タイトル: | 公開特許公報(A)_高分子化合物 |
出願番号: | 2005136148 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C08G 81/00,A61K 47/34,A61K 48/00 |
原田 敦史 松尾 高志 川村 真教 JP 2006312689 公開特許公報(A) 20061116 2005136148 20050509 高分子化合物 公立大学法人大阪府立大学 505127721 鹿島 義雄 100114030 甲斐 寛人 100127362 原田 敦史 松尾 高志 川村 真教 C08G 81/00 20060101AFI20061020BHJP A61K 47/34 20060101ALN20061020BHJP A61K 48/00 20060101ALN20061020BHJP JPC08G81/00A61K47/34A61K48/00 4 1 OL 8 4C076 4C084 4J031 4C076CC26 4C076EE26 4C076EE45 4C076FF68 4C084AA13 4C084NA10 4C084NA13 4C084ZB211 4C084ZB212 4J031AA55 4J031AA57 4J031AB04 4J031AC09 4J031AD01 4J031AF03 本発明は、ヘッド−テイル型の高分子化合物に関する。詳しくは、本発明は、薬物運搬システム(DDS)等の分野において有用な核酸類と安定に複合体形成する部位(テイル部)と、複合体の保護層としての機能及びpH低下により状態変化する機能を有する部位(ヘッド部)とを有する新規な高分子化合物に関する。 最近、医薬品医療の分野において、薬物や遺伝子の体内分布を時間的又は空間的に正確に制御することによって、「必要なとき(timing)に、必要な部位(location)で、必要な薬物治療(action)」を最小限の副作用で達成する高精度ターゲティング治療に対する関心が高まっている。この治療法を首尾よく達成するためには、ナノスケールで精密設計された高機能化薬物運搬体の開発が最も重要な課題となっている。なかでも、最近は治療用遺伝子DNAを運搬するための安全性に優れた高分子材料が盛んに開発されている。 これまでに、DNAなどの核酸類がアニオン性であることから、カチオン性の脂質や高分子などの化合物と水溶液中での静電相互作用によって複合体形成させ、運搬体として利用することが試みられてきた(非特許文献1参照)。橋田 充:新バイオサイエンスシリーズ「ドラッグデリバリーシステム、-創薬と治療への新たなる挑戦-」、化学同人、1995年 カチオン性高分子では、その性質から大別して2つのタイプの高分子に関して遺伝子運搬体(ベクター)としての利用が検討されてきた。1つは、カチオン性を示す官能基(アミノ基)が生理的pH条件下(pH 7.4)でイオン化しているものであり、ポリリシンやポリアルギニンが代表的である。このようなタイプのカチオン性高分子は、DNAと強固な複合体を形成することが特徴である。このタイプのカチオン性高分子は、血清蛋白質などの電解質が共存する条件においても安定に存在するというベクターとしての利点を有するが、一方で核酸類が機能発現するためには最終的に核酸類は複合体から放出されなければならないが、放出しにくいという欠点にもなっている。 もうひとつのタイプは、カチオン性を示す官能基の一部または多くが生理的pH条件下においてイオン化していないものであり、ポリエチレンイミンやポリアミドアミンデンドリマーが代表的で、これらは分子内に1級アミノ基だけでなく、2級・3級アミノ基を有しており、これらが生理的pH条件下でイオン化していない官能基となっている。このタイプのカチオン性高分子は、エンドソーム、リソソームと呼ばれる細胞内のpHが低い部位に取り込まれた際に、pH低下を抑制するプロトンスポンジ効果と呼ばれる効果を示すことが特徴である。このタイプのカチオン性高分子は、血清蛋白質が存在しない培養細胞系ではプロトンスポンジ効果によって、比較的高い遺伝子発現を示すが、血清蛋白質を共存させると、発現は低下する。これは、イオン化していないカチオン性を示す官能基が存在するために核酸類との複合体が、血清蛋白質が共存するために解離してしまうためである。 しかしながら、2つのタイプのカチオン性高分子のベクターとしての利点と欠点は相反するものであり、2つのタイプの利点を組み合わせたベクターの開発が有効であるが、2つの利点を発揮しうるカチオン性高分子は開発されていない。すなわち、核酸類と強固な複合体を形成する機能とプロトンスポンジ効果を発現する機能を併せ持つカチオン性の高分子化合物の開発が望まれていた。 そこで、本発明は、血清蛋白質等の電解質が共存する状態においても安定な遺伝子ベクターとして利用することができる高分子化合物を提供することを目的とする。 また、本発明は、核酸類と強固な複合体を形成する機能ととともに、プロトンスポンジ効果を発現する機能を併せ持つ薬物運搬体として、カチオン性の高分子化合物を提供することを目的とする。 すなわち、上記課題を解決するためになされた本発明の高分子化合物は、カチオン性直鎖状高分子とカチオン性分岐状高分子とが結合してなる。 上記発明において、カチオン性分岐状高分子がデンドロンであることが好ましい。また、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミンデンドロンまたはその誘導体のいずれかであることが好ましい。 上記発明において、カチオン性直鎖状高分子がポリアミノ酸またはその誘導体であることが好ましい。 本発明によれば、強固な複合体を形成するカチオン性高分子とプロトンスポンジ効果を発現するカチオン性高分子とからなる高分子とが結合した化合物を得ることができ、優れた薬物運搬体とすることができる。これにより、生体内で分解されやすい荷電性薬物を安定化して体内に投与することができる。 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。上記の通り、本発明は、強固な複合体を形成するカチオン性高分子部位(テイル部)とプロトンスポンジ効果を発現するカチオン性高分子部位(ヘッド部)からなる高分子化合物を提供するものである。 本発明における高分子化合物は、ヘッド部、テイル部ともに各種のものが本発明に包含される。 ヘッド部としては、例えばポリアミドアミンデンドロン、ポリアミドアミンデンドリマー等の3級アミノ基を有する分岐状高分子(デンドリマー)、又はそれらの誘導体由来の各種のセグメント等が例示される。 テイル部としては、例えば荷電性側鎖を有するポリアミノ酸、より具体的には、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン等が、あるいはポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルイミダゾール等が挙げられる。さらに、これらのポリアミノ酸の誘導体由来のセグメント等が例示されている。 これらのヘッド部とテイル部を有する高分子化合物としては、例えば、その代表的構造として、次式(I)で示されるポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリリシンをテイル部とする高分子化合物が挙げられる。 (I) 上記高分子化合物は、まず、片末端に保護基の導入されたエチレンジアミンに対して過剰量のアクリル酸メチルをマイケル付加反応により、その後、エチレンジアミンをエステルアミド交換反応させるという過程を繰り返すことによって、ヘッド部であるポリアミドアミンデンドロンを得ることができる。このヘッド部のポリアミドアミンデンドロンの世代数は、0.5から4.5まで0.5世代ごとに可変である。次に、ポリアミドアミンデンドロンの保護基を酸処理によって除去した後、ε−ベンジルオキシカルボニル L−リシン無水物を重合させる。この重合によって得られる部位の分子量は約250〜750000まで可変である。この高分子化合物を酸処理して脱ベンジルオキシカルボニル化を行うことにより、ヘッド部としてポリアミドアミンデンドロンをテイル部としてポリリシンを有する高分子化合物を得ることができる。 本発明において、上記高分子化合物と静電的に複合体形成できる薬物としては、特にその種類に限定されるものではない。ここで、「薬物」とは、前記荷電性セグメントとは反対の荷電性を有する低分子又は高分子物質を意味し、例えばペプチドホルモン、タンパク質、酵素、核酸(DNA又はRNA)等の高分子性薬物が例示される。反対荷電とは、分子の一方が正に、他方が負に帯電していることを意味し、複数の異なる帯電状態の官能基を有する分子の場合は、pHを変化させることによって分子全体としての帯電状態の正、負を変化させる場合も含む。同じ荷電を有する場合は、反対荷電を有する官能基を有する化合物を反応させ、分子の帯電状態を変化させる処理をすることにより、一方の分子を他方の分子に対して反対荷電にすることができる。 例えば、上記式(I)により示される高分子化合物にプラスミドDNAやアンチセンスオリゴDNA等の核酸類を複合体形成させる場合には、高分子化合物の水溶液を適切な混合比、イオン強度及びpH等の条件に設定し、高分子化合物の水溶液に上記核酸類水溶液を混合すればよい。 以上の通り、本発明のヘッド−テイル型の高分子化合物は、安定なDNA等の荷電物質と複合体形成することができる。このため、生体内で分解されやすい荷電性薬物を安定化して体内投与することができる。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。〔実施例1〕 ポリアミドアミンデンドロンとポリリシンからなるヘッド−テイル型高分子化合物の酸塩基滴定 ポリアミドアミンデンドロンとポリリシンからなるヘッド−テイル型高分子化合物(ポリアミドアミンデンドロン世代数3.5、ヘッド−テイル型高分子化合物1本鎖当たり重合度70のポリリシン)を0.05M塩酸に溶解した後、0.01M水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによって滴定した。 得られた酸塩基滴定曲線図を図2に示す。ヘッド−テイル型高分子化合物が、二つの独立した脱プロトン過程を示すことが確認された。また、テイル部は生理的pH(7.4)ではほぼすべてプロトン化しており複合体形成可能な状態であることが確認された。ヘッド部は、生理的pH(7.4)では、ほとんどプロトン化しておらず、プロトンスポンジ効果を発現できる状態であることが確認された。〔実施例2〕 ポリアミドアミンデンドロンとポリリシンからなるヘッド−テイル型高分子化合物とプラスミドDNAからの複合体調製 ポリアミドアミンデンドロンとポリリシンからなるヘッド−テイル型高分子化合物(ポリアミドアミンデンドロン世代数3.5、ヘッド−テイル型高分子化合物1本鎖当たり重合度70のポリリシン)をトリス緩衝液(塩濃度10mM、pH7.4)に、プラスミドDNAをトリス緩衝液に溶解した後、この各々の溶液を種々混合比で混合した。ポリリシンとプラスミドDNA、ポリアミドアミンデンドロンとプラスミドDNAについても同様に混合した。 得られた混合溶液について、DNA可視化色素としてエチジウムブロミドを含有したアガロースゲル電気泳動を行った。また、ルミノイメージアナライザーUV-LAS1000mini(富士写真フィルム社)により画像解析を行い、複合体形成していないDNA量を定量した。 ヘッド−テイル型高分子化合物の結果を図3に示す。ヘッド−テイル型高分子化合物と混合していないプラスミドDNAについては、DNAのバンドのみが検出される。ヘッド−テイル型高分子化合物の混合比が増加するに伴い、DNAのバンドが消失していくことが確認され、ヘッド−テイル型高分子化合物とプラスミドDNAが複合体形成することが確認された。 複合体形成していないDNA量を定量した結果を図4に示す。図4において、ヘッド−テイル型高分子化合物(◆)、ポリリシン(■)、ポリアミドアミンデンドロン(▲)である。縦軸は複合体形成していないDNAの比率、横軸は混合された高分子化合物量である。ヘッド−テイル型高分子化合物とポリリシンについては、高分子化合物の混合比が増加するに従い、複合体形成していないDNA量が減少し、最終的にはすべてのDNAと複合体形成していることが確認された。ポリアミドアミンデンドロンの混合によっては、複合体形成していないDNA比率には変化が生じないことが確認された。以上のことから、ヘッド−テイル型高分子化合物は、テイル部でDNAと複合体形成し、ヘッド部はプロトンスポンジ効果を発現できる複合体であることが確認された。 本発明の高分子化合物は、血清蛋白質等の電解質が共存する状態においても安定な遺伝子ベクターとして利用することができる。ポリアミドアミンデンドロンとポリリシンからなるヘッド−テイル型高分子化合物の1H−NMRスペクトル図である。ポリアミドアミンデンドロンとポリリシンからなるヘッド−テイル型高分子化合物の酸−塩基滴定曲線図である。ポリアミドアミンデンドロンとポリリシンからなるヘッド−テイル型高分子化合物とプラスミドDNAからの複合体形成を示すゲル電気泳動図である。ポリアミドアミンデンドロンとポリリシンからなるヘッド−テイル型高分子化合物とプラスミドDNAからの複合体形成と、ポリリシンとプラスミドDNAからの複合体形成、ポリアミドアミンデンドロンとプラスミドDNAからの複合体形成を対比した図である。カチオン性直鎖状高分子とカチオン性分岐状高分子とが結合してなる高分子化合物。カチオン性分岐状高分子がデンドロンである請求項1に記載の高分子化合物。カチオン性分岐状高分子がポリエチレンイミン、ポリアミドアミンデンドロン、またはその誘導体のいずれかである請求項1に記載の高分子化合物。カチオン性直鎖状高分子がポリアミノ酸誘導体である請求項1に記載の高分子化合物。 【課題】 血清蛋白質等の電解質が共存する状態においても安定な遺伝子ベクターとして利用することができる高分子化合物を提供する。【解決手段】 カチオン性直鎖状高分子とカチオン性分岐状高分子とが結合してなる高分子化合物を形成し、強固な複合体を形成するカチオン性高分子部位とプロトンスポンジ効果を発現するカチオン性高分子部位からなる高分子化合物とする。【選択図】図1