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タイトル:特許公報(B2)_抗体の変質を防止する精製方法
出願番号:2005013897
年次:2011
IPC分類:C07K 1/22,G01N 30/00,G01N 30/50,G01N 30/88,C07K 16/00,C07K 16/46


特許情報キャッシュ

弓岡 良輔 江島 大輔 荒川 力 JP 4826995 特許公報(B2) 20110922 2005013897 20050121 抗体の変質を防止する精製方法 味の素株式会社 000000066 熊倉 禎男 100082005 小川 信夫 100084009 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 平山 孝二 100114007 松田 七重 100123766 弓岡 良輔 江島 大輔 荒川 力 US 60/537503 20040121 US 60/631407 20041130 20111130 C07K 1/22 20060101AFI20111110BHJP G01N 30/00 20060101ALI20111110BHJP G01N 30/50 20060101ALI20111110BHJP G01N 30/88 20060101ALI20111110BHJP C07K 16/00 20060101ALN20111110BHJP C07K 16/46 20060101ALN20111110BHJP JPC07K1/22G01N30/00 AG01N30/50G01N30/88 JC07K16/00C07K16/46 C07K 1/00−19/00 G01N 30/00−30/96 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平02−273194(JP,A) 国際公開第02/098531(WO,A1) Protein Expr. Purif.,2004年 8月,Vol.36,p.244-248 8 2005206602 20050804 14 20080118 小金井 悟 本発明は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いた抗体の精製方法、具体的には溶出緩衝液に関するものである。 抗体は治療薬、臨床検査用試薬、研究用試薬として極めて有用であり、益々需要が高まっている。微生物由来のFcリセプターであるStaphyrococcal Protein A(以下、プロテインAと記す)は、複数種の抗体Fcドメインに極めて高い親和性を発揮するため、このプロテインAをリガンドとして固定化した担体を用いるアフィニティクロマトグラフィー(プロテインAアフィニティクロマトグラフィーという)が工業スケールの抗体製造プロセスの中心技術となっている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。プロテインAの持つ高い親和性が単位時間当たりの生産効率を高め、原料由来不純物の高度な淘汰に寄与する。しかしながら、このプロテインAを用いるアフィニティクロマトグラフィーには抗体特性に起因する課題が残されているおり、これが抗体製造に制約を付与している。本発明は、この抗体特性に関わる課題を解決し、抗体製造をより安定へと改善するものである。 プロテインAは中性pH下で抗体Fcドメインに極めて高い親和性を示すため、抗体を含む精製原料を中性pH下でプロテインA固定化担体を充填したカラムなどに負荷し、中性pHの緩衝液で十分に洗浄して原料由来不純物を除去した後、酸性pH、具体的にはpH 2.5〜4未満の溶出用緩衝液でカラムから抗体を脱離させる。酸性pHで脱離された抗体には原料由来不純物が僅か数百ppmのレベルしか残留しておらず、商業生産目的に利用可能な各種プロテインA固定化担体には基本的な性能差の無いことが知られている(例えば、非特許文献3、非特許文献4参照)。現在、抗体の商業生産に適用可能なプロテインA固定化担体は、アマシャムバイオサイエンス社、ミリポア社、PEパイオシステムズ社など購入することができる。しかし、これら担体を用いて抗体を精製する場合に共通して避けられない問題であるが、担体から脱離回収された抗体は高度に酸性の緩衝液に接触することとなり、その接触が抗体の高次構造を変化させ、更に会合・凝集へと進行することが頻繁に起こり得る。酸性pHが引き起こす抗体の構造変化について多くの研究が行われてきたが、構造変化や会合・凝集反応にまつわる諸課題を解決する手段は未だ提案されていない。酸性pHへの接触が抗体にいかに問題を生じるかは、主に実用上の問題としてJ.M.Sarciaxら(非特許文献5参照)やM.Paborjiら(非特許文献6参照)によって報告されている。酸性pHが抗体の高次構造に変化を生じさせることは、Buchnerらをはじめとする幾つかの研究が証明している(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9参照)。また、抗体を一度酸性pHへ接触させた後に会合・凝集を起こすことなく中性pHにまで戻せたとしても、本来の抗体構造を回復できないとしたVlasovらの研究もある(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12参照)。以上、抗体の品質を保って精製する目的を考えると、酸性pHへの接触は決して好ましくなく、酸性pHへの接触を必要としない新しい精製技術が必要とされてきた。 以上の課題を解決するため、従来、多くの研究がなされてきたので、以下に幾つかの研究例を要約するとともに、従来技術の問題点を記載する。(1) 中性緩衝液でプロテインAから抗体を脱離させる方法 R.Bywaterらは、プロテインAと抗体Fcドメインとの結合にチロシン残基の参加している知見に基づき、チロシンを含むジペプチド(0.1 M Glycyltyrosine、pH 7.0)を酸性溶出緩衝液の替わりに用いて抗体をプロテインA結合担体から脱離回収できることを見出した(非特許文献13、非特許文献14参照)。しかし、この条件では結合した抗体の20〜35 %しか回収できないなどの限界があり、実用的な方法として認知されるには至っていない。 B. Seedらは、プロテインAと抗体Fcドメインとの結合にヒスチジン残基の参加している知見に基づき、ヒスチジン残基そのものではなく、その残基に当たるイミダゾール溶液(1〜5 M、pH 6〜9)を酸性溶出緩衝液の替わりに用いて抗体をプロテインA結合担体から脱離回収できることを見出した(特許文献1)。しかし、この技術では1〜5 M(十分に回収するには3 M以上)という高濃度のイミダゾールが溶出に必要とされた。イミダゾールは、他の精製方法、例えば、ヒスチジンタグを結合した融合タンパク質を精製するための金属キレートアフィニティクロマトグラフィーでも溶出緩衝液として使用されるが、イミダゾールそのものがタンパク質を変性させる作用を有していることは当該領域の研究者の良く知るところであり、抗体精製用の溶出緩衝液としては適当ではない。このことから、実用的な方法として認知されるには至っていない。(2) プロテインAのアミノ酸配列を変化させた人工的なリガンドを替わりに用いる方法 S. Hoberらは、プロテインAの抗体Fcへの結合ドメインのうち、Bドメインに着目し、このBドメインのアミノ酸配列を一部変更した人工的なZドメインを創出した。このZドメインをリガンドとして固定化した担体は中性pH下で抗体を良く結合し、pH 4.5のマイルドな微酸性緩衝液を酸性溶出緩衝液の替わりに用いて、結合させた抗体を効果的に回収できることを示した(非特許文献15参照)。しかし、このZドメインの中性pH下での抗体に対する親和性は、プロテインAの持つ親和性より大きく低下しており、抗体結合容量の低下に伴う生産効率の低下は大きな問題である。また、親和性の低下は原料中の不純物の淘汰能力低下につながり、製品の品質保持面で課題を残した。これらのことから、実用的な方法として認知されるには至っていない。 M.G.Goreらは、プロテインAと抗体Fcドメインの結晶構造解析結果に基づき、両分子の結合に参加しているプロテインA側の疎水性残基をそれぞれヒスチジンに置換した変異プロテインAを複数創出した。これらのうち、プロテインAの21、79残基目のロイシンをヒスチジンに置換した変異体プロテインAは、緩衝液のpHを 8から 5に低下させるだけで、抗体Fcドメインへの親和性が1/50に低下することを見出した。また、実際にpH 5のマイルドな微酸性緩衝液を酸性溶出緩衝液に替えて用いると、この変異体プロテインAに結合させた抗体を効果的に回収できることを示した(非特許文献16参照)。しかし、この変異体プロテインAのpH8での抗体Fcドメインに対する親和性は、プロテインAの持つ親和性の1/5に低下しており、前述のZドメインと同様に生産効率と不純物淘汰能力の低下は大きな問題であった。このことから、実用的な方法として認知されるには至っていない。(3) 有機化学的に合成されたリガンドをプロテインAの替わりに用いる方法 E. Boschettirらは、プロテインAとは関係なく、pHの変化に伴って疎水性の変化する化合物を設計し、この化合物が抗体Fcドメインに対してpH依存的に変化する親和性を示すことを見出し、この化合物をリガンドとして結合した抗体精製用担体を開発した(非特許文献17参照)。この担体はMEP HYPERCELとしてBIOSEPRA社より購入することができる。この担体は、酸性溶出緩衝液の替わりに、よりマイルドな微酸性緩衝液(pH 4〜5)を用いて結合した抗体を回収できるとされているが、pH依存的な親和性変化がプロテインAのように急激ではなく、濃縮された形で抗体を脱離・回収することができない。また、結合の選択性がプロテインAに比べて大きく劣り、原料由来不純物を高度に除去することができない。精製原料に適した特別の洗浄条件(有機酸などを用いる)を設定して精製効果を改善することも可能とされているが、それでもプロテインAの精製効果に比べてはなはだしく劣るため、工業的な生産ではプロテインAに替えて採用されるに至っていない。 L.R.DowdらはプロテインAの抗体Fcドメインへの結合部分を模倣したペプチドを考案し、この構造を更に展開して完全に有機化学的に合成されたプロテインA模倣リガンドを創出した(Mabsorbent(登録商標):非特許文献18参照)。この合成リガンドに結合された抗体は、通常は10 mMクエン酸ナトリウム、pH 3.0で脱離・回収されるが、エチレングリコールを共存させることで中性緩衝液も利用できるとされている。しかし、結合の選択性がプロテインAに比べて大きく劣るため、原料由来不純物の淘汰能力はプロテインAに全く及ばない。前述のMEP Hypercelも同様であるが、これら合成リガンドはタンパク質性のリガンドであるプロテインAを使用しないことを第一の目的に開発されたため、精製効率、不純物淘汰能力の低下は避けられないこととされた。これら合成リガンドは工業的な生産ではプロテインAに替えて採用されるには至っておらず、酸性溶出緩衝液のもたらす問題を解決する手段としては適当ではなかった。(4) プロテインAと酸性溶出緩衝液を使用し、かつ抗体を安定化する方法 以上述べたように、プロテインAと酸性溶出緩衝液に替わる効果的な抗体精製法を提案することは容易ではなく、そこで、酸性溶出緩衝液に接触した後の抗体の変質(構造変化や会合・凝集反応)を防ぐ方法が提案された。 Higuchiらは、プロテインAに結合した抗体を酸性溶出緩衝液で回収した後、そこへ直ちにポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、またはエチレングリコールなどのポリオール化合物を安定化剤として添加し、会合・凝集などの反応と抑制できるとした(特許文献2参照)。この方法によると、酸性緩衝液に接触してもできるだけ短時間のうちに安定化剤を添加することにより会合・凝集を抑制できるとされたが、前述したように酸性pH下で生じる構造変化そのものを抑制できるわけではない。また、pH変化によるタンパク質の変質対策は、Higuchiらが提案したようなポリオール等の安定化剤による防止策よりも、pH変化そのものを防ぐべきであるとの理解が一般的である(非特許文献19参照)。従って、この技術は酸性溶出緩衝液のもたらす問題を解決する本質的な手段とはなり得なかった。 R.W.Rosensteinらは、プロテインAを結合担体を充填したカラムの後段に緩衝液置換用のカラムを直列に接続し、プロテインAから脱離された抗体の緩衝液を極少化された待機時間内に中性pH緩衝液に置換する方法を提案した(特許文献3参照)。この方法では接触時間は極少化されるが、抗体構造の変化そのものが抑制されるわけではなく、上述のHiguchiらの方法と同様に、酸性溶出緩衝液のもたらす問題を解決する本質的な手段とはなり得なかった。WO 94/07912特開平2-273194特開平1-135798The Production of Monoclonal Antibodies. In Birch, J.R. and Lennox, E.S. (ed.)Monoclonal Antibodies, Principles and Applications., p.231-265, London: Wiley Liss, Inc., 1995R.L. Fahrmer, D.H.Whitney, M. Vandertaan, G. Blank,Biotech. Appl. Biochem (1999) 30, 121-128R. Hahn, R. Schlegel, A. Jungbauer, J. Chromatogr. B., (2003) 790, 35-51Journal of Pharmaceutical Sciences, 88 (1999), 1354-1361Pharmaceutical Research, 11 (1994), 764-771Biochemistry, 30 (1991), 6922-6929Biophysical Journal 78 (2000), 394-404Biochimica et Biophysica Acta, 1431 (1999), 120-131Biochemistry (Moscow), 61 (1996), 155-171Immunology Letters, 43 (1994), 149-152FEBS Letters, 361 (1995), 173-175)Chromatogr. Synth. Biol. Polym., [Lect. Chem. Soc. Int. Symp.] 1978,1976 Meeting Proceedings, Volume 2, 337-340J. Chromatogr. 76 (2000) 233-244Molecular Biotechnology 10 (1998), 9-16Trends Biotechnol. 20 (2002), 333-337Mabsorbent(登録商標):nature biotechnology 16 (1998), 190-195John Carpenterら:Pharmaceutical Research 14 (19967), 969-975 以上の従来技術を踏まえ、酸性溶出緩衝液のもたらす問題を解決するための課題は、以下のようにまとめられる。 プロテインAと抗体Fcドメインの高い親和性を活用するため、抗体を結合するリガンドにはプロテインAそのものを用いる。抗体を結合させた後に抗体の変性、会合・凝集反応を起こさないようなマイルドな微酸性、あるいは中性pH緩衝液において、プロテインAと抗体Fcとの親和性を十分に低下させるための抗体脱離促進剤を添加する。 すなわち、本発明は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いて抗体を精製するに際し、pH 4.0 〜 5.0に調整したアルギニン及び/またはアルギニン誘導体を含む微酸性緩衝液を用いて、抗体を脱離し回収する抗体の変質を防止する精製方法を提供する。 本発明はまた、抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラムに負荷する工程; 該カラムに負荷した抗体に、アルギニン及び/またはアルギニン誘導体を含有するpH 4.0 〜 5.0に調整した緩衝液を接触させて、該抗体をカラムから脱離する工程;及び 精製抗体を回収する工程;を含む、精製抗体の製造方法を提供する。 本発明は抗体のプロテインA固定化担体からの脱離・回収をpH 4.0〜5.0の微酸性アルギニン及び/またはアルギニン誘導体溶液を用いて可能としたことから、このアルギニン及び/またはアルギニン誘導体を溶出促進剤とする技術は、中性pH条件下におけるプロテインAの抗体に対する親和性に全く影響を及ぼさず、従ってプロテインAのもつ高い精製効率と不純物淘汰能力は完全に保たれる。 溶出に用いたアルギニン及び/またはアルギニン誘導体は抗体の高次構造を不安定にすることは無く、従って、抗体の変質が起こるのを防止することができる。また、アルギニン及び/またはアルギニン誘導体は脱塩操作などで容易に抗体から分離できる。 本発明で用いる抗体脱離促進剤は、天然アミノ酸の1種であるアルギニン及び/またはアルギニンを化学修飾したアルギニン誘導体である。アルギニン誘導体とは、アルギニンの他、アセチルアルギニン、N-ブチロイルアルギニン、N-ピバロイルアルギニン等のアシル化アルギニン、カルボキシル基を除去したアグマチン、αアミノ基の替わりに水酸基を導入したアルギニン酸、等がある。これらは酸付加塩の形態で使用することもできる。酸付加塩を形成し得る酸としては、塩酸、硫酸等があげられる。抗体脱離促進剤としては、アルギニン誘導体が好ましく、アシル化アルギニンがより好ましく、N-ブチロイルアルギニン、N-ピバロイルアルギニンが特に好ましい。このような抗体脱離促進剤を使用すると、抗体の変性、会合・凝集反応の危険性を極少化できるので、特に好ましい。 また、本発明で用いるアルギニン及び/またはアルギニン誘導体を含む溶液は、pH 4.0 〜 5.0、好ましくは、pH 4.3 〜 4.7の微酸性緩衝液であればよく、リン酸緩衝液等を添加することもできる。このようなpH範囲の緩衝液を使用することにより、抗体の変性、会合・凝集反応の危険性を極少化できるので好ましい。尚、pHの調整は、塩酸や硫酸などの無機酸、酢酸などの有機酸等を使用して行うことができる。 更に、アルギニン及び/またはアルギニン誘導体の濃度は、抗体の酸性溶出緩衝液として汎用されるpH 3.5クエン酸ナトリウム緩衝液と同等の抗体回収率を示し、抗体の会合・凝集を起こさない濃度であれば良く、例えば0.1〜4.0M、好ましくは0.3 〜 3.0 M、更に好ましくは1 〜 2 Mのアルギニン及び/またはアルギニン誘導体濃度であれば良い。 もちろん、該緩衝液の中には、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いた抗体精製を阻害しない物質であれば、アルギニン及び/またはアルギニン誘導体以外の物質が含まれていても良い。このような物質としては、例えば塩化ナトリウム等があげられる。 更に、プロテインAカラムとしては、市販品を用いればよく、例えば、HiTrap rProtein AFF(アマシャムバイオサイエンス製)等がある。 また、本発明で用いる抗体として、プロテインAが適応可能とわかっている抗体であればクラス/サブクラスを問わず適用可能であり、それらのFcドメインを結合した抗体関連タンパク質にも同様に適用可能である。また、精製原料の純度に関係なく適用可能である。たとえば、天然のヒト抗体、もしくは遺伝子組み換え法で調製されたヒト化抗体やヒト型抗体、マウス等のモノクローナル抗体、より具体的には、Muramomab (製品名:Orthclone OKT3)、Rituximab (製品名:Ritaxan)、Basiliximab (製品名:Simulect)、Daclizumab (製品名:Zenapax)、Palivizumab (製品名:Synagis)、Infliximab (製品名:Remicade)、Gemtuzumab zogamicn (製品名:Mylotarg)、Alemtuzumab (製品名:Mabcampath)、Adalimumab (製品名:Humira)、Omalizumab (製品名:Xolair)、Vevacizumab (製品名:Avastin)、Cetuximab (製品名:Erbitux)等がある。産業上で最も有用なヒト化やヒト型モノクローナル抗体では、それらのプロテインAへの親和性がより高いことが分かっており、マウス等のモノクローナル抗体の場合よりも酸性度の強い緩衝液がプロテインAカラムからの溶出に要求される。従って、本発明はヒト化抗体やヒト型抗体において最もその価値を発揮する。 更に、従来から採用されてきたプロテインAを用いた抗体精製の操作条件は、上述の他は、本発明のアルギニン及び/またはアルギニン誘導体を用いる抗体溶出法にもそのまま適用可能である。 例えば、マウスモノクローナル抗体を3 M NaClを含む20 mMグリシン/NaOH緩衝液に溶解、あるいはこの緩衝液で10倍程度まで希釈する。これを同緩衝液で平衡化されたプロテインAカラム(例えば、HiTrap rProtein AFF; アマシャムバイオサイエンス製)に負荷する。負荷は、該緩衝液をプロテインAカラムに流すことにより行うことができ、カラムを通った該緩衝液を再度カラムに通し、カラムへの該抗体の負荷量を多くすることもできる。同緩衝液で十分に洗浄し、抗体以外の原料由来不純物を洗い流した後、pH 4.0 〜 5.0(好ましくはpH4.3〜4.7)に調整した0.1〜3M(好ましくは0.3〜3M、更に好ましくは1〜2 M)のアルギニン及び/またはアルギニン誘導体溶液を流し、脱離される抗体を回収する。本発明の方法によればまた、回収された抗体をゲルろ過クロマトグラフィーで分析すると、天然状態の抗体と同じ保持時間に同じピーク形状で溶出されることがわかり、抗体に高次構造変化や会合・凝集の発生しなかったことがわかる。 更に、上述で述べたように、本発明で使用される抗体については、上述のモノクローナル抗体の他、天然のヒト抗体、もしくは遺伝子組み換え法で調製されたヒト化抗体、ヒト型抗体(以上をヒト抗体とまとめて記す)の精製も同様にアルギニン及び/またはアルギニン誘導体を用いて実施することができる。リン酸緩衝液などの中性pH緩衝液に溶解、あるいは当該緩衝液で10倍程度に希釈されたヒト抗体の溶液を同緩衝液で平衡化されたプロテインAカラム(例えば、HiTrap rProtein AFF; アマシャムバイオサイエンス製)に負荷する。同緩衝液で十分に洗浄し、抗体以外の原料由来不純物を洗い流した後、上述のマウスモノクローナル抗体での精製方法と同様に、pH 4.0 〜 5.0(好ましくはpH4.3〜4.7)に調整した0.1〜3M(好ましくは0.3〜3M、更に好ましくは1〜2 M)のアルギニン及び/またはアルギニン誘導体溶液を流し、脱離される抗体を回収する。回収された抗体をゲルろ過クロマトグラフィーで分析すると、天然状態の抗体と同じ保持時間に同じピーク形状で溶出されることがわかり、抗体に高次構造変化や会合・凝集の発生しなかったことがわかる。なお、抗体の高次構造を保ち得るpHの下限は4付近、との報告がある。 さて、酸性pHのクエン酸緩衝液などで溶出・回収された抗体溶液は短時間のうちに会合・凝集を起こすことが知られており、溶出後に直ちに抗体溶液のpHを中性に調整することが勧められている。しかし、大規模な抗体製造においては迅速なpH調整は困難であり、pH調整による急激なpH変動が逆に抗体の変質を招く危険性も十分に予想される。本発明のpH 4.0 〜 5.0のアルギニン及び/またはアルギニン誘導体溶液を用いる抗体の溶出・回収は、以上の酸性緩衝液の持つ問題点を解決できるものである。 本発明の方法により得られる精製抗体を使用して、ガン、免疫疾患、生活習慣病等各種疾患の治療薬、臨床検査用試薬、研究用試薬を得ることができる。これらの医薬組成物は、本発明の方法により得られる精製抗体に加え、賦形剤や担体等を含有することができる。 以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。実施例1 等張リン酸ナトリウム緩衝液に溶解された精製済みの抗フォンビルブランド因子モノクローナル抗体(マウス抗体、サブクラスIgG1;WO96/17078)、5.28 mg/mlの0.57ml(抗体3 mg)に6.43 mlの3 M NaClを含む20 mMグリシン/NaOH緩衝液、pH 8.9を添加し、合計で7 mlに調整した。この溶液を、同じ緩衝液で平衡化済みのHiTrap r-Protein A FF、1 mlサイズ(アマシャムバイオサイエンス社)に0.5 ml/minの流速で負荷し、同緩衝液の5 mlで洗浄、再平衡化した。このカラムに表1に示す溶出緩衝液を0.5 ml/minで負荷し、脱離・溶出されてくる抗体を波長280 nmの紫外吸収を指標に回収した。得られた抗体溶液の紫外吸収を測定し、1 mg/mlの抗体溶液の示す吸光度を1.4としてタンパク質濃度を算出し、本クロマトグラフィーにおいて回収された抗体量を得た。全ての操作は5 ℃で実施した。 アルギニンまたはアルギニン誘導体によるマウスモノクローナル抗体の溶出・回収結果を、抗体の酸性溶出緩衝液として汎用される0.1 Mクエン酸ナトリウム、pH 3.5による溶出・回収を比較対照に用いて、表1にまとめて示した。各実験における回収率は、原料として負荷された抗体3 mgに対する回収画分中の抗体量の比率で示した。 0.36 M以上のアルギニン(L-Arginine、味の素製)を用いれば、pH 4.30以上の微酸性pH条件でマウスモノクローナル抗体を、従来の酸性溶出緩衝液を用いた場合と全く遜色ない効率で回収できることがわかった。 アルギニンで溶出・回収されたモノクローナル抗体をゲルろ過クロマトグラフィー(カラム、Superdex 75HR 10/30、アマシャムバイオサイエンス製;溶離液、0.2 Mリン酸ナトリウム、pH 4.0)で分析した結果を図1に示した。精製抗体標品のクロマトグラム上に太い矢印で示した天然状態の抗体と完全に一致するピークのみが確認され、分析法の検出下限(1 %)を上回る会合・凝集体(精製抗体標品のクロマトグラム上に細い矢印で示した位置に溶出される)は確認されなかったことから、構造変化や会合・凝集の生じなかったことが確認された。特に、2 Mアルギニン、pH 4.7でマウスモノクローナル抗体を回収できたことは、酸性緩衝液への接触に伴う構造変化の問題を完全に払拭できたことを意味し、極めて有効な精製手段と結論された。0.1 Mクエン酸ナトリウム、pH 3.50を用いて溶出・回収された抗体(表1、実験番号11)を冷蔵保存したところ、溶液は徐々に白濁し、上清に残留する抗体量は溶出直後の1/5にまで低下した。一方、1 Mアルギニン pH 4.30(表1、実験番号1)、および2 Mアルギニン pH 4.67(表1、実験番号2)で溶出・回収された抗体は、同様に冷蔵保存されても白濁などの変化は生じず、抗体量も変化しなかった。アルギニンによる抗体の溶出・回収は、溶出・回収後の抗体の保存性をクエン酸などの従来の緩衝液よりも高めることが示された。 上述のアルギニンによる溶出と同様に、0.36 Mのアセチルアルギニン(Nα-Acetyl-L-Arginine、シグマアルドリッチ製)、pH 4.35でも効果的にマウスモノクローナル抗体を回収できた。一方、アルギニンのカルボキシル基を欠損したアグマチン(Agmatine、味の素製)も、1M、pH 4.32で効果的にマウスモノクローナル抗体を回収できた。アセチルアルギニン、またはアグマチンで回収されたモノクローナル抗体を前述のゲルろ過クロマトグラフィーで分析したところ、天然状態の抗体と完全に一致するピークのみが確認され、分析法の検出下限(1 %)を上回る会合・凝集体は確認されなかった。以上より、アルギニンの場合と同様に、これらアルギニン誘導体を用いて抗体を溶出・回収した場合もおいても、抗体の構造変化や会合・凝集の生じなかったことが確認された。実施例2 マウスミエローマ由来細胞を無血清培地中で1週間培養して不純物を含む培養上清、60 mlを得た。これを等張リン酸緩衝液で平衡化したHiTrap r-Protein A FF、1 mlサイズ(アマシャムバイオサイエンス社)に0.5m/minで負荷し、素通り画分の60 mlを得た。この素通り画分は細胞の産生する抗体を一切含まないモデル培養上清として扱うことができる。このモデル培養上清、60mlにNaClを10.5g添加し、5 ℃下で静かに攪拌・溶解した。引き続き、5 ℃下に30min放置し、気泡が消えたことを確認した後、実施例1で用いたものと同じ精製マウスモノクローナル抗体の3 mg(5.28mg/ml、0.57ml)を添加、更に1M TrisHCl、pH8.7の1.2mlを添加し、静かに攪拌後に0.5M NaOHを用いてpH8.9に調整した。これを、緩衝液(20 mM Gly/NaOH、3M NaCl、pH8.9)の10mlで平衡化されたHiTrap r-Protein A FF、1 mlサイズ(アマシャムバイオサイエンス社)に0.5 ml/minの流速で負荷し、ベースラインが回復するまで同緩衝液でカラムを洗浄した。その後、表2に示した溶出緩衝液で溶出し、実施例1と同様の方法でモノクローナル抗体の回収率を確認した。回収された画分の吸光度からAJvW-2濃度、回収率を算出した。全ての操作は5 ℃で実施した。 表2に回収の結果、図2に実際のクロマトグラム、図3に回収されたモノクローナル抗体のゲルろ過クロマトグラフィーによる分析結果をそれぞれ示した。各実験における回収率は、原料として負荷された抗体3 mgに対する回収画分中の抗体量の比率で示した。不純物を含む抗体溶液をプロテインAカラムに負荷した場合でも、実施例1と同様にアルギニンを含む微酸性緩衝液を用いて効率的に回収可能なことが示された。図3に示したとおり、実験番号1および2の双方において、回収された抗体画分には実験番号1のクロマトグラム上に太い矢印で示した天然状態の抗体と完全に一致するピークのみが確認され(図1、精製抗体標品のクロマトグラムを参照のこと)、分析法の検出感度を上回る会合・凝集体(実験番号1のクロマトグラム上に細い矢印で示した位置に溶出される)は検出されず、酸性緩衝液への接触に伴う構造変化の危険性を完全に払拭した、極めて有効な抗体精製手段であることが示された。実施例3 ヒトCD18(integrin β2 subunit)に対するヒト化抗体6E6を産生する遺伝子組み換えCHO細胞(US 5854070;ATCC Number CRL-11398)を、10 % ウシ胎児血清(Invitrogen FBS、Ultra-Low IgGタイプ)を添加した培地(αMEM)中、ローラーボトルを用いて37℃、4日間培養し、十分に高い細胞密度を得た。この後、2 % のウシ胎児血清(Invitrogen FBS、Ultra-Low IgGタイプ)を添加した新鮮な培地(味の素、ASF104)へ培地交換し、37℃で3日間培養を継続して抗体を含む培養上清を得た。この培養上清32mlに1 M TrisHCl、pH 8.5を添加してpH を7.5に調整後、等張リン酸緩衝液で平衡化したr-Protein A FFカラム(0.5 cm径 x 1 cm長、0.2 mlサイズ:アマシャムバイオサイエンス社)に0.4 ml/minで負荷した。UV吸収のベースラインが回復するまで同緩衝液でカラムを洗浄した後、表3に示した溶出緩衝液で溶出した。全ての操作は5 ℃で実施した。それぞれの回収画分80μlに1 M TrisHCl、pH 8.5を20μl添加して中和し、そのうち80μlをゲルろ過クロマトグラフィー(カラム、TSK G3000SWXL東ソー製;溶離液、0.1 Mリン酸ナトリウム、pH 6.8)に供した。得られた結果を表3と図4に示した。表3のとおり、クエン酸ナトリウム緩衝液とアルギニン塩酸塩緩衝液で回収されたヒト化抗体の量はほぼ同量であった。原料である培養上清中に含有されたヒト化抗体6E6の量が不明なため、本実験において正確な回収率を算出することはできないが、両溶出条件がほぼ同じ能力を有することは明白であった。図4のとおり、両溶出条件で得られた画分中の抗体純度(実線の矢印で示した部分が抗体)はほぼ同等であり、両ピークのカラム保持時間は完全に一致した。また、破線の矢印で示した位置に抗体会合体の溶出されることがわかっている。プロテインAカラムへの抗体負荷量が少ない今回の例では、クエン酸ナトリウムとアルギニン塩酸塩の両方とも、抗体に対して5%以上の会合体を生成することはなかったが、クエン酸ナトリウム(実験番号1)にはきわめて僅かながら抗体会合体ピーク(破線の矢印)が確認された。以上の結果は、微酸性アルギニン緩衝液を用いてプロテインAからヒト化抗体を効果的に溶出回収できることを示した。実施例4 3種類のアルギニン誘導体を以下の方法で調製した。 N-ブチロイルアルギニン(Nα-Butyroyl-L-Arginine):アルギニンを水/2-プロパノールに溶解後、反応系をpH 11、10〜15 ℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液にてpH、温度を保持したまま、ブチロイルクロライドを滴下し反応させた。反応終了後、陽イオン交換樹脂にて精製し、白色固体を得た。逆相HPLC、1H-NMRにて構造、純度を確認した。N-ピバロイルアルギニン(Nα-Pyvaloyl-Arginine):アルギニンを水/2-プロパノールに溶解後、系をpH 11、10〜15 ℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液にてpH、温度を保持したまま、ピバロイルクロライドを滴下し反応させた。反応終了後、陽イオン交換樹脂にて精製し、白色固体を得た。逆相HPLC、1H-NMRにて構造、純度を確認した。 アルギニン酸(L-Arginic acid):L-アルギニン塩酸塩を濃硝酸/濃塩酸(1:2)に溶解後、60℃、30分加熱後、放冷した。析出した固体をろ取し、水に溶解後、完全に原料がなくなるまで加熱還流を行った。反応系を濃縮し、析出した固体を水からの再結晶を繰り返すことで白色固体を得た。逆相HPLC、1H-NMRにて構造、純度を確認した。 ヒトCD18(integrin β2 subunit)に対するヒト化抗体6E6を産生する遺伝子組み換えCHO細胞(US 5854070;ATCC Number CRL-11398)を、10 % ウシ胎児血清(Invitrogen FBS、Ultra-Low IgGタイプ)を添加した培地(αMEM)中、ローラーボトルを用いて37℃、4日間培養し、十分に高い細胞密度を得た。この後、2 % のウシ胎児血清(Invitrogen FBS、Ultra-Low IgGタイプ)を添加した新鮮な培地(味の素、ASF104)へ培地交換し、37℃で3日間培養を継続して抗体を含む培養上清を得た。この培養上清48mlに1 M TrisHCl、pH 8.5を添加してpH を7.5に調整後、等張リン酸緩衝液で平衡化したr-Protein A FFカラム(0.5 cm径 x 1 cm長、0.2 mlサイズ:アマシャムバイオサイエンス社)に0.4 ml/minで負荷した。UV吸収のベースラインが回復するまで同緩衝液でカラムを洗浄した後、流速を0.2 ml/minに変更し、表4に示した溶出緩衝液で溶出した。全ての操作は5 ℃で実施した。それぞれの回収画分80μlに1 M TrisHCl、pH 8.5を20μl添加して中和し、そのうち80μlをゲルろ過クロマトグラフィー(カラム、TSK G3000SWXL東ソー製;溶離液、0.1 Mリン酸ナトリウム、pH 6.8)に供した。得られた結果を表4と図5に示した。 表4のとおり、3種のアルギニン誘導体で回収されたヒト化抗体の量はほぼ同量であり、これらアルギニン誘導体がほぼ同じ溶出能力を有することは明白であった。図5に示したとおり、得られた画分中の抗体純度(実線の矢印で示した部分が抗体)は、3種のアルギニン誘導体においてほぼ同等であり、それぞれの抗体ピークの保持時間は実施例3のクエン酸ナトリウム溶出ピークと完全に一致した。また、破線の矢印で示す位置に抗体会合体の溶出されることがわかっているが、今回の3条件いずれにおいても、抗体に対して5 %以上の抗体会合体は生成しなかった。以上の結果は、微酸性アルギニン誘導体を用いてプロテインAから効果的にヒト化抗体を溶出回収できることを示した。 尚、参考例として、実施例3および4で用いた同じ培養上清の1000 mlを、HiTrap r-Protein A FF、1 mlサイズ(アマシャムバイオサイエンス社)に負荷し、等張リン酸緩衝液で十分に洗浄した後、表3の実験番号1と同じ0.1 M クエン酸ナトリウム、pH 2.9で溶出した。カラムに負荷された抗体量は、実施例3、4の各条件の20倍以上に及ぶ。得られた抗体画分を、実施例3と同じく中和滴定後にゲルろ過HPLCに供し、その結果を図6に示した。実線の矢印で示したものが抗体、破線の矢印で示したものが抗体会合体であり、酸性緩衝液(クエン酸ナトリウム)の影響によって抗体会合体が生成したことが分かる。表1(実験条件1〜4)の回収抗体のゲルろ過HPLC 表1の実験条件1〜4で回収された抗体(18μg)を、文中の条件でゲルろ過HPLC分析した。横軸は保持時間(分)を示す。実験条件2の下方に溶出緩衝液のみを分析した結果を示した(ブランクラン)。保持時間24分付近のピークは溶出緩衝液に因るものである。 精製抗体標品のクロマトグラム上において、太い矢印で示すピークが抗体である。一方、細い矢印で示す位置に抗体の会合・凝集体が溶出される。表2のアルギニン溶出緩衝液に用いた抗体のプロテインAアフィニティクロマトグラフィー 表2の実験番号1、2の条件で、矢印の位置で抗体を溶出した。ピークの下方に横棒で示した部分を抗体画分として回収、分析に供した。表2(実験番号1、2)の回収抗体のゲルろ過HPLC 表2の実験番号1、2で回収された抗体(18μg)を、文中の条件でゲルろ過HPLC分析した。横軸は保持時間(分)を示す。ブランクランの結果からわかる通り、保持時間24分付近のピークは溶出緩衝液に因るものである。 実験番号1のクロマトグラム上において、太い矢印で示すピークが抗体である。一方、細い矢印で示す位置に抗体の会合・凝集体が溶出される。表3(実験番号1、2)の回収抗体のゲルろ過HPLC 表3の実験番号1、2で回収された抗体(約2.5μg)を、文中の条件でゲルろ過HPLC分析した。横軸は保持時間(分)を示す。実線の矢印で示すピークが抗体である。破線の矢印で示す位置に抗体会合体の溶出されることが分かっている。表4(実験番号1、2)の回収抗体のゲルろ過HPLC 表4の実験番号1、2、3で回収された抗体(約2.5μg)を、文中の条件でゲルろ過HPLC分析した。横軸は保持時間(分)を示す。矢印で示すピークが抗体である。実線の矢印で示すピークが抗体、破線の矢印で示す位置に抗体会合体の溶出されることが分かっている。参考例 実施例3および4と同じ培養上清、1000mlをプロテインAカラムに負荷し、表3(実験番号1)の溶出条件(0.1 M クエン酸ナトリウム、pH 2.9)で回収された抗体を実施例3および4と同様にゲルろ過HPLC分析した。実線の矢印で示すピークが抗体、破線の矢印で示すピークが抗体会合体である。 下記工程を含む抗体の精製方法: a)抗体を含む出発物質を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラムに負荷する工程; b)pH 4.0 〜 5.0に調整したアルギニン及び/またはアシル化アルギニン、アグマチン及びアルギニン酸からなる群から選ばれるアルギニン誘導体を含む緩衝液を用いて、前記抗体を前記カラムから脱離する工程; c)前記抗体を回収する工程。 アルギニン及び/またはアルギニン誘導体の濃度が、0.1〜4.0Mである請求項1記載の方法。 抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラムに負荷する工程; プロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラムに負荷した抗体に、アルギニン及び/またはアシル化アルギニン、アグマチン及びアルギニン酸からなる群から選ばれるアルギニン誘導体を含有するpH 4.0 〜 5.0に調整した緩衝液を接触させて、該抗体をカラムから脱離する工程;及び 精製抗体を回収する工程;を含む、精製抗体の製造方法。 緩衝液のpHが4.3〜4.7である請求項3記載の精製抗体の製造方法。 アルギニンを使用して抗体を脱離する請求項3又は4記載の精製抗体の製造方法。 アシル化アルギニンを使用して抗体を脱離する請求項3又は4記載の精製抗体の製造方法。 緩衝液中アルギニン及び/またはアルギニン誘導体濃度が、0.1〜4.0Mである請求項3〜6のいずれか1項記載の精製抗体の製造方法。 抗体が、ヒト化抗体又はヒト型抗体である請求項3〜6のいずれか1項記載の精製抗体の製造方法。


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