生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_選択的ドーパミンD1受容体アゴニストを使用した認知障害の治療法
出願番号:2004547009
年次:2006
IPC分類:A61K 45/00,A61K 31/4365,A61K 31/4515,A61K 45/06,A61P 25/28


特許情報キャッシュ

クズミエレク ジャック JP 2006505589 公表特許公報(A) 20060216 2004547009 20031022 選択的ドーパミンD1受容体アゴニストを使用した認知障害の治療法 ドラッグアビューズ サイエンシズ エス.アー.エス. 505151184 清水 初志 100102978 新見 浩一 100128048 クズミエレク ジャック US 60/420,582 20021022 A61K 45/00 20060101AFI20060120BHJP A61K 31/4365 20060101ALI20060120BHJP A61K 31/4515 20060101ALI20060120BHJP A61K 45/06 20060101ALI20060120BHJP A61P 25/28 20060101ALI20060120BHJP JPA61K45/00A61K31/4365A61K31/4515A61K45/06A61P25/28 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW US2003033440 20031022 WO2004037783 20040506 21 20050606 4C084 4C086 4C084AA17 4C084AA20 4C084MA02 4C084NA05 4C084ZA151 4C084ZA152 4C084ZC751 4C084ZC752 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC21 4C086CB26 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA05 4C086ZA15 4C086ZC75序論技術分野 本発明は、認知障害(特に、統合失調症と診断された患者における認知障害)を長期間治療するために選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストを患者に提供することに関する。本発明の一例は、選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストであるDAS-431(すなわち塩酸(-)-trans9,10-ジアセチルオキシ-2-プロピル-4,5,5a,6,7,11b-ヘキサヒドロ-3-チア-5-アザシクロペント-1-ena[c]フェナントレン)(DAS-431はA-86929(すなわち塩酸(-)-trans9,10-ジヒドロキシ-2-プロピル-4,5,5a,6,7,11b-ヘキサヒドロ-3-チア-5-アザシクロペント-1-ena[c]フェナントレン)のジアセチルプロドラッグである)の使用である。背景 統合失調症、薬物嗜癖、パーキンソン病、うつ病、ハンチントン舞踏病、ならびに正常老化を含むいくつかの精神医学的疾患において、ドーパミン調節不全と認知障害が関連付けられてきた(Goldman-Rakic et al.(2000)Brain Res Brain Rev 31:295-301)。ドーパミンは中枢神経系(CNS)での神経伝達の間に生じる化学伝達物質であるが、末梢および血管での神経伝達にも関与している。ドーパミン作動系において、ドーパミンは、神経伝達によってニューロン終末からシナプス間隙を通過し、次いで、近くに位置する他のニューロンまたは興奮性細胞(例えば、筋肉細胞)のシナプス後受容体に進む。ドーパミン受容体は、脳およびCNSの他の領域のドーパミンに富む領域、ならびに末梢神経系、ならびにこれらの多数の受容体が見られる腎臓および腸間膜の血管床に高濃度で見られる。ドーパミンD1受容体はシナプス後膜に位置する。ドーパミンD1受容体は7つのペプチド単位からなる膜貫通受容体であり、Gタンパク質に結合し、活性化されるとアデニル酸シクラーゼおよびcAMP産生を刺激する。D1様受容体ファミリーには、ヒトではD1およびD5、げっ歯類ではD1AおよびD1Bと呼ばれる2種類の受容体が含まれる。様々な動物モデル研究ならびに臨床被験者における神経心理学的試験から、前前頭皮質におけるドーパミン伝達の変化と、これらの疾患における認知欠陥が直接関連することが示唆されている。 作業記憶は、理解、思考、および計画の遂行中に情報の一部を一時的に保持する能力である。作業記憶は保存機能および処理機能の両方を含み、従って、作業記憶のわずかな欠陥が、観念化、推理、および計画の際の著しい認知欠陥につながることがある。ヒトおよび霊長類において、作業記憶には前頭皮質が不可欠である。さらに詳細に述べると、前前頭皮質が作業記憶の認知プロセスを媒介する(Goldman-Rakic,P.S.(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93:13473-13480)。いくつかのグループは、ドーパミンが認知プロセスに影響を及ぼす重要な神経伝達物質であり得ることを示唆している。第1に、前前頭皮質を含む皮質においてドーパミンD1受容体の密度はドーパミンD2受容体の密度より10〜20倍高い(Lidow MS et al.(1991)Neuroscience 40:657-671)。第2に、アカゲザルの前前頭皮質に選択的ドーパミンD1受容体アンタゴニスト(SCH23390およびSCH39166)を局所注射すると、間違いが生じ、作業記憶課題の作業潜時が長くなる(Sawaguchi and Goldman-Rakic(1991)Science 251:947-950,Sawaguchi(2001)Neurosci Res 41:115-28)。第3に、完全D1アゴニストであるジヒドレキシジン(dihydrexidine)は若い対照サルおよび老齢のサルにおいて記憶作業を改善し、これらのアゴニストにより誘導された改善は、特異的ドーパミンD1受容体アンタゴニストであるSCH23390によってブロックされる(Arnsten et al.(1994)Psychopharmacology 116:143-151)。ヒトでは、32人の健常ボランティアに対するプラセボ対照クロスオーバー試験から、D1/D2 Rアゴニストであるペルゴリド0.1mgには空間記憶に対して正の効果があるが、ドーパミンD2受容体アゴニストであるブロモクリプチン2.5mgには正の効果がないことが分かった (Muller et al.(1998)J Neurosci 18:2720-2728)。これらの発見は、ヒトの作業記憶調節における前頭前野ドーパミンD1受容体の優先的な役割を示唆している。 統合失調症などの疾患において、作業記憶障害を含む認知障害は、様々な認知課題作業検査によって測定され(Condray et al.(1996)Schizophr Res 20:1-13;Weickert et al.(2000)Arch Gen Psychiatry 57:907-913)、前前頭皮質(PFC)におけるドーパミン作動機能の障害に起因すると考えられてきた。さらに、これらの神経認知欠陥は、統合失調症の特徴およびその治療の特定にますます重要になってきている。統合失調症は、陽性症状(幻覚、妄想)、陰性症状(社会的引きこもり、情動の平板化)、および認知症状(形式的思考障害、遂行記憶機能不全)症状を特徴とする慢性疾患である。統合失調症では複数の認知機能ドメインが損なわれ、これらの障害は、この疾患の根冠をなす特徴であるとみなされている。ある特定の神経認知ドメイン(例えば、言語作業記憶、即時記憶、遂行機能、および覚醒)が機能的転帰と関連付けられる。確かに、臨床症状ではなく認知機能不全が、疾患を有する患者が毎日の課題を行うことができる能力の最も重要な要因である場合がある。 統合失調症のある特定の症状(特に、幻覚および妄想)の治療において、多くの場合、抗精神病薬が有効である。残念なことに、この薬物は、意欲および感情表現の低下などの他の症状の助けとならない場合がある。確かに、(「神経弛緩薬」の名でも通っていた)この古い抗精神病薬(ハロペリドール(ハルドール(Haldol)(登録商標))またはクロルプロマジン(ソラジン(Thorazine)(登録商標))を含む)は、治療がより難しい症状に似た副作用すら引き起こすことがある。多数の新たな抗精神病薬(「非定型抗精神病薬」とも呼ばれる)が1990年から導入されている。これらの抗精神病薬の最初の薬物であるクロザピン(クロザリル(Clozaril)(登録商標))は他の抗精神病薬より有効であることが示されているが、重篤な副作用(特に、無顆粒球症(感染と闘う白血球の喪失)と呼ばれる疾患)の可能性があるために、患者は1週間または2週間ごとに血液検査でモニタリングされる必要がある。オランザピン(ジプレキサ(Zyprexa)(登録商標))、クエチアピン(セロクエル(Seroquel)(登録商標))、およびリスペリドン(リスパダール(Risperdal)(登録商標))を含む、さらに新しい新抗精神病薬は古い薬物またはクロザピンより安全であり、これらも高い忍容性が認められる可能性がある。しかしながら、これらがクロザピンと同じくらい良好に病気を治療するかどうかははっきりとしていない。 統合失調症の治療のために現在用いられている薬物には認知機能に対して様々な効果がある。定型抗精神病神経弛緩薬には、統合失調症において損なわれる認知機能ドメインを改善する能力は全く無い。他方で、非定型抗精神病薬は認知機能に対して不均一であるが正の副作用を示す。クロザピンは注意および言語流暢性を改善するが、作業記憶に対するクロザピンの効果の検査は不確かなものであった。リスペリドンは作業記憶および遂行機能に対して正の効果を示したが、言語学習および記憶の検査では矛盾した結果が得られた。オランゼピン(olanzepine)は言語学習および記憶ならびに遂行機能を改善するが、作業記憶を改善しない。これらの効果の可能性のある説明の1つが、非定型抗精神病薬の一部で示される間接的で中程度のD1受容体アゴニスト特性であるかもしれない。ドーパミン受容体に対する付随的なアゴニスト作用が非定型抗精神病薬の有効性の部分的な説明となるかもしれないが、これらの薬物はどれも、特に認知機能の改善を目的として設計されなかった。むしろ、抗精神病薬による治療の目的の1つは幻覚および妄想の阻止である。しかしながら、これらの症状に対処することが統合失調症治療の唯一のアプローチではなく、必ずしも最適なアプローチとも限らない。精神を鈍らせる薬物は統合失調症のいくつかの症状を効果的に弱めることができるが、明瞭な思考も可能にする薬物が好ましい。 認知機能欠陥を直接の標的とする薬物の使用は、統合失調症および認知障害の症状を呈する他の疾患または状態を治療するための現在の治療法とは異なるアプローチをもたらす。このような薬物はDAS-431および関連する選択的D1受容体アゴニストである。DAS-431は、パーキンソン病およびコカイン乱用を含む、ドーパミン作動状態に関連するいくつかの疾患を治療するのに用いられてきた。しかしながら、強力なドーパミン作動性アゴニストとして、この治療プロトコールが用いられた時、DAS-431はドーパミン関連症状(例えば、悪心、嘔吐、低血圧、体位性低血圧、眩暈、注射部位および適用部位での反応)の高い発生率と関連付けられた。一時的なEKG変化も観察されている。これらの有害事象は軽度または中程度であると一般に説明された。有害事象は実際には軽度および中程度であるが、統合失調症などの標的疾患での使用の場合には懸念され、小児科集団での、および正常老化集団における認知障害の治療での使用の場合にはなおさらそうである。従って、治療の副作用を最小限にしながら(統合失調症患者の場合、さらに、幻覚および妄想を含む症状を管理しながら)、認知機能を直接改善することによって作用する治療法の開発に関心がある。関連文献 統合失調症治療のためのD1アゴニストの使用が提案されているが、D1アゴニストを用いた治療の効力に関する報告も、ヒトにおける記憶および認知の治療におけるD1アゴニストの有用性に関する報告も無い。ジヒドレキシジンおよびその部分アゴニストSKF38393などのD1アゴニストをサルに投与した後に、記憶作業が改善されることが報告されている。Patricia Goldman-Rakicのグループは非ヒト霊長類の認知障害モデルにおいてDAS-431を試験した(Castner et al.(2000)Science 287:2020-2022.)。この試験では、ハロペリドール慢性処置によって重篤な作業記憶障害が誘導された。DAS-431(0.01μg/kg〜0.1μg/kg)はハロペリドールの影響を逆転させると報告された。この治療法では、続けて5日間の処置を5ブロック行い、ブロック間に2週間の最小ウォッシュアウト期間を使用した。DAS-431処置の効果は、一部のサルでは、最後の処置の後に一年を超えて持続した。反対に、サルにおけるエタノール強化行動(ethanol reinforced behavior)の治療としてのDAS-431の効力を評価した実験において、示されたデータから、処置の3日後に耐性が生じてしまった可能性があることが示唆された(0.1、0.3、および1mg/kg/日 IM)。DAS-431を使用した他の試験から、この強力な効果は反復投与後に維持されることが分かっている(Michaelides et al.(1995)J Med Chem 38:3445-3447)。特に、MPTPによって障害が生じたマカクでの実験から、30日間、一日3回投与した後のDAS-431の効力に経時的な違いは認められなかった(0.32mg/kg/s.c)。 USPN5,668,141および5,597,832は、2,6-、3,6-、および4,6-ジアザ-5,6,6a,7,8,12b-ヘキサヒドロベンゾ-[c]フェナントレン化合物ならびにDAS-431および関連化合物がドーパミンに関連する神経学的疾患、心理学的疾患、および心血管疾患の治療に有用な薬剤であることを開示している。特に、認知障害(統合失調症における認知障害を含む)の治療に関連する開示は無く、副作用を最小限にする、および/または長期間の効力をもたらす治療法の開示も無い。 1mgから40mgIV/日の用量のDAS-431静脈内製剤が、ヒトにおいて3つの異なる集団:正常ボランティア(最大用量5mg)、パーキンソン病被験者(最大用量40mg)、およびコカイン使用者(最大用量32mg)において試験された。DAS-431は1日1回1時間のIV注入として投与された。第2相試験において、この化合物は2つの被験者集団:パーキンソン病患者(Rascol et al.(1999)Ann Neurol 45:736-741;Rascol et al.(2001)Arch Neurol 58:249-254)および慢性コカイン使用者(Haney et al.(1999)Psychopharmacology(Berl)143:102-110;Malison et al.「Reductions in Cocaine-induced craving following the selective D1 Dopamine receptor agonist ABT-431 in Human cocaine abusers」)において試験された。パーキンソン病被験者の運動活動に対するDAS-431の最大IV有効量は30mg/日〜40mg/日であった。コカイン使用者集団において、コカインの欲求およびコカインを使用する意思を低下させる、潜在的に有効なIV用量は4mg/日〜8mg/日であった。高用量では有害事象の発生率は高いが、コカイン乱用者集団における悪心および嘔吐ならびに全ての被験者における眩暈を除いて、明らかな用量関連性は無かった。さらに、これらの試験は、パーキンソン病集団における悪心および嘔吐に対する急速な耐性を示しているように見える。副作用の発生率はパーキンソン病集団において高かった(パーキンソン病それ自体が低血圧および体位性低血圧と関連し、試験被験者が慢性抗パーキンソン薬物に加えてDAS-431を服用したことが主な理由である)。 SKF38393などのドーパミンD1受容体部分アゴニストは(選択的に、D2アンタゴニストであるハロペリドールと共に)統合失調症の治療に用いられており、ラットにおいて食物摂取を減少させることが報告されている。しかしながら、サルのMPTP処置パーキンソン病モデルでは、SKF38393には抗パーキンソン病活性が無かった。MPTP処置サルは、振顫、運動低下、運動開始の困難、動作緩慢、すくみ、および瞬目率の低下を含む、パーキンソン病のはっきりとした徴候を有する。ジヒドレキシジンは、瞬目率を高めながらも、これらのパーキンソン病の徴候を和らげる。これらの効果はドーパミンD1受容体アンタゴニストSCH23390によってブロックされたが、ドーパミンD2受容体アンタゴニストであるレモキシプリド(remoxipride)によってブロックされなかった。効力の高い部分D1アゴニストであるSKF82958は、MPTP処置霊長類に投与された後に歩行活動を高め、パーキンソンスコアを改善することが報告されている。DAS-431を含むD1アゴニストは抗パーキンソン病活性を有することが報告されている。 ドーパミンD1受容体アンタゴニストもCNS疾患の治療に使用されている。一例として、ドーパミンD1受容体アンタゴニストSCH23390は統合失調症患者の行動に非常に大きな影響を及ぼすが、他のドーパミンD1受容体アンタゴニストは影響を及ぼさない。発明の概要 選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストおよび/またはそのプロドラッグを使用して認知障害の治療を必要とする患者の認知障害を長期間治療する方法、ドーパミン作動状態と認知障害を相関付けるプロファイルおよびドーパミン作動状態と認知障害を相関付けるプロファイルを作成する方法、ならびに患者のカテコール-o-メチル基転移酵素(COMT)遺伝子型を確かめることによって選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストの投与に対する反応を予測する方法が提供される。前記の治療方法は、副作用および/または治療に対する脱感作もしくは耐性を最小限にする、ならびに/あるいは認知機能の長期間の改善をもたらす、ならびに/あるいは認知機能のさらなる悪化を阻止する投与計画を使用して、認知障害を治療するのに有効な量の1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストを、認知障害の治療を必要とする患者に提供する段階を含む。好ましくは、認知障害と関連する基礎疾患の他の症状も改善される。または、同じ治療において、作用機構が異なる2種類以上の薬物を組み合わせることができる。この場合、薬物の1つは、認知障害の治療に有効な選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストであり、第2の薬物は基礎疾患状態の治療に効力を有する薬物である。これらの薬物は組み合わされると相加的または協力的に作用することができる。プロファイルを作成する方法は、認知障害を有する個々の患者および特定の疾患状態または正常老化に関連する認知障害を有する患者の集団の両方のドーパミン作動状態および/または認知機能を確かめる段階、ならびに個々の患者および特定の患者集団の両方においてドーパミン作動状態および/または認知機能を相関付ける段階を含む。これらの方法は、作業記憶、言語記憶および空間記憶、ならびに遂行機能の少なくとも1つの明らかな認知障害を有する患者における、いくつかの疾患(統合失調症、物質嗜癖および乱用、パーキンソン病、うつ病、ハンチントン舞踏病を含む)ならびに正常老化の認知障害を治療するのに用いられる。プロファイルは、患者の診断、治療、および予後において、ならびに認知障害を有する個々の患者に対する、および呈する症状が認知障害である特定の疾患に対する最適な治療法の特定において使用することができる。好ましい態様の説明 選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストおよび/またはそのプロドラッグを単独で使用して、または他の治療様式と併用して、呈する症状が認知障害である統合失調症および他の疾患(例えば、うつ病、ならびに/または薬物および/もしくはアルコールの乱用および/もしくは嗜癖)の少なくとも1つの症状(認知障害を含む)の進行を緩和および/または遅延する方法が提供される。認知障害とは、n-back検査などの作業記憶検査によって測定されるような、短期の情報の保持および処理の不能を意味する。統合失調症患者とは、診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual)(DSM-IV)に従って統合失調症または分裂病様障害と診断された患者を意味する。一般的に、認知障害は、作業記憶に関連する脳の領域(前頭皮質、特に、前前頭皮質(PFC)を含む)におけるドーパミンD1受容体密度の低下と関連している。この治療方法は、DAS-431、DAS-431に化学的に関連するドーパミンD1受容体アゴニスト、または他のドーパミンD1受容体アゴニストの単独使用または第2の薬物(一般的に、呈する状態の症状の治療に効力を示す薬物であるが、必ずしも認知障害の治療に効力を示すとは限らない)との併用を含む。 前記の方法において、統合失調症患者あるいは他の原因(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、脳損傷、学習および記憶の欠陥に関連する変性疾患、自閉症、加齢性の認知低下、軽度認知障害、アルコールおよび/もしくは薬物の嗜癖もしくは乱用、電気ショックによる記憶消失、頭部外傷、脳卒中、脳虚血、ハンチントン舞踏病、学習障害、多発脳梗塞性痴呆、老年痴呆、パーキンソン病、トゥレット症候群、または大鬱病)のために認知障害を有する患者に、少なくとも1種類の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストおよび/またはそのプロドラッグが、患者のPFCドーパミン作動状態に適した範囲内の用量で、および患者のPFCドーパミン作動状態に適した治療法を使用して提供される。選択的に、患者には、患者の疾患または状態の治療に適した他の組成物(一般的に、選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストの作用機構とは異なる作用機構を有する組成物)も提供される。PFCドーパミン作動状態とは、同じ疾患または認知機能低下の原因を有する患者の集団のドーパミン作動状態と比較した、個々の患者におけるPFCドーパミンD1受容体密度および認知障害(好ましくは作業記憶/遂行機能)の程度に関連するプロファイルを意味する。従って、疾患の重篤度または他の疾患特異的特徴に関連するドーパミン作動状態の集団プロファイルを作成することができる。含まれる疾患特異的特徴は疾患によって異なる。 様々な治療プロトコールに対する集団内の個体の反応は、個体のドーパミン作動状態と治療に対する反応との関係のプロファイリングにおける重要な因子である。例えば、治療に対する反応が低い個体は、その個体を、同じ治療法に対する反応が高い個体のドーパミン作動状態に似たドーパミン作動状態を有する患者より劣った治療法候補にするドーパミン作動状態を有するかもしれない。一般的に、ドーパミン作動状態と治療に対する反応とのこれらの関係を妥当な有意性で証明するには、集団研究が必要とされる。ある集団においてドーパミン作動状態と治療反応との関係が証明されたら、適切な認知課題を使用して個々の患者のドーパミン作動状態を確かめることによって、任意の特定の患者に対する治療の選択を改善することができる。または、ドーパミン作動状態は、個々の患者のドーパミンD1受容体密度を、例えば、陽電子放射型断層撮影法(PET)を使用して測定すると同時に、患者の作業記憶を評価することによって確かめることができる。患者のプロファイルと実質的に類似するプロファイルを有する個体に対してうまくゆくと証明された治療法は、ほぼ間違いなく効力を示す。 本発明は、統合失調症および呈する症状が認知障害である他の疾患を治療する既存の方法より優れたいくつかの利点を有する。一般的に、現行の抗精神病薬による治療の場合のように鈍らせるのとは反対に、本発明の方法では認知機能(例えば、統合失調症における認知機能)が改善されると同時に、幻覚および妄想などの他の症状がなお管理される。認知機能の強化は、必要な課題を行う能力を改善することによって患者に利益を与える。 さらなる利点として、使用される投与量が、従来より使用される投与量より著しく少ないこと、従って、副作用が少ないこと、ならびに治療に対する耐性を生じる患者の機会が少ないこと、および耐性発生に付随して用量を増加させる必要が少ないこと、従って、治療の効力を維持するために副作用の可能性を増大させる必要が少ないことが挙げられる。副作用が少ないと、患者のコンプライアンスが高まり、症状の優れた管理につながる。使用される治療法は、さらに、慢性処置が必要とされないという利点を有する。療法の効果は長期間にわたる。投与あたり少量の薬物の使用および少ない投与回数の使用は、治療費の削減というさらなる利点をもたらす。 ドーパミン作動状態と認知障害の程度とを相関付ける、作業記憶に影響を及ぼす疾患のプロファイルの作成はさらなる利点をもたらす。このような利点の1つは、疾患に関連する認知機能障害を有する患者に対してより正確な治療プロトコールが実現可能になることである。別の利点は、集団の標準とは著しく異なるプロファイルを有する、集団内の個々の患者を治療することが可能になることである。選択的に、作業記憶課題の作業困難の個々の患者の素因となるCOMT遺伝子型状態の特定を使用すると、従来より処方されているものとは別の治療法および/または投与計画を必要とする患者を特定できるという利点が得られる。 本発明の薬学的組成物は様々な薬物送達系での使用に適している。本発明において使用される薬学的に許容される担体および製剤は、参照として本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.(1985)で述べられている。薬物送達法の短い概説については、参照として本明細書に組み入れられる、Langer,(1990)Science 249:1527-1533を参照のこと。 本発明の薬学的組成物の調製において、薬物動態および体内分布を変えるために本発明の組成物を変更することが望ましい場合がある。薬物動態の概論については、Remington's Pharmaceutical Sciences,前記,Chapters 37-39を参照のこと。薬物動態および体内分布を変える多数の方法が当業者に周知である(例えば、Langer,前記を参照のこと)。このような方法の例として、薬剤を、物質からなる小胞(例えば、タンパク質からなる小胞、脂質からなる小胞(例えば、リポソーム)、炭水化物からなる小胞、または合成ポリマーからなる小胞)に入れて保護することが挙げられる。例えば、本発明の薬剤は、薬物動態および体内分布の特徴を改善するためにリポソームに組み込むことができる。例えば、Szoka et al,(1980)Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467、U.S.Pat.Nos.4,235,871、4,501,728、および4,837,028(これらは全て参照として本明細書に組み入れられる)に記載のように、リポソームを調製するために様々な方法を利用することができる。 本発明の薬剤は、ヒトへの投与に有用な薬学的組成物の状態で使用することができる。U.S.Patent No.5,597,832を参照のこと。本発明の化合物は、選択された投与経路(例えば、経口投与または非経口投与)に合わせられた様々な形で哺乳動物宿主に投与することができる。この点で、非経口投与は、以下の経路による投与:静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、眼内投与、滑液嚢内投与、経上皮投与(経皮投与を含む)、眼投与、舌下投与、および口腔投与;局所投与(ガス注入、エアロゾル、および直腸全身を介した皮膚投与、直腸投与、および鼻吸入を含む)を含む。 本発明は、許容される担体(好ましくは、水性担体)に溶解または懸濁された前記の薬剤の溶液を含む組成物を提供する。様々な薬学的に許容される水性担体(例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸など)を使用することができる。これらの組成物は従来の周知の滅菌法によって滅菌されてもよく、滅菌濾過されてもよい。結果として生じた水溶液は使用のためにそのままで包装されてもよく、凍結乾燥されて包装されてもよく、凍結乾燥された調製物は投与の前に滅菌溶液と混合される。組成物は、薬学的に許容される担体として、生理学的条件に近づけるのに必要な物質(例えば、pH調節剤および緩衝剤、張性調節剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンなど)を含んでもよい。 固形組成物の場合、従来の無毒の薬学的に許容される担体(例えば、薬学グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む)を使用することができる。経口投与の場合、通常用いられる任意の賦形剤(例えば、前述で列挙した担体)と一般的に10〜95%、より好ましくは25%〜75%の濃度の活性成分を混合することによって、薬学的に許容される無毒の組成物が形成される。 本発明の化合物は経皮装置によって投与することができる。好ましくは、リザーバ多孔膜型のパッチまたは固形マトリックス種のパッチを使用して、局所投与が行われる。どちらの場合でも、活性薬剤は、リザーバまたはマイクロカプセルから膜を通って、レシピエントの皮膚または粘膜と接触している活性薬剤透過性接着剤に連続的に送達される。活性薬剤が皮膚を通って吸収されれば、制御され予め決められた活性薬剤の流れがレシピエントに投与される。マイクロカプセルの場合、カプセル化剤も膜として機能することがある。活性薬剤はまた経皮パッチ(適切な溶媒系と接着剤系(例えば、アクリルエマルジョン)の中に化合物を含むことができる)として、およびポリエステルパッチとして提供することができる。 本発明の化合物はまた粘膜を通して送達することができる。経粘膜(すなわち、舌下、頬、および膣)薬物送達は活性物質を体循環の中に効率的に入れ、肝臓および腸壁叢による速やかな代謝を減少させる。経粘膜用剤形(例えば、錠剤、坐剤、軟膏、ペッサリー、膜、および散剤)は、一般的に、粘膜に接触して保持され、粘膜において急速に崩壊および/または溶解して速やかに全身吸収される。頬または舌下の膜への送達の場合、一般的に、経口製剤(例えば、ロゼンジ、錠剤、またはカプセル)が用いられる。これらの製剤を製造する方法は当技術分野において周知であり、予め製造された錠剤への薬理学的薬剤の添加、不活性増量剤、結合剤、および薬理学的薬剤または薬剤を含む物質の冷間圧縮(例えば、U.S.Pat.No.4,806,356を参照のこと)、ならびにカプセル化を含む。別の経口製剤は、接着剤(例えば、セルロース誘導体であるヒドロキシプロピルセルロース)を用いて口粘膜に適用することができるものである(例えば、U.S.Pat.No.4,940,587を参照のこと)。この頬用接着製剤は頬粘膜に適用された時に、薬理学的薬剤を口の中に入れ頬粘膜を通して徐放する。 エアロゾル投与の場合、薬学的組成物は、好ましくは、界面活性剤および噴霧剤(薬学的に許容される担体として)と共に超微粒子の形で供給される。界面活性剤は無毒であり、好ましくは、噴霧剤に溶ける。このような薬剤を代表するものは、6個〜22個の炭素原子を含む脂肪酸(例えば、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸(olesteric acid)およびオレイン酸)と脂肪族多価アルコールまたはその環式無水物とのエステルまたは部分エステルである。混合エステル(例えば、混合グリセリドまたは天然グリセリド)を使用することができる。所望であれば、例えば、鼻腔内送達用のレシチンのように、担体も含めることができる。特に好ましい多糖賦形剤は、GB-1518121に記載のような架橋デンプンマイクロスフェアである。GB-1518121のマイクロスフェアは、マイクロスフェアを得るために可溶性バレイショデンプン加水分解産物を乳化重合し、次いで、マイクロスフェアを(例えば、エピクロロヒドリンによって)架橋することによって生成される。さらなる詳細は、Lindbergh et al.,Microspheres and Drug Therapy、Davis et al.,Elsevier,Amsterdam,1984,p153に記載されている。ドーパミンD1受容体アゴニスト(例えば、DAS-431(ABT-431と呼ばれている))の鼻腔内製剤を開示するUSPN6,310,089も参照のこと。 治療を必要とする患者を治療するために、本発明の薬学的組成物は投与方法に応じて様々な単位剤形で投与することができる。薬学的組成物中の特定の薬剤の有効量は、例えば、薬剤の化学的特性、投与方法、患者の体重および全身健康状態、治療されている認知障害の重篤度、ならびに処方している医師の判断に左右される。投与量、製剤、および投与計画は、正常な個体および/または他の患者と比較して特定の患者において異なることがある。 DAS-431による治療のために、一般的に静脈内投与、または好ましくは皮膚送達もしくは経粘膜送達が用いられる。静脈内投与の投与量は、約1μgから約50mgまで、またはそれ以上(好ましくは、5μg〜約20mg)に及び、より一般的には、約30μg〜約8mg(すなわち、0.00001μg〜0.10mg/kg体重)の投与量が用いられる。しかしながら、本発明の組成物は重篤な疾患状態に用いられることがあり、このような場合、前記で述べられた投与量よりかなり過剰な量のこれらの組成物を投与することが予想され、かつ治療を行っている医師に望ましいと思われるかもしれない。使用される用量に応じて、通常、IV投与は約0.5〜2時間にわたって(好ましくは、悪心および局所注射部位反応などの副作用を最小限にするために約1時間にわたって)行われる。皮膚投与または経粘膜投与などの異なる投与経路が用いられる場合、投与量は、投与の効率、および選択された経路による、静脈内投与と比較して高いまたは低い生物学的利用能を補うように、それに応じて調節される。治療の効力を評価するために神経画像処理が用いられる場合、高品質の画像が得られなくなるような潜在的な副作用を抑えるために、患者には神経画像処理前にオダンセトロン(odandsetron)などの制吐薬が選択的に与えられる。 選択的ドーパミンD1受容体アゴニスト(例えば、DAS-431または類似化合物)による治療に加えて、選択的に、患者は、治療されている疾患または状態に対して有効であることが知られている第2の薬物(特に、DAS-431とは異なる作用機構を有する薬物)で治療することができる。一例として、基礎疾患が統合失調症である場合、第2の薬物は選択的ドーパミンD2受容体アンタゴニスト(例えば、ハロペリドールもしくはリスペリドン)でもよく、または非定型抗精神病薬(例えば、オランザピンもしくはジプラシドン)が投与されてもよい。統合失調症以外の疾患または状態における認知障害の治療の場合、DAS431または別の選択的D1受容体アゴニストは、疾患または状態に適した医薬品(例えば、神経弛緩薬、リチウム、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン、催眠薬、抗うつ薬など)と組み合わせることができる。2つ(またはそれより多くの)薬物(選択的D1受容体アゴニストおよび別の薬物)が1つの組成物で投与されてもよく、2つの別個のものとして投与されてもよい。例えば、これらの薬物は単回注入で一緒に投与されてもよく、個々の化合物として投与されてもよい。選択的ドーパミンD1受容体アゴニストおよび別の薬物に加えて特定の組成物に含まれる成分は、主に、組成物が前記のように投与される方法によって決定される。 認知障害の治療に用いられる治療法は、PFCのドーパミン受容体の刺激によって逆「U」型の用量反応曲線(すなわち、不十分なまたは過剰なドーパミンD1受容体刺激はPFC認知機能にとって有害である)が生じることを考慮に入れている。ドーパミンD1受容体を最適に刺激することができる濃度の範囲は狭い。個々の患者の用量反応曲線は患者のPFCドーパミン作動状態にも左右される。従って、各患者を治療するための用量反応曲線は、好ましくは、概して有効な範囲に関する情報と患者のPFCドーパミン作動状態に関する情報を組み合わせることによって実験的に求められる。大部分の患者の有効量は約1mg/日未満である。治療域は、患者の症状に対する様々な薬物濃度の影響を測定することによって求められる。次いで、治療に対する特定の患者の反応を反映するために、個別の調節が行われる。一般的に、広く用いられている初回治療は、特定の認知障害に有効な投薬スケールの下端に近い。初回治療で改善が見られないか、またはわずかな改善しか見られない場合、治療を約12〜36時間間隔(一般的に、約24時間間隔)で同じ用量を用いて繰り返し、評価を繰り返すことができる。治療による効果が無い、または最小限の効果しかない場合、1〜2週間後に用量を増やすことができ、作業記憶課題において明らかな改善および/または正常化が見られるまで、このプロセスを繰り返す。用量を増やすことによって、有害な影響が観察された場合、用量は、効力が観察された以前の用量に減らすべきである。初回量が有効でなく、用量の増加が有害であった場合、有効量に達するまで初回量より少なく用量を減らすことができる。一部の患者では、有害な影響しか観察されない場合があるが、このような患者での治療は中断すべきであり、その代わりに、ドーパミンD1受容体アンタゴニストなどの別の医薬品による治療を評価すべきである。 一部の患者では、反復治療に対する耐性が認められる場合がある。一日に一回の投与によって耐性の発生が制限されることがある。この場合、治療薬物を排出させるのに十分な時間(一般的に、約5日〜10日)、治療を止めてもよい。治療は、毎日であろうと洗い流し(washout)期間があろうと、少なくとも1週間(この期間、治療が中断してもよい)、認知機能の安定した改善が見られるまで繰り返すことができる。治療の後、患者は、改善された認知機能を維持するために定期的に(一般的に約1〜3ヶ月ごとに)モニタリングされる。認知機能の低下が認められた場合、一般的に、この患者に以前有効であることが認められた同じ投与量を用いて、治療過程を繰り返すことができる。 作業記憶障害の症状を治療する効果は以下のように評価することができる。可能であれば、治療様式の生物学的効力ならびに臨床効力の両方が評価される。例えば、ドーパミンD1受容体の刺激は、n-back作業により測定されるように作業記憶の改善と関連付けられる。さらに、ドーパミンD1受容体の占有と作業記憶の改善との間には関係があるというのが本発明の説である。一般的に治療の前に治療の効果を最も正確に測定するために、作業記憶および/または遂行機能の障害を測定する多数の任意の技法によって、患者の認知機能またはドーパミン作動状態が確かめられる。認知機能および/またはドーパミン作動状態が改善したかどうか評価するために、治療後に治療前に行われた同じ検査が繰り返される。任意で、治療からまず間違いなく利益を得る患者を選択するために、患者のCOMT遺伝子型が確かめられてもよい(実施例を参照のこと)。val対立遺伝子がホモ接合性であると確かめられた患者は、ヘテロ接合性患者またはmet対立遺伝子ホモ接合性患者とは異なって治療に反応する可能性が高い(例えば、Egan MF et al.(2001)Proc Nat Acad Sci USA 98:6917-6922;Gogos JA et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95:9991-9996;Kneavel et al.(2000)Society for Neuroscience 30th Annual Meeting;571.20を参照のこと)。 認知を測定する検査の例として、以下が挙げられる:簡易精神症状評価尺度、臨床全般印象尺度、陽性陰性症状評価尺度、陰性症状評価尺度、躁病の評価尺度(Young Mania Rating Scale)、アルツハイマー病評価尺度認知機能検査、臨床医のインタビューベースの印象の変化(Clinician's Interview Based Impression of Change)、簡易ポータブル知的状態質問表、フォルステイン(Folstein)ミニメンタル・ステート検査、臨床痴呆評価尺度、ケンブリッジ神経心理テストによって自動化されたバッテリー(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery)、ウィスコンシンカード分類テスト(Wisconsin Card Sort Test)、N-back作業記憶検査、ウェザー予測確率的学習検査(Weather prediction probabilistic learning test)、神経心理状態の評価のための再現可能バッテリー(Repeatable Battery for Assessment of Neuropsychological Status)、または連続作業検査ビジランス(Continuous Performance Test Vigillance)。認知障害ドメインの範囲は疾患ごとに異なることがあるので、複数の認知障害ドメインを完璧に治療するために、どの検査にもさらなる認知課題を加えることができる。選択的に、患者のドーパミン作動状態を得るために、神経画像処理手段(例えば、機能的核磁気共鳴断層装置(fMRI))を使用して、またはF-18N-メチルスピペロンなどの放射性医薬品を用いたPETスキャンを使用して、脳の活動も同時に評価することができる。PFCのドーパミンD1受容体数の増加(すなわち、受容体のアップレギュレーション)が治療後に観察される患者はまず間違いなく作業記憶作業の改善を示し、任意の特定の疾患状態におけるドーパミン作動状態は認知障害の程度と相関付けられるというのが、本発明の説である。 臨床効力(基礎となる欠陥の治療が疾患経過の変化に有効であるかどうか)は測定がより難しい場合がある。生物学的効力の評価は、臨床効力の代用評価項目として大いに効果があるが、決定的なものではない。従って、例えば、6ヶ月の期間の後の、作業記憶の改善の指標となる可能性のある臨床評価項目の測定から、治療法の臨床効力の指標となる可能性がある。作業記憶障害の症状の程度および進行または後退は認知検査(例えば、前記の検査)によって評価およびモニタリングされる。統合失調症の臨床的特徴の面では、陽性症状および陰性症状は、一連の尺度(例えば、GCI(Global Clinical Impression)、PANSS(positive and negative syndrome Scale)と、例えば、BPRS(Brief psychiatry Scale)によって測定されるような陰性症状のいくつかのサブセット)によって測定することができる。全スコアおよび陰性症状の得られた種類を用いて、ある特定の程度の統合失調症を有する患者においてこれらの変化の進行または後退が発生すると一般的に予想される期間の後に、これらの進行または後退が無いことが、治療法の臨床効力の指標となる可能性がある。同様に、当業者は、呈する症状が認知障害である他の疾患の治療の生物学的効力および臨床効力を評価することができる。 本発明の組成物は、1つまたは複数の手順において使用するために提供することができる。認知障害の症状を直接改善するのに有効な薬剤であると特定された薬剤を含む薬学的組成物を用いた治療のために、本発明の組成物は、1回または複数回の投薬で使用するためのキットとして提供することができる。キットは、有効な薬剤を濃縮物(凍結乾燥組成物を含む)(これは使用の前にさらに希釈されてもよい)として含む組成物を含む。または、キットは使用濃度で提供されてもよい(この場合、バイアルは1回または複数回の用量の製剤を含んでもよい)。都合よく、キットには、医師が直接バイアルを使用できるように、単回量が滅菌バイアルの中に入れられてもよい(この場合、バイアルは所望の量および濃度の薬剤を有する)。バイアルが直接使用するための製剤を含む場合、通常、この方法で使用するために他の薬剤を必要としない。キットはまた、単回使用または複数回使用のための経皮系または経粘膜系の形でもよい。本発明の組成物は包装材の中に入れられてもよく、包装材は、ヒトの認知障害の治療に本発明の組成物が使用できることを表示するラベルを備える。 以下の実施例は例示のために示され、限定のために示されない。実施例実施例1インビボでのDAS-431受容体占有の測定 この試験の目的は、PET画像法およびD1特異的放射性トレーサー[11C]NNC112を使用して、潜在的治療量(potential therapeutic dose)のDAS-431静脈内(IV)製剤(4mgおよび8mg)によるインビボD1受容体占有を測定することである。これは第IIa相非盲検試験であり、被験者一人一人が異なる被験者集団における対照である。得られたデータから潜在的治療量を計算し、非統合失調症集団における推定有効量に外挿することができる。4つの被験者集団において合計20人の処置被験者(最大で合計28人が募集された)を試験した。群1:統合失調症被験者(5人処置)群2:コカイン依存性被験者(5人処置)群3:適合健常ボランティア(対照)(5人処置)群4:老齢健常ボランティア(5人処置) 被験者は、18歳〜65歳の男性または女性である場合に試験に登録する資格がある。統合失調症被験者については、統合失調症、分裂病様障害、または分裂情動障害のDSM-IV基準を満たさなければならず、尿毒物学検査が陰性でなければならない。コカイン依存性被験者については、コカイン依存性のDSM-IV基準を満たす場合に登録の資格がある。健常ボランティアについでは、尿毒物学検査が陰性である場合に資格がある。全ての群について、被験者は3週間前から抗精神病薬を服用してはならず、6ヶ月前からデポー神経弛緩薬を服用してはならず、4週前から抗うつ薬も気分安定薬も服用してはならず、6週間前からフルオキセチンを服用してはならず、痙攣、癌、あるいは(前記で具体的に述べた以外の)任意の臨床的に重大な心臓の疾患もしくは障害、呼吸器の疾患もしくは障害、代謝の疾患もしくは障害、腎臓の疾患もしくは障害、肝臓の疾患もしくは障害、胃腸の疾患もしくは障害、皮膚の疾患もしくは障害、性病の疾患もしくは障害、血液の疾患もしくは障害、神経学的な疾患もしくは障害、または精神医学的な疾患もしくは障害の病歴も存在も有してはならず、>90mmHgの拡張期血圧および/または>140mmHgの収縮期血圧を有してはならず、5分間の仰臥位から1分間の立位に起きた後の収縮期血圧が30mmHg以上低下してはならず、MRIスキャンを妨げる金属性または常磁性の物体を体内に有してはならず、現在もしくは過去に職場において放射線に暴露されたことがなく、または放射線に暴露されることが予想されず、現在もしくは過去に核医学処置に関与したことがなく、または核医学処置に関与することが予想されない。 DAS-431は、10mLの単回使用バイアルの中に入った滅菌凍結乾燥調製物として提供され、バイアルには、6.9mgのDAS-431(5mgのA-86929に相当)および100mgのマンニトールが含まれる。DAS-431を注射用滅菌水(米国薬局方)に溶解して混合し、60分間IV注入液として投与する。各群について以下に説明したように、DAS-431を4mgまたは8mg DAS-431の用量で投与する。高品質の画像が得られなくなるようなDAS-431により起こり得る副作用(悪心、嘔吐)を抑えるために、それぞれのPETスキャンの前に全ての被験者に8mgのオダンセトロンを与える。 統合失調症被験者および適合対照(群1および3)は連続して2日間処置し、初日には4mgのDAS-431を単回投与し、次の日には8mgのDAS-431を単回投与する。PET画像法を使用したD1受容体測定は、本質的にAbi-Dargham et al(前記)aa:3708-3719に記載のように、強力かつ選択的なD1受容体アンタゴニストである(+)-5-(7-ベンゾフラニル)-8-クロロ-7-ヒドロキシ-3メチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-3-ベンズアゼピン(NNC112)(Andersen et al.(1992)Eur J Pharmacol 219:45-52)を使用して行う。D1受容体を画像化するための放射性トレーサーとして、[11C]NNC112を使用する(Halldin et al.(1998)J Nucl Med 39:2061-2068)。[11C]NNC112は最大量6.54μgのIV瞬間投与として投与する。別々の2日のいずれにおいても、これらの被験者は、HR+カメラによる2回のPETスキャン(ベースラインでの局所D1受容体結合能を調べるために20mCi[11C]NNC112の注射の後、次いで、初日の低用量DAS-431(4mg)の投与の後または次の日のさらに高い用量のDAS-431(8mg)の投与の後)を受ける。コカイン依存性被験者および健常ボランティア(群2および4)は4mgのDAS-431を用いて1日だけ処置する。[11C]NNC112は最大量6.54μgのIV瞬間投与として投与し、被験者は、HR+カメラによる2回のPETスキャン(ベースラインでの局所D1受容体結合能を調べるために20mCi[11C]NNC112の注射の後、次いで、DAS-431(4mg)の投与の後)を受ける。比較療法は評価しない。 治療の効力はドーパミンD1受容体結合能によって評価する。治療の安全性は、バイタルサインを追跡し、全ての化学検査および血液検査、EKG、ならびに尿分析を行うことによって測定する。薬物動態は、注入およびPETスキャン取得の間に、示された時間で(放射性トレーサー注射の0分後、30分後、45分後、55分後、60分後、65分後、75分後、90分後、120分後に)試料を採取し、A-86929血漿中濃度を求めることによって測定した。 データは以下のように分析する。前頭前野D1受容体におけるDAS-431占有は、[100*(BPベースライン-BPDAS-431)/BPベースライン]として計算する。[11C]NNC112 BPの定量は、Abi-Dargham et al.J Cereb Blood Flow Metab 2000;20:225-43に記載のように行う。個体分析:群1および群3の被験者一人一人について、統合失調症被験者および正常ボランティアの間のEmaxおよびED50における有意差を試験する。群分析:データは診断群によるものである(群の中でEmaxおよびED50の有意差が無いものと仮定した)。群レベルのEmaxおよびED50を得ら、群の間での差を評価する。実施例2リスペリドン処置統合失調症被験者における認知作業および前頭皮質異常rCBEパターンの正常化に対するDAS-431の作用 この試験の目的は、安静時ならびに聴覚課題および記憶課題の作業中での、統合失調症の症状、認知作業、およびCNS生理機能に対する(1)単回漸増量のDAS-431および(2)5日のDAS-431処置の効果を、領域および用量によって評価することである。これは、二段階の第IIa相試験である。 最初の期は、一日一回漸増量のDAS-431:2mg、4mg、8mgの効果の被験者内無作為化プラセボ対照評価である。それぞれの試験日は2日または3日あいている。第2の段階は1週間のウォッシュアウトの後に開始し、二重盲検無作為化パラレルプラセボ対照試験である。全ての被験者に連続して5日間プラセボを与え、その後に、連続して5日間、3種類の試験量のDAS-431で処置するか、またはプラセボを与える。合計20人の被験者を試験し、一群あたり5人を試験し、DAS-431処置群が3つ、プラセボ群が1つである。必要に応じて、最終的なサンプルサイズを得るために、被験者を交換する。 被験者は、以下の場合に試験に登録する資格がある:リスペリドンで治療されている入院中の統合失調症被験者であること;能動的な統合失調症症状によりDSM IV統合失調症基準を満たすこと(臨床症状評価尺度、BPRS、SANS、および統合失調症変化尺度(psychosis change scale)の全セットによって評価される);CPTにおいて注意欠陥を示し、ホプキンス(Hopkins)言語学習課題において作業記憶障害を示すこと。主に陰性症状を有する患者は除いた。 DAS-431をIV注入(一日2mg、4mg、および8mg)で60分にわたって投与する。PETスキャンは90分間にわたってプラトー濃度で行う。高品質の画像が得られなくなるようなDAS-431により起こり得る副作用(悪心、嘔吐)を抑えるために、それぞれのPETスキャンの前に全ての被験者にオダンセトロンを与える。比較療法は、DAS-431処置として投与されるプラセボである。被験者の背景治療はリスペリドン(少なくとも2週間の安定投与)である。 処置を評価するために、認知機能、CPT、およびホプキンス言語学習課題を使用する。効力(時点評価)は、2セットの課題:3つの要求水準の聴覚音課題ならびに単語および文字列に対するN-back作業記憶課題の下で150PETスキャンを使用して確かめ、臨床結果については、BPRS、SANS、および統合失調症変化尺度を使用して確かめる。最初の急性期には、投与日において、薬物の、および薬物に関する全ての基準を評価する。 亜慢性期において、認知機能およびスキャンの取得は各週の5日目に行い(プラセボおよびDAS-431)、臨床結果は各週の2日目、4日目、および5日目に評価する。処置の安全性を評価するために、最初の期では各投与日に、亜慢性期では各週の1日目および5日目に、バイタルサイン、全ての化学検査および血液検査、EKG、尿分析をスクリーニング時に評価する。薬物動態分析は、注入の間および注入後(0分後、15分後、30分後、45分後、60分後、75分後、90分後、120分後、135分後、および150分後)にA-86929血漿中濃度を求めて行う。一次評価項目は、安静時および課題作業中での領域および用量によるrCBF変化;注意および作業記憶の認知試験;ならびに臨床結果である。実施例3急性期および亜慢性期の周期的なドーパミンD1受容体薬理学的調節 この試験の目的は、低用量のDAS-431を使用した、急性期および亜慢性期の周期的なドーパミンD1受容体薬理学的調節、ならびに統合失調症被験者における前頭前野を介する認知機能、電気生理学的相関関係、および臨床結果に対する効果を評価することである。目的は、以下の通りである。(1)DAS-43の単回量投与が健常被験者および統合失調症被験者における前頭前野皮質機能の認知的測定および電気生理学的測定に対して有意な効果があるかどうかを調べること;(2)被験者の前頭前野ドーパミン作動状態を評価し、これを、認知的、電気生理学的、および臨床的な反応を予測するものとして潜在的に使用すること;(3)非常に低い用量の周期的な亜慢性投与が有効であるかどうか、ならびにその効果が処置の中断後に維持されるかどうかを調べること。 これは、二段階の第IIa相試験である。最初の期は、DAS-431一日一回投与からなる二重盲検被験者内プラセボ対照試験である。後の段階は、9日あけて続けて5日間、5コースの処置からなる無作為化パラレル二重盲検プラセボ対照試験(3ヶ月の処置後追跡調査を伴う)である。患者は初めの急性評価には施設に収容され、亜慢性処置には外来患者になる。 この試験の被験者は、40〜100人のスクリーニングされた統合失調症被験者である。(1)急性期:合計65人の統合失調症被験者-合計15人の健常ボランティア(4つの処置群および1つのプラセボと、健常ボランティアの4つの処置群および1つのプラセボ)。(2)本試験:合計56人の統合失調症被験者(最低45人が完了)(一群あたり18/15人の3つの群)。 被験者は、以下の場合に試験に登録する資格がある:統合失調症のDSM IV基準を満たすこと、クロザピン以外の抗精神病薬を長期間(少なくとも12ヶ月)安定して服用すること、前頭前野を介した認知機能における障害(障害の標準偏差の半分より大きい)を有すること、特徴付けられたベースラインドーパミン作動状態を有すること。 DAS-431はIV注入によって30分間にわたって投与される。(1)初めの試験:0.005mg、0.05mgおよび0.5mg、1mgの一日一回投与-連続して5日。(2)本試験:0.05mgおよび1mg-9日あけて続けて5日間、5コース。プラセボは試験製品として投与される。 被験者評価の基準は、(a)作業記憶/遂行機能(CANTAB、他のTBD);(b)ERP-作業記憶行動:作業記憶に関連する脳の活動/負荷が変化する記憶課題のコタンジェント陰性変化(cotangent negative variation)、ミスマッチ陰性電位;および(c)臨床症状:GCI、SANS、PANNS、サブセットスコアである。 最初の期では、それぞれの投与日において、薬物投与の前および後に全ての基準を評価する。本試験では、それぞれの処置コースの1日目(処置前)および5日目に認知機能およびERPを評価する。処置コースの間に、GCIを毎日評価し、SANS、PANNS、およびサブセットスコアを週に2回評価する。ウォッシュアウト期間の間に、GCIおよびPANNSを週に2回評価する。処置の1週間後、2週間後、4週間後、および8週間後に、認知、ERP、および臨床症状を評価する。 バイタルサイン、全ての化学検査および血液検査、EKG、尿分析を以下のように行う。(1)急性期:注入間および注入後:0分後、15分後、30分後、45分後、60分後、75分後、90分後、120分後、A-86929血漿中濃度を求める。 (2)本試験:急性期と同じ期間。臨床分析については、認知機能の改善および他の陽性の臨床結果があるかどうか確かめるために、全ての被験者を分析する。電気生理学的相関関係も評価する。実施例4正常被験者または統合失調症被験者のCOMT遺伝子型に基づく認知機能に対するDAS-431の効果 この試験の目的は、COMT遺伝子型が決定された正常ボランティアおよび統合失調症被験者におけるDAS-431の効力を評価することである。目的は、以下の通りである(1)遺伝子型が決定された正常ボランティアにおいて、fMRIによって評価される脳の活動に対して薬理学的に活性で安全な用量を選択すること。(2)複数の認知課題におけるDAS-431に対する反応の遺伝的変異を探求すること、およびCOMT Val/Valを有する個体とCOMT Met/Metを有する個体とCOMT Val/Met遺伝子型を有する個体との関係を評価すること。(3)fMRIを使用したこれらの効果の神経生理学的相関関係を、DAS-431のN-back作業記憶検査およびスタンバーグ(Sternberg)パラダイムのパラメトリック変動の作業と組み合わせて位置づけること。(4)一日IV注入の5日処置の安全性を評価すること。 これは、3つ連続した段階からなる第IIa相試験である。(a)遺伝子型が決定された正常ボランティアにおける脳の活動に対するDAS-431単回用量の効果の最初の無作為化二重盲検プラセボ対照被験者内用量設定試験、次に、(b)COMT遺伝子型が決定された正常被験者における認知機能および神経画像処理相関関係(fMRI)に対する1種類の薬理学的に活性な用量のDAS-431の効果の無作為化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験、次に、(c)COMT遺伝子型が決定された統合失調症被験者における認知機能および神経画像処理相関関係(fMRI)に対する1種類の薬理学的に活性な用量のDAS-431の効果の無作為化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験を行う。 (1)COMT遺伝子型が決定された正常ボランティア(N=6);観察に応じて、さらに6人を登録する。(2)合計90人のCOMT遺伝子型が決定された正常ボランティア(a)Val/Val:合計30人の被験者、(b)Val/Met:合計30人の被験者、(c)Met/Met:合計30人の被験者。(3)合計90人のCOMT遺伝子型が決定された統合失調症被験者(a)Val/Val:合計30人の被験者、(b)Val/Met:合計30人の被験者、(c)Met/Met:合計30人の被験者。 健常ボランティアは以下の場合に登録の資格がある:COMT遺伝子型が決定されていること;NIHプロトコール95-M-0150の基準を満たしていること;およびAxisI診断もAxisII診断もないこと。統合失調症被験者は以下の場合に登録の資格がある:統合失調症のDSM IV基準を満たしていること、および抗精神病薬を長期間安定して服用していること;ならびにCOMT遺伝子型が決定されていること。 以下は、この試験の3つの期それぞれの治療法である。(1)DAS-431の一日一回の30分IV注入(0.25mg、0.5mg、1mg、および2mg)、(2)DAS-431の複数回の30分IV注入(連続して5日間、(1)で実施されたfMRIに基づく薬理学的用量)、(3)DAS-431の複数回の30分IV注入(連続して5日間、試験(2)のデータから得られた固定用量)。 プラセボは、試験の3つの期それぞれにおいて試験製品として投与される。 健常ボランティアでは、治療法の効力はfMRIシグナルによって測定される。統合失調症被験者では、効力は、神経心理学的評価:前頭前野、嗅内/海馬、前運動、および後頭頭頂骨葉(occipitoparietal lobe)の機能を評価する2組の検査;N-back記憶検査およびステンバーグ(Stenberg)パラダイムの作業の下でのfMRIによる神経画像処理;ならびに臨床結果によって測定される。(1)期において、バイタルサイン、全ての化学検査および血液検査、EKG、尿分析が注入間および注入後(0分後、15分後、30分後、45分後、60分後、75分後、90分後、120分後)に行われ、A-86929血漿中濃度が求められる。(2)および(3)期では、(1)期と同じ分析時間を使用する。(1)期fMRI測定値の統計解析はシグナル対ノイズであり、ある期間にわたるボクセル(Voxel)強度の画像標準偏差の変化である。(1)、(2)、(3)期において、反応時間および作業スコアとボールド(Bold)シグナル変化を相関付けるために、ならびに神経心理学的データのANOVASのために、統計解析が行われ、反復測定および次数として時間が用いられ、主効果として遺伝子型が用いられる。 本明細書で述べられた全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する当業者の技術水準を示す。それぞれ個々の刊行物または特許出願が参照として組み入れられるように詳細かつ個々に示されるのと同じ程度に、全ての刊行物および特許出願は参照として本明細書に組み入れられる。 以下の段階を含む、認知障害を治療する方法: 副作用および/または治療に対する脱感作もしくは耐性を最小限にする、ならびに/あるいは認知機能の長期間の改善をもたらす、ならびに/あるいは認知機能のさらなる悪化を阻止する投与計画を使用して、認知障害を治療するのに有効な量の1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストを、認知障害の治療を必要とする患者に提供する段階。 認知障害の基礎疾患または原因に関連する他の症状を改善する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。 選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストと、認知障害の基礎疾患または原因の治療に効力を有する第2の薬物を組み合わせる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。 第2の薬物が選択的ドーパミンD2受容体アゴニストである、請求項3記載の方法。 選択的ドーパミンD2受容体アゴニストがハロペリドールである、請求項4記載の方法。 選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストと第2の薬物の組み合わせが相加的または相乗的に作用する、請求項3記載の方法。 選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストがDAS-431である、請求項1記載の方法。 ドーパミン作動状態と認知障害を相関付けるプロファイルを作成する方法であり、以下の段階を含む方法: 認知障害を有する個々の患者および特定の疾患状態または正常老化プロセスに関連する認知障害を有する患者の集団の両方のドーパミン作動状態および/または認知機能を確定する段階;および 個々の患者および特定の患者集団の両方におけるドーパミン作動状態および/または認知機能を相関付ける段階。 認知障害を治療するための薬学的パックまたはキットを調製するための、1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストの使用。 認知障害を治療するための薬学的パックまたはキットを調製するための、1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストおよび選択的ドーパミンD2受容体アゴニストの使用。 ドーパミンD1様受容体アゴニストがDAS-431を含む、請求項9または10記載の使用。 選択的ドーパミンD2受容体アゴニストがハロペリドールを含む、請求項10または11記載の使用。 1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストを含む、認知障害を治療するための薬学的パックまたはキット。 1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストおよび選択的ドーパミンD2受容体アゴニストを含む、認知障害を治療するための薬学的パックまたはキット。 ドーパミンD1様受容体アゴニストがDAS-431を含む、請求項13または14記載の薬学的パックまたはキット。 選択的ドーパミンD2受容体アゴニストがハロペリドールを含む、請求項14または15記載の薬学的パックまたはキット。 認知障害を治療するための薬物として使用するための、1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物。 認知障害を治療するための薬物として使用するための、薬学的に許容される担体または賦形剤の中に1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストおよび選択的ドーパミンD2受容体アゴニストを含む組成物。 選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストがDAS-431を含む、請求項17または18記載の組成物。 選択的ドーパミンD2受容体アゴニストがハロペリドールを含む、請求項18または19記載の組成物。 認知障害を治療するための薬物を調製するための、1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストの使用。 認知障害を治療するための薬物を調製するための、1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニストおよび選択的ドーパミンD2受容体アゴニストの使用。 ドーパミンD1様受容体アゴニストがDAS-431を含む、請求項21または22記載の使用。 選択的ドーパミンD2受容体アゴニストがハロペリドールを含む、請求項22または23記載の使用。 薬物が1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニスト受容体リガンドおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、請求項21記載の使用。 医薬品が1つまたは複数の選択的ドーパミンD1様受容体アゴニスト、および選択的ドーパミンD2受容体アゴニスト、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、請求項22記載の使用。 ドーパミンD1様受容体アゴニストがDAS-431を含む、請求項25または26記載の使用。 選択的ドーパミンD2受容体アゴニストがハロペリドールを含む、請求項26または27記載の使用。 認知作業を改善するが、重大な副作用をもたらさない用量で投与される条件下でDAS-431を使用する方法が提供される。治療期間の間、およびしばしば、治療期間後かなり長期間、症状を回復させることがきる。さらに、DAS-431は、後のDAS-431投与に対する反応に悪影響を及ぼさないレベルで提供される。副作用はほとんど見られず、この治療は、頻繁な反復治療が無くなるように長期間の緩和をもたらすことができる。


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