生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_GPRC5A遺伝子発現を高める方法
出願番号:2005022287
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09


特許情報キャッシュ

田中 利男 三浦 直良 JP 2006204220 公開特許公報(A) 20060810 2005022287 20050128 GPRC5A遺伝子発現を高める方法 株式会社三重ティーエルオー 802000042 大野 聖二 230104019 森田 耕司 100106840 田中 玲子 100105991 北野 健 100114465 田中 利男 三浦 直良 C12N 15/09 20060101AFI20060714BHJP JPC12N15/00 A 3 OL 7 4B024 4B024AA01 4B024AA12 4B024BA63 4B024CA09 4B024CA12 4B024DA03 4B024HA11 本発明は、GPRC5A遺伝子発現を高める方法に関する。また、GPRC5A遺伝子発現を高めることは、医薬品などの創製に関わる生物学的な研究、および疾患の治療に役立つ。 GPRC5Aは、別名RAI3、RAIG1またはhypothetial proteinFLJ10899と呼ばれている遺伝子である。 Chen and Lotan(Chen and Lotan, J Biol Chem 1998, 273: 35008-35015)は、レチノイン酸をヒト頭頚部扁平上皮癌細胞株およびヒト非小細胞性癌細胞株に対して添加した際にGPRC5A遺伝子発現量が増加したことを見出し、また遺伝子配列および遺伝子座を明らかにした。 彼らは、この遺伝子から産生されるGPRC5A蛋白はG蛋白共役型受容体に特徴的な構造を有し、細胞膜上に分布すること、および正常な肺において遺伝子発現量が多いことを示した。 特許公開公報WO03/016553には、GPRC5Aのマウスの相同遺伝子の発現が絶食/摂食サイクルの間に変動することが開示され、この蛋白が代謝機能に関与し悪液質や肥満などの代謝病の診断や治療に使用できることが記載されている。 GPRC5Aは、低リスク患者のCD34+骨髄細胞において、正常者と高リスク骨髄異形成症候群患者に比べて遺伝子発現が減少しており、低リスク患者の鑑別に使用できることが示唆されている(Hofmann et al., Blood 2002, 100:3553-3560)。 GPRC5Aは、ヒトの乳癌、膵癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、大腸癌、骨肉種、およびHela細胞において発現量が多く、その量は、正常な肺に比べて多いことが知られている(特許公報WO03/08732)。この特許では、GPRC5Aを癌の診断および抗癌剤の創製のために用いる発明が開示されている。 GPRC5Aが癌の病態に関わり、遺伝子の発現がp53により抑制されていること、GPRC5Aを遺伝子導入しGPRC5A蛋白を過剰発現させたヒト胎児腎由来HEK-293細胞株が癌細胞に特徴的な足場非依存性増殖を示すようになること、およびsiRNAにより膵臓癌細胞株AsPc-1のGPRC5A 遺伝子発現を減少させると細胞の形態変化を起こすことが示されている(Wu et al., J Biol Chem 2005, M409901200)。 遺伝子導入を行うことによりGPRC5Aの発現を著しく高めることは可能であるが、この方法を実施するためには大きな労力が必要である。 また、これまでの知見から、GPRC5Aの発現を高める方法としてp53の活性を抑制する方法も考えられるが、p53機能の抑制により癌化が起きることや細胞の脆弱性が増すことが知られており(Attardi and Jacks, Cell Mol Life Sci 1999, 55:48-63; Wahl et al., Nat Med 1996,2: 72-79)、この方法の有用性は限られたものである。 一方、細胞内の環状アデノシン一リン酸(cAMP)濃度は、その分解酵素であるホスホジエステラーゼ(PDE)を阻害する物質、その原料となるアデノシン三リン酸およびこの量を増加させる物質、合成酵素であるアデニルシクレースを活性化する物質、Gαs蛋白と共役する細胞膜受容体を刺激する物質、Gαi蛋白と共役する細胞膜受容体を抑制する物質より高まることが広く知られている。 これらのcAMPの濃度を高める物質にはさまざまなものが知られ、古くから繁用される研究用試薬および医薬品経口剤として安価に広く供給されている物質が数多く存在する。WO03/016553Chen and Lotan, J Biol Chem 1998, 273: 35008-35015Hofmann et al., Blood 2002, 100:3553-3560Wu et al., J Biol Chem 2005, M409901200Attardi and Jacks, Cell Mol Life Sci 1999, 55:48-63; Wahl et al., Nat Med 1996,2: 72-79 本発明は、GPRC5A遺伝子発現を効果的に高める方法を提供することを目的とする。GPRC5A遺伝子発現を高めることは、医薬品などの創製に関わる生物学的な研究、および疾患の治療に役立つ。 本発明は、細胞内の環状アデノシン一リン酸(cAMP)濃度を高める物質によるGPRC5A遺伝子発現を高める方法を提供する。好ましくは、cAMP濃度を高める物質は、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデニルシクレート活性化剤、アデノシン三リン酸(ATP)または細胞のATP産生を高める物質、Gαs蛋白に共役した受容体のアゴニスト、Gαs蛋白に共役した受容体の遺伝子、Gαi蛋白に共役した受容体のアンタゴニスト、Gαi蛋白に共役した受容体の抗体、siRNAおよびアダプタマーからなる群より選択される。 別の態様においては、本発明は、レチノイン酸またはレチノイン酸誘導体と請求項AのcAMP濃度を高める物質を併用することによりGPRC5A遺伝子発現を高める方法を提供する。 本発明は、細胞内のcAMP濃度を高める物質によりGPRC5A遺伝子発現を高める方法を提供する。cAMP濃度を高める物質は、研究用試薬、医薬品、食品およびそれらの候補として知られている物質から選択される。また、cAMP濃度を高める作用のある遺伝子導入によって行うこともできる。 別の観点においては、本発明は、cAMP濃度を高める物質をレチノイン酸あるいはレチノイン酸誘導体と併用することにより、GPRC5A遺伝子発現を高める方法を提供する。 細胞内のcAMP濃度を高める物質としては、次のものが挙げられる:Rolipram、cilostazol 、theophylline、pimobendan、olprinone、levosimendan、anaqrelide、doxofylline、ibdiplast、vesnarinone、mopidamol、propentfylline、sildenafil、pentxypfyline、caffeine、tadalafil、、amlexanox、vardenafil、enoximone、toborinone、cilomilast、roflumilast、exisulmid、tetomilast、senazodan、NM702、arofylline、842470、lirimilast、ONO 6126、NIP520、YM 976などのPDE阻害剤、forskolin、ticlopidine、colforsin、ebiratide、A 020111、ORG 2766などのアデニルシクレート刺激剤、ATP、およびクレアチン、CoQ10、奇数鎖長の脂肪酸、マリアアザミ抽出物、ペンタデカン酸グリセリドなどのATPを増加させる物質、isoprotenerol、tegaserodなどのGs共役受容体の刺激剤、またはthioperamideなどのGi共役受容体のインバースアゴニストや拮抗剤などを用いることができる。Gs受容体には次のものが知られている:A2a adenosine ・ A2b adenosine ・ β1-adrenergic ・ β2-adrenergic ・ CRF1 corticotropin releasing factor ・ D1 dopamine ・ D5 dopamine・H2、serotonin 4、serotonin 6、serotonin 7、Melanocortin MC4、CGRP、FSH follicle-stimulating hormone ・ Glucagon ・ LH luteinizing hormone ・ PTH1 parathyroid hormone ・ E2 prostaglandin ・ E4 prostaglandin ・ Secretin ・ VIP1 vasoactive intestinal peptide ・ V2 vasopressin ・PACAP。Gi受容体には次のものが知られている:α2a-adrenergic 、α2b-adrenergic ・ α2c-adrenergic ・ A1 adenosine ・ A3 adenosine ・ Apelin ・ C5a anaphylatoxin ・ CCR5 chemokine ・ CXCR1 chemokine ・ CXCR2 chemokine ・ CXCR4 chemokine ・ D2 dopamine ・ D3 dopamine ・ D4 dopamine ・ Edg1 endothelial diff. gene ・ Edg2 endothelial diff. gene ・ Edg3 endothelial diff. gene ・ Edg5 endothelial diff. gene ・ 5HT1A hydroxytryptamine 、Histamine H3、δ-opioid ・ μ-opioid ・ MCH1 melanin conc. hormone ・ M2Ach muscarinic acetylcholine ・ E3 prostaglandin ・ N-formyl peptide ・ Neuropeptide FF、Somatostatin。 また、上記の物質と同様の作用を示す抗体、siRNA、アダプタマー、遺伝子導入を用いることができる。 上記の細胞内のcAMP濃度を高める物質を疾患の治療に用いる場合には、医薬組成物として患者に投与すること、および食品として摂取すること、体内に留置する医療機器から放出させる様態にて実施することは、当業者には容易に類推できる。 本発明に用いる物質の代わりに光や電流により細胞内のATPを増加させる方法や細胞内のcAMP濃度を高める物質と同質の作用を示す遺伝子治療によって実施できることは、当業者には容易に類推できる。 本発明は、代謝性疾患および癌の治療に用いることができる。 以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。CilostazolによるGPRC5A mRNA発現の増加 ヒト大動脈血管平滑筋細胞(AOSMC 7043、クロンティクス)をHSMC-C1培地を用い、コラーゲンコートしたT225フラスコを用いて培養した。ほぼ90%コンフルエントの時点で培地交換を行い、その24時間後にPDE阻害薬cilostazol (3 μM) DMSO溶解液を培地に加え、6時間培養を継続した。対照にはcilostazol溶解液の代わりに溶媒(DMSO)のみを培地に加えた。 Total RNA精製およびpoly A RNA精製を行い、Taqman法のプローブを作成してリアルタイムPCR法によりGPRC5A mRNA発現量を定量的に測定した。結果を図1に示す。図1は、平均値および標準誤差を示す。数字は、対照(DMSO+DMSO)を1とした発現量の比を表す。Cilostazol適用を行った細胞では、GPRC5A mRNA発現が対照に比べて1.5倍に増加していた。Forskolinおよびオールトランスレチノイン酸によるGPRC5A mRNA発現の増加 実施例1と同じ方法にてヒト大動脈血管平滑筋細胞を培養しGPRC5A mRNA発現量を測定した。アデニルシクラーゼ活性化剤であるforskolin (10 μM)およびall trans レチノイン酸(atRA) (10 μM)の一方または両方を添加し、6時間後にGPRC5A mRNA発現量をリアルタイムPCRにて測定した。また、forskolinあるいはatRA適用の1時間前に、培地に転写抑制剤であるactD (2μg/mL)あるいは溶媒(DMSO)を添加した。結果は図1に示す。 Forskolin適用によりGPRC5A mRNA発現量は対照の10倍に増加した。atRA適用によりGPRC5A mRNA発現量が対照に比べて5倍に増加した。ForskolinとatRAの両方を適用した細胞では、GPRC5A mRNA発現量はforskolin単独およびatRA単独に比べて多くなり、対照の40倍に達した。すなわち、forskolinとatRAの相乗的な効果が示された。 ForskolinやatRA単独または併用適用のGPRC5A発現増加効果がいずれもactDにより強く抑制されたことから、この発現増加効果は遺伝子の転写が増加することに起因することが示された。Forskolinおよびオールトランスレチノイン酸によるGPRC5A mRNA発現の増加およびRAI3発現増加の機序の解析 GPRC5Aのプロモーターを組み込んだルシフェラーゼ発現ベクターを構築して、ヒト甲状腺濾胞性上皮細胞(Nthy ori 3-1細胞)に遺伝子導入した。ForskolinおよびatRA単独または両方を適用した場合の発現誘導の応答性をレポータージーンアッセイによって検討した。対照には溶媒(DMSO)を適用した。また、GPRC5Aプロモーター領域にあるcAMP反応エレメント(CRE)またはレチノイン酸反応性エレメント(RARE)の一方または両方に変異を入れて活性を失わせた発現ベクターを作成、導入して、forskolinおよびatRAの効果を検討した。結果は図2に示す。図2は、ルシフェラーゼレポーター発現の対照(溶媒のみ適用)と比較した相対強度を示す。 血管平滑筋細胞と同様にForskolinおよびatRAの併用により、それぞれの単独に比べて相乗的な強い発現が認められた。Forskolinの発現増加効果はCREの変異により低下し、atRAの発現増加効果はRAREの変異により低下した。したがって、cAMPの増加、およびatRAの効果は、それぞれ異なる経路によりGPRC5Aプロモーター領域に作用することで、遺伝子発現を増加させていることが明らかとなった。したがって、両者の併用はそれぞれの副作用のすべてを増加させることなく比較的選択的にGPRC5Aの発現を増加する有用な手段であることが示された。図1は、培養血管平滑筋細胞におけるGPRC5A mRNA発現を示す。図2は、甲状腺濾胞性上皮細胞(Nthy ori 3-1細胞)におけるGPRC5Aの発現誘導を示す。細胞内の環状アデノシン一リン酸(cAMP)濃度を高める物質によるGPRC5A遺伝子発現を高める方法。cAMP濃度を高める物質が、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデニルシクレート活性化剤、アデノシン三リン酸(ATP)または細胞のATP産生を高める物質、Gαs蛋白に共役した受容体のアゴニスト、Gαs蛋白に共役した受容体の遺伝子、Gαi蛋白に共役した受容体のアンタゴニスト、Gαi蛋白に共役した受容体の抗体、siRNAおよびアダプタマーからなる群より選択される請求項1記載の方法。レチノイン酸またはレチノイン酸誘導体と請求項AのcAMP濃度を高める物質を併用することによりGPRC5A遺伝子発現を高める方法。 【課題】 本発明は、GPRC5A遺伝子発現を効果的に高める方法を提供することを目的とする。GPRC5A遺伝子発現を高めることは、医薬品などの創製に関わる生物学的な研究、および疾患の治療に役立つ。【解決手段】 本発明は、細胞内の環状アデノシン一リン酸(cAMP)濃度を高める物質によりGPRC5A遺伝子発現を高める方法が開示される。cAMP濃度を高める物質には、ホスホジエステラーゼ(PDE)を阻害する物質、アデノシン三リン酸およびこの量を増加させる物質、アデニルシクレースを活性化する物質、Gαs蛋白と共役する細胞膜受容体を刺激する物質、Gαi蛋白と共役する細胞膜受容体を抑制する物質を用いることができる。また、これらと同様の作用を有する抗体、siRNA、アダプタマー、遺伝子導入を用いることができる。また、本発明では、cAMP濃度を高める物質とレチノイン酸またはレチノイン酸誘導体を併用することによりGPRC5A遺伝子発現を高める方法が開示される。【選択図】 なし


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