タイトル: | 公開特許公報(A)_水溶性高分子化合物及びその製造方法 |
出願番号: | 2005160686 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C08B 11/08,C08B 11/145,A61K 8/72 |
吉島 洋 JP 2006335836 公開特許公報(A) 20061214 2005160686 20050531 水溶性高分子化合物及びその製造方法 東邦化学工業株式会社 000221797 吉島 洋 C08B 11/08 20060101AFI20061117BHJP C08B 11/145 20060101ALI20061117BHJP A61K 8/72 20060101ALN20061117BHJP JPC08B11/08C08B11/145A61K7/00 J 6 OL 7 4C083 4C090 4C083AD132 4C083AD261 4C083AD281 4C083BB36 4C083CC01 4C083EE07 4C090AA02 4C090BA28 4C090BA34 4C090BD03 4C090CA36 4C090DA26 本発明は、多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物とを反応させることにより得られる環状アセタール化合物で表面を処理することにより水への溶解性を改善した水酸基を有する水溶性高分子化合物に関するものである。 一般に、水溶性高分子化合物としてセルロース、多糖類及びこれらの誘導体は、水に対する分散性が悪いため水中に投入した時継粉(ママコ)になり易く、このため水に溶解する場合には充分撹拌しながら少量ずつ添加しなければならないという欠点がある。従来この欠点を改善する方法として、水溶性高分子化合物に種々の化合物が使用されてきた。 例えば、特許文献1には水酸基を含有する水溶性高分子物質の水への溶解法として、水もしくは水性アルカリに水酸基を含有する高分子物質をアルデヒドで前処理することで塊状化を防止できると明記されている。高分子物質としてHEC等のセルロース誘導体/澱粉誘導体/PVA等が挙げられている。 また、特許文献2には、微粉砕した水溶性重合体の表面処理法としてセルロースエーテル/澱粉/変性澱粉又は合成重合体の粉末からなりホルムアルデヒド又は脂肪族ジアルデヒドと酸性触媒を含む溶液で噴霧被覆し、その表面に可逆的アセタール架橋を結合し、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含んでいる自由流動性の水溶性粉末。非イオン重合体及び陰イオン重合体が書かれているが、非イオン重合体中にはPVA/PEG/HEC等のセルロース誘導体/澱粉誘導体等が明記されている。 特許文献3には高分子水溶性物質をグリオキサール水和物のオリゴマー型を使用し、微粉末状の物質に0.2〜5%乾燥混合し混合物を30分〜12時間50〜150℃に加熱する事を特徴とし、腐食又は変色を解決出来ると明記されHEC等が含まれている。 特許文献4には、グリオキザールを用いてセルロースが持つ水酸基とヘミアセタール結合させて架橋反応させ、水溶性セルロースエーテルを容易に水に分散湿潤させる事が可能となるが、HEC等の水溶性セルロースエーテルとアルコキシシランとを反応させ可逆的架橋構造を形成すると共にジオクチルスルフォコハク酸塩を添加する事を特徴とする水溶性セルロースエーテルの製造方法が提案されている。 特許文献5にはキサンタンガム誘導体として、キサンタンガムに架橋剤を反応後親水化剤を反応させるが、本文中に微小架橋セルロース粒子の好ましい製造方法として、セルロース繊維を架橋剤により架橋させた後微粒子化させる事を特徴とする製造方法が提案されている。 特許文献6には、新規多糖類誘導体その製造方法及びそれを含有する化粧料として、多糖類又はその誘導体のヒドロキシル基の水素原子の一部又は全てがC10〜43のアルキル基(オキシカルボニル基又はエーテル基が挿入されてもよい)及びC1〜5のスルホアルキル基(ヒドロキシル基が置換されてもよい)及び架橋剤で置換された新規多糖誘導体が提案されている。 また、特許文献7には、生分解性成形品を製造するためのデンプンを主原料とする熱可塑性混合物に関し、化学的変性澱粉/澱粉誘導体・可塑剤ホスフェートを混合した熱可塑性混合物に関し架橋によって熱可塑性挙動を改善する場合にはグリオキサール等のアルデヒドを原料とする二官能性分子・ジイソシアネート・エポキシド等を使用するとの記述がある。 特許文献8には、粒状水溶性セルロースエーテル及びその製造方法として、架橋剤・酸及び湿潤剤が添加され、或る粒度分布を持つ粒状水溶性セルロースエーテルを製造する方法で、HEC等の水溶性セルロースエーテルをゲル化する工程で架橋剤及び酸を添加しゲル化し乾燥後湿潤剤を添加し粉砕後粒状化する方法が提案され、架橋剤としては、グリオキサール等のアルデヒド及びシラン・アルコキシシラン類が明記されている。 特許文献9には、セルロースエーテル配合物及びその製造方法として、添加剤無水セルロースエーテルを基礎とする澱粉/澱粉エーテル/グアール/グアールエーテル及びキサンタンガム水溶液又は粉末に水を添加しながらポリアクリルアミド水溶液を湿潤させたセルロースエーテルの製造方法で必要に応じ、グリオキサール等の添加剤を添加する事が出来ると明記されている。特公昭42−6674号公報(第1−3頁)特公昭47−1601号公報(第1−6頁)特公昭59−45685号公報(第1−2頁)特開平8−183802号公報(第1−4頁)特開平9−3101号公報(第3頁)特開平11−12304号公報(第6頁)特表2001−509525号公報(第6頁)特開2000−63565号公報(第3頁)特開2004−238629号公報(第6頁) しかしながら、上記の先行文献等に記載された方法により溶解性を調整した場合、微妙なpHの調整を必要とする上、黄着色が生じることもあって改善の必要があった。本発明は、このような問題点を解決し、かつ効果的に水溶性高分子化合物の水への溶解時の作業性を改善する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セルロース、多糖類及びこれらの誘導体等の水溶性高分子化合物の表面を、多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物との反応により得られる環状アセタール化合物で処理することによって該水溶性高分子化合物の水への溶解時のママコの発生を抑制する方法を見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物とを反応させることにより得られる環状アセタール化合物により表面を処理したことを特徴とする水酸基を有する水溶性高分子化合物に関する。 本発明はまた、水酸基を有する水溶性高分子化合物と、多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物とを反応させることにより得られる環状アセタール化合物とを反応させて可逆的架橋構造を形成することを特徴とする水溶性高分子化合物の製造方法にも関する。 多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物とを反応させることにより得られる環状アセタール化合物により、セルロース、多糖類及びこれらの誘導体等の水酸基を有する水溶性高分子化合物の表面を処理することで、該水溶性高分子化合物の水への溶解時の作業性を改善することができる。 以下本発明を詳細に説明する。 本発明に係る環状アセタール化合物は、多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物の反応物である。多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、マンノース等の単糖類を挙げることができる。複数のホルミル基を有する化合物としては、グリオキザール、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘプタンジアール、アジピンアルデヒド、サクシンアルデヒド等のジアルデヒドを挙げることができる。 上記環状アセタール化合物は、多価アルコールの水酸基とジアルデヒド等のホルミル基とを公知の方法により脱水反応させて得ることができる。一般には、数種の環状アセタール化合物の混合物として得られるものであり、かかる化合物を含む市販品としては、OMNOVA Solutions Inc.(米国)から販売されている無水グルコース1単位:グリオキサール2単位からなるポリマーである「セクアレッツ755」(商標)が挙げられる。 表面処理の対象となる水酸基を有する水溶性高分子化合物としては、セルロース、多糖類及びこれらの誘導体が挙げられる。セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カチオン化セロース、カチオン化ヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルカルボキシメチルセルロース等であり、多糖類及びこれらの誘導体としては、グァーガム、ローカストビーンガム、フェヌクリークガム、タラガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、クインシードガム、カラギーナン、アルギン酸塩、寒天、タラカントガム、アラビアガム、カラヤガム、スターチ、ヒドロシシエチルグァーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルグァーガム、メチルスターチ、エチルグァーガム、ヒドロキシプロピルグァーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルグァーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドキシプロピルメチルグァーガム、アセチル化又はアルキル化スターチ、ヒドロキシプロピルメチルスターチ、デキストリン、デキストラン、カチオン化グァーガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化フェヌクリークガム、カチオン化タラガム、カチオン化タラガム、カチオン化タマリンドガム、カチオン化サイリウムシードガム、カチオン化アルギン酸塩、カチオン化タラカントガム、カチオン化スターチが例示できる。 本発明に係る環状アセタール化合物の添加量は特には限定されないが、水酸基を有する水溶性高分子化合物100重量部に対し0.05〜1.0重量部が好ましい。0.05重量部未満では殆ど効果が見られず、1.0重量部を超えると水溶液を調整する時の溶解時間がかかりすぎエネルギーの損失となる。 環状アセタール化合物の添加は、水溶性高分子化合物がセルロースや多糖類の場合には、パルプ、種子粘物質、海藻抽出物、樹脂抽出物から抽出精製乾燥する際の精製もしくは乾燥する段階で添加することが好ましい。この時の反応温度は40℃〜120℃、反応時間は30分〜120分の範囲が好ましい。一方、水溶性高分子化合物がセルロースや多糖類の誘導体の場合には、アルコキシル化、カチオン化等の反応後精製乾燥する段階で添加することが好ましい。添加条件はセルロース及び多糖類の場合と同様でよい。本発明に係る方法で製造した水溶性高分子化合物は、シャンプー、リンス、コンディショナー、ボディーソープその他の化粧料組成物の一成分として好適に使用することができる。 以下、本発明の実施例を比較例と比較して説明するが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。 なお、以下の実施例及び比較例においては、水溶性高分子化合物に本発明品及びメチルグリオキザール(β−Chem,Inc製)、テレフタルアルデヒド(90%品)、グルタルアルデヒド水溶液(25%)を一定量添加し溶解時間を測定した。〔実施例1〕 ヒドロキシエチルセルロース160gを、80容量%のイソプロパノール水溶液1007mlに分散させ、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液8.6gを添加した。次に有効成分が46.6gとなるようグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液を加え、加温し50℃で3時間反応させる。反応終了後35%塩酸16.6g(仕込み水酸化ナトリウム1.54倍モル)を80容量%のイソプロパノール水溶液150mlで希釈し、中和に使用した。室温で1時間中和後、メタノール300mlに反応液を注ぎ、反応生成物を沈殿させ、濾別した。得られた沈殿物をメタノール水溶液にて洗浄した後、OMNOVASolutions Inc.から販売されているセクアレッツ755(55%品)を1.80g添加し、90分混合した後、反応生成物を減圧下カチオン化セロースの品温が50℃となる迄で乾燥した。このようにして得られたカチオンセルロースの窒素含有率は1.67重量%であった。このサンプルを本発明品1とした。〔実施例2〕 ウッドパルプ(重合度900、水分10%)180gを15%水酸化ナトリウム水溶液中に20℃1時間浸漬し、約2.5倍に圧搾して400gのアルカリセルロースを得た。得られたアルカリセルロースの組成はセルロース分35%、水酸化ナトリウム分13%、水分52%であった。次にアルカリセルロースを加圧ニーダーに仕込み、30℃以下で約1時間解砕した後、ジオキサン1000g(反応系のジオキサン:水=82.8:17.2、セルロース濃度10%になる)を加え、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後、エチレンオキサイド95g(グルコース単位当たり2.5モル分)を一括添加し、40〜45℃で6時間反応させた。反応終了後反応物を酢酸で中和し、更に75%イソプロパノール溶液で2回洗浄し、OMNOVASolutions Inc.から販売されているセクアレッツ755(55%品)を2.02g添加し、90分混合した後、減圧下ヒドキシエチルセルロースの品温が50℃となる迄で乾燥した。得られたヒドロキシエチルセルロースの平均付加モル数(M.S.)は1.8モルであった。このサンプルを本発明品2とした。〔実施例3〕 セクアレッツ755(55%品)の添加量を0.90gとした以外は実施例1と同様にしてサンプルを調整した。このサンプルを本発明品3とした。〔実施例4〕 セクアレッツ755(55%品)の添加量を0.60gとした以外は実施例1と同様にしてサンプルを調整した。このサンプルを本発明品4とした。〔比較例1〕 セクアレッツ755のかわりにメチルグリオキザール(28.2%品)を3.50g添加した以外は実施例1と同様にしてサンプルを調整した。このサンプルを比較品1とした。〔比較例2〕 セクアレッツ755のかわりに、テレフタルアルドヒド(90.0%品)1.10g添加した以外は実施例1と同様にしてサンプルを調整した。このサンプルを比較品2とした。〔比較例3〕 セクアレッツ755のかわりに、グルタルアルドヒド(25.0%品)3.96gを添加した以外は実施例1と同様にしてサンプルを調整した。このサンプルを比較品3とした。〔評価方法〕 200mLのガラス瓶にイオン交換水198gを採取して20℃に保温し、これに本発明品又は比較品を2.0g投入してBM型回転粘度計によりローターNo2/12rpmで経時での粘度が上昇し始める時間を測定し評価した。この時間を水和時間とする。時間が短いと水溶液を調整する時にママコが発生し易い。逆に時間が長すぎると水溶液を調整する時の溶解時間がかかりすぎエネルギーの損失となる。〔評価結果〕 上記評価結果より、本発明に係る環状アセタール化合物を水溶性高分子の表面処理物質として使用した場合、水溶性高分子を水に溶解する場合ママコができにくい水和時間を示した。また、本発明の方法はpHの微妙な調整も必要とせず、水溶性高分子の黄着色もみられなかった。従って、本発明に係る環状アセタール化合物は水溶性高分子の表面処理物質として適した物質であることが確認された。多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物とを反応させることにより得られる環状アセタール化合物により表面を処理したことを特徴とする水酸基を有する水溶性高分子化合物。多価アルコールが単糖類である請求項1に記載の水酸基を有する水溶性高分子化合物。複数のホルミル基を有する化合物がジアルデヒドである請求項1又は2に記載の水酸基を有する水溶性高分子化合物。水酸基を有する水溶性高分子化合物がセルロース、多糖類又はそれらの誘導体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水溶性高分子化合物。請求項1〜4のいずれか1項に記載の水酸基を有する水溶性高分子化合物を含有する化粧料組成物。水酸基を有する水溶性高分子化合物と、多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物とを反応させることにより得られる環状アセタール化合物とを反応させて可逆的架橋構造を形成することを特徴とする水溶性高分子化合物の製造方法。 【課題】 微妙なpHの調整を必要とせず、効果的に水溶性高分子化合物の水への溶解時の作業性を改善する方法を提供する。【解決手段】 セルロース、多糖類及びこれらの誘導体等の水溶性高分子化合物の表面を、多価アルコールと複数のホルミル基を有する化合物との反応により得られる環状アセタール化合物で処理し、該水溶性高分子化合物の水への溶解性を改善する表面処理方法。本発明に係る表面処理方法によれば、水溶性高分子を水中に投入した時継粉(ママコ)の発生を効果的に抑制することができる。