生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_鉄補給剤及びその利用
出願番号:2005006829
年次:2005
IPC分類:7,A61K31/395,A23L1/304,A23L2/52,A61K33/26,A61P7/06,A61K35/70


特許情報キャッシュ

鈴木 佐知子 福田 克治 入江 元子 秦 洋二 川戸 章嗣 安部 康久 JP 2005225874 公開特許公報(A) 20050825 2005006829 20050113 鉄補給剤及びその利用 月桂冠株式会社 000165251 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 多田 央子 100118382 鈴木 佐知子 福田 克治 入江 元子 秦 洋二 川戸 章嗣 安部 康久 JP 2004007278 20040114 7A61K31/395A23L1/304A23L2/52A61K33/26A61P7/06A61K35/70 JPA61K31/395A23L1/304A61K33/26A61P7/06A23L2/00 FA61K35/70 20 OL 25 4B017 4B018 4C086 4C087 4B017LC03 4B017LK01 4B017LK06 4B017LL09 4B018MD06 4B018MD07 4B018ME14 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC57 4C086HA11 4C086HA28 4C086NA05 4C086ZA55 4C087BC06 4C087CA10 4C087NA05 4C087ZA55本発明は、シデロフォアを利用した鉄補給剤、鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤、食品添加剤、及び食品組成物に関する。 近年、日本人の食生活及び健康に対する意識は高くなり、食品に安全性及び機能性が求められるようになってきた。通常の食事で不足する成分を補うため栄養補助食品などを摂取する人の割合もますます増えてきている。一方、国民栄養調査によると、鉄の平均摂取量は性別や年代に関係なく、所要量を下回る状態が続いている。また、鉄は吸収率が低く、摂取した量のほとんどが排泄されてしまうことが知られている。このことから、鉄は積極的に摂取する必要がある栄養素のひとつである。鉄が不足した状態が長く続くと鉄欠乏性貧血になるばかりでなく、運動及び学習能力が低下したり、免疫力が低下したりするなど、人体に様々な悪影響を及ぼす。鉄欠乏性貧血を改善するには、一般に、ヒトが吸収し易いヘム鉄を多く含む畜肉又は魚類を摂取することが有効といわれている。しかし、畜肉又は魚類を多量に摂取するには食習慣を大きく変える必要があり、またこれらを過剰に摂取すると栄養のバランスが悪くなる。一方、野菜などの植物に含まれる鉄は非ヘム鉄であり、非ヘム鉄の吸収率はヘム鉄の吸収率の1/2から1/5程度である。さらに非ヘム鉄は食物繊維や緑茶に含まれるカテキン等によって吸収が阻害され易い。従って、植物から充分量の鉄を摂ることは現実的でない。 従来、鉄の補給により貧血を予防又は治療するために、ピロリン酸鉄、クエン酸鉄、硫酸鉄等の各種鉄剤が用いられている。しかし、これらの鉄剤に含まれる鉄は一般に生体内で利用率が低いため、貧血の予防又は治療効果を得るためには、多量を摂取する必要がある。しかし、これらの鉄塩は多量の摂取により胃腸粘膜障害又は嘔吐などを引き起こす恐れがあるため、短期間に多量を摂取することは難しい。従って、貧血予防又は治療効果を得るためには、これらの鉄塩を長期間に亘り摂取する必要がある。従来使用されているその他の鉄補給剤としては、乳汁に含まれるラクトフェリンが挙げられる。ラクトフェリンは鉄結合能を持つ糖タンパクであることが知られている。特許文献1は、鉄−ラクトフェリン複合体の増血効果及びその製造方法を開示している。しかし、鉄−ラクトフェリン複合体は、溶解性が悪く、また鉄の所要量に対し多量のラクトフェリンを摂取する必要があることから、鉄剤としては実用化するには多くの課題が残されている。また非特許文献1は、EDTA−FeNaを有効成分とする鉄強化剤の吸収の検討結果を開示している。しかし、EDTAは生体内の多くの微量金属に対し強いキレート化作用を有するため、生体内の必要金属をキレート化により不活性化する可能性があることから、EDTA−FeNaを有効成分とする鉄強化剤の長期継続摂取は健康面で懸念される。一方、清酒の醸造においては、カビの一種である麹菌(アスペルギルス・オリゼ;Aspergillus oryzae)を蒸米上に生育させて「麹」を作製し、清酒醸造の副原料として利用している。この麹造りにおいて、麹菌が大量のフェリクローム類、主にデフェリフェリクリシンを生産し、このフェリクローム類が酒造用水由来の鉄イオンをキレート化することにより清酒が着色することが古くから知られている。このように、麹菌は多量のフェリクローム類を生産することが知られているが、清酒醸造においてはフェリクローム類は清酒の品質劣化の原因であることから、その有効利用は全く考えられていない。日本国特許第2884045号「微量栄養素研究」、第18集、第25〜28頁(2001)本発明は、生体内への鉄の吸収率が高い鉄補給剤、鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤、食品添加剤、及び食品組成物を提供することを課題とする。 上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、以下の知見を得た。(1) 鉄欠乏による貧血は、肝臓の貯蔵鉄が欠乏する第1段階、血清中の鉄が欠乏する第2段階、及び、ヘモグロビン合成能が低下して貧血症状が現れる第3段階を経て進行する。また鉄欠乏性貧血はこの逆の段階を経て快復する。 シデロフォアの3価鉄キレート錯体は、鉄欠乏性貧血ラットに摂取させた場合、生体内に効率的に吸収されて血清中の鉄濃度及び血中ヘモグロビン濃度を増加させ、さらに肝臓の貯蔵鉄も増加させる。従って、シデロフォアの3価鉄キレート錯体は、鉄欠乏による各種症状、特に鉄欠乏性貧血の予防、改善又は治療剤として有用である。(2) シデロフォアの3価鉄キレート錯体は、ラットに摂取させた場合、体重増加量、摂食量、肝機能及び腎機能に悪影響を与えないため、安全な鉄補給剤である。(3) シデロフォアの3価鉄キレート錯体は、水に対する溶解性が高く、鉄化合物が沈殿することがある酸性条件下でも高い水溶性を示すため、液状食品への添加剤として使用し易い。(4) シデロフォアの3価鉄キレート錯体は、広いpH範囲の下での加熱加圧に対して極めて安定であり、変性しない。従って、医薬組成物又は食品組成物の成分として使用する場合に、これらの組成物を加熱加圧滅菌できる。(5) シデロフォアの3価鉄キレート錯体を0.05〜10mg/ml含む液体状食品組成物は、無理のない摂取スケジュールで鉄欠乏性貧血を効果的に予防又は改善できるとともに、副作用が生じない。(6) シデロフォアの3価鉄キレート錯体を0.1〜5mg/g含む固体状食品組成物は、無理のない摂取スケジュールで鉄欠乏性貧血を効果的に予防又は改善できるとともに、副作用が生じない。 本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下の鉄補給剤などを提供する。 項1. シデロフォアと3価鉄イオンとを含む鉄補給剤。 項2. シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体の形態で含まれている項1に記載の鉄補給剤。 項3. シデロフォアがヒドロキサム酸を含むものである項1又は2に記載の鉄補給剤。 項4. 上記キレート錯体がフェリクローム類である項3に記載の鉄補給剤。 項5. フェリクローム類がフェリクリシンである項4に記載の鉄補給剤。 項6. シデロフォアと3価鉄イオンとを含む鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。 項7. シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体の形態で含まれている項6に記載の鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。 項8. シデロフォアがヒドロキサム酸を含むものである項6又は7に記載の鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。 項9. 上記キレート錯体がフェリクローム類である項8に記載の鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。 項10. フェリクローム類がフェリクリシンである項9に記載の鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。 項11. シデロフォアと3価鉄イオンとを含む鉄補給用食品添加剤。 項12. シデロフォアと3価鉄イオンとを含む鉄欠乏性貧血の予防又は改善用食品添加剤。 項13. シデロフォアと3価鉄イオンとを含む食品組成物。 項14. シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体の形態で含まれている項13に記載の食品組成物。 項15. 固形状の食品組成物中に、シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体に換算して0.1〜5mg/g含まれている項13又は14に記載の食品組成物。 項16. 液体状の食品組成物中に、シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体に換算して0.05〜10mg/ml含まれている項13又は14に記載の食品組成物。 項17. 食品が、酒類、茶類、コーヒー類、スポーツドリンク類、清涼飲料水、乳飲料、及びスープからなる群より選ばれる飲料である項16に記載の食品組成物。 項18. 鉄補給用の項13〜17のいずれかに記載の食品組成物。 項19. 鉄欠乏性貧血の予防又は改善用の項13〜17のいずれかに記載の食品組成物。 項20. シデロフォアと3価鉄イオンとを含む、以下の(i)〜(vi)のいずれかの食品組成物。(i) 鉄を補給する作用を有することを特徴とし、鉄を補給するために用いられる旨の表示を付した食品組成物(ii) 鉄を補助する作用を有することを特徴とし、鉄を補助するために用いられる旨の表示を付した食品組成物(iii) 鉄を強化する作用を有することを特徴とし、鉄を強化するために用いられる旨の表示を付した食品組成物(iv) 鉄を付加する作用を有することを特徴とし、鉄を付加するために用いられる旨の表示を付した食品組成物(v) 体内の鉄含量を正常に保つ作用を有することを特徴とし、体内の鉄含量を正常に保つために用いられる旨の表示を付した食品組成物(vi) 体内の鉄不足を解消又は軽減する作用を有することを特徴とし、体内の鉄不足を解消又は軽減するために用いられる旨の表示を付した食品組成物 従来2価鉄イオンの方が生体内への吸収率が高いといわれているが、本発明者により、シデロフォアの3価鉄キレート錯体は、生体内に効率的に吸収されて、血清中の鉄濃度、血中ヘモグロビン濃度、及び肝臓中の貯蔵鉄濃度を増加させることが始めて見出された。 従って、シデロフォアと3価鉄イオンとを含む組成物は、鉄補給剤、又は鉄欠乏性貧血の予防若しくは治療剤のような医薬製剤として好適に使用できる。また、シデロフォアと3価鉄イオンとを含む食品組成物は、鉄を補給し、鉄欠乏性貧血を予防又は改善することができる。また、シデロフォアと3価鉄イオンとを含む組成物は、食品に添加することにより、食品に、鉄補給作用や鉄欠乏性貧血の予防又は改善作用を与えることができる。 この鉄キレート錯体は、清酒や酒粕のような麹を用いた食品に元来含まれていることから、その安全性は歴史的に証明されている。また後述するように、肝機能・腎機能、体重増加量、摂食量などを低下させず、生体に悪影響を及ぼさないことが判明した。従って、鉄欠乏による各種症状の改善又は治療のためのみならず、予防のために継続的に使用するのに適している。同様に、健常人が摂取する機能性食品又は特定保健用食品などとしても好適である。 また、シデロフォアの3価鉄キレート錯体は、麹を用いた食品に元来含まれていることからも分かるように、強い味や臭いを有さないため、医薬品や食品の成分、特に食品添加物として使用し易い。また、水に溶解し易いため、シロップ剤のような剤型に成型し易く、また液状食品の添加物として使用し易い。また低pHの溶液にも溶解し易いため、ドレッシングのような酸性液状食品にも添加できる。特に、鉄化合物のいくつかはpH=4以下の溶液中で沈殿を生じることがあるが、シデロフォアはこのような酸性溶液中でも高い水溶性を示すことが特長の一つである。 また、高温高圧処理に対して耐性を示し、高温高圧滅菌によっても変性しない又は変性し難いため、医薬品又は食品の成分として使用する場合に、加熱加圧滅菌できる。特に加圧処理に耐性を示すことから、殺菌条件の厳しいレトルト食品への添加剤としても利用できる。さらに、広いpH範囲で熱及び圧力に耐性を示すことから、医薬又は食品に添加する場合に、医薬又は食品の製造工程を制限せず、多様な製造工程が可能になる。 さらに、一般に配位子と金属イオンとが別個に存在するより錯体を形成する方が低エネルギー状態、即ち化学的に安定な状態になる。このことから、シデロフォアには鉄イオンが示す過酸化物生成反応の促進作用が見られない。(Metal.Lons Biol.Syst.,Vol35,p37)このように、生体に有害な過酸化物生成を促進しない点でも、シデロフォアは食品や医薬品として利用価値が高い。 さらに、シデロフォアと3価鉄イオンとのキレート錯体は、一般に鉄を不溶化させる食品成分として知られているフィチン酸やタンニン酸のような物質の存在下でも不溶化され難いことから、シデロフォア及び3価鉄イオンはどのような食品に含まれる場合にも、鉄補給効果や鉄欠乏性貧血の予防又は治療効果が効率的に得られる。 以下、本発明を詳細に説明する。(I)鉄補給剤・鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤 本発明の鉄補給剤及び鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤は、シデロフォアと3価鉄イオンとを含み、特にこれを有効成分として含む。シデロフォアと3価鉄イオンとは別々に含まれていてもよく、又は、キレート錯体として含まれていてもよい。シデロフォア 「シデロフォア」には、3価鉄イオンをキレート化できる化合物が含まれる。 シデロフォアの由来は特に限定されず、どのような生物に由来するものであってもよい。多くの微生物は、外界の鉄濃度が低いときに必須成分である鉄を効率的に取り込むためにシデロフォアを生産する。微生物は容易に増殖させることができるため、微生物を用いることによりシデロフォアを容易に大量生産することができる。この点で微生物に由来するシデロフォアが好ましい。さらに、シデロフォア合成酵素群をコードする遺伝子の組換えによりシデロフォアを多量に生産する宿主を容易に作製できる点でも、微生物に由来するシデロフォアが好ましい。 微生物由来のシデロフォアの種類は特に限定されない。例えば、シデロフォアと3価鉄イオンとのキレート錯体として、エンテロバクチン、ビブリオバクチン、アグロバクチン、アングイバクチンのようなカテコール類;コプロゲン、フェリクローム類、フェリオキサミン、N,N',N''―トリアセチルフザリニンCのようなヒドロキサメート類;及びリゾフェリンのようなポリカルボキシレート類などが挙げられる。 特に、鉄キレート力の点で、ヒドロキサメート類(ヒドロキサム酸を含むシデロフォア)が好ましい。その中でも安定性の点で、環状であるフェリクローム類がより好ましい。 フェリクローム類は、3個のヒドロキサム酸を含む環状ペプチド化合物の総称であり、下記一般式(1)で表される化合物を含む。(式中、R1は水素原子、又はヒドロキシメチル基を示し;R2は水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基を示し;R3、R4、R5は、同一又は異なって、メチル基、N5−(トランス−5−ヒドロキシ−3−メチルペント−2−エノイル)基、N5−(シス−5−ヒドロキシ−3−メチルペント−2−エノイル)基、又はN5−(トランス−4−カルボキシ−3−メチルペント−2−エノイル)基を示す。) 一般式(1)の化合物の中では、フェリクローム、ジグリシルフェリクローム、フェリクリシン、フェリクロームC、フェリクロシン、アスペルクロームD1、アスペルクロームB1、フェリブリン、フェリロジン、フェリクロームA、デス(ジセリルグリシル)フェリロジン(フェリロジンにおいて=Ser−Ser−Gly−を除いた化合物)が好ましく、フェリクリシンが最も好ましい。 これらの化合物の一般式(1)における官能基であるR1〜R5を以下の表1にまとめて示す。 これらのフェリクローム類は、アスペルギルス属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ウスティラゴ(Ustilago)属などの真菌により生産される。アスペルギルス属糸状菌であるアスペルギルス・オリゼは、清酒、味噌、醤油などの生産において使用されてきたため、ヒトは古くからフェリクローム類を摂取してきた。従って、フェリクロームは、その安全性が歴史的に確認されている点で好ましい。麹菌が生産するフェリクローム類の中でもフェリクリシンは、アスペルギルス・オリゼが比較的多量に生産するため、生産性がよい点で好ましい。 本発明において、シデロフォアは、天然型シデロフォアの他、第二鉄のキレート化作用を有する天然型シデロフォアの誘導体も使用できる。天然型シデロフォアの誘導体としては、アセチル化、ニトロ化したものや、アミノ酸の一部が置換されたもの等が挙げられる。 シデロフォアは、生物から回収することにより製造できる。生物を鉄制限下で生育させると、鉄を含まないデフェリ体(シデロフォア)が生成される。このデフェリ体に鉄を加えることにより通常3価鉄イオンをキレート化した錯体となる。生物から回収されたシデロフォアは粗標品のままであってもよく、精製されたものであってもよい。 シデロフォアの精製は、公知の精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティのような各種クロマトグラフィー等により行えばよい。例えば、糸状菌からシデロフォアを回収する場合は、液体培養して上清中に生産されたものを回収してもよく、固体培養して固体培養物から水又は緩衝液を用いて抽出した抽出液から回収してもよい。いずれにしても本発明の鉄補給剤及び鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤には、例えば生物由来の夾雑物が含まれる場合がある。 またシデロフォアは、市販品を購入することもできる。また、これらのシデロフォアの混合物であってもよい。フェリクリシン フェリクリシンを構成する配位子であるデフェリフェリクリシンは、麹造り(固体培養)においてアスペルギルス・オリゼが多量に生産することが知られているフェリクローム類の1種である。アスペルギルス・オリゼが生産するフェリクローム類の殆どがデフェリフェリクリシンである。デフェリフェリクリシンは3価鉄イオンをキレート化してフェリクリシンになる。 デフェリフェリクリシンは、例えば以下の方法でアスペルギルス・オリゼから回収することができる。即ち、アスペルギルス・オリゼを培養する培地として、例えばポテトデキストロース培地(ニッスイ社)または最少培地(2%グルコース(又はスターチ)、0.3%NaNO3、0.2%KCl、0.1%K2HPO4、0.05%MgSO4、pH6.0)等を使用できる。培地は、固体培地でも液体培地でもよいが、デフェリフェリクリシンを回収し易い点で、液体培地を使用することが好ましい。また、米麹のような固体培地も、そこからデフェリフェリクリシンを回収、精製することなく、そのまま食品組成物に使用できる点で好ましい。 培養温度は、アスペルギルス・オリゼの生育可能温度範囲であればよく、例えば25〜42℃程度が挙げられる。培養時間は、その他の条件によって異なるが、通常2〜7日間程度とすればよい。 培養終了後、菌体をろ過後、培養液からフェリクリシンを回収する。さらに、この培養上清を、公知のタンパク質精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティなどの各種クロマトグラフィーに供することにより精製デフェリフェリクリシンが得られる。3価鉄イオン シデロフォア(デフェリ体)と3価鉄イオンとが混合されることにより、通常、速やかにキレート錯体が生成する。本発明の鉄補給剤又は鉄欠乏性貧血の予防若しくは治療剤が投与されると、3価鉄イオンは、シデロフォアとのキレート錯体の形態で、血中ヘモグロビン濃度、血清中鉄濃度、及び肝臓中鉄濃度を効果的に向上させる。 鉄補給剤及び鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤中に含まれるシデロフォアと3価鉄イオンとの比率は、モル比で、通常1〜5:1程度が好ましく、1〜2:1程度がより好ましい。シデロフォアと3価鉄イオンとは同モル程度含まれることが通常最も好ましい。製造方法 本発明の鉄補給剤及び鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤は、シデロフォアと3価鉄イオンとを混合すること、又は、組み合わせることにより製造できる。製剤 本発明の鉄補給剤及び鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤において、シデロフォア及び3価鉄イオン、好ましくはこれらのキレート錯体は、薬学的に許容される各種担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、付湿剤等が含まれる)と配合して、適当な製剤とされる。また、この製剤には慣用の添加剤が含まれていてよい。 製剤形態は、特に限定されず、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、座剤等の非経口投与剤などの各種製剤形態を挙げることができる。経口投与剤の方が、非経口投与剤に比べて患者への負担が小さいために、使用し易い。この点、シデロフォア及び3価鉄イオンは、これらを組み合わせて経口投与する場合に、効果的に血清中鉄濃度、血中鉄濃度、及び肝臓中貯蔵鉄濃度などを増加させることができるため、経口投与剤の形態で好適に使用できる。 賦形剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、乳糖、ショ糖、ブドウ糖等の各種の糖類、バレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン等の各種デンプン類、結晶セルロース等の各種セルロース類、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等の各種無機塩類等が挙げられる。 結合剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、結晶セルロース、プルラン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が挙げられる。 崩壊剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。 潤沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などが挙げられる。 付湿剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、大豆リン脂質、グリセリン、ソルビトールなどが挙げられる。 製剤中のシデロフォア及び3価鉄イオンの含有量は、シデロフォアの種類、投与経路、投与対象又は患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、3価鉄キレート錯体の形態での1日投与量が通常20〜170mg程度、より好ましくは40〜80mg程度になる量とすればよい。1日1回投与する場合は、1製剤中にこの量が含まれていればよく、1日3回投与する場合は、1製剤中にこの3分の1量が含まれていればよい。 また、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤のような固形製剤の場合は、製剤中にシデロフォアと3価鉄とがキレート錯体に換算して5〜30重量%程度含まれていればよい。また、シロップ剤のような液体製剤の場合は、シデロフォアと3価鉄とがキレート錯体に換算して0.2〜1重量%程度含まれていればよい。また、注射剤、点滴剤の場合は、シデロフォアと3価鉄とがキレート錯体に換算して0.4〜2重量%程度含まれていればよい。外用剤の場合は、シデロフォアと3価鉄とがキレート錯体に換算して1〜10重量%程度含まれていればよい。座剤の場合は、シデロフォアと3価鉄とがキレート錯体に換算して2〜20重量%程度含まれていればよい。上記の含有量の範囲であれば、鉄補給効果、又は鉄欠乏性貧血の予防又は治療効果が十分に得られるとともに、副作用が現れることがない。 シデロフォアは高温(例えば120℃程度)高圧(例えば200kPa程度)処理によっても変性しない又は変性し難いことから、医薬組成物の成分として用いる場合に、加熱加圧滅菌できるという利点を有する。またシデロフォアは、従来麹を用いた食品に含まれていることから、その安全性が歴史的に確認されており、医薬組成物の成分として使用する場合に副作用が生じない又は適性用量では副作用が生じない。(II)食品添加剤 本発明の食品添加剤は、シデロフォアと3価鉄イオンとを含む添加剤である。これらはキレート錯体の形態で含まれていてもよい。この添加剤は、食品に、鉄補給作用、又は鉄欠乏性貧血の予防若しくは改善作用を与えるための添加剤として好適に使用できる。 食品添加剤には、シデロフォア及び3価鉄イオンの他に、糖類、デンプン類、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、植物油などの担体や、添加剤が含まれていてもよい。食品添加剤中に担体や添加剤が含まれる場合のシデロフォア及び3価鉄イオンの含有量は、キレート錯体に換算して、固形製剤の場合は0.4〜4重量%程度とすることができ、液体製剤の場合は0.04〜0.4重量%程度とすることができる。シデロフォアと3価鉄イオンとの好ましい比率は、医薬製剤について説明した通りである。 食品添加剤の剤形は、特に限定されないが、例えば、粉状、顆粒状、液体状のような剤形とすることができる。(III)食品組成物 本発明の食品組成物は、シデロフォアと3価鉄イオンとを、好ましくはキレート錯体として含む組成物である。 この食品組成物は、鉄補給(言い換えれば、鉄補助、鉄強化、鉄付加、体内鉄含量を正常に保つこと、体内の鉄不足の解消又は軽減)作用や、鉄欠乏性貧血の予防又は改善作用を有することから、これらの目的で用いられる旨の表示を付した食品組成物とすることができる。この食品組成物は、機能性食品、又は特定保健用食品などとして好適に使用できる。この場合、上記錯体は有効成分として含まれている。 シデロフォアの3価鉄錯体は従来清酒に含まれている成分であり、食品の風味を損ねるような味や匂いを有さない。従って、食品の種類は特に限定されない。例えば、飴、ガム、ケーキ、パイ、クッキー、クラッカー、ゼリー、チョコレート、プディング、アイスクリーム、ポテトチップス、羊羹、煎餅、饅頭、中華饅頭のような菓子;酒類、茶類、コーヒー類、スポーツドリンク類、清涼飲料水、スープ、乳飲料のような飲料;ヨーグルト、バター、チーズのような乳製品;ハム、ソーセージ、蒲鉾、竹輪のような練り物;ソース、ドレッシング、マヨネーズ、醤油、味噌、酢、味醂、トマト加工品(ケチャップ、トマトペースト、トマトピューレ)、カレールウ、酒粕、顆粒だしのような調味料;ふりかけ、漬物、佃煮、塩昆布のような常備惣菜類;惣菜;麺、米飯、粥のような主食類などが挙げられる。 シデロフォアは、高い水溶性を有しているため、飲料や、ソース、ドレッシング、醤油、酢、味醂のような液状調味料のような液状食品が好ましく、酒類、茶類、コーヒー類、スポーツドリンク類、清涼飲料水、乳飲料、及びスープのような飲料がより好ましい。最も好ましいのは、酒類、茶類、コーヒー類、スポーツドリンク類、及び清涼飲料水である。また、鉄化合物の水溶性が低くなることがある低pH条件下でも高い水溶性を示すため、マヨネーズやドレッシングのような液状酸性食品の添加剤としても好適に使用できるという利点がある。また前述したように高温高圧処理に耐えるため、本発明の鉄補給剤を添加した食品の加熱加圧滅菌を行えるとともに、レトルト処理のような特殊な製造工程を経ることもできる。さらにシデロフォアは、従来麹を用いた食品に含まれていることから、その安全性が歴史的に確認されている点でも、食品添加物として好適である。 食品組成物中のシデロフォア及び3価鉄イオンの含有量は、シデロフォアの種類、投与対象又は患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、キレート錯体の形態での1日摂取量が、20〜170mg程度、特に40〜80mg程度になる量とすればよい。 また、食品中のシデロフォア及び3価鉄イオンの濃度は、食品の種類などによって異なるが、固体状食品の場合は、キレート錯体に換算して0.1〜5mg/g程度が好ましく、0.2〜3mg/g程度がより好ましく、0.25〜1.5mg/g程度がさらにより好ましい。液状食品の場合は、キレート錯体に換算して0.05〜10mg/ml程度が好ましく、0.1〜5mg/ml程度がより好ましく、0.2〜1mg/ml程度がさらに好ましい。食品の形態によって異なるが、一般的な固形状食品の1回の摂取量は10〜50g程度であり、液体形状の食品の1回摂取量は50ml〜500ml程度であることから、上記の摂取量で1日に必要な鉄イオンを補給することができる。上記範囲であれば、十分な鉄補給効果、又は鉄欠乏性貧血の予防若しくは改善効果が得られるとともに、鉄過剰症になる恐れがない。 液体状食品の中でも、酒類、特に日本酒にシデロフォア及び3価鉄イオンが上記比率で含まれることにより、鉄欠乏性貧血に有効であり、かつ副作用を生じず、さらに飲むときに不快感を抱かせることがない。 本発明の食品組成物には、食品組成物の調製に当たり慣用されている各種添加剤を添加配合することができる。添加剤としては、例えば、安定化剤、pH調整剤、糖類、甘味料、香料、各種ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、賦形剤、可溶化剤、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、湿潤剤、皮膜形成物質、矯味剤、矯臭剤、着色料、保存剤等を例示することができる。 また、本発明の食品組成物は、鉄補給のため、又は、鉄欠乏性貧血の予防若しくは改善のための栄養補助食品、即ちサプリメントとしても好適に使用できる。この場合の食品組成物中には、シデロフォア及び3価鉄イオンの他に、サプリメントの担体として公知の成分が含まれていればよい。このような担体として、例えば糖類、デンプン類、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、植物油が挙げられる。 サプリメント中のシデロフォア及び3価鉄イオンの含有量は、キレート錯体に換算して、30mg〜300mg程度であることが好ましく、60mg〜200mg程度であることがより好ましい。上記範囲であれば、十分に鉄補給効果や鉄欠乏性貧血の予防若しくは改善効果が得られるとともに、多すぎて副作用が現れることがない。 サプリメントの形状は特に限定されないが、例えば、錠剤状、粉状、顆粒状などの形状が挙げられる。(IV)鉄補給方法・鉄欠乏性貧血の予防、改善又は治療方法 シデロフォアの3価鉄キレート錯体は、生体内への鉄の吸収率が高いため、シデロフォアと3価鉄イオンとをヒトに投与することにより、鉄を補給し、鉄の欠乏による、貧血、運動・学習能力低下、免疫力低下等を効果的に予防、改善又は治療することができる。特に、鉄欠乏性貧血を効果的に予防、改善又は治療できる。 鉄補給剤及び鉄補給用組成物の投与対象は、鉄欠乏による症状が現れているヒト又は健常人のいずれであってもよい。また、鉄が欠乏し易い成長期の子供や成人女性も好適な投与対象である。 投与量は、シデロフォアの種類、投与対象の症状、年齢、体重などによって異なるが、キレート錯体の形態での1日投与量が20〜170mg程度、特に40〜80mg程度となる量を1日1回又は数回に分けて投与すればよい。 投与経路は、経口又は非経口のいずれであってもよいが、経口投与する場合にも効果的に血清中鉄濃度を向上させることができることから、簡便な経口投与が好ましい。実施例 以下、本発明を実施例及び試験例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。フェリクリシンの調製米麹を水で抽出した抽出液(デフェリフェリクリシン含有)に、デフェリフェリクリシンと等モルの塩化第二鉄を加えてフェリクリシン溶液を作製した後、限外濾過膜を用いて分子量5000以上のタンパク質などの高分子を除去し、ろ液をカラムクロマトにより濃縮した。フェリクリシンは430nmに極大吸収を示す性質が知られている(Agr.Biol.Chem.,Vol.31,No.12,p1482)ため、上記の手法で調製された溶液をHPLC分析し、430nmの吸収を示す物質の大半がフェリクリシンであることを確認した。 ラットに与えた飼料の鉄濃度はフェリクリシン、水溶性ヘム鉄、クエン酸第二鉄すべてHPLCでなく原子吸光により35ppmに調製した。フェリクリシンのHPLC分析は、430nmに吸収を示す物質がほとんどフェリクリシンであったことを示す定性分析である。 4週齢のSD系雄ラット15匹に、鉄欠乏飼料を35日間自由摂取させて、血液中の平均ヘモグロビン値が6.5g/dlまで低下した鉄欠乏性貧血ラットを作製した。また、対照群の4週齢のSD系雄ラット5匹には鉄含有飼料1を与えた。対照群に与えた鉄含有飼料1の鉄源は通常ラットの飼育飼料に使用されているクエン酸第二鉄であり、その鉄含量はラットの生育に最適とされている35ppmである。 上記の表2における塩類混合1及び塩類混合2は、ハーパーミネラル混合に準じて調製したものであり、以下の表3に組成を示す混合物である。 また表2におけるビタミン混合は、AIN−76ビタミン(コリン添加)に準じて調製したものであり、下記の表4の組成を有する混合物である。 次いで、15匹の鉄欠乏性貧血のラットを3群に分け、それぞれ、以下の鉄含有飼料1、2及び3を3週間自由摂食させた。鉄含有飼料1は鉄源としてクエン酸第二鉄を含み、鉄含有飼料2は鉄源として水溶性ヘム鉄を含み、鉄含有飼料3は鉄源としてフェリクリシンを含む。鉄含有飼料1、2及び3の組成を以下の表5に示す。なお、鉄含有飼料1は表2に示したものと同じである。 表5における塩類混合2、3及び4は以下の表6に組成を示す混合物である。また表5におけるビタミン混合は上記表4に組成を示す混合物である。血中ヘモグロビン濃度の測定 鉄欠乏性貧血にした後に、それぞれ鉄含有飼料1(クエン酸第二鉄)、鉄含有飼料2(ヘム鉄)及び鉄含有飼料3(フェリクリシン)を投与した各群のラットについて、飼料の投与前と投与3週間後に採血をそれぞれ行い、常法により血液中のヘモグロビン濃度を測定した。また、当初から鉄含有飼料1(クエン酸第二鉄)を投与した対照群ラットについては、鉄含有飼料1を投与した。結果を以下の表7に示す。表7中の値は、各群5匹のヘモグロビン濃度の平均値±標準偏差値を示す。 表7から明らかなように、鉄源としてクエン酸第二鉄又はフェリクリシンを含む飼料を摂食した群では、対照群と同じレベルにまでヘモグロビン値が増加した。これに対して、水溶性ヘム鉄を摂取した群では血中ヘモグロビン濃度の回復は認められず、鉄含有飼料摂取後には、ヘム鉄摂取群とフェリクリシン摂取群の間には危険率5%の水準で有意差が認められた。このように、鉄欠乏性貧血症の第3ステップであるヘモグロビン合成能の低下に対して、フェリクリシンを摂取した群ではクエン酸第二鉄と同等の改善効果が認められ、またヘム鉄に較べて有意に優れた改善効果が認められた。血清中鉄濃度の測定 また、鉄含有飼料投与後に各群ラットから全採血した血液より血清を調整し、常法に従い血清鉄濃度を測定した。結果を以下の表8に示す。表8中の値は、各群5匹の血清鉄濃度の平均値±標準偏差値である。 表8から明らかなように、鉄源としてクエン酸第二鉄またはフェリクリシンを含む飼料を摂取した群では、対照群と同じレベルにまで血清鉄濃度が増加した。これに対して、水溶性ヘム鉄を摂取した群では著しく血清鉄が減少しており対照群と比較して危険率1%の水準で有意差が認められた。このように、鉄欠乏性貧血症の第2ステップである循環鉄濃度の低下に対して、フェリクリシンを摂取した群ではクエン酸第二鉄と同等の改善効果が認められ、またヘム鉄に較べて有意に優れた改善効果が認められた。肝臓中鉄濃度の測定鉄欠乏性貧血にした後に、それぞれ鉄含有飼料1(クエン酸第二鉄)、鉄含有飼料2(ヘム鉄)及び鉄含有飼料3(フェリクリシン)を投与した群のラット、及び、当初から鉄含有飼料1(クエン酸第二鉄)を摂食させた対照群ラットについて、鉄含有飼料の3週間の摂食終了後時に肝臓を脱血潅流して摘出し、重量を測定した後、凍結乾燥を行った。また、乾燥肝臓を灰化し原子吸光に供して鉄濃度を測定した。さらに、肝臓の水分含量を計算し、乾燥肝臓における鉄濃度と肝臓の水分含量とから生体内の肝臓に貯蔵されている鉄濃度を求めた。結果を以下の表9に示す。表9中の値は、各群5匹のラットについての肝臓鉄濃度の平均値±標準偏差である。 表9から明らかなように、鉄欠乏飼料を摂食させた群では重度の鉄欠乏性貧血を発症させたため、どの鉄摂取群も対照群と比較して肝臓に貯蔵されている鉄量は減少していた。しかし、各群間に危険率1%の有意差が認められ、鉄源の違いによる貯蔵鉄改善効果の優劣が明らかとなった。即ち、貧血症の第3ステップである貯蔵鉄濃度の低下に対して、フェリクリシンを摂取した群はクエン酸第二鉄摂取群および水溶性ヘム鉄摂取群と比較して有意に優れた改善効果が認められた。肝臓機能・腎臓機能に与える影響の検討鉄欠乏性貧血にした後に、それぞれ鉄含有飼料1(クエン酸第二鉄)、鉄含有飼料2(ヘム鉄)及び鉄含有飼料3(フェリクリシン)を投与した各群のラット、及び、当初から鉄含有飼料1(クエン酸第二鉄)を摂食させた対照群ラットについて、常法に従い血清中のタンパク質濃度、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)濃度、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)濃度、クレアチニン濃度を測定した。結果を以下の表10に示す。表10中の値は、各群5匹のラットについての平均値±標準偏差である。aを付した数値とbを付した数値との間には有意差があることを示す。 表10から明らかなように、いずれの群においても、血清分析値は正常範囲内にあり、肝機能および腎機能の異常を示唆する結果は認められなかった。このことから、鉄源の違いによる臓器機能への影響はなかったものと考えられる。鉄源としてフェリクリシンを摂取した群は全ての検査項目において良好な値を示し、フェリクリシンを摂取することで生体に有害な副作用が生じないことが明らかとなった。体重増加量・摂食量に及ぼす影響の検討 鉄欠乏性貧血にした後に、それぞれ鉄含有飼料1(クエン酸第二鉄)、鉄含有飼料2(ヘム鉄)及び鉄含有飼料3(フェリクリシン)を投与した各群のラット、及び、当初から鉄含有飼料1(クエン酸第二鉄)を摂食させた対照群ラットについて、1匹あたりの体重増加量および摂餌量を以下の表11に示す。体重増加量は各群5匹の平均値±標準偏差である。 表11から明らかなように、水溶性へム鉄を摂取した群は体重増加量が低下したが、対照群に対して有意差は認められなかった。水溶性ヘム鉄摂取群では、貧血による体重増加量の抑制および摂餌量の減少が発生したと考えられる。一方、クエン酸第二鉄摂取群およびフェリクリシン摂取群では、対照群よりも体重増加量および摂餌量が増大していた。このことから、フェリクリシン摂取により、体重増加の抑制および摂食障害などの生体の生育に及ぼす有害な副作用は発生しないと考えられる。フェリクリシンの水への溶解性の検討フェリクリシンの溶解性を他の鉄化合物と比較した。鉄化合物としては実施例1で用いた水溶性へム鉄、クエン酸第二鉄及びフェリクリシンを用いた。これらの鉄化合物の各0.1gをそれぞれpH=2およびpH=7の緩衝液1mlに溶解し37℃で90分間保温した。pH=2の緩衝液としてはグリシン-塩酸緩衝液を使用し、pH=7の緩衝液としてはリン酸緩衝液を使用した。各緩衝液中の緩衝剤の濃度は0.1モル/Lとした。各緩衝液を保温後、遠心分離し、沈殿の有無を目視で確認した。また、上清の鉄濃度を原子吸光法により測定した。結果を以下の表12に示す。表12から明らかなように、フェリクリシンは極めて水溶性が高かった。鉄化合物の中には酸性条件下で沈殿を生じるものがあることが知られている。また上記の結果から明らかなように、塩化第二鉄及びヘム鉄も酸性条件下で沈殿を生じている。これに対して、フェリクリシンは、酸性条件下でも高い水溶性を示した。フェリクリシンの鉄は3価であるが、錯体となることにより高い水溶性を獲得したと考えられる。これにより、生体内で利用しやすい性質となった。フェリクリシンの熱安定性・pH安定性の検討フェリクリシンは430nmに吸収極大を示すことが知られている。この特徴を利用してフェリクリシンのpHおよび熱安定性を試験した。上述したようにして米麹抽出液から調製したフェリクリシンを2.5mg/mlとなるように超純水に溶解した。さらに以下の各緩衝液を用いてフェリクリシン濃度が0.25mg/mlとなるように希釈した。pH=2及び3の各緩衝液としてはグリシン-塩酸緩衝液を使用し、pH=4及び5の各緩衝液は酢酸緩衝液を使用し、pH=6及び7の緩衝液としてはリン酸緩衝液を使用し、pH=8の緩衝液としてはトリス-塩酸緩衝液を使用し、pH=9及び10の緩衝液としてはグリシン-水酸化ナトリウム緩衝液を使用した。各緩衝液中の緩衝剤の濃度は0.1モル/Lとした。各フェリクリシン溶液をネジ付き試験管に入れて試験管を密閉した後、温度120℃、圧力200kPaの条件で 20分間 加圧加熱殺菌した。加熱加圧殺菌の前後で、各溶液の430nmにおける吸光度を測定した。結果を以下の表13に示す。 表13から明らかなように、フェリクリシン溶液中のフェリクリシン濃度はpH=3.0〜10.0の広いpH範囲において高圧加熱殺菌後も低下しなかった。このことから、フェリクリシンは、pH=3.0〜10.0の広いpH範囲において高い熱安定性を有することが分かる。フェリクリシンの食品成分との反応性の検討鉄化合物は食品中のさまざまな成分と結合して不溶化される性質を持ち、これが鉄の吸収率を低下させる原因のひとつといわれている。代表的な鉄吸収阻害成分として知られているタンニン酸、及びフィチン酸とフェリクリシンとの反応性を試験し、これらの鉄吸収阻害成分と他の鉄化合物との反応性と比較した。上述の方法で調製したフェリクリシン、クエン酸第2鉄およびクエン酸第1鉄ナトリウムをそれぞれ鉄として10mg/mlとなるように超純水に溶解した。一方、タンニン酸、及びフィチン酸の0.6%水溶液を作成した。この水溶液のpHを塩酸あるいは水酸化ナトリウムで2.0、4.0、6.0、及び8.0に調整したものをそれぞれ調製した。上記鉄化合物溶液とタンニン酸水溶液あるいはフィチン酸水溶液とを1:9の体積比で混合し37℃で3時間保温することにより、鉄化合物とこれらの鉄吸収阻害成分とを反応させた。この液を15000rpmで5分間、遠心分離し、その上清を分画分子量10000の膜を用いて限外ろ過した。ろ過液の鉄濃度を原子吸光法で測定した。反応液中の最初の鉄濃度(1mg/ml)に対する、反応後の鉄濃度の割合を%で表示したものを以下の表14に示す。表14から分かるように、鉄の不溶化に関係する上記2成分とフェリクリシンンとの反応性は低く、鉄の高い溶解性が維持された。この現象はpH2.0から8.0においてほぼ一定であり、他の鉄化合物と比較して有意に高い値であった。これはフェリクリシンが鉄を含む錯体であるため化学的安定性が非常に高く、他の食品成分と反応し難いことが寄与していると思われる。この結果は、フェリクリシンを鉄不溶化作用を持つ食品とともに摂取した場合においても、鉄が効率よく吸収されることを示唆するものである。酒類(液体状食品)への配合量の検討 清酒100mlに、フェリクリシンを、それぞれ1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、100mg、200mg、500mg、1000mg添加して鉄強化清酒を調製した。得られた鉄強化清酒中のフェリクリシン濃度は、0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、5mg/ml、10mg/mlである。 各鉄補強清酒について、25人のパネラーにより官能試験を行った。結果を以下の表15に示す。表15中、+++は20人以上のパネラーが美味しいと感じたことを示し、++は7〜19人のパネラーが美味しいと感じたことを示し、+は1〜6人のパネラーが美味しいと感じたことを示し、−は美味しいと感じたパネラーがいなかったことを示す。 表15から明らかなように、酒類にフェリクリシンを1mg/ml(0.1重量%)以下、特に0.5mg/ml(0.05重量%)以下、さらに特に0.2mg/ml(0.02重量%)以下の範囲で添加した場合に官能評価が良好であった。菓子(固形状食品)への配合量の検討 クッキー100gに、フェリクリシンを、それぞれ5mg、10mg、20mg、50mg、150mg、300mg、500mg、1000mg、2000mg添加して鉄強化クッキーを調製した。得られた鉄強化クッキー中のフェリクリシン濃度は、0.05mg/g、0.1mg/g、0.2mg/g、0.5mg/g、1.5mg/g、3.0mg/g、5.0mg/g、10mg/g、20mg/gである。 各鉄補強クッキーについて、25人のパネラーにより官能試験を行った。結果を以下の表16に示す。表16中、+++は20人以上のパネラーが美味しいと感じたことを示し、++は7〜19人のパネラーが美味しいと感じたことを示し、+は1〜6人のパネラーが美味しいと感じたことを示し、−は美味しいと感じたパネラーがいなかったことを示す。 表16から明らかなように、クッキーにフェリクリシンを3mg/g(0.3重量%)以下、特に1.5mg/g(0.15重量%)以下、さらに特に0.5mg/g(0.05重量%)以下の範囲で添加した場合に官能評価が良好であった。処方例 以下に、本発明の食品組成物の処方例を示す。<処方例1 クッキー> 小麦粉(薄力粉)100g、ベーキングパウダー2.5g、食塩1.5g、フェリクリシン200mgを混合し、これにバター40gとミルク50gを加え、これをオーブンで180℃、10分間焼き上げ、鉄強化クッキーを得た。得られたクッキーには、フェリクリシンが1.5mg/g含まれていた。<処方例2 ゼリー> ゼラチン5g、ショ糖20g、水50gから膨潤ゼラチンを作る。プレーンヨーグルト140gにフェリクリシン160mgを加え、上記膨潤ゼラチンを加えて冷やす。これを固めて鉄強化ゼリーを得た。得られたゼリーには、フェリクリシンが0.75mg/g含まれていた。<処方例3 飴> 上白糖500g、水飴440gを少量の水に溶解し、さらにフェリクリシン4gを添加して減圧下130℃で煮詰めた。その後、クエン酸3.5g、酒石酸1.5g、脱脂卵黄蛋白分解物1gを添加した。これを冷却して鉄強化飴を得た。得られた飴には、フェリクリシンが5mg/g含まれていた。<処方例4 アイスクリーム> 牛乳1200g、生クリーム310g、上白糖300g、脱脂粉乳60g、脱脂卵黄蛋白分解物1g、増粘安定剤6g、フェリクリシン800mgに水を加えて全量2000mlにして溶解した。これを80℃まで加熱した後、ホモミキサーで予備乳化し、引き続きホモゲナイズした。冷却し熟成させた後バニラエッセンス2gを加えフリージングを行った。その後−40℃まで急冷して鉄強化アイスクリームを得た。得られたアイスクリームには、フェリクリシンが0.4mg/g含まれていた。<処方例5 羊羹> 糸寒天7.5gを溶かし、これに小豆漉し餡660g、グラニュー糖300g、水550ml、フェリクリシン2gを混ぜて溶かして煮詰め、冷やして鉄強化羊羹を得た。得られた羊羹には、フェリクリシンが2mg/g含まれていた。<処方例6 ヨーグルト> 20%脱脂乳を120℃で、3秒間殺菌した後、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・カゼイの種菌を培養してヨーグルトベース400gを得た。さらに、砂糖70g、ペクチン3g、フェリクリシン800mgを水に溶解させ、水を加え全量を600gとした。この溶液を120℃で、3秒間殺菌してシロップを得た。上記のヨーグルトベースとシロップを混合し、香料を1g添加した後、均質化して、鉄強化ヨーグルトを得た。得られたヨーグルトには、フェリクリシンが0.8mg/g含まれていた。<処方例7 牛乳> 牛乳100mlにフェリクリシン40mgを入れてよく撹拌し、鉄強化牛乳を得た。得られた牛乳には、フェリクリシンが0.4mg/ml含まれていた。<処方例8 チョコレート> カカオマス25g、カカオバター15g、全脂粉乳15g、粉砂糖30g、粉ミルク15gとフェリクリシン250mgを混和し、45℃で暖めた後に冷却し、鉄強化チョコレートを得た。得られたチョコレートには、フェリクリシンが2.5mg/g含まれていた。<処方例9 マヨネーズ> 卵黄20gに食塩2.5g、蔗糖1.5g、マスタード1.5g、胡椒0.1g、レモン汁5g、フェリクリシン3.2gを加え、これに酢10gとサラダ油160gとを加えてよく攪拌して鉄強化マヨネーズを得た。得られたマヨネーズには、フェリクリシンが16mg/g含まれていた。<処方例10 ケチャップ> トマト1kgを皮をむいてミキサーにかけ、加熱して煮詰めた後、すりおろしたタマネギ10g、ニンニク3gを加え、さらに砂糖10g、塩2g、フェリクリシン4.8gを加える。弱火にして香辛料(シナモンスティック、クローブ、胡椒、唐辛子)1g、酢を30g加え、一度加熱した後、冷まして鉄強化ケチャップを得た。得られたケチャップには、フェリクリシンが16mg/g含まれていた。<処方例11 カレールウ> 小麦粉(薄力粉)125g、バター100g、カレー粉20gとフェリクリシン1.0gに、少量の水を加えて混和し、固めて鉄強化カレールウを得た。得られたカレールウには、フェリクリシンが4mg/g含まれていた。<処方例12 蒲鉾> 魚のすり身100g、粉末マッシュポテト10g、小麦粉5g、卵白50g、塩2g、砂糖0.2g、みりん10g、フェリクリシン1.3gを加え、これらを混ぜてペースト状にし、蒸し器で蒸して鉄強化蒲鉾を得た。得られた蒲鉾には、フェリクリシンが7mg/g含まれていた。<処方例13 佃煮> 戻した昆布25g、かつおだし150ml、砂糖15g、醤油15g、酢10g、フェリクリシン400mgを混合し、沸騰させてから中火で煮詰めて鉄強化佃煮を得た。得られた佃煮には、フェリクリシンが5mg/g含まれていた。<処方例14 ふりかけ> いりごま15g、味付けごま20g、味付け削り節10g、味付けかつお塩顆粒10g、味付けのり顆粒10g、フェリクリシン1.6gをよく混合して、鉄強化ふりかけを得た。得られたふりかけには、フェリクリシンが25mg/g含まれていた。<処方例15 米飯> 白米150g、水220gとフェリクリシン160mgを混合し、炊飯器で炊き上げ、鉄強化米飯を得た。得られた米飯には、フェリクリシンが0.5mg/g含まれていた。<処方例16 うどん麺> 水400g、塩50gを混合して塩を溶かし、これに小麦粉(中力粉)1000g、フェリクリシン1.6gを混ぜ、よくこねた。固まったらこれをよく伸ばし、5mm幅に切った。これを10分茹でて、その後冷やして鉄強化うどん麺を得た。得られたうどん麺にはフェリクリシンが3mg/g含まれていた。<処方例17 清酒> 清酒100mlにフェリクリシン20mgを加え、よく撹拌して鉄強化清酒を得た。得られた清酒には、フェリクリシンが0.2mg/ml含まれていた。<処方例18 焼酎> 焼酎100mlにフェリクリシン40mgを加え、よく撹拌して鉄強化焼酎を得た。得られた焼酎には、フェリクリシンが0.4mg/ml含まれていた。<処方例19 ワイン> ワイン100mlにフェリクリシン20mgを加え、よく撹拌して鉄強化ワインを得た。得られたワインには、フェリクリシンが0.2mg/ml含まれていた。<処方例20 ビール> ビール100mlにフェリクリシン12mgを加え、撹拌して鉄強化ビールを得た。得られたビールには、フェリクリシンが0.12mg/ml含まれていた。<処方例21 ウィスキー> ウィスキー100mlにフェリクリシン100mgを加え、よく撹拌して鉄強化ウィスキーを得た。得られたウィスキーには、フェリクリシンが1mg/ml含まれていた。<処方例22 ブランデー> ブランデー100mlにフェリクリシン100mgを加え、よく撹拌して鉄強化ブランデーを得た。得られたブランデーには、フェリクリシンが1mg/ml含まれていた。<処方例23 スピリッツ> スピリッツ100mlにフェリクリシン100mgを加え、よく撹拌して鉄強化スピリッツを得た。得られたスピリッツには、フェリクリシンが1mg/ml含まれていた。<処方例24 リキュール> リキュ−ル100mlにフェリクリシン100mgを加え、よく撹拌して鉄強化リキュールを得た。得られたリキュールには、フェリクリシンが1mg/ml含まれていた。<処方例25 みりん> みりん100mlにフェリクリシン400mgを加え、よく撹拌して鉄強化みりんを得た。得られたみりんには、フェリクリシンが4mg/ml含まれていた。<処方例26 茶> お茶100mlにフェリクリシン40mgを加え、よく撹拌して鉄強化茶を得た。得られた茶には、フェリクリシンが0.4mg/ml含まれていた。<処方例27 コーヒー> コーヒー100mlにフェリクリシン40mgを加え、よく撹拌して鉄強化コーヒーを得た。得られたコーヒーには、フェリクリシンが0.4mg/ml含まれていた。<処方例28 スポーツドリンク> 水100ml、果糖5g、ショ糖2g、クエン酸0.3g、ナトリウム20mg、カルシウム2mg、カリウム20mg、アルギニン20mg、イソロイシン10mg、バリン10mg、ロイシン10mg、ビタミンC100mg、β−カロチン1mgにフェリクリシン15mgを加え、よく撹拌して鉄強化スポーツドリンクを得た。得られたスポーツドリンクには、フェリクリシンが0.15mg/ml含まれていた。<処方例29 清涼飲料水> バレンシアオレンジ果汁30ml、レモン果汁3ml、果糖1.5g、クエン酸0.5g、ビタミンC0.1gにフェリクリシン15mgを加え、これに水を加えて100mlとし、よく撹拌した後に炭酸ガスを封入し、鉄強化清涼飲料水を得た。得られた清涼飲料水には、フェリクリシンが0.15mg/ml含まれていた。<処方例30 スープ> ポタージュスープ100mlにフェリクリシン40mgを加え、よく撹拌して鉄強化スープを得た。得られたスープには、フェリクリシンが0.4mg/ml含まれていた。 本発明の鉄補給剤は、鉄欠乏性貧血を始めとする鉄欠乏による症状の予防、改善又は治療のために好適に使用できる。また、本発明の食品添加剤は、鉄補給のため、又は鉄欠乏性貧血の予防又は改善のための機能性食品、又は特定保健用食品への添加剤として好適に使用できる。シデロフォアと3価鉄イオンとを含む鉄補給剤。シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体の形態で含まれている請求項1に記載の鉄補給剤。シデロフォアがヒドロキサム酸を含むものである請求項1又は2に記載の鉄補給剤。上記キレート錯体がフェリクローム類である請求項3に記載の鉄補給剤。フェリクローム類がフェリクリシンである請求項4に記載の鉄補給剤。シデロフォアと3価鉄イオンとを含む鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体の形態で含まれている請求項6に記載の鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。シデロフォアがヒドロキサム酸を含むものである請求項6又は7に記載の鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。上記キレート錯体がフェリクローム類である請求項8に記載の鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。フェリクローム類がフェリクリシンである請求項9に記載の鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤。シデロフォアと3価鉄イオンとを含む鉄補給用食品添加剤。シデロフォアと3価鉄イオンとを含む鉄欠乏性貧血の予防又は改善用食品添加剤。シデロフォアと3価鉄イオンとを含む食品組成物。シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体の形態で含まれている請求項13に記載の食品組成物。固形状の食品組成物中に、シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体に換算して0.1〜5mg/g含まれている請求項13又は14に記載の食品組成物。液体状の食品組成物中に、シデロフォアと3価鉄イオンとがキレート錯体に換算して0.05〜10mg/ml含まれている請求項13又は14に記載の食品組成物。食品が、酒類、茶類、コーヒー類、スポーツドリンク類、清涼飲料水、乳飲料、及びスープからなる群より選ばれる飲料である請求項16に記載の食品組成物。鉄補給用の請求項13〜17のいずれかに記載の食品組成物。鉄欠乏性貧血の予防又は改善用の請求項13〜17のいずれかに記載の食品組成物。シデロフォアと3価鉄イオンとを含む、以下の(i)〜(vi)のいずれかの食品組成物。(i) 鉄を補給する作用を有することを特徴とし、鉄を補給するために用いられる旨の表示を付した食品組成物(ii) 鉄を補助する作用を有することを特徴とし、鉄を補助するために用いられる旨の表示を付した食品組成物(iii) 鉄を強化する作用を有することを特徴とし、鉄を強化するために用いられる旨の表示を付した食品組成物(iv) 鉄を付加する作用を有することを特徴とし、鉄を付加するために用いられる旨の表示を付した食品組成物(v) 体内の鉄含量を正常に保つ作用を有することを特徴とし、体内の鉄含量を正常に保つために用いられる旨の表示を付した食品組成物(vi) 体内の鉄不足を解消又は軽減する作用を有することを特徴とし、体内の鉄不足を解消又は軽減するために用いられる旨の表示を付した食品組成物 【課題】 生体内への鉄の吸収率が高い鉄補給剤、鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤、食品添加剤、及び食品組成物を提供する。【解決手段】 本発明者らは、シデロフォアと3価鉄イオンとのキレート錯体が生体内への吸収率が高いこと、生体内に吸収されて、血中ヘモグロビン濃度、血清中鉄濃度、及び肝臓における貯蔵鉄濃度を有意に増加させること、及び生体機能に悪影響を及ぼさないことを見出した。この知見に基づき、本発明は、シデロフォアと3価鉄イオンとを、好ましくはキレート錯体の形態で含む鉄補給剤、鉄欠乏性貧血の予防又は治療剤、食品添加剤、及び食品組成物を提供するものである。【選択図】なし


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