生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ヘビ毒筋壊死因子阻害剤
出願番号:2005117649
年次:2006
IPC分類:A61K 38/00,A61K 31/198,A61K 31/223,A61P 39/02


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小川 智久 大野 素徳 米山 和也 村本 光二 服部正策 JP 2006290851 公開特許公報(A) 20061026 2005117649 20050415 ヘビ毒筋壊死因子阻害剤 国立大学法人東北大学 504157024 学校法人君が淵学園 594158150 奥山 雄毅 100108121 小川 智久 大野 素徳 米山 和也 村本 光二 服部正策 A61K 38/00 20060101AFI20060929BHJP A61K 31/198 20060101ALI20060929BHJP A61K 31/223 20060101ALI20060929BHJP A61P 39/02 20060101ALI20060929BHJP JPA61K37/02A61K31/198A61K31/223A61P39/02 6 8 OL 7 4C084 4C206 4C084AA02 4C084AA03 4C084BA02 4C084BA08 4C084BA44 4C084CA43 4C084NA14 4C084ZC37 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA53 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZC37 本発明は、ヘビ毒筋壊死因子阻害剤に関する。 地球上に生息する約25000種のヘビのうち約400種は何らかの毒成分をもっている。例えばハブ(Trimeresurus flavoviridis)毒は出血毒であるが、その中には種々のタンパク質性毒素が含まれ、これらが単独あるいは互いに増強しながら、筋肉壊死、溶血、出血などの多彩な症状を引き起こす。毒ヘビの咬傷による被害は、例えば鹿児島県奄美大島ではハブによる咬傷被害が昭和30年代には300名を超えていたものの、現在では年間100名ほどに減少している。しかし、平成10年に2名、平成14年に1名の方が亡くなっており、今なお住民に恐怖を与えている。ハブ咬傷においてはその治療にantiveninと呼ばれる抗毒素(ウマ血清)が用いられ、抗出血、抗致死の面では大きな成果をあげている。しかしながら、救急医療の発達で死亡する例はほとんどなくなったものの、ハブ咬症での筋肉壊死による運動機能の障害などには対応していないため、その後遺症の長期化が依然問題となっている。また、世界的にみれば東南アジア、中東から中南米、アフリカ等を中心にヘビ咬傷被害は非常に多く、世界各地で問題となっている。 これまでヘビ咬傷治療に対する治療薬については、植物由来の物質などさまざま調べられているが、ヘビ毒特に筋壊死因子に対して最も有効なものはヘビ血液中から単離された毒酵素成分に対して中和能(阻害能)を持つタンパク質性インヒビターである。現在までに、ヘビ血清中からいくつかの壊死因子インヒビターが単離、構造決定されているが、これらを治療薬として用いる場合には免疫原性(アナフィラキシー)の低下、安全性など多くの解決すべき課題が残されている。ヘビ血清由来のタンパク質をタンパク質分解酵素により低分子化することにより、免疫原性を低下させた低分子性筋壊死因子インヒビターの開発を行っている。先行技術文献としては、非特許文献1、2が挙げられる。この非特許文献1の内容は、免疫抑制剤でもあるシクロスポリンAがラットにおいてcrotoxinによって引き起こされた筋壊死の障害を抑えるというものであり、非特許文献2の内容は、パラブロモフェナシルブロミド(p-BPB)が、北米産のクサリヘビ毒液によって引き起こされた浮腫、出血、および筋壊死を抑え、その救急処置への利用の可能性について述べたものである。Miyabara EH, Tostes RC, Selistre de Araujo HS, Aoki MS, Salvini TF,Moriscot AS. Cyclosporin A attenuates skeletal muscle damage induced by crotoxin in rats. Toxicon. 2004 Jan;43(1):35-42.Evans J, Ownby CL.Neutralization of edema, hemorrhage and myonecrosis induced by North American crotalid venoms in simulated first-aid treatments. Toxicon. 1999 Apr;37(4):633-50. このように、ヘビ血清中から壊死因子インヒビターを単離して、ヘビ毒筋壊死因子阻害剤とするには、免疫原性(アナフィラキシー)の低下、安全性など多くの解決すべき課題が残されており、満足できるものはなかった。本発明は、安全性が高く、ヘビ毒筋壊死因子阻害効果の高いヘビ毒筋壊死因子阻害剤を提供することを目的とする。 請求項1に記載の発明は、ヘビ血清由来のタンパク質をタンパク質分解酵素により低分子化して得られるLセリン含有画分からなることを特徴とするヘビ毒筋壊死因子阻害剤である。 ここで、前記ヘビ血清がハブ血清であり、前記ヘビ毒筋壊死因子がハブ毒筋壊死因子であることを好適とし、前記ハブ毒筋壊死因子がbacic protein IIであることを好適とする。 今回ハブ血清由来のタンパク質をタンパク質分解酵素により低分子化したものから強力な筋筋壊死因子インヒビターを単離した。 単離したインヒビターがアミノ酸Lセリンを含むものであることが判明し、ハブ毒筋壊死因子Basic protein II (50 ug/ml)に対して10 ug/mlの濃度で阻害することを明らかにした。その他のセリン誘導体(D体、ホモセリン、リン酸化セリン)および他のアミノ酸では阻害が見られず、LセリンおよびLセリンメチルエステルに特異的であることを明らかにした。 請求項4に記載の発明は、LセリンまたはLセリンメチルエステルからなることを特徴とするヘビ毒筋壊死因子阻害剤である。 ここで、前記ヘビ毒筋壊死因子がハブ毒筋壊死因子であることを好適とし、前記ハブ毒筋壊死因子がbacic protein IIであることを好適とする。 本発明に用いられるアミノ酸Lセリンは、大量摂取により免疫の抑制および大脳性アレルギーによる心理学的病状を引き起こす場合もあるが、通常人体に対する毒性はほとんどないと考えられており、実際ある種の免疫疾患CFIDSの治療に用いられている。したがって、新規のヘビ毒筋壊死因子インヒビターに比べ、臨床的な試験を行いやすい。また、アミノ酸セリンが安価に入手しやすい点での優位性もある。 本発明の請求項1の発明によれば、強い筋壊死阻害効果を有すると共に、安全性の点でも問題のないヘビ毒筋壊死因子阻害剤を提供できる。 また、本発明の請求項4の発明によれば、強い筋壊死阻害効果を有すると共に、安価に入手でき、安全性の点でも問題のないヘビ毒筋壊死因子阻害剤を提供できる。 次に、本発明の実施の形態について説明する。配合量は特に断らない限り、重量%である。1.ハブ血清由来タンパク質のタンパク質分解酵素による低分子化 ハブ血清タンパク質50%硫安沈澱をペプシン, αキモトリプシン, プロテアーゼA, エラスターゼ, アクチナーゼで酵素消化し、ハブ筋壊死因子(basic protein IおよびII)に対する阻害効果をもつ低分子性ペプチドインヒビター生成に有効な酵素、反応条件の検討を行った結果、アクチナーゼ24時間消化により、阻害活性をもつ低分子性ペプチドを得た。 Sephadex G-75ゲルろ過クロマトグラフィーによる分画をすすめた。図1は、ハブ血清タンパク質のアクチナーゼE24時間消化物を限外ろ過膜(10 kDa)で分離した低分子画分のゲルろ過クロマトグラフィー(Superdex 75 (φ1×30 cm))を示す図である。酵素消化物1gから、>10kDa分画物が0.33mg,<10kDa分画物が0.48mgであった。 図2は、図1のピーク1〜ピーク4に対応したハブ血清アクチナーゼ消化物分画物(Ac1〜Ac4)およびハブ血清のBHK-21細胞に対するBPIIの細胞毒性の阻害活性およびを示す。Leu,Ileに富む画分(Ac2)が強い阻害能をもつことを明らかにした。2.阻害能をもつ画分(Ac2)の分析・評価 阻害活性のみられた画分(Ac2)をさらに逆相HPLC (C18)により分離した。その結果を図3に示す。カラムは、TSK120T-ODSを用い、溶媒は、0.1%TFAおよび0.1%TFA−CH3CNを用いた。 5つの画分(素通り画分、および図3の#1〜#4)に分離した後、BPIIに対する細胞毒性阻害活性を測定した。その結果を図4に示す(BPII 50μg/ml, 試料 50μg/ml)。図4から分かるように、Ac2の逆相HPLC分画物のうち、素通りにのみ強い阻害活性がみられた。 次に、この画分を2次元TLC(BAW/PW)で確認し、この画分の加水分解前後でのアミノ酸分析を行った。その結果を図5に示す。図5から分かるように、Arg, Glx, Asxの組成が加水分解前後で変化することから、Arg, Glx, Asxからなるペプチドと遊離のアミノ酸の混合物であることが推定された。3.アミノ酸の分析・評価 そこで、アミノ酸分析で検出されたアミノ酸(混合物)に阻害活性があるか調べた。図6は、10aa (D, N, S, E, V, K, A, G, H, R)および各アミノ酸を除いていった混合物を使用した時のアミノ酸混合物の阻害活性を示す図である。また、図7はアミノ酸の筋壊死阻害活性を示す図である。その結果、アミノ酸セリンに強い筋壊死阻害活性があることが判明した。 次に、アミノ酸セリンによる阻害機構を明らかにするために、セリンの誘導体(L-Ser, D-Ser,O-phospho-L-Ser, L-homoSer, N-Ac-L-Ser, L-Ser-OMe, L-Thr)による阻害活性を調べた。図8はセリン誘導体(1. L-Ser; 2,D-Ser; 3, O-phospho-L-Ser; 4, L-homoSer; 5, N-Ac-L-Ser; 6, L-SerOMe; 7, L-Thr)について、50μg/ml、100μg/ml、200μg/mlをそれぞれ用いた場合の阻害活性(BPII 50 μg/ml)を示す図である。この結果、Lセリン(1)の他、Lセリンメチルエステル(6)に阻害能がみられることが分かる。図9は、BPII 50 μg/mlに対するLセリン(1)およびLセリンメチルエステル(6)の筋壊死阻害活性の濃度依存性を示す図である。これらの結果から、アミノ基と側鎖水酸基およびその立体配置が重要であることが判明した。セリンおよびその誘導体の構造を特異的に認識する受容体あるいは酵素との相互作用が考えられる。ハブ血清タンパク質のアクチナーゼE24時間消化物を限外ろ過膜で分離した低分子画分のゲルろ過クロマトグラフィーを示す図である。図1のピーク1〜ピーク4に対応したハブ血清アクチナーゼ消化物分画物およびハブ血清のBHK-21細胞に対するBPIIの細胞毒性の阻害活性を示す図である。阻害活性のみられた画分(Ac2)をさらに逆相HPLC (C18)により分離した結果を示す図である。画分(Ac2)を5つの画分(素通り画分、および図3の#1〜#4)に分離した後、BPIIに対する細胞毒性阻害活性を測定した結果を示す図である。図4の素通りの画分を加水分解する前後でのアミノ酸分析を行った結果を示す図である。アミノ酸混合物の阻害活性を示す図である。アミノ酸の筋壊死阻害活性を示す図である。セリン誘導体について、50μg/ml、100μg/ml、200μg/mlをそれぞれ用いた場合の阻害活性を示す図である。Lセリン(1)およびLセリンメチルエステル(6)の筋壊死阻害活性の濃度依存性を示す図である。 ヘビ血清由来のタンパク質をタンパク質分解酵素により低分子化して得られるLセリン含有画分からなることを特徴とするヘビ毒筋壊死因子阻害剤。 前記ヘビ血清がハブ血清であり、前記ヘビ毒筋壊死因子がハブ毒筋壊死因子であることを特徴とする請求項1に記載のヘビ毒筋壊死因子阻害剤。 前記ハブ毒筋壊死因子がbacic protein IIであることを特徴とする請求項2に記載のヘビ毒筋壊死因子阻害剤。 LセリンまたはLセリンメチルエステルからなることを特徴とするヘビ毒筋壊死因子阻害剤。 前記ヘビ毒筋壊死因子がハブ毒筋壊死因子であることを特徴とする請求項1に記載のヘビ毒筋壊死因子阻害剤。 前記ハブ毒筋壊死因子がbacic protein IIであることを特徴とする請求項4に記載のヘビ毒筋壊死因子阻害剤。 【課題】 強い筋壊死阻害効果を有すると共に、安全性の点でも問題のないヘビ毒筋壊死因子阻害剤、特にハブ毒筋壊死因子阻害剤を提供する。【解決手段】 ヘビ血清由来のタンパク質をタンパク質分解酵素により低分子化して得られるLセリン含有画分からなるもの、あるいはLセリンからなるものとする。これによって、強い筋壊死阻害効果を有すると共に、安全性の点でも問題のないヘビ毒筋壊死因子阻害剤を提供でき、また、本発明の請求項4の発明によれば、強い筋壊死阻害効果を有すると共に、安価に入手でき、安全性の点でも問題のないヘビ毒筋壊死因子阻害剤を提供できる。【選択図】 図8


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