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タイトル:特許公報(B2)_メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化、およびミオスタチン活性の調節法
出願番号:2004572010
年次:2010
IPC分類:A61K 45/00,A61P 43/00,A61P 21/00,A61P 3/00,A61P 21/04,A61P 35/00,A61P 37/04,A61P 3/04,A61P 3/10,A61K 38/00,C12Q 1/37,G01N 33/50,G01N 33/15


特許情報キャッシュ

リー セ−ジン マクフェロン アレクサンドラ シー. グリーンスパン ダニエル エス. パッパノ ウィリアム エヌ. ウォルフマン ネイル トムキンソン キャシー JP 4547561 特許公報(B2) 20100716 2004572010 20030916 メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化、およびミオスタチン活性の調節法 ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー 505011280 ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション 505098661 ワイス・エルエルシー 309040701 清水 初志 100102978 新見 浩一 100128048 リー セ−ジン マクフェロン アレクサンドラ シー. グリーンスパン ダニエル エス. パッパノ ウィリアム エヌ. ウォルフマン ネイル トムキンソン キャシー US 60/411.133 20020916 US 60/439,164 20030109 US 60/486,863 20030710 20100922 A61K 45/00 20060101AFI20100902BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100902BHJP A61P 21/00 20060101ALI20100902BHJP A61P 3/00 20060101ALI20100902BHJP A61P 21/04 20060101ALI20100902BHJP A61P 35/00 20060101ALI20100902BHJP A61P 37/04 20060101ALI20100902BHJP A61P 3/04 20060101ALI20100902BHJP A61P 3/10 20060101ALI20100902BHJP A61K 38/00 20060101ALI20100902BHJP C12Q 1/37 20060101ALI20100902BHJP G01N 33/50 20060101ALI20100902BHJP G01N 33/15 20060101ALI20100902BHJP JPA61K45/00A61P43/00 111A61P21/00A61P3/00A61P21/04A61P35/00A61P37/04A61P3/04A61P3/10A61K37/02C12Q1/37G01N33/50 ZG01N33/15 Z A61K 45/00 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) 国際公開第02/009641(WO,A1) 特表2002−513768(JP,A) 特表2002−504326(JP,A) HUET,AM. J. CELL PHYSIOL.,2001年11月,V281,P. C1624-C1634 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2001) vol.98, no.16, p.9306-9311 40 US2003029079 20030916 WO2004024890 20040325 2006517525 20060727 40 20060907 長部 喜幸 本発明は、米国立衛生研究所から助成金(HD35887、AR47746、およびGM63471)を得て、部分的に政府の支援を受けて実施された。米国政府は、本発明の一定の権利を有する。発明の背景発明の分野 本発明は一般に、メタロプロテアーゼによるミオスタチン活性の調節に関し、また具体的には、例えば生物体の筋肉の発達を調節する段階を含む、ミオスタチン活性を調節するためのBMP-1/TLDファミリーのメタロプロテアーゼの作動物質または拮抗物質を使用する方法、このようなメタロプロテアーゼの作動物質および拮抗物質を同定する方法、ならびにこのようにして同定された作動物質および拮抗物質に関する。背景情報 ミオスタチンは、骨格筋の成長の適切な調節に不可欠なトランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)ファミリーのタンパク質である。ミオスタチンは、胚発生期に骨格筋系列の細胞で、また成体動物で特異的に発現される分泌タンパク質であり、ミオスタチンのmRNAは、低レベルながら成体動物の脂肪細胞にも認められる。胚発生の初期にミオスタチンのmRNAは、発生中の体節の筋節区画で検出される。胚発生の後期および出生後は、ミオスタチンは、これまで検討されたすべての骨格筋で広く発現されている。 ミオスタチンの機能は、マウスを対象とした遺伝子標的研究で詳細に調べられている。ミオスタチンを欠くマウスは、筋繊維の過形成および肥大のために骨格筋量が劇的かつ広範囲に増加することが報告されており、これはミオスタチンが筋肉成長の負の調節因子であることを意味する。ミオスタチン遺伝子は進化の過程で高度に保存されており、推定される成熟ミオスタチンタンパク質の配列は、マウス、ラット、ヒト、ニワトリ、シチメンチョウ、およびブタで同一であり、水生生物とさえ高度の相同性が認められる。ミオスタチンの機能も保存されており、ミオスタチン遺伝子上の変異は、家畜における筋肉肥大(double muscling)表現型と相関している。 筋肉の成長および発達の調節にミオスタチンが役割を果たすことは、ミオスタチン活性を調節する方法および組成物に、例えばヒトの疾患の治療や家畜生産の改善などに多様に応用可能なことを意味する。ヒトの治療の応用に関しては、ミオスタチンの発現または機能の阻害物質は、筋ジストロフィー症、悪液質、および筋減少症(sarcopenia)などの筋肉消耗障害の治療に臨床的な効果をもたらす場合がある。またミオスタチン欠損動物は、脂肪の蓄積が有意に減じており、ミオスタチンの喪失は、マウスの遺伝モデルにおける肥満やII型糖尿病の進行に防御的に作用する。したがってミオスタチン活性の調節は、肥満やII型糖尿病などの代謝障害の治療にも有用である。さらにこの点に関して、ミオスタチンの発現または機能の阻害物質は、食肉生産の効率上昇に有用な可能性があるだけでなく、脂肪分の少ない肉の生産をもたらす可能性もある。 ミオスタチンの生物学的活性を操作するさまざまな戦略が報告されている。ミオスタチンは前駆体タンパク質として合成され、タンパク質分解による切断を受けて、N末端断片(「プロペプチド」と呼ばれる)とC末端断片を生じる(C末端断片がジスルフィド結合して生じる二量体は生物学的活性のある分子種である)。ミオスタチン活性を阻害する、これまでに報告されている戦略では、ミオスタチンC末端二量体に結合可能で、この活性を阻害する分子を利用している。例えばミオスタチンは2種類のII型アクチビン受容体(Act RIIAおよびAct RIIB)にインビトロで結合し、また切断型の優性阻害型変異体Act RIIBをトランスジェニックマウスで発現させると、トランスジェニックミオスタチンノックアウトマウスに匹敵するほどに筋量が増えたマウスが得られる。 ミオスタチンプロペプチドは、ミオスタチン活性を阻害するためにも使用される。タンパク質分解による切断後に、ミオスタチンプロペプチドは、C末端二量体と非共有結合で結合した状態でとどまり、また同二量体は潜伏型(latent)の不活性な状態で維持される。ミオスタチンプロペプチドは、精製済みのミオスタチンC末端二量体の活性を阻害することが、さまざまなインビトロアッセイ法で報告されており、またトランスジェニックマウスにおけるプロペプチドの過剰発現は、ミオスタチンのヌル変異に特徴的な表現型を生じた。フォリスタチン(follistatin)は、ミオスタチン阻害物質として作用する別のタンパク質である。フォリスタチンは、ミオスタチンを含むさまざまなTGF-βファミリーのタンパク質に結合して、その活性を阻害可能であり、またフォリスタチンを筋肉で過剰に発現するトランスジェニックマウスには、ミオスタチン活性が阻害されることと矛盾することなく、筋肉の成長に劇的な増加がみられる。 上記のミオスタチン阻害物質はそれぞれ成熟型ミオスタチンと特異的に相互作用して、その活性を阻害する。このようなタンパク質と直接相互作用する薬剤を用いてミオスタチンなどのタンパク質の活性を阻害すると、高い特異性がもたらされる一方で、このような方法は、阻害作用を果たす薬剤と結合した状態の全てまたは大半のタンパク質を必要とする場合がある。第1のタンパク質を機能させるために、タンパク質(特に、自身が酵素などの第2のタンパク質によって必ず活性化されるタンパク質)の活性を阻害する代替的な方法は、第2のタンパク質を標的とすることである。このような方法は、酵素などの活性化タンパク質が一般に、その基質と比較してかなり低いレベルで存在するので、有利な場合がある。したがって、酵素などの活性化タンパク質の全てまたは大半が阻害される場合がある可能性はより大きくなる。 ミオスタチンに関しては、一次遺伝子産物であるプロミオスタチンが切断されてシグナルペプチド(プロペプチド)およびC末端断片を生じる段階には少なくとも2種類のプロテアーゼが関与することが知られている(後者は、生物学的なミオスタチン活性を有するホモ二量体を形成する)。しかし残念ながら、これらのプロテアーゼは、他のさまざまなタンパク質にも作用しうるので、このようなプロテアーゼ(例えばシグナルペプチダーゼ)を標的として阻害する薬剤が生きている生物に投与されると、多様で有害な作用を及ぼす恐れがある。したがって、ミオスタチンの活性化および活性の調節に特異的に関与する生物学的分子を同定するニーズがある。本発明は、このニーズを満たし、他の利点を提供する。発明の概要 本発明は、ミオスタチンプロペプチドがミオスタチンC末端二量体との複合体中に存在する段階を含む、ミオスタチンプロペプチドを切断するプロテアーゼの同定に基づく。したがって、このようなプロテアーゼは、C末端ミオスタチンポリペプチドと結合したミオスタチンプロペプチドを含む潜在的に不活性なミオスタチン複合体を、筋肉の成長および発達の負の調節因子である活性型ミオスタチンに変換することができる。メタロプロテアーゼ骨形態形成タンパク質-1/tolloid (BMP-1/TLD)ファミリーのタンパク質に代表される、このようなプロテアーゼは、プロテアーゼ活性を高めるか、もしくは低めるミオスタチン活性を高めるか、もしくは低めることが可能な薬剤の標的となる。したがって本発明は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断およびミオスタチンの活性化を調節する薬剤、ならびにこのような薬剤を例えば、生物体のミオスタチン活性を調節するために使用する方法を提供する。このような薬剤を同定する方法も提供する。 本発明は、ミオスタチンの活性化を調節する方法に関する。このような方法は例えば、ミオスタチンプロペプチドおよびミオスタチンC末端断片(特にC末端断片の二量体)を含む潜伏型ミオスタチン複合体に、ミオスタチンプロペプチドを切断可能なメタロプロテアーゼ、ならびにメタロプロテアーゼによるタンパク質分解によるプロペプチドの切断を増やすか、または減らすことでミオスタチンの活性化を調節可能な薬剤を接触させることで実施することができる。メタロプロテアーゼは特に、プロペプチドが、例えばBMP-1、TLD、tolloid様タンパク質-1 (TLL-1)、またはtolloid様タンパク質-2 (TLL-2)(特に、哺乳動物(m)のTLD (mTLD)、mTLL-1、およびmTLL-2などの哺乳動物のBMP-1/TLDファミリーメンバー)などのBMP-1/TLDファミリーメンバーを含む潜伏型ミオスタチン複合体を含む場合にミオスタチンプロペプチドを切断可能な任意のメタロプロテアーゼの場合がある。 本発明の方法は例えば、潜伏型ミオスタチン複合体およびメタロプロテアーゼに、メタロプロテアーゼによるタンパク質分解によるプロペプチドの切断を増やす薬剤を接触させることでミオスタチンの活性化のレベルを(薬剤の非存在下におけるミオスタチン活性化の基礎レベル以上に)高めるために使用することができるほか、例えば、潜伏型ミオスタチン複合体およびメタロプロテアーゼに、メタロプロテアーゼによるタンパク質分解によるプロペプチドの切断を減らす薬剤を接触させることでミオスタチンの活性化のレベルを(基礎レベル未満に)低めるために使用することができる。この方法は例えば、培養物中の細胞または組織、細胞抽出物、または実質的に精製されたメタロプロテアーゼを含む実質的に精製された試薬、および/または潜伏型ミオスタチン複合体を用いてインビトロで実施することが可能なほか、例えば細胞または組織中でインビボで実施することが可能であり、いずれの手法も生物体を対象にインサイチューで、または生物体から単離することができる(例えば、培養物中に含まれる場合のある細胞を対象にエクスビボ)で実施することが可能である。したがって、この方法は、潜伏型ミオスタチン複合体およびメタロプロテアーゼを含む試料(例えば組織試料および/または体液)に薬剤をインビトロで接触させることで実施可能であり、あるいは、この接触段階は、例えばこのような薬剤を被験対象に投与することでインビボで実施可能である。 遊離のミオスタチンプロペプチド、潜伏型ミオスタチン複合体、およびミオスタチンプロペプチドを切断可能なメタロプロテアーゼは、細胞内または細胞外に存在する場合がある。しかし、このようなプロペプチドまたは潜伏型ミオスタチン複合体は一般に、同じ細胞または細胞種中にはメタロプロテアーゼとともに存在しないので、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断は一般に、メタロプロテアーゼとプロペプチドとの接触に伴い、細胞外で生じる。したがって、薬剤をプロペプチド、複合体、および/またはメタロプロテアーゼに接触させる段階は、部分的には、切断を調節する薬剤の作用機序に依存する。例えば、このような薬剤がメタロプロテアーゼに結合してその構造を、ミオスタチンプロペプチドに対する切断活性を阻害するように変化させることが可能な場合、メタロプロテアーゼを産生する細胞に、分泌型のメタロプロテアーゼがこのような活性を欠くように薬剤を接触させることができるほか、溶媒中の薬剤と接触することでメタロプロテアーゼによるプロペプチドの切断が減じるか、または阻害されるように、メタロプロテアーゼが(例えば生きている生物の血流中に)分泌される溶媒に薬剤を投与することができる。これとは対照的に、薬剤が例えばメタロプロテアーゼとプロペプチドの相互作用を不安定化させるように作用する場合、または薬剤が、プロペプチドに対してメタロプロテアーゼの競合的阻害剤または非競合的阻害剤として作用する場合は、このような薬剤を一般に、メタロプロテアーゼとプロペプチドが相互作用する可能性の高い溶媒(例えば血液)と接触させる。 1つの態様では、このような薬剤は、ミオスタチンプロペプチドを潜伏型ミオスタチン複合体から切り離すメタロプロテアーゼのタンパク質分解活性を低下させることで、ミオスタチンの活性化を、同薬剤の非存在下で生じるか、または生じると考えられるミオスタチンの活性化のレベル未満に減じるか、または阻害する。このような薬剤を被験対象に投与する場合、薬剤は被験対象の筋量の増加もしくは脂肪量の減少、またはこの両方をもたらす場合がある。被験対象は、ミオスタチンが発現される任意の被験対象、特に脊椎動物、例えば哺乳動物種(例えば、ヒツジ種、ブタ種、もしくはウシ種)、鳥類種(例えば、ニワトリやシチメンチョウ)、または魚類種(例えば、サケ、マス、またはタラ)などの、食用として成長させる動物の場合がある。被験対象は、ヒト被験者、例えば筋肉障害(例えば、ジストニアもしくはジストロフィー)の被験者、消耗性疾患(例えば悪液質)の被験者、または臨床的肥満もしくはII型糖尿病などの他の代謝障害の被験者の場合もある。別の態様では、このような薬剤は、ミオスタチンプロペプチドを潜伏型ミオスタチン複合体から切り離すことで、ミオスタチンの活性化を、同薬剤の非存在下で起きるか、または起きる可能性のあるミオスタチンの活性化のレベル以上に高める(高める場合であれば)メタロプロテアーゼのタンパク質分解活性を高める。このような薬剤を被験対象に投与する場合、薬剤は、被験対象における筋量の減少もしくは脂肪量の増加、またはこの両方をもたらす場合がある。 本発明はまた、被験対象の筋量を増加させる方法にも関する。このような方法は例えば、ミオスタチンプロペプチドを切断するプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドのタンパク質分解による切断を減らすか、または阻害することで、細胞中の潜伏型ミオスタチンの活性化を妨げて被験対象の筋量を増やす薬剤を被験対象に投与することで実施することができる。このようなメタロプロテアーゼは、任意のメタロプロテアーゼ、特にmTLD、mTLL-1、およびmTLL-2を含む、BMP-1、TLD、TLL-1、またはTLL-2などのBMP-1/TLDファミリーメンバーの場合がある。筋量を増やす被験対象は一般に脊椎動物であり、例えば、ヒツジ種、ブタ種、またはウシ種などの哺乳動物、ニワトリやシチメンチョウなどの鳥類種、または魚類種を含む、ペット動物または飼育動物の場合があるほか、ヒト被験者の場合がある。 本発明はさらに、被験対象の代謝障害を改善する方法に関する。このような方法は例えば、ミオスタチンプロペプチドを切断するプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドのタンパク質分解による切断を減らすか、または阻害する薬剤を被験対象に投与することで細胞内の潜伏型ミオスタチンの活性化を妨げ、代謝障害を改善するために実施することができる。このような代謝障害は、例えば、関連する筋肉消耗障害と筋ジストロフィー症、悪液質(例えば癌または後天性免疫不全症候群と関連する障害)、もしくは筋減少症と関連する障害、または臨床的肥満もしくは2型糖尿病などの代謝障害の場合がある、ミオスタチンの活性化(もしくは活性)の上昇、または望ましくないミオスタチンの活性化(もしくは活性)が関連する任意の代謝障害の場合がある。代謝障害が改善される被験対象は任意の被験対象の場合があり、一般的には脊椎動物被験対象であり、例えばイヌやネコなどのペット動物、または食用として育てられている動物(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、または魚類)であり、またはヒト被験者の場合がある。障害の改善は一般に、特定の代謝障害をモニタリングする際に用いられる任意のアッセイ法、例えば糖尿病に対する耐糖能試験、または体脂肪解析に対する血清レプチンアッセイ法で確認することができる。 本発明はまた、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチド切断、および潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤を同定する方法にも関する。このようなスクリーニング法は例えば、ミオスタチンプロペプチド、ミオスタチンプロペプチドを切断可能なメタロプロテアーゼ、ならびに試験薬剤を、メタロプロテアーゼによるプロペプチドの切断が十分起きる条件で接触させることで、ならびに試験薬剤の非存在下と存在下を比較時のプロペプチド切断量の変化を検出することで、試験薬剤を、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤であると判定することで実施することができる。ミオスタチンプロペプチドは、単離された状態の場合があるほか、ミオスタチンC末端断片またはミオスタチンC末端二量体をさらに含む潜伏型ミオスタチン複合体の成分の場合がある。 試験薬剤がメタロプロテアーゼによるミオスタチン調節活性を有すると判定される場合、本発明のスクリーニングアッセイ法はさらに、薬剤がミオスタチンプロペプチドの切断またはミオスタチンの活性化を高めるか、または低める量を決定する段階を含む場合がある。例えば、薬剤がメタロプロテアーゼのタンパク質分解活性を細胞内で基礎レベル以上に高めると判定する場合、本発明の方法はさらに、薬剤がミオスタチンの活性化を基礎レベル以上に高める量を決定する段階を含む場合がある。したがって本発明の方法は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を多様に調節する薬剤または薬剤のパネルを得る手段を提供する。このような方法はさらに、所望のレベルのミオスタチン活性を提供するのに有用な特定の薬剤の量を決定する手段を提供する。 試験薬剤との接触に起因するプロペプチドの切断量の差は例えば、プロペプチドまたはプロペプチドの切断産物の検出を、ミオスタチンプロペプチドまたはその切断産物を、その大きさ、電荷、またはこの両方に基づいて検出可能な電気泳動、クロマトグラフィー、または質量分析などの方法で、完全なプロペプチドまたは切断されたプロペプチドに特異的な抗体(完全なプロペプチドと切断されたプロペプチドの両方と結合する抗体ではない)を用いるイムノブロット解析や酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)などの免疫学的アッセイ法で、または例えば、完全なプロペプチドの蛍光が抑えられていて、この抑制段階がプロペプチドの切断に伴い解放される蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ法を含む蛍光ベースのアッセイ法で行うことで検出可能である。検出対象となる完全なミオスタチンプロペプチド、プロペプチド切断産物、またはこれらの組み合わせの相対量に依存して、試験薬剤を、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断および潜伏型ミオスタチンの活性化を高めるか、または低める薬剤として判定することができる。 プロペプチドの切断量の差は、インビトロにおけるミオスタチンとミオスタチン受容体の結合の変化、または細胞表面における発現を検出することで、またはミオスタチン受容体を発現する細胞内におけるミオスタチンが関与する情報伝達の変化を検出することでも検出可能である。アッセイ法が細胞ベースのアッセイ法の場合、細胞は、内因性のミオスタチン受容体を発現する細胞(例えばL6心筋細胞)である場合があるほか、例えばII型アクチビン受容体などのアクチビン受容体をコードするポリヌクレオチドが導入された細胞である、ミオスタチン受容体をコードする導入遺伝子を発現する細胞である場合がある。ミオスタチンが関与する情報伝達の存在は、ミオスタチンと細胞表面の受容体との結合から、ミオスタチンとミオスタチン受容体との結合によって調節される遺伝子の発現に至る、情報伝達経路の任意の段階で検出することができる(本発明のスクリーニングアッセイ法では、このような情報伝達は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断、および潜伏型ミオスタチン複合体の活性化に依存する)。したがって、ミオスタチンが関与する情報伝達は、ミオスタチンとミオスタチン受容体との結合を受容体結合アッセイ法で検出することで、または例えば、検出可能なポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドに使用可能に連結された、例えばTGF-β調節エレメントを含む場合のあるレポーター遺伝子を含む、ミオスタチンによって調節される遺伝子の発現を検出することで検出可能である。したがって本発明は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断およびミオスタチンの活性化を調節する薬剤を提供する(薬剤は、本発明のスクリーニングアッセイ法で同定される)。このような方法はまた、薬剤が、望ましいならば薬剤の比活性を含む、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断、およびミオスタチンの活性化を調節することを確認する際にも有用である。 本発明はまた、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤にも関する。このような薬剤は、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化の作用物質または拮抗物質である場合があり、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を低めるか、もしくは阻害する場合があり、またはメタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を高める場合がある。メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤は、例えばペプチド薬剤、ポリヌクレオチド薬剤、抗体薬剤、または小型有機分子薬剤を含む、任意の種類の分子である場合がある。 メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤は、本明細書ではペプチド薬剤によって例示される。ペプチド薬剤は例えば、ミオスタチンポリペプチドのペプチド部分、またはこのようなミオスタチンのペプチド部分の誘導体を含む場合がある。1つの態様では、ミオスタチンのペプチド部分の誘導体は、ミオスタチンプロペプチドに対応するペプチドである。この態様の1つの局面では、このような誘導体は、メタロプロテアーゼがペプチド薬剤に対して切断活性を高めるか、または低めるような、メタロプロテアーゼ切断部位の変異(例えば、切断部位か、または切断部位に十分近い部位におけるアミノ酸の置換、欠失、または挿入)を有するプロペプチドである。この態様の別の局面では、ミオスタチンのペプチド部分の誘導体は、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を低めるか、または阻害するペプチド薬剤である。メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤は、特定の環境で薬剤の作用もしくは活性を促進する、または薬剤の安定性を高めるか、もしくは低める第2の分子に使用可能に連結される場合がある。例えばペプチド薬剤は、ペプチド薬剤に抗体分子のFcドメインなどのポリペプチドを動作可能に連結させることで、インビボにおけるペプチド薬剤の半減期を長くすることによって安定化可能である。発明の詳細な説明 本発明は、プロペプチドが複合体中にミオスタチンC末端二量体とともに存在する場合に、潜伏型の不活性なミオスタチン複合体が活性ミオスタチンに変換される段階を含む、ミオスタチンプロペプチドを切断するプロテアーゼの同定に基づく。このようなミオスタチンプロペプチド切断活性を有するプロテアーゼは、メタロプロテアーゼ骨形態形成タンパク質-1/tolloid (BMP-1/TLD)ファミリーのタンパク質によって例示される。したがって、このようなプロテアーゼは、プロテアーゼ活性を高めるか、もしくは低めることが可能な薬剤、または同プロテアーゼがミオスタチンプロペプチドの切断を増やすか、または減らすことでミオスタチン活性を高めるか、もしくは低めることが可能な薬剤を同定するための標的および試薬となる。 ミオスタチン(成長分化因子-8;GDF-8)は、シグナルペプチド(アミノ酸残基1〜20の周辺)、ミオスタチンプロペプチドドメイン(アミノ酸残基20〜262または263の周辺)、およびミオスタチンC末端ドメイン(アミノ酸残基が約267または268〜375周辺)を含む、プレプロタンパク質のプロミオスタチンとして発現される。プロミオスタチンポリペプチド、および同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは進化的に高度に保存されている(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、McPherron and Lee, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 94: 12457, 1997; ゲンバンクアクセッション番号AF019619、AF019620、AF019621、AF019622、AF019623、AF019624、AF019625、AF019626、およびAF019627;米国特許第5,994,618号を参照)。プロミオスタチンのポリヌクレオチド、およびコードされたポリペプチドは、本明細書では、ヒトプロミオスタチン(SEQ ID NO: 1および2;プロペプチドはアミノ酸残基20〜263の周辺)、ウシプロミオスタチン(SEQ ID NO: 3および4;プロペプチドはアミノ酸残基20〜262の周辺)、ニワトリプロミオスタチン(SEQ ID NO: 5および6;プロペプチドはアミノ酸残基の約20〜262の周辺)、ならびにゼブラフィッシュプロミオスタチン(SEQ ID NO: 7および8;プロペプチドはアミノ酸残基20〜262の周辺)によって例示される。 ミオスタチンは、2回のタンパク質分解による切断過程で活性化される。最初にシグナル配列(プロミオスタチンのN末端側の先頭の約20残基のアミノ酸残基;例えばSEQ ID NO: 2を参照)が除去され、次に4か所の塩基性切断部位(プロミオスタチンのアミノ酸残基263〜266の周辺)で切断される。切断の結果、26 kDaのN末端プロペプチド(アミノ酸残基20〜262または263の周辺)と、12.5 kDaのC末端ペプチド(C末端のアミノ酸残基266〜267の周辺)が生じる。またC末端ペプチドの二量体は生物学的活性を有する。細胞からの分泌に伴い、ミオスタチンC末端二量体は、ミオスタチンプロペプチドと結合した状態で維持されるために、潜伏型の不活性な状態で維持される(参照として本明細書に組み入れられる、Lee and McPherron, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 98: 9306-9311, 2001)。成体マウスの血液中を循環する潜伏型ミオスタチン複合体は、酸処理によってインビトロで活性化可能である(参照として本明細書に組み入れられる、Zimmers et al., Science 296: 1486-1488, 2002)。 ミオスタチン遺伝子がノックアウトされたマウスは、野生型の同腹仔と比較して筋量が多く、加齢に伴う脂肪の蓄積の有意な減少も示す(参照として本明細書に組み入れられる、McPherron and Lee, J. Clin. Invest. 109: 595-601、2002)。これとは逆に、ミオスタチンをインビボで過剰発現させると、筋肉消耗性症候群である悪液質に特徴的な徴候および症状を生じる(Zimmers et al.、前出、2002)。循環性ミオスタチンのレベルが高いマウスにみられる筋肉消耗は部分的には、ミオスタチンプロペプチドやフォリスタチンなどのミオスタチン結合物質をマウスに投与することで逆転可能である(Zimmers et al.、前出、2002)。以上の結果から、観察される筋肉消耗がミオスタチンの増加に起因することが確認されており、また活性型ミオスタチンのレベルを低下させる方法か、またはミオスタチン活性を低下させるか、もしくは阻害する方法が、筋肉消耗の改善に有用な可能性があることがわかる。ミオスタチンの性質が、魚類からヒトに至る多様な種のなかで高度に保存されていることに鑑みて、以上の結果は、ミオスタチンが例えば癌、後天性免疫不全症候群(エイズ)、および敗血症などのヒトのさまざまな疾患と関連する悪液質、ならびに筋ジストロフィー症などの神経筋障害にも関連することを意味する(参照として本明細書に組み入れられる、Gonzalez-Kadavid et al., Proc. Natl. Acad. Med., USA 95: 14938-14943, 1998を参照)。 適切な骨格筋の機能は、正常なグルコース代謝の維持にも関与し、またインスリンが誘導するグルコースの取り込みに対する骨格筋の耐性は、インスリン非依存性(2型)糖尿病の初期症状である。(McPherron and Lee、前出、2002を参照)。肥満および糖尿病の2つのマウスモデルでは、ミオスタチンの喪失は、マウスモデルにおける加齢に伴う脂肪組織量の増加を妨げ、肥満および糖尿病表現型を緩和した(McPherron and Lee、前出、2002)。したがって、ミオスタチン活性の調節法は、個体における体脂肪の減少と、異常な筋肉機能または肥満と関連する疾患(例えば2型糖尿病)の治療にも有用な可能性がある。 本明細書に記載されているように、ミオスタチンプロペプチドは、遊離の状態でも、またはミオスタチンC末端二量体との複合体の一部の状態であっても、BMP-1/TLDファミリーのメタロプロテアーゼで切断されうる。また、このような切断は、プロペプチドの阻害作用からミオスタチンC末端二量体を解放することで活性型ミオスタチンを産生する。したがって、BMP-1/TLDプロテアーゼは、ミオスタチン活性を調節可能であることから、生物体の筋量を増やすか、もしくは減らす、または肥満を抑制もしくは予防する薬剤の標的となる。したがって本発明は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断を調節する薬剤、およびメタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤の同定法を提供する。 本発明のスクリーニング法は、例えば、ミオスタチンプロペプチドを切断可能なメタロプロテアーゼであるミオスタチンプロペプチドに試験薬剤を、メタロプロテアーゼによるプロペプチドの切断が十分起きる条件で接触させ、試験薬剤の非存在下と試験薬剤の存在下とにおけるプロペプチドの切断量の変化を比較して検出することによって、試験薬剤を、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断を調節する薬剤として判定することで実施できる。ミオスタチンプロペプチドは、単離された状態の場合があるほか、ミオスタチンC末端断片またはミオスタチンC末端二量体をさらに含む潜伏型ミオスタチン複合体の成分である場合がある。 本発明のスクリーニングアッセイ法の対象となるメタロプロテアーゼは、ミオスタチンプロペプチドを切断する任意のプロテアーゼ、具体的には、C末端ミオスタチン断片またはこの二量体とともに潜伏型ミオスタチン複合体中に存在して、活性型ミオスタチンが潜伏型ミオスタチン複合体から生じる場合にプロペプチドを切断するメタロプロテアーゼである場合がある。このようなメタロプロテアーゼは、BMP-1 (Wozney et al.、Science 242:1528-1534、1988)、哺乳動物のTolloid (mTLD; Takahara et al., J. Biol. Chem. 269: 32572-32578, 1994)、哺乳動物のTolloid様1 (mTLL-1; Takahara et al., Genomics 34: 157-165, 1996)、および哺乳動物のTolloid様2 (mTLL-2; Scott et al., Devel. Biol. 213: 283-300, 1999)の4種類の哺乳動物タンパク質を含むBMP-1/TLDファミリーのメタロプロテアーゼによって例示される。BMP-1/TLDファミリーのメタロプロテアーゼはまた、例えばツメガエル(Xenopus)(Xolloid;UVS.2)、魚類(choriolysin HおよびL;ゼブラフィッシュのTolloid)、ウニ(BP-10およびSpAN)、ならびにヒドラ(HMP-1;例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 93: 5127-5130, 1996を参照)を含む、さまざまな脊椎動物および無脊椎動物で発現されるプロテアーゼを含む大きなファミリー「アスタシン(astacin)ファミリー」のタンパク質である。したがって本発明のスクリーニングアッセイ法は、任意のさまざまなメタロプロテアーゼを用いて実施することができるので、例えば、多種多様な生物でミオスタチンの活性化を調節する際に有用な可能性のある薬剤の同定が可能である。 BMP-1およびmTLDは、1つの遺伝子に由来する選択的スプライシングを受けるmRNAにコードされており(Takahara et al.、前出、1994)、mTLL-1とmTLL-2は別個の遺伝子にコードされている。BMP-1/TLDファミリーのプロテアーゼは、少なくとも3つのクラスの基質の活性調節に役割を果たすことが知られている。第1のクラスのBMP-1、mTLD、およびmTLL-1は、プロコラーゲン前駆体を、細胞外マトリックス中に通常存在する多量体繊維への集合に必要とされる成熟型単量体へと切断する能力を有する(Kessler et al., Science 271: 360-362、1996; Li et al.、前出、1996)。第2のクラスのBMP-1、mTLD、mTLL-1、およびmTLL-2はそれぞれ、プロ-リシルオキシダーゼを切断して、成熟型の生物学的活性のある酵素とすることができる(Uzel et al., J. Biol. Chem. 276: 22537-22543, 2001)。第3のクラスのBMP-1およびmTLL-1は、通常、TGF-βスーパーファミリーのBMPサブグループのさまざまなタンパク質と結合し、これらを潜伏状態に維持する(Blader et al., Science 278: 1937-1940, 1997; Marques et al., Cell 91: 417-26, 1997; Piccolo et al., Cell 91: 407-416, 1997)コーディン(chordin)を切断可能である(Scott et al.、前出、1999)。このようなメタロプロテアーゼでコーディンが切断されると、コーディンの阻害作用をBMPは受けなくなる。したがってBMP-1およびTLL-1は、さまざまな形態形成過程におけるBMPの作用の調節に役割を果たすと考えられる。本明細書に記載されているように、BMP-1、mTLD、mTLL-1、およびmTLL-2を含むBMP-1/TLDファミリーメンバーは、ミオスタチンプロペプチドを、遊離の状態でも、またはミオスタチンC末端二量体と結合した状態(潜伏型ミオスタチン複合体)でも切断可能である(プロペプチドが切断されるとミオスタチンC末端二量体は活性化される)(実施例1および2参照)。 本発明の方法で検討可能な試験薬剤は例えば、ペプチドや、ペプチドヒドロキサマート(hydroxamate)またはホスフィニック(phosphinic)ペプチドなどのペプチド誘導体、ペプトイド、ポリヌクレオチド、または小型有機分子を含む任意の種類の分子である(実施例3参照)。したがって「試験薬剤」という表現は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断またはミオスタチンの活性化に関与する作用物質または拮抗物質の活性の検討対象となる任意の化合物を意味する表現として本明細書で広く用いられる。このような方法は一般に、作用物質または拮抗物質の薬剤として作用可能な未知の分子(試験薬剤)を同定するためのスクリーニングアッセイ法として用いられるが、同方法はまた、特定の活性を有することが知られている薬剤が、例えば、薬剤の活性を標準化する際に実際に活性を有することを確認する際にも使用できるほか、このような既知薬剤の誘導体または他の修飾型もしくは模倣型をスクリーニングする際に使用することができる。 本発明のスクリーニング法は、容易にハイスループット解析に適合させることができるので、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断を調節可能なためにミオスタチン活性を調節可能な薬剤を同定するために、ランダム試験薬剤のライブラリー、バイアス型(biased)試験薬剤のライブラリー、または多様型(variegated)試験薬剤のライブラリーなどの場合がある試験薬剤のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする際に用いることができる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,571,698号を参照)。所望の活性を検討可能な分子のコンビナトリアルライブラリーの作製法は当技術分野で周知であり、例えば、ペプチドが絞り込まれるペプチドのファージディスプレイライブラリー(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、例えば米国特許第5,622,699号;米国特許第5,206,347号;Scott and Smith, Science 249: 386-390, 1992; Markland et al., Gene 109: 13-19, 1991を参照);ペプチドライブラリー(参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,264,563号);ヒドロキサマート化合物ライブラリー、リバースヒドロキサマート化合物ライブラリー、カルボン酸塩化合物ライブラリー、チオール化合物ライブラリー、ホスフィニックペプチドライブラリー、またはホスホン酸塩化合物ライブラリーなどのペプチド誘導体化合物のライブラリー(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Dive et al., Biochem. Soc. Trans. 28: 455-460, 2000; Ye and Marshall, Peptides: The Wave of the Future (Lebl and Houghtenm, ed; American Peptide Society, 2001)を参照);ペプチド模倣体ライブラリー(参照として本明細書に組み入れられる、Blondelle et al., Trends Anal. Chem. 14: 83-92, 1995);核酸ライブラリー(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、O'Connell et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 93: 5883-5887, 1996; Tuerk and Gold, Science 249: 505-510, 1990; Gold et al., Ann. Rev. Biochem. 64: 763-797, 1995);オリゴ糖ライブラリー(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、York et al., Carb. Res. 285: 99-128, 1996; Liang et al., Science 274: 1520〜1522, 1996; Ding et al., Adv. Expt. Med. Biol. 376: 261-269, 1995);リポタンパク質ライブラリー(参照として本明細書に組み入れられる、de Kruif et al., FEBS Lett. 399: 232-236, 1996);糖タンパク質もしくは糖脂質のライブラリー(参照として本明細書に組み入れられる、Karaoglu et al., J. Cell Biol. 130: 567-577, 1995);または、例えば薬剤もしくは他の薬物を含む化合物ライブラリー(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Gordon et al., J. Med Chem. 37: 1385-1401, 1994; Ecker and Crooke, BioTechnology 13: 351-360, 1995)を作製する方法を含む。 ポリヌクレオチドは、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断またはミオスタチンの活性化を調節可能な薬剤として特に有用な場合がある。というのは、細胞内のポリペプチドを含む細胞標的に対する結合特異性を有する核酸分子が天然に存在するためであり、またこのような特異性を有する合成分子が容易に調製および同定可能であるからである(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,750,342号を参照)。「ポリヌクレオチド」という表現は、ホスホジエステル結合で連結された2個またはこれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列を意味する表現として本明細書で広く用いられる。したがって「ポリヌクレオチド」という表現は、遺伝子またはこの一部、cDNA、合成ポリデオキシリボ核酸の配列などの場合があるほか、1本鎖または2本鎖、ならびにDNA/RNAのハイブリッドの場合があるRNAおよびDNAを含む。ポリヌクレオチドは、細胞から単離可能な天然の核酸分子、または例えば化学合成法で、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによる酵素学的方法で作製可能な合成分子の場合がある。 ポリヌクレオチド薬剤(すなわち試験薬剤)は、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド類似体、またはホスホジエステル結合以外の主鎖の結合を含む場合がある。一般にポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、2'-デオキシリボースに連結されたアデニン、シトシン、グアニン、もしくはチミンなどの天然のデオキシリボヌクレオチド、またはリボースに連結されたアデニン、シトシン、グアニン、またはウラシルなどのリボヌクレオチドである。しかしポリヌクレオチドは、非天然の合成ヌクレオチドや、修飾型の天然のヌクレオチドなどのヌクレオチド類似体を含む場合がある。このようなヌクレオチド類似体は当技術分野で周知であり、またこのようなヌクレオチド類似体を含むポリヌクレオチドとして市販されている(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Lin et al., Nucl. Acids Res. 22: 5220-5234, 1994: Jellinek et al., Biochemistry 34: 11363-11372, 1995; Pagratis et al., Nature Biotechnol. 15: 68-73, 1997)。 ポリヌクレオチドのヌクレオチドを連結する共有結合は一般にホスホジエステル結合である。しかし共有結合は、チオジエステル結合、ホスホロチオエート結合、ペプチド様結合、またはヌクレオチドと結合して合成ポリヌクレオチドを生成する際に有用な、当技術分野で周知の他の任意の結合を含む、数多くの他の任意の結合である場合もある(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Tam et al., Nucl. Acids Res. 22: 977-986, 1994; Ecker and Crooke, BioTechnology 13: 351360, 1995を参照)。非天然のヌクレオチド類似体、またはヌクレオチドもしくは類似体を連結する結合を組み入れることは、ポリヌクレオチドが、例えば組織培地を含む、ヌクレアーゼ活性を含む場合のある環境に曝露される場合に、または生きている被験対象への投与時に特に有用な場合がある(修飾型ポリヌクレオチドは、分解に対する感受性が低い場合があるため)。 天然のヌクレオチドおよびホスホジエステル結合を含むポリヌクレオチドは化学的に合成することができるほか、適切なポリヌクレオチドを鋳型として用いる組換えDNA法で作製することができる。これとは対照的に、ヌクレオチド類似体、またはホスホジエステル結合以外の共有結合を含むポリヌクレオチドは一般に化学的に合成されるが、T7ポリメラーゼなどの酵素は、ある種のヌクレオチド類似体をポリヌクレオチド中に取り込むことが可能なので、このようなポリヌクレオチドを適切なテンプレートから組換え的に生成させるために使用することができる(Jellinek et al.、前出、1995)。 同様に、本明細書で例示されるペプチド(実施例3および4参照)は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節する薬剤として、またはこのような活性をスクリーニングするための試験薬剤として有用な場合がある。ペプチド薬剤(すなわち試験ペプチド)は、1個もしくは複数のD-アミノ酸および/またはL-アミノ酸;および/または1つもしくは複数のアミノ酸類似体(例えば、誘導体化されたアミノ酸、または反応性側鎖が修飾されたアミノ酸)を含む場合がある。また、ペプチド中の1つもしくは複数のペプチド結合を修飾することが可能であり、アミノ末端もしくはカルボキシ末端、またはこの両方における反応基を修飾することができる。D-アミノ酸またはL-アミノ酸の類似体などを含むペプチドは、生物学的環境でペプチドが遭遇する可能性のあるプロテアーゼ、酸化剤、または他の反応性物質に対する、改善された安定性を有する場合があるので、本明細書に記載されたメタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節する方法を実施する際に特に有用な場合がある。本明細書に記載されているように、ペプチド薬剤(すなわち試験薬剤)の安定性は、ペプチドと、ペプチド薬剤の半減期をインビボで延長させる第2のポリペプチド(例えば抗体のFcドメイン)を含む融合タンパク質を作製する(または連結する)ことで改善することもできる(実施例4参照;参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第2003/0104406 A1号も参照)。望ましいならば、ペプチドを修飾して、生物学的環境でペプチドが活性を保つ期間が短くなるように、同環境における低い安定性をもたせることもできる。 試験薬剤は、ミオスタチンプロペプチドを切断するメタロプロテアーゼの1つもしくは複数のエピトープに対する、また同エピトープに特異的に結合する抗体である場合があるほか、単離可能なプロペプチドの場合があるプロペプチドのエピトープ、もしくは単離された潜伏型ミオスタチン複合体のプロペプチド成分;またはメタロプロテアーゼとプロペプチドの複合体に対する抗体である場合もある。本明細書で用いられる「抗体」という表現は、極めて広い意味で、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体の抗原結合断片を含むように用いられる。抗体に関して用いられる「特異的に結合する」、または「特異的な結合活性」などという表現は、抗体と特定のエピトープの相互作用の解離定数が少なくとも約1x10-6 M、一般的には少なくとも約1x10-7 M、通常少なくとも約1x10-8 M、また特に少なくとも約1x10-9 Mもしくは1x10-10 M、またはこれ未満であることを意味する。したがって、特異的な結合活性を有する抗体のFab、F(ab')2、Fd、およびFv断片は抗体の定義に含まれる。特定のエピトープに特異的に結合することに加えて、抗体薬剤は、ミオスタチンプロペプチドに対するメタロプロテアーゼのプロテアーゼ切断活性(このような活性を高めるか、または低める段階を含む)を調節する。 本明細書で用いられる「抗体」という表現は、天然の抗体、ならびに例えば1本鎖抗体、キメラ抗体、2機能性抗体、およびヒト化抗体などの非天然の抗体、ならびにこれらの抗原結合断片を含む。このような非天然の抗体は、固相ペプチド合成法で構築可能であり、組換え的に作製可能であり、または例えば可変重鎖(variable heavy chain)および可変軽鎖(variable light chain)からなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることで得られる(参照として本明細書に組み入れられる、Huse et al., Science 246: 1275-1281, 1989を参照)。例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、CDR接合型抗体、1本鎖抗体、および2機能性抗体を作製する、以上の方法および他の方法が知られている(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Winter and Harris. Immunol. Today 14: 243-246, 1993; Ward et al., Nature 341: 544-546, 1989; Harlow and Lane, Antibodies: A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); Hilyard et al., Protein Engineering: A practical approach (IRL Press, 1992); Borrabeck, Antibody Engineering, 2d ed. (Oxford University Press, 1995))。 試験薬剤抗体のパネルは、ミオスタチンプロペプチドまたはメタロプロテアーゼ(特にBMP-1/TLDファミリーメンバー)のペプチド部分を用いて動物を免疫化することで容易に得られる。プロペプチドまたはメタロプロテアーゼのこのようなペプチド部分が非免疫原性の場合、ハプテンを、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの担体分子と結合することで、または融合タンパク質としてペプチド部分を発現させることで免疫原性をもたせることができる。他のさまざまな担体分子、およびハプテンを担体分子に結合させる方法は当技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane、前出、1999を参照)。例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、または他の動物でポリクローナル抗体を作製する方法は当技術分野で周知である(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Green et al., "Production of Polyclonal Antisera", Immunochemical Protocols (Manson, ed., Humana Press, 1992), p1〜5; Curr. Protocols Immunol. (1992), section 2.4.1中のColigan et al., "Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats, Mice and Hamsters"を参照)。またモノクローナル抗体は、当技術分野で周知で常用の方法で得られる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Kohler and Milstein, Nature 256: 495, 1975を参照;Harlow and Lane、前出、1999も参照)。例えば、ミオスタチン受容体またはこのエピトープ断片で免疫化したマウスの脾臓細胞を、SP/02ミエローマ細胞などの適切なミエローマ細胞系列と融合することでハイブリドーマ細胞が得られる。クローン化されたハイブリドーマ細胞系列を、標識抗原を用いてスクリーニングして、適切な特異性を有するモノクローナル抗体を分泌するクローンを同定することが可能であり、また所望の特異性および親和性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離して、継続的な抗体供給源として使用することができる。例えば、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断を調節する1本鎖抗体を発現する組換えファージは、標準化されたキットを調製する際に使用可能な抗体も提供する。 モノクローナル抗体は例えば、プロテイン質-Aセファロースゲルを用いるアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーなどの、さまざまな既知の手法でハイブリドーマ培養物から単離して精製することができる(参照として本明細書に組み入れられる、Coligan et al.、前出、1992, sections 2.7.1-2.7.12 and sections 2.9.1-2.9.3を参照; Meth. Molec. Biol. 10: 79-104 (Humana Press, 1992)中のBarnes et al., "Purification of Immunoglobulin G (IgG)"も参照)。インビトロおよびインビボでモノクローナル抗体を増やす方法は当技術分野で周知である。インビトロにおける増幅は、ウシ胎仔血清などの哺乳動物血清または微量元素、および正常マウス腹膜滲出細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージなどの成長維持添加物を任意選択で補充したダルベッコ改変イーグル培地やRPMI 1640培地などの適切な培地で実施することができる。インビトロで産生させることで、比較的純粋な抗体調製物が得られ、スケールアップして所望の抗体を大量に得ることが可能となる。大規模ハイブリドーマの培養は、エアリフト型反応槽、連続スターラー反応槽、または固定化もしくは捕捉型の細胞培養物中における均一な懸濁培養法によって実施することができる。インビボにおける増幅は、細胞クローンを親細胞と組織適合性のある哺乳動物(例えば同系マウス)に注入して、抗体産生腫瘍の成長を引き起こすことで実施することができる。任意選択で、注入に先立ち、動物を炭水化物、特にプリスタン(テトラメチルペンタデカン)などのオイルで刺激する。1〜3週後に、所望のモノクローナル抗体を個体の体液から回収する。 本発明のスクリーニングアッセイ法で同定される抗体薬剤の治療的応用も提供する。治療的手法が、ヒト被験者を治療する手法である場合、抗体は、ヒトと近縁の霊長類の抗体を元に作製することができる(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Goldenberg et al., Intl. Publ. WO 91/11465, 1991; およびLosman et al., Intl. J. Cancer 46: 310, 1990を参照)。ヒトの治療に治療的に有用な抗体は、「ヒト化」モノクローナル抗体を元に作製することもできる。ヒト化モノクローナル抗体は、マウスの免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変鎖に由来するマウスの相補性決定領域をヒトの可変ドメインに移した後に、マウスの対応領域のフレームワーク領域中のヒトの残基を置換することで作製される。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体成分を使用することで、マウスの定常領域の免疫原性に絡む潜在的な問題が解決される。マウスの免疫グロブリンの可変ドメインをクローン化する一般的な手法は周知である(例えば全体が参照として本明細書に組み入れられる、Orlandi et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 86: 3833, 1989を参照)。ヒト化モノクローナル抗体の作製法も周知である(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Jones et al., Nature 321: 522, 1986; Riechmann et al., Nature 332: 323, 1988; Verhoeyen et al., Science 239: 1534, 1988; Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 89: 4285, 1992; Sandhu, Crit. Rev. Biotechnol. 12: 437, 1992; およびSinger et al., J. Immunol. 150: 2844, 1993を参照)。あるいは、このような抗体は、コンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーから単離されたヒト抗体断片を元に作製することができる(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Barbas et al., METHODS: A Companion to Methods in Immunology 2: 119, 1991; Winter et al., Ann. Rev. Immunol. 12: 433, 1994を参照)。 抗体は、例えば抗原投与に応答して特定のヒト抗体を産生するように遺伝的に改変されたトランスジェニックマウスから得られるヒトモノクローナル抗体を元に作製することもできる。この手法では、ヒトの重鎖および軽鎖の遺伝子領域のエレメントを、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子領域の標的破壊を含む胚性幹細胞系列に由来するマウスの系列に導入する。このようなトランスジェニックマウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成可能であり、また同マウスを、ヒト抗体を分泌するハイブリドーマの作製用に使用できる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得る方法は周知であり(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Green et al., Nature Genet. 7: 13、1994; Lonberg et al., Nature 368: 856, 1994;およびTaylor et al., Intl. Immunol. 6: 579, 1994を参照)、またヒト抗体の市販品を入手できる(Abgenix, Inc; Fremont、CA)。 抗体の抗原結合断片は、抗体のタンパク質分解による加水分解によって、または同断片をコードするDNAの大腸菌における発現によって調製することができる。抗体断片は、従来の方法で抗体全体をペプシンまたはパパインで消化することで得られる。例えば抗体断片は、ペプシンによる抗体の酵素的切断によって5S断片、F(ab')2を得て作製することができる。この断片を、チオール還元剤、またジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基の保護基を任意選択で用いて、さらに切断することで3.5S Fab'の一価の断片が得られる。あるいは、ペプシンによる酵素的切断により、2つの一価のFab'断片およびFc断片が直接得られる(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Goldenberg、米国特許第4,036,945号および4,331,647号、および、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Nisonhoff et al., Arch. Biochem. Biophys. 89: 230, 1960; Porter, Biochem. J. 73: 119, 1959; Edelman et al., Meth. Enzymol. 1: 422 (Academic Press、1967)に含まれる参考文献を参照;Coligan et al.、前出、1992も参照、sections 2.8.1-2.8.10および2.10.1-2.10.4を参照)。 完全な抗体によって認識される抗原に特異的に結合する抗体断片の場合であれば、重鎖の分離による一価の軽鎖/重鎖断片の生成、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化学的、または遺伝学的な手法といった、他の抗体切断法を用いることもできる。例えばFv断片はVH鎖とVL鎖の結合を含み、この結合は非共有結合の場合がある(Inbar et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 69: 2659, 1972)。あるいは可変鎖を、分子間ジスルフィド結合によって連結することができるほか、グルタルアルデヒドなどの化学物質を用いて架橋することができる(Sandhu、前出、1992)。Fv断片は好ましくは、ペプチドリンカーで連結されたVH鎖およびVL鎖を含む。このような1本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって連結されたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することで作製される。構造遺伝子を発現ベクターに挿入し、これを次に大腸菌などの宿主細胞に導入する。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する1本のポリペプチド鎖を合成する。sFvの作製法は例えば、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる文献(Whitlow et al., METHODS: A Companion to Methods in Enzymology 2: 97, 1991; Bird et al., Science 242: 423-426, 1988; Ladner et al., 米国特許第4,946,778号;Pack et al., BioTechnology 11: 1271-1277, 1993; Sandhu、前出、1992も参照)に記載されている。別の形状の抗体断片は、1つの相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、対象抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することで得られる。このような遺伝子を、例えばポリメラーゼ連鎖反応で調製することで、抗体産生細胞のRNAに由来する可変領域を合成する(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Larrick et al., METHODS: A Companion to Methods in Enzymology 2: 106, 1991を参照)。 試験薬剤との接触に起因するプロペプチドの切断量の差は例えばプロペプチドおよび/またはプロペプチドの切断産物の検出を、ミオスタチンプロペプチドまたはその切断産物を、その大きさ、電荷、またはこの両方に基づいて検出可能な電気泳動、クロマトグラフィー、または質量分析などの方法(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Thies et al., Growth Factors 18: 251-259, 2001を参照)で、完全なプロペプチドまたは切断されたプロペプチド(いずれか)に特異的な抗体を用いるイムノブロット解析や酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)などの免疫学的アッセイ法で、または例えば、完全なプロペプチドの蛍光が抑えられていて、この抑制段階がプロペプチドの切断に伴い解放される蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ法を含む蛍光ベースのアッセイ法で行うことで検出可能である。試験薬剤の非存在下における切断産物の量と比較して、試験薬剤の存在下で(すなわち試験薬剤との接触後に)プロペプチドの切断産物量の増加が検出される場合、対象試験薬剤は、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を高めることが可能な薬剤であると判定される。同様に、試験薬剤の非存在下におけるプロペプチドの量と比較して、試験薬剤の存在下(すなわち試験薬剤との接触後に)プロペプチドの量の減少が検出される場合、対象試験薬剤は、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を高めることが可能な薬剤であると判定される。これとは逆に、試験薬剤の非存在下における切断産物の量と比較して、試験薬剤の存在下で(すなわち試験薬剤との接触後に)プロペプチドの切断産物の量の減少が検出される場合、対象試験薬剤は、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を低めることが可能な薬剤であると判定される。試験薬剤の非存在下におけるプロペプチドの量と比較して、試験薬剤の存在下(すなわち試験薬剤との接触後に)多量のプロペプチドが検出される場合、対象試験薬剤は、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を低めることが可能な薬剤であると判定される。このような活性は、細胞ベースのアッセイ法または動物を対象としたアッセイ法で、例えばミオスタチンが関与する情報伝達活性の、薬剤に起因する変化を検出することで確認できる。 プロペプチドの切断量の差は、ミオスタチンとミオスタチン受容体の結合変化を検出することで、またはミオスタチン受容体を発現する細胞内におけるミオスタチンが関与する情報伝達の変化を検出することで検出することもできる。本発明のスクリーニングアッセイ法を実施する際に有用な細胞は、例えば哺乳動物、鳥類、魚類、酵母、またはショウジョウバエの細胞を含む。このような機能的アッセイ法は、試験薬剤がメタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節することを直接示すことができる。このような方法に有用な細胞には、内因性のミオスタチン受容体を発現する細胞(例えばL6心筋細胞)や、ミオスタチン受容体(例えばII型アクチビン受容体などのアクチビン受容体)をコードする導入遺伝子を一時的に、または安定して発現するように遺伝的に修飾された細胞などがある(Thies et al.、前出、2001)。ミオスタチンが関与する情報伝達は、ミオスタチンと細胞表面受容体との結合から、ミオスタチンによる調節が必要とされる遺伝子の発現までを含む、情報伝達経路の任意の段階で検出することができる(本発明のスクリーニングアッセイ法では、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断およびミオスタチンの活性化に依存する)。 メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化、およびこれに続くミオスタチンが関与する情報伝達は、ミオスタチンとミオスタチン受容体との結合を、インビトロアッセイ法または細胞ベースのアッセイ法の場合がある受容体結合アッセイ法で測定することで検出できる。メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化、およびこれに続くミオスタチンが関与する情報伝達は、例えば、検出用標識をコードするポリヌクレオチドに使用可能に連結されたTGF-β調節エレメントを含むレポーター遺伝子となる、ミオスタチンによって調節される遺伝子の発現を測定することでも検出できる。レポーター遺伝子の発現は例えば、レポーター遺伝子配列のRNA転写物を検出することで、またはレポーター遺伝子にコードされたポリペプチド、もしくはコードされたポリペプチドの活性を検出することで検出できる。ポリペプチドレポーターは例えば、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素、ハイグロマイシン-Bホスホトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼの場合があり、また例えば、レポーターポリペプチドによる放射能、発光、化学発光、蛍光、酵素活性、もしくは特異的な結合、またはレポーターポリペプチドを発現する細胞の選択培地における生存率を検出することで検出できる。ミオスタチン受容体またはレポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチドなどの導入遺伝子を、導入遺伝子にコードされたポリペプチドが発現可能な条件で導入する方法は本明細書に記載されており、また当技術分野で周知である。 一般にレポーター遺伝子は、1つもしくは複数の転写エレメント、および適切であれば翻訳調節エレメントに使用可能に連結されたレポーターのポリヌクレオチド、すなわちポリペプチドをコードするコード配列を含み、またベクター(特に発現ベクター)中に含めることができる。望ましいならば、このようなコード配列はさらに、使用可能に連結された、ニッケルイオンやコバルトイオンなどの二価陽イオンで検出可能なHis-6タグ;抗FLAG抗体を用いて検出可能なFLAGエピトープ(例えば、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Hopp et al., BioTechnology 6: 1204, 1988; 米国特許第5,011,912号を参照);エピトープに特異的な抗体を用いて検出可能なc-mycエピトープ;ストレプトアビジンまたはアビジンを用いて検出可能なビオチン;グルタチオンを用いて検出可能なグルタチオンS-トランスフェラーゼ;またはプロテイン質Aまたは抗Fc抗体を用いて検出し(プロテイン質Aも抗Fc抗体も検出可能に標識するか、または固相支持体に結合させることが可能であるが、結合させる必要は必ずしもない)、続いて二次抗体で検出可能な抗体のFcドメインなどのペプチドタグをコードする場合がある。したがって、特定の標識分子を検出するための多様な手段も、標識分子を単離する際に用いられると認識される。 本明細書で用いられる「使用可能に連結された」という表現は、2個またはこれ以上の分子が、これらが1つのユニットとして作用し、また一方もしくは両方の分子、またはこの組み合わせに帰せられる機能を発揮するように相互に位置することを意味する。例えば、レポーターポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、調節エレメントに使用可能に連結可能である。この場合、調節エレメントは、これが通常、細胞内で関連した状態にあるポリヌクレオチド配列に作用するのと同様の方法でポリヌクレオチドに対する調節作用を付与する。第1のポリヌクレオチドコード配列も、第2の(またはこのほかの)コード配列に、使用可能に連結されたコード配列からキメラポリペプチドが発現可能なように使用可能に連結することができる。キメラポリペプチドは、2つ(またはこれ以上の)コードペプチドが1つのポリペプチドに翻訳される(例えば実施例4を参照)(すなわちペプチド結合を介して共有結合で結合される)融合ポリペプチドである場合があるほか、翻訳に伴い相互に結合して安定な複合体を形成可能な2つの別個のペプチドとして翻訳される場合がある。 レポーター遺伝子などのポリヌクレオチドを、標的細胞へのポリヌクレオチド導入を含むポリヌクレオチドの操作を促進可能なベクター中に含めることができる。このようなベクターは、ポリヌクレオチドの維持に有用なクローニングベクターである場合があるほか、同ポリヌクレオチドに加えて、ポリヌクレオチドを発現させるのに有用な調節エレメントを含む発現ベクターの場合がある(ポリヌクレオチドがポリペプチドをコードする場合は、コードされるペプチドを特定の細胞で発現させることが有用である)。発現ベクターは例えば、コードするポリヌクレオチドの持続的な転写を達成するために必要な発現エレメントを含む場合があるか、または調節エレメントを、ベクターへのクローン化に先立ってポリヌクレオチドに使用可能に連結させることができる。 発現ベクター(すなわちポリヌクレオチド)は一般に、コードするポリヌクレオチドの構成的、または望ましいならば誘導可能な組織特異的もしくは発生段階特異的な発現を可能とするプロモーター配列、ポリA認識配列、およびリボソーム認識部位すなわち内部リボソーム侵入部位、または組織特異的な場合のあるエンハンサーなどの他の調節エレメントを含むか、またはコードする。ベクターは、原核生物の宿主系もしくは真核生物の宿主系、または望ましいならばこの両方における複製に必要なエレメントを含む場合もある。このようなベクターは、プラスミドベクター、およびバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、セムリキフォレストウイルス、およびアデノ随伴ウイルスのベクターなどのウイルスベクターなどが知られており、また業者から購入することができる(Promega、Madison WI; Stratagene、La Jolla CA;GIBCO/BRL、Gaithersburg MD)ほか、当業者であれば構築することができる(例えば、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Meth. Enzymol. Vol. 185, Goeddel ed. (Academic Press, Inc., 1990); Jolly, Canc. Gene Ther 1: 51-64, 1994; Flotte, J. Bioenerg. Biomemb. 25: 37-42, 1993; Kirshenbaum et al., J. Clin. Invest. 92: 381-387, 1993を参照)。 レポーターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、組織特異的な調節エレメント、例えばレポーターポリペプチドの発現が個体の筋肉細胞に、または培養物中の細胞混合集団(例えば器官培養)中の筋肉細胞に制限されるように、筋肉細胞に特異的な調節エレメントと使用可能に連結可能である。筋肉細胞に特異的な調節エレメントは例えば、筋肉クレアチンキナーゼのプロモーター(参照として本明細書に組み入れられる、Sternberg et al., Mol. Cell. Biol. 8: 2896-2909, 1988)、およびミオシン軽鎖エンハンサー/プロモーター(参照として本明細書に組み入れられる、Donoghue et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 88: 5847-5851, 1991)を含む。 ウイルス発現ベクターは、ポリヌクレオチドを細胞中に(望ましいならば被験対象の細胞中に)導入する際に特に有用な場合がある。ウイルスベクターは、宿主細胞に比較的高い効率で感染可能であり、また特定の細胞種に感染可能なことから有利である。ウイルスベクターは、特に宿主系(特に哺乳動物系)用に開発されており、また例えばレトロウイルスベクターや、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターなどに基づくベクターなどの他のレンチウイルスベクターを含む(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Miller and Rosman, BioTechniques 7: 980-990, 1992; Anderson et al., Nature 392: 25-30 Suppl., 1998; Verma and Somia, Nature 389: 239-242, 1997; Wilson、New Engl. J. Med. 334: 1185-1187, 1996を参照)。 ベクター中に含めることのできるレポーター遺伝子やポリヌクレオチド薬剤などのポリヌクレオチドは、任意のさまざまな方法で細胞に導入可能である(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Sambrook et al., Molecular Cloning: A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, MD 1987、および1995年までの補足)。このような方法は例えば、トランスフェクション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、エレクトロポレーション、ウイルスベクターの使用、感染を含み、またポリヌクレオチドの細胞内への導入を促進可能で、細胞内への導入に先立つポリヌクレオチドの分解を防ぐ可能性のあるリポソームやマイクロエマルジョンなどの使用を含む場合がある。特定の方法の選択は例えば、ポリヌクレオチドが導入される細胞に、ならびに細胞が培養物中で単離される、または培養時に組織もしくは器官に存在するか、もしくはインサイチューのいずれかの条件に依存する。 試験薬剤がミオスタチン調節活性を有すると判定される場合、スクリーニングアッセイ法はさらに、薬剤がミオスタチンの活性化を高めるか、または低める量を決定する段階を含む場合がある。例えば薬剤が、ミオスタチンプロペプチドに対するメタロプロテアーゼのタンパク質分解活性を、精製済みの試薬を使用する特定の系(例えばインビトロアッセイ法)、または被験対象でインビボで活性の基礎レベル以上に高めると判定される場合、同方法はさらに、薬剤がミオスタチンの活性化を基礎レベル以上に高める量を決定する段階を含む場合がある。したがって、メタロプロテアーゼによってミオスタチンの活性化を、比較的限られた量で高めるか、または低める、さまざまな薬剤または薬剤のパネルが得られる。このような方法はさらに、所望のレベルのミオスタチン活性をもたらすのに有用な特定の薬剤の量を決定する手段となる。したがって本発明は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節する薬剤および薬剤のパネルを提供する。このような薬剤は、被験対象における、例えば筋ジストロフィー症、筋肉消耗、肥満、または2型糖尿病などの代謝障害の被験対象におけるミオスタチンの活性化を調節する薬物として有用である。 したがって本発明は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節する方法を提供する。本明細書で用いられる「調節する」という表現は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断、またはメタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化に及ぼす作用に関して用いられる場合に、プロペプチドの切断またはミオスタチンの活性化の量が上昇するか、または低めるか、もしくは阻害するかのいずれかであることを意味する。「上昇する」、および「低めるか、もしくは阻害する」という表現は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断またはミオスタチンの活性化の基礎レベルに薬剤が及ぼす作用に関して用いられる。活性の基礎レベルは、精製済みのプロペプチドおよびメタロプロテアーゼを、所定の条件で用いて、または被験対象(正常な健康な個体である必要は必ずしもない)から得られる細胞もしくは組織抽出物などの生物学的試料を用いて、インビトロアッセイ法で生じるものとして同定される切断もしくは活性化のレベル、または被験対象でインビボで生じる切断もしくは活性化のレベルの場合がある。「低めるか、または阻害する」という表現も本明細書で用いられるが、これは、場合によっては、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断またはミオスタチンの活性化のレベルが、特定のアッセイ法で検出可能なレベル未満に低下する場合があると認識されるためである。したがって、このようなアッセイ法では、例えば低レベルのミオスタチンプロペプチドの切断が残るか否か、またはこのような切断が完全に阻害されるか否かが決定可能ではない場合がある。 メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断またはミオスタチンの活性化を調節する方法は例えば、ミオスタチンプロペプチドとミオスタチンC末端断片(特にC末端断片の二量体)を含む潜伏型ミオスタチン複合体に、ミオスタチンプロペプチドを切断可能なメタロプロテアーゼを、およびメタロプロテアーゼによるタンパク質分解によるプロペプチドの切断を増やすか、または減らすことが可能な薬剤を接触させることで実施することができる。上記メタロプロテアーゼは、特にプロペプチドが、例えばBMP-1、mTLD、mTLL-1、またはmTLL-2などのBMP-1/TLDファミリーメンバーを含む潜伏型ミオスタチン複合体を含む場合、ミオスタチンプロペプチドを切断可能な任意のメタロプロテアーゼの場合がある。また上記薬剤は例えば、メタロプロテアーゼのタンパク質分解活性を高めるか、もしくは低める様式、プロペプチドがメタロプロテアーゼをめぐって競合する様式、メタロプロテアーゼと、プロペプチドを含む潜伏型ミオスタチン複合体の接触を促す様式、または潜伏型ミオスタチン複合体に、メタロプロテアーゼに対して小さく(または大きく)適合する基質となるように立体構造の変化を誘導する様式を含む、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断を調節する任意の様式で作用可能である。 メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節する方法は、脊椎動物および脊椎動物を含む、ミオスタチンを発現する任意の被験対象を対象に実施することができる。例えば被験対象は、ヒト、マウス、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ニワトリ、シチメンチョウ、ゼブラフィッシュ、サケ、ナガスクジラ、他の水生生物、および他の種の場合がある。水生生物の例は、魚類(マス、チャー、アユ、コイ、フナ、キンギョ、ローチ、シラス、ウナギ、アナゴ、イワシ、トビウオ、スズキ、タイ、イシダイ、フエダイ、サバ、マアジ、マグロ、カツオ、ヒラマサ、カサゴ、カレイ、シタビラメ、ヒラメ、フグ、カワハギなど);頭足類の生物(ヤリイカ、コウイカ、タコなど);双殻類(ハマグリ(例えば、ハードシェル、マニラ、ホンビノスガイ、バカガイ、ソフトシェル);トリガイ、イガイ、タマキビガイ;スカロップ(scallop)(例えば、シー(sea)スカロップ、ベイ(bay)スカロップ、カルー(calloo)スカロップ);ソデガイ、巻貝、ナマコ;アカガイ;カキ(例えば、C. virginica、ガルフ、ニュージーランド、パシフィック)など);腹足類(サザエ、アワビ(例えばグリーン、ピンク、レッド)など);ならびに甲殻類(スパイニー、ロック、およびアメリカンを含むがこれらに限定されないイセエビなど);クルマエビ;エビ(M. rosenbergii、P. styllrolls、P. indicus、P. jeponious、P. monodon、P. vannemel、M. ensis、S. melantho、N. norvegious、cold water shrimpを含むがこれらに限定されない);カニ(ブルー、ロック、ストーン、キング、クイーン、スノー、ブラウン、ダンジネス、ヨナ、マングローブ、ソフトシェルを含むがこれらに限定されない);シャコ、オキアミ、ヨーロッパアカザエビ;ザリガニ(crayfish/crawfish)(ブルー、マロン、レッドクロー、レッドスワンプ、ソフトシェル、ホワイトを含むがこれらに限定されない);環形動物;脊索動物(ワニおよびカメなどの爬虫類を含むがこれらに限定されない);カエルを含む両生類;ならびに棘皮動物(ウニを含むがこれらに限定されない)を含む。 メタロプロテアーゼによるミオスタチン活性の調節法は、培養物中の細胞もしくは組織、細胞もしくは組織の抽出物、血清もしくは血漿の試料などの体液、または実質的に精製されたメタロプロテアーゼおよび/または潜伏型ミオスタチン複合体を含む実質的に精製された試薬を用いてインビトロまたはエクスビボで実施することができる(例えば、Thies et al.、前出、2001を参照)。このような方法をインビトロで実施する場合は、一般に溶媒中または他の緩衝液中に存在する試料に薬剤を添加することで、メタロプロテアーゼおよび潜伏型ミオスタチン複合体を含む試料に薬剤を接触するとよい。例えば、この方法を、培養物中の細胞を用いて実施する場合、薬剤を、メタロプロテアーゼおよび/またはプロペプチド(これらの一方または両方は、培養物中の細胞中に存在する場合があるほか、培地中に分泌させることができる)と薬剤が接触するように培地に添加するとよい。このような薬剤は、試料溶媒に可溶性を示すものを選択可能なほか、望ましいならば溶解性を高めるために製剤化することができる。 ミオスタチンの活性化を調節する方法は、細胞または組織に関して被験対象を対象にインサイチューで実施する段階を含む、生きている被験対象を含むインビボで実施することもできる。一般に、このような方法は、薬剤を被験対象に投与することで実施されるので、薬剤は一般に、被験対象への投与に適した組成物中に製剤化される。したがって、メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節可能な薬剤を含む組成物(薬学的に許容される担体中の薬剤を含む組成物)を提供する。このような組成物は、本明細書に記載された筋肉障害および/または代謝障害の被験対象を治療するための薬物として有用であるほか、使役用または食用の飼育動物などの動物への投与に有用である。 生きている被験対象に投与する組成物は一般に、薬学的に許容される担体中に薬剤を含む。薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、また例えば、水や緩衝生理食塩水などの水溶液もしくは他の溶媒、またはグリコール、グリセロール、オイル(例えばオリーブオイル)などの溶媒、または注射用有機エステルを含む。薬学的に許容される担体は、例えば薬剤の吸収を安定化させるか、または高めるように作用する生理的に許容される化合物を含む場合がある。このような生理的に許容される化合物は例えば、グルコース、ショ糖、またはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸やグルタチオンなどの抗酸化物質、キレーティング剤、低分子量タンパク質、または他の安定剤もしくは賦形剤を含む。当業者であれば、生理的に許容される化合物を含む、薬学的に許容される担体の選択が例えば、投与される薬剤の物理化学的特性に、また例えば経口投与もしくは非経口投与(静脈内投与など)、および注射、挿管、または当技術分野で周知の他の方法の場合がある組成物の投与型路に依存することを理解すると思われる。組成物は、例えば栄養素もしくはビタミン類、または組成物が治療目的で投与される場合であれば、治療対象疾患に適した診断薬もしくは治療薬剤を含む1種類もしくは複数の他の試薬を含む場合もある。 薬剤は、水中油型のエマルジョン、マイクロエマルジョン、ミセル、混合ミセル、リポソーム、微粒子、または他の高分子マトリックスなどとするために封入性材料中に含めることができる(例えばそれぞれ参照として本明細書に組み入れられる、Gregoriadis, Liposome Technology Vol. 1 (CRC Press、Boca Raton、FL 1984); Fraley, et al., Trends Biochem. Sci. 6: 77 (1981)を参照)。例えば、リン脂質または他の脂質を含むリポソームは、調製および投与が比較的単純で毒性がなく、生理的に許容され、代謝可能な担体である。「ステルス」リポソーム(例えば、それぞれ参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,882,679号;第5,395,619号;および第5,225,212号を参照)は、本発明の方法を実施する際に有用な組成物の調製に特に有用な、このような封入性材料の例であり、また他の「マスク型(masked)」リポソームを同様に使用することができる(これらのリポソームは、治療薬剤が循環血液中に長期間残存する)。例えば陽イオン性リポソームも特定の受容体またはリガンドで修飾することができる(参照として本明細書に組み入れられる、Morishita et al., J. Clin. Invest. 91: 2580-2585 (1993))。 メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節する薬剤を含む薬学的組成物の投与型路は、部分的には分子の化学構造に依存する。例えば、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、消化管で分解されやすいので経口投与時にはそれほど有用ではない。しかし、ポリペプチドを化学的に修飾する方法、例えば、内因性プロテアーゼによる分解の感受性を低くする方法や、または消化管からの吸収をさらに高める方法が知られている(例えば、Blondelle et al.、前出、1995; Ecker and Crook、前出、1995を参照)。また、ペプチド薬剤はD-アミノ酸を用いて調製することができるほか、ペプチドドメインの構造に似た有機分子であるペプチド模倣物に基づく、またはビニロガス(vinylogous)ペプトイドなどのペプトイドに基づく1つもしくは複数のドメインを含めることができる。 本明細書に記載された組成物は、例えば経口経路、または静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、直腸内、大槽内などの非経口経路を含む多様な経路で、または皮膚からの受動的もしくは能動的な吸収(例えば、それぞれ皮膚パッチまたは経皮イオン浸透による)によって被験対象に投与することができる。また組成物は、注射、挿管、経口、または局所的に投与することができる。後者は、受動的投与(例えば、軟膏の直接塗布)や能動的投与(例えば、組成物の1つの成分が適切な噴霧剤である経鼻スプレーもしくは吸入剤の使用)の場合がある。 薬学的組成物は、錠剤、または溶液もしくは懸濁液などの経口剤として製剤化することができるほか、腸内または腸管外への投与に適した有機担体もしくは無機担体、または賦形剤との混合物を含めることが可能であり、また例えば、錠剤、植込錠、カプセル剤、坐剤、溶液、乳濁液、懸濁液用の、または使用に適した他の状態用の一般的な毒性のない薬学的に許容される担体を配合することができる。担体は、上記の担体に加えて、グルコース、ラクトース、マンノース、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプン糊、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、シリカコロイド、ジャガイモデンプン、尿素、中鎖トリグリセリド、デキストラン、および固体状、半固体状、または液体状の調製物の調製における使用に適した他の担体を含む場合がある。また補助剤、安定剤、濃化剤、または着色剤、および芳香剤を、例えばトリウロース(triulose)などの安定化乾燥薬剤を使用することができる(例えば米国特許第5,314,695号を参照)。 本発明の方法を実施する際に投与される薬剤の総量は、単回量として、ボーラスまたは注射のいずれかにより比較的短期間で被験対象に投与可能なほか、複数の用量を長期間にわたって投与する分割投与プロトコルで投与することができる。例えば、被験対象の肥満を治療するための薬学的組成物の量は、被験対象の年齢および全般的健康状態、ならびに投与型路および投与回数などのいくつかの因子に依存することが認識されている。このような因子に関しては、当業者であれば、必要に応じて特定の用量を調節することができると思われる。一般に、組成物の剤形、ならびに投与経路および投与頻度は、第I相および第II相の臨床試験で最初に決定される。 本発明の方法は、例えば、潜伏型ミオスタチン複合体および/またはメタロプロテアーゼと、メタロプロテアーゼのタンパク質分解活性を高める薬剤を接触させることによってミオスタチンの活性化のレベルを(薬剤の非存在下におけるミオスタチン活性化の基礎レベル以上に)高めるために用いることができるほか、例えば、潜伏型ミオスタチン複合体および/またはメタロプロテアーゼと、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドのタンパク質分解活性を低める薬剤に接触させることによってミオスタチンの活性化のレベルを(基礎レベル未満に)低めるために用いることができる。このような薬剤は、潜伏型ミオスタチン複合体のミオスタチンプロペプチドを切断するメタロプロテアーゼのタンパク質分解活性を低めることによって、ミオスタチンの活性化を、薬剤の非存在下で生じるか、または生じると考えられるミオスタチンの活性化のレベル未満に低めるか、または阻害する薬剤である場合がある。このような薬剤を被験対象に投与する場合は、薬剤は、筋量の増加もしくは脂肪量の減少、またはこの両方を被験対象で招く場合がある。例えば被験対象は、筋肉消耗障害のヒト被験者である場合がある(筋量の増加は、疾患の徴候および症状を改善する可能性がある)。あるいは薬剤は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの、潜伏型ミオスタチン複合体からのタンパク質分解による切断を増やすことで、ミオスタチンの活性化を、薬剤の非存在下で生じるか、または生じると考えられるミオスタチンの活性化のレベル以上に(高める場合であれば)高める薬剤である場合がある。このような薬剤を被験対象に投与する場合は、薬剤は、筋量の減少もしくは脂肪量の増加、またはこの両方を被験対象で招く場合がある。例えばこのような被験対象は、侵略性の魚類種または齧歯類などの望ましくない生物である場合がある(筋量の減少および/または脂肪量の増加は、このような侵略種の環境中における生存競争に不利に作用する)。 したがって1つの態様では、本発明は、BMP-1/TLDファミリーのメタロプロテアーゼなどのメタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドのタンパク質分解による切断を調節することによって、被験対象の筋量を増やすか、または脂肪量を減らすか、またはこの両方の方法を提供する。このような方法は例えば、ミオスタチンプロペプチドを切断するプロテアーゼのタンパク質分解活性を低めるか、または阻害することによって、被験対象における潜伏型ミオスタチンの活性化を妨げ、筋量を増やす薬剤を被験対象に投与することで実施できる。筋量が高められる被験対象は、ミオスタチンが発現される任意の被験対象であり、特に、ペット動物(例えば、ネコ種やイヌ種)、飼育動物すなわち、哺乳動物種(例えば、ヒツジ種、ブタ種、またはウシ種)、鳥類種(例えば、ニワトリやシチメンチョウ)、および魚類種(例えば、サケ、マス、またはタラ)を含む、食用として成長させる動物を含む脊椎動物の場合がある。例えば、このような方法を、食用として有用な生物体を対象に実施する場合は、食品のタンパク質含量を増やすことが可能であり、コレステロールレベルを低下させることが可能であり、また食材の質を高めることが可能である。したがって本発明の方法は、ミオスタチンを発現し、またミオスタチンを活性化させるためにメタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断に依存する、脊椎動物(例えば、哺乳動物、鳥類、もしくは魚類)、または無脊椎動物(例えば、軟体動物、棘皮動物、腹足類、または頭足類)を含む任意の真核生物を対象に実施することが可能である。1つの態様では、被験対象はヒト被験者であり、例えば筋肉障害(例えば、ジストニアもしくはジストロフィー)、消耗性疾患(例えば悪液質)、臨床的肥満、または2型糖尿病などの代謝障害の被験者である。 したがって本発明は、被験対象におけるメタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を調節する薬剤を投与することで、被験対象の代謝障害を改善する方法も提供する。本明細書で用いられる「改善する」という表現は、代謝障害に関して用いられる場合には、障害に関連した徴候または症状が改善することを意味する。障害の改善は、特定の代謝障害のモニタリングを行うための、熟練した医師によって一般的に採用されている任意のアッセイ法(例えば、糖尿病をモニタリングする耐糖能試験、または体脂肪を解析する血清レプチンアッセイ法)で確認することができる(McPherron and Lee、前出、2002)。肥満や悪液質などの代謝障害の改善は、被験対象の体重を測定することで簡単にモニタリングすることができる。 ヘテロ接合のミオスタチンノックアウトマウスでは、ホモ接合の変異マウスで観察される場合と比較して、程度は低いものの骨格筋量が多くなっており、これはミオスタチンがインビボで用量依存的に作用することを意味する。また、動物におけるミオスタチンの過剰発現は、筋肉の成長に関して反対の作用を示す。例えば、ミオスタチンを発現する腫瘍のあるヌードマウスでは、筋量および脂肪量の劇的な減少を特徴として、癌やエイズなどの慢性疾患の患者にみられるような悪液質に似た消耗症候群がみられた。またミオスタチン免疫反応性物質の血清レベルは、筋肉消耗に関して患者の状態と相関していた(Gonzalez-Kadavid et al.、前出、1998)。したがって、総体重の減少からわかるような悪液質の徴候もみられるエイズ患者では、エイズでない正常男性、または体重減少のみられなかったエイズ患者のいずれかと比較して、ミオスタチン免疫反応性物質の血清レベルがわずかに高かった。ミオスタチンは筋量に影響を及ぼすだけでなく、生物体の全般的な代謝にも影響を及ぼす。例えば、ミオスタチンは脂肪組織で発現され、またミオスタチン欠損マウスでは、個体の加齢に伴い、脂肪の蓄積の劇的な減少が認められている。ミオスタチン活性の低下に対する反応を招く、筋肉組織に対する全体的な同化作用は、ミオスタチン変異を導入した肥満マウス系列(アグーチ致死イエロー(Ay)マウス)で脂肪の蓄積が5倍抑制されたことからわかるように、生物体の全体的な代謝を変化させる場合があり、また脂肪の状態におけるエネルギーの保存に影響を及ぼす場合がある。異常なグルコース代謝も、同ミオスタチン変異を含むアグーチマウスで部分的に抑制された。 したがって、メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を低めるか、または阻害する本発明の薬剤および方法で、肥満や2型糖尿病などの代謝疾患を治療または予防することができる。本発明の方法は例えば、例えば癌などの慢性疾患に関連した悪液質(参照として本明細書に組み入れられる、Norton et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol. 7: 289-327, 1987を参照)、ならびに2型糖尿病、肥満、および他の代謝障害などの状態といった、さまざまな代謝障害の改善に有用である。本明細書で用いられる「代謝障害」という表現は、筋肉組織および/または脂肪組織の異常な量、発達、または代謝活性を特徴とする状態を少なくとも部分的には意味する。このような代謝障害は例えば肥満;筋ジストロフィー症、神経筋障害、悪液質、および食欲不振などの筋肉消耗疾患;ならびに一般に肥満と関連するが、必ずしも関連するとは限らない2型糖尿病などの疾患を含む。「異常な」という表現は、筋肉組織および/または脂肪組織の量、発達、または代謝活性に関して用いられる場合は、熟練した医師または関連する他の当業者であれば正常すなわち理想的な状態であると認識する量、発達、または代謝活性との比較に関して相対的な意味で用いられる。このような正常すなわち理想的な値は医師に知られており、また、対応する集団中の健康個体において一般的に認められるか、または望まれる平均値に基づく。例えば医師であれば、肥満が、特定の身長および体格の人の「理想的な」体重範囲を約20%上回る体重と関連することを理解すると考えられる。しかしながら医師は、対応する集団で同身長および同体格の人から推測される重量よりも20%もしくはこれ以上の体重であるからといって、ボディビルダーが必ずしも単純に肥満してはいないことを理解すると考えられる。同様に当業者であれば、筋肉活性が異常に低下したようにみえる患者が、例えば、同患者にさまざまな強度試験を受けさせ、得られた結果を対応集団内の平均的な健康な個体であると推定される対象で得られた結果と比較することで、筋肉の発達が異常であると判定される可能性があることを理解すると思われる。 被験対象の代謝障害を改善する方法は例えば、ミオスタチンプロペプチドを切断するプロテアーゼのタンパク質分解活性を低めるか、または阻害することで細胞内における潜伏型ミオスタチンの活性化を妨げ、代謝障害を改善する薬剤を被験対象に投与することで実施できる。上述したように、代謝障害は、例えば筋ジストロフィー症、悪液質(例えば癌または後天性免疫不全疾患に関連するもの)または筋減少症などの例えば筋肉消耗障害;または臨床的肥満や2型糖尿病などの代謝障害と関連するような、高値の、もしくは望ましくない高いミオスタチンの活性化もしくは活性と関連する任意の障害である場合がある。一例として筋減少症は、骨格筋の量、質、および強度の低下を特徴とする代謝障害であり、高齢者では虚弱に至る恐れがある。全体的な質に寄与する骨格筋の特徴の例には、収縮性、繊維の大きさ、および種類、ならびにグルコースの取り込みおよび代謝などがある。筋減少症が重要な結果であるのは、除脂肪体重の減少が機能を低下させるためであり、また約40%の除脂肪体重の喪失が一般に致死的となるためである(例えば、Roubenoff and Castaneda、J. Amer. Med. Assn. 286、2001を参照)。本発明の方法は、メタロプロテアーゼによるミオスタチンの活性化を減じる、または阻害することで被験対象における筋肉の成長および発達を高めることを可能とする、筋減少症を改善する手段となる。 以下の実施例は説明目的で示すものであり、本発明を制限しない。実施例1BMP-1/TLDメタロプロテアーゼファミリーメンバーはミオスタチンプロペプチドを切断する この実施例では、骨形態形成タンパク質-1/Tolloid (BMP-1/TLD)ファミリーのメタロプロテアーゼの酵素がミオスタチンプロペプチドを切断することについて説明する。 500 ngの精製済みのミオスタチンプロペプチド、またはプロペプチドとC末端二量体を含む精製済みの潜伏型ミオスタチン複合体(Lee and McPherron、前出、2001)を37℃で一晩、100 ngの精製済みのBMP-1、mTLD、mTLL-1、またはmTLL-2とインキュベートした(参照として本明細書に組み入れられる、Scott et al., Devel. Biol. 213: 283-300, 1999)。反応産物を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で解析した後に、ミオスタチンプロペプチドに対する抗血清を用いてウェスタンブロット解析を実施した(Lee and McPherron、前出、2001)。 特定のタンパク質分解によるプロペプチドの切断産物が、4種類のプロテアーゼのうち1種類を含む個々の反応物中に検出されたが、プロテアーゼを含まない対照反応物中では検出されなかった。また個々のプロテアーゼは、それが精製された状態か、またはミオスタチンC末端二量体との複合体中に存在するかにかかわらずプロペプチドを切断した。以上の結果は、BMP-1/TLDメタロプロテアーゼがミオスタチンプロペプチドを切断することを示している。実施例2ミオスタチンプロペプチドのメタロプロテアーゼによる切断が潜伏型ミオスタチンを活性化する この実施例では、BMP-1/TLDメタロプロテアーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断が潜伏型ミオスタチンを活性化することについて説明する。 精製済みのミオスタチンプロペプチドとC末端二量体複合体をmTLL-1とインキュベートした後に、ミオスタチン活性を特異的に検出するレポーター遺伝子アッセイ法で調べた。A204横紋筋肉腫細胞に、TGF-β誘導型PAI-1遺伝子(Thies et al.、前出、2001)のプロモーターに由来するTGF-β応答性CAGA配列に連結したルシフェラーゼのコード配列を含む、pGL3-(CAGA)12ルシフェラーゼレポーター遺伝子コンストラクトをトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞に、未処理のプロペプチド/C末端二量体複合体か、またはmTLL-1とプレインキュベートした複合体のいずれかを接触させた。複合体とmTLL-1とのインキュベーションの結果、レポーター細胞アッセイ法で検出されたルシフェラーゼ活性の量は劇的に増加したが、mTLL-1単独で処理した細胞、またはミオスタチン複合体単独で処理した細胞では変化は認められなかった(図1)。 mTLL-1によるミオスタチンの活性化の規模を決定するために、レポーター遺伝子アッセイ法で、精製済みのミオスタチンC末端二量体を用いて標準曲線を作成し(図2)、次に、mTLL-1で処理した複合体で処理した細胞中のルシフェラーゼ活性の量を標準曲線と比較した。mTLL-1処理試料中に存在するミオスタチン活性の量の比較と、同試料中におけるmTLL-1によるプロペプチドのタンパク質分解による切断の規模から、少なくとも約50%がタンパク質分解により切断されたミオスタチン複合体が活性を有していたことがレポーターアッセイ法で明らかとなった。以上の結果は、プロペプチドとミオスタチンC末端二量体の複合体中におけるミオスタチンプロペプチドのBMP-1/TLDメタロプロテアーゼmTLL-1による切断が、ミオスタチンを活性化することを示している。実施例3Tolloidファミリーメンバーのペプチド基質 一連の3種類のペプチド(各10、20、30、40、または50アミノ酸残基)を、ミオスタチンプロペプチドの配列を元に、BMP-1/TLDメタロプロテアーゼ切断部位(野生型ペプチド(SEQ ID NO: 9, 12, 15, 18, and 21)のアミノ酸残基「RD」を太字で示す)を含むように合成した。切断部位のすぐ上流のP1位のアルギニン残基をグルタミン残基に変えたペプチド(SEQ ID NO: 10, 13, 16, 19, and 22;太字部分を参照)、および切断部位のすぐ下流のP1位のアスパラギン酸をアラニンに変えたペプチド(SEQ ID NO: 11, 14, 17, 20, and 23;太字部分を参照)も合成した。ペプチドの配列を以下に示す: 50-mer: 40-mer: 30-mer: 20-mer: 10-mer: ペプチドは凍結乾燥粉末を入手し、60%アセトニトリル-0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)および40%の水に溶解して1.0 mMのストック溶液を調製した。ペプチド基質に対する酵素の活性を、水(70 μl)と、擬似培養上清、または対象タンパク質を含む培養上清のいずれか(各20 μl)と、合成ペプチド(10 μl)を混合することで評価した。試料を室温か37℃のいずれかで一晩インキュベートした後に、1.0 μlの0.1% TFAを添加してpHを下げることで反応を停止させた。個々のアリコートを、2 cmのC18ガードカラムカートリッジ(Supelco)にアプライし、0.1% TFA中のアセトニトリル勾配(0〜40%、20分間)を利用してペプチドを溶出した。切断ペプチド断片に対応するピークを同定し、質量分析で確認した。40-mer、30-mer、および20-merの野生型、ならびにR→Q変異ペプチドは、TLL-2を含む培養上清によって切断されたが、P1位にD→A変異を含むペプチドは切断されなかった。また50-merは使用条件で不溶性を示し、10-merの切断産物は、そのサイズの小ささ(すなわち5-mer)のために検出が困難であった。実施例4BMP-1/TOLLOIDファミリーのメタロプロテアーゼによる潜伏型ミオスタチンの活性化 この実施例では、BMP-1/TLLファミリーメンバーが潜伏型ミオスタチンを切断および活性化可能なことについて説明する。ミオスタチンの精製および解析 ミオスタチンを過剰に発現するCHO細胞系列の調製手順は文献5,6に記載されている(数字は、実施例4の最後に付記した参考文献の番号に対応する)。同様の戦略で、完全長のヒトミオスタチンおよびプロペプチド/Fc融合タンパク質の変異型を発現するCHO系列を調製した(U.S. Publ. No. US 2003/0104406 A1を参照)。変異型の完全長ヒトミオスタチン配列はSEQ ID NO: 2を元にした。また変異型のプロペプチド配列はSEQ ID NO: 2のアミノ酸残基24〜266を元にした。ミオスタチンプロペプチド/C末端二量体の複合体を、CHO発現細胞の培養上清から文献5記載の手順で精製した。プロペプチド/Fc融合タンパク質はプロテインA-セファロースゲルカラムで精製した。細菌が産生したミオスタチンC末端ドメインおよびプロペプチドに対する抗体については文献1,5に記載されている。プロテイナーゼとレポーター遺伝子アッセイ法 精製済みのBMP-1、mTLD、mTLL-1、およびmTLL-2プロテイナーゼを文献15記載の手順で調製した。ミオスタチン活性をA204横紋筋肉腫細胞中で、pGL3-(CAGA)12-ルシフェラーゼレポーターアッセイ法により、文献6記載の手順で測定した。精製済みのミオスタチンC末端二量体を用いた標準曲線を、ミオスタチン活性を定量するために各アッセイ法について作成した。マウスへの注入 体重17〜19 gの雌のBALB/cマウス(Charles River)の腹腔内に、PBSのみ、またはさまざまなタンパク質(PBSで希釈)のいずれかを1日目、4日目、8日目、15日目、および22日目に注射した。投与したタンパク質の用量は以下の通りである:プロペプチド/Fc融合タンパク質−1 mg/kgまたは10 mg/kg;IgG2am (対照抗体)−10 mg/kg;およびJA16 (ミオスタチン中和抗体)−60 mg/kg。29日目にマウスを殺して筋肉の解析を行った。各個体の両側の筋肉を切除して秤量した。個々の筋肉に関して平均重量を用いた。 ミオスタチンを過剰に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の調製法は文献5,6に記載されている。他のTGF-βファミリーのタンパク質と同様に、CHO細胞が産生するミオスタチンは二塩基性部位で切断されて、N末端のプロペプチド、およびジスルフィド結合したC末端断片二量体を生じた。このような細胞からのミオスタチンの分泌特性を明らかにする過程で、プロペプチドの特定の切断産物の存在に気づいた(プロペプチドに特異的な抗体を用いたウェスタンブロット解析で検出された)。この切断産物はC末端ドメインの非存在下で、完全長のミオスタチン前駆体タンパク質(示していない)か、またはミオスタチンプロペプチドのみ、のいずれかを含む発現コンストラクトをトランスフェクトしたCHO細胞の培養上清中で検出された(図3A)。ミオスタチンプロペプチドは、インビトロ5,6でもインビボ7,8でもC末端二量体を潜伏状態として維持可能なので、またTGF-βプロペプチドのタンパク質分解による切断は、潜伏型TGF-βl0-14を活性化する1つの機構であると考えられるので、ミオスタチンプロペプチドの切断がミオスタチンの潜時の調節に果たす役割を調べた。 N末端の配列を決定した結果、CHO細胞の培養上清中で検出されたプロペプチド分解産物が、75位のアルギニンと76位のアスパラギン酸の間におけるタンパク質分解による切断に由来することが判明した。これらのいずれのアミノ酸残基がタンパク質分解による切断に不可欠か否かを判定するために、上記のアルギニン残基またはアスパラギン酸残基のいずれかをそれぞれグルタミンまたはアラニンに変えた変異型プロペプチドを発現するCHO細胞系列を調製した。インビボ研究(下記参照)における、これらのタンパク質の安定性を高めるために、変異型プロペプチドにFcドメインを融合させた。アルギニンからグルタミンへの変更はタンパク質分解による切断に影響を与えなかったが、分解産物は、アスパラギン酸をアラニンに変えた変異型プロペプチド/Fc融合タンパク質を発現するCHO細胞から調製した培養上清中には検出されなかった(図3B参照。実施例3も参照)。切断部位にアスパラギン酸が必要であることは、BMP-1/TLDファミリーのメタロプロテイナーゼが同分解産物の生成に関与することを示唆していた。いくつかの基質が、哺乳動物のBMP-1/TLDファミリーメンバーに関して同定されており、ほぼ全ての場合で、タンパク質分解による切断が、アスパラギン酸残基のすぐN末端で生じることがわかっている15,16。また変異導入研究では、アスパラギン酸残基が、これらの部位をタンパク質分解による切断に感受性とするために重要なことがわかっている17。類似の特異性、またはタンパク質基質中の切断されやすい結合のすぐC末端におけるアスパラギン酸残基の要求性を有する他のプロテイナーゼが存在するという明確な報告はなかったので、BMP-1/TLDファミリーメンバーのもつ、インビトロにおけるミオスタチンプロペプチドの切断能を調べた。 ミオスタチンを、過剰産生させたCHO細胞の培養上清から精製した5。ヒドロキシアパタイト、レンズマメレクチンセファロースゲル、DEAEアガロース、およびヘパリンセファロースゲルで連続的に分画した後に、非共有結合でC末端二量体と結合したN末端プロペプチドからなるミオスタチン潜伏型複合体の精製調製物を得た(図3C)。図3Dに示すように、精製済みの潜伏型複合体と精製済みのBMP-1とのインキュベーションの結果、プロペプチドが完全に切断されて、ミオスタチンを過剰産生するように操作したCHO細胞から調製した培養上清中に検出された産物と電気泳動度が同一な1つの産物が生じた。BMP-1で処理したプロペプチドのN末端配列を決定した結果、切断が76位のアスパラギン酸のすぐN末端で起きていることが確認された。 mTLD、mTLL-1、およびmTLL-2を含むBMP-1/TLDファミリーの他の哺乳動物分子がプロペプチドを切断する能力についても検討した。この実験では、部分的に切断されることで4種類の酵素の相対活性の比較が可能となる酵素濃度を用いた。図3Eに示すように、潜伏型複合体と4種類の各プロテイナーゼとのインキュベーションの結果、プロペプチドの切断が認められた。3種類のプロテイナーゼ(BMP-1、mTLL-1、およびmTLL-2)は、プロペプチドの切断に関する有効性は、ほぼ同等であったが、mTLDは他の3種類と比較して、たとえ同じmTLD調製物がプロコラーゲンなどの既知の基質に対して十分活性を示したとしても一貫して活性が弱かった。全4種類のプロテイナーゼは、C末端二量体から精製して除かれたプロペプチドも切断した。 タンパク質分解によるプロペプチドの切断がミオスタチンの潜時に及ぼす作用を決定するために、4種類のプロテイナーゼのそれぞれで処理した潜伏型複合体中におけるミオスタチンの生物学的活性を測定した。この目的のために、A204横紋筋肉腫細胞にpGL3-(CAGA)12-ルシフェラーゼコンストラクトをトランスフェクトしてミオスタチンとインキュベートするレポーター遺伝子アッセイ法を採用した6。既に述べたように、精製済みのミオスタチンC末端二量体を同細胞に添加したところ、基礎レベルを上回るルシフェラーゼ活性の上昇が認められた(図4A)。これとは対照的に、精製済みのミオスタチン潜伏型複合体は、このアッセイ法では不活性であったが、80℃で5分間インキュベートすることで活性化可能であった(図4B)。図4Cに示すように、潜伏型複合体は、BMP-1による前処理によっても活性化された。標準曲線によるミオスタチン活性の定量に基づき、BMP-1によるプロペプチドの切断は、熱処理で潜伏型複合体を活性化する場合と、ほぼ同じ効率を示した。潜伏型複合体は他のプロテイナーゼによる前処理によっても活性化され、また活性化の規模は、このような酵素によるタンパク質分解による切断の規模と、ほぼ相関した(図4D)。 切断部位におけるアスパラギン酸の要求性についても調べた。76位のアスパラギン酸をアラニンに変えた変異型ミオスタチンを高レベルで発現するCHO細胞系列を調製し、細胞培養上清から潜伏型複合体を精製した。図3Cに示すように、この変異は、プロペプチドがC末端二量体に結合する能力に影響せず、変異型プロペプチドおよびC末端二量体は、精製中は強く結合したままであった。また、この変異型プロペプチドは、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法で評価したところ、複合体を加熱によって活性化可能な潜伏型の状態のまま維持された(図4B)。しかしながら、潜伏型複合体中の変異型プロペプチドは、4種類のそれぞれのプロテイナーゼ(BMP-1、mTLD、mTLL-1、およびmTLL-2)によるタンパク質分解に完全に耐性を示し(図3DおよびE)、これらのプロテイナーゼによる活性化に耐性を示した(図4Cおよび4D)。 最後に、タンパク質分解によるプロペプチドの切断がインビボで果たす役割を、野生型および変異型のプロペプチドのマウスへの注入による作用に注目して調査した。過去の実験から明らかなように、マウスへの腹腔内注射後の野生型プロペプチドの半減期は、プロペプチドとFcドメインを融合することで約2時間から5〜7日間、延長可能であった。このため、Fcドメインと融合した野生型または変異型(76位のアスパラギン酸がアラニン)のプロペプチドを発現するCHO細胞系列を調製し、タンパク質Aセファロースゲルカラムを用いて融合タンパク質を精製した。アスパラギン酸からアラニンへの変異はインビトロでプロペプチドの活性に影響を及ぼさなかった。というのは、精製済みの野生型および変異型のプロペプチド/Fc融合タンパク質は、レポーター遺伝子アッセイ法において、精製済みのミオスタチンC末端二量体の活性を阻害する効率がほぼ同等であったからである(図5)。 これらのタンパク質の活性をインビボで評価するために、成体マウスに、精製済みの野生型または変異型のプロペプチド/Fc融合タンパク質を毎週注射し、4週間後にマウスを殺して筋肉の解析を行った。比較目的で数匹のマウスにも、投与の12週間後に筋量の約25〜30%の増加を引き起こす、JA16ミオスタチン中和モノクローナル抗体を注射した18。表1に示すように、野生型プロペプチド/Fc融合タンパク質を注射しても、1 mg/kg/週および10 mg/kg/週の用量では筋量に影響は認められなかった。同様に、アスパラギン酸をアラニンに変えた変異型プロペプチド/Fc融合タンパク質の1 mg/kg/週の用量の注射後に作用はほとんど、あるいは全く認められなかった。しかしながら、変異型プロペプチド/Fc融合タンパク質を10 mg/kg/週の量で注射すると、個々の対象骨格筋の重量に関して18〜27%の統計的に有意な(p < 0.0001)増加が認められた。高用量の変異型プロペプチド/Fc融合タンパク質における、筋肉重量にみられたこの増加の規模は、JA16ミオスタチン中和モノクローナル抗体の注射後に認められた規模(筋肉重量を10〜16%増した)の約2倍であった。 以上の結果は、BMP-1/TLDファミリーのメタロプロテイナーゼが、C末端二量体と結合したミオスタチンプロペプチドを切断し、潜伏型複合体を活性化することを示している。また、BMP-1/TLDプロテイナーゼによる切断に耐性を示す変異型プロペプチドは、成体マウスへの注射時に筋量の増加を引き起こした。これはおそらく、同グループのプロテイナーゼでは活性化されない潜伏型複合体の生成に起因するものと考えられる。C末端二量体の活性を調節する、このような一般的な機構は、他のいくつかのTGF-βファミリーのタンパク質に関して報告されている。TGF-βの場合、その結合した状態のプロペプチドの、プラスミン10,11による、またはマトリックスメタロプロテイナーゼ12-14によるタンパク質分解による切断は、インビボで潜時を活性化する機構の1つであると考えられている。BMPの場合は、BMP-1/TLDファミリーメンバーは、BMP拮抗物質であるコーディン(chordin)の切断および不活性化によるC末端二量体の活性の調節に重要な役割を果たすようである15,19-22。 BMP-1/TLDファミリーの全4種類の哺乳動物プロテイナーゼは、ミオスタチンプロペプチドをインビトロで切断可能であり、また1つもしくは複数の同プロテイナーゼが、インビボにおけるミオスタチン活性の調節に関与している可能性がある。この点に関してmTLL-2は、他の3種類のプロテイナーゼとは異なり、胚発生期に骨格筋で特異的に発現されている15。特定のプロテイナーゼ、またはミオスタチンの潜時の調節に関与するプロテイナーゼが同定されたことは、筋量を調節する際に有用な薬剤を同定するための標的を提供し、またヒトを対象とした治療、および農業における応用の両方に用いられる新しい筋肉増強剤の開発において、これらの酵素を標的とすることを可能とする。ap < 0.05 (vs. PBS)bp < 0.0001 (vs. PBS)cp < 0.05 (vs. JA16)dp < 0.01 (vs. JA16)eP < 0.001 (vs. JA16)fp < 0.001 (vs. PBS)以下の出版物は参照として本明細書に組み入れられる: 本発明を、上記の実施例を参照して説明したが、修正および変更が本発明の趣旨および範囲に含まれると理解される。したがって本発明は、特許請求の範囲によってのみ制限される。ミオスタチン複合体(MSTN;C末端ミオスタチン二量体およびプロペプチド)とmTLL-1のインキュベーションによって、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現(点線のバー、実施例2参照)の発現が劇的に増加し、この発現が、トランスフェクトされた横紋筋肉腫細胞で、細胞と活性ミオスタチンの接触に伴い調節されることを示している。ミオスタチン複合体だけを接触させた細胞(黒いバー)、またはmTLL-1だけを接触させた細胞(斜線のバー)では、バックグラウンドの発現しか認められなかった。トランスフェクトした細胞(図1参照)に、特定の量の精製済みの活性型のC末端ミオスタチン二量体(ダイヤ印)を接触させたルシフェラーゼレポーターアッセイ法で作成した標準曲線。対照ルシフェラーゼ活性(ミオスタチンなし)を丸印で示す。BMP-1/TLDファミリーのプロテイナーゼによるミオスタチンプロペプチドの切断の判定。図3Aおよび3Bは、CHO細胞の培養上清中でプロペプチド分解産物が検出されたことを示す。プロペプチド(図3A)、または野生型および変異型のプロペプチド/Fc融合タンパク質(図3B)を発現するCHO細胞から調製した培養上清を、SDS-PAGEと、これに続く、対ミオスタチンプロペプチド抗体(図3A)または対IgG抗体(図3B)のいずれかを使用したウェスタンブロット解析で解析した。D76のAへの変異によって分解産物が消失したことに注目されたい。図3Cは、野生型および変異型のプロペプチド/C末端二量体複合体の精製結果を示す。タンパク質複合体を、β-メルカプトエタノールの存在または非存在下におけるSDS-PAGEと、これに続くウェスタンブロット解析で図のように解析した。野生型プロペプチドと同様に、D76A変異型プロペプチドが、C末端二量体との複合体中に精製されたことに注目されたい。プロペプチド分解産物は同時に精製されなかったので、複合体の一部ではなかった。星印を付けたバンドは、非還元条件で明瞭に認められた、誤って折り畳まれたミオスタチン分子種を示す。図3Dおよび3Eは、BMP-1/TLDプロテイナーゼによるプロペプチドの切断を示す。野生型および変異型の複合体を、精製済みのプロテイナーゼとインキュベートし、SDS-PAGEと、これに続く、対プロペプチド抗体を用いたウェスタンブロッティングで解析した。1 μgの潜伏型複合体と250 ngのプロテイナーゼとのインキュベーションを37℃で16時間行った(ただし図3Dにおける、試料と別の250 ngのBMP-1との4時間のインキュベーションを除く)。図3Eの「酵素なし」と示されたレーンは、試料を酵素の非存在下で37℃で16時間インキュベートしたことを意味する。すべての酵素が切断産物を生成可能であったこと、またD76A変異タンパク質が切断に完全に耐性を示したことに注目されたい。BMP-1/TLDプロテイナーゼによる潜伏型ミオスタチン活性の活性化を示す。図4B〜4Dで黒いバーは野生型を示し、灰色のバーはD76A変異型複合体を示す。熱処理によって野生型と変異型の両複合体が活性化されたが(図4B)、個々のプロテイナーゼは野生型複合体のみを活性化可能であったことに注目されたい(図4Cおよび4D)(*p < 0.05、**p < 0.01)。図4Aは、精製済みのミオスタチンC末端二量体によってpGL3-(CAGA)12-ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性が活性化されたことを示す。図4Bは、熱処理によってミオスタチンプロペプチド/C末端二量体の潜伏型複合体が活性化されたことを示す。対照(ミオスタチン(MSTN)なし)の結果を併せて示す。図4Cおよび4Dは、BMP-1/TLDプロテイナーゼにより、ミオスタチンプロペプチド/C末端二量体の潜伏型複合体が活性化されたことを示す。図4Cおよび4Dでレポーターアッセイ法に使用した試料は、図3Dおよび3Eにそれぞれ示したものと同じ試料である。野生型および変異型のプロペプチド/Fc融合タンパク質によってレポーター遺伝子活性がインビトロで阻害されたことを示す。レポーターコンストラクトをトランスフェクトしたA204細胞を、10 ng/mlの精製済みミオスタチンC末端二量体、およびさまざまな濃度の野生型(黒)またはD76A変異体(白)のプロペプチド/Fc融合タンパク質とインキュベートした。野生型および変異型のタンパク質が、ミオスタチン活性の阻害に対して同様に効果的であったことに注目されたい。 ミオスタチンプロペプチドおよびミオスタチンC末端断片を含む潜伏型(latent)ミオスタチン複合体、ならびにミオスタチンプロペプチドを切断可能なメタロプロテアーゼを含む試料と、メタロプロテアーゼによるタンパク質分解によるプロペプチドの切断を減らすことでミオスタチンの活性化を低下させる薬剤とを接触させる段階を含む、ミオスタチンの活性化を低下させるインビトロの方法であって、該メタロプロテアーゼが骨形態形成タンパク質-1/tolloid (BMP-1/TLD)ファミリーメンバーであり、該薬剤が配列番号9〜23からなる群より選択されるペプチドである方法。 BMP-1/TLDファミリーメンバーが、BMP-1、TLD、tolloid様タンパク質-1 (TLL-1)、またはtolloid様タンパク質-2 (TLL-2)である、請求項1記載の方法。 BMP-1/TLDファミリーメンバーが、哺乳動物のTLD (mTLD)、哺乳動物のTLL-1 (mTLL-1)、または哺乳動物のTLL-2 (mTLL-2)である、請求項2記載の方法。 試料が細胞試料、組織試料、または生体液試料を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 ミオスタチンプロペプチドおよびミオスタチンC末端断片を含むミオスタチン複合体において、ミオスタチンプロペプチドのメタロプロテアーゼによるタンパク質切断を低下させる、対象におけるミオスタチン活性化を低下させる際の使用のための薬剤であって、該メタロプロテアーゼが骨形態形成タンパク質-1/tolloid (BMP-1/TLD)ファミリーメンバーであり、該薬剤が配列番号9〜23からなる群より選択されるペプチドである薬剤。 BMP-1/TLDファミリーメンバーが、BMP-1、TLD、tolloid様タンパク質-1 (TLL-1)、またはtolloid様タンパク質-2 (TLL-2)である、請求項5記載の薬剤。 BMP-1/TLDファミリーメンバーが、哺乳動物のTLD (mTLD)、哺乳動物のTLL-1 (mTLL-1)、または哺乳動物のTLL-2 (mTLL-2)である、請求項6記載の薬剤。 対象において、筋量が増加する、および /または脂肪量が減少する、請求項5〜7のいずれかに記載の薬剤。 対象が、食用として成長させた動物である、請求項8記載の薬剤。 対象における代謝障害が改善される、請求項5〜7のいずれかに記載の薬剤。 代謝障害が肥満、II型糖尿病、または筋肉消耗障害である、請求項10記載の薬剤。 筋肉消耗障害が筋減少症(sarcopenia)、または、筋ジストロフィー症もしくは悪液質と関連する、請求項11記載の薬剤。 悪液質が、癌または後天性免疫不全疾患と関連する、請求項12記載の薬剤。 対象が脊椎動物である、請求項9〜13のいずれかに記載の薬剤。 脊椎動物が家畜化された動物である、請求項14記載の薬剤。 対象が、哺乳動物種、鳥類種、または魚類種である、請求項9〜14のいずれかに記載の薬剤。 哺乳動物種が、ヒツジ種、ブタ種、ウシ種、またはヒトである、請求項16記載の薬剤。 鳥類種が、ニワトリまたはシチメンチョウである、請求項17記載の薬剤。 以下の段階を含む、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤の同定法:a)ミオスタチンプロペプチド、ミオスタチンプロペプチドを切断可能なメタロプロテアーゼ、および試験薬剤を、メタロプロテアーゼによるプロペプチドの切断に十分な条件で接触させる段階;ならびにb)試験薬剤の存在時と比較した試験薬剤の不在時のプロペプチドの切断量の変化を検出することで、試験薬剤を、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する薬剤として判定する段階。 ミオスタチンプロペプチドが、ミオスタチンプロペプチドおよびミオスタチンC末端断片を含む潜伏型ミオスタチン複合体を含む、請求項19記載の方法。 ミオスタチンプロペプチドが、ミオスタチンプロペプチドおよびミオスタチンC末端二量体を含む潜伏型ミオスタチン複合体を含む、請求項19記載の方法。 プロペプチドまたはプロペプチドの切断産物を検出する段階を含む、プロペプチドの切断量の差を検出する、請求項19記載の方法。 プロペプチドまたはプロペプチドの切断産物の量を、電気泳動、クロマトグラフィー、または質量分析で検出する、請求項22記載の方法。 試験薬剤の不在時の切断産物量と比較して試験薬剤の存在時のプロペプチドの切断産物量の増加を検出することで、試験薬剤をメタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を高める薬剤として判定する段階を含む、請求項22記載の方法。 試験薬剤の不在時のプロペプチド量と比較して試験薬剤の存在時のプロペプチド量の減少を検出することで、試験薬剤をメタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を高める薬剤として判定する段階を含む、請求項22記載の方法。 試験薬剤の不在時の切断産物量と比較して試験薬剤の存在時のプロペプチドの切断産物量の減少を検出することで、試験薬剤をメタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を低める薬剤として判定する段階を含む、請求項22記載の方法。 試験薬剤の不在時のプロペプチド量と比較して試験薬剤の存在時のプロペプチド量の増加を検出することで、試験薬剤をメタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を低める薬剤として判定する段階を含む、請求項22記載の方法。 薬剤が、メタロプロテアーゼが媒介する潜伏型ミオスタチンの活性化を調節する量を決定する段階をさらに含む、請求項19記載の方法。 プロペプチドの切断量の差を検出する段階が、ミオスタチン受容体を発現する細胞内でのミオスタチンが媒介する情報伝達の変化を検出する段階を含む、請求項19記載の方法。 ミオスタチン受容体がアクチビン受容体である、請求項29記載の方法。 アクチビン受容体がアクチビンII型受容体である、請求項30記載の方法。 ミオスタチン受容体が導入遺伝子から発現される、請求項29記載の方法。 細胞が、ミオスタチンが媒介する情報伝達に応答するレポーター遺伝子を含み、かつ検出段階が、レポーター遺伝子の発現の変化を検出する段階を含む、請求項29記載の方法。 レポーター遺伝子が、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)の調節エレメントを含む、請求項33記載の方法。 試験薬剤が、ペプチド、ペプチドヒドロキサマート(hydroxamate)、ホスフィニック(phosphinic)ペプチド、ペプトイド、ポリヌクレオチド、または小型有機分子である、請求項19記載の方法。 ハイスループット形式で実施される、請求項19記載の方法。 ミオスタチンプロペプチドおよびメタロプロテアーゼを含む、複数の試料のそれぞれと試験薬剤とを接触させる段階を含む、請求項36記載の方法。 試験薬剤が複数の試験薬剤を含み、かつ複数の試料のミオスタチンプロペプチドおよびメタロプロテアーゼを含む少なくとも1つの試料と、複数の試験薬剤のうち少なくとも1つの試験薬剤とを接触させる、請求項36記載の方法。 複数の試験薬剤が、試験薬剤のコンビナトリアルライブラリーを含む、請求項38記載の方法。 試験薬剤のコンビナトリアルライブラリーが、ランダムな試験薬剤のライブラリー、バイアス型(biased)試験薬剤のライブラリー、または多様型(variegated)試験薬剤のライブラリーを含む、請求項39記載の方法。配列表


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