タイトル: | 特許公報(B2)_天然ゴムラテックス、天然ゴム、それを用いたゴム組成物及びタイヤ |
出願番号: | 2004558436 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C08C 1/04,B60C 1/00,C12S 3/18 |
近藤 肇 JP 4726490 特許公報(B2) 20110422 2004558436 20031208 天然ゴムラテックス、天然ゴム、それを用いたゴム組成物及びタイヤ 株式会社ブリヂストン 000005278 藤本 英介 100112335 近藤 肇 JP 2002355796 20021206 20110720 C08C 1/04 20060101AFI20110630BHJP B60C 1/00 20060101ALI20110630BHJP C12S 3/18 20060101ALI20110630BHJP JPC08C1/04B60C1/00 ZC12S3/18 IPC C08C 1/00- 4/00 C08L 7/00-21/00 B60C 1/00 国際公開第00/061711(WO,A1) 特開2001−081107(JP,A) 米国特許第05998512(US,A) 特開2001−310902(JP,A) 特開2002−028936(JP,A) 特開平09−067408(JP,A) 16 JP2003015673 20031208 WO2004052935 20040624 12 20051116 佐々木 秀次 この発明は、天然ゴムラテックス、天然ゴム、そのゴム組成物、及びそれを用いたタイヤ、更にはこのような天然ゴムの製造方法に関するものである。 一般に、天然ゴムはタイヤ、ゴムベルト、ゴムロール、ブラダー、防舷材等の工業用品、さらにテニスボール、バスケットボール、サッカーボール、バレーボール等のスポーツ用品類等の多くの分野で頻用されている。またタイヤにおいてはトレッド、サイドウォール、プライコーティングゴム、ビードフィラー等のゴムタイヤを構成するあらゆるコンポーネンツの材料として使用されている。 近年、天然ゴムに含まれる蛋白質がアレルギー症状を引き起こす原因となることが明らかになり、脱蛋白質技術が多く提案されている。 また、天然ゴムは合成ゴムより機械的特性がすぐれており、所謂tan δ(動的損失)が小さい。このため、天然ゴムは低発熱性等に優れているが、ウエット時のグリップ性の改良が望まれている。さらに生の天然ゴム(原料として使用するゴム)は、製造する際の加工性や生産性が悪い。これは天然ゴムの分子末端に蛋白質とリン脂質が結合しているため、その末端の蛋白質同士、リン脂質同士が更に結合・会合して高次分岐構造を形成する。このような問題を解消するために、天然ゴムの総窒素含有率が0.1質量%以下となるような脱蛋白質技術が提案されている(特開平6−329838号公報を参照)。従来の脱蛋白質処理は、天然ゴムラテックスを界面活性剤によって繰り返し洗浄することであり、その洗浄には遠心分離などを伴う。また、天然ゴムラテックスに蛋白分解酵素を添加し、蛋白質を分解させた後、界面活性剤によって繰り返し洗浄すること等が挙げられ、そして、蛋白分解酵素としては細菌由来のプロテアーゼを使用するのが好ましいとしている(特開平6−56902号公報及び特開平6−56906号公報を参照)。 また、脱蛋白質処理に使用される界面活性剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤が使用可能である。陰イオン界面活性剤には、例えば、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系などの界面活性剤がある。 ところで、天然ゴムの高次分岐構造の分岐度を下げて天然ゴムの加工性を改善することは可能である。しかしながら、従来の脱蛋白質技術を用いて完全に蛋白質を取り除いたものは蛋白質を含めた非ゴム成分の大半が抜け出してしまい、また十分な加工性改善効果は得られない。これは天然ゴムの耐老化性等を低下させる。また、完全な脱蛋白質化してしまうことでポリペプチド結合に起因する分子同士の絡み合い、見かけの分子量が大幅に低下し、引張張力、耐摩耗性などが低下してしまう。特開平6−329838号公報特開平6−56902号公報特開平6−56906号公報 本発明は、加工性に優れた天然ゴムラテックスを提供すると共に、耐老化特性、引張張力、及び耐摩耗性等の物性が十分に維持されてなる天然ゴム及びその製造方法、更にはそのような天然ゴムを用いたゴム組成物及びタイヤを提供することにある。 本発明者等は、天然ゴムラテックスの高次分岐構造の中でも、分岐端の所定の結合、会合部分、即ちリン脂質を分解した。具体的にはリパーゼ及び/又はホスホリパーゼの酵素処理をして、応力緩和時間の短縮等の天然ゴムの改質を試みたところ、天然ゴムの加工性の改善だけでなく、天然ゴムの物性の低下を伴わないことを見出し、本発明に至ったものである。 更に、天然ゴムラテックスのこのようなリパーゼ及びホスホリパーゼの酵素処理に加えて、プロテアーゼ処理を併用すると更に加工性の改善が見られることも見出し、本発明に至ったものである。 即ち、本発明に係る天然ゴムラテックス、天然ゴム、それを用いたゴム組成物及びタイヤは、以下の(1)〜(16)構成或いは手段からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。(1).ラテックス中のリン脂質をホスホリパーゼによる温度70℃以下による酵素処理により分解して処理した天然ゴムラテックス。(2).上記分解に更に、リパーゼによる酵素処理により分解して処理した上記(1)記載の天然ゴムラテックス。(3).上記リパーゼ及び/又はホスホリパーゼの添加量がラテックス固形成分の100質量部に対して0.005〜0.5質量部の範囲である上記(1)又は(2)記載の天然ゴムラテックス。(4).プロテアーゼによる酵素処理がされてなる上記(1)〜(3)の何れかに記載の天然ゴムラテックス。(5).ラテックス中のリン脂質をリパーゼによる温度70℃以下による酵素処理により分解して処理すると共に、更にプロテアーゼによる酵素処理がされてなる天然ゴムラテックス。(6).上記酵素処理に加えて、界面活性剤とで処理がされてなる上記(1)〜(5)の何れかに記載の天然ゴムラテックス。(7).上記(1)〜(6)の何れかに記載の天然ゴムラテックスから得られる天然ゴム。(8).上記(7)記載の天然ゴムにおいて、該ゴムのムーニー粘度(ML1+4)及び応力緩和時間T80が40<ML1+4<100の範囲で、且つT80<0.0035exp(ML1+4/8.2)+20(但し、ML1+4は温度100℃における測定値、及びT80はML1+4の測定直後にローター回転を停止し、ML1+4の値が80%低減するまでの時間(秒))の関係を満たす天然ゴム。(9).上記(7)又は(8)に記載の天然ゴムを用いたゴム組成物。(10).上記(9)記載のゴム組成物を用いることを特徴とするタイヤ。(11).天然ゴムラテックスをホスホリパーゼによる酵素処理をして製造する天然ゴムであって、上記酵素処理を温度70℃以下とする天然ゴムの製造方法。(12)上記分解に更に、リパーゼによる酵素処理により分解して処理した上記(11)記載の天然ゴムの製造方法。(13).上記リパーゼ及び/又はホスホリパーゼをラテックス固形成分の100質量部に対して0.005〜0.5質量部の範囲で添加して酵素処理をする上記(11)又は(12)記載の天然ゴムの製造方法。(14).上記酵素処理に加えてプロテアーゼによる酵素処理をする上記(11)〜(13)の何れかに記載の天然ゴムの製造方法。(15).天然ゴムラテックスをホスホリパーゼによる酵素処理をして製造する天然ゴムであって、上記酵素処理を温度70℃以下とすると共に、更にプロテアーゼによる酵素処理する天然ゴムの製造方法。(16)上記酵素処理に加えて、界面活性剤の処理をする上記(11)〜(15)の何れかに記載の天然ゴムの製造方法。 以上、本発明にあっては、天然ラテックスの分岐部での部分的或いは選択的な脂質分解を行い、また非ゴム成分を残存させておくことができる。加工性を改善する機構の一つとして、天然ゴムの応力緩和時間を短くすることが挙げられる。本発明の天然ラテックスの選択的な脂質分解は天然ゴムの応力緩和時間を短くする。このため、天然ゴム及びそれを用いたゴム組成物は、その加工性(収縮性及び形状安定性等)が改善し、耐老化性、引張張力、耐摩耗性等が十分に維持できる。尚、ここでいう応力緩和時間は、ムーニー粘度測定のML1+4、対比のT80で代用され、この値が上記(5)に記載の範囲を満たすことである。 以下、本発明に係る天然ゴムラテックス、天然ゴム、ゴム組成物、それを用いたタイヤ、及び天然ゴムの製造方法について詳述する。尚、本発明は以下の実施の形態に限られるものではない。 本発明に係る天然ゴムラテックスはそのラテックス中のリン脂質を分解してなる。原料となる天然ゴムラテックスは、天然のゴムの木から得られたフィールドラテックスを意味し、ラテックスは市販のアンモニア処理ラテックスでも新鮮なフィールドラテックスのいずれをも使用することができる。 通常、このような天然ゴムの分子末端には蛋白質とリン脂質が結合しており、その末端の蛋白質同士及びリン脂質同士が更に結合・会合して高次分岐構造を形成していると推測される。しかし、リン脂質が分解された天然ゴムラテックスにあってはかかる高次分岐構造の分岐点における蛋白質からリン脂質が分解されることによって分岐度が小さくなると推測される。分岐度が小さくなると、天然ゴムの加工性を十分に改善する。また、高次分岐構造を完全に分解すれば、即ち完全に蛋白質を取り除いたものは蛋白質を含め非ゴム成分の大半が抜け耐老化性及び耐摩耗性等が低下する。これに対して、上記分岐を形成しているリン脂質を集中的に分解した天然ゴムラテックスを使用したゴムにあってはこのような耐老化性や耐摩耗性の大幅な低下は見られない。 そして、このような本発明に係るリン脂質が分解された天然ゴムラテックスとしてはリパーゼ及び/又はホスホリパーゼの酵素処理した天然ゴムラテックスを挙げることができる。 上記リパーゼ及びホスホリパーゼとしては、特に限定されず、細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のものいずれでも構わない。また、リパーゼ及びホスホリパーゼは、100(U/g)以上、好ましくは1000(U/g)以上、より好ましくは10000(U/g)以上、更に好ましくは100000(U/g)以上であることが良い。このようなリパーゼ及びホスホリパーゼとしては市販品のリパーゼM「アマノ」10(天野エンザイム株式会社製の商品)、リパーゼOF(名糖株式会社製の商品)、ホスホリパーゼA1(三共株式会社製の商品)等を挙げることができる。 このような酵素処理に際しての上記リパーゼ及び/又はホスホリパーゼの添加量は、天然ゴムラテックス中の固形成分100質量部に対して0.005〜0.5質量部、特に0.01〜0.2質量部の範囲であることが好ましい。上記範囲の添加量であれば、天然ゴムラテックス中のリン脂質の分解が適宜行われ、目的とする加工性と良好な物性が維持される。 上記リパーゼ及び/又はホスホリパーゼの添加量(総量)が0.005質量部未満では、リン脂質の分解反応が不十分となり、加工性の改善効果が十分に得られない。上記リパーゼ及び/又はホスホリパーゼの添加量(総量)が0.5質量部を超えると、天然ゴムに含まれる脂肪酸が殆ど分解して伸張結晶性が低下して引張強度や耐摩耗性が低下する。 本発明に係る天然ゴムラテックスは、リパーゼ及び/又はホスホリパーゼに加えて更にプロテアーゼによる酵素処理をしても良い。 上記プロテアーゼもリパーゼ及びホスホリパーゼと同様に、特に限定されず、細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のものいずれでも構わない。また、プロテアーゼの力価は、好ましくは100(U/g)以上であり、好ましくは1000(U/g)以上、より好ましくは10000(U/g)以上、更に好ましくは100000(U/g)以上であることが良い。このようなプロテアーゼとしては市販品のアルカラーゼ2.5L−タイプDX(ノボザイムズ社製)、プロレザーFG−F(天野エンザイム株式会社製)等を挙げることができる。 このような酵素処理に際してのプロテアーゼの添加量は、天然ゴムラテックス中の固形成分100質量部に対して0.01質量部以上である。好ましくは、0.01〜0.5質量部、特に0.01〜0.2質量部の範囲であることが好ましい。 上記範囲の添加量であれば、天然ゴムラテックス中の蛋白質の分解が適宜行われ、目的とする加工性が更に改善され良好な物性が維持される。プロテアーゼの添加量が上記範囲未満であると、蛋白質の分解反応が不十分となり好ましくない。一方、上記範囲を超える添加量では蛋白質の分解が進みすぎて目的の加工性と物性のバランスが取れなくなる。 尚、本発明においては、上述の酵素の他、ペプチターゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ等を組み合わせて用いることができる。 また、このような酵素を添加するにあたり、他の添加剤、例えばpH調整剤としてリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸ナトリウム等の燐酸塩や酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、さらに硫酸、酢酸、塩酸、硝酸、クエン酸、コハク酸等の酸類またはその塩、あるいはアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を使用することができる。 本発明において、上記酵素処理は、温度70℃以下でなされること、好ましくは温度60℃以下でなされること、更に好ましくは50℃以下で処理される。 上記酵素処理温度が70℃を超えると、天然ゴムラテックスの安定性が低下し、酵素処理中にラテックスが凝固する。凝固後は酵素による分解効果が低下する。このため、加工性に優れている天然ゴムの製造が困難になる。 本発明に係る天然ゴムラテックスは上記酵素処理と共に、界面活性剤を併用して処理することが良い。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が使用でき、特に、非イオン界面活性剤、陰イオン性界面活性剤等が使用することが好ましい。 非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、及びアルキルポリグリコシド系などが好適である。 陰イオン界面活性剤には、例えばカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、及びリン酸エステル系などが好適である。 カルボン酸系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、多価カルボン酸塩、ロジン酸塩、ダイマー酸塩、ポリマー酸塩、トール油脂肪酸塩等が挙げられる。スルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ジフェニルエーテルスルホン酸塩等が挙げられる。硫酸エステル系界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、トリスチレン化フェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェノール硫酸エステル塩等が挙げられる。リン酸エステル系界面活性剤としてはアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンリン酸エステル塩等が挙げられる。 上記の如く酵素処理された天然ゴムラテックスは、非ゴム成分を完全に分離することなく、凝固する。非ゴム成分を分離した場合には、耐老化性が劣る。上記処理ラテックスを凝固して得られたゴム成分は洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の通常の乾燥機を用いて乾燥することにより、本発明における天然ゴムを得ることができる。 上記天然ゴムは、ムーニー粘度(ML1+4)及び応力緩和時間T80が40<ML1+4<100の範囲で、且つT80<0.0035exp(ML1+4/8.2)+20の関係を満たすものが良い。 但し、ML1+4は温度100℃における測定値、及びT80はML1+4の測定直後にローター回転を停止し、ML1+4の値が80%低減するまでの時間(秒)である。 上記T80及びML1+4が上記の範囲内に収まる天然ゴムにあっては、ムーニー粘度及び応力緩和時間が十分に短いことから加工性が高まる。 また、このような本発明に係る天然ゴムを使用したゴム組成物においては、ゴム成分の全体に対して上記天然ゴムを少なくとも5質量%含むことが好ましい。この量が5質量%未満では所望の物性を有するゴム組成物が得られないことがある。この天然ゴムの好ましい含有量は10質量%以上である。 上記天然ゴムと併用されるゴム成分としては、通常の天然ゴム及びジエン系合成ゴムが挙げられ、ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。 また、本発明のゴム組成物において配合される充填剤は特に限定されるものではないが、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、クレー、炭酸カルシウムなど通常ゴム工業に用いられるものが使用できる。カーボンブラックとしては、例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを使用することができる。また、シリカとしては特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。このような充填剤は、単独でまたは二つ以上のものを混合して用いることもできる。 この充填剤の総配合量は、ゴム成分100質量部に対し、30〜120質量部の範囲、さらに40〜80質量部の範囲が好ましい。 本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。 本発明のゴム組成物は、タイヤ用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホースその他の工業品等の用途にも用いることができる。特にタイヤ用ゴムとして好適に使用され、例えばトレッドゴム(キャップゴム,ベースゴムを含む)、サイドゴム、プライコーティングゴム、ビードフィラーゴムなどあらゆるタイヤ部材に適用することができる。(実施例) 以下に本発明を、実施例に基づいて説明するが、本発明の構成は、以下の実施例に限定されるものではない。(天然ゴムの製造方法)(製造実施例1)(1)天然ゴムラテックスの酵素処理工程 クローン種GT−1、NH30.4wt%で処理した天然ゴムラテックスに、水を加えて固形分15wt%に調整したラテックス1000gに、界面活性剤としてレベノールWX(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム:花王(株)製)1.5gを加えて撹拌し分散させる。次に、リパーゼ(リパーゼM「アマノ」10:天野エンザイム(株)製)0.15gを添加して撹拌し、分散させた後、15時間静置した。(2)凝固・乾燥工程 次にギ酸を加えてラテックスのpHを4.7に調整し凝固させた。この固形物をクレーパー5回、シュレッダーを通してクラム化した後、熱風乾燥機で110℃、210分間、乾燥することで天然ゴムAを得た。(製造実施例2乃至6) 製造実施例1において、上記のリパーゼM「アマノ」10を加える代わりに、製造実施例2はリパーゼOF(名糖(株)製)を0.15g加えて製造した。得られた天然ゴムをBとする。製造実施例3は、リパーゼM「アマノ」10を加える代わりに、ホスホリパーゼA1(三共(株)製)を0.15g加えて製造した。得られた天然ゴムをCとする。製造実施例4は、リパーゼM「アマノ」10を0.03g加えて製造した。得られた天然ゴムをDとする。製造実施例5は実施例1のリパーゼM「アマノ」10に更にプロテアーゼ酵素(ノボザイムズ製「アルカラーゼ 2.5L、タイプX」)を0.15g加えて製造した。得られた天然ゴムをEとする。製造実施例6は実施例1のリパーゼM「アマノ」10に更にプロテアーゼ酵素(天野エンザイム(株)製「プロレザーFG−F」)を0.15g加えて製造した。得られた天然ゴムをFとする。(製造比較例1乃至3) 製造比較例1は実施例1のリパーゼM「アマノ」10に代えて、プロテアーゼ酵素(ノボザイムズ製「アルカラーゼ 2.5L、タイプX」)のみを0.15g加えて製造した。得られた天然ゴムをGとする。 製造比較例2は実施例1のリパーゼM「アマノ」10に代えて、プロテアーゼ酵素(天野エンザイム(株)製「プロレザーFG−F」)を0.15g加えて製造した。得られた天然ゴムをHとする。 製造比較例3は、ラテックスの酵素処理工程を経ずに直接凝固・乾燥して天然ゴムを製造した。得られた天然ゴムをIとする。(製造実施例7乃至9) 製造実施例7は、製造実施例1のリパーゼM「アマノ」10を0.005g加えて製造した。得られた天然ゴムをJとする。製造実施例8は、実施例1のリパーゼM「アマノ」10を1.00g加えて製造した。得られた天然ゴムをKとする。(製造参照例1) 製造実施例1は、実施例1と同様に調整したが、酵素処理において温度80℃の水浴中で処理を行った。得られた天然ゴムをLとした。 各天然ゴムの分子量及びムーニー粘度(ML1+4、100℃)を下記表1に示した。 上記各天然ゴムを用いて、下記表2に示す組成でゴム組成物を調製し、ゴム組成物から温度145℃、33分間の条件で加硫した試作ゴムを得た。*1 老化防止剤6C:N−フェニル−N−1,3―ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン*2 加硫促進剤DZ:N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド また、各試作ゴムの特性及びその評価を以下の方法で行い、その結果を表3に示した。(評価方法)(1)天然ゴムのムーニー粘度 JIS K6300−1994に準じ、100℃にてムーニー粘度[ML1+4/100℃]を測定した。(2)コンバウンド(ゴム組成物)のムーニー粘度 JIS K6300−1994に準じ、130℃にてムーニー粘度[ML1+4/130℃]を測定した。この値は小さいほど加工性に優れている。(3)物性(a)収縮性(指数) ロール温度70℃の3インチロール上で、ロール間隔2mmにて未加硫ゴムを巻き付け2分間ロールを回転する。その後、回転停止して1分間放置し6cmの線を切り出す。3分間静置し、6cmのラインの収縮度を測定し、比較例3をコントロール(100)として指数表示した。数値が小さいほど収縮性が良好である。(b)引張り強度 切断時の強力(Tb)をJISK6301−1995に従って測定した。(c)tanδ(動的損失) 粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzでtanδ(50℃)を測定した。tanδ(50℃)が小さい程、低発熱性である。(d)耐摩耗性(指数) ランボーン型摩耗試験機を用いて室温におけるスリップ率60%の摩耗量を測定し、比較例3をコントロール(100)として指数表示した。数値が高いほど耐摩耗性が良好である。 本発明における実施例1乃至6は、比較例1乃至3と比べて、破壊物性、低発熱性及び耐摩耗性を低下させることなく、収縮性指数に優れている。 また比較例3と比べて、コンパウンドムーニー粘度も低く加工性に優れている。 以上のように本発明の天然ゴムラテックス及び天然ゴムは、リン脂質が分解しているので応力緩和時間が短くなり、その加工性が改善される。また、このような天然ゴムを使用したゴム組成物、例えば、タイヤなどにあっては耐老化特性、引張張力、及び耐摩耗性等の物性が十分に維持され、産業上の利用可能性が高いものとなる。 ラテックス中のリン脂質をホスホリパーゼによる温度70℃以下による酵素処理により分解して処理した天然ゴムラテックス。 上記分解に更に、リパーゼによる酵素処理により分解して処理した請求項1記載の天然ゴムラテックス。 上記リパーゼ及び/又はホスホリパーゼの添加量がラテックス固形成分の100質量部に対して0.005〜0.5質量部の範囲である請求項1又は2記載の天然ゴムラテックス。 プロテアーゼによる酵素処理がされてなる請求項1〜3の何れかに記載の天然ゴムラテックス。 ラテックス中のリン脂質をリパーゼによる温度70℃以下による酵素処理により分解して処理すると共に、更にプロテアーゼによる酵素処理がされてなる天然ゴムラテックス。 上記酵素処理に加えて、界面活性剤とで処理がされてなる請求項1〜5の何れかに記載の天然ゴムラテックス。 請求項1〜6の何れかに記載の天然ゴムラテックスから得られる天然ゴム。 請求項7記載の天然ゴムにおいて、該ゴムのムーニー粘度(ML1+4)及び応力緩和時間T80が40<ML1+4<100の範囲で、且つT80<0.0035exp(ML1+4/8.2)+20(但し、ML1+4は温度100℃における測定値、及びT80はML1+4の測定直後にローター回転を停止し、ML1+4の値が80%低減するまでの時間(秒))の関係を満たす天然ゴム。 請求項7又は8に記載の天然ゴムを用いたゴム組成物。 請求項9記載のゴム組成物を用いることを特徴とするタイヤ。 天然ゴムラテックスをホスホリパーゼによる酵素処理をして製造する天然ゴムであって、上記酵素処理を温度70℃以下とする天然ゴムの製造方法。 上記分解に更に、リパーゼによる酵素処理により分解して処理した請求項11記載の天然ゴムの製造方法。 上記リパーゼ及び/又はホスホリパーゼをラテックス固形成分の100質量部に対して0.005〜0.5質量部の範囲で添加して酵素処理をする請求項11又は12記載の天然ゴムの製造方法。 上記酵素処理に加えてプロテアーゼによる酵素処理をする請求項11〜13の何れかに記載の天然ゴムの製造方法。 天然ゴムラテックスをホスホリパーゼによる酵素処理をして製造する天然ゴムであって、上記酵素処理を温度70℃以下とすると共に、更にプロテアーゼによる酵素処理する天然ゴムの製造方法。 上記酵素処理に加えて、界面活性剤の処理をする請求項11〜15の何れかに記載の天然ゴムの製造方法。