生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_グルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法
出願番号:2005138306
年次:2006
IPC分類:C12P 19/02,C12P 17/18,C12R 1/645


特許情報キャッシュ

濱保 健一 田所 宏基 岸野 恵理子 伊藤 哲也 藤田 孝輝 原 耕三 JP 2006314223 公開特許公報(A) 20061124 2005138306 20050511 グルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法 株式会社横浜国際バイオ研究所 597112483 矢野 裕也 100086221 濱保 健一 田所 宏基 岸野 恵理子 伊藤 哲也 藤田 孝輝 原 耕三 C12P 19/02 20060101AFI20061027BHJP C12P 17/18 20060101ALI20061027BHJP C12R 1/645 20060101ALN20061027BHJP JPC12P19/02C12P17/18 DC12P17/18 DC12R1:645C12P19/02C12R1:645 4 OL 12 4B064 4B064AF02 4B064CA06 4B064CA21 4B064CD09 4B064CE06 4B064CE09 4B064CE11 4B064CE15 4B064CE16 4B064DA01 4B064DA10 4B064DA16 本発明はグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法に関し、更に詳細にはショ糖を酸化し、ショ糖カルボン酸(及びその塩)(グルクロニル−フラクトシド,β−D−フラクトシル−(2→1)−α−D−グルクロン酸及びその塩)とし、次いで酵母等の微生物を加え、そのフラクトース部分を加水分解すると共に資化し、生成するグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンを採取することを特徴とするグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法に関する。 グルクロン酸及びグルクロノラクトン又はその誘導体は、広く医薬品、医薬品原料として利用されている。これらグルクロン酸やグルクロノラクトンの合成方法は種々知られている。一般的な方法としては、グルコース誘導体あるいは澱粉などのグルコース誘導体を原料として、硝酸などの窒素化合物を用いて酸化し、加水分解してグルクロン酸及びグルクロノラクトンを得る方法がある(特許文献1、2参照)。 しかしながら、上記方法は工業的なスケールで行うことのできる合成方法であるが、酸化剤として使用する窒素酸化物が比較的コストがかかる。また、副生する一酸化窒素ガスが発泡し、スケールが巨大化する他、この副生ガスが公害の原因になる。そのため、環境問題が厳しくなっている昨今、回収装置が必要であるという問題がある。改良発明もあるが、この方法は副生ガスの問題は解決しているが、収率の向上という未解決の問題を抱えている(特許文献3、4参照)。 また、グルコースのC−1位を保護し、次いでC−6位を酸化した後、加水分解し、脱保護し、グルクロン酸及びグルクロノラクトンを得る方法がある。この方法は、脱保護の工程が複雑であるという問題を抱えている(特許文献5参照)。 また、酸化触媒6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシル(TEMPO)による選択的酸化を行う方法もある(特許文献6参照)。この方法は、変換効率は高いが、好ましい原料は、グルコースのC−1位を保護したメチルグルコシド等のモノサッカライド誘導体である。また、TEMPOを代表とするアミン酸化体の製造コストは高い上に、人体に悪影響を与える可能性がある。 更に、これらを解決する方法として、吸着樹脂を用いて触媒であるアミン酸化体と共に、ハロゲン含有酸化物又はハロゲン含有化合物の電解酸化物と反応させることを特徴とする方法も提案されている(特許文献7参照)。 しかし、この方法はグルコース誘導体のウロン酸への変換効率は高く、触媒の回収が容易であるが、やはり触媒は高価であることは変わりない。しかも、原料のグルコース誘導体にはショ糖も含まれているが、好ましいものは比較的高価なメチル−α−グルコシド、イソプロピル−α及びβグルコシドである。また、使用する原料としてハロゲン酸イオンを生じる次亜塩素酸ナトリウムなどもあまり安全な原料といえない。この方法でメチル−α−グルコピラノシドウロン酸など、得られたグルクロン酸誘導体からのグルクロノラクトンの合成は、定法の加水分解反応に付すという工程が必要である。 一方、トレハロースを原料として、酸化白金、パラジウム・炭素、白金・炭素などの酸化触媒を使用し、トレハロースカルボン酸(α−D−グルクロニル−α−D−グルクロン酸塩)を調製し、酸もしくは酵素を用いて加水分解し、目的のグルクロン酸及びグルクロノラクトンを得る方法が開示されている(特許文献8参照)。 この方法は、原料からの収率が良い反面、酸化触媒の必要量が多く、コストがかかる上に、中間原料のトレハロースカルボン酸のグルコシド結合は安定であるため、比較的過激な酸加水分解を行わなければ、グルクロン酸が遊離しない。また、α−グルクロニダーゼなどの酵素を用いる方法もあるが、その価格は一般的に高価な上に、その加水分解能は高くない。特公昭46−3871号公報英国特許第900977号特公昭42−2595号公報特公昭43−5882号公報特公昭44−7325号公報特開平2−107790号公報特開平11−147043号公報特開平10−251263号公報 斯かる状況に鑑み、本発明は高収率、廉価、容易、且つ安全にグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンを製造し得る方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、鋭意研究の結果、ショ糖を原料としてショ糖カルボン酸(及び/又はその塩)(グルクロニル−フラクトシド)を調製し、これに酵母などのインベルターゼ活性を有する微生物を作用せしめることにより、高収率で目的のグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンが得られることを見出した。 また、その製造工程において、硝酸等の窒素酸化物等を酸化剤として使用しないか、使用する場合でも、その量は僅かなので安全で、且つ環境に影響を与えることなく、目的物を製造できる。 更に、酵母などの添加量、反応条件、脱塩、結晶化方法を検討し、従来よりも簡便で効率の良い生産方法を行うことができるという知見を得て、本発明を完成するに至った。 請求項1に記載の本発明は、ショ糖を酸化してショ糖カルボン酸又はその塩とし、次いでインベルターゼ活性を有する微生物を加えて、該ショ糖カルボン酸又はその塩のフラクトース部分を加水分解すると共に資化し、生成するグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンを採取することを特徴とするグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法である。 請求項2に記載の本発明は、インベルターゼ活性を有する微生物が、酵母である請求項1記載の製造方法である。 請求項3に記載の本発明は、ショ糖が、精製糖、ファインリカー、原料糖、ビート糖、加糖調製品、メイプルシロップ又は廃糖蜜である請求項1記載の製造方法である。 請求項4に記載の本発明は、ショ糖カルボン酸又はその塩にインベルターゼ活性を有する微生物を加えて、該ショ糖カルボン酸又はその塩のフラクトース部分を加水分解する反応が、濃度1〜50%のショ糖カルボン酸又はその塩の水溶液に温度0〜60℃、pH3〜10にて該微生物を作用させることにより行う請求項1記載の製造方法である。 本発明より、安価な原料であるショ糖より生産できるだけでなく、飛躍的高収率で目的のグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンが得られる。 しかも、上記の如く、その製造工程において、硝酸等の窒素酸化物等を酸化剤として使用しないか、使用する場合でも、その量はごく僅かなので安全で、且つ環境に影響を与えることなく、目的物を製造できる。しかも、設備投資も比較的少ない。 したがって、本発明のグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法は、現行の方法と比較して、生産効率に優れた工業的方法である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明のグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法における一連の反応は、下記の式に示す通りである。 本発明に用いるショ糖(化学式C12H22O11)は、光合成によって植物が合成する非還元性の二糖類である。主に、サトウキビ、ビートの搾汁液より精製、結晶化を繰り返して製造されるものである。 本発明においてショ糖の由来などには制限はない。好ましくは精製糖で、更にはファインリカー、原料糖、ビート糖、メイプルシロップなどであるが、ショ糖を含有するのものであれば使用でき、例えば廃糖蜜、加糖調製品、フラクトオリゴ糖などのショ糖含有物などが挙げられ、価格と製造工程を鑑みて検討し、適宜選択すればよい。 ショ糖を酸化する方法については、既存の方法を利用する。すなわち、硝酸、亜硝酸及びそれらの塩などの無機窒素化合物、マンガン、クロム、鉛の化合物などの金属化合物、その他にハロゲン、オゾン、酸素などを酸化剤に用いることができる。また、触媒として酸化白金、白金・炭素、酸化バナジウム、パラジウム・炭素などを用いることができるが、この方法では副生成物を生じる。 そのため、特許文献7に示されるように、アミン酸化体が吸着した樹脂と共に電解酸化されたハロゲン含有化合物を使用すれば、ショ糖を構成するグルコース部分の1級水酸基の選択的酸化をして、グルクロニル−フラクトシドを調製することが好ましい。 最も有効な方法は、特許第3556690号に記載されているように、シュードグルコノバクター・サッカロケトゲネスなどの微生物による酸化発酵を行うことである。 この方法では、ショ糖を構成するグルコース部分の1級水酸基の選択的酸化をして、グルクロニル−フラクトシド(β−D−フラクトシル−(2→1)−α−D−グルクロン酸及びその塩を製造することができる。すなわち、実施例に記載されているように、当該微生物あるいはその微生物の培養液又はその微生物が産生する酵素を作用させ、ショ糖カルボン酸(グルクロニル−フラクトシド)(及びその塩)を製造できる。微生物による発酵又は、酵素を用いた酸化反応は温和な条件で行うことができるため、安全、且つ環境に影響を与えることも少なく目的物を製造できる。しかも、比較的設備投資も少ない。 いずれにしろ、ショ糖を構成するグルコース部分の1級水酸基の選択的酸化をして、ショ糖カルボン酸(及びその塩)(グルクロニル−フラクトシド)を含む反応液を調製できれば良い。 目的とするグルクロン酸やグルクロノラクトンを得るには、上記方法で調製されたショ糖カルボン酸又はその塩(グルクロニル−フラクトシド)に酵母などのインベルターゼ活性を有する微生物を作用せしめればよい。酵母等はグルクロニル−フラクトシドのフラクトース部分を加水分解し、且つ資化する。その結果、目的とするグルクロン酸やグルクロノラクトンを得ることができる。 ショ糖カルボン酸又はその塩(グルクロニル−フラクトシド)に酵母等を作用せしめる際の条件としては、酵母等がグルクロニル−フラクトシドのフラクトース部分を加水分解し、且つ資化することができる条件であれば良い。 上記反応において、ショ糖カルボン酸又はその塩(グルクロニル−フラクトシド)を溶解するための溶媒としては水が好ましい。 上記反応において、ショ糖カルボン酸又はその塩(グルクロニル−フラクトシド)の濃度としては、通常1〜50%、好ましくは5〜30%である。 また、上記反応の温度としては、通常0〜60℃の範囲であり、好ましくは15〜40℃であるが、酵母等がフラクトース部分を加水分解し、且つ資化することによって系から取り除くことができる条件であれば、これらに限定されるものではない。 上記反応のpHとしては、通常3〜10、好ましくは4〜8であるが、酵母等の種類によって好適な値が異なるので、供試酵母等がフラクトース部分を加水分解し、且つ資化することができる条件であれば、これらに限定されるものではない。 一般的に反応の進行と共にpH値は低下する傾向があるが、上記範囲内であれば、pH値を調整する必要はない。なお、反応時には攪拌することが好ましく、これにより酵母等の増殖と資化が進行する場合がある。 ショ糖カルボン酸又はその塩を加水分解するために使用できる微生物は、インベルターゼ活性を有する微生物であり、特に酵母が好ましい。酵母の種類としては、例えばパン酵母、酒造酵母に代表されるサッカロマイセス属をはじめとして、キャンディダ属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属などがある。その他、真菌、バクテリアであってもインベルターゼ活性を有し、フラクトース部分を資化することができるものであれば、本発明に使用できる。 本発明によって得られるグルクロン酸やグルクロノラクトンの安全性、並びにこれら化合物が食品、医薬品などの分野に応用されることを鑑みれば、微生物としてパン酵母、酒造酵母に代表されるサッカロマイセス属の酵母を使用するのが好ましい。更に好ましくは、安価、且つインベルターゼ活性の強いパン酵母を使用するのが望ましい。 反応系への酵母等の添加量は、反応時間、温度、濃度、pHなどの条件によっても異なるが、通常は0.1〜10%、好ましくは1〜5%である。 反応時間は通常、1〜240時間、好ましくは24〜120時間であるが、酵母等がフラクトース部分を加水分解し、且つ資化することができる条件であれば、これらに限定されるものではない。 なお、酵母等はアルギン酸カルシウムなど、既報の方法などを使用して固定化して用いても良く、これにより使用後に回収することができれば、コストダウンすることができるので好ましい態様である。 反応が進行し、フラクトースが資化されることによって反応系から取り除くことができれば、酵母等を除き、濃縮、脱色、脱塩を行う。 酵母は加水分解されたフラクトースを資化し、増殖するとともに、エタノールと二酸化炭素、グリセリン、有機酸などを生成する。このうち、エタノールと二酸化炭素は加熱、または、濃縮時に除去できる。エタノールは回収して、別途使用すれば良い。 得られたグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンを含む反応液は塩、有機酸、着色物、微生物由来のタンパク質などを含んでいるので、酸性又は塩基性、もしくは両方の性質を持った樹脂を使って除く。なお、所望により、活性炭、電気透析装置などを使用しても良い。 脱色、脱塩したグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンを含む溶液は、糖又は糖誘導体を結晶化する場合の慣用法を用いて目的物を得ればよい。具体的には該溶液を濃縮してから、グルクロノラクトン又はグルクロン酸の結晶を接種して、結晶化すればよい。 通常、温度と時間をかけることによって、グルクロン酸とグルクロノラクトンが平衡に達する。グルクロノラクトンの方が結晶化容易なので、通常は濃度を固形分含量が40〜70%となるように調整し、グルクロノラクトンの結晶を接種し、目的物を晶出せしめると良い。一方、グルクロン酸の結晶を得たい場合は、固形分含量を65%以上に濃縮し、グルクロン酸の結晶を晶出せしめれば良い。 結晶を含む溶液は、遠心分離などで、単離し、更にろ液を再濃縮し、再度結晶化を繰り返せば、効率よく目的物を回収できる。 上記一連の反応により、原料のショ糖より重量比で20〜40%の高い収率で目的物を製造することができる。本発明では、原料として安価なショ糖を使用することにより、目的物を安価に製造することができる。 更に、ショ糖の酸化反応を、特許第3556690号に記載されているように、微生物を使用して行うことによって、全工程において温和な条件を採用して目的物を製造することができるので、環境に対する悪影響も少ない。 本発明の製造方法により得られるグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンは、既知の方法により得られているものと同等か、それ以上の純度を有していることから、従来のものと同様に、肝機能回復作用、疲労回復作用、抱合解毒作用、抗リウマチ作用などを有する物質として、広く医薬品工業、食品工業、化粧品工業、化成品工業などの諸分野に用途を有する。 以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。(1)ショ糖カルボン酸ナトリウム塩の製造 特許第3556690号の実施例1に記載された方法にしたがって、酸化酵素生産菌を用いてショ糖(グラニュー糖)360kgから、同量のショ糖カルボン酸ナトリウム塩(グルクロニル−フラクトシド)の溶液を調製した。すなわち、発酵タンクに、ショ糖30kgと水250Lを加え、溶解し、これに同等量の発酵タンクで別途調製したシュードグルコノバクター・サッカロケトゲネス(Pseudogluconobacter saccharoketogenes)の洗浄菌液50Lを加え、全量を300Lとした。次いで、32℃、200rpmで撹拌しながら、空気を100L/分の割合で通気して24時間反応を行い、目的とするショ糖カルボン酸ナトリウム塩を得た。次いで、菌体を除き、活性の有無に従い、再使用し、同様の方法を12回行い、ショ糖モノカルボン酸ナトリウム塩(グルクロニル−フラクトシド)の固形分360kgの溶液を調製した。(2)ショ糖モノカルボン酸ナトリウム塩の分解 上記(1)で得たショ糖カルボン酸ナトリウム塩の固形分60kg分を30%に濃縮した後、37℃にて、パン酵母(オリエンタル酵母(株)製、FD−1)を固形分あたり、3%(10.8kg)添加して72時間加水分解反応を行った。なお、反応中、系のpH制御を行わなかったが、最終的にpHは4付近となった。加水分解終了後、80℃で5分加熱して殺菌後、UFろ過を行って透過液を回収した。透過液は濃縮装置((株)大川原製作所製、エバポール)にて、50%まで濃縮し、透過液に含まれるエタノール(加水分解生成物の酵母による資化により生成)を回収した。同様の方法を6回繰り返し、ショ糖カルボン酸濃縮液を得た。 次いで、濃縮液は6回に分け、活性炭カラム50L(白鷺、日本エンバイロケミカルズ(株)製)、塩基性イオン交換樹脂50L(アンバーライトIRA-96SB、オルガノ(株)製)、強酸性イオン交換樹脂150L(ダイヤイオンPK-216 、三菱化学(株)製)を通過させて脱色、脱塩した。(3)グルクロノラクトンの結晶化 このようにして得られた脱塩液を50%まで濃縮装置((株)大川原製作所製、エバポール)にて濃縮し、結晶化原液とした。この結晶化原液は、結晶缶(月島機械(株)製)に移送し、62%まで濃縮し、45℃付近で反応液中のグルクロン酸とグルクロノラクトンの比率の平衡を移動させ、グルクロノラクトンの含量を増やしたのち、ラクトン種結晶50gを加えて一昼夜自然冷却で結晶化させた。 翌日、減圧濃縮しながら、結晶を成長させた(68%、42℃)後、45〜60℃まで上昇させた。次いで、溶液の流動性を上げた後、助晶機(月島機械(株)製)に移送して一昼夜20℃(2℃/時)になるまで冷却を行った。得られたラクトンの結晶は遠心分離(1200rpm)にて回収し、70%エタノールで洗浄後、棚乾燥機にて50℃で乾燥した。 以上の操作では、1回の結晶化で28.1kgの結晶を得ることができた。ろ液は回収して同様の結晶化を行い、100kgのグルクロノラクトンを回収することができた。 結晶化原液中の酵母資化工程で生じたグリセロール及び未知成分は、結晶化により簡単に除去することが可能であった。 得られたグルクロノラクトンの純度はHPLC(カラム:島津製作所SCR-101Hカラム、移動層:20mM 硫酸、検出:RI、流速:0.5mL/min)にて確認したところ、純度99.9%以上であった。HPLCの溶出時間は試薬のグルクロノラクトンと同一であった。 実施例1に記載した方法に従ってショ糖15kgより同量のショ糖カルボン酸カリウム塩を調製した。 このうち、ショ糖カルボン酸カリウム塩100gをとり、これに市販パン酵母(ドライイースト)を7g加えて37℃で加水分解反応並びに資化反応を行った。 その結果、24時間以内にショ糖カルボン酸は加水分解され、グルクロン酸及びグルクロノラクトンを含む溶液が得られた。次いで、この溶液を活性炭カラム1L(白鷺、日本エンバイロケミカルズ(株)製)、塩基性イオン交換樹脂1L(アンバーライトIRA-96SB、オルガノ(株)製)、強酸性イオン交換樹脂3L(ダイヤイオンPK-216 、三菱化学(株)製)に通過させて脱色、脱塩した。 この脱塩した液は40℃にて65%まで濃縮し、グルクロン酸の種結晶0.2gを加えて自然冷却した。析出した結晶を遠心分離し、グルクロン酸を40g得た。 得られたグルクロン酸の純度はHPLC(カラム:島津製作所SCR-101Hカラム、移動層:20mM 硫酸、検出:RI、流速:0.5mL/min)にて確認したところ、純度99.9%以上であった。 実施例1に記載した方法に従って原料糖15kgより同量のショ糖カルボン酸ナトリウム塩を調製した。 次いで、同様に実施例1に記載した方法に従ってショ糖カルボン酸ナトリウム塩溶液15kgを30%に濃縮したのち、パン酵母(オリエンタル酵母(株)製、FD−1)を固形分あたり3%添加して、37℃にて72時間反応を行った。 反応液を活性炭カラムと脱塩樹脂カラムに同様にして通過させ、脱色、脱塩した。得られた脱塩液を50℃、58%まで濃縮し、グルクロノラクトンの種結晶を20g加えて結晶を析出させた。次いで、遠心分離を行い、グルクロノラクトン2kgを得た。 実施例1に記載した方法に従ってビート糖20kgより同量のショ糖カルボン酸ナトリウム塩を調製した。以下、同様に実施例1に記載した方法に従ってショ糖カルボン酸ナトリウム塩溶液20kgを30%に濃縮したのち、パン酵母(オリエンタル酵母(株)製、FD−1)を固形分あたり4%添加して、37℃にて72時間反応した。 反応液を活性炭カラム、脱塩樹脂カラムに同様に通過させ、脱色、脱塩した。得られた脱塩液を50℃、58%まで濃縮し、グルクロノラクトンの種結晶を20g加えて結晶を析出させた。その後、遠心分離を行い、グルクロノラクトン4kgを得た。 本発明により、安価な原料であるショ糖からグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンを高収率で製造することができる。 しかも、その製造工程において、硝酸等の窒素酸化物等を酸化剤として使用しないか、使用する場合でも、その量はごく僅かなので安全で、且つ環境に影響を与えることなく、目的物を製造できる。ショ糖カルボン酸ナトリウム塩のHPLCクロマトグラムを示す。ショ糖カルボン酸ナトリウム塩を酵母資化した後のグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの結晶化原液のHPLCクロマトグラムを示す。得られたグルクロノラクトンのHPLCクロマトグラムを示す。 ショ糖を酸化してショ糖カルボン酸又はその塩とし、次いでインベルターゼ活性を有する微生物を加えて、該ショ糖カルボン酸又はその塩のフラクトース部分を加水分解すると共に資化し、生成するグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンを採取することを特徴とするグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法。 インベルターゼ活性を有する微生物が、酵母である請求項1記載の製造方法。 ショ糖が、精製糖、ファインリカー、原料糖、ビート糖、メイプルシロップ、加糖調製品又は廃糖蜜である請求項1記載の製造方法。 ショ糖カルボン酸又はその塩にインベルターゼ活性を有する微生物を加えて、該ショ糖カルボン酸又はその塩のフラクトース部分を加水分解する反応が、濃度1〜50%のショ糖カルボン酸又はその塩の水溶液に温度0〜60℃、pH3〜10にて該微生物を作用させることにより行う請求項1記載の製造方法。 【課題】 D-グルクロン酸及びD-グルクロノラクトンを高収率、廉価、容易、且つ安全に製造し得る方法を提供すること。【解決手段】 ショ糖を酸化してショ糖カルボン酸(及びその塩)(グルクロニル−フラクトシド,β−D−フラクトシル−(2→1)−α−D−グルクロン酸及びその塩)とし、次いで酵母等を加え、該ショ糖カルボン酸(及びその塩)のフラクトース部分を加水分解すると共に資化し、生成するグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンを採取することを特徴とするグルクロン酸及び/又はグルクロノラクトンの製造方法。【選択図】 なし


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