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タイトル:公開特許公報(A)_水素ガス検知センサ
出願番号:2005015094
年次:2006
IPC分類:G01N 27/16


特許情報キャッシュ

山田 修 平中 弘一 畑山 健 JP 2006201100 公開特許公報(A) 20060803 2005015094 20050124 水素ガス検知センサ 松下電器産業株式会社 000005821 岩橋 文雄 100097445 坂口 智康 100103355 内藤 浩樹 100109667 山田 修 平中 弘一 畑山 健 G01N 27/16 20060101AFI20060707BHJP JPG01N27/16 B 7 1 OL 15 2G060 2G060AA02 2G060AB03 2G060AB08 2G060AF07 2G060BA03 2G060BB04 2G060BB18 2G060JA01 本発明は、水素ガスに関する機器や配管などの水素ガスの漏洩箇所の検知に用いる水素ガス検知センサに関するものである。 近年、地球環境保護や化石燃料の枯渇防止の観点から、クリーンかつ循環可能なエネルギーの活用が望まれている。その中でも特に、水素ガスをエネルギー源として利用するための研究は、燃料電池を中心に活発に行われている。一方、水素ガスは、爆発限界濃度が4%から75%と広く、水素ガスをエネルギー源として普及させるには、水素の貯蔵や輸送などのハンドリングや、水素漏洩に対する安全装置が不可欠となる。その中で、安全性を確保するため、水素ガスの漏洩を検知する水素ガス検知センサは、非常に重要になっている。 従来の水素ガス検知センサは、接触燃焼方式もしくは半導体方式が主に用いられている。 接触燃焼方式の水素ガス検知センサは、白金(Pt)やパラジウム(Pd)などの触媒金属をヒータで、400から480℃程度まで加熱し、触媒に接触した水素ガスを空気の酸素で酸化させる。この水素ガスの酸化作用で生ずる発熱を、記触媒金属の導電率の変化として電気的に検出するものである。また、半導体方式の水素ガス検知センサは、水素ガスの検知膜への吸着による検知膜の電気特性の変化、すなわち抵抗値の変化を検出するものである。この半導体式の水素ガス検知センサも接触燃焼式と同様に、ヒータで400から480℃まで加熱した状態で使用される。(例えば特許文献1および2参照) また、新たな方法として、比較的低い加熱温度60℃から180℃で動作させる熱電変換酸化物を用いた接触燃焼方式の水素ガス検知センサの開発されている。この方法は、水素ガスを触媒である白金(Pt)上で大気中の酸素と反応させ、その触媒反応熱を、白金(Pt)触媒に接触させた熱電変換効果(ゼーベック効果)を利用した熱電変換酸化物膜にて電気信号として検出するものである。この熱電変換酸化物を用いた接触燃焼方式は、従来の水素ガス検知センサと比較して、低い加熱温度で動作可能で、さらに、水素ガスの選択も高いといった利点を有する。(例えば特許文献3および特許文献4参照。)実公昭49−23507号公報(第1−3頁)特開平7−260727号公報特開2003−156461号公報(第1−6頁)特開2004−28749号公報(第1−10頁) しかしながら、前記熱電変換酸化物を用いた接触燃焼方式の水素ガス検知センサは、白金(Pt)触媒を用いているため、一酸化炭素(CO)や硫黄化合物により触媒である白金(Pt)が被毒される可能性がある。特に、動作温度が60℃から100℃程度では、触媒を被毒した一酸化炭素(CO)の酸化作用も弱く、一度白金(Pt)触媒が一酸化炭素(CO)により被毒すると元の状態に復帰することが難しい。このことは、軽油や天然ガスから水素ガスを生成する改質器などの水素ガス検知センサとして用いる場合には、一酸化炭素(CO)と水素(H2)が同時に漏洩した可能性も有り、一酸化炭素(CO)が多く漏洩した場合には、触媒である白金(Pt)が被毒され水素ガスの検知性能が低下する恐れがある。これは、いかなる場合も安全を確保する水素ガス検知センサとしては致命的な課題である。前記従来の課題を解決するために、本発明に水素ガス検知センサは、水素ガスと触媒との触媒反応による発熱を熱電変換して発生する電圧を検出して水素ガスを検知する水素ガス検知センサにおいて、所定の厚さの熱電変化膜と、前記熱電変化膜表面の片側略半分に絶縁膜を介して積層される触媒膜と、前記触媒膜を所定の温度に加熱する加熱手段と、を備え、前記触媒膜は、白金(Pt)微粒子を、金属酸化物の粒子に分散担持してなり、前記触媒膜が水素ガスと接触して酸化する触媒反応による発熱から生じる温度変化を検出して水素ガスを検知することを特徴としたものである。 本発明の10nm以下の白金(Pt)微粒子を30nm以上の金属酸化粒子に分散担持させることで、白金触媒の単位体積あたりの白金と金属酸化物の境界部分が増大し、さらに、貴金属が電子不足状態になり一酸化炭素(CO)の白金(Pt)上への吸着減少を緩和することができるものである。 以下に本発明の接触燃焼式の水素ガス検知センサの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。 まず実施例1における発明内容の概要について、図1および図2を用いて説明する。 図1(a)は、実施例1における接触燃焼式の水素ガス検知センサの上面図を示し、図1(b)は、側面図を示すものである。水素ガス検知センサは、基材1上に、熱電変換膜2が形成され、さらに、熱変換膜2上の一部に、絶縁膜13と触媒膜3を順次形成したものである。特に、本発明の本質である触媒膜3は、図2で示す粒子径が10nm以下の白金(Pt)微粒子4を30nmから100nm程度の金属酸化粒子5上に分散担持したことを特徴とする。これにより、一酸化炭素(CO)に対する白金(Pt)触媒の被毒耐性を向上させることを特徴とするものである。 図1(a)および(b)を用いて実施例1における接触燃焼式の水素ガス検知センサの構成について説明する。主たる成分がアルミナ(Al2O3)からなる基材1上に、リチウム(Li)をドープした酸化ニッケル(NiO)系の熱電変換膜2を形成する。さらに、熱電変換膜2の約半分の面積となる片側の部分に、窒化アルミ(AlN)を絶縁膜13として形成し、その上に、10nm以下の白金(Pt)微粒子を30nmから100nm程度の微粒子からなる三酸化タングステンに分散担持(図2に示す。)させた触媒膜3を形成する。 また、基材1の裏面には、白金(Pt)からなるヒータ9を設けてある。熱電変換膜2上の触媒膜3が形成された部分と触媒膜3が形成されてない部分の両端に、熱電変換膜2の起電力を測定するための電極7および電極8が、熱電変換膜2に接合するように形成されている。 基材1は、アルミナ(Al2O3)、以外も用いることが可能である。基材1の材質は、熱電変換膜2、触媒膜3およびヒータ9を焼成する温度で安定であり、電気的に絶縁性であれば用いることが可能である。 焼成する温度は、リチウムをドープした酸化ニッケル系の熱電変換膜2であれば、約1000℃、白金(Pt)微粒子を三酸化タングステン(WO3)微粒子上に分散担持させた触媒膜3であれば、500℃、ヒータ9が白金(Pt)ペースから形成する場合は、900℃である。従って、基材1は、約1000℃の温度で安定である材料であれば良く、アルミナ(Al2O3)、以外に、石英(SiO2)またはシリコン(Si)などを用いることが可能である。 熱電変換膜2は、熱変換機能を有するものであれば用いることが可能で、熱電対、温度依存性抵抗、温度依存性半導体、P−N接合半導体、サーモバイルなどを用いることが可能である。 ヒータ9は、熱電変換膜2と触媒膜3を60℃〜200℃程度に加熱することを目的とし、印刷後焼結形成された白金ヒータなどを用いることが可能である。白金ヒータの他には、セラミックヒータなどを用いることが可能である。触媒膜3は、触媒膜3に含まれる白金(Pt)微粒子が触媒作用を行うが、白金(Pt)の温度が60度C以下であると、水素ガスに対して触媒活性が急激に低下する。また、白金(Pt)の温度が200度C以上になると水素以外の炭化水素系のガスにたいしても触媒活性が生じるため水素ガスに対する選択性が低下する。従って、温度は60度Cから200度Cが望ましく、さらには、80度Cから150度Cが望ましい。 次に図2(a)および図2(b)を用いて、触媒膜3について説明する。図2(a)に示すように、三酸化タングステン(WO3)からなる金属酸化微粒子5は、周囲に白金(Pt)微粒子4を分散担持した構造を有する。金属酸化微粒子5の粒子径は、30nmから100nm程度であり、白金(Pt)微粒子4は、約1nmから10nmである。触媒膜3は、図2(b)に示すように、図2(a)で示すように金属酸化微粒子5の集合体からなる。また、金属酸化微粒子5の集合体は、微粒子の一部が結合した焼結体と同様の構造であってもよい。 次に水素ガス検知センサの動作原理について、図6を用いて説明する。図6において、(a)は、水素ガス検知センサの断面図を示し、(b)は、熱電変換膜の温度と電位を示す。上図において、被検知ガスに含まれる水素ガス(H2)と酸素ガス(O2)は、触媒膜3に吸着し、水素イオン(プロトン)と酸素イオンに解離される。そして、プロトンと酸素イオンが反応し水を生じる。このとき反応熱が発生し触媒膜3を加熱する。 触媒膜3の下部に絶縁膜13を介して設けられている熱電変換膜2は、触媒膜3の下の部分のみが反応熱により加熱され温度が上昇する。一方、熱電変換膜2以外の部分は加熱されない。そのため、熱電変換膜2は、触媒膜3の下の部分と、それ以外の部分で温度差が発生する。この状態を図6(b)の実線で示す。この温度差により、熱電変換膜2には、図6(b)の点線で示すように温度勾配に比例する形で起電力が発生し、熱電変換膜2の両端に設けられた電極7と電極8に電位差が発生する。いわゆるゼーベック効果である。この起電力は、触媒膜3の上の被検知ガス中の水素ガス濃度に応じて変化するため、電極7と電極8の電位差を測定することで、被検知ガス中の水素ガス濃度を検知、計測することが可能となる。 次に触媒膜3の一酸化炭素(CO)に対する被毒耐性のメカニズムについて、本発明者が考える仮説について説明する。三酸化タングステンなどの金属酸化微粒子5上に分散担持された白金(Pt)微粒子4は、微粒子化されると触媒微粒子4の表面積に対して金属酸化微粒子5と白金(Pt)微粒子4と接触している境界部分の比率が高くなる。それにより、白金(Pt)微粒子4の電子が金属酸化物に引寄せられ、白金(Pt)微粒子が電子不足状態になる。そのため、一酸化炭素(CO)は電子不足状態の白金(Pt)微粒子4上への吸着性が弱くなり、触媒膜3の一酸化炭素(CO)に対する被毒耐性を向上させることができると考えられる。(水素ガス検知センサの製造方法) 次に実験に用いた水素ガス検知センサの製造方法について説明する。 まず、Al2O3からなる基材1の裏面に、白金ヒータ9を形成する。白金ヒータ9は、白金ペーストをスクリーン印刷により所望の形状に印刷し、約900℃の温度で1時間焼成した。 次に熱電変換膜2を形成する。酸化ニッケル(NiO)に炭酸ナトリウム(NaCO)および酸化リチウム(LiO)を混合し、850℃で6時間仮焼し、さらに、粉砕して粉末を得る。これをタービネオルとエチルセルロースで作ったビークルと混合し、ペースト状にして厚み0.5mm、純度95%のアルミナ基板に印刷し、1000℃で2時間焼成することにより熱電変換酸化物厚膜を作成した。 次に電極7および電極8を形成した。電極7および電極8は、金(Au)をスパッタ蒸着にて熱電変換膜2の両端の所定の位置に形成した。さらにその後、絶縁膜13を形成した。絶縁膜13は、窒化アルミ(AlN)を、反応性スパッタ蒸着にて熱電変換膜2上の所定の位置に形成した。 次に触媒膜を形成した。まず、タングステン酸ナトリウム(NaWO4)を純水に溶解させた水溶液を、カチオン交換樹脂を用いて、ナトリウムイオン(Na+)と水素イオン(H+)を交換させたWO4-からなる金属酸化物のゾルゲル溶液を作成する。そこに、白金からなる触媒金属化合物である塩化白金酸として、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6・6H2O)をエタノール(C2H5OH)に溶解させた溶液を加えて分子レベルで均一に分散混合する。この混合したゾルゲル溶液を、絶縁膜13に均一に塗布した。塗布方法は、スピンコート法、ディピング法、ディスペンス法などを用いることが可能である。本実施例では、ディスペンス法を用いた。続いて、前記基板に塗布した膜を室温で十分乾燥させた後、電気炉にて約200℃で1時間仮焼成し、さらに、約500℃で1時間焼成した。以上のような製造方法を用いて、白金微粒子分散担持三酸化タングステン(Pt―WO3)の水素検知センサを作成した。 このように、酸化金属のゾルゲル溶液中に、白金(Pt)からなる触媒金属化合物を分子レベルで分散混合し焼成する工程を用いることで、本特許の特徴である白金(Pt)からなる実質的な粒子径が1nmから10nmの微粒子を、金属酸化物の粒子に分散担持させることが可能となる。 また、比較のために白金(Pt)のみからなる触媒膜を有するセンサも形成した。触媒膜は、白金(Pt)ペーストを絶縁膜13上に印刷し、約900℃で焼成し得た。(実験用センサ) 実験に用いたセンサは、AセンサとBセンサの2種類であり、Aセンサの触媒膜は、白金(Pt)の薄膜構造のセンサであり、Bセンサは、白金微粒子を三酸化タングステン(WO3)に分散担持させた構造を有するものである。水素ガス検知センサの概要は以下の仕様とした。 基材寸法 幅6mm 長さ14mm 厚み 0.4mm 基材材質 アルミナ(Al2O3) 純度 95% 熱電変換膜 酸化ニッケル、酸化ナトリウムおよび酸化リチウム混合物 ( Na:Ni:Li = 6:3:1 ) 厚み 60μm 触媒膜 センサA 白金 厚み 80μm センサB 白金微粒子担持三酸化タングステン 厚み 250nm ( Pt/WO3 : 7mol% ) 電極 金(Pt) ヒータ 白金(Pt) 厚み 10μm 温度 触媒膜表面温度 約120℃(実験結果) 実験は、まずAセンサおよびBセンサの下記の測定手順における電極7と電極8の応答特性を測定した。手順は、まず密閉された測定装置内に、AセンサおよびBセンサを設置する。次にAセンサおよびBセンサの電極7と電極8の間の電圧信号を測定する。その後、測定装置内に、空気から水素ガスを体積濃度が1%になるように添加する。一定時間保持した後、空気にて体積濃度1%の水素ガスを含む雰囲気ガスをパージして除去し、測定を終了する。 図3は、上記AセンサおよびBセンサの電極両端の電圧の変化を示したものである。実線はAセンサ、点線はBセンサの結果を示す。1%水素ガスを含む雰囲気中では、Aセンサが約1.0mV、Bセンサが約0.55mVの電圧信号を得た。また、応答時間(最大値の0%から90%までの時間)は、Aセンサ,Bセンサとも約10秒であった。 図4に、Bセンサの水素ガスの体積濃度を変化させた場合の電圧信号の変化を示す。水素ガスの体積濃度を0%から1%まで変化させた場合、センサの電極両端の電圧は0mVから0.55mVまでほぼ直線的に変化していることが確認できた。 これらの結果より、白金微粒子担持三酸化タングステン(Pt−WO3)からなる触媒膜が接触燃焼式の水素ガス検知センサに十分用いることが可能なことを確認した。次に、(表1)に、AセンサおよびBセンサの一酸化炭素ガス(CO)に対する被毒耐性について実験結果を示す。 実験は、室温に保持されたAセンサ、Bセンサを体積濃度100%の一酸化炭素ガス(CO)の雰囲気中に12時間放置する。その後、触媒膜の温度を120℃で30分間保持する。そして、空気雰囲気中に水素ガスを体積濃度1%になるように添加し、その場合のAセンサおよびBセンサの電極7および電極8の間の電圧を測定したものである。比較するために、一酸化炭素ガス(CO)雰囲気に暴露する前のデータも示す。 結果より、白金(Pt)触媒膜を用いたAセンサにおいて、電極6および電極8の間の電圧は、一酸化炭素ガス(CO)に暴露することで、暴露前の1.1mVから暴露後の0.2mVまで減少しているが、白金微粒子担持三酸化タングステン触媒膜(Pt−WO3)を用いたBセンサは、一酸化炭素ガス(CO)の暴露前と暴露後とも0.55mVで変化しないことを確認できた。 次に、AセンサおよびBセンサの水素ガス検知に対する一酸化炭素ガス(CO)の影響について評価実験を行った。結果を(表2)に示す。実験は、体積濃度が80%の窒素ガス(N2)と体積濃度が20%の酸素ガス(O2)の雰囲気中に、触媒膜の温度を120℃に保持したAセンサおよびBセンサを設置した。その後、体積濃度が1%の水素ガスを添加しAセンサおよびBセンサの電極7および電極8の間の電圧を測定した。更に10分後に、体積濃度5%の一酸化炭素ガス(CO)を添加して、約20分後にAセンサおよびBセンサの電極7および電極8の間の電圧を測定した。 結果より、白金(Pt)からなる触媒膜を用いたAセンサは、一酸化炭素ガス(CO)が添加することで、電圧が0.7mVから0.15mVまで低下しているが、白金微粒子担持三酸化タングステン(Pt−WO3)からなる触媒膜を用いたBセンサは、電圧は0.55mVで変化しないことを確認できた。 また、透過型電子顕微鏡により白金微粒子の担持状態と金属酸化粒子の状態を観察した。白金微粒子は、大きな粒子の粒子径が10nm程度であるが、大部分の粒子の粒子径(=実質的な粒子径)は、1nmから6nm程度の粒子径であり三酸化タングステンの粒子の周囲に担持されていることが確認できた。さらに、粒子の直径が6nm以下の白金微粒子の約50%は、2nmから4nm程度であることも確認できた。一方、金属酸化粒子である三酸化タングステン粒子は、実質的な粒子径が約30nm〜100nm程度であり、さらに、大部分の粒子の三酸化タングステンの粒子径は、40nm〜80nm程度であることを確認できた。 図3、図4、表1および表2の結果より、白金微粒子担持三酸化タングステンからなる触媒膜を有する接触燃焼式水素センサは、一酸化炭素ガスに対する優れた被毒耐性を有することを確認できた。これは、一酸化炭素ガスと水素ガスの両方が漏洩する可能性のある場所においては、一酸化炭素の影響を受けずに水素ガスを検知できる新たな接触燃焼式の水素検知センサとして、安全確保の上で大いに役立つものである。 実施例2における発明内容の概要について説明する。 実施例2は、実施例1の白金微粒子担持三酸化タングステン(Pt−WO3)からなる触媒膜を有する接触燃焼方式の水素ガス検知センサにおいて、白金(Pt)と三酸化タングステン(WO3)の最適なモル比を確認したものであり、高価な貴金属である白金(Pt)を効果的に利用するものである。 (実験用センサ) 実験に用いたセンサは、構造、動作原理、製造方法、センサ概要は実施例1と同じである。但し、白金とタングステンの最適なモル比を求めるために、触媒膜の形成工程において、エタノール(C2H5OH)に対する塩化白金酸であるヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6・6H2O)の含有量を変化させることで実験を行った。実験条件としては白金とタングステンのモル比(以下、Pt/W)が、1%〜25%の範囲の下記の6条件として、CセンサからHセンサまでの6センサを用いて行った。センサの概要は以下の通りである。基材寸法 幅6mm 長さ14mm 厚み 0.4mm基材材質 アルミナ(Al2O3) 純度 95%熱電変換膜 酸化ニッケル、酸化ナトリウムおよび酸化リチウム混合物 ( Na:Ni:Li = 6:3:1 ) 厚み 60μm触媒膜 白金微粒子担持三酸化タングステン 厚み 250nm C : Pt/W : 1mol% D : Pt/W : 3mol% E : Pt/W : 6mol% F : Pt/W : 10mol% G : Pt/W : 15mol% H : Pt/W : 25mol%電極 金(Au)ヒータ 白金(Pt) 厚み 10μm温度 触媒膜表面温度 約120℃(実験結果) 図5は、触媒膜の白金(Pt)/タングステン(W)のモル比を1%から25%の範囲で作成したCからHまでの各センサにおいて、空気雰囲気中の水素ガス体積濃度が1%の中に設置した各センサの電極7および電極8との間の電圧を示したものである。結果より、の白金(Pt)/タングステン(W)のモル比が約7%までは増えるに従い、電極7および電極8との間の電圧も増加するが、白金(Pt)/タングステン(W)のモル比が7%から25%までにおいては殆ど増加しない。従って、白金(Pt)/タングステン(W)のモル比が7%以上であれは十分に機能することが確認できた。 実施例3の概要は、触媒の白金(Pt)微粒子をニ酸化ニオブ(NbO2)、二酸化タンタル(TaO2)、三酸化モリブデン(MoO3)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)の各金属酸化物粒子に分散担持させた場合について説明する。(製造方法) 製造方法は、基本的に実施例1と同じであるが、触媒膜3の形成方法が一部異なる。以下に触媒膜3の形成方法のみを説明する。 まず、二酸化ニオブ(NbO2)の触媒膜の形成方法について述べる。ニオブ酸ナトリウムを純水に溶解させた出発液である水溶液を、カチオン交換樹脂を用いて、ナトリウム(Na)と水素原子(H)をカチオン交換させたゾルゲル溶液を作成する。そこに、塩化白金酸として、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6・6H2O)を純水に溶解させた溶液(1mol/L)を、所定の量を加えて均一に分散混合する。 この混合したゾルゲル溶液を基材上に均一に塗布する。塗布方法は、スピンコート法、ディピング法、ディスペンス法などを用いることが可能であるが、本実施例では、ディスペンス法を用いた。続いて、前記基板に塗布した膜を室温で十分乾燥させた後、電気炉にて約200℃1時間仮焼成し、さらに、約500℃で1時間焼成した。 また、二酸化タンタル(TaO3)の場合は、タンタル酸ナトリウム(NaTaO3)を純水に溶解させた水溶液を出発液として用い、三酸化モリブデン(MoO3)の場合は、モリブデン酸ナトリウム(NaMoO4)を純水に溶解させた水溶液を出発液として用い、二酸化ジルコニウム(ZrO2)の場合は、ジルコン酸ナトリウム(Na2ZrO3)を純水に溶解させた水溶液を出発液として用いた。(実験用センサ) 次に、実験に用いた接触燃焼式の水素ガス検知センサについて説明する。実験に用いた水素ガス検知センサは、触媒膜に白金(Pt)、白金微粒子担持ニ酸化ニオブ(Pt−NbO2)、白金微粒子担持二酸化タンタル(Pt−TaO2)、白金微粒子担持三酸化モリブデン(Pt−MoO3)、白金微粒子担持二酸化ジルコニウム(Pt−ZrO2)の5種類とした。それぞれ、Aセンサ、Iセンサ、Jセンサ、KセンサおよびLセンサとして作成と評価実験をおこなった。各センサの概要は以下の通りである。センサ寸法 幅6mm 長さ14mm 厚み 0.4mm基材 アルミナ(Al2O3) 純度 95%熱電変換膜 酸化ニッケル、酸化ナトリウムおよび酸化リチウム混合物 ( Na:Ni:Li = 6:3:1 ) 厚み 60μm触媒膜 A 白金(Pt) 厚み 80μm I 白金微粒子担持二酸化ニオブ(Pt−NbO2) 厚み 250nm ( Pt/NbO3 : 10mol% ) J 白金微粒子担持二酸化タンタル(Pt−TaO2) 厚み 250nm ( Pt/TbO2 : 10mol% ) K 白金微粒子担持三酸化モリブデン(Pt−MoO3) 厚み 250nm ( Pt/MnO3 : 10mol% ) L 白金微粒子担持二酸化ジルコニウム(Pt−ZrO2) 厚み 250nm ( Pt/ZrO2 : 10mol% )電極 金(Au)ヒータ 白金(Pt) 厚み 10μm温度 触媒膜表面温度 約120℃(実験結果) (表3)に、A、I、J、KおよびLセンサの一酸化炭素ガス(CO)に対する被毒耐性についての実験結果を示す。実験は、室温に保持されたA、I、J、KおよびLを体積濃度100%の一酸化炭素ガス(CO)の雰囲気中に12時間放置する。その後、触媒膜の温度を120℃で30分間保持する。そして、その場合のA、I、J、KおよびLセンサの電極7および電極8の間の電圧を測定したものである。比較するために、一酸化炭素ガス(CO)雰囲気に暴露する前のデータも示す。 結果より、白金(Pt)触媒膜を用いたAセンサにおいて、電極6および電極8の間の電圧は、一酸化炭素ガス(CO)に暴露することで、暴露前の1.1mVから暴露後の0.2mVまで減少している。一方、白金微粒子担持二酸化ニオブ(Pt−NbO2)の触媒膜を用いたIセンサおよび、白金微粒子担持二酸化タンタル(Pt−TaO2)の触媒膜を用いたJセンサは、電極6および電極8の間の電圧が殆ど変化しないことを確認できた。また、白金微粒子担持三酸化モリブデン(Pt−MoO3)の触媒膜を用いたKセンサおよび白金微粒子担持二酸化ジルコニウム(Pt−ZrO2)の触媒膜を用いたLセンサは、電極6および電極8の間の電圧が低下することが確認できた。 (表4)に、次に、A、I、J、KおよびLセンサの水素ガス検知に対する一酸化炭素ガス(CO)の影響について評価実験を行った。実験は、体積濃度が80%の窒素ガス(N2)と体積濃度が20%の酸素ガス(O2)の雰囲気中に、触媒膜の温度を120℃に保持したAセンサおよびBセンサを設置した。その後、体積濃度が1%の水素ガスを添加しAセンサおよびBセンサの電極7および電極8の間の電圧を測定した。更に10分後に、体積濃度5%の一酸化炭素ガス(CO)を添加して、約20分後にA、I、J、KおよびLセンサの電極7および電極8の間の電圧を測定した。 結果より、白金(Pt)からなる触媒膜を用いたAセンサは、一酸化炭素ガス(CO)が添加することで、電圧が0.7mVから0.15mVまで低下しているが、白金微粒子白金微粒子担持二酸化ニオブ(Pt−NbO2)からなる触媒膜を用いたIセンサおよび、白金微粒子担持二酸化タンタル(Pt−TaO2)からなる触媒膜を用いたJセンサは、変化しないことを確認できた。 また白金微粒子担持三酸化モリブデン(Pt−MoO3)の触媒膜を用いたKセンサおよび白金微粒子担持二酸化ジルコニウム(Pt−ZrO2)の触媒膜を用いたLセンサは、やや低下することを確認した。 表3および表4の結果より、白金微粒子担持二酸化ニオブ(Pt−NbO2)、白金微粒子担持二酸化タンタル(Pt−TaO2)は、一酸化炭素ガス(CO)に対する優れた被毒耐性を有することを確認できた。これは、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H2)の両方が漏洩する可能性のある場所においては、一酸化炭素ガス(CO)の影響を受けずに水素ガスを(H2)検知できる新たな接触燃焼式の水素検知センサとして、安全確保の上で大いに役立つものである。 以上のように本発明の接触燃焼式の水素ガス検知センサは、軽油や天然ガスから水素ガスを生成する改質器など、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H2)が同時に漏洩する可能性がある水素機器においても、一酸化炭素ガス(CO)の影響を受けずに、一酸化短水素ガス(H2)を安定して検知できるものである。これは、いかなる場合も安全を確保する水素ガス検知センサとしては非常に重要なことである。本発明の実施例1における水素ガスセンサの構造を示す図本発明の実施例1における水素ガスセンサの触媒膜の構造を模式的に示す図触媒の構造の差による水素ガスセンサの応答特性を説明するための図本発明の実施例1における水素ガスセンサの水素濃度を変化させた場合の出力電圧信号の変化を示す図本発明の実施例1における水素ガスセンサの触媒膜の白金(Pt)/タングステン(W)のモル比と出力電圧との関係を示す図水素ガスセンサの動作原理を説明するための図符号の説明 1 基材 2 熱電変換膜 3 触媒膜 4 白金微粒子 5 金属酸化微粒子 6 触媒膜が形成されない部分 7 電極 8 電極 9 ヒータ 10 水素ガス 11 酸素ガス 12 引き出し線 13 絶縁膜水素ガスと触媒との触媒反応による発熱を熱電変換して発生する電圧を検出して水素ガスを検知する水素ガス検知センサにおいて、所定の厚さの熱電変化膜と、前記熱電変化膜表面の片側略半分に絶縁膜を介して積層される触媒膜と、前記触媒膜を所定の温度に加熱する加熱手段と、を備え、前記触媒膜は、白金(Pt)微粒子を、金属酸化物の粒子に分散担持してなり、前記触媒膜が水素ガスと接触して酸化する触媒反応による発熱から生じる温度変化を検出して水素ガスを検知することを特徴とする水素ガス検知センサ。前記触媒作用を有する微粒子の主たる成分は白金(Pt)であり、前記金属酸化物の主たる成分が三酸化タングステン(WO3)であること特徴とする請求項1に記載の水素ガス検知センサ。前記触媒膜である白金(Pt)の実質的な粒子径が1nmから10nmであることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス検知センサ。前記金属酸化物は、三酸化タングステンの微粒子で、その粒子径が30nmから100nmであることを特徴とする請求項3に記載の水素ガスセンサ。前記金属酸化物の主たる成分が、三酸化タングステン(WO3)、二酸化ニオブ(NbO2)、二酸化タンタル(TaO2)、三酸化モリブデン(MoO3)のいずれかの一の酸化物からなることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス検知センサ。前記触媒機能を有する微粒子の主たる成分である白金(Pt)と、前記金属酸化物の主たる主成分である三酸化タングステン(WO3)とのモル比(Pt/W)が7%から25%であることを特徴とする請求項4に記載の水素ガス検知センサ。前記触媒膜の温度が60℃から200℃の温度範囲に加熱されることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス検知センサ。 【課題】白金触媒の一酸化炭素に対する耐被毒性の優れた、接触燃焼式水素ガス検知センサを提供する。【解決手段】水素ガスと触媒との触媒反応による発熱を熱電変換して発生する電圧を検出して水素ガスを検知する水素ガス検知センサにおいて、所定の厚さの熱電変化膜2と、熱電変化膜2表面の片側略半分に絶縁膜13を介して積層される触媒膜3と、触媒膜3を所定の温度に加熱する加熱手段9と、を備え、触媒膜3は、白金(Pt)微粒子を、金属酸化物の粒子に分散担持してなり、触媒膜3が水素ガスと接触して酸化する触媒反応による発熱から生じる温度変化を検出して水素ガスを検知する。【選択図】図1


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