生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ファモチジン注射液
出願番号:2005099956
年次:2006
IPC分類:A61K 31/426,A61K 9/08,A61K 47/02,A61K 47/18,A61K 47/22,A61P 1/04,B65D 81/26,A61J 1/14


特許情報キャッシュ

田村 順子 北條 智行 JP 2006273819 公開特許公報(A) 20061012 2005099956 20050330 ファモチジン注射液 テルモ株式会社 000109543 田村 順子 北條 智行 A61K 31/426 20060101AFI20060915BHJP A61K 9/08 20060101ALI20060915BHJP A61K 47/02 20060101ALI20060915BHJP A61K 47/18 20060101ALI20060915BHJP A61K 47/22 20060101ALI20060915BHJP A61P 1/04 20060101ALI20060915BHJP B65D 81/26 20060101ALI20060915BHJP A61J 1/14 20060101ALN20060915BHJP JPA61K31/426A61K9/08A61K47/02A61K47/18A61K47/22A61P1/04B65D81/26 SA61J1/00 390S 4 OL 10 3E067 4C076 4C086 3E067AA03 3E067AB81 3E067BA02B 3E067BA12C 3E067BB14B 3E067BB14C 3E067BB25B 3E067BB25C 3E067CA06 3E067EE25 3E067EE28 3E067FA04 3E067FC01 3E067GD01 4C076AA12 4C076BB11 4C076CC16 4C076DD22E 4C076DD26E 4C076DD51E 4C076DD60E 4C076FF15 4C076FF51 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC82 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA07 4C086MA10 4C086MA17 4C086MA66 4C086NA02 4C086ZA68 本発明は、ファモチジンが溶解された液状の薬剤に関する。 ファモチジンは胃粘膜壁細胞のヒスタミンH2受容体を遮断することにより、胃酸分泌抑制作用を示す化合物である。ファモチジンは水に極めて溶けにくいため、ファモチジン注射剤の開発では、まず溶解させる技術が必要であった。特に、ファモチジンは、pH変動により溶解性が左右されやすく、特に注射剤として好ましいpH領域である中性域においては溶解性が極めて悪く、結晶となり析出することが知られている。また、ファモチジンは酸性域においては溶解性は向上するが、不安定となることが知られている。 凍結乾燥品として医療現場に供されているファモチジンは、酸を添加し、その塩を形成させることで可溶化できるが、酸性領域下では物理的に不安定になるという相反する性質を考慮し、酸として酸性度の低いL−アスパラギン酸を選択し、凍結乾燥製剤としてのファモチジンの安定化を達成している(特許文献1:特公昭63−65047号公報)。しかし、凍結乾燥製剤は、注射用水や生理食塩液等の溶解液を用いて用事調製が必要であり、繁雑さが伴う製剤である。そのため液剤の開発が望まれていた。特公昭63−65047号公報 液剤としては、溶解補助剤としてファモチジンに換算して約5mg/mL以下の濃度について液剤化を達成しているファモチジン注射液が知られている(特許文献2:特許公開2002−322057号公報、特許文献3:特許公開2003−212772号公報)。しかし、これらのファモチジン注射液はいずれも低濃度であり、ファモチジンには緩徐に静脈内投与あるいは点滴静注といった用法の他に、筋肉内投与が用法として存在し、この場合、筋肉内投与における1回の投与量は通常4mL以下とされている(堀岡正義ら,注射剤−その基礎と調剤と適用−,南山堂,1995,p195)こと、ファモチジンの筋肉内投与量は20mg/回であることから、その濃度を5mg/mL以上とする必要がある。特許公開2002−322057号公報特許公開2003−212772号公報 高濃度の液剤としては、非水溶剤を配合することによりファモチジンまたはその塩の濃度が約5mg/mL〜約40mg/mLの高濃度でありながら室温長期安定な液状の注射剤が開示されている(特許文献4:特開平11−193233号公報)。しかし、非水溶剤の添加は、局所刺激性や浸透圧比の上昇にともなう疼痛及び組織障害性を招くおそれがあり、好ましいものではない。 また、酸を添加して可溶化し、さらに可溶化補助剤として水溶性酸アミドあるいはニコチン酸アミドを用いることにより、ファモチジンを高濃度に含有しながら室温長期安定な液状の注射剤が開示されている(特許文献5:W02002/051411号公報、特許文献6:特開2003−261449号公報)。しかし、水溶性酸アミドあるいはニコチン酸アミドを用いた場合、非水溶剤や水溶性非水溶剤を用いる必要がなくなるが、水溶性酸アミドあるいはニコチン酸アミドを大量に配合する必要があるため浸透圧が高くなり、好ましくない。特開平11−193233号公報W02002/051411号公報特開2003−261449号公報 一方、ファモチジンを高濃度で添加し、高圧蒸気滅菌による熱履歴を持たせることで室温長期安定な液状の注射剤が開示されているが、加熱が必須であり、注射液の滅菌方法として高圧蒸気滅菌を採用せず、無菌充填等の手段を採用する場合には安定化のために別途加熱工程を設定する必要が生じてしまい、製造工程設計の自由度に乏しいものであった(特許文献7:WO03/055483号公報)。WO2003/055483号公報 なお、リン酸二カリウムをファモチジン注射液に配合しうることは前記特許文献6にも開示されている。しかし、ここでは専らニコチン酸アミドの存在下において使用されるpH調整のための塩基としての一例に過ぎず、ニコチン酸アミド不存在下で優れたファモチジン注射剤が提供されることはまったく開示されていない。 本発明は、上記従来技術の諸問題点に鑑み、ファモチジンが安定に保存される中性pH領域(pH6付近)でありながら析出せず、非水溶剤不含であり、かつ水溶性非水溶剤や大量に配合された溶解補助剤による浸透圧上昇などがなく、さらに熱負荷の必要もない、筋肉注射可能で室温下長期間にわたって安定保存可能な高濃度ファモチジン注射液を提供するものである。本発明者は、鋭意検討した結果、リン酸ニカリウムに少量でファモチジンの溶解を補助する作用がある事を見出し、さらに検討を重ねた結果、以下の発明を完成した。(1)ファモチジンまたはその塩を塩基換算量として1mg/mL〜40mg/mL、可溶化剤としての酸、溶解補助剤としてのリン酸ニカリウムを該ファモチジン1mgあたり0.01mg〜0.1mgを含有し、pHが5.0〜7.0である室温保存可能なファモチジン注射液。(2)前記酸が塩酸である上記(1)に記載のファモチジン注射液。(3)プロリン、塩酸アルギニン、グリシンおよびトレオニンから選択される1以上を溶解維持剤として含有するものである上記(1)または(2)に記載のファモチジン注射液。(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のファモチジン注射液が充填されたプラスチック製容器が脱酸素剤とともに酸素不透過性包装体に封入されてなるファモチジン注射液製剤。 本発明によれば、pHにより著しく溶解性・安定性の異なるファモチジンにおいて、中性付近で難溶であるのにも拘わらず、pH5.0〜7.0において析出が認められず、安定保存可能な高濃度ファモチジン注射液が提供される。また、溶解性を保つために必要なリン酸ニカリウムは微量であるため、浸透圧は低く抑えられ、添加剤のプロリンを加えて等張とすることができる。また、薬液の安定性及び溶解性向上のために溶解補助剤として添加されていた非水溶剤及びファモチジンの酸化による劣化を防ぐために使用される抗酸化剤等添加剤の使用が回避することができる。また、溶解性を保つために行われる高圧蒸気滅菌等の注射液に対する熱負荷の有無に関わらず、析出を抑制する効果が得られ、工程設計における自由度の大きい注射剤が提供される。さらに、液剤であるため、従来のファモチジン凍結乾燥製剤よりも、調製時の簡便性に優れている。また、注射剤としての用法の観点からも、非水溶剤を配合しないため、投与時の疼痛刺激の原因となる局所刺激性や組織障害性等のリスク軽減が期待できる。 更に、本発明は、上記ファモチジン注射液がプレフィルドシリンジに充填されるとともに、さらに窒素ガス等不活性ガスでの置換や抗酸化剤の添加等の薬液内部での脱酸素化を避け、包装に脱酸素剤等を使用して製剤化することによりなるファモチジン注射液製剤であるので、更なる利便性の追求がなされるとともに、使用時の安全性を高め、また、酸化に対して非常に安定なので、容器(シリンジ)への薬液充填時に薬液(ファモチジン注射液)への不活性ガスによるバブリング処理や、容器内空間への不活性ガス置換処理が不要となり、製造を簡略化することが可能となる。 本発明のファモチジン注射剤を詳細に説明する。本発明のファモチジン注射液は、ファモチジンまたはその塩を塩基換算量として1mg/mL〜40mg/mL、可溶化剤としての酸、溶解補助剤としてのリン酸ニカリウムを該ファモチジン1mgあたり0.01mg〜0.1mgを含有するもので、pHが5.0〜7.0に調整されている。可溶化剤としての酸は、ファモチジンを可溶化させるために知られている公知の酸を使用することができる。例えば、塩酸(上記特許文献7:WO2003/055483号公報)、リン酸(上記特許文献2:特開2002−322057号公報)などが挙げられる。ファモチジンの安定性が良好な中性域(pH6)での安定性を比較すると、塩酸とリン酸とでほぼ変わらないと考えられるが、溶解性については塩酸の方が高いため、本発明で用いる酸としては塩酸が最も好ましいと考えられる。 溶解補助剤としては、安定性に悪影響を与えず、さらに溶解性を高めることができるような添加剤を探すため、非イオン性界面活性剤等様々な添加剤を検討した結果、リン酸ニカリウムを使用することを見出した。リン酸ニカリウムは、できるだけ中性域の物質を使用すること(最終的にpHを中性域に保つため)、溶解度が高めであること(低温でも溶解性に余力があること)、電解質を使用する場合には水酸化ナトリウムで使用しているNa+イオンより、離液順列(電解質の塩析の能力の強さを順序づけたもの、化学大辞典 東京化学同人)が低いこと(中性域では析出の恐れがあるため)、からもファモチジン注射液に使用する溶解補助剤として最も好ましいものと考えられ、本発明における溶解補助剤はリン酸二カリウムを用いている。なお、リン酸ニカリウム(リン酸水素ニカリウム)に構造上似ているリン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ニナトリウムについても検討したが、ファモチジンに対する冷所での溶解補助作用はなかった。このことより、このような溶解補助作用は、類似の物質にはないリン酸ニカリウムが持つ特異な性質といえる。 そして、本発明におけるリン酸ニカリウムの添加量はファモチジン1gあたり0.01g〜0.1gである。この範囲であると、溶解補助剤の添加量を低く抑えながらもファモチジンの析出を抑制することができる。添加量は、好ましくは0.02g〜0.08gであり、さらに0.02g〜0.06gの範囲であると、十分なファモチジン析出抑制効果を有しながらより溶解補助剤の添加量を少なくすることができる。なお、リン酸ニカリウムを添加する際、ファモチジンを析出させてしまう場合があるため、あらかじめ希釈することが望ましい。 本発明者らは、溶解補助剤としてのリン酸二カリウムに、さらに溶解維持剤を組み合わせることを見出した。本発明において溶解維持剤は、ファモチジン注射液が一度凍結した後、室温に戻した際に非常に析出しやすく、しかもファモチジンは難溶性であるため再溶解しにくいので、ファモチジンを再溶解するために添加されるものである。本発明で用いる溶解維持剤としては、塩酸リジン、ブドウ糖、D−マンニトール、プロリン、塩酸アルギニン、グリシンおよびトレオニンが挙げられる。これらのうち、プロリンが冷所・冷凍保存時の溶解性を最も向上させることから特に好ましい。プロリンは、ファモチジン1gあたり1g〜5g、好ましくは2g〜5gとし、安定性に影響を与えず、リン酸ニカリウムが溶解性を保つのを助け、溶解性を高める。また、本発明において、塩酸リジン、ブドウ糖、D−マンニトールは凍結されると溶解性が得られなくなるが、凍結されなければ析出が起こらず溶解状態を維持できること、また、塩酸アルギニン、グリシン、トレオニンは、解凍直後は析出物が残るが、時間が経過するにつれ再溶解することがわかり、本発明の溶解補助剤として使用できることが明らかになった。なお、セリン、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、グリセリンでは冷凍した時の析出を抑えるのにあまり効果がない上、リン酸ニカリウムの冷所での溶解保持効果も打ち消してしまい、冷所保存でも析出が見られ、また安定性に悪影響を与えるなど不適な面を持ち合わせる物質であることが判明し、本発明における溶解維持剤等の添加剤として不適切であることが分かった。 なお、本発明におけるファモチジンの量は、ファモチジンまたはその塩を塩基換算量として約1mg/mL〜約40mg/mL、好ましくは筋肉注射可能な濃度となる約5mg/mL〜約40mg/mLであり、更に好ましくは確実に析出を防止する観点から約5mg/mL〜約20mg/mLである。このような高濃度のファモチジンを溶解し中性pH域の注射剤とし調製しても、本発明においては、pH約5.5〜約6.5に調整して試験を行ったところ、製剤としての安定性も良好であった(後述の試験例1参照)。 また従来、多くの例(特開2002−322057号公報、特開2003−212772号公報、W02002/051411号公報、WO03/055483号公報)において、ファモチジンの酸化による劣化を防ぐために、容器空間部または薬液を窒素ガス等の不活性ガスで満たすなどの処理をしている。しかし、本発明の注射剤は、非常に安定なため、初期段階での劣化の防止のために不活性ガスを使用する必要がなく、また容器としてポリプロピレン、環状ポリオレフィンコポリマー等の酸素透過性プラスチックを用い、脱酸素剤と共にアルミニウム、酸化アルミ、酸化珪素、ポリビニルアルコール等のガスバリア層を有するラミネートフィルムからなる酸素非透過性包囲体に密封することで、溶液内の溶存酸素等の酸素を徐々に除去することで一層の安定化が期待できる。 以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。<実施例1>注射用水450mLにファモチジン5.0gおよび希塩酸5.67mL入れ、攪拌溶解させた。ファモチジンが完全に溶解した後、リン酸ニカリウム0.2g加え撹拌し、プロリン12.5gを加えて撹拌した。次ぎに溶液のpHが6.0を示すまで、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を添加した。さらに注射用水を加えて全量を500mLとし、ファモチジン注射液(10mg/mL)を製した。この液を0.2μmの酢酸セルロースフィルターにより無菌ろ過後、容器として先端ノズル部を封止してなる容量 2mLのポリプロピレン製シリンジに2mL充填し、注射液の充填口として用いたシリンジ後端開口をエラストマー製ガスケットで施栓し、本発明のファモチジン注射液とした。<実施例2>実施例1に従って調製し、シリンジに充填後、脱酸素剤と共にガスバリア層を有するラミネートフィルムからなる酸素非透過性包囲体に密封した、本発明のファモチジン注射液を収納したファモチジン注射液製剤とした。<実施例3>実施例1に従って調製し、シリンジに充填後、高圧蒸気滅菌した後、脱酸素剤と共にガスバリア層を有するラミネートフィルムからなる酸素非透過性包囲体に密封した、本発明のファモチジン注射液を収納したファモチジン注射液製剤とした。<試験例1>実施例2〜3で得られた注射液について、60℃で3週間保存後の含量を求めた。その結果を表1に示した。また、実施例2については、40℃75%R.H.6.5箇月間保存後の含量を求め、その結果を表2に示した。 日局注射用ファモチジンの含量は、94〜106%を規定している。表1の結果より、実施例2および3については、室温で長期間安定であることが確認され、例えば、有効期限1.5年以上を確保できると考えられる。さらに、表2の結果より、実施例2については、40℃75%R.H.における含量の経時的変化からみて、さらに長期にわたって室温下における安定性が得られることがわかり、例えば、25℃2年の安定性を有するものと考えられる。<実施例4>注射用水40mLにファモチジン0.5gおよび希塩酸0.567mL入れ、攪拌溶解させた。ファモチジンが完全に溶解した後、リン酸ニカリウム希釈液(0.4g→20mL)1mL加え撹拌し、プロリン1.25gを加え撹拌した。次ぎに溶液のpHが6.0を示すまで、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を添加した。さらに注射用水を加えて全量を50mLとし、ファモチジン注射液(10mg/mL)を製した。この液を0.2μmの酢酸セルロースフィルターにより無菌ろ過後、容器として先端ノズル部を封止してなる容量 2mLのポリプロピレン製シリンジに2mL充填し、注射液の充填口として用いたシリンジ後端開口をエラストマー製ガスケットで施栓し、本発明のファモチジン注射液とした。<実施例5>実施例4において、プロリンの代わりに塩酸アルギニンを1.25g加えたファモチジン注射液。<実施例6>実施例4において、プロリンの代わりにグリシンを1.25g加えたファモチジン注射液。<実施例7>実施例4において、プロリンの代わりにトレオニンを1.25g加えたファモチジン注射液。<比較例1>実施例4において、プロリンの代わりにセリン1.25gを加えたファモチジン注射液。<実施例8>実施例4において、プロリンの代わりに塩酸リジンを1.25g加えたファモチジン注射液。<実施例9>実施例4において、プロリンの代わりにブドウ糖を1.25g加えたファモチジン注射液。<実施例10>実施例4において、プロリンの代わりにD−マンニトールを1.25g加えたファモチジン注射液。<比較例2>実施例4において、プロリンの代わりに塩化ナトリウム1.25gを加えたファモチジン注射液。<比較例3>実施例4において、プロリンの代わりにポリソルベート80を1.25g加えたファモチジン注射液。<比較例4>実施例4において、プロリンの代わりにグリセリン1.25gを加えたファモチジン注射液。<実施例11>実施例4において、プロリンを抜いたファモチジン注射液。<試験例2>実施例4〜11、比較例1〜4で得られた各ファモチジン注射液について、3日間の冷所保存後の溶解性及び1晩の冷凍保存後の溶解性について確認し、結果を表3に示した。 プロリンを添加することにより、解凍直後でも析出抑制効果が見られた。そのため、万が一、冷凍された時でもファモチジンの溶解を保つことができると考えた。冷所保存後の溶解性が良好で、解凍直後に析出がみられるが、解凍後1日経過することで析出が消失した塩酸アルギニン、グリシン、トレオニンにも解凍後の溶解性があると考えた。尚、比較例2については、調剤中に析出がみられ、その析出が消失しなかったため、試験は中止した。<比較例5>実施例11において、リン酸ニカリウム希釈液を添加しないファモチジン注射液。<比較例6>実施例11において、リン酸ニカリウム希釈液を添加せず、また水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムを加えたファモチジン注射液。<比較例7>実施例11において、リン酸ニカリウム希釈液の代わりにリン酸二水素カリウム0.025gを加えたファモチジン注射液。<比較例8>実施例11において、リン酸ニカリウム希釈液の代わりにリン酸二水素ナトリウム二水和物希釈液(0.4g→20mL)1mLを加えたファモチジン注射液。<比較例9>実施例11において、リン酸ニカリウム希釈液の代わりにリン酸水素二ナトリウム12水希釈液(0.4g→20mL)2mLを加えたファモチジン注射液。<試験例3>実施例11、および比較例5〜9で得られた注射液について、3日間の冷所保存後の溶解性について確認した(表4)。 本試験では、リン酸ニカリウムが特異的に溶解保持力をもつことを実験により示した。 添加剤を加えずに酸で溶解し、塩基で中和した場合には、比較例5及び比較例6のように析出が生じる。 添加剤に溶解補助剤としての効果を期待して実施例11、及び比較例5〜9に対して試験を行った。ここでは、リン酸ニカリウム(リン酸水素ニカリウム)に構造上近い物質を選択し、対照とした。例えば、比較例7では、リン酸ニカリウムのK+イオンを一つH+イオンに替えたものであり、比較例9はリン酸ニカリウムのK+イオンを二つともNa+イオンに替えたものである。 構造の近い物質でも決して成しえないファモチジンの溶解保持を、リン酸ニカリウムを少量添加することで可能にすることがわかった。<実施例12>実施例11において、リン酸ニカリウム希釈液の添加量を0.25mLとしたファモチジン注射液。<実施例13>実施例11において、リン酸ニカリウム希釈液の添加量を0.5mLとしたファモチジン注射液。<実施例14>実施例11において、リン酸ニカリウム希釈液の添加量を0.75mLとしたファモチジン注射液。<試験例4>実施例12〜14で得られた各注射液について、1日間の冷所保存後の溶解性について確認した(表5)。 本試験では、リン酸ニカリウムが非常に微量にて溶解保持力をもつことを実験により示した。ファモチジンまたはその塩を塩基換算量として1mg/mL〜40mg/mL、可溶化剤としての酸、溶解補助剤としてのリン酸ニカリウムを該ファモチジン1mgあたり0.01mg〜0.1mgを含有し、pHが5.0〜7.0であることを特徴とする室温保存可能なファモチジン注射液。前記酸が、塩酸である請求項1に記載のファモチジン注射液。プロリン、塩酸アルギニン、グリシンおよびトレオニンから選択される1以上を溶解維持剤として含有するものである請求項1または2に記載のファモチジン注射液。請求項1〜3のいずれかに記載のファモチジン注射液が充填されたプラスチック製容器が脱酸素剤とともに酸素不透過性包装体に封入されてなることを特徴とするファモチジン注射液製剤。 【課題】非水溶剤を含有せず、筋肉内投与できる程度の高濃度のファモチジンを室温で長期間安定に保存することのできるファモチジン注射液を提供すること。【解決手段】ファモチジンまたはその塩を塩基換算量として1mg/mL〜40mg/mL、可溶化剤としての塩酸等の酸、溶解補助剤としてのリン酸ニカリウムを該ファモチジン1mgあたり0.01mg〜0.1mgを含有するとともに、pHが5.0〜7.0であり、好ましくは、さらに溶解維持剤としてのプロリンを含有するものである室温保存可能なファモチジン注射液。【選択図】 なし


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