タイトル: | 特許公報(B2)_テナトプラゾールの(−)鏡像体とその治療適用 |
出願番号: | 2004564280 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/437,A61P 1/00,A61P 1/04,C07D 471/04 |
チャービット、スージー コーエン、アブラハム フィシュー、エルブ オムリン、ミシェル シュッツ、フランシス タコエン、アライン JP 5230897 特許公報(B2) 20130329 2004564280 20031216 テナトプラゾールの(−)鏡像体とその治療適用 シデム ファーマ エスアー 505227940 小栗 昌平 100105647 本多 弘徳 100105474 市川 利光 100108589 チャービット、スージー コーエン、アブラハム フィシュー、エルブ オムリン、ミシェル シュッツ、フランシス タコエン、アライン FR 02/15949 20021216 20130710 A61K 31/437 20060101AFI20130620BHJP A61P 1/00 20060101ALI20130620BHJP A61P 1/04 20060101ALI20130620BHJP C07D 471/04 20060101ALN20130620BHJP JPA61K31/437A61P1/00A61P1/04C07D471/04 107E A61K31/437 米国特許第5877192(US,A) 国際公開第01/28558(WO,A1) 特表2006−516261(JP,A) J.Pharmacy and Pharmacol.,1999年,Vol.51,pp457−464 Methods Find.Exp.Pharmacol.,1999年,Vol.21,No.3,p.179−187 11 FR2003003746 20031216 WO2004060891 20040722 2006513230 20060420 12 20061207 2011020524 20110922 柳 和子 齋藤 恵 大畑 通隆 本発明は、テナトプラゾールに関し、特にテナトプラゾールのひとつの鏡像体、さらに詳細にはその調製方法およびヒトまたは獣医治療中における用途に関する。 テナトプラゾールすなわち5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチル]スルフィニル]イミダゾ[4,5−b]ピリジンは、欧州特許第254.588号に記載されている。それは、“プロトンポンプインヒビターズ”(PPIs)の名称で分類される薬物群に属し、胃酸の分泌を阻害しかつ胃および十二指腸消化性潰瘍の治療に有用である。テナトプラゾールはその比較的長い消失半減期のゆえ、フランス国特許出願第FR02.13113号に記載されているように胃食道逆流、消化管出血および消化不良のような状態の治療にも用いられる。 このPPIsシリーズで最初に公知となった誘導体は特許第EP005.129号に記載のオメプラゾールであり、胃酸の分泌を阻害する性質を有しておりヒト治療薬物中で抗潰瘍薬として広く使用されている。 オメプラゾールに加えて他のPPIsが現在周知となっており、ラベプラゾール、パントプラゾールおよびランソプラゾールについても特に言及でき、それらはすべて構造的類似性を示しピリジニル−メチル−スルフィニル−ベンズイミダゾール類群に属している。これらの化合物類はイオウ原子レベルで非対称性を有するスルホキシド類であり、従って、一般に、鏡像体類2種の混合物(ラセミ混合物すなわちラセメート)の形状を取る。 PPIsの性質または活性を改善するために異なる処方が提案されている。たとえばオメプラゾールの場合、PCT出願WO 01.28558は、オメプラゾール上での水酸化物の作用によりポリエチレングリコール中でナトリウムまたはカリウム塩類をin situで溶液として形成させることによって得られた安定液体処方を述べている。このように処方された医薬品を通常のPPIs適応症に使用できる。 オメプラゾールおよび類似構造を有する他のスルホキシド類のように、テナトプラゾールも非対称構造を有しており、従って、ラセミ混合物の形態でかつそれぞれ構造“R”および“S”または(+)および(−)を有する2種の鏡像体の形状で存在することもできる。 最近の研究で、(例えば、オメプラゾールまたはランソプラゾールのような)他のPPIsすべてと異なりテナトプラゾールの血漿中半減期が長い結果それが驚くほど長い作用時間(およそ7倍長い)を有していることが思いがけず明らかになった。実際、臨床データは、テナトプラゾールがある程度の症状の緩和と胃病変の治癒を誘発し、他のPPIsよりも優れており、かつ、例えば胃食道逆流、消化管出血および消化不良の異型食道症状のような疾患および状態の治療に有効に使用できるようになったことを明らかとしている。 本出願人が行った研究では、テナトプラゾールの(+)および(−)鏡像体がテナトプラゾールの性質に異なった寄与をし、有意に異なる薬物動態性質を示すことが予測外にも明らかになった。したがって、これらの鏡像体を単離し異なる薬物動態挙動と比活性を有する医薬品を調製することが可能となっている。したがって、特定疾患と状態の治療により効果的に各鏡像体を用いることが可能となっている。 本発明は、ヒトまたは獣医治療薬剤におけるテナトプラゾール(−)鏡像体の使用に関する。 本発明のひとつの目的は、1種以上の薬学的に許容できる賦形剤類および基質類と併用したテナトプラゾール(−)鏡像体を含む薬剤組成物の調製である。 本発明はまた、1種以上の抗生物質と併用したテナトプラゾール(−)鏡像体を含む薬剤組成物に関する。 さらに本発明の目的は、酸分泌阻害が、例えば胃食道逆流または他のPPIsに対して再燃性の消化管出血の症状と病巣の治療に効果的でかつ長期にわたらなければならず、特に多剤療法を受けている患者のこうした疾患と病状を治療するために効果的でかつ長期にわたらなければならない消化管疾患と状態の治療のための医薬品製造におけるテナトプラゾール(−)鏡像体の使用である。 さらに本発明の目的は、動物またはヒトにおける胃病変の治癒開始が有意に改善しかつその組織変化が正常化する速度を増加させる薬剤の製造におけるテナトプラゾール(−)鏡像体の使用であり、その結果、食道炎再燃が急激に低下ししたがって食道炎再燃予防または治療のためにもなる。 本発明はまた、関連適応症において特に他のPPIsでは(朝夕)2回の投与を通常必要とする状態である十二指腸潰瘍の治療時におけるヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)の根絶において1日当たり単回薬剤投与を可能とする改善された薬物動態性質を有する医薬品製造におけるテナトプラゾール(−)鏡像体の使用に関する。 テナトプラゾール(−)鏡像体は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウムまたはカルシウム塩の形状のようなアルカリまたはアルカリ土類金属塩を含む塩の形状で使用できる。これらの塩類は、例えば、アルカリまたはアルカリ土類対イオン類を含む塩基性無機試薬類の作用によってこれまで標準的技術方法による塩形成によって単離されてきたテナトプラゾール(−)鏡像体から得ることができる。 テナトプラゾール(−)鏡像体すなわち(−)テナトプラゾールは、(−)−5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチル]スルフィニル]イミダゾ[4,5−b]ピリジンに対応する。それは、下記の一般式によって表すことができる: 好適な調製方法によれば、テナトプラゾール(−)鏡像体は、特定のバナジウム基剤触媒の存在下対応するスルフィドの鏡像体選択的酸化によって、良好な純度と収率で鏡像体選択的に得ることができる。このような方法は、フランス国特許出願0303914に記載されている。 出発物質として用いたスルフィドは、文献に記載のいくつかの方法類、例えば特許EP254.588およびEP103.553に記載の方法によって調製できる。 本発明の方法で使用される酸化剤は、好適には、過酸化水素のような過酸化物である。実施の好適な方法によれば、例えば30%を超える濃縮過酸化水素が使用される。 本発明によれば、前記触媒は、バナジウムアセチルアセトネートのようなVオキソバナジウム錯体触媒類から選択できる。このような触媒類は市販されている。 置換サリチルアルデヒドからおよびキラルアミノアルコールから誘導したシッフ塩基のようなリガンドも前記触媒と併用して好適に用いられる。最も好適なリガンドは、2,4−ジ−tert−ブチル−6−[1−S−ハイドロキシメチル−2−メチル−プロピルイミノ)−メチル]−フェノールである。前記リガンドおよび前記金属触媒が操作条件下で非対称錯体を形成するが、そこでは、金属が酸化剤によって酸化される。 前記反応は、例えば、メタノール、テトラハイドロフラン、メチレンクロリド、アセトニトリルまたはトルエンのような溶媒中、中性または弱塩基媒体中で実施することもできる。他に使用する塩基は、ピリジン、ジーイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンのような三級アミンであってもよい。前記酸化反応は、低温または室温で容易に行われる。 テナトプラゾール(−)鏡像体は、上記合成方法によって純粋な光学的形態で容易に得ることができる。 本文で、“純粋な光学的形態”とは、前記(−)鏡像体が実質的に(+)鏡像体を含まないか微量のみを含むことを意味している。もし関係があるならば、塩基による塩形成をその後適当な溶媒中で行い、塩特にアルカリまたはアルカリ土類金属塩を形成させる。 この形態は、標準技術を用いて光学旋光度測定によって測定できる。 たとえば、ジメチルホルムアミドまたはアセトニトリル中に溶解させ前記所望の鏡像体を、一般的に使用される種類の偏光計(例 Jobin Yvon)を用いて0.25%の(溶媒20ml当たり試料50mg)溶液として調製することが可能である。ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリル中において、(−)テナトプラゾールの光学旋光度は左旋性であり、その融点は127−130℃(分解)である。 テナトプラゾール(−)鏡像体はまた、あらゆる適切な分離方法を用いる周知の技術、例えばキラルクロマトグラフィまたは高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)のような調製カラムクロマトグラフィによって、純粋な光学的形状で得ることができる。 キラルクロマトグラフィの原理は、(+)と(−)鏡像体類のアフィニティ差と静止相のキラル選択剤に基づいている。この方法は、満足できる収率で鏡像体類を分離できる。 もし必要であれば、テナトプラゾールのラセミ混合物は、例えば、特許EP254.588に記載の方法など公知のプロセスを用いて得ることができる。したがって、過安息香酸のような酸化剤を用いてチオールとピリジンの縮合により生成する対応するスルフィドを好適には水酸化カリウムのような塩基存在下例えばエタノールのような適切な溶媒中で加熱して処理し、調製することができる。 テナトプラゾール鏡像体類分離に用いる公知の方法は、良好な純度(キラル純度:最低でも表面積の98.8%)の(−)鏡像体を単離させることができる。本出願人が行った研究では、本発明に述べた方法によって得られたテナトプラゾール(−)異性体は“S”構造を有しており、そのことは、(+)異性体が“R”構造を有していることを意味している。薬理学研究ラットにおけるin vivo研究:胃液分泌量とpHの評価 ラット幽門結紮モデルにより本出願人が行ったin vivo研究では、テナトプラゾールの(−)および(+)異性体類の薬理学的効果を調べた。この既に充分に確立されかつ証明されたモデルにおいて、動物を幽門結紮前さまざまな時点(10、16および20時間)で前処置し、胃液分泌量とそのpHを結紮4時間後に測定する。 前記2種の異性体の有意差をこのモデルで観察でき、それを、下記の表にまとめた。処置投与10時間後において実際に、(−)異性体は薬理学的に活性のままである。それは、対照群に比較してpHを49%だけ上昇させ(p<0.01)、胃の酸度を約55%だけ(p<0.01)低下させ、一方、(+)異性体の効果はもはや有意ではない。イヌにおけるin vivo研究:抗分泌効果の評価 本出願人はイヌでin vivo研究を行い、処置投与(10mg/kg/日)後の胃内pHを6日間測定することによって、テナトプラゾール(−)異性体と(+)異性体の抗分泌効果を研究した。24時間胃内pHの挙動を、投与後2日間、第6日、および処置終了後2日間記録した。これらのpH値を処置投与前基準値で測定した値と比較した。 テナトプラゾール(−)異性体とテナトプラゾール(+)異性体はイヌで胃液分泌を阻害することが実証された。しかし、投与第1日からテナトプラゾール(−)異性体の有意な効果のみが観察でき、処置終了2日後まで継続する。 3および4を超えるpHを維持した時間の24時間に対する百分率に対応する結果を、下記に示した。ラットにおけるin vivo研究:病巣の治癒開始とその組織変化の正常化亢進の評価 他に本出願人がラットで行ったin vivo実験は、(+)鏡像体で得られた効果に比べてテナトプラゾール(−)鏡像体の投与で潰瘍病巣治癒開始が有意に改善されたことを明らかにしている。したがって、テナトプラゾール(−)鏡像体で観察された効果が、(+)鏡像体のそれらよりも1日前に出現した。このような予測外の差の後に、(−)鏡像体投与時に組織変化正常化亢進により治癒の内容が有意に改善した。これらの変化は、超構造傷害低下で構成されており、その結果、食道上皮が形態学的に完全に回復した。 このような内容的および量的な改善の両者に及ぼす(−)鏡像体の薬理学的効果の結果、食道炎再燃回数が有意に低下するであろう。薬物動態研究 上記のように調製したテナトプラゾール(−)鏡像体について本出願人が行った研究では、予測外にも、それが他のPPIsまたは(+)鏡像体の薬物動態と基本的に異なる薬物動態を有していることを明らかにし、したがって、(−)鏡像体を特定の治療適応に使用できることを示唆している。 したがって、テナトプラゾール(−)鏡像体は、本文に記載の研究によって明らかになったように薬物動態という観点から有意に異なる。この特性は必須であり、それは臨床医に対して特定疾患と状態の効果的治療に適した医薬品を提供するであろう。 特に、テナトプラゾール(−)鏡像体の予測外の薬物動態は、多岐にわたるin vitroおよびin vivoにおける薬物動態および代謝研究プログラムにおいて発見された。薬物動態特にAUC0−inf(エリア アンダー ザ カーブ)およびt1/2(消失半減期)で観察された変動性により、本研究対象の遺伝子型を、それらが属する代謝タイプ(すなわち、遅いか速いか)を同定するために評価した。 PPIs代謝の重要な面は、それらがほとんど、染色体10に遺伝子が局在しているサイトクロームCYP2C19によって代謝されるということである。したがって、PPIsは、“遺伝的多形”すなわち患者の遺伝子タイプの関数として変動する活性を示す。こうした結果、前記薬物の血漿レベルが変動することになり、潜在的な有害薬物相互作用に対する感受性も問題の個人に依存することになる。in vitro薬物動態および代謝研究 実際、テナトプラゾールを代謝するサイトクローム類上で行ったin vitro研究では、下記の表に示したように(+)異性体と(−)異性体の代謝に有意差が存在することが明らかになった。 上記表では、Vmax値は、サイトクロームpmol当たりpmol/minとして測定した代謝最大速度(Vmax)である。Vmax(−)は、テナトプラゾール(−)鏡像体のVmax値である。 これらの結果から、(−)鏡像体が(+)鏡像体よりも約7倍ゆっくりと代謝されると結論できる。その結果、テナトプラゾール(−)鏡像体が(+)鏡像体に比べてヒト体内ではるかに長い平均滞留時間(MRT)を有するであろうということが予測できる。 さらに、異なるサイトクローム類がテナトプラゾール代謝に介在することが明らかになっている。 (−)鏡像体は主にサイトクロームCYP3A4により代謝され、それは、サイトクロームCYP2C19の潜在的欠損または遮断を補償できる。(+)鏡像体は二つの経路により代謝され、すなわち、主にCYP2C19により代謝され程度は低いがCYP3A4により代謝される。 さらに、CYP2C19*2/*2遺伝子型を生成する変異に対してホモ接合型の対象は、一般公衆で観察されるのとは全く異なるテナトプラゾールの薬物動態特性を示すことが明らかになっている。ホモ接合型の対象は、テナトプラゾール代謝に関与するサイトクロームCYP2C19の代謝活性が極めて弱い。血漿分析は、これらの対象において(−)鏡像体に比べて(+)鏡像体が非常に増加していることを示している。これらの対象は、“スローメタボライザー”としてみなせる。 それとは逆に、CYP2C19*1/*1遺伝子型により特徴づけられる対象は、“ラピッドメタボライザー”であり、(+)鏡像体に比較して(−)鏡像体濃度が高く、それを下記の表にまとめた。 CYP2C19の飽和可能性を考慮すれば、併用薬物を投与されている患者における薬物相互作用の潜在的リスクが、(−)鏡像体を投与すると激減するであろうということが予測される。in vivo薬物動態および代謝研究 イヌで本出願人が行った他の研究では、テナトプラゾール(−)鏡像体投与の結果、代謝速度が異なり、(+)鏡像体に比べてテナトプラゾール(−)鏡像体の半減期が有意に長くなった。臨床研究 本発明の(−)鏡像体と(+)鏡像体の薬物動態特性差を比較するため、薬物動態研究を行った。 前記研究は、テナトプラゾールを急性的にかつ繰り返し投与(7日間)した後のコーカサス人対象で実施した。処置7日後(−)異性体の血漿中の濃度が用量に対して直線性を示すことが観察されたが、それは、対象の胃内pHとそのAUCが相関ししたがって前記処置の活性に相関する症例についてと同様である。対照的に、(+)異性体の血漿濃度増加は直線的ではなく、したがって、前記薬物の有効性と耐容性を予見しないことが観察された。さらに、薬物動態パラメータの対象間変動は、(+)異性体に比較してその(−)異性体で顕著に低いことが観察された。 別の研究では、テナトプラゾール(−)異性体の消失半減期が(CYP2C19活性を欠損している)スローメタボライザーで(+)異性体に比べ、約4倍短いことが観察され、それを下記の表に要約した。 したがって、上記結果により、テナトプラゾール(−)鏡像体がはるかに優れた予見可能な作用を有しており、そのことにより、併用薬物を投与されている患者における薬物相互作用の潜在的リスクを予測しかつ限定することが可能になると確認できる。 したがって、上記研究の全般的結論として、テナトプラゾール(−)鏡像体が優れた効果と有意な安全プロフィールを有し、重篤な薬物副作用を防止することが挙げられる。これらの予測外の結果全てにより、テナトプラゾール鏡像体の1種である(−)鏡像体のみを単離し投与するという提案が導かれ、それは、下記の利点を有している:−対象間変動の低下により前記医薬品の優れた用途と全患者におけるより優れた均一な治療応答が得られること;−代謝速度が遅く体内における平均滞留時間(MRT)が長いことにより医薬品の組織暴露が改善されること;−併用薬物による潜在的相互作用回数の低下。実際、(−)鏡像体は2種の経路ですなわち2C19と3A4サイトクロームにより代謝され、それは、2C19サイトクローム欠損または遮断可能性を補償する。−スローまたはラピッドメタボライザーであろうとも全患者タイプにおける使用の容易さ。実際、スローメタボライザーにおける(−)鏡像体は、サイトクロームCYP3A4によって代謝され、患者の遺伝子型にかかわらず薬物動態パラメータの均一性を達成可能とする。−胃食道逆流、消化管出血および消化不良の典型的な食道症状のような消化管疾患と状態を処置する際の全患者タイプにおける効果/安全性プロフィール改善。−胃病巣治癒開始改善ならびにその組織変化正常化の亢進。 さらに、テナトプラゾール(−)鏡像体単離は、その薬物動態プロフィール決定を可能として、さらに注目すべきは、10mgから80mg用量で約10乃至12時間の平均血漿半減期決定を可能とした。対照的に、これまでの研究では、ラセミ混合物がこの用量範囲で約7時間の平均血漿半減期を有していることを明らかにしている。 テナトプラゾール(−)鏡像体の予測外の性質と特にその具体的薬物動態および代謝パラメータにより、テナトプラゾール(−)鏡像体が、酸分泌を効果的にかつ長く阻害することが必要な消化管疾患と状態の治療のために有効に使用できることを示している。このことは、胃食道逆流に関連する前癌障害を起こすバレット(Barrett‘s)症候群の患者であてはまるが、これらの患者では、食道腺癌リスクは直接、胃食道逆流エピソードの頻度、重篤性および期間に比例している。 テナトプラゾール(−)鏡像体はまた、ゾーリンガーエリソン症候群や酸の過量分泌を伴う他症候群患者の治療にも適しており、また、胃食道逆流、他のPPIsに対して再燃性消化管出血の異型食道症状の治療に適しており、および、薬物相互作用に関連した有害事象の防止目的のため特に多剤療法を受けている患者の治療、特に高齢者の治療に適している。 テナトプラゾール(−)鏡像体はまた、1種以上の抗生物質類と併用してHelicobacter pylori感染時の潰瘍治療に好適に用いられ、特に潰瘍治癒を促進してHelicobacter pylori根絶を助けかつ再発を防止するために用いることができる。 上記状態の治療のためかつ特にバレットおよびゾーリンガーエリソン症候群の治療のため、さらに、胃食道逆流および消化管出血治療のため、テナトプラゾール(−)鏡像体は、選択した投与方法に適した標準的形態で、例えば、経口または非経口経路で好適には経口または静注経路で投与できる。 たとえば、テナトプラゾール(−)鏡像体を活性物質として含む錠剤またはカプセル製剤、標準的な、薬剤学的に許容できる基質とともにテナトプラゾール塩を含む経口液剤または懸濁剤または非経口投与用液剤を使用することも可能である。テナトプラゾール(−)鏡像体塩は、特にたとえばナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウムまたはカルシウム塩類から選択できる。 前記製剤に胃耐性を付与する少なくとも1種の賦形剤を含む薬剤学的に許容できる基質類および賦形剤類と併用したテナトプラゾール(−)異性体30mgを含む錠剤のための適切な処方例を、下記に示した:(−)テナトプラゾール 30.0mgラクトース 40.0mg水酸化アルミニウム 17.5mgハイドロキシプロピルセルロース 8.0mgタルク 4.5mg二酸化チタン 5.0mgステアリン酸マグネシウム 2.0mg標準的賦形剤類 総計160.0mgになる量 テナトプラゾール(−)異性体40mg含有胃耐性エンテリックカプセルサイズ2(アセトフタレート、ポリビニルピロリドン誘導体類およびアクリルレジン類から作製したカプセルシェル)を下記に示した:(−)テナトプラゾール 40.0mgラクトース 200.0mgステアリン酸マグネシウム 10.0mg 前記用量は、患者状態と状態の重篤度の関数として臨床医が決定する。一般に、10および120mg/日であり、好適には、10および80mg/日のテナトプラゾール(−)鏡像体である。たとえば、活性物質を10乃至80mg好適には15または20乃至40または60mgをそれぞれ含む1または2単位投与量(例 錠剤類)を1日1回摂取するという割合で、当初または維持療法という内容で範囲4乃至12週間の期間投与できる。小さな子供で使用するために適応させた小児用形態の場合、例えば経口液剤の形態の場合、単位用量は、例えば2または5mgと低くすることができる。重篤な疾患の場合、最初静注で投与しその後経口経路で前記医薬品を投与することが効果的である場合もある。本発明はまた、60乃至90mgを含む1個の錠剤を毎週投与する効果的な連続治療を可能にするという利点も有する。 本発明の利点のひとつは、Helicobacter pylori感染の結果生じた潰瘍治療を含む上記に述べた疾患状態の治療を、1日当たり単回投与に限定した用量で治療することを可能とする点であり、それは、1日2回投与を必要とする標準的PPIsを含む他の標準的薬物類と異なる。 本発明を例示するため、テナトプラゾール(−)鏡像体調製の一例を下記に示した。 メチレンクロリド3リットルと次に5−メトキシ−2−[[4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチル]チオ]イミダゾ[4,5−b]ピリジン360gを5リットル容量のフラスコに添加する。この混合物を室温で30分間攪拌し続ける。 アセトニトリル700mL、2,4−ジ−tert−ブチル−6−[(1−R−ハイドロキシメチル−2−メチル−プロピルイミノ)−メチル]−フェノール5.22g、およびバナジルアセチルアセトナート2.90gを2リットル容量のフラスコに少しずつ滴下する。この混合物を室温で攪拌し続ける。30分間攪拌後、この溶液を先の溶液に添加する。 30%の過酸化水素135mLをこの混合物に、室温で20時間攪拌しながら添加する。水相を分離後、有機相を水で2回洗浄し、次に減圧下で乾燥させ濃縮する。所望の鏡像体283gを得て、80%より高い(収率75%)鏡像体過量で得られる。2回連続してメタノール/DMF水/酢酸エチル混合物中で再結晶し、前記鏡像体が、99%を超える鏡像体過量(enantiomeric excess)で得られる。F:127.5℃[α]D:−186.6(DMF)UVスペクトル(メチルアルコール−水):λmax:272nm、315nm。赤外(KBr):3006、1581、1436、1364、1262cm−1。NMR 13C(KOH,標準:ナトリウム 3−(トリメチルシリル)−1−プロパン−スルホネート)δ(ppm):13.2;15.0;56.6;60.8;62.6;107.2;129.5;130.4;131.9;135.1;150.5;151.4;156.9;160.7;163.0;166.6。MNR 1H(DMSO d6、標準:TMS)δ(ppm):2.20(s,6H),3.70(s,3H),3.91(s,3H),4.69−4.85(m,2H),6.80(d,J8.5Hz,1H),7.99(d,J8.5Hz,1H),8.16(s,H),13.92(s,1H)。 実質的にその(+)鏡像体を含まない(−)テナトプラゾールすなわち(−)−5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチル]スルフィニル]イミダゾ[4,5−b]ピリジン、またはその薬学的に許容できる塩、および1種以上の薬学的に許容できる賦形剤類または基質類を含む薬剤組成物。 (−)テナトプラゾールがアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である請求項1に記載の組成物。 (−)テナトプラゾールが、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウムおよびカルシウム塩から構成される群から選択された塩の形態である請求項2に記載の組成物。 (−)テナトプラゾール10乃至80mgを含む単位投与量(ユニタリドーズ)を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物。 1種以上の抗生物質類と併用される(−)テナトプラゾールを含む請求項1に記載の組成物。 実質的にその(+)鏡像体を含まない(−)テナトプラゾール、またはその薬学的に許容できる塩を含む消化管疾患および状態の治療用医薬品。 実質的にその(+)鏡像体を含まない(−)テナトプラゾール、またはその薬学的に許容できる塩を含む酸分泌阻害が効果的かつ長期でなければならない消化管疾患および病状の治療用医薬品。 実質的にその(+)鏡像体を含まない(−)テナトプラゾール、またはその薬学的に許容できる塩を含むバレット症候群、胃食道逆流の異型食道症状および他のプロトンポンプインヒビター類(PPIs)に対する再燃性消化管出血の治療用医薬品。 実質的にその(+)鏡像体を含まない(−)テナトプラゾール、またはその薬学的に許容できる塩を含む多剤併用療法を受けている患者における消化管疾患および状態、胃食道逆流および消化管出血治療用医薬品。 1種以上の抗生物質類を併用した実質的にその(+)鏡像体を含まない(−)テナトプラゾール、またはその薬学的に許容できる塩を含むヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)感染の結果生じた潰瘍の治療用医薬品。 実質的にその(+)鏡像体を含まない(−)テナトプラゾール、またはその薬学的に許容できる塩を含む食道炎の再燃の予防または治療用医薬品。