生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_抗インフルエンザウイルス剤
出願番号:2004542873
年次:2010
IPC分類:A61K 31/195,A61P 31/16


特許情報キャッシュ

角田 健司 JP 4600882 特許公報(B2) 20101008 2004542873 20031010 抗インフルエンザウイルス剤 第一三共株式会社 307010166 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 大野 詩木 100134935 第一三共ヘルスケア株式会社 306014736 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 守屋 嘉高 100121153 大野 詩木 100134935 松田 政広 100130683 野中 信宏 100140497 角田 健司 JP 2002298501 20021011 20101222 A61K 31/195 20060101AFI20101202BHJP A61P 31/16 20060101ALI20101202BHJP JPA61K31/195A61P31/16 A61K 31/195 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) WPI 特開2000−095675(JP,A) 鳥羽 剛,小児のかぜ症候群に対するトラネキサム酸含有かぜ薬K−CWの臨床効果の検討,薬理と治療,1990年 2月,Vol. 18, No.2,p. 821-830 中谷 矩章,かぜ症候群に対するトラネキサム酸入りかぜ薬K−CWの使用経験,薬理と治療,1990年 2月,Vol.18, No.2,p.799-808 4 JP2003013049 20031010 WO2004032915 20040422 7 20060327 三輪 繁 本発明は、抗インフルエンザウイルス剤並びにインフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療剤に関する。 トラネキサム酸又はその塩は、抗プラスミン作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用が知られた安全性の高い薬物であり、その効能・効果は、全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向(白血病、再生不良性貧血、紫斑病等及び手術中・術後の異常出血);局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血(肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血);湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹における紅斑・腫脹・そう痒等の症状;扁桃炎、咽喉頭炎における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状;口内炎における口内痛及び口内粘膜アフターである(財団法人日本医薬情報センター編 医療薬 日本医薬品集 2002(第25版) 株式会社じほう 1369頁;DRUGS IN JAPAN ETHICAL DRUGS 2002(25th ed.) Edited by JAPAN PHARMACEUTICAL INFORMATION CENTER TOKYO JAPAN)。上記の作用や効能・効果以外にトラネキサム酸又はその塩が色素沈着症の治療薬となり得ることも知られている(特開平4−243825号公報)。しかしながら、トラネキサム酸又はその塩が、抗インフルエンザウイルス作用を有することは知られていない。 A型インフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬として、塩酸アマンタジン(amantadine hydrochloride)が知られているが、このものは抗パーキンソン剤としても用いられるものであり、慎重に投与しなければならないものである。また、塩酸アマンタジンは、A型インフルエンザウイルス感染症以外には効果がない。 本発明の目的は新たな抗インフルエンザウイルス剤並びにインフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療剤を提供することにある。 かかる実状に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行った結果、トラネキサム酸又はその塩が抗インフルエンザウイルス作用を有することを新たに見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、トラネキサム酸又はその塩を含有する抗インフルエンザウイルス剤並びにインフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療剤を提供するものである。 また、本発明は、トラネキサム酸又はその塩、及び薬学的に許容される担体を含有するインフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用医薬組成物を提供するものである。 また、本発明は、トラネキサム酸又はその塩の有効量を投与することを特徴とするインフルエンザウイルス感染症に対する処置方法を提供するものである。 さらに本発明は、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療剤製造のためのトラネキサム酸又はその塩の使用を提供するものである。 トラネキサム酸又はその塩は、抗インフルエンザウイルス作用を示し、抗インフルエンザウイルス剤、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療剤として有用なものである。また、トラネキサム酸又はその塩は、A型インフルエンザウイルスのみならず、B型インフルエンザウイルスにも効果を示すものであり、極めて有用なものである。 図1は、インフルエンザウイルスA/WSN/33(H1N1)の増殖に対するトラネキサム酸の影響を示す図である。 図2は、インフルエンザウイルスA/WSN/33(H1N1)が感染した細胞の生存率に対するトラネキサム酸の影響を示す図である。 図3は、インフルエンザウイルスA/Guizhou/54/89(H3N2)の増殖に対するトラネキサム酸の影響を示す図である。 図4は、インフルエンザウイルスA/Guizhou/54/89(H3N2)が感染した細胞の生存率に対するトラネキサム酸の影響を示す図である。 図5は、インフルエンザウイルスB/茨城/2/85の増殖に対するトラネキサム酸の影響を示す図である。 図6は、インフルエンザウイルスB/茨城/2/85が感染した細胞の生存率に対するトラネキサム酸の影響を示す図である。 図7は、インフルエンザウイスルA/PR/8/34下気道感染マウスの生存率に対するトラネキサム酸の影響を示す図である。 図8は、インフルエンザウイスルA/PR/8/34下気道感染マウスの生存率に対する塩酸アマンタジンの影響を示す図である。 本発明にかかるトラネキサム酸(トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸)又はその塩は、公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することも可能である。トラネキサム酸の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。本発明において、トラネキサム酸又はその塩としては、トラネキサム酸が好ましい。 本発明の抗インフルエンザウイルス剤、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療剤は、インフルエンザウイルスに感染した患者、または感染する(した)恐れのある者に投与するものである。一般に、感染患者は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、痰、悪寒、発熱、頭痛、咽頭痛等の症状を示すので、本発明の抗インフルエンザウイルス剤のほかに、対症療法薬をあわせて投与(併用)してもよい。また、併用するだけでなく、本発明の抗インフルエンザウイルス剤に配合して合剤(組成物)とすることも可能である。 本発明において、本発明の抗インフルエンザウイルス剤のほかにあわせて投与可能な対症療法薬としては、アスピリン、アスピリンアルミニウム、サザピリン、エテンザミド、サリチルアミド、イブプロフェン、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン等の解熱鎮痛薬;カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等の中枢神経興奮薬;ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素等の鎮静剤;マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸カルビノキサミン、メキタジン、酒石酸アリメマジン、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸トリプロリジン等の抗ヒスタミン薬;塩化リゾチーム、ブロメライン、セラペプターゼ、セミアルカリプロティナーゼ、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム等の抗炎症薬;リン酸ジヒドロコデイン、リン酸コデイン、塩酸ノスカピン、ノスカピン、臭化水素酸デキストロメトルファン、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩、リン酸ジメモルファン、ヒベンズ酸チペピジン、クエン酸チペピジン、塩酸エプラジノン、メチルエフェドリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン等の鎮咳薬;塩酸L−エチルシステイン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾール酸カリウム、グアイフェネシン、塩酸ブロムヘキシン、カルボシステイン等の去痰薬;テオフィリン、アミノフィリン、ジプロフィリン等の気管支拡張薬;ベラドンナ(総)アルカロイド、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、臭化水素酸スコポラミン、ロートエキス、臭化ブチルスコポラミン、臭化メチルベナクチジウム、臭化チメピジウム、ピレンゼピン等の抗アセチルコリン剤;セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、ポピドンヨード、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、チモール、ヨウ素・ヨウ化カリウム、フェノール、塩酸クロルヘキシジン、クレオソート、塩化ベンゼトニウム等の殺菌消毒剤;塩酸ジブカイン、アミノ安息香酸エチル、リドカイン、塩酸リドカイン、オキセサゼイン等の局所麻酔剤;ビタミンA、肝油、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、アスコルビン酸カルシウム、ビタミンD、ビタミンE、コハク酸トコフェロールカルシウム等のビタミン剤;パントテン酸、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム、パンテチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、グルクロン酸、グルクロノラクトン、アミノエチルスルホン酸、ビオチン、γ−オリザノール等の代謝性成分;地黄、ケイヒ、ゴオウ、ショウキョウ、キキョウ、マオウ、カンゾウ、キョウニン、ハンゲ、シャゼンソウ、セネガ、サイコ、ブクリョウ、シンイ等の生薬およびこれら生薬の抽出物(エキス、チンキ等)等を挙げることができるが、上記のもののみに限定されるべきものではない。対症療法薬は、単一成分を配合してもよく、2種以上のものを組み合わせて併用、配合してもよい。 本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、経口または非経口的に投与することができる。経口的に投与する製剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、液剤、トローチ剤、ゼリー剤等を挙げることができる。また、非経口的に投与する製剤としては、注射剤、硬膏剤、酒精剤、エキス剤、座剤、懸濁剤、チンキ剤、軟膏剤、パップ剤、点鼻剤、吸入剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤等を挙げることができる。また、本発明の抗インフルエンザウイルス剤をうがい薬、のどスプレーや洗口液等に配合してもよい。本発明においては、経口投与製剤が好ましく、特に錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、トローチ剤、ゼリー剤等の固形製剤が好ましい。 これらの製剤は当業者に公知慣用の製剤方法により製造でき、またこのような種々の剤形の医薬製剤を調製するには、他の薬学的に許容される担体を所望に応じて添加することが可能である。担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、乳化剤、安定化剤等を挙げることができる。 インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型の3種類に大別される。本発明においては、A型およびB型のインフルエンザウイルスを対象とすることが好ましい。 本発明の抗インフルエンザウイルス剤の患者への投与量は、患者の性別、年齢、症状、投与方法、投与回数、投与時期等により異なるが、例えば、経口投与の場合、1日当たりトラネキサム酸又はその塩を10〜3000mg投与することが好ましく、好ましくは400〜750mg投与することが好ましい。また、本発明の抗インフルエンザウイルス剤を点鼻剤として投与する場合、製剤中のトラネキサム酸またはその塩の濃度を0.1〜5.0w/w%、好ましくは1.0〜3.0w/w%として製したものを、1日1〜10回程度、より好ましくは3〜6回、点鼻するのが好ましい。本発明の抗インフルエンザウイルス剤を吸入剤として投与する場合、製剤中のトラネキサム酸またはその塩の濃度を0.05〜5.0w/w%、好ましくは0.5〜2.0w/w%として製したものを、1日1〜5回程度、より好ましくは数回、吸入するのが好ましい。 以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるべきものではない。1.抗インフルエンザウイルス試験(in vitro)1−1.インフルエンザウイルスの作製 培養したMadin−Darby canine kidney(MDCK)細胞に発育鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスA/WSN/33(H1N1)、インフルエンザウイルスA/Guizhou/54/89(H3N2)、インフルエンザウイルスB/茨城/2/85をプロテアーゼ非存在下で感染させ、37℃で5%CO2条件下、細胞変性効果(cytopathic effect)が見られるまで(3〜4日間)培養した。培養上清を回収し、遠心分離後(2500rpm、20分)、上清をインフルエンザウイルス懸濁液とした。得られたインフルエンザウイルス懸濁液はトリプシン存在下でMDCK細胞に対する感染価を測定し、トリプシン存在下と非存在下で感染価に差の見られるインフルエンザウイルスが得られるまでMDCK細胞で増殖を繰り返した。1−2.トラネキサム酸の抗インフルエンザウイルス活性の検討 前項で得られたインフルエンザウイルスを、トリプシン(3μg/ml、シグマ社製)存在下でMDCK細胞に感染させ、トラネキサム酸を添加後(終濃度0.39〜100μg/ml)、37℃で3〜4日間培養し、培養上清中のインフルエンザウイルス量をシアリダーゼ活性で測定し、細胞の生存率をMTT法で測定した。陽性対照として、コンプリートTMミニ(ロシュ・ダイアグノステックス社製)を用いた。1−3.結果 各インフルエンザウイスルに対する結果を図1〜6に示す。図1および図2は、インフルエンザウイルスA/WSN/33(H1N1)に関する結果を、図3および図4は、インフルエンザウイルスA/Guizhou/54/89(H3N2)に関する結果を、図5および図6は、インフルエンザウイルスB/茨城/2/85に関する結果を示す。図中のMiniはコンプリートTMミニを意味する。 その結果、トラネキサム酸又はその塩は、抗インフルエンザウィルス作用を示すことが確認された。2.抗インフルエンザウイルス試験(in vivo)2−1.方法 マウス馴化インフルエンザウイルスA/PR/8/34原液(50%マウス致死量(LD50)=104.83/20μl)を0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で104.5倍に希釈し、ウイルス希釈液を調製した。7週齢の雌性BALB/cマウスをアモバルビタールナトリウム溶液(11mg/ml生理食塩水)0.25mlの腹腔内投与により麻酔し、ウイルス希釈液20μlを経鼻接種させ、ウイルスに感染させた(n=8〜9)。 ウイルス接種1時間前、1日後、2日後、3日後、4日後および5日後に各1回トラネキサム酸の投与量が10mg/kgまたは100mg/kgとなるように経口ゾンデを用いてマウスの胃内に強制投与した。同様に、コントロールとしてトラネキサム酸の代わりに水を投与し、陽性対照群として塩酸アマンタジンを投与量が10mg/kgまたは100mg/kgとなるように投与した。 ウイルス接種後21日間、マウスの生存率を観察し、コントロール群との比較によりトラネキサム酸のin vivo抗インフルエンザウイルス活性を評価した。2−2.結果 水を経口投与したコントロール群のマウスはウイルス接種8日目から死亡し始め、14日目から21日目までの生存率は22%であった。これに対し、トラネキサム酸10mg/kgを投与したマウスは9日目から21日目までの生存率は50%であり、コントロール群と比べ、生存率の上昇および生存日数の延長が認められた。また、トラネキサム酸100mg/kgを投与したマウスは8日目から21日目までの生存率が62.5%であり、コントロール群と比べ、生存率の上昇および生存日数の延長が認められた。塩酸アマンタジン10mg/kgを投与したマウスは12日目から21日目までの生存率が44%であり、コントロール群と比べ、生存率の上昇および生存日数の延長が認められた。塩酸アマンタジン100mg/kgを投与したマウスは11日目から16日目までの生存率が67%であり、21日目においても56%のマウスが生存しており、コントロール群と比べ、生存率の上昇および生存日数の延長が認められた(図7および図8)。各投与群における平均生存日数は、コントロール群は12.9日であり、トラネキサム酸10mg/kg投与群は14.9日であり、トラネキサム酸100mg/kg投与群は16.5日であり、塩酸アマンタジン10mg/kg投与群は15.3日であり、塩酸アマンタジン100mg/kg投与群は16.5日であった。 これらの結果から、トラネキサム酸は経口投与において抗インフルエンザウイルス活性を示すことが明らかとなった。 トラネキサム酸を含有する抗インフルエンザウイルス剤。 インフルエンザウイルスがA型またはB型である請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤。 インフルエンザウイルスがA型である請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤。 インフルエンザウイルスが、H1N1型のA型である請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤。


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