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タイトル:公開特許公報(A)_機能性単分子膜の製造方法およびデバイスの製造方法
出願番号:2005038799
年次:2006
IPC分類:B01J 19/00,A47J 36/02,B82B 3/00,G01N 27/02


特許情報キャッシュ

野村 幸生 鶴田 邦弘 笹部 茂 JP 2006223957 公開特許公報(A) 20060831 2005038799 20050216 機能性単分子膜の製造方法およびデバイスの製造方法 松下電器産業株式会社 000005821 岩橋 文雄 100097445 坂口 智康 100103355 内藤 浩樹 100109667 野村 幸生 鶴田 邦弘 笹部 茂 B01J 19/00 20060101AFI20060804BHJP A47J 36/02 20060101ALI20060804BHJP B82B 3/00 20060101ALI20060804BHJP G01N 27/02 20060101ALI20060804BHJP JPB01J19/00 KA47J36/02 BB82B3/00G01N27/02 Z 20 1 OL 14 2G060 4B055 4G075 2G060AF06 2G060AF07 2G060AG05 2G060AG15 2G060EB03 2G060JA00 4B055AA01 4B055BA14 4B055BA52 4B055CA01 4B055FA01 4B055FB15 4B055FB23 4B055FB25 4B055FB32 4B055FC12 4B055FE01 4G075AA25 4G075AA30 4G075BB02 4G075CA02 4G075DA02 4G075EE12 4G075FA12 4G075FB02 4G075FB04 4G075FB06 4G075FB11 4G075FB12 4G075FC20 本発明は、機能性単分子膜の製造方法および調理機器などのデバイスの製造方法に関するものである。 従来から、単分子膜の製造方法はすでに知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、基板に固定化していない化合物は洗浄除去するのが一般的である。特開平6−327971号公報 しかしながら、前記従来の方法では、基板に固定化していない化合物を洗浄しても、基板から完全に取り除くことができず、単分子膜には化合物が残るという課題があった。このため、撥水、防汚に使用する場合、直鎖状フロオロアルキル基の末端のCF3基が表面に露出する割合が少なくなるため、撥水、防汚性がやや劣った。また、センサーとして使用する場合、センシング部の末端の共役基が表面に露出しにくいため、センシング性能が低下した。また、液晶の光配向膜に使用する場合、カルコニル基の光架橋反応が起こりにくくなるため、配向性が劣っていた。 本発明は、前記従来の課題を解決するもので、基板に固定化していない化合物を完全に除去できる機能性単分子膜の製造方法およびデバイスの製造方法を提供することを目的とするものである。 前記従来の課題を解決するために、本発明の機能性単分子膜の製造方法およびデバイスの製造方法は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含むものである。 これにより、基板に固定化していない化合物を完全に除去でき、その結果、機能性単分子膜は優れた特性を発揮するものである。 また、本発明の機能性単分子膜の製造方法およびデバイスの製造方法は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を含む溶液を基板に接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含むものである。 これにより、前記発明と同様に、基板に固定化していない化合物を完全に除去できるとともに、溶液を用いるので、例えば、ディップ、スプレー、ロールコート、印刷など簡単に機能性単分子膜を製造することができる。 本発明の機能性単分子膜の製造方法およびデバイスの製造方法は、基板に固定化していない化合物を完全に除去でき、その結果、機能性単分子膜は優れた特性を発揮する。 第1の発明は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含む機能性単分子膜の製造方法とすることにより、基板に固定化していない化合物を完全に除去でき、機能性の官能基が表面に露出し優れた特性を発揮する機能性単分子膜を製造することができる。 第2の発明は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を含む溶液を基板に接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含む機能性単分子膜の製造方法とすることにより、第1の発明と同様に、基板に固定化していない化合物を完全に除去できるとともに、溶液を用いるので、例えば、ディップ、スプレー、ロールコート、印刷など簡単に機能性単分子膜を製造することができる。 第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程が減圧吸引であることにより、基板に固定化していない化合物を、例えば、チャンバー内で減圧することで簡単に除去し、機能性単分子膜を製造できる。 第4の発明は、特に、第1または第2の発明において、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程が加熱であることにより、基板に固定化していない化合物を、例えば、電気炉内で乾燥することで簡単に除去し、機能性単分子膜を製造できる。 第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、基板表面に固定化する官能基がクロロシリル基であることにより、クロロシリル基が基板表面の表面水酸基と反応して、シロキサン結合を介して化合物が基板と化学結合し、過剰な化合物は反応せず、容易に除去できる。 第6の発明は、特に、第1または第2の発明において、基板表面に固定化する官能基がチオール基であることにより、チオール基が基板表面の金属原子と反応して、スルフィド結合を介して化合物が基板と化学結合し、過剰な化合物は反応せず、容易に除去できるのでよい。 第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、機能を発現する官能基が、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基を含むことにより、単分子膜表面にCF3基またはCH3基が高密度に露出することになり、優れた撥水、撥油、防汚性を発揮する。 第8の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、機能を発現する官能基の末端が、チエニル基またはピロリル基であり、かつチエニル基またはピロリル基の共役系を形成する工程を有することにより、単分子膜表面にチエニル基またはピロリル基が高密度に露出するので、共役系を形成する工程において、チエニル基またはピロリル基が容易に共役系を形成できる。 第9の発明は、特に、第8の発明において、共役系を形成する工程が電解重合であることにより、簡単な方法でチエニル基またはピロリル基が容易に共役系を形成できる。 第10の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、機能を発現する官能基が、カルコニル基を含み、かつカルコニル基の共役系を形成する工程を有することにより、単分子膜表面にカルコニル基が高密度に露出するで、共役系を形成する工程において、カルコニル基が容易に共役系を形成できる。 第11の発明は、特に、第10の発明において、共役系を形成する工程が光重合であることにより、簡単なドライプロセスでカルコニル基が容易に共役系を形成できる。 第12の発明は、特に、第11の発明において、光重合が偏光によるものであることにより、簡単なドライプロセスで容易に異方性を持った単分子膜を形成できる。 第13の発明は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基とを有する化合物を接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、この基板を調理容器内面に設ける工程を少なくとも含む調理容器の製造方法とすることにより、撥水、撥油、防汚性に優れ、かつこれらを長期にわたり維持できる調理容器を提供できる。 第14の発明は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基とを有する化合物を含む溶液を基板に接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、この基板を調理容器の内面に設ける工程を少なくとも含む調理容器の製造方法とすることにより、撥水、撥油、防汚性に優れ、かつこれらを長期にわたり維持できる調理容器をより工業的な手段で提供できる。 第15の発明は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基とを有する化合物を接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、この基板を庫内に設ける工程を少なくとも含む調理機器の製造方法とすることにより、撥水、撥油、防汚性に優れ、かつこれらを長期にわたり維持できる調理機器を提供できる。 第16の発明は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基とを有する化合物を含む溶液を基板に接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、この基板を庫内に設ける工程を少なくとも含む調理機器の製造方法とすることにより、撥水、撥油、防汚性に優れ、かつこれらを長期にわたり維持できる調理機器をより工業的な手段で提供できる。 第17の発明は、2つの電極を有する基板を備え、共有結合を介して電極表面に固定化する官能基と、チエニル基またはピロリル基とを有する化合物を接触させることで、電極にその化合物を固定化する工程と、電極に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含む導電センサーの製造方法とすることにより、導電性を有する共役系を形成したチエニル基またはピロリル基部分が電極表面に露出するため、表面の雰囲気による導電率の変化が大きい、つまり感度が高い導電センサーとなる。また、その導電膜は化学結合により固定化されるので、信頼性の優れた導電センサーを製造できる。 第18の発明は、2つの電極を有する基板を備え、共有結合を介して電極表面に固定化する官能基と、チエニル基またはピロリル基とを有する化合物を含む溶液を電極に接触させることで、電極にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、電極に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含む導電センサーの製造方法とすることにより、導電性を有する共役系を形成したチエニル基またはピロリル基部分が電極表面に露出するため、表面の雰囲気による導電率の変化が大きい、つまり感度が高いセンサーとなる。また、その導電膜は化学結合により固定化されるので、信頼性の優れた導電センサーを工業的に製造できる。 第19の発明は、液晶表示素子の2つの対向基板を備え、共有結合を介して対向基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のカルコニル基とを有する化合物を接触させることで、対向基板にその化合物を固定化する工程と、対向基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、その上に偏光照射する工程と、前記対向基板同士を貼り合わせる工程と、液晶層を形成する工程を備える液晶表示素子の製造方法とすることにより、共役異方性を形成したカルコニル基部分が表面に露出するため、その上での液晶分子の配向力(アンカリング力)の大きい、つまりコントラストの高い液晶表示素子となる。また、その液晶配向膜は化学結合により固定化されるので、信頼性の液晶表示素子を製造できる。 第20の発明は、液晶表示素子の2つの対向基板を備え、共有結合を介して対向基板表面に固定化する官能基と、カルコニル基とを有する化合物を含む溶液を接触させることで、対向基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、対向基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、その上に偏光照射する工程と、前記対向基板同士を貼り合わせる工程と、液晶層を形成する工程を備える液晶表示素子の製造方法とすることにより、共役異方性を形成したカルコニル基部分が表面に露出するため、その上での液晶分子の配向力(アンカリング力)の大きい、つまりコントラストの高い液晶表示素子となる。また、その液晶配向膜は化学結合により固定化されるので、信頼性の液晶表示素子を工業的に製造できる。 以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。 (実施の形態1) 本発明の実施の形態1における機能性単分子膜の製造方法について説明する。 本実施の形態における機能性単分子膜の製造方法は、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含むものである。 また、共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を含む溶液を基板に接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含むものである。 なお、本実施の形態に供される基板表面に固定化する官能基としては、表面水酸基を有する基板の場合、クロロシリル基を始めとするハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネートシリル基が有効であるが、クロロシリル基は表面水酸基との反応性の高さとクロロシリル基同士の反応性の低さ、すなわち基板と反応していない化合物の除去しやすさを考慮すると特に有効である。 また、表面水酸基を有する基板としては、金属酸化物、例えば、ガラス、セラミックなどが有効であるが、金属でもアルマイトやステンレスのように酸化皮膜を設けたものについても適用できる。また、コロナ処理など表面水酸基を設ける処理を行えばプラスチックについても適応できる。 また、本実施の形態に供される基板表面に固定化する官能基としては、金属または金属薄膜基板の場合、チオール基が有効である。また、このときの金属としては、金、銀、白金、銅のいずれかもしくはそれらの合金である場合、特にスルフィド結合を介して強固に結合するので特に有効である。 次に、本実施の形態に供される機能を発現する官能基としては、撥水、防汚性にはアルキル基が良く、さらに撥油性を付与し、防汚性を高める場合には、フルオロアルキル基が優れている。さらに、これらの官能基は固定化される化合物の割合(被覆率)を高めるためにも、直鎖状が優れている。 また、本実施の形態に供される機能を発現する官能基としては、雰囲気をセンシングできるものとして、下記の(化学式1)から(化学式4)に示すチエニル基またはピロリル基が有効で、この官能基を共役化することで、センシング性を発現する。このうち、本方法により、(化学式2)のチエニル基と(化学式4)のピロリル基が表面に露出し、センサー感度がよくなり特に有効である。また共役系を形成するには、光、熱、電解重合が有効であるが、この場合、熱分解することなく確率よく共役が形成できる電解重合が最もよい。さらに、これらの官能基は固定化される化合物の割合(被覆率)を高めるためにも、直鎖状が優れている。 また、本実施の形態に供される機能を発現する官能基としては、液晶配向膜として作用するものとして、(化学式5)に示すカルコニル基または(化学式6)に示すシンナモイル基が有効で、この官能基を異方的に共役化することで、液晶配向性を発現する。このうち、本方法により、(化学式5)のカルコニル基は、表面に露出しやすいため、少ない偏光を照射するだけで、大きな配向性(アンカリングエネルギー)を得られ、特に有効である。また共役系を形成するには、光、熱、電解重合が有効であるが、この場合、異方性共役が形成できる偏光が最もよい。さらに、これらの官能基は固定化される化合物の割合(被覆率)を高めるためにも、直鎖状が優れている。 以上のことから、本実施の形態に供される共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物の具体例として、撥水、撥油、防汚の場合は、以下のものが例示できる。(1)CnH2n+1―(C6H4)k−(CH2)m−SiX3(2)CnF2n+1−(CH2)m―(C6H4)k―(CH2)l−SiX3(3)CnH2n+1―(C6H4)k−(CH2)m−SH(4)CnF2n+1−CmH2m―(C6H4)k−(CH2)l−SH ただし、nは1以上の自然数、m、lは自然数、kは0または1でXはハロゲン基、アルコキシ基、イソシアネート基である。 さらに、具体的には直鎖状のものが優れ、(5)n−C10H21−SiCl3(6)n−C8F17−C2H4−SiCl3(7)n−C10H21−SH(8)n−C8F17−C2H4−SHが例示できる。 また、雰囲気をセンシングできるものとして、(化学式1)から(化学式4)に加え、一般的なものとして、下記のものがある。(9)C4H5N−(CH2)n−SiX3(10)C4H5S−(CH2)n−SiX3 ただし、nは1以上の自然数、Xはハロゲン基、アルコキシ基、イソシアネート基である。 さらに、具体的なものとして、以下のものが例示できる。(11)C4H5N−(CH2)8−SiCl3(12)C4H5S−(CH2)8−SiCl3(13)C4H5N−(CH2)8−SH(14)C4H5S−(CH2)8−SH また、液晶配向膜として作用するものとして、以下のものが例示できる。(15)C6H5−CH=CH−CO−O−(CH2)n−O−SiX3(16)C6H5−CO−CH=CH−C6H4−(CH2)n−O−SiX3(17)C6H5−CH=CH−CO−O−(CH2)n−SH(18)C6H5−CO−CH=CH−C6H4−(CH2)n−(CH2)n−SH ただし、nは1以上の自然数、Xはハロゲン基、アルコキシ基、イソシアネート基である。 さらに、具体的なものとして、以下のものが例示できる。(19)C6H5−CH=CH−CO−O−(CH2)6−O−SiX3(20)C6H5−CO−CH=CH−C6H4−(CH2)6−O−SiX3(21)C6H5−CH=CH−CO−O−(CH2)6−SH(22)C6H5−CO−CH=CH−C6H4−(CH2)6−SH また、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程としては、その化合物を洗浄するという手段があるが、これを完全に除去できなかったり、製造工程が複雑(洗浄液の扱い)になったりすることから、蒸発除去するのが望ましい。この方法として、減圧や加熱という方法があるが、化合物の熱的安定を考えると、減圧蒸発が望ましい。ただし、工程が複雑なので場合により、基板に固定化していない化合物の沸点程度に加熱して蒸発除去するのが望ましい。具体的な温度範囲としては150℃から300℃が望ましいが、基板に固定化していない化合物が重合反応などにより変化している可能性もあるので、場合により500℃まではかまわない。また、その雰囲気として、加熱により基板に固定化している化合物あるいは固定化していない化合物の反応を抑えるためにも、不活性ガス雰囲気下、無水雰囲気下などが望ましい。 次に、溶媒としては、水を含まない非水系溶媒を用いるのが好ましく、水を含まない炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系、アルコール系溶媒などを用いることが可能である。なお、石油系の溶剤の他に具体的に使用可能なものは、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン、ジメチルミリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエステルシリコーンなどを挙げることができる。また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)などがある。なお、これらは1種単独で用いてもよいし、よく混合するものなら2種以上を組み合わせてもよい。 次に、図1に基づいて撥水基板の作製法について説明する。 基板1として、日本電気硝子製ネオセラムN−0を用い、窒素雰囲気(無水)下でこれをヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン2と溶媒ヘキサメチルシロキサン3を含む溶液に浸漬し、浸漬後、無水雰囲気下で基板1を乾燥させた。この後、無水雰囲気下で基板1を200℃の雰囲気4で10分加熱することで、撥水性単分子膜5を有するガラス基板Aを作製した。 (比較例1) 次に、ガラス基板Aに対する比較例1として、基板1を無水雰囲気下で200℃の雰囲気で10分加熱することを行わず(他はガラス基板Aと同じ)ガラス基板aを作製した。 (撥水膜の加熱処理の効果) ガラス基板Aとガラス基板aの水の接触角を測定したところ、ガラス基板Aは112°、ガラス基板aは103°であった。また、基板上に黒のマジックインキ(No.500)で直径5cmの円を描き、この後、ティッシュでふき取ったところガラス基板Aは黒のマジックインキを簡単に除去できたものの、ガラス基板aは困難であった。これは、ガラス基板Aは加熱することで固定化されていない化合物が蒸発除去され、表面にCF3基が露出しているのに対し、ガラス基板aは除去されず、表面にCH2−やSi−が存在するためと考えられる。したがって、本実施の形態におけるガラス基板Aの効果が実証された。 なお、同様な効果が、例えば、炊飯器鍋や蓋などの調理容器内面や電子レンジ庫内壁面やIHクッキングヒータのガラストップなどのこびりつき汚れのとれやすさや、自動車、建材の窓ガラスの撥水、油膜の取れやすさでも認められ、ガラス基板Aを適用することにより、優れた撥水、防汚性能を有する調理容器や調理機器、あるいは自動車や建材の窓ガラスが提供できる。 (実施の形態2) 次に、本発明の実施の形態2における機能性単分子膜の製造方法を用いたデバイスの製造方法について説明する。 図2は、デバイスとして導電センサーの作製法を示している。導電センサーの石英基板15には、酸化ケイ素絶縁層13を介して2つの電極14を有する金薄膜が設けられている。そして、この石英基板15を、チエニル基を有するチオール化合物11として、2−チエニルオクチルチオールを、その溶媒として、エタノールを用いた溶液12に、無水雰囲気下で1時間浸漬し、溶媒を乾燥させた。この後、過剰な2−チエニルオクチルチオールを100℃の雰囲気16で10分加熱した。このとき2−チエニルオクチルチオールは、そのチオール基と石英基板15に設けられた金薄膜領域で脱水素反応を起こして、スルフィド結合を介して金薄膜に固定化される。また、そのチエニル基は、電極14と化学結合を形成する。この石英基板15をさらに不活性ガス雰囲気下で、無水過塩素酸リチウム0.05mol/Lのアセトニトリル溶液17中に浸漬しながら、2つの電極14間に電流密度100μA/cm2となるように、走査速度100mV/Sで電解重合した(共役系形成工程)。この結果、チエニル基は隣接どおしで重合を起こし、ポリチエニル単分子膜18の基板Bができる。 (比較例2) 次に、基板Bに対する比較例2として、石英基板15を100℃の雰囲気16で10分加熱することを行わず(他は基板Bと同じ)基板bを作製した。 (導電センサーの加熱処理の効果) この単分子膜を有する基板Bと基板bを、不活性ガス雰囲気中で2つの電極14間に60Hzの交流をプローブとしての導電率を測定することでセンサー化した。不活性ガス雰囲気中では基板Bは40mS、基板bは400mSを示したが、この雰囲気にCOを導入し雰囲気濃度を10ppmにしたところ、基板Bは32mSとなったが、基板bは400mSとほとんど変わらなかったことから、この基板Bは導電センサーとして作用することがわかる。 これは、基板Bは加熱することで固定化されていない化合物が蒸発除去され、表面にチエニル基が露出しているのに対し、基板bは除去されず、表面にCH2−や−SHが存在するためと考えられる。したがって、本実施の形態における基板Bの効果が実証された。なお、基板Bは、NO、メルカプタン、カルボン酸、アルデヒド、アルコール、ケトンなど、有害物やにおいの成分などのガスに対しても同様な作用があることがわかった。また、水溶液中に浸漬すると、水素イオン濃度に対しても同様な作用があることがわかった。 (実施の形態3) 次に、本発明の実施の形態3における機能性単分子膜の製造方法を用いたデバイスの製造方法について説明する。 まず、図3に基づき液晶配向膜の作製について説明する。 シラン化合物としてC6H5−CH=CH−CO−C6H4−O−(CH2)6−O−SiCl3 22、溶媒としてヘキサメチルジシロキサンの10−3mol/Lの溶液を、相対湿度を5%以下とした無水雰囲気で、TN液晶表示素子の2つの対向基板21に印刷機を用いて1μm(液膜)塗布した(塗布工程)。その後、このTN液晶表示素子の2つの対向基板21を200℃の雰囲気で加熱した(蒸発工程)。この後、クロロホルム中に浸漬、そして、引き上げ、TN液晶表示素子の2つの対向基板21上に、液晶表示素子に組み合わせたときに各基板のクロロホルムの液切り方向が左ねじれ90゜になるように引き上げ、2つの対向基板21上に形成された膜を液切り方向に配向させた(液切り配向工程)。この後、フォトマスクによるマスキング法を用い、画素(80μm×240μm)の中心部50μm×210μmの領域をマスクし、全体を偏光方向が前記液切り方向と同じ方向で前記液切り方向となす角(基板とのなす角)が45゜の偏光を800mJ/cm2照射し(偏光配向工程)、単分子膜による液晶配向膜23を有する基板Cを作製した。 (比較例3) 次に、基板Cに対する比較例3として、対向基板21を200℃の雰囲気で10分加熱することを行わず(他は基板Cと同じ)基板cを作製した。 (液晶表示素子の加熱処理の効果) 基板Cまたは基板cを用いて図4に示す液晶表示素子を構成した。 対向基板31には透明電極33、対向基板32にはCFとその上に透明電極33を設け、それらの上に液晶配向膜34を設けることで、基板Cまたは基板cとなる。この対向基板31間はシール剤36で対向して固定化され、その対向基板31間のギャップに液晶35が充填され、液晶表示素子が構成される。 この基板Cまたは基板cを用いた液晶表示素子を駆動して、コントラストを測定したところ、基板Cのものは300に対し、基板cのものは72であった。したがって、基板Cを用いた液晶表示素子が優れた表示性能を有することがわかる。これは、基板Cは加熱することで固定化されていない化合物が蒸発除去され、表面にCF3基が露出しているのに対し、基板cは除去されず、表面にCH2−やSi−Clが存在するためと考えられる。したがって、本実施の形態における基板Cの効果が実証された。 以上のように、本発明にかかる機能性単分子膜の製造方法およびデバイスの製造方法は、基板に固定化していない化合物を完全に除去でき、その結果、機能性単分子膜は優れた特性を発揮するので、優れた防汚性を有する調理容器、調理機器、自動車や建材の窓ガラス、感度のよいガスあるいは食品センサーや、表示特性に優れた液晶表示素子などのデバイスに適用できる。本発明の実施の形態1における機能性単分子膜の製造方法を示す工程図本発明の実施の形態2における導電センサーの製造方法を示す工程図本発明の実施の形態3における液晶配向膜の製造方法を示す工程図同製造方法により作製の基板を用いた液晶表示素子の断面図符号の説明 1 基板 5 撥水性単分子膜 14 電極 15 石英基板 18 ポリチエニル単分子膜 21 対向基板 23 液晶配向膜 31、32 対向基板 34 液晶配向膜共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含む機能性単分子膜の製造方法。共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を含む溶液を基板に接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含む機能性単分子膜の製造方法。基板に固定化していない化合物を蒸発する工程が減圧吸引である請求項1または2に記載の機能性単分子膜の製造方法。基板に固定化していない化合物を蒸発する工程が加熱である請求項1または2に記載の機能性単分子膜の製造方法。基板表面に固定化する官能基がクロロシリル基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の機能性単分子膜の製造方法。基板表面に固定化する官能基がチオール基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の機能性単分子膜の製造方法。機能を発現する官能基が、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能性単分子膜の製造方法。機能を発現する官能基の末端が、チエニル基またはピロリル基であり、かつチエニル基またはピロリル基の共役系を形成する工程を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能性単分子膜の製造方法。共役系を形成する工程が電解重合である請求項8に記載の機能性単分子膜の製造方法。機能を発現する官能基が、カルコニル基を含み、かつカルコニル基の共役系を形成する工程を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能性単分子膜の製造方法。共役系を形成する工程が光重合である請求項10に記載の機能性単分子膜の製造方法。光重合が偏光によるものである請求項11に記載の機能性単分子膜の製造方法。共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基とを有する化合物を接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、この基板を調理容器内面に設ける工程を少なくとも含む調理容器の製造方法。共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基とを有する化合物を含む溶液を基板に接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、この基板を調理容器の内面に設ける工程を少なくとも含む調理容器の製造方法。共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基とを有する化合物を接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、この基板を庫内に設ける工程を少なくとも含む調理機器の製造方法。共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のアルキル基またはフルオロアルキル基とを有する化合物を含む溶液を基板に接触させることで、基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、この基板を庫内に設ける工程を少なくとも含む調理機器の製造方法。2つの電極を有する基板を備え、共有結合を介して電極表面に固定化する官能基と、チエニル基またはピロリル基とを有する化合物を接触させることで、電極にその化合物を固定化する工程と、電極に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含む導電センサーの製造方法。2つの電極を有する基板を備え、共有結合を介して電極表面に固定化する官能基と、チエニル基またはピロリル基とを有する化合物を含む溶液を電極に接触させることで、電極にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、電極に固定化していない化合物を蒸発する工程を少なくとも含む導電センサーの製造方法。液晶表示素子の2つの対向基板を備え、共有結合を介して対向基板表面に固定化する官能基と、直鎖状のカルコニル基とを有する化合物を接触させることで、対向基板にその化合物を固定化する工程と、対向基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、その上に偏光照射する工程と、前記対向基板同士を貼り合わせる工程と、液晶層を形成する工程を備える液晶表示素子の製造方法。液晶表示素子の2つの対向基板を備え、共有結合を介して対向基板表面に固定化する官能基と、カルコニル基とを有する化合物を含む溶液を接触させることで、対向基板にその化合物を固定化する工程と、溶媒を蒸発させる工程と、対向基板に固定化していない化合物を蒸発する工程と、その上に偏光照射する工程と、前記対向基板同士を貼り合わせる工程と、液晶層を形成する工程を備える液晶表示素子の製造方法。 【課題】基板に固定化していない化合物を完全に除去できる機能性単分子膜の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】共有結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物を接触させることで、基板1にその化合物を固定化する工程と、基板1に固定化していない化合物を200℃の雰囲気4で10分加熱し蒸発する工程を少なくとも含むものである。これにより、基板1に固定化していない化合物を完全に除去でき、その結果、機能性の官能基が表面に露出した撥水性単分子膜5を製造でき、機能性単分子膜の性能を向上できる。【選択図】図1


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