タイトル: | 公開特許公報(A)_シリカゲルの再生方法 |
出願番号: | 2005109344 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 30/50,B01J 20/10,B01J 20/34,C01B 33/158,G01N 30/26,B01J 20/283,G01N 30/88 |
山根 弘之 JP 2006292394 公開特許公報(A) 20061026 2005109344 20050406 シリカゲルの再生方法 山根 弘之 305005030 山根 弘之 G01N 30/50 20060101AFI20060929BHJP B01J 20/10 20060101ALI20060929BHJP B01J 20/34 20060101ALI20060929BHJP C01B 33/158 20060101ALI20060929BHJP G01N 30/26 20060101ALI20060929BHJP B01J 20/283 20060101ALI20060929BHJP G01N 30/88 20060101ALI20060929BHJP JPG01N30/50B01J20/10 DB01J20/34 GC01B33/158G01N30/26 AG01N30/48 KG01N30/88 E 3 OL 7 4G066 4G072 4G066AA22B 4G066AB01D 4G066AB05D 4G066AB21D 4G066CA20 4G066EA01 4G066GA11 4G066GA40 4G072AA25 4G072AA28 4G072BB05 4G072CC10 4G072EE01 4G072EE07 4G072GG03 4G072HH19 4G072LL06 4G072LL13 4G072MM08 4G072MM09 4G072UU13本発明はシリカゲルの再生法に関し、さらに詳細には補酵素Qの精製に使用されたシリカゲルの再生方法を提供する。 補酵素Qは、心不全などの疾病の治療薬として使用されている。この補酵素Qは合成、醗酵および天然物からの抽出などの方法により製造される。補酵素Qの精製方法としては、吸着剤としてシリカゲルを使用するカラムクロマトグラフィが行われる。カラムクロマトグラフィにおける補酵素Qと不純物との分離性の点から、シリカゲルの再生が従来の方法では不充分であり、再使用することは困難であった。また、シリカゲルを使用するカラムクロマトグラフィは作業性の点およびシリカゲルの使用量の点で工業的な精製方法として問題があった。クロマトグラフィーに用いられるシリカゲルの有機化合物の吸着容量を決定する因子としては、シリカゲルの粒径、表面積、見かけ比重、含有水分量などがあげられる。特に、シリカゲルの水分量はシリカゲルが有機化合物を保持する吸着容量(吸着能力)とシリカゲルが保持した有機化合物を回収できる効率(回収率)を大きく左右する因子となる。すなわち、水分量が少ないと吸着容量は高くなるが、回収率は低下する。また、水分量が多いと吸着容量が下がる。したがって、シリカゲルを再生利用するにあたっては水分量を再生前の状態に戻すことが必要となる。シリカゲルに包蔵される水分子は、第1層水分子(シリカゲル表面に吸着)と第2層水分子(シリカゲルと共有結合)にわけることができる。水分子を十分に包蔵した使用後のシリカゲルを再生する場合、第1層の水分子は、比較的低温度でシリカゲル細孔内より脱離させることができる。これに対し、シリカゲル表面と水分子との吸着相互作用の大きな第2層水分子の脱離には、一般には150℃以上の熱風が必要となる。熱風再生を行うためにはカラムからシリカゲルを取り出し、熱風再生、カラムへの再充填などの煩瑣な作業を行わなければならない。また、シリカゲルの再生方法としては、40℃乃至沸点以下の無極性溶剤を用いて再生する方法(特公平2−53032)が知られているが、シリカゲルに吸着された第2層の水分子を除去することができない。このため再生シリカゲルの吸着容量が低いために実用に供しない。特公 平2−53032 本発明は、上記の方法に関する問題を解決するべく、シリカゲルの再生法に関し、さらに詳細には補酵素Qの精製に使用されたシリカゲルの再生方法を提供する。シリカゲルカラムクロマトグラフィにおいて、シリカゲル再生方法を種々検討した結果、補酵素Qをシリカゲルに吸着、溶出用有機溶剤により溶出させることにより補酵素Qを精製し、次いで洗浄用有機溶剤でシリカゲルを処理するシリカゲルの再生方法において、水と共沸混合物を形成する有機溶剤を用いることを特徴とするシリカゲルの再生法である。水と共沸混合物を形成する有機溶剤で処理することによりシリカゲルに吸着されている第1層の水分子を取り除き、シリカゲルの吸着能力の回復が可能であり、この方法によって得られた再生シリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィは補酵素Qと不純物との分離がよく、シリカゲルの反復使用が可能となる。また、この再生方法はカラム容器に充填されたままのシリカゲルに適用されるのでシリカゲルの充填、取り出しなどの作業を省略することができることが判明し、本発明を完成した。本発明の方法を用いることにより医薬品等として用いられている補酵素Qを安価に効率的に生産することができる。 本発明において精製される出発物質は、合成、醗酵および天然物からの抽出などの方法により補酵素Qを製造する際に混入されたたとえば各種の脂質などの不純物を含んでいる粗補酵素Qである。本発明における補酵素Qは補酵素Q1〜Q12のいずれでもよく、その2種以上の混合物でもよい。本発明に使用されるシリカゲルには特に制限はないが、実用上、たとえばシリカゲル(商品名ワコーシル C−300、和光純薬製)、シリカゲル(商品名シリカゲル60N、関東化学製)、シリカゲル(商品名シリカゲル60、ナカライテスク製)およびシリカゲル(商品名BW60、富士シリシア製)などの市販品が好適に使用される。 シリカゲルによる吸着および溶出は常法によって行なわれる。 溶出処理で使用する溶出用有機溶剤は、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、n−ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ベンゼンおよび石油エーテルなどの無極性溶剤と、クロロホルム、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、メタノールおよびエタノールなどの極性溶剤とを混合した混合溶剤が用いられる。 溶出を行った後のシリカゲルに吸着されている有機不純物を除去し、水分を調整するために、シリカゲルの洗浄、再生を行う。本発明ではシリカゲルの再生溶媒として水と共沸混合物を形成する有機溶剤であれば特に制限はないが、クロロホルム、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルエチルケトンは水の溶解度が低く、水との共沸混合物は常温で水と有機溶剤に2層分離するので、水を容易に系外除去でき、シリカゲルの再生溶剤として特に好適である。クロロホルム、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルエチルケトンなどの水と共沸混合物を形成する極性溶剤をそれぞれ単独もしくはこれらの混合物、またはこれらとn−ヘキサン、n−ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、石油エーテルなどの無極性溶剤との混合物を使用して行われる。洗浄、再生に用いる溶剤量は特に制限はないが、シリカゲルに吸着されている不純物や水を脱離するに必要な溶剤量であればよい。一般にシリカゲル容積の3〜10倍量の溶剤が用いられる。 本発明における洗浄および再生時の処理温度は20℃から使用する溶剤の沸点以下で行われる。処理温度はシリカゲルに吸着された水分子の自由エネルギーが高まるために、高温の方が好適であるが、使用する溶剤の沸点よりも高くすると、常圧では溶剤の一部がガス化しそのためにカラム中の溶剤の流れが円滑でなくなり、シリカゲルの再生は行われないかまたは不充分となる。水分除去のための蒸留は回分式でもよいが、連続的に行ってもよい。実用上、後者が好ましい。補酵素Qの精製に使用されたシリカゲルは従来、再生が不充分で再使用が不可能とされていたが、本発明によってシリカゲルの吸着分離能を回復させ再使用を可能とし、シリカゲルの交換を不要とし、またシリカゲルの使用量を節減でき、従ってコスト的にも、操作上からも改善され、本発明は工業的に大きな意義がある。以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。(1)粗補酵素Q10の調製法 2・3−ジメトキシ−5−メチル−ベンゾハイドロキノン−1・4(17.6g)と硼酸5.8gをトルエン80mlに加え加熱する。共沸混合物を除去した後、トルエンを留去する。残留物にトルエン10mlを加え、50−55℃で加熱、攪拌下にイソデカプレノール(純度87.6%)23gを加え、更に同一条件で5時間攪拌を継続する。 反応終了後、反応混合物をエチルエーテル400mlで抽出し、エーテル抽出液を水洗、アルカリ水洗、ついで芒硝乾燥する。 このエーテル抽出液に酸化銀8gを加え、攪拌下、室温で一夜放置する。 反応混合物をろ過し、ろ液より溶媒を留去して得た油状残渣24.5gをアセトンに溶解、冷却して補酵素Q10の粗結晶12.4g(純度87.6%)を得た。(2) 補酵素Q10の精製 径30mm 長さ500mmのカラム容器にn−ヘキサンに懸濁されたシリカゲル (商品名BW60、富士シリシア製)を200g(水分含有率:6.7%)充填し、n−ヘキサンに溶解した前記の粗結晶10gをカラム上部にチャージし吸着させた後、n−ヘキサン1000mlで洗浄する。イソプロピルエーテル含有率5Vol%のイソプロピルエーテルとn−ヘキサンとの混合物を流速800ml/hrで流下したところ、流下開始から約50分後に補酵素Q10を含む流出液がカラムから溶出しはじめた。純補酵素Q10含有区分として4200mlを分取し、これから溶剤を除去して3.80g(回収率:86.8%)の純補酵素Q10を得た。紫外部吸収スペクトル測定値、赤外部吸収スペクトル測定値、核磁気共鳴スペクトル測定値およびマススペクトル測定値により標品と同定された。(3) 再生シリカゲルによる補酵素Q10の精製 次に本発明によるシリカゲルの再生および再生シリカゲルを用いての補酵素Q10の精製についての実験例を示す。 前記(2)の操作を行った後、このシリカゲルカラム(水分含有率:7.2%)にカラムを外部から加熱して55℃に保ちながらイソプロピルエーテル2000ml流した。これにより、シリカゲルに吸着された不純物と水をカラムから除去した。その後、n−ヘキサン1000mlを流して、シリカゲルの再利用可能な状態とした。 再生したシリカゲル(水分含有率:6.9%)が充填されているカラムに、n−ヘキサンに溶解した前記(1)の粗結晶5gをカラム上部にチャージし吸着させた後、イソプロピルエーテル含有率5Vol%のイソプロピルエーテルとn−ヘキサンとの混合物を流速800ml/hrで流下させた。純補酵素Q10含有区分として4200mlを分取し、これから溶剤を除去して3.68g(回収率:84.0%)の純補酵素Q10を得た。これは粗結晶中の補酵素Q10の約86%に相当する。比較例 1 次に、洗浄・再生処理を常温で行ったシリカゲルでの補酵素Q10の精製についての実験例を示す。 前記(2)の操作を行った後、このシリカゲルカラム(水分含有率:7.2%)にカラムを常温でイソプロピルエーテル2000ml流したほかは実施例1と同様にして行ったところ、n−ヘキサンに溶解した粗補酵素Q10の粗結晶10gをカラム上部にチャージし吸着させた後、n−ヘキサンを200ml流した時点でQ10の留出が認められ、不純物との分離精製はできなかった。参考例 次に、洗浄を常温、再生処理を加温して行ったシリカゲルでの補酵素Q10の精製についての実験例を示す。 前記(2)の操作を行った後、このシリカゲルカラム(水分含有率:7.2%)にカラムを加熱しないで常温でイソプロピルエーテル2000ml流し、カラムを外部から加熱して55℃に保ちながらn−ヘキサン1000mlを流した。その後、n−ヘキサンに溶解した粗補酵素Q10の粗結晶10gをカラム上部にチャージし吸着させ、n−ヘキサンを200ml流した時点でQ10の留出が認められ、不純物との分離精製はできなかった。(1) 粗補酵素Q10の調製法 新鮮な牛の心臓1Kgを常法により鹸化処理、ヘキサン抽出、濃縮した後、得られた油状物質をエタノールに溶解した。エタノール溶液を0〜3℃に冷却して、結晶を析出させ補酵素Q10を含む粗結晶(純度73.7%)621mgを得た。 この操作を3回繰り返し、以下の検討に供した。(2)補酵素Q10の精製 径8mm、長さ500mmのカラム容器にn−トルエンに懸濁させたシリカゲル(商品名シリカゲル60 ナカライテスク製)を50g(水分含有率:4.7%)充填し、n−へキサンに溶解した前記の粗結晶200mgをカラム上部にチャージ吸着させた後、メチルエチルケトン含有率3Vol%のメチルエチルケトンとn−へキサンとの混合液を流速200ml/hrで流下したところ,流下開始から約1時間後に補酵素Q10を含む流出液がカラムから流出しはじめた。 純補酵素Q10含有区分として1000mlを分取し、これから溶剤を除去して131mg(回収率:88.9%)の純補酵素Q10を得た。(3)再生シリカゲルによる補酵素Q10の精製 次に本発明によるシリカゲルの再生および再生シリカゲルを用いての補酵素Q10の精製についての実験例を示す。 前記(2)の操作を行ったのち,このシリカゲルカラム(水分含有率:7.4%)を外部から加熱してメチルエチルケトンを500ml流した後、n−へキサン250mlを流して、シリカゲルカラムを再利用可能な状態とした。 再生されたシリカゲル(水分含有率:6.4%)が充填されているカラムにn−へキサンに溶解した前記(1)の粗結晶200mgをカラム上部にチャージし吸着させた後, メチルエチルケトン含有率3Vol%のメチルエチルケトンとn−へキサンとの混合液を流速200ml/hrで流下させた。 純補酵素Q10含有区分として1000mlを分取し、これから溶剤を除去して125mg(回収率:84.8%)の純補酵素Q10を得た。シリカゲルを吸着剤としたカラムクロマトグラフィで補酵素Qをシリカゲルに吸着、溶出用有機溶剤により溶出させることにより補酵素Qを精製し、次いで洗浄用有機溶剤でシリカゲルを洗浄し、再生する方法において、水と共沸混合物を形成する有機溶剤でシリカゲル中に含まれる水分を調整することを特徴とするシリカゲルの再生方法。水と共沸混合物を形成する有機溶剤でシリカゲル中に含まれる水分を調整するにあたって、水と有機溶剤の平衡混合物から水との共沸混合物を蒸留によって、水を系外に除去することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のシリカゲルの再生方法。水と共沸混合物を形成する有機溶剤がクロロホルム、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルエチルケトンである特許請求の範囲第1項記載のシリカゲルの再生方法。 【課題】 補酵素Qの精製方法としては、吸着剤としてシリカゲルを使用するカラムクロマトグラフィが行われる。カラムクロマトグラフィにおける補酵素Qと不純物との分離性の点から、シリカゲルの再生が従来の方法では不充分であり、再使用することは困難であった。また、シリカゲルを使用するカラムクロマトグラフィは作業性の点およびシリカゲルの使用量の点で工業的な精製方法として問題があった。【解決手段】 シリカゲルを吸着剤としたカラムクロマトグラフィで補酵素Qを精製するために使用したシリカゲルを再利用するために、水と共沸混合物を形成する有機溶剤を加温してシリカゲルを処理することにより、シリカゲルに含まれる水分を調整することで再利用を可能とする。【選択図】 なし