)に、0.01重量%の加水分解カゼイン溶液を加えた混合液を調製した(G液)。また、1xPBS(−)のみで構成された溶液を調製した(H液)。それぞれの混合液を用い、抗His−probeウサギIgG(Santa Cruz社製)を2000倍希釈したものを調製し、一次抗体溶液とした。それぞれの一次抗体液は、37℃で2週間保存した後に、検討に用いた。それぞれの一次抗体溶液を各ウェルに100μlずつ分注し、37℃で一時間インキュベートした。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて二次抗体反応を行った。二次抗体反応は、一次抗体反応で用いたものと同組成の混合液を抗体希釈液として用い、同様に37℃で2週間保存した後に、検討に用いた。二次抗体としては抗ウサギIgGヤギIgG(HRP標識)(Santa Cruz社製)を用い、各混合液で20,000倍希釈して反応を行った。その後、ウェルを1xPBS(−)(0.1%Tween−20含有)で洗浄し、続いて酵素基質反応を行った。基質液としてTMB(BioFX社製)を用い、各ウェルに100μl加え、37℃で20分間インキュベートした。その後、1規定の硫酸を各ウェルに100μl加え、反応を停止させた。その反応終了液について、プレートリーダで450nmの吸光度を測定した。 その結果、ポリエチレングリコールおよび加水分解カゼインを加えたE液、ポリエチレングリコールのみを加えたF液、加水分解カゼインのみを加えたG液、両者とも加えなかったH液のそれぞれのシグナル強度は、E>G>H>Fとなり、ポリエチレングリコールによる抗体の保存安定性低下は、加水分解カゼインの添加により解消され、またポリエチレングリコールを加えなかった場合に比べても保存安定性がむしろ向上していることが確認された。 本発明の免疫反応促進用組成物を用いて、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、免疫組織染色、酵素免疫測定、放射免疫測定、免疫沈降、フローサイトメトリー等の免疫アッセイを効率よく行うことができ、産業界に寄与すること大である。ウェスタンブロッティングによる比較を行った結果を示す図。A液を用いて免疫染色を行った結果を示す図。B液を用いて免疫染色を行った結果を示す図。ポリエチレングリコールを加えたA液シリーズを用いてELISAを行った結果を示す図。ポリエチレングリコールを加えなかったB液を用いてELISAを行った結果を示す図。 免疫反応を促進するための組成物であって、重量%濃度が0.01%以上のブロッキング剤および重量%濃度が1〜10%の平均分子量が2,000〜26,000のポリエチレングリコールを含有することを特徴とする免疫反応促進用組成物。 ブロッキング剤が、人工合成ポリマー、正常血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、カゼインから選択されるいずれか1種以上のブロッキング剤であること特徴とする請求項1に記載の免疫反応促進用組成物。 ブロッキング剤が、カゼインであることを特徴とする請求項1または2に記載の免疫反応促進用組成物。 塩濃度が40〜400mMであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。 2以上の組成物の組み合わせからなる、請求項1〜4に記載の免疫反応促進用組成物。 組成物の組み合わせが、一次抗体反応促進用組成物と二次抗体促進用組成物の組み合わせである、請求項5に記載の免疫反応促進用組成物。 塩濃度が40〜100mMの一次抗体反応促進用組成物と、150〜400mMの二次抗体促進用組成物の組み合わせからなることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。 塩が塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。 重量%濃度が0.001〜0.2%非イオン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。 非イオン系界面活性剤が、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートから選択されるいずれか1種以上の非イオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項9に記載の免疫反応促進用組成物。 抗体の保存安定性が向上していることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物。 請求項1〜11のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物を含む、免疫アッセイに用いるためのキット。 請求項1〜11のいずれかに記載の免疫反応促進用組成物を用いて、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、免疫組織染色、酵素免疫測定、放射免疫測定、免疫沈降、フローサイトメトリー等の免疫アッセイを行う方法。 免疫反応が、ウェスタンブロッティングまたはドットブロッティングにおける免疫反応であることを特徴とする請求項1に記載の免疫反応促進用組成物。 免疫反応が、酵素免疫測定(ELISA、EIA)における免疫反応であることを特徴とする請求項1に記載の免疫反応促進用組成物。 免疫反応が、免疫染色における免疫反応であることを特徴とする請求項1に記載の免疫反応促進用組成物。 【課題】免疫学的測定に用いる免疫反応を促進するための組成物を提供する。【解決手段】免疫反応を促進するための組成物は、重量%濃度が0.01%以上のブロッキング剤および重量%濃度が1〜10%の平均分子量が2,000〜26,000のポリエチレングリコールを含有する。そして、ブロッキング剤としては、人工合成ポリマー、正常血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、カゼインから選択されるいずれか1種以上を使用でき、2以上の組成物を組み合わせることができる。【選択図】なし