タイトル: | 公開特許公報(A)_細胞足場材料 |
出願番号: | 2005073358 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12M 3/00,A61L 27/00 |
近藤 哲司 三和 敬史 JP 2006254722 公開特許公報(A) 20060928 2005073358 20050315 細胞足場材料 東レ株式会社 000003159 近藤 哲司 三和 敬史 C12M 3/00 20060101AFI20060901BHJP A61L 27/00 20060101ALI20060901BHJP JPC12M3/00 AA61L27/00 V 16 OL 20 4B029 4C081 4B029AA01 4B029AA21 4B029BB11 4B029BB15 4B029CC02 4C081AA03 4C081BA12 4C081CA021 4C081CA051 4C081CA131 4C081CA161 4C081CA211 4C081CA231 4C081CB011 4C081CD112 4C081DA02 4C081DA04 4C081DA05 4C081DB01 4C081EA06 本発明は、細胞培養あるいは組織再生用の足場材料成型体、埋め込み型医療用成型体などの用途に使用するナノファイバーを含む細胞足場材料に関する。 再生医療をはじめとする医療用材料として細胞の足場などとなる様々な3次元足場材料の設計が重要であるが、特に近年有効な足場材料として高い気孔率、広い表面積を持つ多孔性物質が注目されている。多孔性物質としては発泡体あるいは繊維物質が知られているが、細胞培養あるいは組織再生の足場材料として生体あるいは細胞への適合性が高いこと、あるいは細胞、組織への接着性の高いことが求められている。また、足場材料として骨髄や結合組織のコラーゲン繊維など細胞が生育する生体内組織の環境を模倣することが重要であるが、これらの生体内組織はナノレベルの繊維状の構造を有しているのが一般的である。このため、足場材料をナノレベルの繊維状構造体にすることが好ましく、さらに、ナノレベルの構造体は比表面積が高くなるため細胞の足場材料として望ましい形状を持つと考えられ検討が進められている。 このためナノレベルの直径を持つ繊維であるナノファイバーを体外での細胞培養用足場や組織再生用の足場あるいは埋め込み型医療用材料などの医療用途として使用する試みがなされおり、近年ナノファイバーを作製するのに脚光を浴びているものにエレクトロスピニングという技術がある。この方法は、ポリマーを電解質溶液に溶解し、口金から押し出すのであるが、その際、ポリマー溶液に数千〜3万ボルトという高電圧を印加し、ポリマー溶液の高速ジェットおよびそれに引き続くジェットの折れ曲がり、膨張により極細化する技術である。この技術を用いると、条件により単糸繊度が単糸直径で数十nm相当とすることができる場合もあるが、一般的には数百nmレベルの繊維径であり、しかも、この技術で作製されるナノファイバーの直径は一般に不均一であり、一部に数マイクロメートルの直径を持つようなビーズに糸を通したようなネックレス状のナノファイバーが形成されることもある(特許文献1参照)。また、エレクトロスピニングで得られる繊維・繊維製品の形状は不織布に限定されるとともに、繊維化の過程で溶媒が蒸発するため、得られた繊維集合体は配向結晶化していない場合が多く、強度も通常の繊維製品に比べてごく弱い物しか得られていないため足場材料として要求される機械的耐久性を備えていない。また、この製法によるナノファイバー構造体上で細胞の培養が試みられているが(特許文献1、特許文献2参照)繊維密度が高いため繊維構造内に細部が入り込むことは不可能であり、また機械的な柔軟性も備えていない。このような理由のため、エレクトロスピニングによるナノファイバーには応用展開に大きな制約があった。さらに、エレクトロスピニングは製法としても大きな問題を抱えており、得られる繊維製品の大きさはせいぜい100cm2程度であること、また生産性が最大でも数g/時間と通常の溶融紡糸に比べ非常に低いという問題があった。さらに、高電圧を必要とすることや、有害な有機溶媒や超極細糸が空気中に浮遊することから感電、爆発、中毒といった危険が常につきまとうという問題もある。 一方、上記のような細胞培養など足場材料、組織再生材料などの研究用、医療用材料としてナノファイバーを使用するには、その物理的な性質だけでなく、細胞などに働きかけ細胞の接着、増殖、分化などの機能に働きかける有効なタンパク質の効果が重要であり、これらタンパク質を足場材料上に吸着あるいは固定させておくこと、あるいは足場材料上に吸着したタンパクを徐放させることが重要となることが多い。 エレクトロスピニングで作製したポリ乳酸ナノファイバーのタンパク質の吸着性能およびその上での細胞培養について検討しているが、エレクトロスピニングは上記のような問題があり実際的な使用には適していない(非特許文献1参照)。またこの検討においてはタンパクとしてウシ血清タンパクあるいは接着分子の吸着性を検討しているのみであるが、実際に体内外で細胞培養や組織再生あるいは医療用途として使用するのに重要なタンパクはサイトカインと呼ばれる細胞の増殖、分化などの細胞の培養や組織の再生に有効な細胞機能に働きかける機能タンパクであり、これらタンパクに関する検討が重要である。 また、研究用、医療用の足場材料としてナノファイバーを使用するには、足場材料すなわち担体上に吸着させたタンパクを持続的に放出して細胞あるいは生体内の必要箇所にタンパクを供給する徐放性も重要となる。この徐放性を利用すれば生体内あるいは培養液中のタンパク濃度を一定に保つことができ、時々のサイトカインの添加が不要となるメリットがある。しかし、通常、徐放性を示す担体としては、徐放する物質を乳酸など分解性ポリマーの共重合体などを使用して吸着あるいは担体内部に封入して、ポリマーの分解を利用して徐放させている(特許文献3参照)。しかし、このように担体として分解性のポリマーを使用する方法は、ポリマーや形状が限定され、さらに共重合が必要であるなど製法が非常に難しいため、細胞培養、組織再生用の足場材料として物理的、化学的な性質を満たす有効なナノファイバーを成型体として得るのは非常に難しい問題があった。 特開2004−321484号公報特開2004−290133号公報特開2001−15693号公報J. Biomed.Mat.Res 67A 531(2003) 本発明では、上記従来技術の欠点を解消するものであり、体外での細胞培養用足場や組織再生用の足場あるいは埋め込み型医療材などの成型体として実際に使用するのに十分に耐えられるようなナノファイバーを含む細胞足場材料、また、細胞の培養、組織の再生などに有効なタンパク質を簡単に吸着あるいは徐放することができるナノファイバーを含む細胞足場材料を提供することを目的としている。(1) 有機系ポリマーからなり数平均による単繊維径の直径が1〜200nmであるナノファイバーを含む細胞足場材料(2) 数平均による単繊維径の直径が1〜100nmである(1)記載の細胞足場材料(3) ナノファイバーが溶融紡糸から作製されることを特徴とする(1)あるいは(2)に記載の細胞足場材料(4) 有機系ポリマーが熱可塑性ポリマーであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞足場材料(5) 熱可塑性ポリマーがポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系高分子、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる一種であることを特徴とする(4)記載の細胞足場材料(6) 熱可塑性ポリマーがナイロンあるいはポリブチレンテレフタレラートであることを特徴とする(4)あるいは(5)記載の細胞足場材料(7) ナノファイバーが紙または不織布または織編物の形状に加工されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の細胞足場材料(8) ナノファイバーどうしがバンドル構造を形成していることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の細胞足場材料(9) ナノファイバーが他の基材上で集合体を形成していることを特徴とする請求項(1)〜(8)のいずれかに記載の細胞足場材料(10) 他の基材の形状が細胞培養用器具として使用される形状であることを特徴とする(9)記載の細胞足場材料(11) ナノファイバー1mgを100μg/mLの濃度のタンパク溶液1mLに浸漬してタンパクを吸着させた際、該溶液中のタンパクの80%以上を吸着可能なことを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の細胞足場材料(12) ナノファイバーにタンパクを吸着したことを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の細胞足場材料(13) 吸着するタンパクがサイトカインから選ばれる1種類以上であることを特徴とする(12)に記載の細胞足場材料(14) 一度吸着したタンパクが徐放されることを特徴とする(12)あるいは(13)に記載の細胞足場材料(15) 一度吸着したタンパクの1%以上が24時間以内で徐放され、該徐放が1週間以上継続することを特徴とする(14)に記載の細胞足場材料(16) (1)〜(15)のいずれかに記載の細胞足場材料からなる細胞培養用あるいは組織再生用に使用される成型体。 本発明は、ポリマーアロイによる海島溶融紡糸により作製した繊維径が均一で高い強度を持つさまざまな形状のナノファイバーを含む細胞足場材料を提供することにより、このナノファイバー含む細胞足場材料におけるナノ構造がもたらす高い気孔率あるいは高い比表面積の効果、あるいは細胞接着性の向上、生体内のナノレベル繊維状構造環境の模倣などによる影響により、細胞を培養あるいは組織の再生を有効に行うことができる。 また、ポリマーアロイによる海島溶融紡糸を使用することにより基材の形状を不織布や織物など望む形状にすることも可能であり、他の基材と複合化することも可能となる。また本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料はタンパクを高効率で吸着することができ、さらに吸着したタンパクを材料から徐放することが可能となる。この際、タンパクとしてサイトカインなどの細胞の培養や組織の再生に有効なタンパクを使用して材料に吸着、徐放させることにより、細胞足場材料として、細胞培養、組織再生用、埋め込み型医療用の成型体、あるいは検査、測定用など、医療用途あるいは研究用途にかかわらず、有用な材料としての展開が可能となる。 本発明は、有機系ポリマーからなり数平均による単繊維径の直径が1〜200nmであるナノファイバーを含む細胞足場材料である。 本発明で言う細胞足場材料とは、生体内外で細胞、あるいは細胞が集合した組織あるいは臓器、細胞を含むような血液や体液などに接するような部分に使用する材料全般を言う。本細胞足場材料はその材料上あるいは材料内で細胞と材料が接することにより、細胞の接着、増殖、分化、活性化、移動、遊走、形態変化など様々な細胞機能を発現、促進されるような材料を指す。具体的には、生体内外で細胞や組織及び移植組織、移植臓器を培養、形成するための容器やバックやカラムなどの細胞培養用足場材料、人工心臓、人工角膜などの人工臓器や人工組織として使用する材料、縫合糸や骨折接合用のテンプレートなどの手術、施術に使用する道具や器具の一部あるいは全部に使用する材料、シリンジ、カテーテル、創傷保護材などの疾患や創傷などを治癒するために使用する医療用用具の一部あるいは全部に使用する材料などがあげられる。また、医療用の材料として使用することにより細胞の増殖、活性化、分化誘導、定着あるいは組織や臓器の修復、接着、生着、形状形成に対して有効な材料を指す。 本発明の細胞足場材料においては、細胞や組織に対する接着、増殖、分化などに及ぼす機能あるいは、タンパク質を吸着、徐放する機能は主としてナノファイバーが担当するものである。これらの細胞足場材料は、ナノファイバーからだけで成り立っていても、材料あるいは成型体の一部がナノファイバーである材料でも良い。 本発明で言う有機系ポリマーとは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、生体ポリマーなどがあげられるが、成形性の点から熱可塑性ポリマーが好ましい。また、熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系高分子、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる一種であることが好ましい。また、ポリマーの融点は165℃以上であるとナノファイバーの耐熱性が良好であり好ましい。例えば、ポリ乳酸(PLA)は170℃、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)は225℃、ポリエチレンテレフタレート(PET)は255℃、ナイロン6(N6)は220℃であることから、ポリアミドとしてナイロン、ポリエステルとしてポリブチレンテレフタレートを使用することが特に好ましい。また、ポリマーには粒子、難燃剤、帯電防止剤、イオン性物質等の添加物を含有させていても良い。またポリマーの性質を損なわない範囲で他の成分が共重合されていても良い。 本発明で言うナノファイバーとは、単繊維直径が1nm以上1000nm未満の単繊維のことを言う。また、ナノファイバー集合体とはナノファイバーが一次元あるいは2次元、3次元に集合した物のこと言う。 本発明では、数平均による単繊維直径が1〜200nmのナノファイバーを細胞足場材料に含むことが重要である。本発明のナノファイバー集合体は単糸直径が従来のマイクロファイバー繊維の1/10〜1/100以下であるため、比表面積が飛躍的に大きくなるという特徴がある。このため、通常の繊維糸程度では見られなかったナノファイバー特有の性質が得られる。特に単繊維直径が200nm以下となると、比表面積が飛躍的に大きくなるだけでなく繊維間に無数の数nm〜数百nmの空隙を有するため、従来のマイクロファイバーでは見られなかったナノファイバー特有の優れた吸着あるいは吸収特性を示す。この観点から、ナノファイバーの数平均による単繊維直径はより小さい方が好ましく、このため好ましくは25〜200nm、より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは30〜100nm、さらにより好ましくは30〜80nmである ここで、数平均による単繊維直径は以下のようにして求めることができる。すなわち、単繊維束の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、同一横断面内で無作為抽出した300本以上の単繊維直径を円換算で測定し、これらの単純に平均することで求めることができる。 このような極めて細い繊維とすることで、ナノファイバーは数十ミクロンから数ミクロンの大きさを持つ細胞より小さいサイズとなるため、従来のマイクロファイバーとは異なり細胞に対して複数の繊維により影響を与えることが出来る、例えば細胞などに直接凹凸の物理的な影響を与えることができ、細胞の接着性や細胞の伸展方向、神経線維の伸展度、あるいは細胞から排出される接着性物質の吸着性などに影響を与えることができる。また、例えば、織編物や不織布にすればナノファイバー同士が集合してバンドル構造を形成しナノファイバー束を形成するため、束の間に細胞が入り込むことが可能となり、ナノファイバー間の溝構造により細胞に対して一定方向の物理的な方向性を与えることができる。 また、本発明ではナノファイバー単繊維の直径が200nmを超える単繊維の繊維比率がナノファイバー集合体中において0〜5%であることが好ましい。ここで、単繊維の繊維比率は以下のようにして求めることができる。まず、平均直径と同様に、繊維の横断面積ベースで円換算直径を求める。そして、ここで無作為抽出した300本以上のナノファイバー単繊維全体の面積に対する直径200nmの単繊維全体の面積の比率を、本発明ではナノファイバー単繊維の直径が200nmの単繊維の繊維比率とする。ここで、直径200nmを超えるという粗大ナノファイバーの繊維比率を小さくすることで、選択吸着や徐放性、さらには細胞認識といったナノファイバーの優れた特性を有効に活用することができるのである。粗大ナノファイバーは表面積が小さく、また細胞認識に対して太すぎるため前記ナノファイバーの特性が発揮されにくいものであるが、ナノファイバー集合体中における体積比率が大きくなるため、これが多いとナノファイバー特性発揮にはマイナスとなるのである。さらに、直径200nmを超える粗大ナノファイバーの比率は好ましくは2%以下、より好ましくは0%以下である。さらに粗大ナノファイバーの下限値を下げることが好ましく、粗大ナノファイバーとして、直径150nmを超える単繊維の繊維比率は0〜5%であることが好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0%以下である。さらに、粗大ナノファイバーとして、直径100nmを超える単繊維の比率は0〜5%であることが好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0%以下である。 本発明の細胞足場材料は、ナノファイバーどうしがバンドル構造を形成していることが好ましい。 本発明で用いるナノファイバーの製造方法は特に限定されるものではないが、以下のようなポリマーアロイ溶融紡糸を使用する方法を採用することが好ましい。 すなわち、2種類以上の溶剤に対する溶解性の異なるポリマーをアロイ化したポリマーアロイ溶融体となし、これを紡糸した後、冷却固化して繊維化する。そして必要に応じて延伸・熱処理を施しポリマーアロイ繊維を得る。そして、易溶解性ポリマーを溶剤で除去することにより本発明のナノファイバー集合体を得ることができる。 ここで、ナノファイバー集合体の前駆体であるポリマーアロイ繊維中で易溶解性ポリマーが海(マトリックス)、難溶解性ポリマーが島(ドメイン)となし、その島サイズを制御することが重要である。ここで、島サイズは、ポリマーアロイ繊維の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)観察し、直径換算で評価したものである。前駆体中での島サイズによりナノファイバーの直径がほぼ決定されるため、島サイズの分布は本発明のナノファイバーの直径分布に準じて設計される。このため、アロイ化するポリマーの混練が極めて重要であり、本発明では混練押出機や静止混練器等によって高度に混練することが好ましい。なお、単純なチップブレンド(例えば特開平6−272114号公報)では混練が不足するため、本発明のような数十nmサイズで島を分散させることは困難である。 具体的に混練を行う際の目安としては、組み合わせるポリマーにもよるが、混練押出機を用いる場合は、2軸押出混練機を用いることが好ましく、静止混練器を用いる場合は、その分割数は100万以上とすることが好ましい。また、ブレンド斑や経時的なブレンド比率の変動を避けるため、それぞれのポリマーを独立に計量し、独立にポリマーを混練装置に供給することが好ましい。このとき、ポリマーはペレットとして別々に供給しても良く、あるいは、溶融状態で別々に供給しても良い。また、2種以上のポリマーを押出混練機の根本に供給しても良いし、あるいは、一成分を押出混練機の途中から供給するサイドフィードとしても良い。 混練装置として二軸押出混練機を使用する場合には、高度の混練とポリマー滞留時間の抑制を両立させることが好ましい。スクリューは、送り部と混練部から構成されているが、混練部の長さをスクリューの有効長さの20%以上とすることで高混練とすることができ好ましい。また、混練部の長さをスクリュー有効長さの40%以下とすることで、過度の剪断応力を避け、しかも滞留時間を短くすることができ、ポリマーの熱劣化やポリアミド成分等のゲル化を抑制することができる。また、混練部はなるべく二軸押出機の吐出側に位置させることで、混練後の滞留時間を短くし、島ポリマーの再凝集を抑制することができる。加えて、混練を強化する場合は、押出混練機中でポリマーを逆方向に送るバックフロー機能のあるスクリューを設けることもできる。 また、島を数十nmサイズで超微分散させるには、ポリマーの組み合わせも重要である。 島ドメイン(ナノファイバー断面)を円形状に近づけるためには、島ポリマーと海ポリマーは非相溶であることが好ましい。しかしながら、単なる非相溶ポリマーの組み合わせでは島ポリマーが充分超微分散化し難い。このため、組み合わせるポリマーの相溶性を最適化することが好ましいが、このための指標の一つが溶解度パラメータ(SP値)である。SP値とは(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、SP値が近い物同士では相溶性が良いポリマーアロイが得られる可能性がある。SP値は種々のポリマーで知られているが、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載されている。ポリマー2種のSP値の差分が1〜9(MJ/m3)1/2であると、非相溶化による島ドメインの円形化と超微分散化を両立させやすいので好ましい。例えばナイロン6(N6)とPETはSP値の差が6(MJ/m3)1/2程度であり好ましい例であるが、N6とポリエチレン(PE)はSP値の差が11(MJ/m3)1/2程度であり好ましくない例として挙げられる。 また、ポリマー同士の融点差が20℃以下であると、特に押出混練機を用いた混練の際、押出混練機中での融解状況に差を生じにくいため高効率で混練しやすく、好ましい。 また、熱分解や熱劣化し易いポリマーを1成分に用いる際は、混練や紡糸温度を低く抑える必要があるが、これにも有利となるのである。ここで、非晶性ポリマーの場合は融点が存在しないためガラス転移温度あるいはビカット軟化温度あるいは熱変形温度でこれに代える。 さらに、溶融粘度も重要であり、島を形成するポリマーの方を低く設定すると剪断力による島ポリマーの変形が起こりやすいため、島ポリマーの微分散化が進みやすくナノファイバー化の観点からは好ましい。ただし、島ポリマーを過度に低粘度にすると海化しやすくなり、繊維全体に対するブレンド比を高くできないため、島ポリマー粘度は海ポリマー粘度の1/10以上とすることが好ましい。また、海ポリマーの溶融粘度は紡糸性に大きな影響を与える場合があり、海ポリマーとして100Pa・s以下の低粘度ポリマーを用いると島ポリマーを分散させ易く好ましい。また、これにより紡糸性を著しく向上できるのである。この時、溶融粘度は紡糸の際の口金面温度で剪断速度1216sec−1での値である。 本発明で用いる超微分散化したポリマーアロイを紡糸する際は、紡糸口金設計が重要であるが、糸の冷却条件も重要である。上記したようにポリマーアロイは非常に不安定な溶融流体であるため、口金から吐出した後に速やかに冷却固化させることが好ましい。このため、口金から冷却開始までの距離は1〜15cmとすることが好ましい。ここで、冷却開始とは糸の積極的な冷却が開始される位置のことを意味するが、実際の溶融紡糸装置ではチムニー上端部でこれに代える。 また、紡糸されたポリマーアロイ繊維には延伸・熱処理を施すことが好ましいが、延伸の際の予熱温度は島ポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度することで、糸斑を小さくすることができ、好ましい。 このようにして得られたポリマーアロイ繊維は、公知の方法にしたがい織編物にしたり、パイル布帛や不織布にしたりすることができるため、従来のエレクトロスピニングの手法では作製できない形状の構造体、集合体として成型することができる。例えば、不織布にする際は、ニードルパンチ法や水流交絡法などの公知の方法を利用することができる。 このようにして得られたポリマーアロイ繊維や布帛から海ポリマーである易溶解ポリマーを溶剤で溶出することで、ナノファイバーやそれからなる布帛を得るのであるが、その際、溶剤としては水溶液系のものを用いることが環境負荷を低減する観点から好ましい。具体的にはアルカリ水溶液や熱水を用いることが好ましい。このため、易溶解ポリマーとしては、ポリエステルやポリカーボネート(PC)等のアルカリ加水分解されるポリマーやポリアルキレングリコールやポリビニルアルコールおよびそれらの誘導体等の熱水可溶性ポリマーが好ましい。 上記製造方法によって製造されたナノファイバーは結晶化度が20%以上であり、通常の衣料用繊維と同等の強度を持つ。 また、上記製造方法において、特に口金直上に静止混練器を位置させた場合にはナノファイバーが理論上無限に伸びた長繊維形状のナノファイバー集合体が得られる場合もある。 上記製造方法によるナノファイバーは、従来のナノファイバーとは全く異なり、前駆体であるポリマーアロイ繊維を延伸・熱処理することによりナノファイバーも延伸・熱処理することが初めて可能となったため、足場材料用途として引っ張り強度や収縮率を自由にコントロールできるようになっている。さらに、前駆体であるポリマーアロイ繊維を捲縮加工することも可能である。 ナノファイバーを一本一本までに単繊維分散させるためには、例えば以下のような湿式抄紙法により達成することができる。すなわち、本発明のポリマーアロイ繊維をカセ取り、あるいは合糸してトウとなし、その後易溶解性ポリマーを溶出する。次に、このナノファイバー集合体繊維をギロチンカッターなどで繊維長0.1〜10mmにカットし、ナノファイバー短繊維を得る。これを叩解することによって単繊維までバラバラにする。叩解は、生産レベルではナイアガラビータ、リファイナーで加工され、実験的には、家庭用ミキサーやカッター、ラボ用粉砕器やミキサーやカッター、バイオミキサー、ロールミル、乳鉢、抄紙用PFI叩解機などがある。そして、これを液体に投入し、必要に応じ分散剤を用いて、ナノファイバー液体分散体を得る。さらに、ナノファイバーを構成するポリマーと親和性の高い分散液を用いると、ナノファイバー集合体の直径を300nm以下、さらには単繊維レベルまで分散させることも可能である。そして、これら分散体を抄紙することによって単繊維分散したナノファイバー紙を得ることができる。また、分散体を他の基材上にキャストして分散液を蒸発させることにより他の基材上でナノファイバーの集合体を形成することも可能である。 本発明で用いるナノファイバーは材料、成型品の使い勝手に応じて、糸(いと)、綿(わた)、布帛などの任意の形状に加工することができる。ここで、糸とはナノファイバーを含む1次元構造体のことを言い、より具体的には長繊維、短繊維、紡績糸のことを言う。また、綿とは短繊維に捲縮を施し、開繊させた物のことを言う。布帛としては、織編物やパイル布帛あるいは不織布、紙など多様な形態を採ることができる。細胞足場材料としては不織布、紙形状、織編物形状あるいは他の成型基材上にナノファイバーの構造体が形成されていることが好ましい。例えば、生体内に移植して組織や骨などに対して形状追従性を付与するためには織編物とすることが好ましく、培養の足場として形状の安定性を向上させるためには織物や不織布、紙とすることが好ましい。また、これら布帛を厚くし、細胞培養時や組織移植時の操作性を向上させるには不織布とすることが好ましい。また、ナノファイバーをなるべく単繊維分散させ、培養あるいは組織再生の際の細胞分散性などを向上させるためには、湿式抄紙などにより紙とすることが好ましい。また、培養や組織再生の足場として形状の安定性を保ったり、形状の成型性を向上させたりするには、ナノファイバーの分散体を他の基材上にキャストあるいは基材を分散液中で含浸させた後、分散液を蒸発させることにより他の基材上でナノファイバーの集合体、構造体を形成させることが好ましい。 また、本発明の細胞足場材料に用いる糸、綿、布帛はナノファイバーのみから構成されていても良いが、形態安定性や嵩高性、成型性を確保するため、単繊維直径が1〜50μmの繊維が混用されていても良いし、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、セルロース、ポリスルホンなどの板状、フィルム形状、ディシュ形状、ウェル形状、中空糸形状、多孔形状など一定の形状に成型可能なプラスチック材料と複合化しても良い。このような混用、複合品中のナノファイバーの存在形態は、混繊、カバリング、合撚、混綿、混紗、積層、溶融混合、混練、コーティングなど多様な形態を採ることができる。特に、混綿、混紗、コーティングの時には、混用する繊維は単繊維直径が1〜5μmのマイクロファイバーとすることが、ナノファイバーとの馴染みの点から好ましい。 本発明の細胞足場材料は、ナノファイバーが他の基材上で集合体を形成していることが好ましい。 また、本発明に使用するナノファイバーは使用用途に応じて様々な前処理を行うことも可能である。前処理としては、加熱処理、酸やアルカリによる加水分解処理、熱水処理、グロー放電処理、電子線処理、加圧滅菌処理、ガス処理、蒸気処理、火炎処理、コーティング処理、グラフト重合処理、延伸処理などがあげられるがこれらに限定されない。特にポリマーを用いたコーティング処理あるいはグラフト重合処理はナノファイバーの性状を様々に変化させる上で重要であり、このような処理に用いられるポリマーとしては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、ポリアリルアミンなどのカチオン性ポリマー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などアニオン性ポリマーといったイオン性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースなどの親水性ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートなどの疎水性ポリマー、コラーゲン、フィブロネクチン、細胞外マトリックス、キチン、キトサンなどの生体ポリマーなどのポリマーがあげられるがこれらに限定されない。 本発明のナノファイバーにおいて、特に単繊維直径が200nm以下となると、比表面積が飛躍的に大きくなるだけでなく繊維間に無数の数nm〜数百nmの空隙を有するため、従来のマイクロファイバーでは見られなかったナノファイバー特有の優れた吸着・吸収特性を示すため、ナノファイバー上に機能性薬剤を吸着、担持することができる。ここでいう機能性薬剤とは材料としての繊維の機能を向上しうる物質全般を指す。例えば吸湿剤、保湿剤、撥水剤、保温剤もしくは平滑剤なども対象として用いることができる。その性状も、微粒子状のものだけに限られず、機能性ポリマー、アミノ酸、タンパク質、ビタミン類、ポリアミン、光触媒ナノ粒子等のポリマーや低分子物質、薬剤などが使用できる。特に、細胞培養や組織再生に対して有効な様々なタンパク質を表面に坦持することが細胞足場材料として有用である。 また、このナノファイバーの吸着・吸収特性は単に機能性薬剤を担持できることを意味するだけでなく、それらの徐放性にも優れている。ここでいう徐放とは一度ナノファイバー表面に吸着した物質が長期間にわたり徐々に周りの環境に放出される性質を指す。このため、機能性分子、機能性薬剤、タンパクの優れた徐放性基材としてドラッグデリバリーシステム等にも応用可能できることを意味している。 これらの特性のため、ナノファイバーは機能性薬剤、特にタンパクの吸着・徐放あるいは培養液、培養液成分を吸収・放出しやすくなり、細胞培養や組織再生の足場として有効に利用することができる。 吸着・吸収特性をさらに活かすためには、タンパクなどの機能性薬剤の吸着性に優れ、かつナノファイバーとしての成型性に優れたナノファイバーとしてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族官能基をもつようなポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンといった疎水性熱可塑性ポリマーから作製したナノファイバーを使用することが好ましい。また、タンパクなどの機能性薬剤の徐放性に優れ、かつナノファイバーとしての成型性に優れたナノファイバーとしてナイロンなどのポリアミドや、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーから作製したナノファイバーを使用することが好ましい。 また、ナノファイバーとしてイオン性のポリマーあるいはイオン性の官能基を表面に持つようなポリマーを使用すれば静電相互作用により機能性薬剤を吸着させることも可能である。また、同様にイオン性のポリマーあるいはイオン性の官能基を表面に持つようなポリマーをナノファイバー表面にコーティングした後、静電相互作用により機能性薬剤を吸着させても良い。逆に、静電相互作用による吸着を防ぎたい場合はカウンターイオンをもつような物質あるいはポリマーを使用してブロッキングを行うことにより表面からナノファイバー表面からイオン性を無くし、静電相互作用による吸着を防ぐこともできる。 また、ナノファイバー表面の官能基に直接、機能性薬剤を共有結合により結合することも可能である。このような官能基としてカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、ピリジルジスルフィド基、イソシアネート基、フェニルアジド基、ジアゾカルベン基、ヒドラジン基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、イミドエステル基、ニトロアリールハライド基、イミダゾリルカルバミン酸基、マレイミド基、チオフタルイミド基、活性化ハロゲン基、このような官能基をナノファイバー表面に導入するためにはそのような官能基を持つポリマーや分子をナノファイバー作製時の原料として使用しても良いし、市販の二種類の違った官能基と反応する活性基をもつ架橋剤を使用してナノファイバー表面に官能基を導入しても良い。また、ビオチン基、アビジン基、ストレプトアビジン、ポリヒスチジンなどの結合性をもつ官能基を導入しても良い。 本発明では、特に、タンパクの吸着、徐放性能のバランス、生体適合性、ナノファィバーとしての成型性からナイロン、ポリウレタン、ポリ乳酸などのポリマーからなるナノファイバーを使用することがより好ましい。 また、細胞培養、組織再生用の足場材料や埋め込み型の医療材料として使用する際には細胞培養液あるいは体液、血液が単繊維間に坦持され、その保持性能が従来のマイクロファイバーに比べ飛躍的に向上し、多量の液体を坦持できるだけでなく、ナノファイバー束からこぼれにくいという、培養や移植の際の操作性に対して好ましい性質を示すようになる。このように培養液や体液、血液を含浸させるにはナイロンなどのポリアミドなどの親水性ポリマーからなるナノファイバーを含むことが好ましい。 機能性薬剤の担持方法にも特に制限はなく、溶液中での吸着処理やコーティング等により後加工でナノファイバーに担持させても良いし、ナノファイバーの前駆体であるポリマーアロイ繊維に含有させておいても良い。また、機能性薬剤はそのものを直接ナノファイバー集合体に担持させても良いし、機能性薬剤の前駆体物質をナノファイバーに担持させた後、その前駆体物質を所望の機能性薬剤に変換することもできる。後者の方法のより具体的な例としては、ナノファイバー集合体に有機モノマーを含浸させ、その後それを重合する方法や、易溶解性物質を浴中処理によりナノファイバー集合体に含浸させた後、酸化還元反応や配位子置換、カウンターイオン交換反応、酵素反応、光化学反応、加水分解反応などにより難溶解性にする方法や活性化体に構造を変換させる方法などがある。また、紡糸過程で機能性薬剤の前駆体を担持させる場合には、紡糸過程では耐熱性の高い分子構造にしておき、後加工により機能性が発現する分子構造に戻すという方法も採用可能である。 上記のナノファイバー集合体繊維表面は、細胞付着や細胞成長、増殖、分化誘導、活性化にとって自然な基質ではない場合がある。このため、ナノファイバーの集合体を細胞培養の足場または組織再生の足場といった細胞足場材料とするにはバインダーとしての別の生物分解性ポリマーや親水性ポリマーなどを被覆されるか、部分アルカリ加水分解によって処理されて表面が加水分解された繊維への血清タンパク質の吸着が改質されることによって、細胞付着と接種密度を向上させることもできる。特に、繊維表面に、細胞付着、細胞増殖および分化、活性化など細胞の機能発現に必要な機能タンパクを吸着させることが有効である。 本発明の細胞足場材料では、ナノファイバーにタンパクを吸着したことが好ましい。さらに、本発明の細胞足場材料では、吸着するタンパクがサイトカインから選ばれる1種類以上であることが好ましい。 上記で吸着させる細胞付着、細胞増殖および細胞機能にとって重要な機能タンパクとしてサイトカインがあげられる。サイトカインとは極微量で細胞表面の特異的レセプターを介して生理活性を示すタンパクの指し、免疫の調節や炎症反応の調節、ウィルス感染細胞や腫瘍細胞の障害や死、細胞の増殖や分化を担うタンパクの総称を指す。サイトカインにはインターロイキン、増殖因子、ケモカイン、腫瘍壊死因子、インターフェロンなどが含まれる。具体的にはインシュリン、IGF(インシュリン様成長因子)−I、IGF−II、EGF(上皮成長因子)、TGF(トランスフォーミング成長因子)−α、TGF−β1、TGF−β2、FGF(繊維芽細胞成長因子)−1、FGF−2、FGF−3、FGF−4、FGF−5、FGF−6、FGF−7、FGF−8、FGF−9、FGF−10、FGF−11、FGF−12、FGF−13、FGF−14、FGF−15、FGF−16、FGF−17、FGF−18、FGF−19、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、NGF(神経成長因子)、IL(インターロイキン)−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、GM−CSF、G−CSF,M−CSF、SCF(幹細胞因子)、FL(flt−3リガンド)、EPO(エリスロポエチン)、TPO(トロンボポエチン)、OSM、LIF、アクチビン、インヒビン、BMP(骨形成タンパク質)、PDGF、HGF、TNF(腫瘍壊死因子)−α、TNF−β、Fas−L(Fasリガンド)、CD40リガンド、MIP、MCP、IFN(インターフェロン)α、IFNβ、IFNγ、GDNFなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、サイトカイン以外にも細胞に影響を及ぼすタンパクとしてノッチリガンド(デルタ1〜3、ジャギド/セレート1,2)、あるいは抗CD3抗体や抗CD28抗体などの刺激抗体あるいはT細胞レセプター(TCR)、Wnt分泌蛋白、Tieレセプターなどが挙げられこれらも使用できる。 また、このようなサイトカイン以外に細胞培養、組織再生に有効なタンパク質として細胞外マトリックス、接着因子とよばれる細胞の接着にかかわるタンパクがあり、このようなタンパクをナノファイバー上に吸着させることも細胞培養、組織再生の点から有効である。細胞外マトリックスとは細胞が合成し、細胞外に分泌・蓄積した生体高分子の複雑な会合体を指す。すなわち、細胞周辺に沈着した組織の構造支持体に該当し、細胞接着や細胞骨格の配向、細胞の形、細胞移動、細胞増殖、細胞内代謝、細胞分化を細胞から調整する。このような物質として例えば、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、グリコサミノグリカン(ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸など)、ヘパリン、キチン、キトサンなどがあげられる。また、接着因子とは細胞表面に存在し細胞−細胞間および細胞−細胞外マトリックスの接着に関わる因子を指し、細胞−細胞間接着に関わる因子としてカドヘリンファミリー、Igスーパーファミリー、セレクチンファミリー、シアロムチンファミリーなどがあげられ、細胞−細胞外マトリックス間の結合に関わる因子としてインテグリンファミリーがあげられる。また人工的に合成されたペプチドや細胞外マトリックス、遺伝子組み換えタンパク質として三洋化成工業製“プロネクチンF”、“プロネクチンL”、宝酒造製”レトロネクチン”などがあげられる。 上記のようにナノファィバーにタンパクを吸着させる際には効率良く大量のタンパク質が吸着されることが好ましく、このため細胞足場材料として、ナノファイバー1mgを100μg/mLの濃度のタンパク溶液1mLに浸漬してタンパクを吸着させた際、該溶液中のタンパクの80%以上を吸着可能なことが好ましい。 また、細胞足場材料として一度吸着したタンパクが徐放されることが好ましい。上記のような方法でナノファイバー表面に吸着されたタンパクや機能性薬剤は、吸着後長期間にわたって徐放される。放出される量、徐放される期間はナノファイバーの表面の性質、吸着したタンパクの量やタンパク自体の性質及びpH、温度、塩濃度など徐放される環境によって左右される。例えば、疎水性相互作用によって吸着されているタンパクについてはナノファイバー表面が親水性であるほど放出されやすくなるため、親水性ポリマーをナノファイバーの素材として使用することが好ましい。この他にナノファイバー表面を親水性にするためには、例えばナノファイバー表面を塩酸あるいは水酸化ナトリウムなどで加水分解する、親水性のポリマーでコーティングするなどの方法をとることができる。また、ナノファイバー表面に吸着したタンパクを溶液中に徐放させる際に、徐放される環境すなわち溶液中に高分子量のタンパクといった高吸着性の物質を添加することにより、タンパクの放出量を増加させることができる。このような目的で溶液中に添加する高吸着性物質としてアルブミン、血清タンパク、乳タンパク、スキムミルク、脂質などがあげられ、添加量を調整することにより、タンパクの放出量及び徐放期間を調整することが可能となる。また、ナノファイバーの素材としてポリ乳酸などの分解性のポリマーを利用することにより、ポリマー自体の分解に伴い吸着したタンパクを徐放させることも可能である。またゼラチンなどの分解性の物質をナノファイバー表面に担持した後ここにタンパクを吸着させ徐放させることも可能である。 細胞足場材料としては、一度吸着したタンパクの1%以上が24時間以内で徐放され、該徐放が1週間以上継続することが好ましい。 また、本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料は細胞培養用あるいは組織再生用に使用される成型体として使用されることが好ましい。 本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料は、例えば、生体内外での造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系肝細胞、中胚葉系幹細胞、ES細胞、免疫系細胞、血球系細胞、神経細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、肝細胞、膵β細胞、心筋細胞、骨髄細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞あるいはNIH3T3細胞、Hela細胞、COS細胞、HEK細胞、L929細胞、Daudi細胞、Jurkat細胞、KG−1a細胞、CTLL−2細胞などの株化細胞あるいは、抗体産生細胞である各種ハイブリドーマ細胞株などの細胞培養に使用する足場材料用の成型体の一部あるいは全部や細胞培養用のバッグの一部あるいは全部、神経、心臓、血管、軟骨、皮膚、角膜、腎臓、肝臓、毛髪、心筋、筋肉、腱などの組織再生及び移植用組織形成に使用する足場材料用の成型体の一部あるいは全部、あるいは動脈瘤コイル、塞栓物質、人工神経、人工粘膜、人工食道、人工気管、人工血管、人工弁、人工胸壁、人工心膜、人工心筋、人工横隔膜、人工腹膜、人工靱帯、人工腱、人工角膜、人工皮膚、人工関節、人工関節、人工軟骨、歯科材料、眼内レンズなどの生体内埋め込み用医療成型体の一部あるいは全部、外科用縫合糸、外科用補填材、外科用補強材、創傷保護材、骨折接合材、カテーテル、シリンジ、輸液・血液バッグ、血液フィルター、体外循環用材料などの医療行為に使用する成型体の一部あるいは全部、その他コンタクトレンズ、眼内レンズなどの材料、成型体の一部あるいは全部として使用することができる。ナノファイバーとして使用するポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸は皮膚や歯周組織、顎骨などの組織再生・修復用の足場やテンプレートとしての細胞足場材料として使用されている。また、ナイロンは手術用の縫合糸などとして細胞や組織、体液、血液に接する部分の材料として使用されている。また、PMMAは人工腎臓やコンタクトレンズの材料として使用されている。このため、これらポリマーは細胞足場材料として使用するナノファイバーの素材として好適であると言える。 上記した用途の大部分は、エレクトロスピニングにより製造されたナノファイバー不織布では強度や形態安定性が不足する、大きさ(広さ)そのものが足りないなどで展開不能の分野であるが、上記したようなポリマーアロイ溶融紡糸法を用いたナノファイバー集合体により強度や形態安定性などの面から初めて用途展開が可能となる。例えば、生体内埋め込み用の細胞足場材料は製品強度が要求されるため、本発明のナノファイバーのように優れた糸強度により達成されるものである。不織布構成では一般的に足場微細構造の制御性に欠ける恐れがあり、また細胞が入り込むような均一な気孔率を得ることは不可能である。さらに、不織布を使用した足場は、一般に、機械的構造が脆弱である。構造的安定性を確保するためには、特定の結合材料または裏地材料が必要とされる場合があるが、本特許のポリマーアロイ溶融紡糸で作製したナノファイバーは、紡織技術あるいは他の材料との複合化技術を用いて整然かつ規則正しい構造の足場を実現する方法を提供でき、様々な設計パターンの三次元足場に形成され、様々な気孔率、あるいは細胞培養や組織再生に最適な生体内の骨髄内あるいは間質層といった環境を模倣した微細構造および表面改質繊維を用いることによりサイトカインなどの機能リガンドの微細分布が実現できる。 本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料を成型体とし培養の足場として細胞培養および組織培養を行う場合、培地としてMEM培地、DMEM培地、αMEM培地,WE培地、F12培地、RPMI1640培地、L−15培地、MCDB153培地、BME培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、StemSpan培地、StemPro培地、HybridomaSFM培地、及びこれらの混合物などが細胞培養用の培養液としてあげられるが、これらに限定されない。また、これら培養液中にウシ血清、ウシ胎児血清、ウマ血清、ヒト血清などの血清、血漿成分あるいはインターロイキン、インターフェロン、インシュリン、トランスフェリン、セレン、メルカプトエタノールなどのサイトカインや添加物を添加しても良い。培養を行う際には、5%CO2インキュベーター内で培養したり、気体透過性バッグ内で培養したり、本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料が組み込まれたカラムを使用したり、あるいは細胞懸濁液の入ったリザーバー、市販の人工肺などを利用した酸素負荷装置、培地を交換するための透析カラムなどをラインに組み込んだような灌流培養システムを利用して細胞を培養することもできる。 また、これらの培養液及び添加物を予めナノファイバーを含む細胞足場材料に含浸させておき、そのなかに細胞を添加して細胞を培養することも可能である。このような方法をとることより培養した細胞の操作性が向上する。ナノファイバーが他の基材上で集合体を形成させる際には、他の基材の形状が細胞培養用器具として使用される形状であることが好ましい。本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料は、実際の医療行為以外にも医療につながる研究を目的とした用途にも使用することが出来る。例えば細部培養や組織培養を検討するための細胞培養、組織培養用のフラスコ、シャーレ、ウェル、プレート、多穴ウェル、多穴プレート、スライド、フィルム、バック、カラム、タンク、ボトル、中空糸、不織布など細胞培養用器具として使用される形状の基材上に本発明で得られるナノファイバーの集合体を形成して使用することも可能である。 本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料は幹細胞移植等に使用する移植用細胞の製造方法にも使用できる、例えば近年、白血病などの重い血液疾患に対して骨髄移植の代わりに特に臍帯血を供給源として用いた造血幹細胞移植が行われている。臍帯血を用いた移植は、主に急性リンパ性白血病(ALL)や急性骨髄性白血病(AML)、再生不良性貧血、先天性免疫不全症、先天性代謝異常疾患などの治療に用いられており、骨髄移植や末梢血幹細胞移植に比べて移植後の移植片対宿主病(GVHD)が軽くまた、増殖能力が旺盛であるため骨髄移植時に使用される細胞数の10分の1程度の細胞数でも移植が可能となる。臍帯血に含まれる幹細胞の総細胞絶対数は少なく成人における造血幹細胞の生着に必要な細胞数が確保されず、これまで移植は主に小児に対して行われていた。例えば、本発明の材料を用いて、臍帯血中の造血幹細胞及び前駆細胞を未分化維持しつつ増殖させることにより成人への幹細胞移植などの適応拡大や生着不全の回避、造血回復の促進、輸血量の軽減、複数の患者への移植、患者の入院期間の短縮やより安全な移植を実現することができる。この他にも癌免疫治療に使用するヘルパーT細胞、キラーT細胞、樹状細胞などの移植用細胞の培養にも使用できる。このように幹細胞あるいは免疫細胞を培養するためには細胞を細胞増殖あるいは細胞分裂するような機能を誘発するサイトカインを本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料に吸着・徐放させることが好ましい。 また、本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料を細胞培養用の足場材料成型体として用いることにより、様々な疾病や疾患に対して有効な細胞を培養することにより細胞製剤を製造することも可能である。細胞製剤とは組織や細胞を加工した医薬品や医療用具を指し、細胞製剤の製造方法とは細胞の分離、細胞の増殖、細胞への刺激、細胞への分化誘導、細胞のアポトーシス誘導など細胞を細胞製剤として疾病や疾患に対して有効な形態に加工するためのあらゆる行程を含んでいる。細胞製剤を製造するには、まず細胞群の供給源となる組織や体液などを採取する。これら細胞群の供給源はヒト由来のものが好ましいがこれに限定されない。このような細胞群の供給源として末梢血、臍帯血、骨髄液、羊膜組織、胎盤組織、生殖巣、G−CSF動員末梢血、胎児組織などがあげられるがこれらに限定されない。供給源として特に体液などを使用するときは、予め培養前に遠心法、単位重力沈降法、遠心選別法などで細胞培養に余分な成分を排除した均一な細胞群を得ることが一般的である。また、さらに培養前にフローサイトメトリー、磁気ビーズ法、アフィニティーカラム法など細胞分離の方法を用いて移植目的とする細胞の純度が高い細胞群にしておくことが好ましい。このような様々な加工を行った後、本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料および足場材料成型体を用いて上記の方法などにより細胞培養、組織再生を行うことにより、細胞製剤として必要な細胞を純度高く得ることができる。また、本発明のナノファイバーを含む細胞足場材料を用いて細胞を培養した後に再度細胞分離を行うことは細胞製剤の製造方法として好ましい。この製造方法により目的とする有用な細胞を高純度で大量に得ることができ、効果の優れた細胞製剤を製造することができる。 以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例に用いるナノファイバーの製造方法を以下の参考例に示した。 (参考例1)[N6製ナノファイバー水分散体の作製方法] 溶融粘度53Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のN6(20重量%)と溶融粘度310Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(80重量%)を2軸押し出し混練機により260℃で混練してb*値=4のポリマーアロイチップを得た。なお、この共重合PETの262℃、1216sec−1での溶融粘度は180Pa・sであった。このときの混練条件は以下のとおりであった。 スクリュー型式 同方向完全噛合型 2条ネジ スクリュー 直径37mm、有効長さ1670mm、L/D=45.1 混練部長さはスクリュー有効長さの28% 混練部はスクリュー有効長さの1/3より吐出側に位置させた。 途中3個所のバックフロー部有り 高分子供給 N6と共重合PETを別々に計量し、別々に混練機に供給した。 温度 260℃ ベント 2個所 このポリマーアロイを275℃で溶融し、紡糸温度280℃のスピンブロックに導いた。そして、限界濾過径15μmの金属不織布で高分子アロイ溶融体を濾過した後、口金面温度262℃とした口金から溶融紡糸した。この時、口金としては吐出孔上部に直径0.3mmの計量部を備えた、吐出孔径が0.7mm、吐出孔長が1.75mmのものを用いた。そして、この時の単孔あたりの吐出量は2.9g/分とした。さらに、口金下面から冷却開始点までの距離は9cmであった。吐出された糸条は20℃の冷却風で1mにわたって冷却固化され、口金5から1.8m下方に設置した給油ガイドで給油された後、非加熱の第1引取ローラーおよび第2引取ローラーを介して900m/分で巻取られた。この時の紡糸性は良好であり、24時間の連続紡糸の間の糸切れはゼロであった。そして、これを第1ホットローラーの温度を98℃、第2ホットローラーの温度を130℃として延伸熱処理した。この時、第1ホットローラーと第2ホットローラー間の延伸倍率を3.2倍とした。 得られたポリマーアロイ繊維は120dtex、12フィラメント、強度4.0cN/dtex、伸度35%、U%=1.7%の細胞足場材料の原材料として優れた特性を示した。また、得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、N6が島成分、共重合PETが海成分の海島構造を示し、島成分N6の直径は53nmであり、N6が超微分散化したポリマーアロイ繊維が得られた。この「ポリマーアロイ繊維」を約1万dtexまでカセ取りした。そして、98℃、10%水酸化ナトリウムで1時間処理し、海成分のポリエステル成分を除去しN6ナノファイバー集合体からなるカセを得た。そして、これをギロチンカッターで繊維長2mmにカットし、N6ナノファイバー短繊維を得た。これからN6ナノファイバーをサンプリングし、繊維横断面をTEM観察したところN6ナノファイバーの数平均による単繊維径は60nmであった。また、単繊維直径が100nm以上の単繊維の繊維比率は0%であった。そして、このN6ナノファイバー短繊維をナイアガラビータで1次叩解した。この繊維を遠心分離器で水分を除去し、繊維濃度が10%の1次叩解繊維を得た。さらにこの1次叩解繊維をPFI叩解装置で2次叩解した後、脱水しナノファイバーの10%濃度のN6ナノファイバー・パルプを得た。 さらに、この10%濃度N6ナノファイバー・パルプ5.5gと0.55gのアニオン系分散剤(第一工業製薬社製「シャロールAN−103P」)を水と共に離解機に入れ5分間分散させた。該離解機中の分散液にさらに水を追加した後、ラボミキサーに500ml取り、(1)ラボミキサーで6000rpm、30分間分散し、(2)50メッシュのステンレス金網で濾過した溶液を得た。(3)ステンレス金網上のナノファイバーを水に戻しさらに(1)(2)の操作を3回繰り返し、約0.01wt%濃度のナノファイバー水分散体を得た。 参考例2[PBTナノファイバー水分散体] 溶融粘度120Pa・s(262℃、121.6sec−1)、融点225℃のPBTと2−エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレン(PS)を、PBTの含有率を25重量%とし、混練温度を240℃として参考例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。この時、共重合PSの262℃、121.6sec−1での溶融粘度は140Pa・s、245℃、1216sec−1での溶融粘度は60Pa・sであった。 これを溶融温度260℃、紡糸温度260℃(口金面温度245℃)、紡糸速度1200m/分で参考例1と同様に溶融紡糸を行った。この時、口金として参考例1で用いたものと同様の紡糸口金を使用した。紡糸性は良好であり、1tの紡糸で糸切れは1回であった。この時の単孔吐出量は1.0g/分とした。得られた未延伸糸を参考例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は161dtex、36フィラメントであり、強度1.4cN/dtex、伸度33%、U%=2.0%であり細胞足場材料の原材料として優れた特性を示した。 得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、共重合PSが海(薄い部分)、PBTが島(濃い部分)の海島構造を示し、PBTの数平均による直径は70nmであり、PBTがナノサイズで均一分散化したポリマーアロイ繊維が得られた。該ポリマーアロイ繊維を使用して参考例1と同様の方法でノニオン系分散剤(第一工業製薬社製「ノイゲンEA−87」)を用いて0.01wt%のPBTナノファイバー水分散体を得た。なお、脱海処理はトリクロロエチレンで処理することで海ポリマーの99%以上を溶出した。このPBTナノファイバーの数平均による単繊維径は85nmであった。 参考例3[N6ナノファイバー不織布] 参考例1のN6と重量平均分子量12万、溶融粘度30Pa・s(240℃、2432sec−1)、融点170℃のポリL乳酸(光学純度99.5%以上)を用い、N6の含有率を20重量%とし、混練温度を220℃として参考例1と同様に溶融混練してポリマーアロイチップを得た。これを溶融温度230℃、紡糸温度230℃(口金面温度215℃)、紡糸速度3500m/分で参考例1と同様に溶融紡糸を行った高配向未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率1.39倍、熱セット温度130℃として延伸熱処理した。得られた延伸糸は67dtex、36フィラメントであり、強度3.6cN/dtex、伸度40%、沸騰水収縮率9%、U%=0.7%であり細胞足場材料の原材料として優れた特性を示した。 得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、PLAが海、N6が島の海島構造を示し、島N6の数平均による直径は55nmであり、N6がナノサイズで均一分散化したポリマーアロイ繊維が得られた。 このポリマーアロイ繊維を合糸して10万dtexのトウとした後、機械捲縮を施し捲縮数15山/25mmの捲縮糸とした。これを繊維長51mmにカットし、カードで解繊した後クロスラップウェーバーでウェッブとした。次にニードルパンチを3000本/cm2施し、750g/m2の繊維絡合不織布とした。この不織布にポリビニルアルコールを付与した後、3%の水酸化ナトリウム水溶液(60℃、浴比1:100)でアルカリ処理を2時間施し、PLAの99%以上を加水分解除去した。なお、このナノファイバー構造体からナノファイバー集合体を抜き取り解析した結果、ナノファイバーの数平均による単繊維直径は55nmと従来にない細さであり、特に単繊維直径で55〜84nmの間に単繊維繊度比率は70%であり、単繊維繊度ばらつきはごく小さいものであった。 参考例4[N6マイクロファイバー不織布] 融点220℃のナイロン6(N6:60重量%)島成分に、ポリスチレン(PS)を海成分に用いて、特開昭53−106872号公報の記載のように海島成分複合糸し、延伸を行い生む島成分複合の延伸糸を得た。そして、このポリマーアロイ繊維を参考例2と同様に合糸して10万dtexのトウとした後、機械捲縮を施し捲縮数15山/25mmの捲縮糸とした。これを繊維長51mmにカットし、カードで解繊した後クロスラップウェーバーでウェッブとした。次にニードルパンチを3000本/cm2施し、750g/m2の繊維絡合不織布とした。この不織布にポリビニルアルコールを付与した後、トリクロロエチレン処理によりPSを99%以上除去して単繊維直径が約2μmのN6極細繊維の不織布を得た。これの繊維横断面をTEM観察したところ、極細繊維の単繊維直径は2.2μmであった。 参考例5[N6ナノファイバー編物] 参考例1で作製したポリマーアロイ繊維を用いて丸編みを作製し、これを3%の水酸化ナトリウム水溶液(95℃、浴比1:100)で2時間浸漬することでポリマーアロイ繊維中の共重合PETの99%以上を加水分解除去した。この結果得られた、N6単独糸からなる丸編みは、海ポリマーである共重合PETが除去されたにもかかわらず、丸編み形状を保っていた。また、この丸編みの目付は60g/m2であった。 このN6単独糸からなる丸編みから糸を引きだし、繊維側面をSEMにより観察したところ、この糸は1本の糸ではなく無数のナノファイバーが集合して全体としては無限に連続するナノファイバー束であることが分かった。また、このN6ナノファイバー束のナノファイバー同士の間隔は数nm〜数100nm程度であり、極めて微小な空隙が存在していた。さらにこれの繊維横断面をTEMによって観察した結果、このN6ナノファイバーは単繊維直径が数十nm程度であることがわかった。そして、ナノファイバーの数平均による単繊維直径は60nmと従来にない細さであった。また、単繊維直径が100nm以上の単繊維の繊維比率は0%であった。 実施例1[N6ナノファイバーを形成した細胞培養用ウェル上での細胞接着] 細胞培養用96ウェルプレートに参考例1のN6ナノファイバー水溶液を100μL添加した後、60℃の乾燥機中で乾燥してウェル上に細胞足場材料としてN6ナノファイバーの構造体を形成した細胞培養用ウェルを作製した。C2C12筋芽細胞を10%FBS(ウシ胎児血清)含有DMEM培地に懸濁し、1ウェルあたり2×105個播種した後、5%CO2インキュベーター中で1時間インキュベートした後、接着細胞数を確認したところ約1.5×105個(播種した細胞の約75%)の細胞が接着しているのが確認された。 比較例1[N6ナノファイバーを形成しない細胞培養用ウェル上での細胞接着] 実施例1においてナノファイバーをウェル上に形成させずにC2C12筋芽細胞の接着を確認したところ、接着細胞数は約0.2×105個(播種した細胞の約10%)の細胞が接着しているに過ぎなかった。 実施例2[PBTナノファイバーを形成した細胞培養用ウェル上での神経繊維の形成] 細胞培養用24ウェルプレートに参考例2のPBTナノファイバー水溶液を500μL添加した後、60℃の乾燥機中で乾燥してウェル上に細胞足場材料としてPBTナノファイバーの構造体を形成し、細胞培養用ウェルを作製した。このウェル上に0.01%コラーゲン水溶液を添加してコラーゲンをコートした後、PC12細胞を5%FBS、10%HS(ウシ血清)含むRPMI1640培地に懸濁し、1ウェルあたり1×105個播種した後、神経成長因子(NGF)を50ng/mLの濃度で添加し、5日間培養した。5日後に顕微鏡で観察を行ったところ、細胞の80%から神経繊維が伸展し、神経繊維の長さは平均約200μmであった。 比較例2[PBTナノファイバーを形成しない細胞培養用ウェル上での神経繊維の形成] 細胞培養用24ウェルプレートに直接0.01%コラーゲン水溶液を添加してコラーゲンをコートした後、実施例2と同様にPC12細胞を5%FBS、10%HS(ウシ血清)含むRPMI1640培地に懸濁し、1ウェルあたり1×105個播種した後、NGFを50ng/mLの濃度で添加し、5日間培養した。5日後に顕微鏡で観察を行ったところ、細胞の50%から神経繊維が伸展し、神経繊維の長さは平均約20μmであった。 実施例3[N6ナノファイバー不織布へのタンパクの吸着] 参考例3で作製したN6ナノファイバー不織布1mgを、血清アルブミン、フィブロネクチン、インシュリン、EGFをそれぞれ100μg/mLの濃度で含むPBS溶液1mLに浸漬し、37℃で一昼夜タンパクを吸着させた後、溶液中に残ったタンパク濃度をブラッドフォード法により検出し、不織布に吸着したタンパク量を検出した。その結果、平均して血清アルブミンは95%、フィブロネクチンは85%、インシュリンは90%、EGFは90%がN6ナノファイバー不織布に吸着されていた。 比較例3[N6マイクロファイバー不織布へのタンパク吸着] 参考例4で作製したN6マイクロファイバー不織布1mgを、血清アルブミン、フィブロネクチン、インシュリン、EGFをそれぞれ100μg/mL濃度で含むPBS溶液1mLに浸漬し、37℃で一昼夜タンパクを吸着させた後、溶液中に残ったタンパク濃度をブラッドフォード法により検出し、不織布に吸着したタンパク量を検出した。その結果平均して血清アルブミンは75%、フィブロネクチンは40%、インシュリンは2%、EGFは5%がN6マイクロファイバー不織布に吸着されていた。 実施例4[N6ナノファイバー不織布からのタンパクの徐放] 参考例3で作製したN6ナノファイバー不織布0.2mgを、インシュリンを1μg/mLの濃度で含むPBS溶液1mLに浸漬し、37℃で一昼夜インシュリンを吸着させた後、PBS溶液で3回洗浄を行った後、37℃の雰囲気下で5%BSAを含むPBS溶液1mLに浸漬して1週間毎日溶液を交換し、溶液中のインシュリン濃度をELISAにより測定した。その結果放出されたインシュリン濃度は、1日目は120ng/mL、2日目は100ng/mL、3日目は60ng/mL、4日目は50ng/mL、5日目は40ng/mL、6日目は40ng/mL、7日目は30ng/mLであった。 比較例4[N6マイクロファイバー不織布からのタンパクの徐放] 参考例4で作製したN6マイクロファイバー不織布0.2mgを、インシュリンを1μg/mLの濃度で含むPBS溶液1mLに浸漬し、37℃で一昼夜インシュリンを吸着させた後、PBS溶液で3回洗浄を行った後、37℃の雰囲気下で5%BSAを含むPBS溶液1mLに浸漬して毎日溶液を交換し、溶液中のインシュリン濃度をELISAにより測定した。その結果放出されたインシュリン濃度は、1日目は100ng/mL、2日目は10ng/mLであり、3日目以降は検出できなかった。 実施例4[タンパク吸着ナノファイバーを利用した培養] 参考例3で作製したN6ナノファイバー不織布0.1mgを、NGFを1μg/mLの濃度で含むPBS溶液0.5mLに浸漬し、37℃で一昼夜NGFを吸着させた後、PBS溶液で3回洗浄を行い、NGF吸着N6ナノファイバー不織布を作製した。 次ぎに、細胞培養用24ウェルプレート上に0.01%コラーゲン水溶液を添加してコラーゲンをコートした後、PC12細胞を5%FBS、10%HS含むRPMI1640培地に懸濁し、1ウェルあたり1×105個播種して細胞を接着させた後、培養液中に上記で作製したNGF吸着N6ナノファイバー不織布を添加し5日間培養した。5日後に顕微鏡で観察を行ったところ、細胞の60%から神経繊維が伸展した。 比較例4[タンパクを吸着しないナノファイバーを利用した培養] 実施例4においてNGFを含まないPBS溶液を使用して不織布を作製し、この不織布を実施例4と同様に培養液中に添加し、培養5日後に顕微鏡で観察を行ったところ、細胞から神経繊維の伸展は確認できなかった。 実施例5[N6ナノファイバー織物を使用したインプラント材料] 参考例3で作製したN6ナノファイバー織物を使用してモデル動物に対して移植実験を行うことにより、組織再生の有効性を確認した。参考例3で作製したN6ナノファイバー織物1cm×1cmを100μgのbFGFを含む1mLのリン酸緩衝液に37℃で一昼夜浸漬してbFGFをナノファイバー表面に吸着させた生体組織再生用材料を作製した。この生体組織再生用繊維材料を、ddYマウス(7週令、メス)の背部皮下に埋入し、1週間後にマウスを犠牲死させた。組織切片をヘマトキシリンエオジン染色し、顕微鏡観察をおこなったところbFGF含有ナノファイバー織物内に新生血管が均一に誘導されていることが確認された。 有機系ポリマーからなり数平均による単繊維径の直径が1〜200nmであるナノファイバーを含む細胞足場材料。 数平均による単繊維径の直径が1〜100nmである請求項1記載の細胞足場材料。 ナノファイバーが溶融紡糸から作製されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の細胞足場材料。 有機系ポリマーが熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞足場材料。 熱可塑性ポリマーがポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系高分子、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる一種であることを特徴とする請求項4記載の細胞足場材料。 熱可塑性ポリマーがナイロンあるいはポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項4あるいは5記載の細胞足場材料。 ナノファイバーが紙または不織布または織編物の形状に加工されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の細胞足場材料。 ナノファイバーどうしがバンドル構造を形成していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の細胞足場材料。 ナノファイバーが他の基材上で集合体を形成していることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の細胞足場材料。 他の基材の形状が細胞培養用器具として使用される形状であることを特徴とする請求項9記載の細胞足場材料。 ナノファイバー1mgを100μg/mLの濃度のタンパク溶液1mLに浸漬してタンパクを吸着させた際、該溶液中のタンパクの80%以上を吸着可能なことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の細胞足場材料。 ナノファイバーにタンパクを吸着したことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の細胞足場材料。 吸着するタンパクがサイトカインから選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項12に記載の細胞足場材料。 一度吸着したタンパクが徐放されることを特徴とする請求項12あるいは13に記載の細胞足場材料。 一度吸着したタンパクの1%以上が24時間以内で徐放され、該徐放が1週間以上継続することを特徴とする請求項14に記載の細胞足場材料。 請求項1〜15のいずれかに記載の細胞足場材料からなる細胞培養用あるいは組織再生用に使用される成型体。 【課題】 体外での細胞培養用足場や組織再生用の足場あるいは埋め込み型医療材などの成型体として実際に使用するのに十分に耐えられるようなナノファイバーを含む細胞足場材料、また、細胞の培養、組織の再生などに有効なタンパク質を簡単に吸着あるいは徐放することができるナノファイバーを含む細胞足場材料を提供する。【解決手段】 有機系ポリマーからなり数平均による単繊維径の直径が1〜200nmであるナノファイバーを含む細胞足場材料。【選択図】 なし