タイトル: | 公開特許公報(A)_藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法 |
出願番号: | 2005048767 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12P 21/02,C09B 61/00,C09B 67/54,C12R 1/89 |
福田 芳次 久保 開 安斉 秀之 関谷 亜紀子 JP 2006230272 公開特許公報(A) 20060907 2005048767 20050224 藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法 大日本インキ化学工業株式会社 000002886 河野 通洋 100124970 福田 芳次 久保 開 安斉 秀之 関谷 亜紀子 C12P 21/02 20060101AFI20060811BHJP C09B 61/00 20060101ALI20060811BHJP C09B 67/54 20060101ALI20060811BHJP C12R 1/89 20060101ALN20060811BHJP JPC12P21/02 AC09B61/00 ZC09B67/54 ZC12P21/02 AC12R1:89 10 OL 9 4B064 4B064AG01 4B064CA08 4B064CC15 4B064CE08 4B064DA10 本発明は、藍藻類に含まれるフィコシアニンを高純度で得る事ができる抽出方法に関する。 藍藻類、特にスピルリナには、青色を呈するフィコシアニンが含まれていることが知られており、従来から食品用着色料として利用するために種々のフィコシアニンの抽出方法が提案されてきた。 藍藻類に含まれるフィコシアニンを抽出する方法としては、例えば、藍藻類とリン酸緩衝液とを混合し、藍藻類中のフィコシアニンをリン酸緩衝液中に溶出させた後、残渣を除去する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該特許文献1に記載された抽出方法では交雑するカロチノイド等の色素の混入により純度が高いフィコシアニンを抽出するのが困難である。特開昭52−134058号公報 本発明の課題は藍藻類に含まれるフィコシアニンを高純度で得る事ができる抽出方法を提供する事にある。 本発明者らは鋭意検討した結果、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得た後、この抽出液中でカルシウム塩とリン酸塩とを反応させてリン酸カルシウムを生成させると共に該リン酸カルシウムにカロチノイド等のフィコシアニンの夾雑物を吸着させ、更にこの抽出液から藍藻類の残渣及び吸着物を除去することにより、純度の高いフィコシアニンを容易に抽出できる事等を見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る第一工程と、該抽出液中でカルシウム塩とリン酸塩とを反応させてリン酸カルシウムを生成させると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る第二工程と、該抽出液から藍藻類の残渣及び吸着物を除去する第三工程を含有することを特徴とする藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法を提供するものである。 本発明によれば藍藻類に含まれるフィコシアニンを高純度で得る事ができる抽出方法を提供できる。また、この抽出方法は容易であり工業的抽出方法として有用である。 本発明の第一工程は藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る工程である。この抽出液の調製に用いることのできる藍藻類は、スピルリナ(Spirulina)属、アファニゾメノン(Aphanizomenon)属、フィッシェレラ(Fisherella)属、アナベナ(Anabaena)属、ネンジュモ(Nostoc)属、シネコキスチス(Synechocystis)属、シネココッカス(Synechococcus)属、トリポスリクス(Tolypothrix)属、スイゼンジノリ(Aphanothece)属、マスティゴクラディス(Mastigoclaus)属、プルロカプサ(Pleurocapsa)属等が挙げられるが、工業的規模で生産され、その安全性が確認されているスピルリナに属するものが望ましい。 本発明で用いる藍藻類としては、生の藍藻類や、乾燥処理した藍藻類等が挙げられるが、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る工程においてフィコシアニンが抽出されやすいこと、抽出できるフィコシアニンの量も安定していることから乾燥処理した藍藻類が好ましい。 生の藍藻類は、例えば、水中で培養された藻を遠心分離、濾過等の方法により収穫され、通常水分を70〜90重量%含有している。藍藻類は、通常水中で自然光、又は人工光により培養されるが、光が照射され光合成を行っている状態の藍藻を収穫するのが好ましい。特に自然光下の屋外培養槽で培養されている藍藻においては、夜間若しくは光照射が始まった直後に収穫された藍藻よりは、光合成が継続して行われ、水温も上昇してくる午前10時以降から日没までに収穫された藍藻がより好ましい。 乾燥処理した藍藻類としては、例えば、前記の方法で培養した生の藍藻類を、凍結乾燥処理したものや、スプレー乾燥処理したもの等が挙げられる。 本発明の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法は第一工程で抽出液を得て、第二工程で該抽出液中でカルシウム塩とリン酸塩とを反応させてリン酸カルシウムを得ると共に、該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ、吸着物を得る。第二工程でこの様な操作を行うには、例えば、第一工程と第二工程を下記の通りそれぞれ行えば良い。1.前記第一工程が藍藻類とカルシウム塩とを含有する水懸濁液を調製し、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る工程で、第二工程が前記抽出液にリン酸塩を添加してリン酸カルシウムを得ると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る工程。2.前記第一工程が藍藻類とリン酸塩とを含有する水懸濁液を調製し、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る工程で、第二工程が前記抽出液にカルシウム塩を添加してリン酸カルシウムを得ると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る工程。3.前記第一工程で藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得て、第二工程で前記抽出液にリン酸塩とカルシウム塩を添加してリン酸カルシウムを得ると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る工程。 尚、本発明では、前記第一工程が藍藻類とカルシウム塩とリン酸塩とを含有する水懸濁液を調製し、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る工程で、そのまま第二工程へ進み、前記抽出液でリン酸カルシウムを得ると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得ることもできる。また、前記3.第一工程で、カルシウム塩および/またはリン酸塩を添加しても良い。本発明の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法では、前記1.の方法のように第一工程として藍藻類とカルシウム塩とを含有する水懸濁液を調製し、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る工程をとることにより、藍藻類中のフィコシアニンの抽出時間が短縮化でき、フィコシアニンの夾雑物、特にカロチノイドの溶出が少ない抽出液を得られることから好ましい。以下の第一工程と第二工程の説明は1.の方法を前提として行う。 第一工程で抽出液を得る方法としては、例えば、藍藻類とカルシウム塩を含有する水懸濁液を調製し、この抽出液を0〜40℃に保持して藍藻類中のフィコシアニンを抽出させる方法等が挙げられる。 前記水懸濁液を得るには、例えば、第1法.藍藻類を懸濁した水溶液にカルシウム塩を加える、第2法.カルシウム塩の水溶液に藍藻類を加え懸濁する、等の方法が挙げられるが、第2法.の方法が好ましい。以下の懸濁液に関する説明は第2法.の方法を前提として行う。 本発明で用いるカルシウム塩の水溶液の調製に用いるカルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム等の水溶性のカルシウム塩が挙げられるが、中でも、塩化カルシウムが好ましい。 水懸濁液中のカルシウム塩の濃度は0.1〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましく、0.5〜3重量%が更に好ましい。 藍藻類をカルシウム塩の水溶液に懸濁し、水懸濁液を得る際は、藍藻分の濃度が、固形分換算で0.1〜20重量%となる範囲でカルシウム塩の水溶液に懸濁するのが好ましく、2〜8重量%となる範囲がより好ましい。 懸濁液の調製は、水懸濁液の温度が0〜40℃となる範囲で行うのが好ましく、0〜35℃がより好ましい。 藍藻類とカルシウム塩とを含有する水懸濁液を調製し、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させて抽出液を得る。フィコシアニンは静置する事により藍藻類から抽出してくるが、必要に応じて攪拌しても良い。抽出にかける時間は1〜48時間が好ましく、1〜20時間がより好ましい。 抽出液を得る際に水懸濁液に対して塩基性化合物の添加や超音波照射処理を行う事により藍藻類中のフィコシアニンを効率よく水懸濁液中に抽出することができる。塩基性化合物の添加と超音波照射処理を両方行っても良いし、どちらか片方のみを行っても良い。両方行う際には超音波照射を行った後に塩基性化合物を添加しても良いし、塩基性化合物を添加した後に超音波照射処理を行っても良いが、塩基性化合物を添加した後に超音波照射処理を行うのが好ましい。 塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ化合物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム等のアルカリ金属の酢酸塩等が挙げられる。 懸濁液に塩基性化合物を添加した後は、攪拌等により均質にするのが好ましい。懸濁液の温度は、0〜40℃の範囲が好ましく、15〜35℃の範囲がより好ましい。懸濁液へ塩基性化合物を添加した後は、更に攪拌または静置するのが、フィコシアニンが藍藻細胞から懸濁液と塩基性化合物の混合液中に移行しやすくなるので好ましい。攪拌、静置の時間は、10分間〜8時間で良く、2〜5時間が好ましい。 次に、超音波照射処理を行う事により、藍藻類に特徴的な細胞内構造であるガス胞を破壊し、ガス胞に由来する気泡の細胞外への排出と、藍藻のチラコイド膜上の会合体(フィコビリゾーム)として存在しているフィコシアニンを水相へ優先的に可溶化させる。この超音波処理により、細胞からのフィコシアニンの水相への移行を促進するとともに、分離工程での浮上性藻による分離不良を防止することが出来る。 超音波照射処理を行う際の照射方法は、藍藻類の細胞を破壊し、フィコシアニンの懸濁液中への移行を促進させることができれば制限はなく、バッチ式や連続式等が挙げられるが、なかでも、連続的に超音波を照射する連続式が好ましい。連続式の超音波照射処理装置としては、例えば、(株)日本精機製作所の生産用多連式超音波分散装置等が挙げられる。 超音波照射処理は、藍藻類からフィコシアニンの懸濁液への移行を促進できるような条件で行えば良いが、超音波照射により懸濁液に与えられる仕事量としては、懸濁液1リットルに対して、1〜300kJが好ましく、5〜200kJがより好ましく、10〜100kJが特に好ましい。 超音波照射処理の条件としては出力、周波数、照射時間等が挙げられる。超音波の周波数としては、10〜100kHzが好ましく、10〜50kHzがより好ましく、15〜30kHzが特に好ましい。超音波照射の出力は、50〜600Wが好ましく、100〜400Wがより好ましく、200〜400Wが特に好ましくい。前記仕事量を与える超音波照射処理を行うには、出力と照射時間とを適宜調整すればよいが、懸濁液1リットルを超音波処理する時には、例えば、周波数20kHzにおいて、出力が50Wの時は、20秒〜100分の照射時間が好ましく、2分〜70分がより好ましく、3分30秒〜35分が特に好ましい。出力が300Wの時は、3秒〜20分の照射時間が好ましく、20秒〜12分がより好ましく、30秒〜7分が特に好ましい。出力が500Wの時は、2秒〜10分の照射時間が好ましく、10秒〜7分がより好ましく、20秒〜4分が特に好ましい。 第一工程で得られたフィコシアニンの水抽出液に第二工程でリン酸塩を加える。リン酸塩は、固体のまま添加しても良いし、水溶液とした状態で添加しても良い。リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸ナトリウム;リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸カリウム;リン酸マグネシウム;リン酸二水素アンモニウム等の水溶性無機塩が挙げられるが、中でも、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムが好ましく、リン酸ナトリウムが特に好ましく、リン酸水素二ナトリウムが最も好ましい。 リン酸塩は、リン酸塩の濃度が抽出液中で1〜5重量%の濃度になるよう抽出液に添加するのが好ましく、2〜3重量%の濃度になるよう抽出液に添加するのがより好ましい。 前記抽出液にリン酸塩を添加する。抽出液にリン酸塩を添加すると、リン酸塩が、水抽出液中のカルシウム塩と反応し、リン酸カルシウムの沈殿を生じると共にフィコシアニン色素と夾雑しているクロロフィル等の夾雑物がリン酸カルシウムに吸着し吸着物を形成する。これによりフィコシアニン色素の純度を高くすることができる。該リン酸塩を添加した後は静置しても良いし、必要に応じて攪拌しても良い。カルシウムイオンと燐酸イオンの反応(吸着)にかける時間は2〜10時間が好ましく、3〜5時間がより好ましい。 リン酸塩と藍藻類とを吸着させて抽出液中で吸着物を得る際のpHは得られるフィコシアニンの量が多くなる事から4〜8が好ましく、5〜6がより好ましい。pHの調製は例えば、抽出液に塩基性化合物または酸性化合物を添加する事によって行う事ができる。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ化合物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム等のアルカリ金属の酢酸塩等が挙げられる。酸性化合物としては、例えば、クエン酸、塩酸、乳酸、酢酸、等が挙げられる。また、抽出液のpHは、あらかじめ水懸濁液に塩基性化合物または酸性化合物を添加しておくことで調整する事も出来る。このときの水懸濁液のpHは7〜6に調整しておくと、抽出液のpHが好ましい5〜6となる。 第三工程で第二工程終了後の抽出液から藍藻類の残渣及び前記吸着物を除去するが、第三工程より前に抽出液にキレート剤を含有させておくと、フィコシアニンの回収量を増やす事ができるので特に好ましい。これは、フィコシアニンにはフィコシアニンCとアロフィコシアニンがあり、アロフィコシアニンはリン酸カルシウムに吸着し、このリン酸カルシウムに吸着したアロフィコシアニンは次の第三工程でリン酸カルシウムと共に除去されてしまうが、第三工程より前にキレート剤を抽出液に含有させておくと、キレート剤がリン酸カルシウムに吸着し、それによりアロフィコシアニンがリン酸カルシウムから離れ、抽出液に残存するからであると発明者は考えている。 キレート剤を含有させるのは、第三工程より前に行えばよく、例えば、第一工程で藍藻類の水懸濁液に加えても良いし、調製した抽出液に加えても良いし、第二工程で吸着物を得る前に抽出液に加えても良いし、吸着物を得た後に加えても良い。本発明では、懸濁液調整時に加えるのが好ましい。 前記キレート剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩類;ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)等のアミノカーボネート類;ジヒドロキシエチルグリシン(DFG)、トリエタノールアミン(TEA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HEIDA),ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)等のヘドロキシアミノカーボネート類;カルボキシメチルタルトロン酸ナトリウム(CMT)、カルボキシメチルオキシコハク酸ナトリウム(CMOS)等のエーテルカルボン酸塩類等が挙げられる。中でもクエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムがより好ましい。 キレート剤の添加量は、塩化カルシウムの使用量を基準として5〜100重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。 第三工程で抽出液から藍藻類の残渣及び吸着物を除去する。これらを除去する手段としては、種々の方法が挙げられ、例えば、ろ紙やろ布等のろ材を用いたろ過方法や、沈殿から上澄を回収することにより行うデカンテーション法、遠心分離方法等が挙げられる。なかでも、遠心分離による分離が好ましい。 遠心分離は、抽出液から藍藻類の残渣及び吸着物を除去できる条件であれば良いが、重力加速度が1,000〜30,000Gで10秒〜2時間の遠心分離条件が好ましく、重力加速度が3,000〜10,000Gで1〜30分間の遠心分離条件が、より好ましい。遠心分離機としては、ディスラッジ型遠心分離機、アルファ型遠心分離機、シャープレス型遠心分離機があるが、作業性が向上することから、ディスラッジ型遠心分離機とアルファ型遠心分離機の組み合わせによる連続遠心分離が好ましい。 このようにして得られたフィコシアニンは、この状態で使用に供することも可能であるが、更に濃縮しても良い。濃縮方法としては、溶液に夾雑している低分子性色素、有機不純物、及び無機イオン含量を低下させ、精製度を向上することができるため、限外濾過による濃縮が好ましい。限外濾過に用いる限外濾過膜は、分画分子量が10,000〜30,000のものが好ましく、5000〜20,000のものがより好ましい。 本発明の抽出方法で得られるフィコシアニンは、糖類、塩類等、例えばグリセロール、クエン酸ナトリウム等を加えて安定化させ溶液状の色素液として提供可能であるし、さらに乾燥工程を経ることにより、乾燥粉末にすることもできる。乾燥方法は、フィコシアニンが変性劣化しない条件であれば何れでも良いが、熱風噴霧乾燥、凍結乾燥が特に好ましく用いられる。 本発明の抽出方法は、工業的に純度の高いフィコシアニンを大量生産できる方法であり、得られるフィコシアニンは、従来にない鮮やかな青色を有する色素である。 次に、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。例中において、「部」、「%」は、特にことわりのない限り、重量基準である。 実施例1 1%塩化カルシウム(無水)溶液10Lに屋外培養槽で生産したスピルリナ乾燥藻体(噴霧乾燥品)500gを加え、15分間のスターラー攪拌により均一懸濁液とした後、20℃15時間、静置条件下で藍藻類中のフィコシアニンを溶液中に抽出し抽出液を得た。この抽出液にリン酸二水素ナトリウム250gを添加し、0.5時間スターラー攪拌した後、20℃、静置下で2.5時間反応させ、リン酸カルシウムを生成させると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させて吸着物を得た。この後抽出液を遠心分離機に導き、重力加速度が10,000Gで、15分間の遠心分離を行い、藍藻類の残渣及び吸着物を抽出液から除去した。得られたフィコシアニンの抽出液は、分画分子量10,000の分離膜を使用した限外濾過により低分子成分及び塩類を除去した後、凍結乾燥を行い、フィコシアニン色素乾燥物46.6gを得た。これを、フィコシアニン色素1とする。 フィコシアニン色素1の0.1gを100mlの水に溶解したフィコシアニン色素液を調製し、下記に示す測定方法に従い吸光度と色調を測定した。吸光度と色調の測定結果を、藻類乾燥重量100gあたり得られた色素乾燥物の重量と共に、第1表に示す。(吸光度の測定) フィコシアニン色素液を水で10倍希釈し、618nm(フィコシアニンC型の吸収極大波長)、650nm(アロフィコシアニンの吸収極大波長)、280nm(タンパク質の吸収極大波長)及び446nm(βカロチンの極大吸収波長)における吸光度を測定した。波長618nmの吸光度(Aat618nm)と波長650nmの合計値が高いほど色素乾燥物中のフィコシアニン含有量が高いことを示す。波長280nmの吸光度(Aat280nm)の測定値が低いほど色素乾燥物中のタンパク質含有量が低く、純度の高いフィコシアニンが得られている事を示す。波長446nmの吸光度(Aat446nm)の測定値が低いほど色素乾燥物中のβカロチンの含有量が低く、純度の高いフィコシアニンが得られている事を示す。 Aat650nmとAat618nmとの比(Aat280nm/Aat618nm)は、色素乾燥物中のフィコシアニンC単位量当たりのアロフィコシアニン含有量を示し、この値が小さい程、アロフィコシアニンの含有量が少なく純度の高いフィコシアニンCが得られていることを示す。Aat446nmとAat618nmとの比(Aat446nm/Aat618nm)は、色素乾燥物中のフィコシアニンC単位量当たりのβカロチン含有量を示し、この値が小さい程、βカロチンの含有量が少なく純度の高いフィコシアニンCが得られていることを示す。Aat280nmとAat618nmとの比(Aat280nm/Aat618nm)は、色素乾燥物中のフィコシアニンC単位量当たりのタンパク質含有量を示し、この値が小さい程、タンパク質の含有量が少なく純度の高いフィコシアニンCが得られていることを示す。尚、吸光度の測定は、(株)島津製作所製のUV2200型を用いて行った。(色調の測定) 色調の測定には、波長618nmの吸光度が0.6になる様にフィコシアニン色素液を水で希釈したものを用いた。色調は、ハンター(Hunter)の表色法に従い、a値とb値とを測定し、これらの値から(a2+b2)1/2値算出した。b値は青色の強さを表し、−b値が大きいほど、青みが強いことを示す。(a2+b2)1/2は彩度を表し、この値が大きいほど、色合いが鮮やかであることを示す。尚、色調の測定は、日本電色工業(株)製SZ−Σ90型を用いて行った。 実施例2 1%塩化カルシウム(無水)溶液10Lの代わりに1%塩化カルシウム(無水)溶液10Lに50gクエン酸三ナトリウム結晶(食品添加物・和光純薬工業製・0.5%相当)を溶かした溶液5Lを用いた以外は実施例1と同様にしてフィコシアニン色素乾燥物62.5gを得た。これを、フィコシアニン色素2とする。実施例1と同様にして吸光度と色調の測定を行い、その結果を第1表に示す。 比較例1 0.01モル燐酸緩衝液・pH6.0(農芸化学実験書・京都大学編記載)溶液10Lにスピルリナ乾燥藻体(噴霧乾燥品)500gを加え、15分間のスターラー攪拌により均一懸濁液とした後、20℃15時間、静置条件下で藍藻類中のフィコシアニンを溶液中に抽出し抽出液を得た。この抽出液にリン酸二水素ナトリウム150gを添加し、0.5時間スターラー攪拌した後、20℃、静置下で2.5時間反応させた。この後遠心分離機に導き、重力加速度が10,000Gで、15分間の遠心分離を行った。得られたフィコシアニンの抽出液は、分画分子量10,000の分離膜を使用した限外濾過により低分子成分及び塩類を除去した後、凍結乾燥を行い、フィコシアニン色素乾燥物43.1gを得た。これを、フィコシアニン色素3とする。実施例1と同様にして吸光度と色調の測定を行い、その結果を第1表に示す。藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る第一工程と、該抽出液中でカルシウム塩とリン酸塩とを反応させてリン酸カルシウムを生成させると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る第二工程と、該抽出液から藍藻類の残渣及び吸着物を除去する第三工程を含有することを特徴とする藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記第一工程が藍藻類とカルシウム塩とを含有する水懸濁液を調製し、藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る工程で、第二工程が前記抽出液にリン酸塩を添加してリン酸カルシウムを得ると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る工程である請求項1記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記藍藻類が乾燥処理したスピルリナである請求項1記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記カルシウム塩が塩化カルシウムである請求項1記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記水懸濁液中の藍藻類の濃度が固形分換算で2〜8重量%で、カルシウム塩の濃度が0.1〜10重量%である請求項2記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記リン酸塩がリン酸水素二ナトリウムである請求項1記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記抽出液中のリン酸塩の濃度が1〜5重量%である請求項2記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記第三工程より前に、抽出液にキレート剤を含有させる請求項1〜7のいずれか1項記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記キレート剤が有機カルボン酸塩である請求項8記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。前記有機カルボン酸塩がクエン酸ナトリウムおよび/またはエチレンジアミン四酢酸ナトリウムである請求項9記載の藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。 【課題】 藍藻類に含まれるフィコシアニンを高純度で得る事ができる抽出方法を提供すること。【解決手段】 藍藻類中のフィコシアニンを水懸濁液中に抽出させた抽出液を得る第一工程と、該抽出液中でカルシウム塩とリン酸塩とを反応させてリン酸カルシウムを得ると共に該リン酸カルシウムにフィコシアニンの夾雑物を吸着させ吸着物を得る第二工程と、該抽出液から藍藻類の残渣及び吸着物を除去する第三工程を含有する藍藻類からのフィコシアニンの抽出方法。【選択図】 なし