タイトル: | 公開特許公報(A)_酒粕発酵食品の製造方法 |
出願番号: | 2005159032 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12G 3/02,A23L 1/105 |
金桶 光起 渡邊 健一 青木 俊夫 鍋倉 義仁 佐藤 圭吾 栗林 喬 JP 2006333721 公開特許公報(A) 20061214 2005159032 20050531 酒粕発酵食品の製造方法 新潟県 592102940 吉井 剛 100091373 吉井 雅栄 100097065 金桶 光起 渡邊 健一 青木 俊夫 鍋倉 義仁 佐藤 圭吾 栗林 喬 C12G 3/02 20060101AFI20061117BHJP A23L 1/105 20060101ALI20061117BHJP JPC12G3/02 119VA23L1/105 8 1 OL 9 4B023 4B023LE30 4B023LG10 4B023LK18 4B023LP14 4B023LP16 本発明は、酒粕の発酵を行うことを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に関するものである。 酒粕は、多量の酵母菌・麹菌の成分を含むことから、人が必要とする全ての必須アミノ酸,ビタミン類(造血作用を持つ葉酸・代謝促進作用を持つナイアシン等)及び食物繊維等の栄養素が豊富であり、また、酵母菌・麹菌由来の血圧降下・コレステロール低減・免疫賦活作用等を発揮する機能性成分も含んでおり、更に、清酒醸造過程で副生するため、安価である。 従って、酒粕は優れたプレバイオティクス素材として期待できるものである。 しかしながら、酒粕はそのままでは嗜好性に劣り、品質を維持することが厄介であるといった問題があるため、現在、酒粕の主な利用用途は粕取り焼酎、合成清酒の香味付与材、粕漬用材などに限定されており、今後も消費量の増大が期待できず、将来的には酒粕が廃棄物となる可能性もあり、酒粕の有効な利用方法の開発が求められている。 一方、一部の大学や企業においては、酒粕中の血圧降下、脂質代謝改善効果のあるペプチド等の機能性成分の利用を目的とした研究が行われているが、有効成分の抽出が主体で、酒粕そのものを直接食する食品開発は例がない。 本発明者らは、従来から健康にプラスに働くとされる乳酸菌、酵母菌、麹菌等の醸造用の微生物の機能性を総合的に応用したこれまでにない全く新しい製品を目指して基礎研究を行っており、上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、酒粕を発酵し得る微生物を初めて発見し、本発明を完成したものである。 本発明は、安価で優れたプレバイオティクス素材であるにも関わらず嗜好性に劣り、品質を維持することが厄介な酒粕を、微生物を用いて発酵させることにより食感や呈味性が良好にして直接食することが可能で、しかも発酵によって酒粕に含まれている栄養素と機能性成分を増強することにより極めて優れた健康維持効果を発揮する新規な酒粕発酵食品の製造方法を提供するものである。 添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。 酒粕を発酵させて酒粕発酵食品を製造することを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に係るものである。 また、請求項1記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記発酵は発酵食品用の微生物を用いて行う発酵であることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に係るものである。 また、請求項2記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記発酵食品用の微生物として、醸造用の微生物が用いられることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に係るものである。 また、請求項2,3いずれか1項に記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記発酵食品用の微生物若しくは醸造用の微生物として乳酸菌が用いられることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に係るものである。 また、請求項4記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記乳酸菌は単独若しくは複数の異なる乳酸菌を混合したものであることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に係るものである。 また、請求項1〜5いずれか1項に記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記酒粕は普通酒、本醸造酒、純米酒、吟醸酒若しくは大吟醸酒の粕であることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に係るものである。 また、請求項1〜6いずれか1項に記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記発酵後に乾燥処理を施すことを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に係るものである。 また、請求項1〜7いずれか1項に記載の酒粕発酵食品の製造方法において、砂糖、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、鉄、食酢、蜂蜜、香料、牛乳、豆乳及びペクチンのうち少なくとも1種を添加することを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法に係るものである。 酒粕を発酵させた本発明の酒粕発酵食品は、食感や呈味性が良好であり、また、本発明の酒粕発酵食品を食することにより健康に良い酒粕を直接食することになる為、酒粕中の必須アミノ酸,ビタミン類,食物繊維等の豊富な栄養素及び血圧降下・コレステロール低減・免疫賦活作用等を発揮する機能性成分を容易に摂取することができ、しかも発酵によって栄養素と機能性成分とが更に増強される為、極めて優れた健康維持効果を発揮できることになる。 好適と考える本発明の実施形態を本発明の作用を示して簡単に説明する。 本発明における酒粕発酵食品の製造方法は、酒粕を発酵し、酒粕の食感や呈味性を良好にする点に特徴がある。 酒粕は多量の酵母菌・麹菌の成分を含むことから、人が必要とする全ての必須アミノ酸,ビタミン類(造血作用を持つ葉酸・代謝促進作用を持つナイアシン等)及び食物繊維等の栄養素が豊富であり、また、酵母菌・麹菌由来の血圧降下・コレステロール低減・免疫賦活作用等を発揮する機能性成分も含んでいる。 本発明において、酒粕として例えば普通酒、本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒から得られる粕や、この粕の乾燥品を用いることができる。 酒粕の中でも特に大吟醸酒の粕を用いることが好ましい。大吟醸酒の粕を用いることにより、大吟醸酒特有の香気成分を含んだ呈味性の良い酒粕発酵食品となる。 本発明において、酒粕に水を加えて均質化させた酒粕分散液を発酵に用いる。 酒粕に加える水の量により、固形タイプの酒粕発酵食品からドリンクタイプの酒粕発酵食品まで多種多様な酒粕発酵食品を得ることができる。酒粕は乾燥品を用いた場合には水分量の調整が容易となり好ましい。 また、酒粕の均質化に用いる水の一部を例えば牛乳あるは豆乳に代えて製造すると一層呈味性の良い酒粕発酵食品となり好ましい。 本発明において、酒粕の発酵は、発酵食品用の微生物若しくは醸造用の微生物を用いて行う。 発酵食品用の微生物若しくは醸造用の微生物は、酒粕を発酵可能なものであれば菌種を特定しないが、発酵食品用の微生物若しくは醸造用の微生物のなかでも健康にプラスに働くことが知られている乳酸菌、酵母菌、麹菌等を用いることが好ましく、特に乳酸菌を用いることが好ましい。乳酸菌が酒粕を発酵可能であることは、本発明者らがはじめて見い出した。 本発明において、乳酸菌は酒粕を発酵可能なものであれば菌種を特定しないが、乳酸菌の特徴によって、味や生成物質に差が生ずるので、種々の乳酸菌を適宜組み合わせて用いることが好ましい。種々の乳酸菌を適宜組み合わせて用いることにより多様な製品が出来る。 乳酸菌として例えばEnterococcus faecium IFO 3535を用いた場合、乳酸とフレーバー成分(ダイアセチル)が生成し、酸味となめらかさを有する酒粕発酵食品となる(表2,3参照)。 また、例えばStreptococcus faecalis ATCC 10100等を用いた場合、乳酸とフレーバー成分(ダイアセチル)が生成し、ヨーグルト様の香りと美味しさを有する酒粕発酵食品となる(表2,3参照)。 また、例えばEnterococcus faecalis IFO 12965を用いた場合、乳酸とフレーバー成分(ダイアセチル)が生成し、ヨーグルト様の香りと酸味を有する酒粕発酵食品となる(表2,3参照)。 また、例えばLactobacillus plantarum IFO 15891を用いた場合、乳酸とフレーバー成分(ダイアセチル)が生成し、酸味を有する酒粕発酵食品となる(表2,3参照)。 また、例えばLactobacillus fermentum IFO 15885を用いた場合、乳酸が多く生成する一方、フレーバー成分(ダイアセチル)の生成は少なく、ヨーグルト様の香りと、チーズ様の香りと共に酸味を有する酒粕発酵食品となる(表2,3参照)。 また、例えばLactobacillus rhamnosus IFO 3425を用いた場合、乳酸が多く生成すると共に、フレーバー成分(ダイアセチル)も多く生成し、ヨーグルト味と、チーズ様の香りとダイアセチル臭を有する酒粕発酵食品となる(表2,3参照)。 また、例えばLactobacillus fructosus NPIB-2(新潟県新潟市水道町2丁目5932-133所在の新潟県醸造試験場保有),Lactobacillus acidophilus gasseri NPIB-10241等を使用した場合、血圧降下作用を増強した製品となり、健康維持増進に役立つ酒粕発酵食品となる(表4参照)。 本発明において、酒粕発酵食品にビタミンC、ビタミンE、カルシウム、マグネシウム若しくは鉄などの微量金属、リンゴ酢、黒酢、キチン・キトサン、蜂蜜、牛乳または豆乳等を添加することが好ましい。上記成分の添加により、一層健康維持効果が向上し、健康志向を高めた酒粕発酵食品となる。 また、酒粕発酵食品にペクチン等の安定剤を加えることが好ましい。ペクチン等を加えることにより酒粕発酵食品の固液分離を防止することができる。 本発明において、酒粕発酵食品に殺菌を施さない場合、乳酸菌の整腸効果も期待できる酒粕発酵食品となる。 また、酒粕発酵食品の殺菌を十分に行った場合、流通・保管の際のライフサイクルを長期設定することができる酒粕発酵食品となる。更に、酒粕発酵食品を乾燥させることで、流通・保管の際のライフサイクルを一層長期設定することが可能となる。 本発明は上述のようにしたから、食感や呈味性が良好にして直接食することが可能で、しかも発酵によって酒粕に含まれている栄養素と機能性成分を増強することにより極めて優れた健康維持効果を発揮することができる新規な酒粕発酵食品の製造方法となる。 本発明の具体的な実施例について図1に基づいて説明する。 本実施例は種々の異なる乳酸菌の菌株をスターター乳酸菌として用い、酒粕の乳酸発酵を行う場合である。 図1は本実施例の製造工程の一例を示したものである。 本実施例は、凍結乾燥の後、粉砕した酒粕を水に分散して酒粕分散液とする。具体的には乾燥酒粕と水との重量比が1:9となるように混合、溶解(分散)し、均一な酒粕分散液とする。本実施例は乾燥した酒粕を用いることで、酒粕の品質を維持できると共に水分量の調整が容易で作業性が良好となった。 表1に本実施例の発酵前の酒粕分散液の成分を示す。 本実施例は前記酒粕分散液100gを容器に入れ、70℃で20分加熱低温殺菌し、この酒粕分散液を30℃になるまで冷却した。 続いて、この酒粕分散液にスターター乳酸菌を3%(重量)加え、30℃、24時間発酵を行い、ヨーグルト様の酒粕発酵食品を得た。尚、本実施例のスターター乳酸菌とは乳酸菌培養液を指す。 表2はスターター乳酸菌として8種類の菌株(菌株1〜8)を用いた場合の酒粕発酵食品の嗜好性を確認した結果である。 また、表3は同様にスターター乳酸菌として8種類の菌株(菌株1〜8)を用いた場合の酒粕発酵食品の乳酸とフレーバー生成について確認した結果である。 上記表2,3によれば、酒粕を発酵して得られた本実施例の酒粕発酵食品は、酒粕特有の風味が消え、心地よい食感と酸味の優れた呈味性を有し嗜好性が極めて良好であることを確認した。 また、表4はスターター乳酸菌として5種類の菌株(菌株9〜13)を用いた場合の酒粕発酵食品の血圧上昇酵素阻害活性を確認した結果である。 上記表4によれば、酒粕を発酵して得られた本実施例の酒粕発酵食品は、発酵前の酒粕分散液よりも高い血圧上昇酵素阻害率(%)を示した。よって、本実施例の酒粕発酵食品は、発酵前の酒粕分散液の血圧降下作用を増強できることを確認した。 また、本実施例は上述した酒粕の嗜好性を高める菌株1〜8と血圧降下作用を増強する菌株9〜13から夫々少なくとも1種類の菌株を組み合わせて用いても良い。その場合、嗜好性が良好な上、血圧上昇抑制効果に極めて秀れた酒粕発酵食品となる。 また、本実施例において、発酵後の酒粕発酵食品にビタミンC、ビタミンE、カルシウム、マグネシウム若しくは鉄などの微量金属、リンゴ酢、黒酢、キチン・キトサン、蜂蜜、牛乳または豆乳等を添加しても良い。尚、これらの成分は発酵前の酒粕分散液にあらかじめ添加しても良い。これらの成分を添加することにより、一層健康維持効果が向上し、健康志向を高めた酒粕発酵食品となる。 例えば本実施例の酒粕発酵食品を牛乳や豆乳により適宜希釈することによりドリンクタイプの酒粕発酵食品を得ることができる。 また、例えば本実施例の酒粕発酵食品にペクチン等の安定剤を加えることにより、酒粕発酵食品の固液分離を防止でき、また、ペクチン等の濃度を適宜設定することによりゼリー状の酒粕発酵食品を得ることができる。 また、例えば本実施例の酒粕発酵食品を冷凍することにより、シャーベット状の冷菓とした酒粕発酵食品を得ることができる。 また、例えば本実施例の酒粕発酵食品を凍結乾燥して粉末状若しくは固形状の酒粕発酵食品としても良い。その場合、流通・保管の際のライフサイクルを一層長期設定することが可能となる。 また、本実施例の酒粕発酵食品に殺菌を施さない場合、乳酸菌の整腸効果も期待できる。一方、流通・保管の際のライフサイクルを長期設定する場合には殺菌を十分に行うことが好ましい。 従って、本実施例の酒粕発酵食品は、乳酸菌発酵により酒粕特有の風味が消え、心地よい食感と酸味の優れた呈味性を有し嗜好性が極めて良好であり、また、本実施例の酒粕発酵食品を食することにより健康に良い酒粕を直接食することになる為、酒粕に含まれる多量の酵母菌・麹菌由来の必須アミノ酸,ビタミン類,食物繊維等の豊富な栄養素及び血圧降下・コレステロール低減・免疫賦活作用等を発揮する機能性成分を容易に摂取することができ、しかも発酵によって栄養素と機能性成分とが更に増強される為、極めて優れた健康維持効果を発揮できることになる。本実施例の製造工程の一例を示すフローチャートである。 酒粕を発酵させて酒粕発酵食品を製造することを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法。 請求項1記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記発酵は発酵食品用の微生物を用いて行う発酵であることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法。 請求項2記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記発酵食品用の微生物として、醸造用の微生物が用いられることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法。 請求項2,3いずれか1項に記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記発酵食品用の微生物若しくは醸造用の微生物として乳酸菌が用いられることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法。 請求項4記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記乳酸菌は単独若しくは複数の異なる乳酸菌を混合したものであることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法。 請求項1〜5いずれか1項に記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記酒粕は普通酒、本醸造酒、純米酒、吟醸酒若しくは大吟醸酒の粕であることを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法。 請求項1〜6いずれか1項に記載の酒粕発酵食品の製造方法において、前記発酵後に乾燥処理を施すことを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法。 請求項1〜7いずれか1項に記載の酒粕発酵食品の製造方法において、砂糖、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、鉄、食酢、蜂蜜、香料、牛乳、豆乳及びペクチンのうち少なくとも1種を添加することを特徴とする酒粕発酵食品の製造方法。 【課題】 本発明は、安価で優れたプレバイオティクス素材であるにも関わらず嗜好性に劣り、品質を維持することが厄介な酒粕を、微生物を用いて発酵させることにより食感や呈味性が良好にして直接食することが可能で、しかも発酵によって酒粕に含まれている栄養素と機能性成分を増強することにより極めて優れた健康維持効果を発揮する新規な酒粕発酵食品の製造方法を提供するものである。【解決手段】 酒粕を発酵させて酒粕発酵食品を製造する酒粕発酵食品の製造方法。【選択図】 図1