タイトル: | 公開特許公報(A)_クマザサ属抽出物の製造方法、クマザサ属抽出物及びその用途 |
出願番号: | 2005146176 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 8/00,A61Q 5/00,A23L 2/38,A61K 8/96,A61Q 19/00,A61K 36/00,A61P 17/14,A23L 2/52 |
海谷 篤 駒舘 文朗 伊徳 行 JP 2006257067 公開特許公報(A) 20060928 2005146176 20050519 クマザサ属抽出物の製造方法、クマザサ属抽出物及びその用途 伊徳 行 392006064 大多和 明敏 100089314 大多和 曉子 100086999 海谷 篤 駒舘 文朗 伊徳 行 JP 2005037206 20050215 A61K 8/00 20060101AFI20060901BHJP A61Q 5/00 20060101ALI20060901BHJP A23L 2/38 20060101ALI20060901BHJP A61K 8/96 20060101ALI20060901BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20060901BHJP A61K 36/00 20060101ALI20060901BHJP A61P 17/14 20060101ALI20060901BHJP A23L 2/52 20060101ALI20060901BHJP JPA61K7/06A23L2/38 CA61K7/00 KA61K7/48A61K35/78A61P17/14A23L2/00 F 12 OL 17 4B017 4C083 4C088 4B017LC03 4B017LG15 4B017LP01 4C083AA111 4C083AA112 4C083AB032 4C083AC022 4C083AC072 4C083AC102 4C083AC122 4C083AC172 4C083AC242 4C083AC342 4C083AC352 4C083AC422 4C083AC432 4C083AC442 4C083AC482 4C083AC612 4C083AD092 4C083AD152 4C083AD222 4C083AD282 4C083AD332 4C083AD352 4C083AD492 4C083AD662 4C083BB41 4C083CC04 4C083CC05 4C083CC37 4C083DD41 4C083EE12 4C083EE22 4C088AB76 4C088BA12 4C088CA11 4C088CA22 4C088MA52 4C088MA63 4C088NA14 4C088ZA92 本発明は、クマザサ(隈笹または熊笹)属の生葉および茎を一次原料として圧搾し、圧搾汁を得た後の圧搾残渣物を有効に利用しようとするものであり、この圧搾残渣物を原料(二次原料)として加水後、60〜210℃で開放容器若しくは密閉容器内において加熱処理するか、若しくは該加熱処理後固形物をロ別して得られるクマザサ属の圧搾残渣物から有効成分を抽出するクマザサ属抽出物の製造方法に関するものであり、また、該二次原料をエチルアルコール・水混合物に浸漬して、二次原料中に含有する有効成分を抽出するクマザサ属抽出物の製造方法に関するものであり、かつこのクマザサ属抽出物を配合する化粧料、健康飲料への利用、特に、養毛・育毛剤への利用に関するものである。 従来、クマザサ(熊笹または隈笹)から有効成分を抽出する方法としては、生葉を15℃以下で強圧し得た液を10%エチルアルコールで殺菌して、濃縮後生エキスを得る方法(例えば特許文献1参照)、乾燥葉を浸水し煮沸して水溶性濃厚エキスを得る方法(例えば特許文献2参照)、葉及び稈を高温高圧下で蒸し煮してエキスを得る方法(例えば特許文献3参照)、生葉及び稈を常温で高圧圧搾することにより原液を得た後、高温で分留してエキスを得る方法(例えば特許文献4参照)および乾燥葉を細粉砕後エチルアルコール・水混合液で脂溶性物質を抽出した後、さらに水単独で水溶性物質を抽出する方法(例えば特許文献5参照)、植物類、キノコ類を加圧熱水抽出機によりエキスを抽出し、残渣は飽和水蒸気加圧熱処理機により再度抽出して効率よくエキス製品を得る方法及び装置(例えば特許文献6参照)などが知られている。 さらに、クマザサエキスを有効成分として使用する皮膚保護組成物としては、生葉又は乾燥葉を、60〜130℃の水で、常圧又は加圧抽出したエキスを有効成分とする組成物(例えば特許文献7参照)、養毛・育毛料としてはスギナ抽出物とニコチン誘導体等の血行促進剤、クマザサエキスなどの植物エキス、トウガラシチンキなどを組み合わせた毛髪化粧料(例えば特許文献8参照)、奇数の炭素鎖長を有する脂肪酸やアルコールとクマザサエキスやゲンチアナエキスなどの植物エキスを組み合わせた養育毛料(例えば特許文献9参照)などが知られている。 なお、クマザサについては牧野富太郎博士は明治34年2月20日発行の「植物学雑誌」に、「すずたけ」、「あづまざさ」、「みやこざさ」、「くまざさ」、「こくまざさ」、「ちまきざさ」、「しゃこたんざさ」、「くまいざさ」、「みやまざさ」、「おほくまざさ」、「ちしまざさ」など11種は、竹類中のBambusa属とは、花部構造、形態上異なるので別にくまざさ属の名前で新属を設けるのが妥当と提唱した(例えば非特許文献1参照)。特開平01−187071号日本特許1703690号特開昭62−148425号日本特許2002407号特開2003−116480号日本特許3212278号特開2003−201247号特開2001−288049号特開平10−45539号牧野富太郎;植物分類研究 上、p.182−183、誠文堂新光社(昭和12年12月21日発行) 前記のように、クマザサ(熊笹または隈笹)のエキスを得るための原料としては、生葉又は乾燥葉が主に用いられてきたが、生稈(茎)または乾燥稈(茎)を原料として用いる方法(前記の特許文献4及び5)も知られている。さらに、熊笹またはクマザサのエキスを得るには、一般的方法として乾燥葉を水に長時間浸漬して抽出する方法、水に浸漬した後加熱して煮出す方法、加水下高温で抽出する方法、葉及び茎をアルコール・水混合物で抽出する方法などが知られている。 しかし、生の葉及び茎を原料に用いた場合には、笹の葉及び茎部の硬い繊維組織に含まれる細胞結合体および有効成分を、満足に抽出ができず、クマザサを無駄なく有効利用できていないものであった。 また、乾燥葉及び茎を用いる場合には、乾燥することによって細かく粉砕することは可能なものの、繊維組織は硬くなり内部に存在する有効成分の抽出はより一層困難となる。乾燥させることで有効成分の変質等が惹起し、生葉及び茎に存在していたままの状態とは異なる抽出物になると考えられる。 本発明は、クマザサ(隈笹)属の生稈を常温高圧圧搾した後の残渣物に含まれる希少価値の頗る高い天然成分を無駄なく抽出し、有限資源である隈笹を無駄なく有効利用する方法を提供することを課題とするものである。本発明では予め常温下、高圧圧搾して圧搾汁を得た後の圧搾残渣物、即ち二次原料を有効利用することで、従来抽出し得なかった生葉及び茎の硬い繊維組織内に含まれる有効成分と結合水を得ることができる方法を提供するものである。 さらに、水抽出物またはエチルアルコール・水混合物抽出物を加熱下で留去して、着色の少ない、嫌味のない臭い、肌への安全性に優れた化粧料、特に養毛・育毛剤に適したクマザサ属抽出エキスを得ること並びに、着色の少ない、嫌味のない臭い、渋味がなく健康飲料用としても適するクマザサ属抽出物を得るものである。 本発明者は上記の課題を解決するために、各種植物の抽出方法及び抽出物を鋭意検討し、抗菌性及び保湿性を有し、且つ人間の肌に安全な化粧料素材および健康食品ならびに飲料素材としての処方を探り、クマザサ属の生葉および茎を圧搾し圧搾汁を得た後の圧搾残渣物を原料として、60〜210℃で開放容器若しくは密閉容器内において加熱、若しくは攪拌しながら加熱水と接触させ、または常温においてエチルアルコール・水混合物に浸漬して、圧搾残渣物中に含有する有効成分と組織水を抽出して得たエキスは、人の肌に使用する化粧料、特に養毛・育毛剤の配合成分として適すること、ならびに健康飲料の配合成分として適することを見出し、本発明に到達したものである。 即ち、本発明は(1)クマザサ(隈笹または熊笹)属の生稈である一次原料を常温下で細断し、該細断物を常温高圧圧搾して原形質内の薬効物質の原液を抽出して二次原料を得、該二次原料を乾燥させて粉砕し、この粉砕物に熱水による加水分解を施して多糖類を分解し、それによって単糖やオリゴ糖を抽出することを特徴とするクマザサ(隈笹または熊笹)属の生稈の非化学的2段階処理法、(2)クマザサ属の生葉および茎を一次原料として圧搾し、圧搾汁を絞った後のクマザサ属圧搾残渣物を二次原料として、加水後有効成分を抽出することを特徴とするクマザサ属抽出物の製造方法、(3)2記載の二次原料に加水後、開放容器若しくは密閉容器内において60〜210℃で加熱処理することを特徴とするクマザサ属抽出物の製造方法、(4)2記載の二次原料を常温下においてエチルアルコール・水混合液に浸漬して有効成分を抽出することを特徴とするクマザサ属抽出物の製造方法、(5)エチルアルコール・水混合液が50重量%以下のエチルアルコールを含む混合液であることを特徴とする4記載のクマザサ属抽出物の製造方法、(6)2記載の二次原料に加水後、開放容器若しくは密閉容器内において60〜210℃で加熱処理した後、固形物を除去若しくは除去せずして分留し、留出液及び蒸発残渣物としてクマザサ属抽出物を得ることを特徴とする2又は3記載のクマザサ属抽出物の製造方法、(7)2記載の二次原料を50重量%以下のエチルアルコールを含む水に、常温下に浸漬した後、固形分をロ別して得たロ液を加熱して、エチルアルコールと水を留去することを特徴とする4又は5記載のクマザサ属抽出物の製造方法、(8)エチルアルコールと水を留去した後、更に、再び水溶液に置換した後、減圧下、70℃以下で分留することを特徴とする7記載のクマザサ属抽出物の製造方法、(9)2、3、4、5、6、7又は8記載の製造方法によって得られたクマザサ属抽出物、(10)9記載のクマザサ属抽出物を配合してなる養毛・育毛剤、(11)9記載のクマザサ属抽出物を配合してなる化粧料、及び(12)9記載のクマザサ属抽出物を配合してなる健康飲料、に関する。 本発明を完成したことで、天然資源であるクマザサ属を有効に利用できることになった。 クマザサ属を常温で高圧圧搾した後の圧搾残渣物を、再利用する試みは従来行われていなかったことであり、資源保護の観点からも有用な方法である。 この方法は、酸や高温を用いる他の製法と比べて、本来笹が持つ有効成分の破壊、変性を大幅に防ぐことができる非常にマイルドな製法であり、得られたクマザサ属抽出物は養毛、育毛に極めて有効であり、又化粧料及び健康飲料としてもすぐれたものである。 本発明で用いる原料のクマザサ属は、日本全国に自生するクマザサ属のササ全てを用いることができるが、人の生活圏から離れた清浄な地に自生するクマザサやチシマザサが好ましい。 自生するクマザサ属のササを伐採してできるだけ早く、葉および茎を分けずに常温において、約200 kg/cm2〜700kg/cm2の高圧下圧搾して、圧搾汁を得た後の圧搾残渣物は、見かけはほとんど乾燥しているように見える。しかし、一般に植物を十分に乾燥させても組織結合水は、まだ約10数%残存すると言われているので、このクマザサ属圧搾残渣物組織内には、有効成分と結合水は十分な量残存しているといえる。 もちろん圧搾効率を高める上で、圧搾する前に伐採したクマザサ属のササは細断しておくことが好ましい。 本発明では、(1)水を抽出媒体とする場合には、60〜210℃で開放容器若しくは密閉容器内において加熱、あるいは、攪拌しながら加熱水と接触させることで該成分は抽出できる。一般に160℃を超える温度で加熱すると植物中の糖質が加水分解を起こすといわれるが、本発明の目的からは支障はない。(2)エチルアルコール・水混合液で抽出する場合には、50重量%のエチルアルコールを含む混合液に、該圧搾残渣物を常温で1ヶ月〜数ヶ月浸漬して抽出する。浸漬時間が1ヶ月よりも短いと抽出効率は悪く、また数ヶ月以上浸漬すると抽出効率は向上するが経済的ではない。 水を抽出媒体とした場合には、一旦ろ過して固形物を除いて得た水溶液または、ろ過せず固形物を入れた容器内において、減圧下約70℃以下で分留することで、抽出エキス即ち抽出物が得られる。 上記の過程でロ過により固形物を除いて得た水溶液そのままでも、本発明の目的の用途に使用することはできるが、渋みのある味を呈しているため、化粧品や飲料に配合して用いるにはやや不向きである。したがって、透明で嫌味のない味のクマザサ属抽出物を得るには、減圧下約70℃以下で分留して留出抽出物として得ることが好ましい。 エチルアルコール・水混合液のエチルアルコール濃度が50%を越すと可溶成分の抽出率が低下し、可燃物としての取扱上の問題も生じる。 エチルアルコール・水混合液を抽出媒体とした場合には、固形物をろ過により除去した後、ロ液を減圧下約50℃以下でエチルアルコールを水と共に留去して、再び水溶液に置換した後、約70℃以下、減圧下で分留することで、抽出物が得られる。 上記の過程でエチルアルコールを水により置換した水溶液そのままでも、本発明の目的の用途に使用することはできるが、水を抽出媒体とした場合よりもさらに渋みが強く、化粧品や飲料に配合して用いるにはやや不向きである。 したがって、透明で嫌味のない味のクマザサ属抽出物を得るには、減圧下約70℃以下で分留して得ることが好ましい。 最終的なクマザサ属抽出物中のエチルアルコールは、化粧品配合剤としてのみ使用するのであれば、数重量%残存しても支障はないが、健康飲料用として配合する目的には、ほぼ完全に水で置換されていることが望ましい。 上述のようにして得たクマザサ属抽出物は、着色の少なく、臭いに嫌味がなく、肌への安全性に優れ、化粧料への配合が容易であり、さらに渋みがなく、むしろ甘い味のする液体であり、健康飲料への配合が容易である。 水を媒体として得たクマザサ属抽出物とエチルアルコール・水混合液を媒体として得たクマザサ属抽出物はそれぞれ単独で使用してもよいし、任意の比率で混合して使用することもできる。 最終的なクマザサ属抽出物中のエチルアルコールは、化粧品配合剤としてのみ使用するのであれば、数重量%以下残存しても支障はないが、健康飲料用として配合する目的には、ほぼ完全に水で置換されていなくてはならない。 水及びエチルアルコール・水混合液のいずれかを抽出媒体として留出抽出物を得た後の蒸発残渣物は、一部を留出抽出物に混合して使用することもできる。 本発明で用いる抽出媒体としての水は、水道水も用いることができるが、塩素殺菌をしていない清浄な湧き水若しくはイオン交換水又は蒸留水が望ましい。 また、本発明で用いるエチルアルコールは、我国において食品加工用として用いるために定められている醸造用エチルアルコールが好ましい。 日本人の健常人の頭の毛の数は約10万本と言われているが、ヘアサイクルは約5年とすると1日の抜け毛は55本程度である。 今日、生活環境や食習慣の変化とともに、脱毛症の種類も増加している。これらの脱毛症の一般的な分類としては、井上哲男、八木原陽一著「毛髪の科学と診断(改訂版)」(薬事日報新書04、2002.2.1)によると、休止期毛性脱毛症、成長期毛脱毛症に分けられる。 休止期毛脱毛症には、男性型脱毛症(若年性脱毛症・壮年製脱毛症)、分娩後脱毛症・ピル服用後脱毛症、脂漏性脱毛症、甲状腺機能障害による脱毛、ダイエットによる脱毛、ビタミンA過剰脱毛症、薬剤性脱毛症、牽引性脱毛症などがあり、成長期毛脱毛症には、円形脱毛症、圧迫性脱毛症、薬剤性脱毛症、梅毒性脱毛症が含まれる。 育毛剤は頭皮や毛髪をすこやかに保つための製品であり、日本においては薬事法上化粧品に属する養毛料と医薬部外品に属する育毛料(正しくは育毛剤)がある。 養毛料はフケ・かゆみを抑え、不足しがちな水分、油分などを補給して、毛髪と頭皮の健康を保つものであり、育毛料は育毛、脱毛の予防、発毛促進、フケ・かゆみを抑えるなどより直接的に育毛効果を備えたものであり、その多くは薬用育毛剤、薬用発毛促進剤など名称に「薬用」をつけた表示が許されている。 育毛剤の機能は、末梢血管を拡張させて、血流を増やすことで、毛乳頭が正常に働き、毛母細胞に必要な栄養分やエネルギーを与え、健康な髪ができて毛根の代謝が促進される。毛母細胞は分裂増殖し、分化して毛がつくられて成長し、育毛効果が現れる。そのほかには、発毛の促進、脱毛の予防、病後や産後の脱毛、育毛、養毛、薄毛などの効果やフケ・かゆみを抑えるなどの機能も有している。 育毛剤の成分としては、以下に挙げる成分などが用いられている。(1) 末梢血管拡張剤としては、頭皮を刺激し皮膚温度を上昇させる局所刺激剤である、トウガラシチンキ、ショウガチンキ、メントール、ハッカ油、カンファー、ニコチン酸ベンジル、血行促進剤の朝鮮人参エキス、ニンニクエキスその他、センブリエキス、ビタミンE、塩化カプロニウム、ゲンチアナエキス、セファラチンなどが挙げられる。(2) 頭髪代謝活性化剤としては、毛の成長に必要な皮膚呼吸関連酵素の活性化や毛母細胞へのエネルギー供給のために必要な物質が配合される。例えば、パントテン酸類、クロロフィル、ヒノキチオール、プラセンタエキス、ペンタデカン酸グリセリル、感光素などを挙げることができる。(3) 栄養補給剤としては、ビタミンの不足を補うために、ビタミンA 、B2、B6、C、D、Hなどのほか、毛髪特有のアミノ酸であるシスティン、メチオニン、セリンなどが配合される。(4) 抗脂漏剤としては、フケの原因になる皮脂分泌を抑える成分であり、イオウ、チオキソロン、ビタミンB6およびその誘導体などがある。(5) 殺菌剤としては、皮脂を栄養分とする微生物の活動を抑えるための成分であり、塩酸クロルヘキシジン、四級アンモニウム塩や感光素が配合される。(6) 角質溶解剤としては、角質があまり厚くならないうちに膨潤させてフケを防止するための成分として、サリチル酸、レゾルシン、乳酸などが配合される。(7) 止痒・消炎剤としては、かゆみを防ぐために塩酸ジフェンヒドラミン、グリチルレチン酸が配合される。(8) 保湿剤としては、頭皮角質の乾燥によるフケには、角質軟化と水分維持のために、グリセリンやピロリドンカルボン酸、ヒアルロン酸などが用いられ、角質の油分によるフケにはヒマシ油などが用いられる。(9) 抗菌剤としては、ピロクトンオラミンや硝酸ミコナゾールなどが用いられている。 本発明のクマザサ属抽出物がいかなる作用機序によって、養毛・育毛効果を発揮するのは現段階では不明ながら、上記の通常養毛・育毛剤に使用されている成分から勘案するに、本発明のクマザサ属抽出物が末梢血管の拡張作用や頭髪代謝活性を促進しているものと推察される。 本発明のクマザサ属抽出物を配合して化粧料を製造する際の添加成分には、化粧水、乳液等の美容液、固形石鹸などに通常用いるもの、たとえば、保湿剤、pH調整剤、抗菌剤、収斂剤、酸化防止剤、色素、香料および/又は安定剤が挙げられる。また、本発明のクマザサ属抽出物を配合して養毛・育毛料を製造する場合の添加剤には、前述の末梢血管拡張剤、頭髪代謝活性化剤、栄養補給剤、抗脂漏剤、殺菌剤、角質溶解剤、止痒・消炎剤、保湿剤、抗菌剤など酸化防止剤、色素、香料および/又は安定剤が挙げられる。 さらに、本発明のクマザサ属抽出物を配合して、健康飲料を製造する場合には、食品製造に通常用いられるビタミン剤、酸味料、甘味料、糖質、アミノ酸類などを配合することができるが、これらに限定されるものではない。 また、要すればチシマザサ抽出物を常法にしたがって活性炭によるロ過を行って脱臭・脱色処理をしたものを、或いは活性炭による脱臭・脱色処理後、スプレー乾燥して粉末として使用することができる。 以下、本発明のクマザサ属抽出物の実施例として、隈笹抽出物、チシマザサ抽出物の実施例をあげる。 隈笹の生稈を細断機で細断する。この一次原料としての細断生稈を常温で圧搾機により400kg/cm2程度までの高圧下圧搾する。この一次処理の圧搾工程を経ることにより得られた笹(ササ)樹液・エキス100%100gからは表1の分析試験成績書に示す分析結果が得られた。 前記一次処理後の二次原料を乾燥させた後に粉砕し、それに対して熱水による加水分解を施すことにより得られた笹(ササ)樹液100gからは表2の分析試験成績書に示す分析結果が得られた。 以上の分析結果からも明らかなように、一次処理による常温高圧圧搾工程において隈笹の生稈に含まれるアミノ酸等の熱による変性が起こり得る成分を抽出した後の熱水による加水分解の二次処理ではアミノ酸は抽出されていないことが明らかである。 しかし、熱水による加水分解を施すと、結合分子数の多い多糖類が熱分解してアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリンなどが抽出される。 上記の一次処理及び二次処理を経た残りの残滓物は他物と混合し発酵を施すなどの適宜の加工により家畜の飼料として配合利用できる。1.抽出用原料の調製; チシマザサ自生地より伐採した生葉及び茎を含むチシマザサ50kgを、長さ約10〜30mmに細断後、約470kg /cm2の高圧力下で圧搾して、圧搾汁4kg 、チシマザサ圧搾残渣物(I)45kg を得た。2.チシマザサ抽出物の採取方法 (1)水を媒体とする常圧煮沸による抽出 上記のチシマザサ圧搾残渣物(I)を、風乾後300g採取し、市販精製水3,500gと一緒に、容量5リットルの琺瑯製パスタパンに投入した。これを電磁誘導型電気加熱器で加熱し、液温約95℃で13.5時間煮沸抽出後、室温まで冷却し、ロ過を行って薄茶色のロ液2,087gを得た。 <高沸点物の確認> ロ液を蒸発乾固することで高沸点物の存在量を確認するため、100gのロ液をロータリーエバポレーターを用いて、浴温を45℃に保ち、突沸に注意しながら最終減圧度20hPaまで蒸発乾固して、蒸発残渣物0.975gを得た。この蒸発残渣物は原料圧搾残渣物に対して計算すると約6.38%に相当することがわかった。<抽出エキスの採取> ロ液の残り1,486gを再びロータリーエバポレーターを用いて、浴温を45℃に保ち、最終減圧度20hPaまでに留出した液1,220gを回収した。 回収した分留液は、淡黄色で透明な液体で、甘く心地よい香りを有するものであった。 蒸発残分は淡褐色の粘性を有した液体であった。 上記の方法によって調製されたチシマザサ抽出物の物性は以下のとおりである。 糖質 0.7%以下 蛋白質 0.06%以下 脂質 0.01%以下 灰分 0.07%以下 水分 99.16%以上 該チシマザサ抽出物は、嫌味のない匂いを有する透明な液体で、化粧品や飲料用配合剤として用いるに適している。 (2)加圧熱水による抽出 チシマザサ圧搾残渣物(I)60kgを、ジャケット付で、攪拌機を備えた容量200リットルの圧力容器に仕込み、精製水100kgを注入した。 ジャケットに12kg /cm2の高圧スチームを注入し、内容物を約180℃に保ち、5時間加熱・攪拌しながらチシマザサ圧搾残渣物から有効成分を抽出すると共に、糖類を熱水分解させた。<抽出エキスの採取> 上記容器内ジャケットに冷却水を注入して、攪拌を継続しながら液温が70℃に達したら、真空ポンプにより系内を徐々に減圧にしてゆき、最終減圧度50hpaに達する間に、系内から有効成分を含む留出液として留出させ63kgを得た。 回収した分留液は、淡黄色で透明な水溶液で、甘く心地よい香りを有するものであった。 蒸発残分は淡褐色の粘性を有した液体と抽出残渣であった。 上記の方法によって回収されたチシマザサ抽出物の物性は以下のとおりである。 糖質 0.8%以下 蛋白質 0.08%以下 脂質 0.1%以下 灰分 0.06%以下 水分 98.96%以上 (3)20wt%エチルアルコール・水混合液による抽出 チシマザサ圧搾残渣物(I)250gを、内容量5リットル、ふた付ガラス容器に入れ、予め調製した試薬特級エチルアルコール20wt%の水溶液2500gを加え、室温、暗所に106日保管した。この間時々容器を振り、内容物を混合した。<抽出エキスの採取> 3ヵ月後上記の内容物を、吸引漏斗を用いてろ過して、ロ液1590gを回収した。 このロ液を、ロータリーエバポレーターを用いて、浴温を45℃に保ち、常圧から50hpaまで徐々に減圧度を高めながら、ロ液の注入が終了したら精製水だけを系内に注入して、留出液にエチルアルコールの臭いがなくなるまで、エチルアルコールと水を留去した。最終減圧度は20hPaで、容器内容物乾固状態になった。 蒸発残分は、黄褐色の粘性を有し、甘く心地よい香りを有し、味は多少苦味を有していたが。エチルアルコールの臭いは全くなかった。 この蒸発残分は10.17gで、原料チシマザサ圧搾残渣物に対して、約4.1%に相当する。 この蒸発残分に精製水760gを加え、かき混ぜて溶解させた。(約1.3wt%である。) 上記のように調製した蒸発残分水溶液は、ロータリーエバポレーターを用いて、浴温を45℃に保ち、常圧から最終減圧度20hpaまで留出した留出液755gを回収した。チシマザサ抽出物は、淡黄色の甘く心地よい香りを有し、苦味はほとんどない液体で、化粧品や飲料用配合剤として用いるに適している。 このチシマザサ抽出物の物性は以下のとおりである。 糖質 0.7%以下 蛋白質 0.06%以下 脂質 0.01%以下 灰分 0.06%以下 水分 99.17%以上3.養毛・育毛効果の試験<人の養毛・育毛試験> 青森市大字意石江字江渡74-3 医療法人ベルソンテすずき皮膚科院長 医学博士 鈴木 賢二先生に、通院の患者の了解の下で施術してもらった。1)被験者 男性3名、女性2名の被験者の試験前の頭皮の状態を表―3に示した。2)使用方法・手順 ・被験者には通常の洗髪をしてもらう。 ・洗髪後、実施例2−(2)の加圧熱水によるチシマザサ抽出物約10mlを、直接頭皮に摺りこむよう塗布した。洗髪しない日も同様に就寝前に塗布してもらった。この作業を1ヶ月継続してもらった。3)判定 ・目視にて判定 以上の結果のように、通院患者5名に、チシマザサ抽出物単独を1ヶ月塗布することで、全体に毛髪のボリュームが出てきた、毛髪が生えてきたなど、顕著な改善が認められ、本発明チシマザサ抽出物の養毛・育毛効果が認められた。4.化粧品の調製以下に、2の方法で得たチシマザサ抽出物を加えた化粧品の配合例を示す。<処方−1>化粧水(弱酸性タイプのスキンケアローション) 実施例2−(2)の加圧熱水によるチシマザサ抽出物を用いた。 (1)から(7)を混合し、常温下で加熱溶解後、常法に従って弱酸性タイプのスキンケアローションを作製した。該スキンケアローションを3ヶ月保存したのち、塗布試験を行ったところ異臭も無く、しっとり感を備えた、良好なスキンケアローションであった。<処方−2>化粧水(スキントリートメントローション) 実施例2−(2)の加圧熱水によるチシマザサ抽出物を用いた。 (1)および(9)〜(12)を80〜85℃に加熱溶解して水相液を調整し、これに予め(2)から(8)を溶解して80〜85℃の温度に加熱した油相液を混合して、常法に従ってスキントリートメントローション作製した。 得られたスキントリートメントローションを塗布した結果、特段の嫌味も無く、しっとり感があり、きめ細かな肌を与え、肌荒れに有効であった。<処方−3>乳液(ミルキーローション) 実施例2−(1)の常圧煮沸によるチシマザサ抽出物を用いた。 (2)から(12)を80〜85℃の温度に加熱溶解して油相液を調製し、これに予め(1)および(13)から(17)を溶解して80〜85℃の温度に加熱した水溶液を混合して常法に従って乳液を作製した。冷却後(18)を混合してミルキーローションを得た。 得られたミルキーローションを室温下に3ヶ月間保存したところ変化は認められず、安定したものであり、塗布試験の結果、べとつきがなく、さっぱり感のあるミルキーローションであった。<処方−4>美容液(ジェル状美容液) 実施例2−(3)の20wt%エチルアルコール・水混合液によるチシマザサ抽出物を用いた。 (1)から(5)を混合した水溶液に、予め(6)〜(10)を溶解した油相液を均一に混合し、これに(11)を加えて増粘させ、さらに(12)〜(14)を加えてジェル状の美容液を作製した。該ジェル状美容液を常温下で3ヶ月保存したのち、塗布試験を行ったところ安定であり、延びもあり、しっとり感を備えた、良好なジェル状美容液を得た。<処方−5>モイスチャークリーム 実施例2−(2)の加圧熱水によるチシマザサ抽出物を用いた。 (2)から(10)を混合し、80〜85℃の温度下で加熱溶解後、油相液を調製し、これに予め(1)および(11)〜(14)を80〜85℃の温度下に加熱溶解して得た水溶液を常法に従って混合してモイスチャークリームを作製した。該モイスチャークリームを3ヶ月保存したところ品質の変化もなく安定であった。これについて塗布試験を行った結果、異臭も無く、エモリエント性の高い、しっとり感を備えた良好なモイスチャークリームを得た。5.保健機能食品の調製 以下に、実施例2−(2)の加圧熱水によるチシマザサ抽出物を加えた保健機能食品の処方例を示す。 なお、チシマザサ抽出物は活性炭によるロ過を行って脱臭・脱色処理をしたものをドリンク用に、錠剤等は活性炭による脱臭・脱色処理後、スプレー乾燥した粉末を使用した。<処方−6>ドリンク剤 (1)から(4)を(5)に溶解させ、ドリンク剤を調製した。チシマザサ抽出物特有のほのかに甘い香りを有した飲料である。<処方−7>錠剤 (1)は実施例2−(3)の20wt%エチルアルコール・水混合液によるチシマザサ抽出物からエチルアルコールを完全に蒸発させ、水に再溶解させた後スプレー乾燥処理して得たものである。 (1)〜(14)を混合したのち打錠機にかけ錠剤とした。処方−7は加齢による皮膚の老化の一つである肌の潤い、ハリを改善することが期待される。<処方−8>散剤 (1)は処方−7で用いたものと同じスプレー乾燥粉末を用いた。 (1)〜(11)を混合したのち散剤とした。クマザサ(隈笹または熊笹)属の生稈である一次原料を常温下で細断し、該細断物を常温高圧圧搾して原形質内の薬効物質の原液を抽出して二次原料を得、該二次原料を乾燥させて粉砕し、この粉砕物に熱水による加水分解を施して多糖類を分解し、それによって単糖やオリゴ糖を抽出することを特徴とするクマザサ(隈笹または熊笹)属の生稈の非化学的2段階処理法。クマザサ属の生葉および茎を一次原料として圧搾し、圧搾汁を絞った後のクマザサ属圧搾残渣物を二次原料として、加水後有効成分を抽出することを特徴とするクマザサ属抽出物の製造方法。請求項2記載の二次原料に加水後、開放容器若しくは密閉容器内において60〜210℃で加熱処理することを特徴とするクマザサ属抽出物の製造方法。請求項2記載の二次原料を常温下においてエチルアルコール・水混合液に浸漬して有効成分を抽出することを特徴とするクマザサ属抽出物の製造方法。エチルアルコール・水混合液が50重量%以下のエチルアルコールを含む混合液であることを特徴とする請求項4記載のクマザサ属抽出物の製造方法。請求項2記載の二次原料に加水後、開放容器若しくは密閉容器内において60〜210℃で加熱処理した後、固形物を除去若しくは除去せずして分留し、留出液及び残留液としてクマザサ属抽出物を得ることを特徴とする請求項2又は3項記載のクマザサ属抽出物の製造方法。請求項2記載の二次原料を50重量%以下のエチルアルコールを含む水に、常温下に浸漬した後、固形分をロ別して得たロ液を加熱して、エチルアルコールと水を留去することを特徴とする請求項4又は5記載のクマザサ属抽出物の製造方法。エチルアルコールと水を留去した後、更に、再び水溶液に置換した後、減圧下、70℃以下で分留することを特徴とする請求項7記載のクマザサ属抽出物の製造方法。請求項2、3、4、5、6、7又は8記載の製造方法によって得られたクマザサ属抽出物。請求項9記載のクマザサ属抽出物を配合してなる養毛・育毛剤。請求項9記載のクマザサ属抽出物を配合してなる化粧料。請求項9記載のクマザサ属抽出物を配合してなる健康飲料。 【課題】クマザサ属抽出物の製造方法とその利用方法【解決手段】クマザサ属の生葉および茎を圧搾して圧搾汁を絞った後のクマザサ属圧搾残渣物を原料として、加水後開放容器若しくは密閉容器内において60〜210℃でクマザサ属の有効成分を抽出してクマザサ属抽出物を製造するか、若しくは該原料に50wt%エチルアルコール・水混合液に浸漬して有効成分を抽出した後、アルコールを留去することによってクマザサ属抽出物を製造する方法、これらの方法で得られたクマザサ属抽出物、及びこれらのクマザサ属抽出物を配合した、養毛・育毛剤、化粧料および健康食品を提供する。