タイトル: | 特許公報(B2)_イオン性液体酸化オスミウム |
出願番号: | 2004524097 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07B 33/00,C01G 55/00,C07C 29/05,C07C 29/48,C07C 31/20,C07C 33/26,C07C 33/36,C07C 35/21,C07D 233/02,C07D 295/22 |
竹本 佳司 柳田 玲子 JP 4214997 特許公報(B2) 20081114 2004524097 20030129 イオン性液体酸化オスミウム 和光純薬工業株式会社 000252300 竹本 佳司 柳田 玲子 JP 2002217728 20020726 20090128 C07B 33/00 20060101AFI20090108BHJP C01G 55/00 20060101ALI20090108BHJP C07C 29/05 20060101ALI20090108BHJP C07C 29/48 20060101ALI20090108BHJP C07C 31/20 20060101ALI20090108BHJP C07C 33/26 20060101ALI20090108BHJP C07C 33/36 20060101ALI20090108BHJP C07C 35/21 20060101ALI20090108BHJP C07D 233/02 20060101ALN20090108BHJP C07D 295/22 20060101ALN20090108BHJP JPC07B33/00C01G55/00C07C29/05C07C29/48C07C31/20C07C33/26C07C33/36C07C35/21C07D233/02C07D295/22 Z C07B 33/00 C01G 55/00 C07C 29/05 C07C 29/48 C07C 31/20 C07C 33/26 C07C 33/36 C07C 35/21 C07D 233/02 C07D 295/22 C09K 3/00 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平11−314038(JP,A) 国際公開第02/34722(WO,A1) Organic Letters,2002年 6月27日,Vol.4, No.13,p.2197-p.2199 11 JP2003000824 20030129 WO2004011399 20040205 14 20051115 特許法第30条第1項適用 平成14年2月1日日本薬学会第122年会インターネット掲載の要旨に発表 特許法第30条第1項適用 平成14年3月5日日本薬学会第122年会要旨集に発表 特許法第30条第1項適用 平成14年3月28日日本薬学会第122年会ポスターにて発表 藤森 知郎 本発明は、回収及び再使用を可能とする、新規な、特定のイオン性液体に溶解された酸化オスミウム(以下、イオン性液体酸化オスミウムと略記する。)に関するものである。 技術背景 酸化オスミウムのうち、単独で確実に存在するものは、4価及び8価のオスミウムの酸化物であるとされているが、2価、3価及び6価のオスミウム酸化物の存在も考えられる。 8価の酸化オスミウムは、通常「四酸化オスミウム」や、水溶液の場合では「オスミウム酸」と呼ばれており、強い酸化力を有することから例えばオレフィンのジオール化(ジヒドロキシル化)反応等の有機合成反応に於いて優れた酸化剤或いは触媒として知られている。しかしその一方で、四酸化オスミウムは、昇華性を有しており、しかもその蒸気は目の粘膜を侵したり呼吸器全般に悪影響を及ぼす等、非常に毒性が高いこともよく知られている。 従って、四酸化オスミウムを工業的に使用するには問題が多く、従来では貴重な物質を少量酸化する際の酸化剤として使用されるに過ぎなかった。 これらの問題を解決するために、四酸化オスミウムをポリマーに担持させる方法(例えば特表平4−505884号公報等。)が研究されたが、例えばポリマーに担持された四酸化オスミウムが徐々に分解されてしまう(Journal of Molecular Catalysis A:Chemicalの120巻(1997)p.203右欄)、四酸化オスミウムを担持させたポリマーの製造が容易でない等の問題点を有していた。 一方、近年、四酸化オスミウムを用いたジヒドロキシル化反応に於いて、光学活性な配位子を併用すると、光学活性な化合物が得られることが報告されている(Catalytic asymmetric synthesis,ed.By I.Ojima,VHC publisher,New York,p.227−272(1993)、Chem.Rev.,94,p.2483−2547(1994)等。)が、これらの不斉酸化に用いられている四酸化オスミウムは、ポリマー等に担持させることなくそのまま用いられているため、取り扱い等の安全性の問題からその回収及び再使用は困難である。 また、光学活性な配位子をポリマーに導入し、それら四酸化オスミウムに配位させた高分子錯体及びそれらを用いた不斉酸化反応が報告されている(Eur.J.Org.Chem.,p.21−27(1998)等。)が、光学活性な配位子を導入したポリマー自体の製造が容易ではないことや、このようなポリマーを更に四酸化オスミウムと反応させる必要があることから、ここで得られる四酸化オスミウム化合物には製造上の問題が多く残っている。また、この方法では配位子に配位した四酸化オスミウムが反応の過程等で徐々に脱離していくため、繰り返し使用できないという問題点も有している。 更に、このように毒性が強く取り扱いが容易でない四酸化オスミウムをポリスチレン等のオレフィン系高分子化合物を用いてマイクロカプセル化することによってその取り扱いを容易にし、且つ該酸化オスミウムの耐溶剤性を増加させることが試みられた(特開平11−314038号)。しかし、このようなマイクロカプセル化四酸化オスミウムは煩雑なマイクロカプセル化操作を要するという問題を有していた。また、マイクロカプセル化四酸化オスミウムは、耐溶剤性の改良により、芳香族オレフィンの不斉ジヒドロキシル化反応にも使用可能になったが、高度に不斉を制御するために基質を徐々に反応させる必要があった。 一方、イオン性液体は、一般に安定な不揮発性の液体であり、広い温度範囲で液体として存在するものが多く、水や有機溶媒には溶解しないが有機金属化合物の溶解能に優れていることが知られている。この性質を利用して、イオン性液体に各種金属触媒を溶解させ、反応基質を加えることにより各種反応を行えば、反応生成物を例えばエーテル等で抽出除去した後のイオン性液体中には、金属触媒が保持されるので、再度反応基質を反応系に加えることにより繰り返し同じ反応を進行させることが可能である。 イオン性液体と金属触媒を用いて各種反応を行う方法として、例えばイオン性液体に8〜10族の遷移金属錯体、特にルテニウム、ロジウム及びイリジウム錯体を溶解させた触媒組成物とこれを用いて不飽和化合物を水素化する方法(例えば特開平9−937号、特開平9−2979等公報。)が試みられている。しかしながら、これらには金属触媒の例示として酸化オスミウムの記載は見当たらず、またこれを用いたオレフィンの酸化方法についての記載もされていなかった。 更に、Organic Letters,Vol.4,No.13(2002),p.2197−2199には、イオン性液体(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート:[bmim]PF6)に四酸化オスミウムを溶解させ、更にジメチルアミノピリジン(DMAP)を添加した反応系に於いて、オレフィンをジヒドロキシル化する方法が試みられている。 このような状況下、取り扱いが簡便であり、工業的規模での使用が可能であり、且つ回収及び再使用が可能な、イオン性液体を用いた酸化オスミウムの試薬の更なる開発が望まれている。 本発明は、上記課題を解決する目的でなされたものであり、(1)一般式[1](式中、R1及びR2は夫々独立して炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示される化合物を含んでなる溶液に溶解された酸化オスミウム、(2)該酸化オスミウムからなる酸化剤、及び(3)反応性二重結合を有する化合物に該酸化剤及び共酸化剤を作用させることを特徴とするジオール化合物の製造方法、の発明である。 即ち、発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、四酸化オスミウムを一般式[1]で示される化合物を含んでなる溶液に溶解させることによりその昇華性や毒性を低減させ、また反応系に於ける回収、再使用を可能にし得ることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明の酸化オスミウムとしては、通常四酸化オスミウムが用いられるが、これ以外の例えば二酸化オスミウム等であってもよい。 一般式[1]に於いて、R1及びR2で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、通常炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜2のものが挙げられ、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等が挙げられ、中でも、例えばメチル基、エチル基、ブチル基等が好ましく、就中、例えばメチル基、エチル基等がより好ましい。 また、R1及びR2は、一方がメチル基であるもの、更に他方がエチル基であるものが好ましい。 一般式[1]で示される化合物の好ましい具体例としては、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(EMI・BF4)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、1,3−ジメチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、1,3−ジエチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート等が挙げられ、中でも1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレートが好ましい。 本発明の一般式[1]で示される化合物を含んでなる溶液に溶解された酸化オスミウムは、一般式[1]で示される化合物を含んでなる溶液に例えば四酸化オスミウム等の酸化オスミウムを添加することにより容易に得られる。 一般式[1]で示される化合物を含んでなる溶液(以下、本発明のイオン性液体と略記する。)としては、一般式[1]で示される化合物のみからなるものが好ましいが、有機溶媒等が混在しているものでもよい。 有機溶媒としては、一般式[1]で示される化合物と均一に混ざり合う溶媒であって、当該化合物とこの有機溶媒との混合溶媒に酸化オスミウムが溶解し得るものであれば特に限定されない。これら有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。 本発明のイオン性液体に含まれていてもよい有機溶媒の使用量は、本発明のイオン性液体に対して、通常0.01〜1000倍重量、好ましくは0.1〜10倍重量、より好ましくは1〜5倍重量である。 本発明のイオン性液体の使用量は、四酸化オスミウムに対して、通常1〜100000倍重量、好ましくは10〜10000倍重量、より好ましくは50〜1000倍重量である。 本発明のイオン性液体に溶解された酸化オスミウムは、種々の反応触媒として有用であるだけでなく、不揮発性のイオン性液体中に溶解されていることから、酸化オスミウムが有する毒性や特有の臭気等に格別の配慮をすることなく効率よく処理することが可能である。また、使用後の酸化オスミウムはイオン性液体中に保持されるため、定量的に回収し、再利用することが可能である。 このような優れた特徴を有することから、本発明の一般式[1]で示される化合物を含んでなる溶液に溶解された酸化オスミウム(以下、イオン性液体酸化オスミウムと略記する。)は、種々の化学反応の触媒として効率よく使用し得る。中でも、反応性二重結合を有する化合物をジヒドロキシル化する際の酸化触媒乃至酸化剤として特に有効に利用し得る。 本発明のイオン性液体酸化オスミウムを反応性二重結合と作用させると、反応活性を有する二重結合部分が開裂し、二つの水酸基が導入され、対応するジヒドロキシル化合物が形成される。 反応性二重結合を有する化合物としては、反応性二重結合を有するものであれば特に限定されないが、例えばオレフィン、ジエン化合物、不飽和環式炭化水素化合物はもちろんのこと、分子内に反応性二重結合を1個以上有するものであれば、高分子化合物でも、如何なる官能基及び/又は芳香環を置換基として有しているものでもよい。 反応性二重結合を有する化合物の一例としてオレフィンを取り上げ、本発明の酸化剤を用いた該オレフィンのジヒドロキシル化を説明する。 例えば、本発明の四酸化オスミウムが溶解された一般式[1]で示される化合物と要すれば適当な溶媒を添加したものに、一般式[2](式中、R3〜R6は夫々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び複素環基を表す。また、R3とR5が互いに結合し、隣接する−C=C−と一緒になって脂肪族環を形成していてもよい。)で示されるオレフィン化合物及び要すれば共酸化剤を加えて反応させることにより、下記一般式[3](式中、R3〜R6及びその他の定義は前記に同じ。)で示されるジヒドロキシル化合物が得られる。 一般式[2]及び[3]に於いて、R3〜R6で示されるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、ネオヘプチル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、ネオオクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、ネオノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、ネオデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、sec−ウンデシル基、tert−ウンデシル基、ネオウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、sec−ドデシル基、tert−ドデシル基、ネオドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、sec−トリデシル基、tert−トリデシル基、ネオトリデシル基、n−テトラデシル基、イソテトラデシル基、sec−テトラデシル基、tert−テトラデシル基、ネオテトラデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、sec−ペンタデシル基、tert−ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、sec−ヘキサデシル基、tert−ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、sec−ヘプタデシル基、tert−ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、n−オクタデシル基、イソオクタデシル基、sec−オクタデシル基、tert−オクタデシル基、ネオオクタデシル基、n−ノナデシル基、イソノナデシル基、sec−ノナデシル基、tert−ノナデシル基、ネオノナデシル基、n−イコシル基、イソイコシル基、sec−イコシル基、tert−イコシル基、ネオイコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロイコシル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基等が好ましい。 アリール基としては、通常炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。 アラルキル基としては、通常炭素数7〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。 複素環基としては、例えば窒素原子、硫黄原子、酸素原子等のヘテロ原子を1つ以上、好ましくは1〜3個有するものが挙げられ、単環でも二環でもよく、具体的には、例えばチエニル基、ピリジル基、フリル基等が挙げられる。 R3とR5が互いに結合し、隣接する−C=C−と一緒になって脂肪族環を形成している場合としては、単環でも多環でもよく、通常炭素数4〜10、好ましくは炭素数5〜7、より好ましくは炭素数6の不飽和脂肪族環を形成している場合が挙げられる。これらの環の具体例としては、例えばシクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロオクテン環、シクロデセン環等が挙げられ、中でもシクロヘキセン環が好ましい。 尚、R3〜R6で示されるアルキル基、アリール基、アラルキル基及び複素環基は、更にジヒドロキシル化反応に影響を与えない置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。 本発明の一般式[1]で示される化合物に添加される適当な溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の飽和炭化水素類、例えばシクロヘキサン等の飽和環状炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上適宜組み合わせて用いてもよく、目的の反応を1層系で行うか或いは2層系若しくは3層系で行うかによって適宜選択される。 添加される溶媒の使用量は、通常0.01〜1000倍重量、好ましくは0.1〜10倍重量、より好ましくは1〜5倍重量である。 本発明のイオン性液体の使用量は、当該溶液中の酸化オスミウム量が四酸化オスミウムとして、使用されるオレフィンに対して通常0.0001〜50倍モル、好ましくは0.001〜10倍モル、より好ましくは0.005〜2倍モルとなる量である。 反応溶媒の使用量は、使用されるオレフィンに対して通常0.1〜300倍重量、好ましくは1〜100倍重量、より好ましくは1〜50倍重量である。 共酸化剤としては、例えば4−メチルモルホリン−N−オキシド又はその1水和物、トリメチルアミン−N−オキシド、トリエチルアミン−N−オキシド、ピリジン−N−オキシド、α−ピコリン−N−オキシド、β−ピコリン−N−オキシド、γ−ピコリン−N−オキシド等のN−オキシド類、例えば過酸化水素、ペルオキソ炭酸塩、tert−ブチルヒドロパーオキシド、アセチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーアセテート、tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、過ヨウ素酸カリウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、メタクロロ過安息香酸等の過酸化物、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸アンモニウム等の次亜塩素酸塩、フェリシアン化カリウム、酸素(空気中の酸素も含む)等が挙げられ、中でも、4−メチルモルホリン−N−オキシド若しくはその1水和物、過酸化水素、ペルオキソ炭酸塩又はtert−ブチルヒドロパーオキシドが好ましく、就中、4−メチルモルホリン−N−オキシド1水和物がより好ましい。 共酸化剤の使用量は、原料オレフィンに対して通常1〜50倍モル、好ましくは1〜10倍モルである。 上記ジヒドロキシル化反応に於いて、要すれば塩基性化合物を添加してもよく、その具体例としては、例えば水酸化トリエチルアンモニウム等が挙げられる。 塩基性化合物の使用量は、原料オレフィンに対して通常0.001〜10倍モル、好ましくは0.01〜2倍モルである。 反応時間は、通常5分〜72時間、好ましくは1分〜48時間、より好ましくは1〜20時間である。 反応温度は、通常−78〜200℃、好ましくは−20〜100℃、より好ましくは0〜50℃である。 得られたジヒドロキシル化合物は、常法に従って適宜分取すればよく、例えばそれが析出物である場合は、反応液、即ち本発明のイオン性液体からこれを濾別することにより、また、それが析出物でない場合は、反応液に例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、例えばクロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素、塩化メチレン等をハロゲン化炭化水素類等の有機溶媒を添加してヒドロキシル化合物を抽出することにより取得すればよい。 特に、一般式[2]で示されるオレフィンが、反応性二重結合部分を中心にR3とR4とが、及びR5とR6とが夫々互いに異なる基である非対称オレフィン、又はトランス体の対称オレフィンである場合、本発明のイオン性液体酸化オスミウム(酸化剤)と適当な非対称オレフィン若しくはトランス体の対称オレフィンとを添加し、これに、不斉ジヒドロキシル化反応を行うのに適した不斉配位子、更に適当な共酸化剤を添加し、更に要すれば適当な塩基を添加して反応させ、次いで常法により後処理することにより、目的とする不斉ジヒドロキシル化合物が得られる。 不斉配位子としては、例えばヒドロキニジン アントラキノン−1,4−ジイル ジエーテル〔(DHQD)2AQN〕、ヒドロキニン アントラキノン−1,4−ジイル ジエーテル〔(DHQ)2AQN〕、ヒドロキニジン 2,5−ジフェニル−4,6−ピリミジンジイル ジエーテル〔(DHQD)2PYR〕、ヒドロキニン 2,5−ジフェニル−4,6−ピリミジンジイル ジエーテル〔(DHQ)2PYR〕、ヒドロキニジン 1,4−フタラジンジイル ジエーテル〔(DHQD)2PHAL〕、ヒドロキニン 1,4−フタラジンジイル ジエーテル〔(DHQ)2PHAL〕、ジヒドロキニジン、ジヒドロシンコニジン、ジヒドロキニン、ジヒドロシンコニン、ジヒドロキニーネ等が挙げられる。 不斉配位子の使用量は、オレフィンに対して通常0.0001〜50倍モル、好ましくは0.001〜10倍モル、より好ましくは0.001〜2倍モルである。 要すれば添加される塩基としては、例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えばピリジン等の有機塩基等が挙げられ、その使用量は、オレフィンに対して通常0.001〜5倍モル、好ましくは0.005〜3倍モルである。 尚、上記反応に於いて用いられる、不斉配位子、共酸化剤等は、前記に例示したものの中から適宜選択して用いればよいが、共酸化剤としては、4−メチルモルホリン 4−オキシド若しくはその1水和物が特に好ましい。 また、反応溶媒としては、本発明のイオン性液体と水又は/及び有機溶媒との混合溶媒が挙げられるが、その具体例は上記した如きオレフィンのジヒドロキシル化反応に於いて挙げられた有機溶媒と同様のものが挙げられる。 その他各試薬の使用量、反応時間及び反応温度等は上記した如きオレフィンのジヒドロキシル化反応に準じて適宜設定すればよい。 本発明のイオン性液体酸化オスミウムは、本発明のイオン性液体に溶解させることにより得られるため、これを用いてオレフィンのヒドロキシル化反応を行えば、従来法が有していた、例えばヒドロキシル化反応に付す前に、煩雑な酸化オスミウムへのポリマーの担持処理やポリマーによるマイクロカプセル化処理等の前処理が必要となる、またこれら担持ポリマーの製造及び取り扱いが困難である等の問題点を有することなく、容易にジヒドロキシル化反応を行うことが可能である。 また、本発明のイオン性液体酸化オスミウムは、反応生成物を適宜濾別した後、残りの反応液、即ち本発明のイオン性液体中に保持されており、且つ共酸化剤を併用すればその活性は低下することなく反応触媒として繰り返し使用することが可能である。 更に、本発明のイオン性液体酸化オスミウムは、不斉ジヒドロキシル化反応を行う際に、従来法が有している、例えば取り扱い等の安全性の問題、高度に不斉を制御するために基質を徐々にしか添加反応できない、また工業的規模での反応は困難である等の問題点を有することなく、基質を一度に添加しても目的の光学活性ジヒドロキシル化合物を高収率、高光学収率で得ることが可能である。 以上、実施例及び参考例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。 実施例1. 1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオールの合成 1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(EMI・BF4)2ml中に、四酸化オスミウム0.025g(5.0mol%)を溶解させ、次いでN−メチルモルホリン1水和物(NMO・H2O)0.297g(2.2mmol)と少量の酢酸エチルに溶解させたスチルベン0.36g(2mmol)を添加した後、減圧下酢酸エチルを留去し、室温で18時間撹拌反応させた。反応終了後、反応液に酢酸エチル15mlを添加し撹拌した後、これを静置させ酢酸エチル層を分取した。この操作を4回繰り返し、酢酸エチル層を合わせた。得られた酢酸エチル層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物である1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオール0.411gを白色粉末として得た〔収率96%:副生成物(ジフェニルジケトン)4%:原料回収0%〕。その結果を表1に示す。実施例2〜9. 1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオールの合成 実施例1で用いた溶媒(EMI・BF4)、共酸化剤(NMO・H2O)及び四酸化オスミウムの添加量が異なる以外は実施例1と同様の操作を行い、目的とする1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオールを得た。実施例2〜9の結果を表1に示す。 表1の結果から明らかなように、実施例1〜9を比較すると、溶媒としてEMI・BF4を、酸化剤として四酸化オスミウムを5.0mol%、共酸化剤としてNMO・H2Oを用いた場合(実施例1)に、目的とするジヒドロキシル化合物が収率良く得られることが分かった。実施例10.1,1−ジフェニルエタン−1,2−ジオールの合成 EMI・BF4 2ml中に、四酸化オスミウム0.025g(5.0mol%)を溶解させ、次いでNMO・H2O 0.297g(2.2mmol)及び1,1−ジフェニルエチレン0.36g(2mmol)を添加し、室温で18時間撹拌反応させた。反応終了後、反応液に酢酸エチル15mlを添加し撹拌した後、これを静置させ酢酸エチル層を分取した。この操作を4回繰り返し、酢酸エチル層を合わせた。得られた酢酸エチル層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物である1,1−ジフェニルエタン−1,2−ジオール0.428gを無色針状晶として得た〔収率100%:副生成物(ジフェニルケトン)0%:原料回収0%〕。その結果を表2に示す。実施例11〜21. 実施例10で用いた共酸化剤及び四酸化オスミウムの添加量が異なる以外は実施例10と同様の操作を行い、目的とする1,1−ジフェニルエタン−1,2−ジオールを得た。実施例11〜21の結果を表2に示す。参考例1. 1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート(EMI・PF6)2ml中に、四酸化オスミウム0.025g(5.0mol%)を溶解させ、次いでNMO・H2O 0.297g(2.2mmol)及び1,1−ジフェニルエチレン0.36g(2mmol)を添加し、70℃で20時間撹拌反応させた。反応終了後、反応液に酢酸エチル15mlを添加し撹拌した後、これを静置させ酢酸エチル層を分取した。この操作を4回繰り返し、酢酸エチル層を合わせた。得られた酢酸エチル層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したが、目的物である1,1−ジフェニルエタン−1,2−ジオールは得られなかった。その結果を表2に示す。 表2の結果から明らかなように、実施例10〜21を比較すると、溶媒としてEMI・BF4及びこれと塩基性化合物(Et4NOH)を、酸化剤として四酸化オスミウムを5.0mol%、及び共酸化剤としてNMO・H2Oを用いた場合(実施例10及び14)に、目的とするジヒドロキシル化合物が収率良く得られた。即ち、本発明のイオン性液体酸化オスミウムでは、塩基性化合物は添加してもしなくてもヒドロキシル化合物が収率良く得られることが分かる。 また、実施例10及び参考例1を比較すると、溶媒としてEMI・PF6を用いた場合は、目的とするジヒドロキシル化合物が得られないこと、即ち、言い換えれば、イオン性液体の種類によっては目的のジオール反応が起こらないことが分かった。実施例22. 繰り返し使用実験の検討 本発明のイオン性液体酸化オスミウム(EMI・BF4−OsO4)を用いて実施例10と同様の反応を行って、目的物である1,1−ジフェニルエタン−1,2−ジオールを得た後、残ったEMI・BF4−OsO4層を回収し、再び同じ反応を4回繰り返し行った。その結果を表3に示す。 表3の結果から明らかなように、本発明のイオン性液体四酸化オスミウムは、共酸化剤を用いることにより酸化触媒として繰り返し使用してもその活性が失われないことが分かった。実施例23〜28.各種オレフィンのジヒドロキシル化反応 各種オレフィンを、EMI・BF4中に四酸化オスミウム5mol%及びNMO・H2O(1.2当量)を溶解させたもの使用して、室温で18時間反応させ、ジオール化を行った。その結果を表4に示す。 表4から明らかなように、各種1、2及び3置換オレフィンをジヒドロキシル化反応した場合、それぞれ良好な収率で対応するジヒドロキシル化合物が得られることが分かった。また、実施例28の結果から、不斉ジヒドロキシル化反応にも応用できることが分かった。 産業上の利用の可能性 本発明のイオン性液体酸化オスミウムは、従来法が有していた、例えば酸化反応に付す前に煩雑な四酸化オスミウムへの担持処理又はマイクロカプセル化処理が必要となる、取り扱い等の安全性の問題から回収及び再使用が難しい等の問題点を有することなく、安全且つ工業的規模での使用が可能であり、反応系での回収及び再使用を可能にし得る。 一般式[1](式中、R1及びR2は夫々独立して炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示される化合物を含んでなる溶液に溶解された酸化オスミウム。 R1がメチル基である、請求項1に記載の酸化オスミウム。 R2がエチル基である、請求項1に記載の酸化オスミウム。 請求項1に記載の酸化オスミウムからなる酸化剤。 反応性二重結合を有する化合物からの、対応するジオール化合物製造用である、請求項4に記載の酸化剤。 非対称オレフィン又はトランス体の対称オレフィンの不斉ジヒドロキシル化反応用である、請求項4に記載の酸化剤。 反応性二重結合を有する化合物に請求項4に記載の酸化剤及び共酸化剤を作用させることを特徴とする、ジオール化合物の製造方法。 反応性二重結合を有する化合物がオレフィンである、請求項7に記載の製造方法。 オレフィンが非対称オレフィン又はトランス体の対称オレフィンである、請求項8に記載の製造方法。 共酸化剤が4−メチルモルホリン−N−オキシド若しくはその1水和物、過酸化水素、ペルオキソ炭酸塩又はtert−ブチルヒドロパーオキシドである、請求項7に記載の製造方法。 共酸化剤が、4−メチルモルホリン−N−オキシド1水和物である、請求項7に記載の製造方法。