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タイトル:公開特許公報(A)_鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法
出願番号:2005075467
年次:2006
IPC分類:C22B 1/16,G01N 23/207,G01N 25/20


特許情報キャッシュ

藤岡 裕二 齋藤 公児 岡崎 潤 長野 研一 JP 2006257477 公開特許公報(A) 20060928 2005075467 20050316 鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法 新日本製鐵株式会社 000006655 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 亀松 宏 100113918 永坂 友康 100111903 西山 雅也 100082898 藤岡 裕二 齋藤 公児 岡崎 潤 長野 研一 C22B 1/16 20060101AFI20060901BHJP G01N 23/207 20060101ALI20060901BHJP G01N 25/20 20060101ALI20060901BHJP JPC22B1/16 QG01N23/207G01N25/20 C 3 OL 22 2G001 2G040 4K001 2G001AA01 2G001BA18 2G001CA01 2G001FA01 2G001FA02 2G001FA25 2G001FA30 2G001GA07 2G001GA13 2G001KA01 2G001LA03 2G001NA20 2G001RA03 2G001RA20 2G040AA03 2G040BA08 2G040BA25 2G040CA02 2G040CA16 2G040EB05 2G040EC09 4K001AA10 4K001CA32 4K001CA49 本発明は、製鉄原料等に用いられる鉄鉱石の評価方法に関し、特に、鉄鉱石を構成する鉱物組成の1種であるγ−Fe2O3量を測定する方法に関する。 製鉄原料等に用いられる鉄鉱石は、主成分である鉄酸化物の化学形態、すなわち鉄と酸素との結合状態によって、Fe3O4を主成分とする黒色で磁性のある磁鉄鉱(以下、マグネタイトと言うこともある)、赤色を帯びたα−Fe2O3を主成分とする赤鉄鉱(以下、ヘマタイトと言うこともある)、化合水を10%前後含む褐鉄鉱(以下、リモナイトと言うこともある)に大別される(例えば、非特許文献1参照)。 また、褐鉄鉱は含水酸化鉄であり、その大部分はα−FeOOHを主成分とする針鉄鉱(以下、ゲーサイトと言うこともある)、γ−FeOOHを主成分とする鱗鉄鉱(以下、レピドクロサイトと言うこともある)であることが確認されている。 一般に、酸化鉄の化学形態としてFeO(以下、ウスタイトと言うこともある)も知られているが、不安定で、天然には産出しにくいと言われており、鉄鉱石中にはほとんど存在しないと考えられる。 実際の鉄鉱石中には、上記Fe3O4、α−Fe2O3、FeOOHを各々主成分とする磁鉄鉱、赤鉄鉱、褐鉄鉱の種々の化学形態からなる鉄酸化物と水酸化物が混在しており、鉄鉱石の鉱物組成は複雑である。 製鉄プロセスでは、塊状鉄鉱石および予め粉状鉄鉱石を焼結鉱等に塊成化した後、還元剤(コークスなどの炭材)とともに高炉に装入し、高炉内で加熱還元して溶融鉄鉄が製造されるが、原料として高炉に装入される鉄鉱石の鉱物組成によって高炉内での還元特性や通気性などが影響する。 また、高炉に装入する原料として所定粒径および強度が必要であるため、粉状鉄鉱石は、事前に塊成化プロセスにより、所定粒径および強度の焼結鉱、あるいはペレットに加工される。 この粉状鉄鉱石の塊成化において、例えば、焼結プロセスを用いて所望の焼結鉱を製造するためには、複数種の粉状鉄鉱石を配合し、炭材(燃料)と副原料(石灰石、珪石など)と混合、造粒して擬似粒子とした後、焼結機に装入し、焼結機内に装入した原料中の炭材を空気中の酸素により燃焼させ、粉状鉄鉱石の一部を副原料と同化、溶融させて粉状鉄鉱石同士が焼結した焼結鉱とする。 この焼結プロセスにおいて、安定した焼結操業を行い、高炉原料として必要な品質、例えば、強度、被還元性、耐還元粉化性などの品質を満足した焼結鉱を製造するためには、主原料である鉄鉱石の鉱物組成によって擬似粒子とするための造粒性や焼結性が異なる結果、得られる焼結鉱の鉱物組織および強度、還元性、耐還元粉化性などの品質が大きく左右する。 このため、従来から、製鉄プロセスにおいて、主原料である鉄鉱石の鉱物組成を定量的に測定、評価し、鉄鉱石の品質を管理することが行なわれている。 鉄鉱石の評価方法は、例えば、JIS M8202、JIS M8205、JIS M8207、JIS M8208、JIS M8210〜JIS M8230などで詳しく規定されている。この内、鉄鉱石を構成する、鉄酸化物、鉄水酸化物の評価で特に重要なのはJIS M8212「鉄鉱石−全鉄定量方法」、JIS M8213「鉄鉱石−酸可溶性鉄(II)定量方法」、JIS M8211「鉄鉱石−化合水定量方法」である。 JIS M8212「鉄鉱石−全鉄定量方法」に準じて測定される鉄鉱石中の全鉄(T.Fe)は、例えば、Fe3O4の場合72.36mass%、Fe2O3では69.94mass%、FeOOHは62.85mass%となり、鉄鉱石の品質を考える上で非常に重要な指標となる。ただし、JIS M8212は全鉄含有率30mass%以上72mass%以下の試料に適用される。 JIS M8213「鉄鉱石−酸可溶性鉄(II)定量方法」に準じて測定される酸可溶性鉄(II)は、2価の酸化鉄(FeO)であるが、上述の通り、FeOそのものは天然には産出しにくいため、この測定で検出されるFeOは、Fe3O4(FeOとFe2O3の逆スピネル型格子構造)を構成するFeOであることが知られている。 純粋なFe3O4の理想化学組成によれば、FeOが31.03mass%となり、Fe2O3、FeOOHはFeOを与えないため、JIS M8213「鉄鉱石−酸可溶性鉄(II)定量方法」により測定される鉄鉱石におけるFeO量を基に鉄鉱石中のFe3O4量を推定できる。ただし、JIS M8213は、酸可溶性鉄(II)含有率1mass%以上30mass%以下の試料に適用される。 JIS M8211「鉄鉱石−化合水定量方法」に準じて測定される鉄鉱石の化合水(CW)は、事前に鉄鉱石を窒素気流中105℃で加熱して吸湿水を除去した後、950℃まで加熱した時に遊離した水分量の測定値である。 上記Fe3O4、Fe2O3、FeOOHの3種類の鉄形態を考えた場合、CWを与えるものはFeOOH(理想的にはCW=10.14mass%)だけであるから、JIS M8211「鉄鉱石−化合水定量方法」によりFeOOHの化合水(CW)を求めることができる。ただし、JIS M8211は、化合水含有率0.05mass%以上10mass%以下の試料に適用される。 実際の鉄鉱石には、鉄酸化物、鉄水酸化物の他に、石英などの酸化物、粘土鉱物などアルミノケイ酸塩、石灰石、苦土灰石などの炭酸塩が含まれているが、鉄酸化物、鉄水酸化物の鉄系化合物については上記の方法による鉄鉱石のT.Fe、FeO、CWによって概ね推定できるとされている。 しかし、上記従来のJISで定められた鉄鉱石中の鉄酸化物、鉄水酸化物の測定および鉄鉱石の評価法では、以下の問題があった。 つまり、上記従来のJISの鉄鉱石の評価法では、単独またはその組み合わせにより鉄鉱石中のFe3O4、Fe2O3、FeOOHの三種類の鉄化合物の形態までは推定できるが、Fe2O3をさらに、α−Fe2O3とγ−Fe2O3に区別して定量することはできなかった。 また、鉄鉱石中のγ−Fe2O3は、鉱物の結晶構造解析に良く用いられるX線回折法を用いても、その回折パターンがFe3O4とほとんど重なってしまい、γ−Fe2O3とFe3O4の両者を区別することは困難であった。 また、従来から、鉱物中に存在するγ−Fe2O3は、鉱物の組織観察によれば、Fe3O4と連続固溶体を形成しているため、組織観察でも鉄鉱石中のFe3O4とγ−Fe2O3の両者を区別できず、マータイトと呼ばれている(例えば、非特許文献2参照)。反射率(輝度)の変化から鉱物組織を解析する試みもあるが、経験的要素が強く、また判別の基準が曖昧なため、定量的な評価は行われていない。 一方、従来から、鉄鉱石中に含有するFe2O3にはα型(α−Fe2O3:ヘマタイト)とγ型(γ−Fe2O3:マグヘマイト)の二種類の結晶形態があり、両者は反応性等の化学的性質が異なることが知られていた。 また、鉄鉱石中のマータイト相は微細な気孔を持つことから吸水率が高く、焼結原料の造粒性に悪影響を及ぼすことが知られていた(例えば、非特許文献3参照)。このため、鉄鉱石中に含有するγ−Fe2O3を精度良く定量化する方法は、粉状鉄鉱石の塊成化プロセスにおける焼結原料の造粒性、ひいては、焼結鉱の生産性、焼結鉱の品質を改善するために望まれていた。ふぇらむVol.1(1996)No.10 p770〜776鉱物工学(第4版)株式会社技報堂(昭和42年1月31日発行)p198〜199材料とプロセスCAMP−ISIJ Vol.17(2004)562〜565 本発明は、上記の従来技術の現状を鑑みて、鉄鉱石の鉱物組成の中で従来の方法では測定が困難であったγ−Fe2O3を精度良く定量することが可能である鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、 (i)鉄鉱石の温度−示差熱曲線における特定温度範囲で観察されるγ−Fe2O3からα−Fe2O3への変態に起因して生じる発熱量を基に鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を測定できること、 (ii)鉄鉱石のX線回折パターンにおける特定回折角で観察されるγ−Fe2O3とFe3O4に起因する回折ピークの強度を基に鉄鉱石中のγ−Fe2O3及びFe3O4の総量を測定するとともに、JIS M8213に準じて測定された鉄鉱石中の酸可溶性鉄(II)からFe3O4量を測定し、これらから、鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を測定できること、および、 (iii)鉄鉱石を大気中で所定温度で加熱処理し、該鉄鉱石のX線回折パターンにおける特定回折角で観察されるγ−Fe2O3とFe3O4に起因する回折ピークの強度を基に鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を測定できること、を知見した。 つまり、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。 (1)鉄鉱石中に含有するγ−Fe2O3量を測定する方法であって、鉄鉱石の示差走査熱量測定または示差熱分析により測定された温度−示差熱曲線における650〜750℃の温度範囲で観測された発熱ピークの面積を基に、鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を求めることを特徴とする鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法。 (2)鉄鉱石中に含有するγ−Fe2O3量を測定する方法であって、先ず、鉄鉱石のX線回折分析により測定されたX線回折パターンにおける回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜で観測される回折ピークの強度からFe3O4およびγ−Fe2O3の総量を求め、次に、JIS M8213に準じて測定された前記鉄鉱石中の酸可溶性鉄(II)からFe3O4量を求め、前記Fe3O4およびγ−Fe2O3の総量と前記Fe3O4量から鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を求めることを特徴とする鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法。 (3)鉄鉱石中に含有するγ−Fe2O3量を測定する方法であって、鉄鉱石を大気中で400〜650℃の温度で加熱処理した後、該鉄鉱石のX線回折分析により測定されたX線回折パターンにおける回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜で観測される回折ピークの強度からγ−Fe2O3の総量を求めることを特徴とする鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法。 本発明によれば、従来の方法では測定が困難であった鉄鉱石中のγ−Fe2O3を精度良く定量することが可能となる。γ−Fe2O3は、鉄鉱石中でマータイトと呼ばれる、Fe3O4とγ−Fe2O3が連続固溶体を形成する鉱物相であり、微細な気孔を持つことから吸水率が高く、焼結プロセスにおける粉状鉄鉱石の造粒性に悪影響を及ぼすことが知られている。 したがって、本発明法の適用により製鉄プロセスの主原料として使用される鉄鉱石中のγ−Fe2O3を精度良く測定し、焼結プロセスにおける粉状鉄鉱石の造粒性や水分調湿などの生産性、ひいては、焼結鉱の品質の向上を可能とし、本発明による産業上の貢献は多大なものである。 以下に本発明の詳細を説明する。 先ず、本発明の第1実施形態として、示差走査熱量測定法または示差熱分析法を用いて、鉄鉱石の650〜750℃の温度範囲で観測されるγ−Fe2O3がα−Fe2O3に変態する際に生じる発熱量から鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を定量する方法について説明する。 物質の変態や反応などに伴う熱量変化は示差走査熱量法(Differential Scanning Calorimetry;DSC)、あるいは示差熱分析法(Differential Thermal Analysis;DTA)によって測定できる。 DSCは、試料と基準物質の温度を一定のプログラムに従って変化させながら、その試料と基準物質へ流入する熱流差を温度の関数として測定する方法である。 DTAは、試料と基準物質の温度を一定のプログラムに従って変化させながら、その試料と基準物質との温度差を温度の関数として測定する方法である。 DSCおよびDTAの何れの方法も試料の転移や変態、反応に伴う熱量の変化が温度の関数、あるいは、一定昇温速度の場合は時間の関数として測定することができ、その測定曲線における発熱ピークの面積から定量分析もできる。 図1に(a)Fe3O4、(b)α−Fe2O3、(c)γ−Fe2O3、(d)α−FeOOH、(e)γ−FeOOH、(f)Fe(OH)3の純粋試料1.0mgを各々大気中で室温から1000℃まで加熱した時の各化合物のDTA曲線を示す。 大気中でFe3O4純粋試料は400℃程度の温度で酸化し始め、α−Fe2O3となる際に発熱する(図1(a)、参照)。さらに、α−Fe2O3は1000℃付近までの温度において変化しない(図1(b)、参照)。 γ−Fe2O3純粋試料は、700℃付近の温度でα−Fe2O3に変態するが、この変態は発熱反応であるから、この温度付近で発熱を生じる(図1(c)、参照)。 α−FeOOH純粋試料は250〜300℃の温度で脱水してα−Fe2O3となるが、この反応は吸熱反応であるから、この温度で吸熱を生じる(図1(d)、参照)。ここで生成したα−Fe2O3の結晶性は低いが、温度の上昇と共に結晶性が向上する。 γ−FeOOH純粋試料も250〜300℃の温度で脱水して(吸熱反応)吸熱を生じ、γ−Fe2O3となる(図1(e)、参照)。ここで生成したγ−Fe2O3の結晶性は低いが、さらに加熱すると、700℃付近の加熱温度でα−Fe2O3に変態する。この変態は発熱反応であるから、この温度で発熱を生じる(図1(e)、参照)。 Fe(OH)3純粋試料は付着水を多く持っており、加熱すると、まず付着水が脱水し(吸熱反応)吸熱を生じ、次に、α−FeOOHが250〜300℃の加熱温度で脱水して吸熱を生じ、α−Fe2O3となる(図1(f)、参照)。ここで生成したα−Fe2O3の結晶性は低いが、温度の上昇と共に結晶性が向上する。 鉄鉱石中の各鉱物相において図1(c)に示すようにγ−Fe2O3純粋試料だけが700℃付近の加熱温度で発熱反応による熱量増加を示す。また、図2は、図1(c)のγ−Fe2O3純粋試料のDTA曲線の拡大図である。図2から、γ−Fe2O3純粋試料がα−Fe2O3に変態する温度範囲は650〜750℃であることがわかる。 以上から、鉄鉱石の示差走査熱量測定法(DSC)または示差熱分析法(DTA)により測定された温度−示差熱曲線における650〜750℃の温度範囲で観測されたγ−Fe2O3からα−Fe2O3への変態に起因する発熱ピークの面積、つまり、発熱量をもとに鉄鉱石中のγ−Fe2O3を定量することができる。 DTAあるいはDSCによる鉄鉱石中のγ−Fe2O3の定量は、測定されたDTA曲線(温度と示差熱の関係グラフ)またはDSC曲線(温度と熱量の関係グラフ)の650〜750℃の加熱温度において観測される発熱ピークのピーク面積から鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を換算することで行うことができる。 なお、図1(e)に示されるように、γ−FeOOH純粋試料も250〜300℃で脱水(吸熱反応)しγ−Fe2O3を生成した後、さらに、650℃から750℃の温度でα−Fe2O3に変態する際の発熱が観察される。 このため、鉄鉱石の示差熱分析法(DTA)、あるいは、示差走査熱量法(DSC)により測定された鉄鉱石中のγ−Fe2O3量は、厳密には、加熱によりγ−FeOOHから生成したγ−Fe2O3量が含まれる。 通常の製鉄原料に用いられている鉄鉱石中に含有するγ−FeOOH量は少ないものの、X線回折測定法、あるいは、赤外分光分析法などから、より精度の高いγ−Fe2O3の定量を行なうためには、加熱する前の鉄鉱石中のγ−FeOOH量を求め、上記示差走査熱量法(DSC)、あるいは、示差熱分析法(DTA)により測定された鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を補正することが好ましい。 本発明の第1の実施形態は、概略、以下のように行なわれる。 まず、純粋試薬のγ−Fe2O3の質量を測定し、DTAまたはDSC測定を行って、650℃から750℃の温度範囲で観測される発熱ピークの面積を求め、この面積を試料質量で除して単位質量あたりの発熱量を求める。 次に、鉄鉱石試料の質量を測定し、DTAまたはDSC測定を行って、650℃から750℃の温度範囲で観測される発熱ピークの面積と試料質量から、単位質量あたりの発熱量を求め、純粋試薬の単位質量あたりの発熱量と鉄鉱石試料の単位質量あたりの発熱量との比から下記(1)式によって鉄鉱石試料中のγ−Fe2O3量を算出する。 γ−Fe2O3量(mass%)=(鉄鉱石単位質量あたり発熱量/純粋試薬単位質量あたり 発熱量)×100 ・・・(1) 次に、本発明の第2の実施形態として、X線回折分析法を用いて、鉄鉱石のX線回折パターンにおいて回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜に観測されるピークの回折強度から鉄鉱石中のγ−Fe2O3とFe3O4の総量を求め、酸可溶性鉄(II)定量方法を用いて測定した酸化第一鉄量から鉄鉱石中のFe3O4量を求め、前記鉄鉱石中のγ−Fe2O3とFe3O4の総量と、前記鉄鉱石中のFe3O4量との差から、γ−Fe2O3量を算出する方法について説明する。 先ず、本発明の第2の実施形態において、X線回折分析法を用いて鉄鉱石中のγ−Fe2O3とFe3O4の総量を求める方法を説明する。 粒径0.25mm以下の鉄鉱石からなる粉末試料にスリットで細く絞られた波長λのX線を照射し、回折されるX線の回折角と回折強度から試料成分の結晶構造、すなわち、鉱物組成の同定を行い、回折強度から鉱物組成を定量する。 鉄鉱石からなる粉末試料のX線の回折角は、鉱物組成に依存する結晶面によって異なり、(2)式に示すBragg(ブラッグ)の法則に従って一定条件が満たされた時に定まる。 nλ=2dsinθ ・・・(2) ここで、λはX線の波長、nは回折次数、dは結晶格子面間隔、θはブラッグ角すなわち回折角を示す。 図3に、純粋試薬の(a)Fe3O4、(b)α−Fe2O3、(c)γ−Fe2O3、(d)α−FeOOH、(e)γ−FeOOH、(f)Fe(OH)3の各々のX線回折パターンをそれぞれ示す。 図3の(a)と(b)の比較からわかるように、鉄鉱石中のFe3O4とγ−Fe2O3の回折パターンは非常によく一致しており、回折パターンから鉄鉱石中のFe3O4とγ−Fe2O3を区別して定量することは困難である。 一方、図3の(a)と(c)に示される鉄鉱石中のFe3O4とγ−Fe2O3の回折パターンは、図3の(b),(d)〜(f)に示されるその他の鉱物組成であるα−Fe2O3、α−FeOOH、γ−FeOOHの回折パターンとは全く異なるため、鉄鉱石の回折パターンによりFe3O4およびγ−Fe2O3とその他の鉱物組成とは十分区別することができる。 なお、図3の(f)に示されるFe(OH)3のX線回折パターンには、強度は弱いながらα−FeOOHと同じ回折角にピークが観測されており、Fe(OH)3には結晶性の低いα−FeOOHが含まれていることがわかる。しかし、Fe3O4および/またはγ−Fe2O3とは回折パターンが異なっている。 以上から、X線回折分析法を用いて、鉄鉱石のX線回折パターンにおけるFe3O4とγ−Fe2O3の回折ピークの回折角度と回折強度を基に、鉄鉱石中のFe3O4とγ−Fe2O3の総量を算出することができる。 X線回折分析法を用いた各鉱物組成の定量分析では、鉱物組成毎に透過・吸収係数が異なるため、各鉱物組成(Fe3O4、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、α−FeOOH、γ−FeOOH、Fe(OH)3)の組成を変えた複数の混合試料を作成し、これらの混合試料のX線回折パターンにおける各鉱物組成の回折ピークの回折強度と濃度の関係から検量線を作り、この検量線を用いて実際に測定される鉄鉱石中の各鉱物組成濃度を求めるのが好ましい。 測定対象とする鉄鉱石中のFe3O4およびγ−Fe2O3、並びに、これらと共存するα−Fe2O3、α−FeOOH、γ−FeOOHおよびFe(OH)3は全て鉄の酸化物および水酸化物であり、各鉱物組成のX線透過・吸収係数は非常に近い。このため、鉄鉱石のX線回折パターンにおける各鉱物組成の特徴的な回折ピークの相対的な強度比から目的とするFe3O4、γ−Fe2O3の濃度を求めてもよい。 または、鉄鉱石のX線回折パターンにおける各鉱物組成(Fe3O4、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、α−FeOOH、γ−FeOOH、Fe(OH)3)の回折ピークと重ならない回折角に回折ピークを持つような結晶物質、例えば、フッ化カルシウムなどを内部標準として一定量試料鉄鉱石に混合し、フッ化カルシウムの回折ピーク強度と目的とするFe3O4、γ−Fe2O3の回折ピーク強度の比から濃度を求めてもよい。 測定対象である鉄鉱石中のFe3O4およびγ−Fe2O3のX線回折パターンは、回折角29.8〜30.5゜、35.4〜35.8゜、42.9〜43.7゜、56.8〜57.5゜、62.5〜63.2゜等にピークが観測され、Fe3O4およびγ−Fe2O3を定量するための回折角は特に限定する必要はない。 しかし、測定条件によっては、一部の回折ピークがその他の鉱物組成の回折ピークと重なる場合もあるため、好ましくは、Fe3O4およびγ−Fe2O3以外の鉱物組成の回折ピークと重ならない、回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜に観測されるピークを定量分析に用いるのが好ましい。 次に、本発明の第2実施形態において、鉄鉱石中のFe3O4を定量する方法について説明する。 鉄鉱石中のFe3O4は、鉄鉱石中の酸可溶性鉄(II)の測定、つまり、JIS M8213「鉄鉱石−酸可溶性鉄(II)定量方法」に則って鉄鉱石中の2価の酸化鉄であるFeOを測定し、この測定値から換算して求められる。 上述の通りJIS M8213に則って測定される鉄鉱石中のFeOは天然には産出しにくいため、この方法で測定されるFeOは、Fe3O4(FeOとFe2O3の逆スピネル型格子構造)を構成するFeOとして測定され、下記(2)及び(3)によりFeOの測定値から鉄鉱石中のFe3O4に換算できる。 {(FeOの式量:71.84)/(Fe3O4の式量:231.53)}×100 =31.03mass% ・・・(2) {(JIS M8213から求められるFeO量:mass%)/31.03}×100 =鉄鉱石中のFe3O4量 ・・・(3) 表1にJIS M8212「鉄鉱石−全鉄定量方法」およびJIS M8213「鉄鉱石−酸可溶性鉄(II)定量方法」に準じて測定した純粋試薬のFe3O4、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、α−FeOOH、γ−FeOOH、Fe(OH)3のT.FeおよびFeOを測定した結果を示す。なお、表中の( )内には、理想化学組成に基づく理論値を示す。 表1から、JIS M8213に準じて測定したFeOの測定値から換算して得られた純粋試薬のFe3O4量は、( )内に示された理想化学組成に基づく理論値と精度良く一致することは明らかである。 なお、JIS M8213によって測定される酸可溶性鉄(II)(FeO)は、2価の鉄が酸に溶けやすいことを利用して測定するものである。鉱石を構成する3価の鉄や金属鉄も酸に不溶ではないため、わずかにFeOとして検出される。このため、JIS M8213が適用される範囲は酸可溶性鉄(II)含有率1mass%以上30mass%以下の試料とされている。 表1においても、試薬のγ−Fe2O3の見かけ上のFeO値は1.04mass%と示されているが、Fe2O3は結晶構造においてFeOとして存在しないため、この値はFe3O4量を示すものではない。 以上から本発明の第2実施形態として、X線回折分析法を用いて、鉄鉱石のX線回折パターンにおいて回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜に観測されるピークの回折強度から鉄鉱石中のγ−Fe2O3とFe3O4の総量を求め、JIS M8213の酸可溶性鉄(II)定量方法に準じて測定した酸化第一鉄量から、鉄鉱石中のFe3O4量を求め、前記鉄鉱石中のγ−Fe2O3とFe3O4の総量と、前記鉄鉱石中のFe3O4量との差から、γ−Fe2O3量を算出することができる。 次に、本発明の第3実施形態として、鉄鉱石を大気中で400〜650℃の温度で加熱処理した後、該鉄鉱石のX線回折分析により測定されたX線回折パターンにおける回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜で観測された回折ピークの強度から鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を求める方法を説明する。 上述のとおり、鉄鉱石を構成する鉱物組成(Fe3O4、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、α−FeOOH、γ−FeOOH、Fe(OH)3)は、図1に示されるように、大気中で室温から1000℃まで加熱すると室温時の鉱物組成の一部は脱水、変態などにより鉱物組成が別のものに変化する。 本発明の第3実施形態は、X線回折分析法において、鉄鉱石中の各鉱物組成の加熱温度に依存した構造変化を利用して、加熱処理後の鉄鉱石のX線回折パターンから鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を定量するものである。 図4〜図9は、各々大気中で、100℃、300℃、500℃、600℃、700℃、1000℃の温度で加熱処理した場合のFe3O4、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、α−FeOOH、γ−FeOOH、Fe(OH)3の純粋試料のX線回折パターンを示す。 X線回折法は、先に述べたDTAやDSCのような熱分析法と異なり、測定対象物を連続的に加熱しながら測定することは困難であるため、大気中で100℃、300℃、500℃、600℃、700℃、1000℃の温度で加熱処理した同一純粋試料のX線回折パターンを測定した。 前述の通り、図1の熱分析データ(DTA曲線)から鉄鉱石を構成する鉱物組成は加熱することによって、100℃の温度で純粋試料中の付着水は脱水し、300℃の温度でα−FeOOH、γ−FeOOH、Fe(OH)3結合水が脱水し、500℃の温度でFe3O4が酸化する温度、600℃および700℃の温度はγ−Fe2O3がα−Fe2O3に変態することを確認している。 X線回折パターンの測定対象である純粋試料の加熱処理温度は、これらの知見をもとに設定した。 図4に示す100℃、300℃、500℃、600℃、700℃、1000℃の温度で加熱処理した同一Fe3O4純粋試料の各X線回折パターンから、Fe3O4の回折ピーク(回折角2θ=18.28°、30.10°、35.48°、43.08°、53.50°、56.98°、62.56°、74.02゜等のピーク)は、500℃以上でほとんどなくなるとともに、α−Fe2O3の回折ピーク(回折角2θ=24.12°、33.14°、35.62°、40.86°、49.48°、54.08゜等のピーク)が大きくなる。 この結果から、500℃、600℃の温度では、Fe3O4純粋試料のほとんどが、α−Fe2O3に変化したことが判る。これは、上述の通り、図1(a)に示されるFe3O4純粋試料のDTA曲線から、400℃の温度で、Fe3O4純粋試料の酸化、α−Fe2O3への変化がかなり進行することからも同様に確認できる。 図5に示す100℃、300℃、500℃、600℃、700℃、1000℃の温度で加熱処理した同一α−Fe2O3純粋試料の各X線回折パターンから、α−Fe2O3の回折ピーク(回折角2θ=24.12°、33.14°、35.62°、40.86°、49.48°、54.08゜等のピーク)は、大気中で1000℃まで加熱しても変化せず、α−Fe2O3純粋試料の構造は変化しない。 図6に示す100℃、300℃、500℃、600℃、700℃、1000℃の温度で加熱処理した同一γ−Fe2O3純粋試料の各X線回折パターンから、γ−Fe2O3の回折ピーク(回折角2θ=18.30°、30.28°、35.70°、43.36°、53.82°、57.36°、62.96°、74.52゜等のピーク)は、大気中で600℃までの加熱ではほとんどその強度は変化せず、γ−Fe2O3純粋試料の構造は変化しない。 しかし、さらに、γ−Fe2O3純粋試料を700℃に加熱すると、γ−Fe2O3の回折ピークが減少し、これに代わってα−Fe2O3の回折ピーク(回折角2θ=24.12°、33.14°、35.62°、40.86°、49.48°、54.08゜等のピーク)の強度が増加することから、700℃以上の加熱で、γ−Fe2O3純粋試料はα−Fe2O3に変態し構造が変わったことがわかる。 図7に示す100℃、300℃、500℃、600℃、700℃、1000℃の温度で加熱処理した同一α−FeOOH純粋試料の各X線回折パターンから、α−FeOOHの回折ピーク(回折角2θ=17.72°、21.18°、26.30°、33.20°、36.64°、41.16°、53.20°、58.96°、71.52゜等のピーク)は、300℃付近でその強度が減少し、一方、α−Fe2O3の回折ピーク(回折角2θ=24.12、33.14、35.62、40.86、49.48、54.08゜等のピーク)が増加し始め、この温度でα−FeOOHの結合水が脱水し、α−Fe2O3に構造が変化する。 特に、500℃以上の温度で、α−Fe2O3の回折ピークの増加は顕著となり、600〜700℃の加熱温度では、α−FeOOH純粋試料のほとんどがα−Fe2O3の結晶構造に変化することがわかる。 図8に示す100℃、300℃、500℃、600℃、700℃、1000℃の温度で加熱処理した同一γ−FeOOH純粋試料の各X線回折パターンから、γ−FeOOHの回折ピーク(回折角2θ=14.14°、27.04°、36.26°、38.06°、43.34°、46.78°、52.76°、60.16°、64.92°、68.40゜等のピーク)も、300℃付近でその強度が減少し、一方、γ−Fe2O3の回折ピーク(回折角2θ=30.28°、35.70°、43.36°、53.82°、62.96゜等のピーク)が増加し、この温度で、γ−FeOOHの結合水が脱水し、γ−Fe2O3に構造が変化する。 このγ−Fe2O3の構造は、600℃程度の温度までは、維持されるが、700℃以上の温度で、α−Fe2O3の回折ピーク(回折角2θ=24.12°、33.14°、35.62°、40.86°、49.48°、54.08゜等のピーク)が増大し、α−Fe2O3に変態することがわかる。 図9に示す100℃、300℃、500℃、600℃、700℃、1000℃の温度で加熱処理した同一Fe(OH)3純粋試料の各X線回折パターンから、Fe(OH)3には結晶性が低く量は少ないが、α−FeOOHの回折ピーク(回折角2θ=17.72°、21.18°、26.30°、33.20°、36.64°、41.16°、53.20°、58.96°、71.52゜等のピーク)が示めされ、Fe(OH)3そのものの回折ピークは回折パターンに現れない。これは、Fe(OH)3が非晶質、あるいは非常に細かい微結晶であるためと考えられる。 300℃以上の温度でのX線回折パターンにおけるα−Fe2O3の回折ピーク(回折角2θ=24.12°、33.14°、35.62°、40.86°、49.48°、54.08゜等のピーク)の増加から、Fe(OH)3純粋試料中のα−FeOOHは、300℃付近の温度で脱水してα−Fe2O3に構造が変化し、結晶性が低下する。 また、この際、Fe(OH)3も脱水が起こり、元素組成としてはFe2O3となる。両者は、500℃以上の加熱でα−Fe2O3の回折ピークの増加は顕著となり、600〜700℃の加熱温度では、そのほとんどがα−Fe2O3の結晶構造に変化することがわかる。 図10(a)〜(d)は、α−Fe2O3、Fe3O4、γ−Fe2O3の各純粋試薬と、α−Fe2O3(80mass%)、Fe3O4(15mass%)、および、γ−Fe2O3(5mass%)の各純粋試薬を混合した混合物について加熱しないで測定したX線回折パターンを示す。また、図11(a)〜(d)は、上記図10(a)〜(d)と同じ試料を600℃の温度で加熱処理して測定したX線回折パターンを示す。 図10(c)に示した加熱しないFe3O4純粋試料のX線回折ピーク(回折角2θ=30.12゜と43.08゜)は、図10の(b)に示した加熱しないγ−Fe2O3純粋試料のX線回折ピークに近い位置にあり、図10(d)のα−Fe2O3純粋試料のX線回折ピークとは異なる位置にある。 一方、図11(c)に示した600℃の温度で加熱処理後のFe3O4純粋試料のX線回折ピークは、この温度でFe3O4はα−Fe2O3構造に変態し、そのX線回折ピークは、図10(d)に示した加熱しないα−Fe2O3純粋試料、および、図11(d)に示した同じ温度で加熱処理した後のα−Fe2O3純粋試料の回折ピークと一致する。 従って、図10(a)に示す加熱しない混合物のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=30.12゜と43.08゜で観測される回折ピークは、Fe3O4およびγ−Fe2O3の回折ピークが重なったものであるが、図11(a)に示す600℃の温度で加熱処理後の混合物のX線回折パターンにおいて、回折角2θ=30.08゜と43.16゜で観測される回折ピークはγ−Fe2O3の回折ピーク単独のものである。 以上の鉄鉱石の加熱処理温度と、X線回折パターンにおける鉄鉱石を構成する各鉱物組成の回折ピークとの関係から、本発明の第3実施形態では、X線回折パターンでγ−Fe2O3と重なる位置に回折ピークの回折角をもつ鉄鉱石中のFe3O4を加熱処理し、γ−Fe2O3と重ならない位置に回折ピークの回折角をもつα−Fe2O3に変態させるため、鉄鉱石の加熱処理温度を400℃以上とする(図4および図1(a)、参照)。 鉄鉱石の加熱処理温度が低い場合でも、鉄鉱石中のFe3O4をα−Fe2O3に変態させることは可能であるが、完全に変態するまでの保持時間を長くする必要があるため、鉄鉱石を加熱処理する際の加熱温度の下限は600℃とするのが好ましい。 一方、鉄鉱石を加熱処理する際の加熱温度が650℃を超える場合では、X線回折パターンにおける測定対象である鉄鉱石中のγ−Fe2O3もα−Fe2O3に変態してしまうため(図2、図6参照)、室温で鉄鉱石中に存在するγ−Fe2O3の構造をそのまま維持させるために、鉄鉱石を加熱処理する際の過熱温度の上限は650℃に規定した。 鉄鉱石を400℃以上の加熱温度で加熱処理することにより、加熱処理前に存在していた鉄鉱石中のFe3O4と、鉄鉱石中のα−FeOOH、Fe(OH)3は、何れもα−Fe2O3に変態し(図4、7および9、参照)、この加熱温度の上限を650℃以下とすることにより、室温で存在する鉄鉱石中のγ−Fe2O3およびα−Fe2O3の構造を変化せず、そのまま維持する(図6および図5、参照)ことが可能となり、X線回折パターンにおいて目的とする鉄鉱石中のγ−Fe2O3の回折ピークを他の鉱物組成の回折ピークと分離し、高い精度で鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を定量することができる。 なお、上記400℃〜650℃に加熱処理した鉄鉱石をX線回折する際は、加熱温度を保持した状態の鉄鉱石を測定しても、加熱処理した後、室温まで冷却した鉄鉱石を測定してもよい。 なお、図8に示されるように、鉄鉱石を400℃〜650℃の加熱温度で加熱処理すると、室温で存在していた鉄鉱石中のγ−FeOOHはγ−Fe2O3に変態するため、上記加熱温度で加熱処理した鉄鉱石のX線回折パターンから定量されたγ−Fe2O3量には、γ−FeOOHの構造が変化して生成したγ−Fe2O3量も一部含まれる。 通常の製鉄原料に用いられている鉄鉱石中に含有するγ−FeOOH量は少ないものの、X線回折パターンからより精度の高いγ−Fe2O3の定量を行なうためには、加熱処理をしない鉄鉱石のX線回折パターンからγ−FeOOHを定量し、この測定値を基に、加熱処理した鉄鉱石のX線回折パターンから定量されたγ−FeOOH量を補正することが好ましい。 また、上記X線回折分析法を用いた各鉱物組成の定量分析では、鉱物組成毎に透過・吸収係数が異なるため、予め濃度の異なる純粋試薬(Fe3O4、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、α−FeOOH、γ−FeOOH、Fe(OH)3)を混合した混合物を作成し、これらの混合試料のX線回折パターンにおける各鉱物組成の回折ピークの回折強度と濃度の関係から検量線を作り、この検量線を用いて、実際に測定される鉄鉱石中の各鉱物組成濃度を求めるのが好ましい。 検量線は、例えば、X線回折パターンにおける測定対象のFe3O4とγ−Fe2O3の29.8〜30.5゜、42.9〜43.7゜で観察される回折ピーク強度と、α−Fe2O3特有の23.8〜24.5、または、32.8〜33.5°、または40.5〜41.2°、または49.1〜49.8°、53.7〜54.4゜等で観察される回折ピークとの強度比と各鉱物濃度の関係から作成し、その後、この検量線を用いて、実際の鉄鉱石試料のX線回折パターンにおける同様の回折ピークの強度比から濃度を求めることが好ましい。 あるいは、各鉱物組成の回折ピークと重ならない回折角にピークを持つ結晶物質、例えばフッ化カルシウムなどを内部標準として一定量試料鉄鉱石に混合し、フッ化カルシウムの回折ピーク強度と測定対象であるFe3O4とγ−Fe2O3の回折ピークの強度比から濃度を求めてもよい。 以上説明したように、本発明の第3実施形態によれば、X線回折分析法を用いて、400〜650℃で加熱した鉄鉱石のX線回折パターンにおける回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜で観察される回折ピークの回折強度から鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を求め、前記鉄鉱石中のγ−Fe2O3とFe3O4の総量と、前記鉄鉱石中のγ−Fe2O3量との差からFe3O4量を精度良く算出することができる。 4種類の鉄鉱石A〜Dについて、以下の発明例1:示差熱分析(DTA)測定、発明例2:X線回折パターン測定およびJIS M8213「酸可溶性鉄(II)」(FeO)測定、発明例3:高温X線回折パターン(X線回折パターンの温度変化)測定、を用いて鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を測定した。 (発明例1) 鉄鉱石A〜Dについて示差熱分析(DTA)を行なった。図12に一例として鉄鉱石AのDTA測定結果を示す。図12中の○で囲んだ部分が、650℃から750℃の加熱温度で観測されるγ−Fe2O3がα−Fe2O3に変態する際に生じる発熱ピークである。図13は図12に示したDTA曲線の上記発熱ピークを抽出し、ベースラインを補正した結果を示す。 ベースラインを補正すると、ピークが明瞭に観測され、ピーク面積の算出も容易である。鉄鉱石試料単位質量あたりのピーク面積(発熱量)と純粋試薬γ−Fe2O3の単位質量あたりの発熱量から計算すると、鉄鉱石A中のγ−Fe2O3量は5.6mass%であった。 上記鉄鉱石Aと同様に他の鉄鉱石B〜D中のγ−Fe2O3量を測定した。これら鉄鉱石A〜Dの分析結果を表2に示す。 (発明例2) 加熱しない鉄鉱石A〜DについてX線回折パターンを測定した。図14に、鉄鉱石試料A、B、C、Dの加熱しない試料のX線回折パターンを示す。 図14示す鉄鉱石試料A、B、C、DのX線回折パターンにおいて矢印で示す回折角2θ=29.8〜30.5゜で、Fe3O4およびγ−Fe2O3に相当するピークの強度から、Fe3O4およびγ−Fe2O3の総量を求めた。 また、JIS M8213「鉄鉱石−酸可溶性鉄(II)定量方法」により酸可溶性鉄(II)(FeO)を測定し、このFeO測定値からFe3O4量を求めた。表2に、これらFe3O4およびγ−Fe2O3総量、Fe3O4量、および、これらから求めたγ−Fe2O3量を示す。 (発明例3) 600℃で加熱処理した鉄鉱石A〜DについてX線回折パターンを測定した。図15に、600℃で加熱処理した鉄鉱石のX線回折パターンを示す。 600℃で加熱処理した鉄鉱石中のFe3O4は全てα−Fe2O3に変態するため、図15のX線回折パターンにおいて矢印で示した回折角2θ=29.8〜30.5゜で観察される回折ピークは、γ−Fe2O3に由来する回折ピークである。このピーク強度からγ−Fe2O3量を測定した結果を表4に示す。 なお、表4には、上記発明例2で測定した加熱しない鉄鉱石のX線回折パターンから求めたFe3O4およびγ−Fe2O3総量、および、前記γ−Fe2O3量とFe3O4及びγ−Fe2O3総量から求めたFe3O4量を示した。 表5に、上記発明例1〜3に示したγ−Fe2O3量、Fe3O4量(発明例2のみ)の測定結果、比較例として、従来法で測定したFe3O4量を示す。なお、比較例は、JIS M8213「鉄鉱石−酸可溶性鉄(II)定量方法」により酸可溶性鉄(II)(FeO)を測定し、この測定値から鉄鉱石中のFe3O4量を求めた。 以上のように、本発明によれば、従来法では不可能であった、Fe3O4とγ−Fe2O3を分別して定量的に評価することができ、鉄鉱石品質評価法として好適に使用することができる。(a)Fe3O4純粋試薬、(b)α−Fe2O3純粋試薬、(c)γ−Fe2O3純粋試薬、(d)α−FeOOH純粋試薬、(e)γ−FeOOH純粋試薬、および、(f)Fe(OH)3純粋試薬の示差熱分析結果を示す図である。γ−Fe2O3純粋試薬の示差熱分析結果の拡大図である。(a)Fe3O4純粋試薬、(b)α−Fe2O3純粋試薬、(c)γ−Fe2O3純粋試薬、(d)α−FeOOH純粋試薬、(e)γ−FeOOH純粋試薬、および、(f)Fe(OH)3純粋試薬のX線回折パターンを示す図である。加熱処理したFe3O4純粋試薬のX線回折パターン(X線回折パターンの温度変化)を示す図である。加熱処理したα−Fe2O3純粋試薬のX線回折パターン(X線回折パターンの温度変化)を示す図である。加熱処理したγ−Fe2O3純粋試薬のX線回折パターン(X線回折パターンの温度変化)を示す図である。加熱処理したα−FeOOH純粋試薬のX線回折パターン(X線回折パターンの温度変化)を示す図である。加熱処理したγ−FeOOH純粋試薬のX線回折パターン(X線回折パターンの温度変化)を示す図である。加熱処理したFe(OH)3純粋試薬のX線回折パターン(X線回折パターンの温度変化)を示す図である。(a)α−Fe2O3純粋試薬(80mass%)、Fe3O4純粋試薬(15mass%)およびγ−Fe2O3純粋試薬(5mass%)の混合物、(b)γ−Fe2O3純粋試薬、(c)Fe3O4純粋試薬、および、(d)α−Fe2O3純粋試薬のX線回折パターンを示す図である。(a)α−Fe2O3純粋試薬(80mass%)、Fe3O4純粋試薬(15mass%)およびγ−Fe2O3純粋試薬(5mass%)の混合物、(b)γ−Fe2O3純粋試薬、(c)Fe3O4純粋試薬、および、(d)α−Fe2O3純粋試薬を600℃に加熱処理した試料のX線回折パターンを示す図である。鉄鉱石Aの示差熱分析結果を示す図である。鉄鉱石Aの示差熱分析結果を補正したものを示す図である。(a)鉄鉱石A、(b)鉄鉱石B、(c)鉄鉱石C、および、(d)鉄鉱石Dの常温のX線回折パターンを示す図である。600℃に加熱処理した(a)鉄鉱石A、(b)鉄鉱石B、(c)鉄鉱石C、および、(d)鉄鉱石DのX線回折パターンを示す図である。 鉄鉱石中に含有するγ−Fe2O3量を測定する方法であって、鉄鉱石の示差走査熱量測定または示差熱分析により測定された温度−示差熱曲線における650〜750℃の温度範囲で観測された発熱ピークの面積を基に、鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を求めることを特徴とする鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法。 鉄鉱石中に含有するγ−Fe2O3量を測定する方法であって、先ず、鉄鉱石のX線回折分析により測定されたX線回折パターンにおける回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜で観測される回折ピークの強度からFe3O4およびγ−Fe2O3の総量を求め、次に、JIS M8213に準じて測定された前記鉄鉱石中の酸可溶性鉄(II)からFe3O4量を求め、前記Fe3O4およびγ−Fe2O3の総量と前記Fe3O4量から鉄鉱石中のγ−Fe2O3量を求めることを特徴とする鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法。 鉄鉱石中に含有するγ−Fe2O3量を測定する方法であって、鉄鉱石を大気中で400〜650℃の温度で加熱処理した後、該鉄鉱石のX線回折分析により測定されたX線回折パターンにおける回折角29.8〜30.5゜、または、42.9〜43.7゜で観測される回折ピークの強度からγ−Fe2O3の総量を求めることを特徴とする鉄鉱石中のγ−Fe2O3量の測定方法。 【課題】 測定が困難なγ-Fe2O3を精度良く定量する鉄鉱石中のγ-Fe2O3量の測定方法を提供する。【解決手段】 (1)鉄鉱石の示差走査熱量測定または示差熱分析により測定された温度-示差熱曲線における650〜750℃の温度範囲で観測された発熱ピークの面積を基に、鉄鉱石中のγ-Fe2O3量を求める、(2)先ず、鉄鉱石のX線回折分析により測定されたX線回折パターンにおける回折角29.8〜30.5゜または42.9〜43.7゜で観測される回折ピークの強度からFe3O4及びγ-Fe2O3の総量を求め、次に、JIS M8213に準じて測定された前記鉄鉱石中の酸可溶性鉄(II)からFe3O4量を求め、前記Fe3O4及びγ-Fe2O3の総量と前記Fe3O4量から鉄鉱石中のγ-Fe2O3量を求める、または、(3)鉄鉱石を大気中で400〜650℃の温度で加熱処理した後、該鉄鉱石のX線回折分析により測定されたX線回折パターンにおける回折角29.8〜30.5゜または42.9〜43.7゜で観測される回折ピークの強度からγ-Fe2O3の総量を求める。【選択図】 なし


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