タイトル: | 公開特許公報(A)_配向度評価方法、希土類焼結磁石及びその製造方法 |
出願番号: | 2005076732 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 23/20,B22F 3/02,H01F 1/08,H01F 7/02,H01F 41/02,H01F 1/053 |
坂本 篤司 加藤 英治 西澤 剛一 石坂 力 JP 2006258616 公開特許公報(A) 20060928 2005076732 20050317 配向度評価方法、希土類焼結磁石及びその製造方法 TDK株式会社 000003067 木森 有平 100105809 坂本 篤司 加藤 英治 西澤 剛一 石坂 力 G01N 23/20 20060101AFI20060901BHJP B22F 3/02 20060101ALI20060901BHJP H01F 1/08 20060101ALI20060901BHJP H01F 7/02 20060101ALI20060901BHJP H01F 41/02 20060101ALI20060901BHJP H01F 1/053 20060101ALI20060901BHJP JPG01N23/20B22F3/02 RH01F1/08 BH01F7/02 EH01F41/02 GH01F1/04 H 13 3 OL 13 2G001 4K018 5E040 5E062 2G001AA01 2G001BA18 2G001CA01 2G001KA08 2G001LA02 2G001MA04 4K018AA27 4K018CA04 4K018DA01 4K018FA06 4K018KA45 5E040AA04 5E040BD01 5E040HB06 5E040NN15 5E062CC03 5E062CD04 5E062CE04 5E062CF01 5E062CG02 本発明は、希土類合金粉末を圧縮成形した成形体や焼結体(希土類焼結磁石)の配向度を的確に評価するための配向度評価方法に関するものであり、さらには、前記評価方法に基づいて規定された希土類焼結磁石及びその製造方法に関する。 希土類焼結磁石、例えばNd−Fe−B系焼結磁石は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であること等の利点を有することから、近年、その需要は益々拡大する傾向にある。 希土類焼結磁石の製造方法としては、粉末冶金法が知られており、低コストでの製造が可能なことから、広く用いられている。粉末冶金法では、先ず、原料合金インゴットを粗粉砕及び微粉砕し、粒径が数μm程度の希土類合金粉末を得る。このようにして得られた希土類合金粉末を配向磁界を印加した状態で圧縮成形し、希土類合金粉末が所定の方向に配向された成形体を得る。その後、前記成形体を真空中、又は不活性ガス雰囲気中で焼結し、さらに時効処理を行う。 前述の希土類焼結磁石においては、希土類合金粉末の配向度が特性に大きな影響を及ぼすことが知られており、希土類焼結磁石の製造に際しては、前記配向度をできる限り高くすることが望まれる。このような観点から、希土類焼結磁石の配向度を改善するための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2等を参照)。 例えば、特許文献1では、配向度を向上させるためには、初期配向(成形時の配向)が重要であり、磁気凝集を抑制する添加剤、例えば鉱物油を加え、0.15〜0.5ton/cm3で成形することにより、磁石の配向度を向上させることが提案されている。そして、X線回折(Cuターゲットを使用)した時、R2Fe14B金属間化合物における(006)面と(105)面とのX線回折強度比:I(006)/I(105)が1.2以上であり、24℃で測定した残留磁束密度Brと飽和磁化Msとの比で定義する配向度(Br/Ms)が95%以上であり且つ最大エネルギー積(BH)maxが48.7MGOe以上である希土類焼結磁石が開示されている。 一方、特許文献2においては、キャビティ空間を構成する面部分の飽和磁化とキャビティへの充填密度を規定することで、配向度を改善することが提案されている。具体的には、異方性焼結磁石製造の成形工程において、ダイス、上パンチおよび下パンチからなる金型部材の少なくともキャビティ空間を構成する面部分を、飽和磁化4πIsが500〜12000ガウスの磁性を有し、かつ、前記飽和磁化4πIsの値をMp、成形される永久磁石粉末の印加磁場での磁化の値をMm、密度をDm、永久磁石粉末のキャビティへの充填密度をDc、加圧が進行して配向磁場による永久磁石粉末の回転が生じなくなる時の成形密度をDrとした時に、0.7×Mm×Dc/Dm<Mp<1.3×Mm×Dr/Dmなる関係を満足する磁性を有する金属材料として、前記ダイス、上パンチおよび下パンチからなる金型のキャビティ内に永久磁石を供給し、該永久磁石粉末の容易磁化方向を配向させるための磁場を印加し、更に圧縮を行うことが開示されている。特許第3209380号公報特許第3526493号公報 しかしながら、これら特許文献記載の技術では、部分的な配向度を評価しているにすぎず、例えば希土類焼結磁石全体の配向度の分布等については何ら考慮されていない。その結果、希土類焼結磁石全体で見たときに、必ずしも十分な特性を有する希土類焼結磁石が実現されているとは限らない。 本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、先ず第1に、希土類合金粉末を成形した成形体や、これを焼結して得られる希土類焼結磁石について、マクロな領域での配向度を的確に評価し得る配向度評価方法を提供することを目的とする。また、第2に、前記配向度評価方法に基づいて的確に選定することで、例えば薄型形状である場合等においても、全体の配向度が高く、着磁特性等に優れた希土類焼結磁石を提供することを目的とする。さらに、第3に、部分的に配向度が良くなるのではなく、全体の配向度を上げることができ、マクロな領域で配向度が高い希土類焼結磁石を得ることができ、さらには効率的に原料を利用することが可能な希土類焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。 前述の目的を達成するために、本発明の配向度評価方法は、希土類合金粉末が圧縮成形された成形体またはその焼結体を奇数個に等分割し、中央部分の分割片と最外部の分割片についてX線回折を行った後、ロットゲーリング法により各分割片の配向度を算出して配向度のばらつきを評価することを特徴とする。 また、本発明の希土類焼結磁石は、希土類合金粉末の焼結体からなる希土類焼結磁石であって、奇数個に等分割された分割片のうち、中央部分の分割片と最外部の分割片において、各回折ピークのX線回折強度をベクトル補正した後、ロットゲーリング法により算出される配向度の差が1.5%以下であることを特徴とする。 さらに、本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、希土類合金粉末を圧縮成形して所定の形状の成形体とし、当該成形体を焼結して希土類焼結磁石とするに際し、前記成形の際に所定の方向に配向磁界を印加するとともに、当該配向磁界方向における両端部分を切除することを特徴とする。 X線回折により希土類焼結磁石を評価することは、例えば特許文献1等においても行われている。ただし、前記特許文献1記載の発明では、R2Fe14B金属間化合物における(006)面と(105)面とのX線回折強度比を求めることで評価を行っており、いずれかの測定点において、いわばミクロな領域での配向度を見ているにすぎない。 本発明の配向度評価方法においては、奇数分割した分割片のうち、中央部分の分割片と最外部の分割片のそれぞれについてロッドゲーリング法により配向度を算出し、これを比較している。したがって、成形体や焼結体(希土類焼結磁石)のマクロな領域、すなわち成形体や焼結体の全体における配向度の分布が把握され、その良否が判断される。 なお、前記ロットゲーリング法により配向度を算出するに際しては、各回折ピークのX線回折強度についてベクトル補正を行うことで、精度が飛躍的に高まる。ロッドゲーリング法における計算では、配向方向、すなわち(00l)反射の成分のみが積算され、これとは異なる方向のX線回折強度については、これとは垂直方向、すなわち(hk0)反射の成分と判断される。したがって、実際の配向度に比べて算出される配向度はかなり小さな値となる。これに対して、各回折ピークのX線回折強度についてベクトル補正を行い、(00l)反射とは異なるX線回折強度について、(00l)反射の成分とこれとは直交する(hk0)反射の成分に分離し、分離された(00l)反射の成分を加算すれば、実際の配向度に即した正確な評価が行われることになる。これを規定したのが本発明の請求項2記載の発明であり、前記配向度評価方法において、各回折ピークのX線回折強度についてベクトル補正を行い、補正値に基づいて前記ロットゲーリング法により各分割片の配向度を算出して配向度のばらつきを評価することを特徴とする。 一方、前記のように、中央部分の分割片と最外部の分割片についてロッドゲーリング法により配向度を算出し、これを比較することで、希土類焼結磁石全体の配向度の分布が把握される。したがって、前記配向度の分布に基づいて希土類焼結磁石を選択することで、確実に着磁が良好な希土類焼結磁石が実現される。本発明の希土類焼結磁石は、このような観点に基づいて選別されたものであり、特に、前記の通り、ベクトル補正されたX線回折強度に基づいてロットゲーリング法により算出される配向度の差が1.5%以下であることにより、例えば薄型形状の希土類焼結磁石において、残留磁束密度Brのばらつきが100G以下程度に抑えられる。また、配向度のばらつきが小さいため着磁が良好となり、これにより素材(希土類合金粉末)の持つ高特性が十分に活かされる。 前記のような配向度の分布に優れ、例えば中央部と外周部とで配向度の差が1.5%以下というような小さな値となる希土類焼結磁石は、ただ単に希土類合金粉末を配向磁界を印加しながら磁場中成形しても得ることは難しい。そこで、本発明の製造方法では、前記の通り、所定の方向に配向磁界を印加して形成した成形体、あるいはこれを焼結した焼結体において、配向磁界方向における両端部分を切除する。 例えば、特許文献2には、金型部材を磁性金属材料で構成することにより、成形体内部の磁束方向の乱れを解消し、磁束の方向を平行にすることが開示されている。しかしながら、前記方法で可能な限り磁束の方向を平行にしたとしても、成形体へ磁束が入る部分、あるいは成形体から磁束が出る部分においては、必ず異材料の界面が存在するため、磁束の乱れを完全に解消することは難しい。 本発明では、この界面部分に相当する配向磁界方向における両端部分を切除しているので、配向度の僅かな低下も排除され、前記ベクトル補正されたX線回折強度に基づいてロットゲーリング法により算出される配向度の差が1.5%以下であるような、配向度の差が極めて小さく、全体の配向度が良好な希土類焼結磁石が製造される。なお、切除した成形体、あるいは焼結体は、粉砕して原料である希土類合金粉末に混入すれば再利用でき、無駄に原料を消費することがなく、原料の効率的な利用も実現される。 本発明の配向度評価方法によれば、希土類合金粉末を成形した成形体や、これを焼結して得られる希土類焼結磁石について、マクロな領域、例えば薄型形状の成形体や希土類焼結磁石の全体の配向度分布を的確に評価することが可能である。 一方、本発明の希土類焼結磁石は、前記配向度評価方法に基づいて厳しく選別されたものであり、例えば薄型形状である場合等においても全体の配向度が高いので、着磁特性に優れ希土類合金粉末の持つ高特性を十分に活かした希土類焼結磁石を実現することが可能である。 さらに、本発明の希土類焼結磁石の製造方法によれば、異材料の界面に起因する配向磁界の乱れが生ずる端部を切除するようにしているので、配向度が全体に亘って向上された希土類焼結磁石を得ることができる。また、切除した成形体や焼結体については、これを再利用することにより、効率的に原料を利用することが可能である。 以下、本発明を適用した配向度評価方法、希土類焼結磁石及びその製造方法について、詳細に説明する。 本発明の配向度評価方法は、希土類合金粉末を圧縮成形することにより形成される成形体や、これを焼結することにより得られる希土類焼結磁石に適用される。例えば、成形体に適用することで、無駄な焼結を抑えることができ、また基準を満たさない成形体は、容易に再利用可能である。また、希土類焼結磁石に適用することで、厳密な品質管理が可能になる。 評価対象となる成形体や希土類焼結磁石の形状は任意であるが、例えば薄型形状や長尺形状等、成形体や希土類焼結磁石の厚さに対して、長辺の寸法の大きな形状に適用することで、効果が大きい。前記薄型形状や長尺形状の場合、中央部分と最外部で配向度が異なる傾向にあるからである。図1は、薄型の矩形平板形状の成形体(焼結体)を模式的に示すものであり、具体的には、前記厚さをc、長辺の長さをaとしたときに、a/c≧10であるような形状の場合に、本発明の配向度評価方法に適用することが好ましい。 配向度の測定は、試料(前記成形体や希土類焼結磁石)を奇数個に分割し、その中央部分の分割片と最外部の分割片に対して行う。分割する数は、試料の大きさに応じて決めればよく、最低でも3分割である。図1に示すような矩形平板形状の場合、縦横それぞれ3分割、合計9分割とし、各分割片1〜9のうち、中央部分の分割片5と、最外部の分割片(1,3,7,9のいずれか1以上)について測定を行う。分割方法としては、これに限らず、縦横それぞれ3分割以上、例えばそれぞれ5分割、合計25分割としたり、それぞれ7分割、合計49分割等とすることも可能である。また、いずれの場合にも、中央部分の分割片と最外部(外周角部)の分割片の1つについて測定を行い、これらを比較すればよい。なお、最外部の分割片については、最低1つ測定すればよいのであって、それ以上測定することを妨げるものではない。例えば、中央部の分割片と比較のために、4隅の分割片について測定してもよい。さらに、例えば長尺状の成形体や希土類焼結磁石の場合、必ずしも縦横それぞれについて分割しなくてもよく、例えば長辺方向に等分割して、中央部分の分割片と端部の分割片について測定を行えばよい。 配向度を測定するには、先ず、各分割片の表面を鏡面研磨した後、X線回折を行い、得られた回折ピークを基にロットゲーリング法により配向度を算出する。ロットゲーリング法では、(00l)反射の成分のX線回折強度I(00l)と(hk0)反射の成分のX線回折強度I(hk0)に基づいて、下記数1により配向度fcを算出することができる。 前記ロットゲーリング法により配向度を算出する場合、配向方向、すなわち(00l)反射の成分のみが積算され、これから少しでも外れる回折ピークについては、これとは垂直方向、すなわち(hk0)反射の成分と判断され、前記数1において、分子側からは除外される。したがって、実際の配向度に比べて算出される配向度はかなり小さな値となる。これを回避し、実際に即した配向度を算出するためには、回折ピークに対してベクトル補正を行うことが好ましい。 ベクトル補正は、実際に即した配向度の算出を可能とするものであり、(00l)反射とは異なる回折ピークについて、(00l)反射の成分とこれとは直交する(hk0)反射の成分に分離し、分離された(00l)方向の成分を前記数1において分子側に加算する。ある結晶面の面方位が(00l)面とは異なる場合、当該面方位に対応する回折ピークに対してその傾き角θに基づいてcosθを乗じ、(00l)反射の成分を算出する。そして、前記数1において、この値を(00l)反射の成分として分子側に積算し、前記配向度fcを求める。 例えば、図2に示すX線回折チャートにおいて、矢印で示す回折ピークは(105)面の回折ピークである。この回折ピークは、比較的大きく、(00l)面に近い配向を有するにもかかわらず、通常のロットゲーリング法では垂直成分として計算される。これに対して、ベクトル補正する場合には、(00l)面と(105)面のなす傾き角を表1から求め(15.5度)、ロットゲーリング法による配向度の算出に際して、前記回折強度にcos15.5°を乗じて分子に加える。 表1は、(00l)面と観察された他の面との傾き角θを示すものである。前記傾き角θは、NdFeB系の希土類焼結磁石の場合、Nd2Fe14Bの格子定数と結晶構造[例えば、Herbst, J et al. Phys. Rev.B: Condens. Matter, 29 4176 (1984)]から求められる面と面とのなす角度を計算することで求めることができる。 この表1に記載される傾き角θに基づいて各回折ピークのX線回折強度について前記ベクトル補正を行い、この補正された結果に基づいてロットゲーリング法により配向度を算出することで、実際の配向度に即した正確な評価が行われることになる。 以上により各分割片の配向度を測定し、これを比較することで、試料(成形体や希土類焼結磁石)の配向度の面内分布を把握することができる。したがって、前記配向度の面内分布に基づいて成形体や希土類焼結磁石を厳しく選別することで、確実に特性に優れ、また特性のばらつきの少ない成形体や希土類焼結磁石を実現することができるものと考えられる。そこで、以下においては、前記配向度評価方法の希土類焼結磁石への適用について説明する。 先ず、希土類焼結磁石について説明すると、本発明で言う希土類焼結磁石は、希土類元素、遷移金属元素及びホウ素を主成分とするものである。磁石組成は、目的に応じて任意に選択すればよい。例えば、R−T−B(Rは希土類元素の1種又は2種以上、但し希土類元素はYを含む概念である。TはFe又はFe及びCoを必須とする遷移金属元素の1種又は2種以上である。Bはホウ素である。)系希土類焼結磁石とする場合、磁気特性に優れた希土類焼結磁石を得るためには、焼結後の磁石組成において、希土類元素Rが20〜40質量%、ホウ素Bが0.5〜4.5質量%、残部が遷移金属元素Tとなるような配合組成とすることが好ましい。ここで、Rは、希土類元素、すなわちY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuから選ばれる1種、又は2種以上である。中でも、Ndは、資源的に豊富で比較的安価であることから、主成分をNdとすることが好ましい。また、DyやTbの含有は異方性磁界を増加させるため、保磁力Hcjを向上させる上で有効である。 また、添加元素Mを加えて、R−T−B−M系希土類焼結磁石とすることも可能である。この場合、添加元素Mとしては、Al、Cr、Mn、Mg、Si、Cu、C、Nb、Sn、W、V、Zr、Ti、Mo、Bi、Ga等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を選択して添加することができる。これら添加元素Mの添加量は、残留磁束密度等の磁気特性を考慮して、3質量%以下とすることが好ましい。添加元素Mの添加量が多すぎると、磁気特性が劣化するおそれがある。 勿論、これら組成に限らず、希土類焼結磁石として従来公知の組成全般に適用可能であることは言うまでもない。 次に、前述の希土類焼結磁石の製造方法について説明すると、希土類焼結磁石を製造するには、粉末冶金法が採用される。粉末冶金法による製造プロセスは、基本的には、合金化工程、粗粉砕工程、微粉砕工程、磁場中成形工程、焼結・時効工程、加工工程、及び表面処理工程とにより構成される。なお、酸化防止のために、焼結後までの各工程は、ほとんどの工程を真空中、又は不活性ガス雰囲気中(窒素雰囲気中、Ar雰囲気中等)で行う。 合金化工程では、原料となる金属、又は合金を磁石組成に応じて配合し、真空又は不活性ガス、例えばAr雰囲気中で溶解し、鋳造することにより合金化する。鋳造法としては、溶融した高温の液体金属を回転ロール上に供給し、合金薄板を連続的に鋳造するストリップキャスト法(連続鋳造法)が生産性等の観点から好適であるが、本発明はそれに限ったものではない。原料金属(合金)としては、純希土類元素、希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金等を使用することができる。 合金はほぼ最終磁石組成である単一の合金を用いても、最終磁石組成になるように、組成の異なる複数種類の合金を混合してもよいも良い。混合は合金・原料粗粉・原料微粉のどの工程でもよいが、混合性から合金での混合が望ましい。 粗粉砕工程では、先に鋳造した原料合金の薄板、又はインゴット等を、粒径数百μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用いることができる。粗粉砕性を向上させるために、水素を吸蔵させた後、粗粉砕を行うことが効果的である。 前記粗粉砕工程は、複数の粉砕手段を組み合わせた複数工程により構成することも可能である。例えば、粗粉砕工程を、水素粉砕工程と機械的粗粉砕工程の2工程とすることが可能である。水素粉砕工程は、鋳造した原料合金に水素を吸蔵させ、相によって水素吸蔵量が異なることを利用して、自己崩壊的に粉砕する工程である。これにより、粒径数mm程度の大きさに粉砕することができる。機械的粗粉砕工程は、先にも述べたようなブラウンミル等の機械的手法を利用して粉砕する工程であり、前記水素粉砕工程により数mm程度の大きさに粉砕された原料合金粉を、粒径数百μm程度になるまで粉砕する。水素粉砕工程を行う場合、機械的粗粉砕工程は省略することも可能である。 前述の粗粉砕工程が終了した後、通常、粗粉砕した原料合金粉に粉砕助剤を添加する。粉砕助剤としては、例えば脂肪酸系化合物等を使用することができるが、特に、脂肪酸アミドを粉砕助剤として用いることで、良好な磁気特性を有する希土類焼結磁石を得ることができる。粉砕助剤の添加量としては、0.03〜0.4質量%とすることが好ましい。この範囲内で粉砕助剤を添加した場合、焼結後の残留炭素の量を低減することができ、希土類焼結磁石の磁気特性を向上させる上で有効である。 粗粉砕工程の後、微粉砕工程を行うが、この微粉砕工程は、例えばジェットミルを使用して行われる。微粉砕の際の条件は、用いる気流式粉砕機に応じて適宜設定すればよく、原料合金粉を平均粒径が1〜10μm程度、例えば3〜6μmとなるまで微粉砕する。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粉体の粒子を加速し、粉体の粒子同士の衝突や、ターゲット又は容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。ジェットミルは、一般的に、流動層を利用するジェットミル、渦流を利用するジェットミル、衝突板を用いるジェットミル等に分類される。 微粉砕工程の後、磁場中成形工程において、原料合金微粉(希土類合金粉)を磁場中にて成形する。具体的には、微粉砕工程にて得られた原料合金微粉を電磁石を配置した金型内に充填し、磁場印加によって結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。磁場中成形は、縦磁場成形、横磁場成形のいずれであってもよい。この磁場中成形は、例えば800〜1500kA/mの磁場中で、30〜300MPa前後の圧力で行えばよい。 次に焼結・時効工程において、焼結及び時効処理を実施する。すなわち、原料合金微粉を磁場中成形後、成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、例えば1000〜1150℃で5時間程度焼結すればよく、焼結後、急冷することが好ましい。焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことが好ましい。この時効処理は、得られる希土類焼結磁石の保磁力Hcjを制御する上で重要な工程であり、例えば不活性ガス雰囲気中又は真空中で時効処理を施す。時効処理としては、2段時効処理が好ましく、1段目の時効処理工程では、800℃前後の温度で1〜3時間保持する。次いで、室温〜200℃の範囲内にまで急冷する第1急冷工程を設ける。2段目の時効処理工程では、550℃前後の温度で1〜3時間保持する。次いで、室温まで急冷する第2急冷工程を設ける。600℃近傍の熱処理で保磁力Hcjが大きく増加するため、時効処理を一段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。 前記焼結・時効工程の後、加工工程及び表面処理工程を行う。加工工程は、所望の形状に機械的に成形する工程である。表面処理工程は、得られた希土類焼結磁石の酸化を抑えるために行う工程であり、例えばメッキ被膜や樹脂被膜を希土類焼結磁石の表面に形成する。 以上が希土類焼結磁石の製造工程であるが、本発明では、前記成形工程後、あるいは前記焼結・時効工程後、得られた成形体や焼結体について、配向磁界方向における両端部分を切除して、配向度の面内分布が小さい部分のみを製品として使用する。配向磁界方向における両端部分は、配向度の面内分布が大きく、この部分を切除することで、成形体や焼結体の配向度の差を極めて小さな値とすることができる。なお、前記両端部分を切除するにあたっては、通常は、端部から2mm程度の領域を切除すればよいが、前記配向度の測定を行って、中央部と外周部分で配向度の差が所定の値以下となることが確認されるまで切除するようにしてもよい。 切除した両端部分は、前述の粗粉砕工程等に加えることで、再利用することが可能である。例えば、成形体の段階で切除した場合には、そのまま再利用してもほとんど問題がない。焼結体とした後、切除した場合にも、表面処理工程前であればほとんど問題なく、粉砕して原料に少量加えるようにすれば、特性的に問題となることはない。切除した両端部分を再利用することで、原料を無駄に消費することがなくなり、原料コストの削減が可能である。 以上により両端部分を切除して作製される希土類焼結磁石は、例えば薄型形状(長辺aと厚さcの比率a/cが10以上)であった場合にも、面内での配向度の分布が小さい。具体的には、奇数個に等分割された分割片のうち、中央部分の分割片と最外部の分割片において、ベクトル補正されたX線回折強度に基づいてロットゲーリング法により算出される配向度の差が1.5%以下である。 前記のように配向度の差が1.5%であれば、磁石全体において着磁が良好なものとなり、素材(希土類合金粉末)の持つ高い性能を十分に活かすことができ、高性能な希土類焼結磁石を実現することができる。そして、係る希土類焼結磁石は、例えばモータ等に用いた場合に優れた特性を発揮し、モータの高性能化を実現することが可能である。 次に、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。実施例 原料合金の組成は、Nd19.5質量%、Pr5.4質量%、Dy5.1質量%、Co2.0質量%、Al0.01質量%、Cu0.13質量%、B1.0質量%、残部Feとした。前記組成となるように原料となる金属あるいは合金を配合し、ストリップキャスト法により原料合金薄板を溶解、鋳造した。 次に、得られた原料合金粗粉を粉砕工程に供した。すなわち、得られた原料合金薄板を水素粉砕した後、ブラウンミルにて機械的粗粉砕を行い、原料合金粗粉を得た。この原料合金粗粉に粉砕助剤となる有機物としてステアリン酸亜鉛を0.10質量%添加し、ジェットミルを使用して高圧窒素ガス雰囲気中で平均粒径(D50)=4.6μmとなるように微粉砕を行い、希土類合金粉末とした。 得られた希土類合金粉末を59.7mm×33.9mm×63.8mmの形状に成形した。成形に際しては、磁性材料により形成された金型を用い、所定の配向磁界を印加しながら成形を行った。得られた成形体に対して焼結及び時効を施した後、内周スライサーを用いて切断し、47.0mm×24.0mm×2.0mmの薄型形状の焼結体(希土類焼結磁石)を17枚得た。なお、前記切断に際しては、焼結体の配向磁界方向における両端部分を1mmずつ切除した。切除した焼結体は、前記粉砕工程に戻し、原料合金粗粉に加えることで再利用した。比較例 成形の際の金型を非磁性金型とし、焼結及び時効後、焼結体の両端部を切除せずに内周スライサーを用いてした他は、実施例と同様に薄型形状の希土類焼結磁石を得た。本比較例の場合、焼結体の両端部分を切除していないため、47.0mm×24.0mm×2.0mmの薄型形状の焼結体(希土類焼結磁石)を18枚得た。配向度評価 前記実施例及び比較例で得られた希土類焼結磁石について、X線回折測定を行い、配向度を算出した。測定対象としては、実施例及び比較例において、内周スラーサーで切断した焼結体のうち最端部の焼結体を選び、これについて配向度の評価を行った。また、希土類焼結磁石は、図1に示すように縦横3分割、合計9分割し、中央部分の分割片5と外周角部の分割片1について配向度の算出を行った。 X線回折測定に際しては、各分割片における磁場配向方向の表面を研磨紙で鏡面研磨し、その後、3%硝酸エタノール溶液で3分間のエッチングを行った。X線回折測定は、Cu管球を用い、出力1.8kWにてθ−2θ法にて行った。得られた計測値からロットゲーリング法により配向度を算出し、さらに各回折ピークのX線回折強度をベクトル補正し、補正値に基づいてロットゲーリング法により配向度を算出した。 表2に実施例の希土類焼結磁石における算出結果を、表3に比較例の希土類焼結磁石における算出結果を示す。なお、表中の測定位置について、点1は外周角部の分割片1についての算出結果であり、点5は中央部分の分割片5についての算出結果である。 表2から明らかなように、実施例の希土類焼結磁石は、ベクトル補正の有無にかかわらず配向度の差が極めて小さく、特にベクトル補正した場合には、配向度の差が1.5%以下となっている。これに対して、比較例の希土類焼結磁石の場合には、ベクトル補正無しでは配向度の差が1.5%以下であるが、ベクトル補正有りの場合には配向度の差が1.5%を超えている。このことから、比較例の希土類焼結磁石では、実効的な配向度の低下が見られ、これが磁石性能の低下に繋がるものと推測される。実際、着磁磁界を変えてフラックス量を測定したところ、実施例の希土類焼結磁石においてフラックスの立ち上がりが早いことが確認された。したがって、配向度の算出に際しては、ベクトル補正を行うことで、より実際の性能に即した評価が可能であることがわかる。 また、図3は、配向度と残留磁束密度の関係を示すものであり、(a)はベクトル補正無しの場合、(b)はベクトル補正有りの場合である。ベクトル補正を行うことで、配向度と残留磁束密度Brにおいて、良好な相関が取れている。薄型形状の試料の分割例を示す模式図である。NdFeB系希土類焼結磁石のX線回折チャートの一例を示す図である。配向度と残留磁束密度の関係を示す特性図であり、(a)はベクトル補正無しの場合、(b)はベクトル補正有りの場合である。 希土類合金粉末が圧縮成形された成形体またはその焼結体を奇数個に等分割し、中央部分の分割片と最外部の分割片についてX線回折を行った後、 ロットゲーリング法により各分割片の配向度を算出して配向度のばらつきを評価することを特徴とする配向度評価方法。 各回折ピークのX線回折強度についてベクトル補正を行い、補正値に基づいて前記ロットゲーリング法により各分割片の配向度を算出して配向度のばらつきを評価することを特徴とする請求項1記載の配向度評価方法。 前記成形体または焼結体は、長辺aと厚さcの比率a/cが10以上の薄型形状を有することを特徴とする請求項1または2記載の配向度評価方法。 前記成形体または焼結体を縦横3分割、合計9分割し、中央の分割片と角部の分割片の少なくとも1つについて、前記配向度を比較することを特徴とする請求項3記載の配向度評価方法。 希土類合金粉末の焼結体からなる希土類焼結磁石であって、 奇数個に等分割された分割片のうち、中央部分の分割片と最外部の分割片において、各回折ピークのX線回折強度をベクトル補正した後、ロットゲーリング法により算出される配向度の差が1.5%以下であることを特徴とする希土類焼結磁石。 長辺aと厚さcの比率a/cが10以上の薄型形状を有することを特徴とする請求項5記載の希土類焼結磁石。 縦横3分割、合計9分割し、中央の分割片と外周角部の分割片の少なくとも1つについて、前記配向度の差が1.5%以下であることを特徴とする請求項5または6記載の希土類焼結磁石。 前記希土類合金粉末は、R(Rは希土類元素の1種又は2種以上である。)、T(TはFe又はFe、Coを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素である。)及びBを含むことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項記載の希土類焼結磁石。 希土類合金粉末を圧縮成形して所定の形状の成形体とし、当該成形体を焼結して希土類焼結磁石とするに際し、 前記成形の際に所定の方向に配向磁界を印加するとともに、当該配向磁界方向における両端部分を切除することを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。 前記両端部分は、端部から2mm以上切除することを特徴とする請求項9記載の希土類焼結磁石の製造方法。 前記両端部分は、成形体の段階で切除することを特徴とする請求項9または10記載の希土類焼結磁石の製造方法。 前記両端部分は、焼結体にした後に切除することを特徴とする請求項9または10記載の希土類焼結磁石の製造方法。 切除した前記両端部分は、粉砕して再利用することを特徴とする請求項9から12のいずれか1項記載の希土類焼結磁石の製造方法。 【課題】 マクロな領域での配向度を的確に評価し得る配向度評価方法を提供し、全体の配向度が高く、着磁特性等に優れた希土類焼結磁石を実現する。【解決手段】 希土類合金粉末が圧縮成形された成形体またはその焼結体を奇数個に等分割し、中央部分の分割片と最外部の分割片についてX線回折を行った後、ロットゲーリング法により各分割片の配向度を算出して配向度のばらつきを評価する。算出に際しては、各回折ピークのX線回折強度についてベクトル補正を行う。希土類焼結磁石においては、中央部分の分割片と最外部の分割片において、ベクトル補正して算出される配向度の差を1.5%以下とする。【選択図】 図3