タイトル: | 公開特許公報(A)_海藻発酵エキス、その製造方法およびその用途 |
出願番号: | 2005146830 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A23L 1/337,A23L 1/30,A61K 35/74,A61K 36/02,A61P 35/00,A61P 37/04 |
飯沼 清栄 原 敏夫 JP 2006320257 公開特許公報(A) 20061130 2005146830 20050519 海藻発酵エキス、その製造方法およびその用途 株式会社グランヒル大阪 397037638 中嶋 伸介 100106448 飯沼 清栄 原 敏夫 A23L 1/337 20060101AFI20061102BHJP A23L 1/30 20060101ALI20061102BHJP A61K 35/74 20060101ALI20061102BHJP A61K 36/02 20060101ALI20061102BHJP A61P 35/00 20060101ALI20061102BHJP A61P 37/04 20060101ALI20061102BHJP JPA23L1/337 BA23L1/337 WA23L1/337 102A23L1/30 BA61K35/74 AA61K35/80 ZA61P35/00A61P37/04 7 1 OL 12 4B018 4B019 4C087 4C088 4B018MD67 4B018MD68 4B018MD88 4B018ME08 4B018ME14 4B018MF01 4B018MF13 4B019LC05 4B019LE05 4B019LK15 4B019LP17 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC65 4C087CA10 4C087MA52 4C087NA14 4C087ZB09 4C087ZB26 4C088AA13 4C088AA14 4C088AA15 4C088CA25 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZB09 4C088ZB26 本発明は、海藻発酵エキス、その製造方法およびその用途に関し、より詳細には人の健康に有用な活性を示す新規な海藻発酵エキス、その製造方法、ならびに該エキスを用いた機能性食品や医薬品に関する。 海藻は、糖質が主成分であって脂質が少なく、糖質はアルギン酸、フコイダンといった食物繊維を多く形成している。食物繊維は、大腸がん、糖尿病、動脈硬化症、高血圧、老化、便秘などの防止に効果を有する。また、海藻は、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、ヨードなどのミネラル、ビタミン、カロテノイドなどの有用成分も多量に含むため、ガン予防活性、血圧降下活性、美白効果、皮膚保護作用などがあると言われている。 海藻に含まれる人体に有益な物質を効率的に摂取するには、海藻加工食品を多量に食するよりも、高濃度に抽出して、それを体内に摂取する方が望ましい。また、海藻を原料として、人体に有用な物質を新規に製造することも充分にあり得る。 海藻を原料として人体に有用な物質を新たに製造し、また、海藻に含まれる有用物質を抽出する方法としては、陸上植物でよく用いられる発酵を海藻に適用することが考えられる。 しかし、海藻を発酵食品として利用した例は少ない。その理由は、植物の発酵に通常使用されている乳酸菌や麹菌とその発酵様式を海藻に適用しても、海藻を発酵させることが困難なためである。これは、従来の発酵菌が海藻の繊維を容易に分解する酵素を持っていないことや、上記発酵菌の栄養源を海藻が含んでいないことに起因する。 海藻の発酵を促す方策として、特開2003−201(海藻発酵食品およびその製造方法)には、海藻類をセルラーゼで分解して単細胞の粒子に変換した後、乳酸菌および/または麹菌で発酵を行うことが記載されている。しかし、発酵前に酵素処理工程を付加することは、食品製造時間とコストの増大につながる。特開2003−201 そこで、本発明の課題は、海藻を資材とした人体に有用な物質(新規物質を含む)の製造方法、および前記有用物質の用途を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、意外にも、海に棲息していない枯草菌を発酵菌として用いることにより、海藻を容易に発酵させ、しかも、健康機能性を有する発酵製品を作り上げることに成功した。すなわち、本発明は、海藻に枯草菌(Bacillus subtilis、バチルス・ズブチルス)を接種して発酵させ、抽出することにより得られる海藻発酵エキスを提供する。前記枯草菌は納豆菌(Bacillussubtilis natto、バチルス・ズブチルス・ナットウ)であることが好ましい。また、前記海藻は、褐藻類、緑藻類および紅藻類からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。本発明の海藻発酵エキスは、特に免疫賦活活性および/または抗腫瘍活性を有する。 また、本発明は海藻に枯草菌を接種して発酵させ、抽出することからなる、海藻発酵エキスの製造方法を提供する。前記枯草菌は納豆菌(Bacillus subtilis natto)であることが好ましい。 本発明は、また、前記海藻発酵エキスを含有する機能性食品や医薬品もまた提供する。なお、本発明において、食品は飲料を含む意味で使用する。 本発明の海藻発酵エキスは、枯草菌や納豆菌の存在下で発酵させたものである。従来技術では、海藻を枯草菌で発酵させることがなかった点で、本発明の海藻発酵エキスは新規な物質である。 また、本発明の発酵海藻エキスの製造方法は、海藻を酵素処理のような前処理をする必要がなく、そして海藻以外の栄養源を与える必要もなく、海藻発酵エキスを短時間に効率よく製造することができる。 本発明の海藻発酵エキスは、マウス投与試験においてマクロファージのサイトカイン(IL-12、TNFα、INFγなど)産生能を示したことから、発酵によって免疫賦活活性を発現したといえる。その活性は、免疫賦活作用の知られているアガリクスよりも優れている。また、本発明の海藻発酵エキスは、抗腫瘍活性も有意に示す。これらの特性を活かして、本発明の海藻発酵エキスを添加した機能性食品や医薬品を製造することができる。 本発明の海藻発酵エキスとその製造方法を、以下に説明する。本発明において、原料となる海藻は特に限定されない。海藻は褐藻類、緑藻類および紅藻類からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。海藻の具体例には、マコンブ、ミツイシコンブ、ホソメコンブ、ガゴメコンブなどのコンブ、ワカメ、アイヌワカメ、メカブ(ワカメの胞子葉)、チガイソ、ヒジキ、ホンダワラ、アカモク、ヅルビレア、ネレオキスチス、ハバノリ、カヤモノリ、カジメ、アラメ、モズクなどの褐藻;アオノリ、アナアオサ、ヒトエグサ、アミモヨウなどの緑藻;ならびにアマノリ、スサビノリ、フノリ、フクロフノリ、テングサ、ウミゾウメン、ダルス、イバラノリ、オゴノリ、マクサ、アサクサノリなどの紅藻が挙げられる。中でも、コンブ、ワカメ、メカブおよびモズクが容易に入手できる点で好ましく、マクロファージ産生能力および抗腫瘍活性に高い数値を示すコンブが特に好ましい。これらの海藻は、一種単独で用いてもよく、あるいは二種以上組み合わせて用いてもよい。 上記海藻を水洗して、塩分を除去する。適宜、天日乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、冷風乾燥などの乾燥手段で乾燥する。 乾燥した海藻は、適宜の手段で切断または粉砕する。好ましくは、切断を1〜5cm角の形状にすると、発酵後の機能性が高くなる。 海藻は、また、生の海藻をすりつぶして、ペースト状にしてもよい。 切断、粉砕、ペースト化などした乾燥または生の海藻に、水を添加する。水の添加量は、海藻(乾燥品)1gに対し、通常、25〜1000g、好ましくは50〜500gである。加水した海藻は、適宜、加熱殺菌してもよい。 本発明では、発酵前に酵素処理などの前処理を行う必要がない。しかし、本発明は、酵素処理などを排除する趣旨ではない。酵素処理に使用される酵素は、例えばセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アルギン酸分解酵素、フコイダン分解酵素、プロテアーゼ、アガラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼなどである。 加水した海藻に、枯草菌(Bacillus subtilis)を接種する。枯草菌(Bacillus subtilis)は、特に納豆菌(Bacillussubtilis natto)が好ましい。本発明に使用される納豆菌は、特に制限されず、市販のもの(例えば宮城野菌、成瀬菌、高橋菌)を使用してよい。 枯草菌や納豆菌は前培養を行うことが好ましい。前培養は、一般的に培養するのと同様の培地および培養条件が使用される。例えば、培地は、固体または液体培地のいずれかが使用できる。使用する微生物が資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機塩およびその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培地または天然培地のいずれであってもよい。市販の培地をそのまま使用してもよい。具体的には、菌株を、寒天を含有するLB培地にて一晩培養し、次いで、培養物を、LB培地を分抽したフラスコに一白金耳接種し、さらに、振とう培養機を用いて振とう培養する。 上記で得られた菌培養液(約1×108〜9細胞/ml換算)の海藻発酵への使用量は、海藻(乾燥品)1gに対して、通常、0.01〜100ml、好ましくは0.1〜10mlである。 本発明では、枯草菌(納豆菌を含む)は海に常在しない菌であるが、海藻以外の栄養源を与えずに菌を飢餓状態におくことで、菌は海藻を栄養源として利用し始める。したがって、菌の資化材を添加する必要がなく、また添加しない方が好ましい。一方で、発酵を促進するために、発酵促進剤を添加してもよい。 接菌した海藻は、通常、蒸気発生恒温器に入れて発酵させる。発酵は、フラスコのような小型のもので振とう培養してもよいし、ジャーファーメンターなどの発酵タンクを使用してもよい。 発酵温度は、通常、20〜45℃であり、好ましくは30〜40℃である。発酵温度が低すぎると、微生物の増殖・発酵状態が不良となり、逆に高すぎると、発酵液中の酵素などのタンパク成分が変化することがある。 発酵に要する期間は、pH、菌数などの条件により変わり得るが、通常、8時間〜30日間でよく、好ましくは10時間〜1週間、特に好ましくは12時間〜5日間である。 上記で得られた発酵液を濾過して、エキスと残渣とに分離する。濾過は、ガーゼ濾過、遠心濾過、圧搾瀘過などがある。 得られた海藻発酵エキスは、凍結保存し、使用時に適宜解凍して使用するのが好ましい。あるいは、海藻発酵エキスを、加熱乾燥や凍結乾燥してもよい。 本発明の海藻発酵エキスには、免疫賦活活性、抗腫瘍活性、ガン予防活性、マイトジェン活性、血圧降下作用、血栓溶解活性、血液凝固阻止作用、血液浄化作用、肝臓や血中のコレステロ−ル低下作用、糖尿病予防作用、糖尿病合併症予防作用、抗酸化作用、ミネラル吸収促進作用、整腸作用、美白効果、抗ウィルス活性、血管新生阻害活性などが期待できる。 したがって、本発明の海藻発酵エキスを食品に添加することによって、上記した活性や作用を有する機能性食品を作ることができる。本発明の機能性食品は、ヒトをはじめとして、家畜、愛玩動物にも適用し得る。 本発明の海藻発酵エキスを主成分して含有する機能食品は、通常、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、ドリンク、シロップ、ペースト、ゼリー、ビスケット、フレーク、ウエハースなどの形状に加工される。その製法は常法に従う。 上記健康機能食品には、健康機能食品に汎用される副成分、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、無水リン酸カルシウム、アルギン酸などの賦形剤;単シロップ、ブドウ糖、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コーンファイバー、水、エタノールなどの結合剤;デンプン、カオリン、ベントナイト、無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、コロイド状ケイ酸などの吸収剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;アルギン酸、寒天、デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングルコール酸ナトリウムなどの崩壊剤;ステアリルアルコール、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルなどの滑剤を適宜添加してよい。 カプセル剤は、エキスおよび担体を、硬質ゼラチン、軟質カプセルなどでできたカプセルに充填されたものである。ドリンクやシロップのような液体には、適宜、糖、ハチミツ、果汁などの呈味成分が添加される。 本発明の海藻発酵エキスは、通常の食品へ添加して、食品へ健康機能性を付加してもよい。食品は、例えば果汁飲料、炭酸飲料、水、緑茶、紅茶、コーヒー、ココア、牛乳、豆乳、酒など飲料;ガム、キャンディー、チョコレート、クッキー、ケーキ、プリン、シュークリーム、最中、団子、羊羹などの菓子類や甘味類;ゼリーなどのゲル状食品;バター、ヨーグルト、チーズなどの乳製品;パン、米飯、麺、ピザなどの穀物加工品;ハム、ソーセージ、パテなどの食肉加工品;かまぼこなどの水産練り製品;ドレッシング、醤油、味噌などの調味料;豆腐などの大豆製品;でんぷん加工品、野菜加工品ならびに油脂類などが挙げられる。 上記食品への発酵海藻エキスの添加量は、目的や用途によって変わり得るが、食品100g当たり、通常、0.01〜50g、好ましくは0.1〜25gである。 本発明はまた、本発明の海藻発酵エキスの上記活性や作用を有する医薬品を提供する。それは、免疫賦活活性剤、抗腫瘍剤、ガン予防剤、血圧降下剤、血栓溶解剤、血液凝固阻止剤、コレステロ−ル低下剤、肝機能改善剤、血糖値調節剤、糖尿病予防剤、糖尿病治療剤、糖尿病合併症予防剤、抗酸化剤、ミネラル吸収促進剤、整腸剤、抗ウィルス剤、血管新生阻害剤、美白用化粧料などである。 本発明の医薬品は、海藻発酵エキスと製薬上許容される担体とからなる。該担体は、本発明の目的に反しない公知の賦形剤や添加剤である。これらを常法により加工して、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、注射剤などに製剤化する。 製剤化した予防剤や治療剤は、経口投与、経腸投与、血管投与、注射投与などの方法で患者に適用される。なお、本発明の医薬品は、家畜、愛玩動物に適用してもよい。 本発明の医薬品における海藻発酵エキスの配合量は、用法、用量、製剤の種類などによって変わり得るが、一般に、0.001〜50重量%である。経口投与する場合の摂取量は特に限定されないが、それ以外は、海藻発酵エキスをベースとして、成人(体重50kg)1日当たり、0.001〜10g、より好ましくは0.01〜5gである。 本発明の海藻発酵エキスを、実施例を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。〔実施例1〕コンブ発酵エキス〔1〕コンブ発酵エキスの調製 納豆菌(Bacillus subtilis natto)株の前培養を以下のようにして行った。まず、納豆菌株(宮城野納豆菌製造所より入手)を、寒天を1.5%含有するLB培地(ペプトン1%、塩化ナトリウム1%、酵母エキス0.5%、pH6.8、水道水使用)にて、一晩培養した。次いで、培養物を100mlのLB培地を分抽した500ml容坂ロフラスコに一白金耳接種した。さらに、振とう培養機を用いて37℃、120rpm、ピッチ30mmの条件で20時間、振とう培養した。 海藻素材としてコンブ(乾燥品)1gを、500ml容坂ロフラスコに分取し、水道水100mlを加えた。次いで、前培養した納豆菌株の培養液(約1×109細胞/ml)2mlを、前記コンブ入りの坂口フラスコに接種した。その後、振とう培養機を用いて、30℃、120rpm、ピッチ30mmの条件で1日間振とう培養した。 1日培養したコンブ培養液をミキサーにかけた後、培養液をガーゼでろ過し、粗培養液を回収した。得られた粗培養液を250ml容遠心管に移し、遠心分離機(Kubota製、KR-20000T型)、ローター(Kubota製、RA-6型)を用いて、4℃、6000rpmの条件で10分間遠心分離した。得られた上澄み液を、コンブ発酵エキスとした。得られたものは、直ちに−30℃で凍結保存した。〔2〕マクロファージ試験 上記で得られたコンブ発酵エキスの有用性を、マウス腹腔内マクロファージのサイトカイン産生に及ぼす作用を指標に評価した。(試験液) コンブ発酵エキスの遠心上清溶液を原液とし、PBS(−)で段階希釈して、原液、3倍、9倍および27倍希釈液を用意した。 Positive controlとして、LPS(lipopolysaccharide、リポ多糖、E.coli由来)をPBS(−)で溶解し、濃度10および100μl/mlの溶液を作製した。以下、LPSを対照1という。また、Referencecontrolとして、アガリクス(仙生露 顆粒スタンダード、協和製)をPBS(−)で懸濁し、濃度10および100mg/mlの懸濁液を作製した。なお、アガリクスは溶液でないため、懸濁液を遠心した上清を希釈して使用した。以下、アガリクスを対照2という。(マクロファージのサイトカイン産生)(1)誘導物質の投与 6週齢の雄性ICR系マウス(日本エスエルシー(株)より入手)20匹を、9日間予備飼育して、以下の実験に供した。 チオグリコーレート培地(日水製薬製)を適当量秤量し、注射用蒸留水に懸濁し、4.05%濃度に調整した。この培地を高圧蒸気滅菌後、分注し、−20℃に使用時まで保存した。腹腔内マクロファージを採取する4日前に、上記培地を解凍し、2ml/マウスの投与量で腹腔内投与した。(2)マクロファージの採取とサイトカイン測定 マウスの腹部から腹腔液を注射器で採取後、4℃で1000rpm、10分間遠心し、10%FCSを含むRPMI1640培地を加えて懸濁させた。この懸濁液を一部取り、0.2%トリパンブルーで染色し、血球計算板で細胞数、生存率を計数した。細胞数を2×106個/mlに調整後、懸濁液を24穴培養プレート(住友ベークライト製)に1ml分注し、CO2インキュベータ内に静置して37℃、1時間培養した。このシャーレに温めたRPMI1640培地を加えて非付着細胞を洗浄除去し、残存した付着細胞をマクロファージとした。 このプレートの各wellに、濃度(原液、3倍、9倍または27倍希釈液)のコンブ発酵エキス溶液100μlと10%FCSを含むRPM1640培地900μlを加えた(10倍、30倍、90倍、270倍の希釈液となる)。各希釈液を、16時間培養し、遠心後の培養上清をサイトカイン測定に供した。サイトカインは、Endogen社のマウスIL-12測定キット、TNFα測定キットおよびIFNγ測定キットを用いて、それぞれERISA法にて測定した。 また、LPS(濃度10および100μg/ml)、ならびにアガリクス(濃度10および100mg/ml)の溶液100μlを、同様に培養した。なお、プレートのwellは、被検物質の各濃度当たり3well(n=3)、対照にはPBS(-)100μlと10%FCSを含むRPM1640培地900μlを添加した。 コンブ発酵エキスのマクロファージ試験結果を、表1にまとめるとともに、以下に説明する。(1)IL-12の産生 コンブ発酵エキスは、1700-3400pg/mlと高いIL-12産生量を示した。低濃度コンブ発酵エキスでの3400pg/mlという高い産生量は、LPS(対照1)またはアガリクス(対照2)と同程度であった。上記数値の幅は、エキスの濃度により依存性を意味し、それはコンブ発酵エキスの産生量は、低濃度側より高濃度側で抑制されるという負の濃度依存性を示すものであった。(2)TNFα コンブ発酵エキスによるTNFα産生量は、30-2100pg/mlという値を示し、LPSまたはアガリクスによる産生量よりも高かった。なお、数値の幅はエキスの濃度により依存性を意味し、その傾向は濃度依存的であった。(3)IFNγ コンブ発酵エキスは、LPS(対照1)よりやや低いものの、アガリクス(対照2)よりも顕著に高いIFNγ産生量を示した。なお、IFNγ産生は、希釈率90倍でピークを示し、それより高濃度では産生量が抑制された。〔3〕抗腫瘍試験 上記で得られたコンブ発酵エキスの有用性を、エキスのマウスEhrlich結節腫瘍に対する増殖抑制作用の有無で検討した。(試験液の調製) コンブ発酵エキスの原液を解凍して用いた。陰性対照物質としてコントロール水(コンブを入れずに水に納豆菌培養液を発酵条件と同量添加したもの)を用いた。以下、コントロール水を対照3という。(1)腫瘍細胞株の調製および移植 4週齢の雌性ICR系マウス(日本エスエルシー(株)より入手)を、7日間予備飼育して、以下の実験に供した。Ehrlich腫瘍細胞株(財団法人 微生物化学研究会付属創薬医科学研究所から分与)を、ICR系マウスで継代維持(腹水型)した。このマウスの腹水を採取し、滅菌生理食塩液で希釈し、8×106細胞/ml濃度の腫瘍細胞浮遊液を作製した。そして、細胞浮遊液0.25mlをマウスの鼠径部皮下に移植した(2×106細胞/マウス)。(2)コンブ発酵エキスの投与 マウス(10匹/群)に、腫瘍移植の7日前から移植の14日後までの3週間、1日1回の頻度で、コンブ発酵エキスの原液を強制経口投与した(0.1ml/10gb.w)。(3)腫瘍容積および腫瘍重量の測定 腫瘍移植日を0日とし、11日目のマウスの腫瘍の大きさを計測し、下記式: 一方、腫瘍重量は、移植日から14日目のマウスを解剖して腫瘍を摘出した後、その重量を測定した。 抗腫瘍試験の結果を表1に示すとともに、以下に説明する。(1)腫瘍容積 対照群の腫瘍容積が2000±260mm3であったのに対し、本発明のコンブ発酵エキスを投与したマウスの腫瘍容積は990±190mm3と、腫瘍容積の優位な抑制が見られた。(2)腫瘍重量 対照群が2.61±0.34gの腫瘍重量を示したのに対し、本発明のコンブ発酵エキスを投与したマウスの重量は、1.40±0.20gの重量を示し、有意な抑制を示した。なお、本実施例のマウスは、対照群の体重推移に比べて有意な体重変化を示さず、また、一般症状の特記すべき変化もなかった。 本発明のコンブ発酵エキスを投与したマウスは、マクロファージの活性化結果と一致して強い腫瘍増殖抑制効果を示した。この相関は、コンブ発酵エキスによる抗腫瘍メカニズムに、マクロファージ活性化に基づく免疫賦活作用が関与している可能性を示唆するものである。〔実施例2〕メカブ発酵エキス〔メカブ発酵エキスの調製〕 実施例1のコンブをメカブに変えた以外は実施例1と同様の操作で、メカブ発酵エキスを調製した。〔マクロファージ試験〕 実施例1のマクロファージ試験において、コンブ発酵エキスをメカブ発酵エキスに変えた以外は実施例1と同様の操作にて試験を行った。その結果、IL-12産生は、2000-3000pg/mlと高いIL-12産生量を示した。この産生量は、対照として用いたLPSまたはアガリクスと同程度であった。また、実施例1と同様に、低濃度側に比べて高濃度側が抑制されるパターンを示した。一方、TNFα産生はほとんどなかった。IFNγについては、濃度依存的なの産生を示したが、その量は軽度であった。〔抗腫瘍試験〕 実施例1の抗腫瘍試験において、コンブ発酵エキスをメカブ発酵エキスに変えた以外は実施例1と同様の操作にて、試験を行った。その結果、移植から11日目の腫瘍容積(890±90mm3)は、対照3と比べて有意な抑制を示した。また、腫瘍容積の場合と同様に、1.60±0.26gと腫瘍重量の抑制を示した。〔実施例3〕ワカメ発酵エキス〔ワカメ発酵エキスの調製〕 実施例1のコンブをワカメに変えた以外は、実施例1と同様の操作で、ワカメ発酵エキスを調製した。〔マクロファージ試験〕 実施例1のマクロファージ試験において、コンブ発酵エキスをワカメ発酵エキスに変えた以外は実施例1と同様の操作にて試験を行った。その結果、IL-12産生は、3300-3700pg/mlと高いIL-12産生量を示した。この産生量は、対照として用いたLPSまたはアガリクスと同程度であった。なお、産生量の濃度依存性は示さなかった。一方、THFα産生はほとんどなかった。また、IFNγ産生は、LPS(対照1)より低いものの、アガリクス(対照2)よりも高いIFNγ産生量を示した。なお、数値の幅はエキスの濃度により依存性を意味し、それは低濃度側に比べて高濃度側が抑制されるパターンを示した。〔抗腫瘍試験〕 実施例1の抗腫瘍試験において、コンブ発酵エキスをメカブ発酵エキスに変えた以外は実施例1と同様の操作にて、試験を行った。その結果、腫瘍容積、腫瘍重量共に、顕著な抑制効果を示さなかった。〔比較例1〕 実施例1において、納豆菌を乳酸菌(ラクトバチルス・プランタラム)に変えた以外は実施例1と同様の操作にて、コンブ発酵エキスの調製を行った。しかし、実施例1に見られるような発酵は進まなかった。〔比較例2〕 実施例1において、納豆菌を酵母菌(サッカロマイセス・セレビジエー)に変えた以外は実施例1と同様の操作にて、コンブ発酵エキスの調製を行った。しかし、実施例1に見られるような発酵は進まなかった。本発明の海藻発酵エキスを投与したマウスの腫瘍容積にみる抑止効果を示す図である。本発明の海藻発酵エキスを投与したマウスの腫瘍重量にみる抑止効果を示す図である。 海藻に枯草菌(Bacillus subtilis)を接種して発酵させ、抽出することにより得られる海藻発酵エキス。 前記枯草菌が納豆菌(Bacillus subtilis natto)である、請求項1に記載の海藻発酵エキス。 前記海藻が褐藻類、緑藻類および紅藻類からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載の海藻発酵エキス。 免疫賦活活性および/または抗腫瘍活性を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の海藻発酵エキス。 海藻に枯草菌を接種して発酵させ、抽出することからなる、海藻発酵エキスの製造方法。 前記枯草菌が納豆菌(Bacillus subtilis natto)である、請求項5に記載の海藻発酵エキスの製造方法。 前記請求項1〜4のいずれか一項に記載の海藻発酵エキスを含有する機能性食品または医薬品。 【課題】海藻を原料として人体の健康に有用な物質を製造する方法、およびその製造方法により得られる新規な有用物質を提供する。【解決手段】本発明の海藻発酵エキスは、海藻に枯草菌(Bacillus subtilis)、特に納豆菌(Bacillussubtilis natto)を接種して発酵させ、抽出することにより得られる。このエキスは、マクロファージ産生能力に基づく免疫賦活活性と抗腫瘍活性を示し、健康機能食品や医薬品への応用が期待できる。【選択図】 図1