タイトル: | 公開特許公報(A)_スラグの定量方法 |
出願番号: | 2005103196 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 33/38 |
狩野 和弘 中村 昌士 JP 2006284313 公開特許公報(A) 20061019 2005103196 20050331 スラグの定量方法 住友大阪セメント株式会社 000183266 田村 爾 100116687 狩野 和弘 中村 昌士 G01N 33/38 20060101AFI20060922BHJP JPG01N33/38 5 4 OL 10 本発明は、スラグの定量方法に関し、特にセメント組成物中の高炉スラグの定量方法、及びセメント硬化体中の未反応高炉スラグの定量方法に関する。近年の環境問題への関心の高まりと共に、石炭火力発電や製鉄所に伴って発生する石炭ガス化スラグや高炉スラグや、都市ゴミ焼却灰溶融スラグをセメント混和材や細骨材の代替品として利用しようとする気運が高まってきた。 高炉セメントは、一般に普通ポルトランドセメントに比べて長期強度が高く、発熱量が少なく、アルカリ骨材反応が起こりにくく、水密性が良好である等の特性より、近年その需要が伸びつつある。 最近、高炉スラグ微粉末が市販されるようになり、その使用目的に応じてポルトランドセメントあるいは混合セメントと高炉スラグ微粉末とを混合して、使用されるようになった。 高炉スラグ微粉末混合セメントを用いたコンクリートの物性は、使用したポルトランドセメントおよび高炉スラグ微粉末のキャラクターの影響を受けるばかりでなく、スラグ含有量によっても大きく異なる。 したがって、高炉スラグ微粉末を含むセメントの製造における品質管理や、コンクリート打設後のコンクリート構造物中の未反応高炉スラグの抽出や含有量の推定方法を確立しておく必要がある。 セメント組成物等の中に含有されるスラグの定量方法には、溶解法(酢酸法、塩化アンモニウム−アンモニア法、サリチル酸−アセトン−メタノール法、NaOH−Na2HPO4−EDTA−トリエタノールアミン法等)、顕微鏡法、重液分離法、磁気分離法または機器分析法(XR Emission法、粉末X線回折法、熱分析法、測色法、赤外法)等がある。 しかし、顕微鏡法は、試料の分散の程度や測定者の熟練度により、結果に個人差が出やすい方法であり、また、重液分離法は、セメントから純粋なスラグ部を分離することはかなり困難であり、多くの労力と熟練が必要である。 また、磁気分離法は、得られたスラグリッチ画分に含まれる粒子は、化学組成的に偏った組成のスラグである可能性が大きく、誤差の原因となり、当該方法も、また、高い熟練度を要し、個人差が出やすい測定方法である。 更に、機器分析法は、セメントに使用されているスラグを入手し、事前に測定する必要があり、出所が異なる各種高炉スラグセメントには直接適用することは困難である。 従来の溶解法は、ポルトランドセメントと高炉スラグの各種溶媒に対する反応性の差を利用する方法であり、用いる溶媒の種類によっていくつかの方法がある。 しかし、これらの方法では、ポルトランドセメントおよびスラグを使用する溶媒で処理したときの不溶残分量あるいは発生する気体の量をあらかじめチェックして検量線を作成したのち、高炉セメントの不溶残分量あるいは発生する気体の量を測定することによってスラグ含有量が求められるものである。 従って、高炉セメントの測定の前に、高炉セメント製造に使用したポルトランドセメントおよびスラグを単独で測定し、検量線を作成することが大前提である。 従って、未知の高炉スラグには、直接適用することができない方法である。 スラグの品質管理方法としては、特開2004−317440号公報に、物質の還元能力を示す指標の1つである酸化還元電位を高炉徐冷スラグ粉末について測定し、更に、溶出する非硫酸態イオウ分を分析することにより高炉徐冷スラグ粉末の品質を判定する方法が、また特開2004−340774号公報には、高炉徐冷スラグの二酸化炭素吸収量を測定し、或いは、反射電子像からメリライト含有量を半定量し、エネルギー分散型X線分析装置を用いてメリライトの元素分析を行い、ゲーレナイトとアケルマナイトの含有量をそれぞれ測定し、或いはメリライトの格子定数を算出し、それらの数値により高炉徐冷スラグの品質を判定する方法が開示されている。 しかし、これまでに提案されているスラグ含有量を測定して品質を管理する方法は、いずれもそれ単独では十分ではなく、簡便に、かつ正確に含有スラグ量を測定することが難しかった。 スラグ含有量はコンクリートの凝結時間および早期強度(とくに低温条件下での強度)に影響し、とくに硫酸塩抵抗性に関してはその影響は顕著であるので、特に、フレッシュコンクリートや硬化コンクリートを分析対象とした場合には、誤差がかなり生じ、厳密な管理をすることはできなかった。特開2004−317440号公報特開2004−340774号公報 本発明の目的は、高炉スラグ微粉末を混合したセメント組成物中のスラグ含量を、簡単な操作で、かつスラグ含有率を正確に定量できる方法を提供することである。 また、本発明の他の目的は、高炉スラグ微粉末を混合したセメント硬化体中における未反応スラグを簡単な操作で、かつスラグ含有率を正確に定量できる方法を提供することである。 また、本発明の他の目的は、上記目的に加えて、特別の施設や装置を必要とせず、より高い精度でスラグの定量をおこなうことができ、工場などにおけるセメント組成物の品質管理に有効な、スラグの定量方法を提供することである。 本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、高炉スラグを含有するセメント組成物を、操作が簡便な溶解法を用いて、3回の特定の選択溶解をおこなうことにより、セメント組成物中のスラグの配合比に無関係に、スラグ量を正確に定量することが可能となり、更に、当該方法は、セメント硬化物中の未反応スラグの定量方法としても有効であることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。 即ち、本発明のスラグの定量方法は、セメント組成物を、サリチル酸アセトンメタノール溶液に溶解し、次いで、不溶残渣分をKOHサッカロース溶液に溶解し、残った不溶残渣分をアンモニウムに溶解する、3種類の選択溶解を順次実施して、得られた不溶残渣分量からスラグ量を求めることを特徴とするものである。 また、本発明の他のスラグの定量方法は、セメント組成物から形成されたセメント硬化体を、サリチル酸アセトンメタノール溶液に溶解し、次いで、不溶残渣分をKOHサッカロース溶液に溶解し、残った不溶残渣分をアンモニウムに溶解する、3種類の選択溶解を順次実施して、得られた不溶残渣分量から未反応スラグ量を求めることを特徴とするものである。 本発明の他のスラグの定量方法は、セメント組成物から形成されたセメント硬化体を、サリチル酸アセトンメタノール溶液に溶解し、次いで、不溶残渣分をKOHサッカロース溶液に溶解し、残った不溶残渣分をアンモニウムに溶解する、3種類の選択溶解を順次実施して、得られた不溶残渣分量と骨材の不溶残分見積量に基づいて、未反応スラグ量を求めることを特徴とするものである。 好適には、本発明のスラグの定量方法において、更に、該3種の溶解選択法を実施した後の不溶残渣分を加熱乾燥することを特徴とするもので、更に好適には、被検査体であるセメント組成物またはセメント硬化体に石灰石が含まれる場合には、該選択溶解を実施する前に、700〜800℃で予め加熱処理を行うことを特徴とするものである。 本発明のスラグの定量方法によれば、スラグ混合比の高いセメント組成物であっても、セメント組成物の製造工程において、製品を定期的にサンプリングする、簡単な操作で正確にスラグ含有率を求めることができ、セメント製品の出荷時、セメント製品の購入時等においても、セメント製品の品質管理を適切に行うことができる。 また、本発明方法によれば、セメント硬化体中の未反応スラグ量を測定することが可能となるので、この結果をセメント構造物の構造解析、劣化診断等に有効に利用できることとなる。 本発明のスラグの定量方法では、スラグを含有するセメント組成物を、サリチル酸アセトンメタノール溶液に溶解し、次いで、不溶残渣分をKOHサッカロース溶液に溶解し、残った不溶残渣分をアンモニウムに溶解する、3種類の選択溶解を順次実施して、得られた不溶残渣分量からスラグ量を算出するものである。 従来のセメント組成物中のスラグの定量方法として、上記したように特に溶解法では、酢酸法、塩化アンモニウム−アンモニア法、サリチル酸−アセトン−メタノール法、NaOH−Na2HPO4−EDTA−トリエタノールアミン法を用いて、これにセメント組成物またはセメント硬化体を溶解して不溶残分量からスラグ含有量を求めていたが、いずれの方法も、高炉セメント製造に使用したポルトランドセメントおよび高炉スラグを標準試料として用いて、測定試料と比較するという手間がかかり、またその測定誤差は大きく、不溶残分量からはスラグの含有量を正確に求めることができない。 本発明の方法のよれば、まず第1の選択溶解として、サリチル酸アセトンメタノール溶液に、スラグを含有するセメント組成物を溶解するにあたり、当該第1の選択溶解として、セメント組成物中のクリンカ成分であるシリケート相、例えば、エーライト(Ca3SiO5)、ビーライト(Ca2SiO4)についてはほぼ完全に溶解するのに対して、セメントクリンカ中の間隙相部分、MgO、石膏及びスラグについては実質的に溶解することなく、不溶残渣分となることが明らかとなった。 本発明の方法に用いる第1の選択溶解溶液としては、サリチル酸、アセトン及びメタノールを混合した溶液が用いられる。 当該第1の選択溶解液に、試料となるセメント組成物を添加し、例えば1〜2時間混合攪拌して、第1選択溶解を実施する。 次いで、十分に混合攪拌してから、静置して、その後、当該溶液を吸引ろ過装置を用いて、ろ紙で吸引ろ過し、残分をメタノール等の適当な材料で洗浄して、第1不溶残渣分を得る。 かかる第1の選択溶解では、セメント組成物中のクリンカのシリケート相が溶解した残りが第1不溶残渣分として得られる。 当該第1選択溶解では、クリンカ部分を溶解するが、クリンカ中の間隙相は不溶となる。 本発明の測定対象とするセメント組成物に関し、セメントの種類について、特に限定はされず、例えば、ポルトランドセメント等を対象とすることができる。 また、スラグとしては、石炭ガス化スラグ、焼却灰溶融スラグ等、製鉄所から産業廃棄物として産出される高炉水砕スラグ等の任意のスラグを挙げることができる。 かかる第1の選択溶解によって得られた第1不溶残渣分を、KOHサッカロース溶液に溶解して、第2の選択溶解を実施する。 本発明の方法に用いる第2の選択溶解溶液としては、水酸化カリウム、サッカロース及び水を混合した水溶液が用いられる。 当該第2の選択溶解液に、第1不溶残渣分を添加した後、十分に混合攪拌、例えば15〜60分間混合攪拌してから、静置して、その後、当該溶液を吸引ろ過装置を用いて、ろ紙で吸引ろ過し、残分を蒸留水等の適当な材料で洗浄して、第2不溶残渣分を得る。 かかる第2の選択溶解では、第1不溶残渣分中のクリンカの間隙相を溶解するが、間隙相中に含まれるMgO及び石膏の一部が不溶となり、第2不溶残渣分として得られる。 かかる第2の選択溶解によって得られた第2不溶残渣分を、アンモニウム溶液に溶解して、第3の選択溶解を実施する。 本発明の方法に用いる第3の選択溶解溶液としては、アンモニウム塩及び水を混合した水溶液が用いられる。 前記アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム等の任意のアンモニウム塩を用いることができる。 当該第3の選択溶解液に、第2不溶残渣分を添加した後、十分に混合攪拌、例えば30分〜3時間混合攪拌してから、静置して、その後、当該溶液を吸引ろ過装置を用いて、ろ紙で吸引ろ過し、残分を蒸留水等の適当な材料で洗浄した後、ろ紙と共に残留物をるつぼに入れて乾燥させ、その後、徐々に加熱して、ろ紙を灰化させて、第3不溶残渣分を得る。 かかる第3の選択溶解では、第3不溶残渣分中のMgOおよび石膏を溶解するので、第3不溶残渣分は、ほぼスラグのみとなる。 第3不溶残渣分量を秤量する方法については、特に限定的ではないが、例えば、700〜800℃で、電気炉中で1時間程度強熱した後、デシケーター中で放冷し、秤量することによって、不溶残渣分量を求めることができる。 このようにして求めた不溶残渣分量(ほぼスラグのみの量)を、試料としたセメント組成物中のスラグ量とすることで、セメント組成物中のスラグの含有率を求めることができ、セメント組成物中のスラグ混合比とは無関係に、正確にスラグ量を求めることができる。 なお、上記第1不溶残渣分、第2不溶残渣分、第3不溶残渣分に含まれる成分を、表1に示す。○は各不溶残渣分、△は一部が溶解し、一部が不溶となって残存していることを示す。 また、セメント組成物中に骨材が含まれる場合には、上記セメント組成物を3種の選択溶解に供した後の第3不溶残渣分中に、骨材に基づく不溶残渣分が含まれる場合がある。 かかる場合には、測定試料を溶解するものと同様の3種の選択溶解に用いる溶液に骨材を溶解した場合に、不溶残渣分として残存する骨材の割合を予め求めておき、セメント組成物中の骨材の配合割合に基づいて骨材に基づく不溶残渣分量を見積もり、測定対象とするセメント組成物の不溶残渣分量から骨材の不残渣分の見積量を除いた量をスラグ量とすることによって、骨材を含有するセメント組成物中のスラグの含有率を求めることができる。 本発明のスラグの定量方法によれば、スラグ含有率の高いセメント組成物であっても、スラグ含有率を正確に測定することができる。 従って、セメント組成物の製造工程において、製品を定期的にサンプリングして、本発明方法によってスラグ含有率を求めることにより、スラグ含有率の高いセメント組成物についても、製品の品質管理を適切に行うことができる。 更に、本発明の方法は、セメント製品の出荷時、セメント製品の購入時等においても、品質管理のためのスラグの定量方法として非常に有効である。 また、本発明のスラグ定量方法は、セメント及びスラグからなるセメント組成物から形成されたセメント硬化体に含まれる未反応スラグの定量方法としても利用することができる。 例えば、セメント硬化体の一部をボーリングによるコア採取、ハツリ等の方法でサンプリングし、これを適当な大きさに粉砕した後、上記3種の選択溶解を実施することによって、不溶残分量からセメント硬化体中の未反応スラグ量を求めることができる。 セメント硬化体では、通常、セメントの水和反応生成物、セメントとスラグの反応生成物、及びスラグの未反応物が含まれる。 これらの内で、セメントの水和反応生成物とセメントとスラグの反応生成物については、上記選択溶解によって、ほぼ完全に溶解するが、未反応スラグについては、上記選択溶解については実質的に溶解することなく不溶残渣分となって残る。 従って、セメント及びスラグからなるセメント組成物から形成されたセメント硬化体についても、第3の選択溶解における不溶残渣分量を未反応スラグ量とすることができる。 なお、セメント硬化体では、セメント等の成分は水和物となっているが、セメント硬化体を、例えば、1000℃で1時間程度加熱すれば、水和した水分をほぼ完全に除去することができる。 従って、セメント硬化体の一部をサンプリングし、1000℃で1時間程度加熱して加熱残分量を求めることによって、サンプリングしたセメント硬化体の内で、原料としたセメント組成物の割合を求めることができる。 これにより、使用したセメント組成物の配合表から、セメント組成物中のスラグの配合割合を知れば、原料として用いたスラグの内で未反応スラグの割合を求めることができる。 また、セメントとスラグの他に、骨材を含むセメント組成物から形成されたセメント硬化体については、前述したセメント組成物中に骨材が含まれる場合と同様に、骨材の種類に応じて、使用する3種の選択溶解液における不溶残渣分となる割合を予め求めておき、配合表中の骨材の配合割合に基づいて骨材の不溶残渣分量を見積もり、測定試料とするセメント硬化体の不溶残分量から骨材の不溶残渣分の見積量を除いた量を未反応スラグ量とすることによって、セメント硬化体中の未反応スラグ量を求めることができる。 上記方法によって、セメント硬化体中の未反応スラグ量を正確に求めることが可能となる。 この様にして求めたセメント硬化体中の未反応スラグ量は、例えば、セメント構造物の構造解析、劣化診断等に有効に利用することができるものである。 また、好適には、セメント組成物またはセメント硬化体に石灰石が含まれる場合には、上記3種の該選択溶解を実施する前に、700〜800℃で予め加熱処理を行うことが望ましい。 かかる加熱処理により、含有される石灰石が脱炭酸され生石灰となる。 サリチル酸アセトンメタノール溶解では炭酸カルシウムは溶解しないが、酸化カルシウムは溶解するため、石灰石を生石灰に変化させることにより、第1の選択溶解により石灰石分を溶解することができる。 以上の方法によって、セメント組成物やセメント硬化体中のスラグ含有量が熟練性を要さず、簡易な方法で正確に測定することが可能となる 本発明を以下の実施例及び比較例により詳細に説明する。実施例1 セメント組成物として、A〜Eまでの5種の高炉スラグを普通セメントクリンカ(住友大阪セメント株式会社製)に添加して試料を作成した。 但し、スラグを添加しないもの(スラグ;0質量%)、スラグ2.5質量%添加のものを高炉セメントスラグの種類に応じて5種類、スラグ5質量%添加のものを高炉スラグの種類に応じて5種類、合計11種類の試料を調製した(各高炉スラグ:普通セメントクリンカの配合割合は、質量比で、0:100、2.5:97.5、5:95の割合で混合したもの)。 これらの各試料1.5gに対して、第1段階の選択溶解として、サリチル酸7.5g、アセトン105ml及びメタノール45mlを加えて混合して、2時間攪拌し、1日静置し、その後、この溶液を吸引ろ過し、残分をメタノールで洗浄して、第1不溶残渣分を得た。 次いで、第2段階の選択溶解として、前記第1選択溶解における不溶残渣分に対して、水酸化カリウム4g、サッカロース5g、95℃の水50mlを混合して、60分攪拌し、その後、この水溶液を吸引ろ過し、残分を蒸留水で洗浄して、第2不溶残渣分を得た。 第3段階の選択溶解として、前記第2選択溶解における不溶残渣分に対して、硫酸アンモニウム2g、水100mlを混合して、2時間攪拌し、その後、この水溶液を吸引ろ過し、第3不溶残渣分を得た。 次いで、上記3種の選択溶解を実施して最終的に得られた第3不溶残渣分を、750℃で60分間加熱した後、秤量して、スラグ量を求めた。比較例1 試料としては、上記実施例1と同様のものを11種使用した。 Na2CO30.0125mol、EDTA0.00625molおよびトリエタノールアミン6.25mlを水256.25mlに溶解し、さらにNaOHによりpH11.6に調整した溶液を作製した。 当該溶液に、上記各11種の試料をそれぞれ0.25gを加え、30分間混合攪拌し、次いでろ過した。 得られた不溶残渣分を蒸留水で洗浄し、105℃で90分間乾燥させて、不溶残渣分を秤量して、スラグ量を求めた。比較例2 試料としては、上記実施例1と同様のものを11種使用した。各11種の試料各0.5gを、サリチル酸2.5g、アセトン35ml及びメタノール15mlを加えて混合したサリチル酸とアセトンとメタノールの混合溶液に添加して、1時間攪拌し、1日静置し、その後、この溶液を吸引ろ過し、残分をメタノールで洗浄した。 得られた不溶残渣分を常温で乾燥させた後850℃で10分過熱して、不溶残渣分量を秤量して、スラグ量を求めた。試験評価 上記した実施例1及び比較例1〜2で実施した試験結果の評価方法を、以下に示す。 まず、セメントおよびスラグの定量性を評価するにあたり、スラグ量を求めたい試料(未知試料)に使用されている上記セメントおよび上記スラグ単味をそれぞれ入手し、これらを所定量混ぜ合わせてスラグ含有量の明らかな試料(既知試料)を、複数種類調製する。 この既知試料について選択溶解を行い、残分とスラグ含有量の関係式を作成し、この式を検量線として、未知試料の残分からスラグ含有量を算出する。 上記したように、本発明においては、上記クリンカに5種類のスラグを所定量混合し、既知試料を作製し、当該既知試料について、それぞれの選択溶解を行い、残分とスラグ量の関係式を作成した。 関係式「Y=aX+b」が得られたとき(但し、X:スラグ含有量(質量%)、Y:残分(質量%))、スラグ量が0質量%、すなわちクリンカ単味の残存率(溶け残る割合)はX=0よりY=b(質量%)、スラグ単味の残存率はX=100よりY=100a+b(質量%)が得られることとなる。 図1は実施例1の場合を示したものであり、関係式Y=0.91X+0.5が得られ、図2は比較例1の場合を示したものであり、関係式Y=0.76X+3.1が得られ、図3は比較例2を示したものであり、Y=0.81X+18.8の関係式が得られる。 図に示すσとは、得られた関係式と実験値の誤差の標準偏差、すなわち定量誤差を表す。 図1におけるσは0.07、図2におけるσは0.60、図3におけるσは0.45である。 σが大きいほど図中の太線であらわされる上記各関係式を表す直線と、実験値(プロット点)の差が大きいことを示している。 このことは、σが大きいほどスラグの種類によって残分が異なることを表すものである。 図1、図2及び図3より、スラグの種類による誤差σは実施例1が最も小さく、スラグの種類に関わらずスラグ含有量が同じであれば残分も同程度となることがわかる。 すなわち、実施例1が最もスラグ種の違いによる影響を受けにくいことがわかる。 また、クリンカ残存率は、実施例1が最も小さくなっており、図1〜図3では、クリンカ1種類のみのデータを示すものであるが、クリンカの種類が異なると残分が変化すると考えられる。 すなわち、クリンカの残存率が大きいほどクリンカ種の違いによる誤差が大きくなりやすいものであると考えられる。 また、図4から、実施例1ではクリンカの種類が変化しても、残分は0.2質量%程度しか変化しないが、比較例1及び比較例2においては、0.5および0.8%程度変化していることがわかる。 すなわち、実施例1が、最もクリンカ種の違いによる影響を受けにくいことを示しているものである。 以上のことから、実施例1においては、スラグやクリンカの種類に影響を受けにくく、溶解残分からスラグ含有量を推定したときの誤差が最も小さいものと判断される。 なお、図1〜図3の横軸は試料のスラグ含有量(質量%)、縦軸は溶解残分(質量%)図4の横軸はクリンカの種類(4種類)、縦軸(左)は実施例1及び比較例1のクリンカ残存率(質量%)、縦軸(右)は比較例2のクリンカ残存率(質量%)を示す。 本発明のスラグの定量方法は、セメント組成物の製造工程において、また、セメント製品の出荷時、セメント製品の購入時等において、製品を定期的にサンプリングする、製品の品質管理の分野に適切に利用することが可能である。 また、セメント構造物の構造解析、劣化診断の分野等に有効に利用することもできる。本発明のスラグの定量方法を、セメント組成物を用いて実施した後のスラグ量を測定した線図。従来のEDTA−トリエタノールアミン−NaOH溶解法により、セメント組成物のスラグ量を測定した線図。従来のサリチル酸アセトンメタノール溶液法により、セメント組成物のスラグ量を測定した線図。本発明の3種類の選択溶解法によるクリンカの残存率を示した図。 セメント組成物を、サリチル酸アセトンメタノール溶液に溶解し、次いで、不溶残渣分をKOHサッカロース溶液に溶解し、残った不溶残渣分をアンモニウムに溶解する、3種類の選択溶解を順次実施して、得られた不溶残渣分量からスラグ量を求めることを特徴とする、スラグの定量方法。 セメント組成物から形成されたセメント硬化体を、サリチル酸アセトンメタノール溶液に溶解し、次いで、不溶残渣分をKOHサッカロース溶液に溶解し、残った不溶残渣分をアンモニウムに溶解する、3種類の選択溶解を順次実施して、得られた不溶残渣分量から未反応スラグ量を求めることを特徴とする、スラグの定量方法。 セメント組成物から形成されたセメント硬化体を、サリチル酸アセトンメタノール溶液に溶解し、次いで、不溶残渣分をKOHサッカロース溶液に溶解し、残った不溶残渣分をアンモニウムに溶解する、3種類の選択溶解を順次実施して、得られた不溶残渣分量と骨材の不溶残渣分見積量に基づいて、未反応スラグ量を求めることを特徴とする、セメント硬化体中のスラグの定量方法。 請求項1〜3いずれかの項記載のスラグの定量方法において、更に、該3種の溶解選択法を実施した後に、不溶残渣分を加熱乾燥することを特徴とする、スラグの定量方法。 請求項1〜4いずれかの項記載のスラグの定量方法において、セメント組成物またはセメント硬化体に石灰石が含まれる場合には、該選択溶解を実施する前に、700〜800℃で予め加熱処理を行うことを特徴とする、スラグの定量方法。 【課題】 高炉スラグ微粉末を混合したセメント組成物中のスラグ含量を、または、高炉スラグ微粉末を混合したセメント硬化体中における未反応スラグ量を簡単な操作で、かつスラグ含有率を正確に定量できる方法を提供する。【解決手段】 スラグの定量方法は、セメント組成物またはセメント硬化体を、サリチル酸アセトンメタノール溶液に溶解し、次いで、不溶残渣分をKOHサッカロース溶液に溶解し、残った不溶残渣分をアンモニウムに溶解する、3種類の選択溶解を順次実施して、得られた不溶残分量からスラグ量を求める方法である。【選択図】 図4