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タイトル:再公表特許(A1)_水素分布の可視化方法、水素分布の可視化システム、水素分布の可視化用発光試薬、水素検出方法および水素検出試薬
出願番号:2005008260
年次:2008
IPC分類:G01N 31/00,G01N 21/76,G01N 21/78,G01N 21/77


特許情報キャッシュ

斎藤 英之 JP WO2005103676 20051103 JP2005008260 20050422 水素分布の可視化方法、水素分布の可視化システム、水素分布の可視化用発光試薬、水素検出方法および水素検出試薬 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 森 幸一 100120640 斎藤 英之 JP 2004128773 20040423 G01N 31/00 20060101AFI20080215BHJP G01N 21/76 20060101ALI20080215BHJP G01N 21/78 20060101ALI20080215BHJP G01N 21/77 20060101ALI20080215BHJP JPG01N31/00 CG01N21/76G01N21/78 CG01N21/77 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20080313 2006512659 20 2G042 2G054 2G042AA01 2G042BA04 2G042BB02 2G042CA03 2G042CB06 2G042DA09 2G042FA20 2G042FB02 2G042GA04 2G054AA01 2G054BB12 2G054CA04 2G054CE02 2G054EA01 2G054FA06 2G054GA03 2G054JA04 この発明は、水素分布の可視化方法、水素分布の可視化システム、水素分布の可視化用発光試薬、水素検出方法および水素検出試薬に関し、特に、金属その他の材料中の水素分布の可視化に適用して好適なものである。 金属中の水素の分布を視覚的に捉えて観察することは、金属組織と水素挙動との相関を調べるのに非常に有効な手段である。そのため、水素可視化技術の発展は水素脆化機構の解明およびその防止や水素吸蔵合金の性能向上に大いに貢献すると考えられる。ここで、水素脆化は、金属中に固溶した水素に起因する脆化であり、金属中の水素濃度が極微量でも顕著に現れる。また、水素吸蔵合金は、水素を可逆的に吸収・放出する材料であり、水素の貯蔵・輸送に利用され、水素エネルギー利用のキーマテリアルである。 従来、金属材料表面での水素分布を観察する方法としては、大きく分けて、水素の放射性同位元素であるトリチウムを用いる方法と水素の非放射性同位元素を用いる方法とがある。前者の方法には、オートラジオグラフ法とラジオルミノグラフ法とがある。オートラジオグラフ法は、トリチウムを添加した試料に写真乳剤を乗せて、トリチウムの放射するベータ線の写真黒化作用によりトリチウムの分布を観察する方法である。ラジオルミノグラフ法は、トリチウムを添加した試料をイメージングプレートに乗せて、トリチウムの放射するベータ線の強度分布を記録する方法である。後者の方法には、銀デコレーション法と水素マイクロプリント法とがある。銀デコレーション法は、シアン化銀カリウムの水溶液に水素を添加した試料を漬けると、銀イオンが試料表面上の水素原子と反応して銀原子として析出するため、この銀原子の分布を観察して水素の位置を調べる方法である。水素マイクロプリント法は、試料上に写真乳剤粒子を乗せて、試料内部から移動してくる水素により乳剤中の臭化銀(AgBr)粒子を還元して銀粒子とし、この銀粒子を観察して水素分布を調べる方法である。 しかしながら、上記のオートラジオグラフ法は定量分析が困難であり、ラジオルミノグラフ法は分解能が悪く、銀デコレーション法や水素マイクロプリント法は、いずれも水素の放出挙動の定量的な分析やリアルタイムでの観察といったことが不可能であるという問題があり、いずれも一長一短であった。 そこで、この発明が解決しようとする課題は、金属を始めとする各種の材料中の水素分布を容易に可視化することができ、水素の定量分析や水素分布のリアルタイム観察を高い分解能で行うことが可能な水素分布の可視化方法およびシステムならびにそれらに用いる発光試薬を提供することにある。 この発明が解決しようとする他の課題は、より一般的には、金属を始めとする各種の材料中の水素分布を容易に可視化することができ、水素の定量分析や水素分布のリアルタイム観察を高い分解能で行うことが可能な水素検出方法および試薬を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、化学反応により励起されて励起状態になった分子が基底状態に戻る際に光を放つ現象である化学発光(ケミルミネッセンス(chemiluminescence))により、水素を検出することができることを見出した。より具体的には、ルシゲニン(lucigenin)(N,N−ジメチル−9,9−ジアクリジニウム硝酸塩)を発光試薬として用いたところ、このルシゲニンが水素により発光することを見出した。この化学発光を用いることにより、金属などの材料中の水素分布を容易に可視化することができる。また、この発光の位置および強度をCCDカメラなどを用いて計測することにより、リアルタイム計測およびリモートコントロールによる遠隔測定が可能となる。 なお、林太郎:光化学とその応用、管孝男、小泉正男、田中郁三編集、化学同人、(1965)pp.127−128には、ルシゲニンの化学発光機構に関する記述があるが、発光機構には不明確なところが多く、水素との反応により化学発光が引き起こされることに関する言及もない。 この発明は、上記の検討に基づいて案出されたものである。 すなわち、上記課題を解決するために、第1の発明は、 化学発光を用いて材料中の水素分布を可視化することを特徴とする水素分布の可視化方法である。 水素分布の可視化は、典型的には、化学発光を光検出装置を用いて検出することにより発光の位置および強度の分布を得ることにより行われる。光検出装置としては、例えば、CCDカメラ、シンチレーション検出器、フォトダイオードアレー、光電子増倍管などの各種のものを用いることができ、化学発光の強度、必要な測定精度、測定環境などに応じて最適なものを用いる。光検出装置としてCCDカメラを用いる場合には、化学発光をこのCCDカメラを用いて撮像することにより発光の位置および強度の分布として水素分布を可視化することができる。 水素分布の可視化は、水素分布を可視化しようとする材料に発光試薬を接触させることにより行う。このとき、材料中の水素の分布状況に応じて化学発光が引き起こされる。水素分布を可視化しようとする材料に対する発光試薬の接触は、具体的には、発光試薬を含有する溶液またはこの溶液を含浸させたゲルをこの材料に接触させることにより行う。 発光試薬を含有する溶液を調製した後には、この溶液自体の発光が生じることがあるため、このバックグラウンド発光を抑えて化学試薬と水素との反応による化学発光との区別を明瞭に行う観点より、この発光試薬を含有する溶液からの発光強度がピークを過ぎてから、水素分布を可視化しようとする材料にこの溶液を接触させ、この溶液中の化学試薬をその材料に接触させる。発光試薬としては例えばルシゲニンが用いられ、このルシゲニンを含有する溶液の溶媒としては、好適には、例えばNaOHやKOHなどのアルカリの水溶液が用いられる。 水素分布を可視化しようとする材料は、基本的にはどのようなものであってもよいが、具体例を挙げると、例えば、水素脆化のおそれがある鉄鋼材料などの各種の金属または合金のほか、水素吸蔵合金、さらには燃料電池用のセパレータなどである。 第2の発明は、 化学発光を用いて材料中の水素分布を可視化することを特徴とする水素分布の可視化システムである。 この水素分布の可視化システムは、典型的には、発光試薬を含有する接触体と光検出装置とを有し、接触体の発光試薬を、水素分布を可視化しようとする材料に接触させたときに引き起こされる化学発光を光検出装置を用いて検出する。そして、化学発光を光検出装置を用いて検出することにより、発光の位置および強度の分布として水素分布を可視化する。接触体と光検出装置とは一体的に配置してもよいし、離して配置してもよい。接触体は、典型的には、発光試薬を含有する溶液あるいは発光試薬を含浸させたゲルを有する。これらの溶液またはゲルは通常、透明な容器あるいは光取り出し部が透明で他の部分が不透明(黒色)な容器内に収容され、その状態で水素分布を可視化しようとする材料に取り付けられる。 第2の発明においては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して述べたことが成立する。 第3の発明は、 ルシゲニンからなる水素分布の可視化用発光試薬である。 第4の発明は、 ルシゲニンと水素との反応による化学発光を用いることを特徴とする水素検出方法である。 第5の発明は、 ルシゲニンからなる水素検出試薬である。 第3〜第5の発明においては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して述べたことが成立する。 上述のように構成されたこの発明においては、化学試薬と水素との反応による化学発光を光検出装置を用いて検出することにより、金属などの材料中の水素分布を容易に可視化することができる。また、発光強度の測定により水素の定量分析を容易に行うことができる。また、この発光の位置および強度をCCDカメラなどを用いて計測することにより、水素分布の経時変化をリアルタイムで観察することができ、リモートコントロールによる遠隔測定を行うこともできる。 第1図は、この発明の第1の実施形態による水素分布可視化システムを示す略線図、第2図は、この発明の第1の実施形態による水素分布可視化システムにおいて用いるルシゲニン溶液の発光強度の経時変化を示す略線図、第3図A、第3図B、第4図、第5図A、第5図B、第6図Aおよび第6図Bは、この発明の第1の実施形態による水素分布可視化システムによる化学発光の測定結果を示す写真、第7図は、この発明の第2の実施形態による水素分布可視化システムを示す略線図、第8図は、CCDカメラを用いて金属中のトリチウム分布を可視化する方法を説明するための略線図、第9図は、CCDカメラを用いて金属中のトリチウム分布を可視化した例を示す写真、第10図は、ラジオルミノグラフ法により金属中のトリチウム分布を可視化した例を示す写真である。 符号の説明 11、16 容器 12 試料 13 発光試薬を含む溶液 14 CCDカメラ 15 高温配管 以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。 第1図はこの発明の第1の実施形態による水素分布可視化システムを示す。 第1図に示すように、この水素分布可視化システムにおいては、容器11内に、水素を含有する試料12が入れられており、この試料12の最表面よりも上の深さまで、発光試薬を含有する溶液13が入れられている。容器11の上方にはCCDカメラ14が設置され、このCCDカメラ14により容器11を撮像することができるようになっている。このCCDカメラ14としては、光子1つ1つを検出することができる超高感度のものが用いられる。このCCDカメラ14の出力は、図示省略したイメージインテンシファイヤ・コントローラおよびイメージプロセッサに送られ、RGBカラーモニターに映像を表示することができるとともに、コンピュータにより所定の演算処理を行うことができるようになっている。 次に、この水素分布可視化システムの使用方法について説明する。 まず、容器11内に、あらかじめ調製された、発光試薬を含有する溶液13を入れた後、この溶液13の発光強度がピークを過ぎるまで、好適には例えばピーク強度の1/2以下の発光強度になるまで放置しておく。これによって、溶液13自体の発光によるバックグラウンド発光を低く抑えることができる。次に、この溶液13内に、水素を含有する試料12を浸漬する。溶液13は試料12の最表面が完全に覆われる深さまで入れておく。こうして溶液13が試料12の表面に接触するが、このとき、溶液13中の発光試薬と試料12の表面の水素とが反応して化学発光が引き起こされる。この化学発光は、CCDカメラ14によりフォトンカウンティング(photon counting)撮像される。ここで、フォトンカウンティング撮像とは、光子1つ1つを検出し、一定時間積算することにより映像を作り出す撮像方式である。こうして撮像された発光の位置および強度を示す映像は、RGBカラーモニターに表示される。 実施例について説明する。 発光試薬としてルシゲニンを用いた。ルシゲニン溶液はNaOH水溶液にルシゲニンを溶解させて作製した。その際のNaOHの濃度は10mol/m3、20mol/m3、50mol/m3、100mol/m3とし、ルシゲニンの濃度は0.1mol/m3とした。 NaOHの濃度を100mol/m3、ルシゲニンの濃度を0.1mol/m3としたルシゲニン溶液の発光強度の経時変化を第2図に示す。ルシゲニンは、アルカリ溶液に溶解させただけで微かな発光を示すが、第2図に示すように、発光強度は14時間付近で最大となり、その後減衰する。発光強度がピークを過ぎて、溶液自体の発光が抑えられてきた状態でのルシゲニン溶液を用いて測定すると、バックグラウンド発光と水素による化学発光との区別が明瞭になる。例えば、ルシゲニン溶液を作製してから約30時間以上経過すると、バックグラウンド発光の強度はピーク強度の1/2以下に減衰する。 一方、試料12として、5×5×0.3mm3に切り出したPd片を用い、これに電気化学的陰極チャージ法(電解液1kmol/m3 NaOHaq.、電流密度200A/m2)により2時間水素を添加した。そして、この水素を添加したPd片を、作製後36時間経過したルシゲニン溶液(100mol/m3 NaOH、0.1mol/m3 ルシゲニン)に浸漬し、暗所でCCDカメラ(浜松フォトニクス社製C2400−35)を用いてフォトンカウンティング撮像を行った。その結果を第3図Aおよび第3図Bに示す。第3図Aはフォトンカウンティング撮像を行う前の瞬間静止画像、第3図Bは測定されたフォトンカウンティング像(光子積算像)である。第3図B中の1〜5で示される位置における平均強度(カウント数/画素)はそれぞれ683.0、158.5、35.9、42.6、31.5である。第3図Aおよび第3図B中、右側の試料は水素を添加したPd片、左側の試料は水素無添加のPd片である。第3図Bから分かるように、水素を添加したPd片は明るく観察され、発光しているのがよく分かるのに対し、水素無添加のPd片はほとんど発光が観察されない。水素を添加したPd片だけが発光することから、この発光はルシゲニン溶液と水素との反応による化学発光であることが分かる。 発光試薬としてルシゲニンを用いた。ルシゲニン溶液はNaOH水溶液にルシゲニンを溶解させて作製した。その際のNaOHの濃度は1kmol/m3とし、ルシゲニンの濃度は0.1mol/m3とした。 試料12として、5×5×0.3mm3に切り出したPd片を用い、これに電気化学的陰極チャージ法(電解液1kmol/m3 NaOHaq.、電流密度200A/m2)により2時間水素を添加した。そして、この水素を添加したPd片を、作製後36時間経過したルシゲニン溶液(1kmol/m3 NaOH、0.1mol/m3 ルシゲニン)に浸漬し、暗所でCCDカメラ(浜松フォトニクス社製C2400−35)を用いてフォトンカウンティング撮像を行った。測定されたフォトンカウンティング像を第4図に示す。第4図に示すように、Pd片を縁取るように発光が起きていることが分かる。 発光試薬としてルシゲニンを用いた。ルシゲニン溶液はNaOH水溶液にルシゲニンを溶解させて作製した。その際のNaOHの濃度は1kmol/m3とし、ルシゲニンの濃度は0.1mol/m3とした。 試料12として、5×5×0.3mm3に切り出したFe片を用い、これに電気化学的陰極チャージ法(電解液1kmol/m3 NaOHaq.、電流密度200A/m2)により2時間水素を添加した。そして、この水素を添加したFe片を、作製後36時間経過したルシゲニン溶液(1kmol/m3 NaOH、0.1mol/m3 ルシゲニン)に浸漬し、暗所でCCDカメラ(浜松フォトニクス社製C2400−35)を用いてフォトンカウンティング撮像を行った。測定されたフォトンカウンティング像を第5図Aおよび第5図Bに示す。第5図Aの試料は水素無添加のFe片、第5図Bの試料は水素を添加したFe片である。第5図Aのフォトンカウンティング像の平均強度は6.145、第5図Bのフォトンカウンティング像の平均強度は10.985である。第5図Bから分かるように、水素を添加したFe片は明るく観察され、発光しているのがよく分かるのに対し、水素無添加のFe片はほとんど発光が観察されない。また、第5図Bより、Fe片の表面がほぼ均一に発光していることが分かる。これは、第4図に示すように、Pd片では縁取るように発光が起きているのと異なり、両者で水素の侵入の仕方が異なることを反映した結果であると考えられる。水素を添加したFe片だけが発光することから、この発光はルシゲニン溶液と水素との反応による化学発光であることが分かる。 発光試薬としてルシゲニンを用いた。ルシゲニン溶液はNaOH水溶液にルシゲニンを溶解させて作製した。その際のNaOHの濃度は1kmol/m3とし、ルシゲニンの濃度は0.1mol/m3とした。 試料12として、5×5×0.3mm3に切り出したNi片を用い、これに電気化学的陰極チャージ法(電解液1kmol/m3 NaOHaq.、電流密度200A/m2)により24時間水素を添加した。そして、この水素を添加したNi片を、作製後36時間経過したルシゲニン溶液(1kmol/m3 NaOH、0.1mol/m3 ルシゲニン)に浸漬し、暗所でCCDカメラ(浜松フォトニクス社製C2400−35)を用いてフォトンカウンティング撮像を行った。測定されたフォトンカウンティング像を第6図Aおよび第6図Bに示す。第6図Aの試料は水素無添加のNi片、第6図Bの試料は水素を添加したNi片である。第6図Aのフォトンカウンティング像の平均強度は14.665、第6図Bのフォトンカウンティング像の平均強度は20.695である。第6図Bから分かるように、水素を添加したNi片は明るく観察され、発光しているのがよく分かるのに対し、水素無添加のNi片はほとんど発光が観察されない。また、第6図Bより、Ni片の表面がほぼ均一に発光していることが分かる。これは、第4図に示すように、Pd片では縁取るように発光が起きているのと異なり、両者で水素の侵入の仕方が異なることを反映した結果であると考えられる。水素を添加したNi片だけが発光することから、この発光はルシゲニン溶液と水素との反応による化学発光であることが分かる。 以上のように、この第1の実施形態によれば、発光試薬と水素との反応による化学発光の位置および強度をCCDカメラ14によるフォトンカウンティング撮像により映像化することができ、それによって試料12中の水素分布を容易に可視化することができるとともに、水素の定量分析を容易に行うこともできる。また、CCDカメラ14によるフォトンカウンティング撮像を継続的に行うことにより、水素分布の経時変化をリアルタイムで観察することもできる。 この第1の実施形態による水素分布の可視化方法は、試料12からの水素の放出挙動や水素脆化機構の解明や水素吸蔵合金の性能向上などに大いに貢献するものである。 次に、この発明の第2の実施形態による水素分布可視化システムについて説明する。 第7図に示すように、この水素分布可視化システムにおいては、水素脆化が起きやすい鉄鋼材料からなる高温配管15の外壁に容器16が、その開放端が外壁と接触するように取り付けられ、この容器16内に発光試薬を含有する溶液13が入れられていて外壁と接触している。高温配管15の外壁と容器16との間は図示省略したシール材でシールされており、溶液13が外部に洩れないようになっている。容器16は透明材料により作られているか、あるいは少なくとも光取り出し部が透明材料により作られ、他の部分が不透明材料により作られており、この容器16内に入れられた溶液13中の発光試薬と高温配管15から放出される水素との反応による化学発光が、この容器16の壁を通って外部に出てくるようになっている。容器16は、高温配管15の熱により加熱されて発光試薬を含有する溶液13が蒸発したり、発光試薬が失活したりするのを防止するために、図示省略した冷却装置により支障が生じない温度に冷却することができるようになっている。この冷却装置としては、冷媒を用いたものやペルティエ効果を利用した電子冷却装置などを用いることができる。容器16の外部にはCCDカメラ14が設置されており、このCCDカメラ14により、容器16の壁を通って外部に出てくる化学発光を、フォトンカウンティング撮像することができるようになっている。 上記以外のことは第1の実施形態と同様である。 この第2の実施形態によれば、例えば原子力発電所などにおいて高温配管15の水素脆化を早期に検出することは安全性の確保の観点から極めて重要であるところ、CCDカメラ14により、容器16の壁を通って外部に出てくる化学発光をフォトンカウンティング撮像することができるため、高温配管15の水素脆化の進行を常時モニターすることができ、水素脆化が危険なレベルに達した時点で原子力発電所の運転を停止するなどの措置を取ることができ、安全性の向上を図ることができる。 次に、この発明の第3の実施形態による水素分布可視化システムについて説明する。 この水素分布可視化システムにおいては、第2の実施形態の容器16内に、発光試薬を含有する溶液13の代わりに発光試薬を含漬させたゲルが入れられていてこれが高温配管15の外壁と接触している。 上記以外のことは第1および第2の実施形態と同様である。 この第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様な利点を得ることができる。 なお、CCDカメラを用いて金属中のトリチウム分布を可視化することができる。この方法では、フォトンカウンティング撮像可能な超高感度CCDカメラを用いて金属試料に添加したトリチウムから放射されるベータ線によるシンチレーション発光を検出し、金属試料中のトリチウム分布の可視化を行う。具体的には、試料として純バナジウムを10×10×1mm3に切り出した後、真空中にて1100℃で24時間焼鈍し、これに電気化学的陰極チャージ法によりトリチウムを添加した。この電気化学的陰極チャージ法では、3.7PBq/m3のトリチウムを含むH2SO4水溶液(0.05kmol/m3)を電解液として用い、室温にて500A/m2で2時間電解を行った。第8図に示すように、こうして得られた試料21のトリチウム添加面に液体シンチレーター22を滴下した後、プラスチックシンチレーター23を密着させ、試料21中のトリチウムから放射されるベータ線が液体シンチレーター22およびプラスチックシンチレーター23に入射した際に生じるシンチレーション発光を超高感度のCCDカメラ24で検出する。このCCDカメラ24を用いてシンチレーション発光の2次元分布を24時間測定し、フォトンカウンティング像を得ることにより、発光の位置および強度を測定することができる。得られたフォトンカウンティング像を第9図に示す。第9図中の1〜4で示される位置の平均強度(カウント数/画素)はそれぞれ33.8、35.4、9.7、10.7、全体では12.7である。第9図から分かるように、試料21上の位置により発光強度は変化しており、試料21上でのトリチウム分布が観察された。比較のために、同じ試料21を用いてラジオルミノグラフ法によりトリチウム分布を測定した結果を第10図に示す。第10図と第9図とを比較すると、ほぼ同様な結果が得られていることが分かる。 金属試料に添加したトリチウムから放射されるベータ線によるシンチレーション発光により水素脆化の危険度を測定する装置では、上記のCCDカメラの代わりに、液体シンチレーションカウンターで用いられている光電子増倍管などを使ってゲル状のシンチレーターやプラスチックシンチレーターを原子炉配管などに貼り付けて検出することも可能である。 以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。 例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値、構成、材料、原料、プロセスなどはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、材料、原料、プロセスなどを用いてもよい。 以上説明したように、この発明によれば、金属を始めとする各種の材料中の水素分布を容易に可視化することができ、水素の定量分析や水素分布のリアルタイム観察を高い分解能で行うことが可能である。この発明は、例えば、原子力発電所の高温配管や高張力鋼を使用した各種製品などの水素脆化が問題となる部分の水素挙動解析およびモニター、あるいは水素吸蔵合金や燃料電池材料中の水素挙動の観測など、各種の応用が可能である。 化学発光を用いて材料中の水素分布を可視化することを特徴とする水素分布の可視化方法。 上記化学発光を光検出装置を用いて検出することにより発光の位置および強度の分布として上記水素分布を可視化することを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。 上記光検出装置がCCDカメラであり、上記化学発光をこのCCDカメラを用いて撮像することにより発光の位置および強度の分布として上記水素分布を可視化することを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。 上記材料に発光試薬を接触させることを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。 上記材料に発光試薬を含有する溶液またはこの溶液を含浸させたゲルを接触させることを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。 発光試薬を含有する溶液を調製した後、この溶液からの発光強度がピークを過ぎてから上記材料にこの溶液を接触させることを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。 発光試薬としてルシゲニンを用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。 化学発光を用いて材料中の水素分布を可視化することを特徴とする水素分布の可視化システム。 発光試薬を含有する接触体と光検出装置とを有し、上記接触体の上記発光試薬を上記材料に接触させたときに引き起こされる化学発光を上記光検出装置を用いて検出することを特徴とする請求の範囲第8項記載の水素分布の可視化システム。 上記化学発光を上記光検出装置を用いて検出することにより発光の位置および強度の分布として上記水素分布を可視化することを特徴とする請求の範囲第9項記載の水素分布の可視化システム。 上記光検出装置がCCDカメラであり、上記化学発光をこのCCDカメラを用いて撮像することにより発光の位置および強度の分布として上記水素分布を可視化することを特徴とする請求の範囲第10項記載の水素分布の可視化システム。 上記接触体が上記発光試薬を含有する溶液を有することを特徴とする請求の範囲第8項記載の水素分布の可視化システム。 上記接触体が上記発光試薬を含有する溶液を含浸させたゲルを有することを特徴とする請求の範囲第8項記載の水素分布の可視化システム。 発光試薬を含有する溶液を調製した後、この溶液からの発光強度がピークを過ぎてから上記材料にこの溶液を接触させることを特徴とする請求の範囲第8項記載の水素分布の可視化システム。 発光試薬としてルシゲニンを用いることを特徴とする請求の範囲第8項記載の水素分布の可視化システム。 ルシゲニンからなる水素分布の可視化用発光試薬。 ルシゲニンと水素との反応による化学発光を用いることを特徴とする水素検出方法。 ルシゲニンからなる水素検出試薬。 化学発光を用いて金属などの材料中の水素分布を可視化する。発光試薬としてルシゲニンを用いる。ルシゲニンが水素と反応することで化学発光が起きる。発光の位置および強度をCCDカメラなどを用いて計測することで水素分布を可視化する。 20060523A16333全文3 【書類名】請求の範囲【請求項1】化学発光を用いて材料中の水素分布を可視化することを特徴とする水素分布の可視化方法。【請求項2】上記化学発光を光検出装置を用いて検出することにより発光の位置および強度の分布として上記水素分布を可視化することを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。【請求項3】上記光検出装置がCCDカメラであり、上記化学発光をこのCCDカメラを用いて撮像することにより発光の位置および強度の分布として上記水素分布を可視化することを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。【請求項4】上記材料に発光試薬を接触させることを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。【請求項5】上記材料に発光試薬を含有する溶液またはこの溶液を含浸させたゲルを接触させることを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。【請求項6】発光試薬を含有する溶液を調製した後、この溶液からの発光強度がピークを過ぎてから上記材料にこの溶液を接触させることを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。【請求項7】発光試薬としてルシゲニンを用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載の水素分布の可視化方法。【請求項8】化学発光を用いて材料中の水素分布を可視化することを特徴とする水素分布の可視化システム。【請求項9】発光試薬を含有する接触体と光検出装置とを有し、上記接触体の上記発光試薬を上記材料に接触させたときに引き起こされる化学発光を上記光検出装置を用いて検出することを特徴とする請求の範囲第8項記載の水素分布の可視化システム。【請求項10】上記化学発光を上記光検出装置を用いて検出することにより発光の位置および強度の分布として上記水素分布を可視化することを特徴とする請求の範囲第9項記載の水素分布の可視化システム。【請求項11】上記光検出装置がCCDカメラであり、上記化学発光をこのCCDカメラを用いて撮像することにより発光の位置および強度の分布として上記水素分布を可視化することを特徴とする請求の範囲第10項記載の水素分布の可視化システム。【請求項12】上記接触体が上記発光試薬を含有する溶液を有することを特徴とする請求の範囲第9項記載の水素分布の可視化システム。【請求項13】上記接触体が上記発光試薬を含有する溶液を含浸させたゲルを有することを特徴とする請求の範囲第9項記載の水素分布の可視化システム。【請求項14】発光試薬を含有する溶液を調製した後、この溶液からの発光強度がピークを過ぎてから上記材料にこの溶液を接触させることを特徴とする請求の範囲第8項記載の水素分布の可視化システム。【請求項15】発光試薬としてルシゲニンを用いることを特徴とする請求の範囲第8項記載の水素分布の可視化システム。【請求項16】ルシゲニンからなる水素分布の可視化用発光試薬。 A16330発明の名称3 【発明の名称】水素分布の可視化方法、水素分布の可視化システムおよび水素分布の可視化用発光試薬 A1633000013 【0001】【技術分野】 この発明は、水素分布の可視化方法、水素分布の可視化システムおよび水素分布の可視化用発光試薬に関し、特に、金属その他の材料中の水素分布の可視化に適用して好適なものである。【背景技術】 金属中の水素の分布を視覚的に捉えて観察することは、金属組織と水素挙動との相関を調べるのに非常に有効な手段である。そのため、水素可視化技術の発展は水素脆化機構の解明およびその防止や水素吸蔵合金の性能向上に大いに貢献すると考えられる。ここで、水素脆化は、金属中に固溶した水素に起因する脆化であり、金属中の水素濃度が極微量でも顕著に現れる。また、水素吸蔵合金は、水素を可逆的に吸収・放出する材料であり、水素の貯蔵・輸送に利用され、水素エネルギー利用のキーマテリアルである。 従来、金属材料表面での水素分布を観察する方法としては、大きく分けて、水素の放射性同位元素であるトリチウムを用いる方法と水素の非放射性同位元素を用いる方法とがある。前者の方法には、オートラジオグラフ法とラジオルミノグラフ法とがある。オートラジオグラフ法は、トリチウムを添加した試料に写真乳剤を乗せて、トリチウムの放射するベータ線の写真黒化作用によりトリチウムの分布を観察す 1 A1633000023 【0002】る方法である。ラジオルミノグラフ法は、トリチウムを添加した試料をイメージングプレートに乗せて、トリチウムの放射するベータ線の強度分布を記録する方法である。後者の方法には、銀デコレーション法と水素マイクロプリント法とがある。銀デコレーション法は、シアン化銀カリウムの水溶液に水素を添加した試料を漬けると、銀イオンが試料表面上の水素原子と反応して銀原子として析出するため、この銀原子の分布を観察して水素の位置を調べる方法である。水素マイクロプリント法は、試料上に写真乳剤粒子を乗せて、試料内部から移動してくる水素により乳剤中の臭化銀(AgBr)粒子を還元して銀粒子とし、この銀粒子を観察して水素分布を調べる方法である。 しかしながら、上記のオートラジオグラフ法は定量分析が困難であり、ラジオルミノグラフ法は分解能が悪く、銀デコレーション法や水素マイクロプリント法は、いずれも水素の放出挙動の定量的な分析やリアルタイムでの観察といったことが不可能であるという問題がありいずれも一長一短であった。 そこで、この発明が解決しようとする課題は、金属を始めとする各種の材料中の水素分布を容易に可視化することができ、水素の定量分析や水素分布のリアルタイム観察を高い分解能で行うことが可能な水素分布の可視化方法およびシステムならびにそれらに用いる発光試薬を提供することにある。 この発明が解決しようとする他の課題は、より一般的には、金属を始めとする各種の材料中の水素を容易に可視化することができ、水素の定量分析を高い分解能で行うことが可能な水素検出方法およびシステムを提供することにある。【発明の開示】 2 A1633000053 【0005】であってもよいが、具体例を挙げると、例えば、水素脆化のおそれがある鉄鋼材料などの各種の金属または合金のほか、水素吸蔵合金、さらには燃料電池用のセパレータなどである。 第2の発明は、 化学発光を用いて材料中の水素分布を可視化することを特徴とする水素分布の可視化システムである。 この水素分布の可視化システムは、典型的には、発光試薬を含有する接触体と光検出装置とを有し、接触体の発光試薬を、水素分布を可視化しようとする材料に接触させたときに引き起こされる化学発光を光検出装置を用いて検出する。そして、化学発光を光検出装置を用いて検出することにより、発光の位置および強度の分布として水素分布を可視化する。接触体と光検出装置とは一体的に配置してもよいし、離して配置してもよい。接触体は、典型的には、発光試薬を含有する溶液あるいは発光試薬を含浸させたゲルを有する。これらの溶液またはゲルは通常、透明な容器あるいは光取り出し部が透明で他の部分が不透明(黒色)な容器内に収容され、その状態で水素分布を可視化しようとする材料に取り付けられる。 第2の発明においては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して述べたことが成立する。 第3の発明は、 ルシゲニンからなる水素分布の可視化用発光試薬である。 第4の発明は、 化学発光を用いて材料中の水素を可視化することを特徴とする水素検出方法である。 第5の発明は、 化学発光を用いて材料中の水素を可視化することを特徴とする水素検出システムである。 5/1


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