タイトル: | 公開特許公報(A)_N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶およびその製造方法 |
出願番号: | 2005111081 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 243/06 |
久津間 輝雄 JP 2006290764 公開特許公報(A) 20061026 2005111081 20050407 N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶およびその製造方法 久津間 輝雄 305008112 鈴木 俊一郎 100081994 牧村 浩次 100103218 鈴木 亨 100110917 八本 佳子 100115392 久津間 輝雄 C07C 243/06 20060101AFI20060929BHJP JPC07C243/06 9 OL 13 4H006 4H006AA01 4H006AA02 4H006AD15 4H006BB11 4H006BB12 4H006BB14 4H006BB17 4H006BB31 4H006BB61 4H006BC50 4H006BC51 本発明は、安定性の良好なN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶およびその製造方法に関する。 N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(以下、「NPAL」と略記することがある)は、下記式(1)にて示される構造を有し、分析試薬として、また合成樹脂の品位向上のための添加剤として有用な化合物である。 NPALは、たとえば非特許文献1、非特許文献2に記載されているように、鉄(III)などの重金属イオンの定量試薬として用いられる。 またNPALは、下記式(2)で示されるN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩(クペロン)と同様に、重合阻害剤や、重合系の安定剤として、様々な合成樹脂の製造において添加剤として使用されている。 すなわち、NPALは、不飽和化合物類(オレフィン類、不飽和ポリエステル類、スチレン、アクリル酸エステル類など)からフリーラジカル重合や光化学重合によって合成樹脂を製造する際の添加剤として用いられている(特許文献1〜9)。さらにNPALは、不飽和ポリエステル含有塗料のゲル化時間変動防止剤(特許文献5)や、スピロオキサジン系インキ組成物の光安定化剤(特許文献10)としても利用され、その用途は多彩である。 NPALの製法としては、クペロンの水溶液と、対応する量のアルミニウム塩(塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムまたは硝酸アルミニウム)の水溶液とを混合し、生じた白色沈殿を洗浄後に乾燥する方法が知られている(非特許文献1、2、3)。 また、非特許文献4には、NPALの50%エタノール溶液を室温下でゆっくりとエバポレーションすることで結晶が得られる旨が記載されている。 NPALは、上記のように多彩な用途を有する有用性の高い化合物であるが、空気中の湿気を含め、水に対し安定性を欠き、長期間保存すると、着色物や好ましくない副生物を生じる。この好ましくない変化を防止するためには、窒素などの不活性ガスを充填した容器内に入れ遮光し、低温に保持しなければならない。このことは経費の増大を招くことになる。この問題を解決するため、特許文献11には、NPALにモレキュラーシーブや活性炭などを安定剤として加え安定性を改善する技術が開示されている。分析化学、25,103(1976)分析化学、38,267(1989)Z. Naturforschung Teil B,29,24(1974)Acta Cryst. (1995). C51, 1295-1297特開2004−191585号公報特開2004−168896号公報特開2002−139828号公報特開2004−040639号公報特開平11−29740号公報特開平6−143414号公報特開昭64−9264号公報米国特許出願公開US2002/0037475A1米国特許4764452号特開平5−25472号公報米国特許第6018078号 しかし、NPALにさらに安定剤を加えることは、現実にNPALを使用する際に安定剤を分離する必要があるため、工業上煩雑になる。 本発明者は、上記のような従来技術に鑑みて、NPALの安定性を阻害する要因について鋭意検討したところ、NAPLは、その製法上、多量の塩化アンモニウムが副生するため、不可避的に少量の水分が混在し、この水分がNPALの安定性に甚大な影響を及ぼしていることを確認した。 非特許文献1,2,3に記載された方法により製せられるNPALは無定形であり、極めて嵩高いため、水分の除去が容易ではない。 本発明者は、NPALを強力な脱水剤である五酸化燐(P2O5)上、減圧下で乾燥操作を実施したが、乾燥には長時間(二週間)を要した。工業的規模では、P2O5を用いることはできないので、NPALより水分を除去することは困難である。 NPALが水分により下記式の如く徐々に分解し、水酸化物を生成することを見出した。この水酸化物は融点215〜217℃(分解)の白色粉状固体で、その構造は元素分析およびNMRスペクトルより確認した。 本発明者は、このような副生物の生じないNPALの製造法を確立すべく種々の試行を行った結果、水分の混入を排除できる製法を見出し、しかも得られたNPALは、従来のNPALと比較してはるかに保存安定性に優れることを見出した。得られたNPALは、それ自体で安定剤等を必要とせずに、長期間保存可能であり、またその融点は、市販NPALおよび従来法により得られるNPALの融点を上回るものであった。 したがって、本発明は、副生物の混入の少ないNPALの製造法を確立し、純度の高いNPALの製造法を確立し、また保存安定性に優れるNPALを提供することを目的としている。 このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。(1)融点が168〜174℃の範囲にあり澄明に融解するN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶。(2)大気中、室温で6ヶ月保存後の融点が実質的に変化しない(1)に記載のN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶。(3)トルエン溶液中、室温で24時間、60℃で2時間保存後にトルエン不溶部および着色物を実質的に生成しない(1)または(2)に記載のN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩。(4)無定形N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩を不活性ガス雰囲気下で加熱し、結晶化させる工程を含むN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶の製造方法。(5)無定形N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩をアルコール中で加熱還流し、結晶化させる工程を含むN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶の製造方法。(6)アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノールの何れかである(5)に記載の製造方法。(7)塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一種のアルミニウム化合物と、クペロンとを、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩に対する良溶媒と水との混合溶媒中で反応させ、良溶媒層を分取する工程を含むN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶の製造方法。(8)塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一種のアルミニウム化合物と、N−フェニルヒドロキシルアミンと、亜硝酸アルキルを、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩に対する良溶媒と水との混合溶媒中で反応させ、良溶媒層を分取する工程を含むN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶の製造方法。(9)N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩に対する良溶媒が、酢酸エチル、クロロホルム、トルエンである(7)または(8)に記載の製造方法。 本発明に係るNPALは、単独で保存安定性に優れ、窒素封入や遮光の必要もなく長期間保存できる。また、本発明によれば、上記のような安定化NPALの製法が提供される。 以下、本発明についてさらに具体的に説明する。 本発明に係るN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶(NPAL結晶)は、下記物性の1つ以上を満たす。(1)融点が168〜174℃、好ましくは170〜173℃の範囲にあり、澄明に融解する。 なお、融点は、第14改正日本薬局方、一般試験法、融点測定法(平成13年)に基づき測定した。この測定法ではキャピラリーに試料を充填し、融点を測定する。本発明のNPALでは、融点において、澄明に融解する。融液の澄明性は目視により判定する。(2)大気中、室温で6ヶ月保存後の融点が実質的に変化しない。 保存試験は、大気中、室温で行われ、さらに詳細には、平均温度25℃、温度範囲22〜28℃、湿度40〜75%、蛍光灯照明下の試験条件において、三角フラスコにNPAL結晶を入れ、軽く綿栓をして行う。 また、融点が実質的に変化しないとは、保存試験前後の融点の比(試験前/試験後)が0.995〜1.005にあることをいう。(3)トルエン溶液中、室温で24時間、60℃で2時間保存後にトルエン不溶部および着色物を実質的に生成しない。 この試験を行う際の、トルエン溶液におけるNPALの濃度は5w/v%であり、室温においては、平均温度25℃、温度範囲22〜28℃で24時間保存し、60℃のオーブンで2時間保存する。 トルエン不溶部および着色物の確認は、目視により行い、これらが実質的に生成しないとは、目視によりトルエン不溶部(沈殿物)および溶液の着色が確認されないことをいう。 本発明のNPALは、特に上記物性(1)、(2)、(3)を共に充足することが好ましい。 本発明のNPALが結晶性を有することは、X線回折パターンから確認できる。図1には、従来法により合成されたNPALのX線回折パターンを示す。図1は、散漫性の極大を持つハローパターンを示し、無定形であることがわかる。一方、図2に示した本発明に係るNPALのX線回折パターンは、強度の大きな数多くの回折線を示し、結晶性であることがわかる。 本発明のNPALは、優れた保存安定性を示し、たとえば透明なガラス容器に入れ、軽く綿栓して室温で6ヶ月放置した後であっても、融点に変化はなく、また薄層クロマトグラフィーのパターンにも変化はない。このため、本発明のNPALは保存や輸送に際して厳密な管理が要求されることなく、輸送コストや保存コストの削減に寄与できる。 本発明に係るNPALの第1の製法は、無定形NPALを不活性雰囲気下で加熱し、結晶化させる工程を含むことを特徴としている。 原料である無定形NPALは、特に制限はなく、市販または工業的に入手可能なものでもよい。かかるNPALは、図1に示したような無定形のX線回折パターンを示す。 不活性雰囲気下での加熱は、窒素、アルゴンなどの雰囲気中で行われる。この際の加熱温度は、110〜130℃、好ましくは115〜125℃であり、5〜30分間、好ましくは10〜15分間行われる。 加熱後放冷することで、本発明のNPAL結晶が得られる。また、得られたNPALを再結晶化することで、さらに良質の結晶を得ることもできる。再結晶は、NPALを酢酸エチルに加熱溶解し、加熱下イソプロパノールを加え、放冷することで行われる。 本発明に係るNPALの第2の製法は、無定形NPALをアルコール中で加熱還流し、結晶化させる工程を含むことを特徴としている。 原料である無定形NPALは、前記のとおりである。 還流に用いられるアルコールとしては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール等があげられ、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノールがあげられ、さらに好ましくはエタノール、イソプロパノールがあげられる。 還流温度は、使用するアルコールの種類に応じて適宜に設定される。 還流の初期時には、NPALはアルコールに溶解し均一な溶液となるが、還流を続けると白色のNPAL結晶が析出する。還流は、5〜30分間、好ましくは10〜20分間行われる。また、得られたNPALを前記と同様に再結晶化してもよい。 本発明に係るNPALの第3の製法は、アルミニウム化合物と、クペロンとを、NPALに対する良溶媒と水との混合溶媒中で反応させ、良溶媒層を分取する工程を含むことを特徴としている。 原料であるアルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一種が用いられ、好ましくは純度が高い塩化アルミニウム・六水和物が用いられる。 この反応は下記式にて示される。 原料であるアルミニウム化合物と、クペロンとの仕込比は、上記反応式に基づいて設定され、たとえば塩化アルミニウムを用いる場合には、クペロン3モルに対し、塩化アルミニウムを0.95〜1.1モル程度用いることが好ましい。 上記反応式から明らかなように、上記製法によれば塩化アンモニウムなどの副生物が多量に生成し、生成物であるNPAL中に副生物が混入するおそれがある。このため、本発明では、上記反応を水と、NPALに対する良溶媒とからなる混合溶媒中で行う。 NPALに対する良溶媒としては、水と相溶せず、NPALを溶解するものであれば特に制限はないが、酢酸エチル、クロロホルム、トルエンが好ましく用いられ、特に酢酸エチルが好ましく用いられる。良溶媒の使用量は、生成するNPALを溶解する程度であれば充分であるが、過剰に用いても良い。 この反応は室温程度で進行する。反応により生成するNPALは、良溶媒層に溶解し、一方副生物である塩化アンモニウム等は水層に残留するかまたは固体として回収される。したがって、良溶媒層を分取し、溶媒を留去し、上記第2の製法と同様にアルコール中で還流することによって、本発明に係るNPAL結晶が得られる。 また、得られたNPALを、上記第1あるいは第2の製法により、さらに結晶化処理を行ってもよい。さらに、酢酸エチルとイソプロパノールを用いた再結晶化処理をおこなってもよい。 本発明に係るNPALの第4の製法は、アルミニウム化合物と、N−フェニルヒドロキシルアミンと、亜硝酸アルキルを、NPALに対する良溶媒と水との混合溶媒中で反応させ、良溶媒層を分取する工程を含むことを特徴としている。 具体的には、N−フェニルヒドロキシルアミンを出発原料とし、クペロンを経由することなく、同一反応容器中でNPALに対する良溶媒と水との混合溶媒中でニトロソ化とアルミニウム塩化反応を順次進行させ、良溶媒層を分取する工程を含む。ニトロソ化剤である亜硝酸アルキルは、市販の亜硝酸ブチルを用いてもよいが、同一反応容器内で予め亜硝酸ナトリウムと塩酸とエタノールから生成した亜硝酸エチルを用いてもよい。 アルミニウム化合物および良溶媒の具体例は、前記と同様である。 この反応は下記式にて示される。 上記反応式から明らかなように、上記製法によれば塩化ナトリウム、トリエチルアミン塩酸塩などの副生物が多量に生成し、生成物であるNPAL中に副生物が混入するおそれがある。このため、本発明では、上記反応を水と、NPALに対する良溶媒とからなる混合溶媒中で行う。反応で生成するNPALは良溶媒に直ちに溶解し、水から分離される。一方副生物である塩化ナトリウム等は水層に残留する。したがって、良溶媒層を分取し、溶媒を留去し、上記第2の製法により結晶化処理を行うことによって、本発明に係るNPAL結晶が得られる。(実施例) 以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。(参考例1) 従来法によるNPALの合成 クペロン[和光純薬(株)製、市販品]4.65g(3×10-2モル)を50mlの水に溶解し、よく撹拌しながら、塩化アルミニウム6水和物(AlCl3・6H2O)2.41g(1×10-2モル)を20mlの水に溶解した溶液を室温で滴下する。滴下後10分間撹拌を続け、生じた白色固体をろ過する。水15mlずつ4回洗浄し、P2O5上減圧下で2週間乾燥する。収量は4.25g(収率97.0%)であった。 得られたNPALのX線回折パターンを図1に示し、赤外線吸収スペクトルを図3に示し、示差走査型熱量分析(DSC)チャートを図5に示す。 図1から得られたNPALは、散漫性の極大を持つハローパターンを示し、無定形であることがわかる。 元素分析:C18H15N6O6Al(計算値:C, 49.32; H, 3.45; N, 19.18、実測値:C, 49.10; H, 3.59; N, 18.82) 融点測定:70℃近辺で湿潤し、78℃近辺でガラス状態、110〜120℃で固化、167.5〜168.5℃で融解 融解物は不透明で昇温すると190℃近辺で澄明になる。(実施例1) 参考例1で得られた無定形NPAL2.19g(5×10-3モル)を窒素雰囲気下にて、120℃で10分間加熱する。冷却後、固化した内容物を酢酸エチル10mlに加熱溶解し、白色不溶物をろ別する。ろ液にイソプロパノール15mlを加え放冷する。析出した結晶をろ取し、無色ないし微黄白色サイコロ状晶1.98g(収率90.4%)を得る。 得られたNPALのX線回折パターンを図2に示し、赤外線吸収スペクトルを図4に示し、示差走査型熱量分析(DSC)チャートを図6に示す。 図2に示したように、本発明に係るNPALのX線回折パターンは、強度の大きな数多くの回折線を示し、結晶性であることがわかる。 元素分析:C18H15N6O6Al(計算値:C, 49.32; H, 3.45; N, 19.18、実測値:C, 49.41; H, 3.47; N, 18.95) 融点測定:170〜171.5℃で融解 融解物は澄明である。 上記ろ別された白色不溶物は粉状で0.041g得られた。この白色固体は215〜217℃で分解した。 白色固体の元素分析結果およびNMRスペクトル結果を以下に示す。 元素分析:(C6H5N2O2)2AlOH=C12H11N4O5Al(計算値:C, 45.29; H, 3.48; N, 17.61、実測値:C, 35.48; H, 3.64; N, 17.09) NMR(DMSO-d6)ppm: 7.99-7.88 (br., 4H, ar-H), 7.65-7.56 (br., 6H, ar-H), 5.90 (s., 1H, OH)(実施例2) クペロン4.65g(3×10-2モル)を45mlの水に溶解し、これにクロロホルム40mlを加え、よく撹拌しながら、AlCl3・6H2O 2.41g(1×10-2モル)を20mlの水に溶解した溶液を室温で滴下する。生じたNPALは直ちにクロロホルムに溶解する。AlCl3水溶液を滴下後10分間撹拌を続け、クロロホルム層を分取する。Na2SO4で乾燥後、クロロホルムを減圧下で留去する。微黄色のガム状残渣をエタノール30mlと還流する。均一な溶液が得られるが、間もなく白色結晶が析出しはじめる。このまま放冷し、生じた白色ないし微黄白色サイコロ状晶4.21g(収率96.1%)を得る。 融点測定:170〜171.5℃で融解 融解物は澄明である。(実施例3) 実施例2において、クロロホルムの代わりに酢酸エチルを用い、エタノールの代わりにイソプロパノールを用いて同様の操作を行い、白色ないし微黄白色サイコロ状晶4.20g(収率95.9%)を得る。 融点測定:170〜171.5℃で融解 融解物は澄明である。(実施例4) 温度計を付けた30ml二口フラスコに亜硝酸ナトリウム1.52g(2.2×10-2モル)を水4mlに溶解した溶液を入れ、エタノール2.6ml(4.4×10-2モル)および酢酸エチル5mlを加える。冷却撹拌しながら6N−塩酸3.7ml(2.2×10-2モル)を0℃以下で滴下する。滴下後10分撹拌する。酢酸エチル層は微黄色を呈する。この溶液にAlCl3・6H2O 1.69g(7×10-3モル)を水3mlに溶かした液を加え、N−フェニルヒドロキシルアミン2.18g(2.2×10-2)モル、トリエチルアミン2.08g(2×10-2モル)を酢酸エチル5mlに溶解した混液を5℃以下で撹拌しながら滴下する。滴下後30分撹拌し、酢酸エチル層を分取し、Na2SO4で乾燥後、酢酸エチルを留去する。淡黄色残渣2.09gを得る。これをエタノール10mlと加熱還流すると、間もなく微細な白色結晶が析出する。冷却後結晶をろ取し、白色ないし微黄白色サイコロ状結晶2.76g(収率94.5%)を得る。 融点測定:170〜171.5℃で融解 融解物は澄明である。(参考例2) 非特許文献4(Acta Cryst. (1995). C51, 1295-1297)を参考にし、参考例1で調整したNPAL2.0gに50%エタノール100mlを加え振盪する。NPALの粉末はガム状となり固まる。これを一夜室温に放置する。 白色の固形物を破砕し、これをろ取し、エタノールで洗浄、乾燥し、1.85gの白色粉末を得る。 融点測定:167〜168.5℃で融解 融解物は不透明で、さらに昇温すると190℃近辺で透明となる。(参考例3) 市販NPAL(和光純薬(株))の融点測定を行った。 融点測定:167〜168.5℃で融解 融解物は不透明で、さらに昇温すると190℃近辺で透明となる。(保存安定性試験1) 実施例1で得られたNPAL結晶[融点170〜171.5℃、薄層クロマトグラフィー(SiO2-酢酸エチル, Rf=0.73; SiO2-(へキサン/酢酸エチル=1/1), Rf=0.55)]を三角フラスコに入れ、軽く綿栓をして、室温で実験台上に放置する。1ヵ月、3ヶ月および6カ月後の本品の融点および薄層クロマトグラフィーを測定したが、変化はなかった。(保存安定性試験2) 実施例1で得られたNPAL結晶および参考例1〜3におけるNPALをそれぞれ50mlの三角フラスコに1.5g入れ、トルエン28.5mlを加えて溶解し、密栓して24時間室温に放置する。続いて60℃に2時間加温した。各条件下での変化を表1に示す。 実施例1のNPAL結晶を用いた変化は認められなかった。一方参考例1〜3のNPALでは、溶解後5分で混濁し、室温で24時間放置すると、黄色が濃くなりトルエンに不溶の白色沈殿物を析出する。さらに60℃に2時間加温すると溶液の色調は黄橙色に変化した。 参考例2のNPALを用いた系について、白色沈殿物をろ過し、エタノールで洗浄、乾燥したところ、0.084g(仕込みNPALに対し、5.6%)の白色固体を得た。この白色固体は215℃〜217℃で分解した。 白色固体の元素分析結果、NMRスペクトル測定結果を以下に示す。 元素分析:(C6H5N2O2)2AlOH=C12H11N4O5Al(計算値:C, 45.29; H, 3.48; N, 17.61、実測値:C, 45.55; H, 3.60; N, 17.12) NMR(DMSO-d6)ppm: 7.99-7.89 (br., 4H, ar-H), 7.64-7.56 (br., 6H, ar-H), 5.92 (s., 1H, OH) また、参考例3のNPALを用いた系について、白色沈殿物をろ過し、エタノールで洗浄、乾燥したところ、0.057g(仕込みNPALに対し、3.8%)の白色固体を得た。この白色固体は215℃〜217℃で分解した。 本発明に係るNPALは、単独で保存安定性に優れ、窒素封入や遮光の必要もなく長期間保存できる。このため、本発明のNPALは保存や輸送に際して厳密な管理が要求されることなく、輸送コストや保存コストの削減に寄与できる。また、本発明によれば、上記のような安定化NPALの製法が提供される。従来法(参考例1)により得られたNPALのX線回折パターンを示す。本発明(実施例1)により得られたNPALのX線回折パターンを示す。従来法(参考例1)により得られたNPALの赤外線吸収スペクトルを示す。本発明(実施例1)により得られたNPALの赤外線吸収スペクトルを示す。従来法(参考例1)により得られたNPALのDSCチャートを示す。本発明(実施例1)により得られたNPALのDSCチャートを示す。 融点が168〜174℃の範囲にあり澄明に融解するN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶。 大気中、室温で6ヶ月保存後の融点が実質的に変化しない請求項1に記載のN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶。 トルエン溶液中、室温で24時間、60℃で2時間保存後にトルエン不溶部および着色物を実質的に生成しない請求項1または2に記載のN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩。 無定形N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩を不活性ガス雰囲気下で加熱し、結晶化させる工程を含むN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶の製造方法。 無定形N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩をアルコール中で加熱還流し、結晶化させる工程を含むN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶の製造方法。 アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノールの何れかである請求項5に記載の製造方法。 塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一種のアルミニウム化合物と、クペロンとを、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩に対する良溶媒と水との混合溶媒中で反応させ、良溶媒層を分取する工程を含むN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶の製造方法。 塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一種のアルミニウム化合物と、N−フェニルヒドロキシルアミンと、亜硝酸アルキルを、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩に対する良溶媒と水との混合溶媒中で反応させ、良溶媒層を分取する工程を含むN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶の製造方法。 N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩に対する良溶媒が、酢酸エチル、クロロホルムまたはトルエンである請求項7または8に記載の製造方法。 【課題】 副生物の混入の少ないN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩の製造法を確立し、また保存安定性に優れるN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩を提供すること。 【解決手段】 融点が168〜174℃の範囲にあり澄明に融解するN−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩結晶。【選択図】 なし20060118A1633000503 元素分析:(C6H5N2O2)2AlOH=C12H11N4O5Al(計算値:C, 45.29; H, 3.48; N, 17.61、実測値:C, 45.48; H, 3.64; N, 17.09) NMR(DMSO-d6)ppm: 7.99-7.88 (br., 4H, ar-H), 7.65-7.56 (br., 6H, ar-H), 5.90 (s., 1H, OH)(実施例2) クペロン4.65g(3×10-2モル)を45mlの水に溶解し、これにクロロホルム40mlを加え、よく撹拌しながら、AlCl3・6H2O 2.41g(1×10-2モル)を20mlの水に溶解した溶液を室温で滴下する。生じたNPALは直ちにクロロホルムに溶解する。AlCl3水溶液を滴下後10分間撹拌を続け、クロロホルム層を分取する。Na2SO4で乾燥後、クロロホルムを減圧下で留去する。微黄色のガム状残渣をエタノール30mlと還流する。均一な溶液が得られるが、間もなく白色結晶が析出しはじめる。このまま放冷し、生じた白色ないし微黄白色サイコロ状晶4.21g(収率96.1%)を得る。