生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_グレリン含有医薬組成物
出願番号:2004505079
年次:2012
IPC分類:A61K 38/00,A61K 9/08,A61K 9/19,A61K 47/04,A61K 47/12,A61K 47/18,A61K 47/20,A61P 1/14,A61P 5/02,A61P 5/44,A61P 5/50,A61P 11/00,A61P 13/12,A61P 15/00,A61P 17/02,A61P 19/08,A61P 19/10,A61P 21/00,A61P 25/18,A61P 25/22,A61P 25/24,A61P 25/28,A61P 31/18,A61P 35/00,A61P 37/02


特許情報キャッシュ

寒川 賢治 南竹 義春 松本 大 JP 5000848 特許公報(B2) 20120525 2004505079 20030521 グレリン含有医薬組成物 第一三共株式会社 307010166 草間 攻 100083301 石橋 公樹 100146581 寒川 賢治 593081475 草間 攻 100083301 寒川 賢治 南竹 義春 松本 大 JP 2002146155 20020521 20120815 A61K 38/00 20060101AFI20120726BHJP A61K 9/08 20060101ALI20120726BHJP A61K 9/19 20060101ALI20120726BHJP A61K 47/04 20060101ALI20120726BHJP A61K 47/12 20060101ALI20120726BHJP A61K 47/18 20060101ALI20120726BHJP A61K 47/20 20060101ALI20120726BHJP A61P 1/14 20060101ALI20120726BHJP A61P 5/02 20060101ALI20120726BHJP A61P 5/44 20060101ALI20120726BHJP A61P 5/50 20060101ALI20120726BHJP A61P 11/00 20060101ALI20120726BHJP A61P 13/12 20060101ALI20120726BHJP A61P 15/00 20060101ALI20120726BHJP A61P 17/02 20060101ALI20120726BHJP A61P 19/08 20060101ALI20120726BHJP A61P 19/10 20060101ALI20120726BHJP A61P 21/00 20060101ALI20120726BHJP A61P 25/18 20060101ALI20120726BHJP A61P 25/22 20060101ALI20120726BHJP A61P 25/24 20060101ALI20120726BHJP A61P 25/28 20060101ALI20120726BHJP A61P 31/18 20060101ALI20120726BHJP A61P 35/00 20060101ALI20120726BHJP A61P 37/02 20060101ALI20120726BHJP JPA61K37/02A61K9/08A61K9/19A61K47/04A61K47/12A61K47/18A61K47/20A61P1/14A61P5/02A61P5/44A61P5/50A61P11/00A61P13/12A61P15/00A61P17/02A61P19/08A61P19/10A61P21/00A61P25/18A61P25/22A61P25/24A61P25/28A61P31/18A61P35/00A61P37/02 A61K38/,9/,47/ CAPlus,MEDLINE,EMBASE,BIOSIS(STN) 特表平6−510031(JP,A) 特表平9−502424(JP,A) 特開昭61−221125(JP,A) 特開平2−96533(JP,A) Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol,2001年,Vol.280, No.5,p.R1483−7 19 JP2003006349 20030521 WO2003097083 20031127 32 20060516 2010001763 20100127 内藤 伸一 大久保 元浩 田名部 拓也 技術分野本発明は、成長ホルモン分泌促進因子レセプター(GHS−R)に対する内因性成長ホルモン分泌促進因子(GHS)であるグレリンまたはグレリン誘導体を安定に含有する医薬組成物、及びグレリンまたはグレリン誘導体を溶解した水溶液中においてグレリンまたはグレリン誘導体の疎水性修飾構造の分解を抑制する方法に関する。背景技術グレリンは、オーファンレセプターの一つである成長ホルモン分泌促進因子レセプター(GHS−R)に対する内因性成長ホルモン分泌促進因子(GHS)であり、1999年にラットから最初に単離精製された生理活性ペプチドである(Kojimaら:Nature,402巻、656−660頁、1999年)。その後、ラット以外の脊椎動物、例えばヒト、マウス、ブタ、ニワトリ、ウナギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、カエル、ニジマス、イヌからも、類似した構造を有するグレリンが知られており、その構造式を第1表に示す。本ペプチドは、3位のセリン残基(S)あるいはスレオニン残基(T)の側鎖水酸基がオクタン酸、デカン酸などの脂肪酸によりアシル化された特異的な構造を有するペプチドであり、このような疎水性修飾構造を有する生理活性ペプチドは、グレリン以外に生体から単離された例はない。この新規ペプチドは、強力な成長ホルモン分泌促進活性を有し、成長ホルモン分泌の調節に機能することが解明されており、グレリンの生理活性的役割と、医薬品への適用に関して興味がもたれている(国際公開WO01/07475号公報)。グレリンは、分子中の疎水性修飾構造がその生理活性発現に必須であることが判明している(Kojimaら:Nature,402巻、656−660頁、1999年)が、特定の水酸基含有アミノ酸側鎖に脂肪酸修飾基が置換したペプチドがこれまで発見されていなかったことより、このペプチドを医薬品として開発する場合の安定性等に関しては、これまで一切検討がなされていない。ところで、医薬品として開発される化合物は様々な化学構造を有しているものであり、その化学構造によっては製剤化工程中、あるいは製剤化後の保存中に、種々の分解反応を受けることがある。この分解反応としては、化合物自体の加水分解、脱水、異性化、脱離、酸化、還元、光分解反応などに加え、化合物と共に配合される添加剤等との化学反応が挙げられる。したがって、それらの化学構造から分解反応の種類、その程度を検討、把握することは、医薬品の製剤開発過程、さらにはその後の品質確保において、極めて重要なものである。また一般に、医薬品の安定性は、その医薬品である薬物を含有する環境のpHに大きく支配されることが知られている。特に溶液状態においては、医薬品の分解速度に及ぼすpHの影響が古くから研究されており、既に、多くの薬物について、その分解速度のpHプロファイルが報告されている(吉岡澄江:「医薬品の安定性」、南光堂、1995年など)。医薬品のなかでも、生理活性ペプチドあるいは生理活性タンパク質は、消化管内のプロテアーゼによる分解で不活性化されることから、経口投与製剤としての開発は困難なものであり、そのほとんどが注射剤としての製剤形態で臨床的に供されている。そのため、生理活性ペプチドあるいは生理活性タンパク質の製剤化にあたっては、溶液型製剤あるいは用時溶解型製剤等の剤型の種類に関係なく、溶液中での安定性が、特に重要な要素となっている。現在、インスリン、成長ホルモン、カルシトニン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、LH−RH誘導体、副腎皮質刺激ホルモン誘導体などの種々のペプチドあるいはタンパク質製剤が、医薬品として販売されている。これらのペプチドあるいはタンパク質においてみられる化学的変化としては、脱アミド化、イソAsp化、断片化等の加水分解、ラセミ化、ジスルフィド生成・交換反応、β脱離、酸化反応などが報告されている。ペプチドあるいはタンパク質製剤の安定性に影響を与える上記化学的変化は、種々の要因に基づくものであるが、なかでも水溶液のpHにより分解反応が大きく左右される。例えば、LH−RH誘導体(Strickleyら:Pharm.Res.,7巻,530−536頁,1990年)、ヒト副甲状腺ホルモン(Nobuchiら:Pharm.Res.,14巻,1685−1690頁,1997年)、ヒルジン(トロンビン阻害剤)(Gietzら:Pharm.Res.,15巻,1456−1462頁,1998年)、ヒトアミリン誘導体(Hekmannら:Pharm.Res.,15巻,650−659頁,1998年)は、水溶液のpHに依存して、分解物の構造や生成量が異なることが報告されている。本発明が目的とするグレリンまたはグレリン誘導体も、生理活性ペプチドであるため、このものを医薬品として製剤化するにあたっては水溶液製剤とするのが一般的である。したがって、溶液状態での安定性に関する知見は、これら化合物の製剤化において重要な情報であるが、グレリンまたはグレリン誘導体については、その安定性についての検討は何らなされていない。特に、グレリンまたはグレリン誘導体は、特定の水酸基含有アミノ酸側鎖が脂肪酸により修飾された構造を有し、このような特異的な疎水性修飾構造を有するペプチドがこれまで発見されていなかったため、安定性に関しての一般的な知見もない。すなわち、グレリンの安定性に関する各種の情報、分解物の構造や、その生成機構については未知である。さらに、特異的な疎水性修飾構造の分解機構、また疎水性修飾構造の分解物からの二次的なグレリンの分解についても、全く知られていないのが現状である。したがって本発明は、特異的な疎水性修飾構造を有するグレリンまたはグレリン誘導体について、その化学的安定性の検討を行い、その結果得られる知見をもとに、グレリンまたはグレリン誘導体を含有する安定性に優れた医薬組成物を提供すること、およびグレリンまたはグレリン誘導体を溶解した水溶液中においてグレリンまたはグレリン誘導体の疎水性修飾構造の分解を抑制する方法を提供することを課題とする。かかる課題を解決するために、本発明者らはグレリンまたはグレリン誘導体の水溶液の安定性に及ぼすpHの影響、その分解物の構造について詳細に検討を行った。その結果、グレリンは、その特異的な疎水性修飾基が加水分解により脱離してデスアシル体が生成すること、またその一方で、疎水性修飾基がβ脱離してデヒドロアラニン体が生成すること、さらに、このデヒドロアラニン体は不安定であり、更なる二次分解物等が生成すること、また、これらの分解は、その水溶液のpHに大きく影響されることを見出した。さらに、これらグレリンの分解機構の解析結果を基にして、グレリンを含有する水溶液のpHを、pH調節剤または緩衝剤を添加して制御することによりグレリンを安定に含有する医薬品組成物が得られることを見出した。また、pHを調節する緩衝成分の種類や濃度、さらにはグレリンの濃度等について種々の検討を行い、緩衝剤添加による水溶液の安定化効果は、その緩衝成分の種類や、濃度、さらにはグレリンの濃度等に大きく依存せず、種々の緩衝剤に適用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。発明の開示したがって本発明の基本的態様は、グレリンまたはグレリン誘導体およびこれらの塩(以下、「グレリン類」と記す)を溶解した水溶液のpHが2〜7の範囲にあることを特徴とする水溶液からなるグレリン類を安定に含有する医薬組成物である。本発明の具体的態様を以下に示す。(1)グレリン類を溶解した水溶液のpHが2〜7の範囲にあることを特徴とする水溶液からなるグレリン類を含有する医薬組成物。(2)pHが3〜6である上記(1)に記載の医薬組成物。(3)pH調節剤または緩衝剤を添加した上記(1)または(2)に記載の医薬組成物。(4)塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、重炭酸、グルコン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、クエン酸、モノエタノールアミン、乳酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、またはこれらの塩からなる群の一つまたはそれ以上をpH調節剤として含む上記(3)に記載の医薬組成物。(5)グリシン、酢酸、クエン酸、ホウ酸、フタル酸、リン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、炭酸、塩酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの塩からなる群の一つまたはそれ以上を緩衝剤として含む上記(3)に記載の医薬組成物。(6)水溶液中のpH調節剤または緩衝剤の濃度が0.01〜1000mMである上記(3)ないし(5)の何れか一項に記載の医薬組成物。(7)水溶液が緩衝液である上記(1)ないし(6)の何れか一項に記載の医薬組成物。(8)緩衝液が、グリシン塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、リン酸−酢酸−ホウ酸緩衝液またはフタル酸緩衝液である上記(7)に記載の医薬組成物。(9)水溶液中のグレリン類の濃度が、0.03nmol/mL〜6μmol/mLである上記(1)ないし(8)の何れか一項に記載の医薬組成物。(10)グレリン類が酢酸塩である上記(1)ないし(9)の何れか一項に記載の医薬組成物。(11)グレリン類がヒトグレリンである上記(1)ないし(11)の何れか一項に記載の医薬組成物。(12)吸着抑制剤を含有する上記(1)ないし(12)の何れか一項に記載の医薬組成物。(13)吸着抑制剤の濃度が0.001〜5%である上記(12)に記載の医薬組成物。(14)吸着抑制剤が界面活性剤である上記(12)または(13)に記載の医薬組成物。(15)上記(1)ないし(14)に記載の水溶液を乾燥して得られる粉末を含有することを特徴とするグレリン類を含有する医薬組成物。(16)乾燥して得られる粉末が、凍結乾燥して得られる粉末である上記(15)に記載の医薬組成物。(17)グレリン類を溶解した水溶液において、水溶液のpHを2〜7の範囲にすることを特徴とする、グレリン類の疎水性修飾構造の分解を抑制する方法。(18)pHが3〜6である上記(17)に記載の方法。(19)pH調節剤または緩衝剤を添加した上記(17)または(18)に記載の方法。(20)塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、重炭酸、グルコン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、クエン酸、モノエタノールアミン、乳酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、またはこれらの塩からなる群の一つまたはそれ以上をpH調節剤として添加することからなる上記(19)に記載の方法。(21)グリシン、酢酸、クエン酸、ホウ酸、フタル酸、リン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、炭酸、塩酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの塩からなる群の一つまたはそれ以上を緩衝剤として添加することからなる上記(19)に記載の方法。(22)水溶液中のpH調節剤または緩衝剤の濃度が0.01〜1000mMである上記(19)ないし(21)の何れか一項に記載の方法。(23)水溶液が緩衝液である上記(17)ないし(22)の何れか一項に記載の方法。(24)緩衝液が、グリシン塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、リン酸−酢酸−ホウ酸緩衝液またはフタル酸緩衝液である上記(23)に記載の方法。(25)水溶液中のグレリン類の濃度が、0.03nmol/mL〜6μmol/mLである上記(17)ないし(24)の何れか一項に記載の医薬組成物。(26)グレリン類が酢酸塩である上記(17)ないし(25)の何れか一項に記載の方法。(27)グレリン類がヒトグレリンである上記(1)ないし(11)の何れか一項に記載の方法。発明を実施するための最良の形態以下に、本発明が提供する医薬組成物について、その詳細を説明する。本発明で提供する医薬組成物に係るグレリン類は、内因性の成長ホルモン分泌促進因子(GHS)であり、細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させる活性、および成長ホルモンの分泌を誘導する活性を有するペプチドである。なかでも、グレリンとして第1表に記載された構造式を有するヒト、ラット、ブタ、ニワトリ、ウナギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、カエル、ニジマス、またはイヌ由来のグレリンが好ましいが、更に好ましいのはヒト由来のグレリンであり、特に好ましいのは28個のアミノ酸を有するヒト由来のグレリンである。さらに、グレリン類の構造上の特徴である疎水性修飾構造については、オクタノイル基(C8)に限定されるものではなく、ヘキサノイル基(C6)、デカノイル基(C10)、ドデカノイル基(C12)等の炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数4〜12程度の脂肪酸による修飾構造であってもよく、さらに分枝構造を有する脂肪酸や不飽和脂肪酸による修飾構造、また、フェニルプロピオニル基などの芳香環を含む修飾構造や、アダマンタン骨格を持つ修飾構造等に置き換わっていてもよい。したがって、本発明においてグレリン誘導体とは、第1表に記載された構造式を有するグレリンのペプチド主鎖におけるアミノ酸配列において、その一部のアミノ酸が挿入、除去、置換及び/又は付加等しており、更に必要に応じて化学的に修飾されていてもよく、且つペプチド主鎖と疎水性修飾基がエステル結合で結合しているグレリンと同様の生理活性を示すペプチドをいう。本発明が提供する医薬組成物に係るグレリン類は、遊離のペプチドのほか、塩の形態のものを含むことができる。遊離のペプチドとその塩は、慣用の方法により相互に変換可能である。遊離のペプチドを、薬理的に許容できる塩とする場合には、例えば、遊離ペプチドを無機酸あるいは有機酸と反応させることにより行うことができる。このような塩としては、例えば、炭酸塩、重炭酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩等の無機酸との塩;例えば、コハク酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸との塩が挙げられる。さらに、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、または有機塩基、例えば、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等などとの塩を挙げることができる。また、該ペプチドは、金属錯体化合物(例えば、銅錯体、亜鉛錯体等)を形成してもよい。本発明が提供する医薬組成物においては、上記の塩の形態はグレリン類の安定化のためには重要な意味を有する。すなわち、塩の形態によりグレリン類を水溶液とした際のpHは異なるため、グレリン類に用いた上記の塩類も、pH調節剤としての役割を有する。また、本発明に係るグレリン類について、その起源は特に限定されるものではなく、その製法についても化学合成法、半化学合成法、遺伝子組換え法若しくはそれらを適宜組合せた製造法、または生体から抽出などにより得られたもののいずれであってもよい。医薬品の原薬として使用されるグレリン類は、通常、逆相液体クロマトグラフィー等によって精製され、凍結乾燥品として供給される。本発明において水溶液または溶液とは、溶媒として水を用いたものをいうが、医薬品として許容される範囲であれば、水以外の溶媒を含んでもよい。例えば、エタノール、2−プロパノール等を用いることができる。本発明が提供する医薬組成物に含有されるグレリン類の濃度は、医薬品として提供できる範囲であれば特に限定されない。すなわち、下限としては、医薬品として薬効を示す濃度であればよく、上限としては、水溶液中で溶解できる濃度であればよい。好ましくは、一般的に利用されている製剤含有量である0.03nmol/mL〜6μmol/mL程度、より好ましくは0.03nmol/mL〜3μmol/mL程度の範囲とすればよい。本発明が提供するグレリン類を安定に含有する医薬組成物において、水溶液としてはそのpHが好ましくは2〜7であり、より好ましくは3〜6である。すなわち、グレリン類を含有する水溶液として安定なpHは、2〜7の範囲であることが判明した。このpHの調節には、例えばpH調節剤や、緩衝剤を用いて行うことができる。pH調節剤としては、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、重炭酸、グルコン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、クエン酸、モノエタノールアミン、乳酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、またはこれらの塩などを挙げることができる。また、緩衝剤としては、グリシン、酢酸、クエン酸、ホウ酸、フタル酸、リン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、炭酸、塩酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの塩などを挙げることができ、特にグリシン、酢酸、クエン酸が好ましい。水溶液中でのグレリン類の安定性を考慮した場合、保存中における水溶液のpHの変動が小さいほうが好ましい。したがって、本発明の医薬組成物は、緩衝能を有する水溶液、すなわち緩衝液であることが好ましい。緩衝液としては、グレリン類の分解が抑制される範囲、すなわち、好ましくはpH2〜7、より好ましくはpH3〜6の範囲に緩衝作用を有する緩衝液が有利に使用される。好ましい緩衝液としては、グリシン塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液(マクイルバイン(McIlvaine)緩衝液を含む)、リン酸−酢酸−ホウ酸緩衝液(ブリットン−ロビンソン(Britton−Robinson)緩衝液を含む)、フタル酸緩衝液が挙げられる。緩衝液に用いられる成分の例としては、上述の緩衝剤を用いることができる。pH調節剤を添加する場合の濃度は特に限定されず、通常用いられる程度の濃度であり、かつ目的とするpHに調節することができる濃度範囲であればよく、通常は、0.01〜1000mMの範囲である。緩衝剤の濃度も特に限定されず、緩衝能を維持できる濃度であればよく、通常は、0.01〜1000mMであり、より好ましくは0.1〜100mMであり、さらに好ましくは1〜100mMである。また、本発明によれば、安定性が確保されたグレリン類を含有する水溶液の形態の医薬組成物が提供されるが、さらに、例えば注射剤一般に必要な要件である浸透圧、溶解性、低刺激性、防腐効果および吸着抑制効果などを考慮して各種添加剤を選択して使用することができる。ところで、一般にペプチドまたはタンパクを含有する水溶液製剤は、製造時や投与時において、使用する器具類に対してペプチドまたはタンパク質が吸着して、含量低下をきたすことが懸念される。本発明の医薬組成物においても、医薬品として提供することを想定したグレリン類の濃度の範囲内で、当該グレリン類がガラス製容器やポリプロピレン製容器へ吸着する事実が認められた。したがって、本発明が提供する医薬組成物においては、グレリン類の容器等への吸着を軽減するために、吸着抑制剤を添加するのがよい。そのような吸着抑制剤としては、例えば界面活性剤、糖類、アミノ酸またはタンパク質類を挙げることができる。本発明でいう界面活性剤とは、医薬品添加物事典などに記載されている界面活性剤のほか、界面活性作用を有する化合物全般を含み、これらの中から適宜選択して用いることができる。具体的には例えば、四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、パラベン類、ポリエチレングリコール類、リン脂質類、胆汁酸類、ポリオキシエチレンヒマシ油類、ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン類、多価アルコール類、陰イオン界面活性剤、合成または半合成高分子類などを挙げることができ、特にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類が好ましい。四級アンモニウム塩類としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20、Tween20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(ポリソルベート40、Tween40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60、Tween60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(ポリソルベート65、Tween65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80、Tween80)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(ポリソルベート85、Tween85)などが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタンモノラウレート(Span20)、ソルビタンモノパルミテート(Span40)、ソルビタンモノステアレート(Span60)、ソルビタンモノオレート(Span80)、ソルビタントリオレート(Span85)、ソルビタンセスキオレエートなどが挙げられる。パラベン類としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチルなどが挙げられる。ポリエチレングリコール類としては、グリコフロール(Glycofurol75)、マクロゴール400(ポリエチレングリコール400)、マクロゴール600(ポリエチレングリコール600)、マクロゴール4000(ポリエチレングリコール4000)などが挙げられる。リン脂質類としては、精製大豆レシチン、精製卵黄レシチンなどが挙げられる。胆汁酸類としては、デスオキシコール酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンヒマシ油類としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などが挙げられる。また、他のポリオキシエチレン類としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩などが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン類としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(プルロニック)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルなどが挙げられる。多価アルコール類としては、グリセリン(グリセロール)、プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、セチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩などが挙げられる。合成または半合成高分子類としては、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。糖類としては、例えば、単糖類として、マンニトール、ブドウ糖、果糖、イノシトール、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられ、二糖類として、乳糖、白糖(スクロース)、マルトース、トレハロースなどが挙げられ、多糖類として、デンプン、デキストラン、プルラン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、フィチン酸、フィチン、キチン、キトサンなどが挙げられ、デキストリン類として、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルスターチなどが挙げられ、セルロース類として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられる。アミノ酸またはタンパク質類としては、例えば、アミノ酸類として、グリシン、タウリンなどが挙げられ、ポリアミノ酸類として、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグリシン、ポリロイシンなどが挙げられ、タンパク質類として、アルブミン、ゼラチンなどが挙げられる。なお、本発明が提供する医薬組成物が、動物実験用を含め試験試薬用組成物あるいは獣医用医薬品である場合には、非ヒト血清アルブミンを用いることができるが、ヒトの治療を目的とする医薬組成物である場合には、ヒト血清アルブミンを用いるのが好ましい。これらの吸着抑制剤は、複数種を組合せて使用することもできる。本発明の医薬組成物において、含有される吸着抑制剤の量は、グレリン類の容器への吸着の抑制に効果のある濃度であって、かつ、本発明の医薬組成物の製造時や長期保存時に微粒子の生じない範囲で適宜設定できるが、医薬品として添加可能な範囲であることが望ましい。例えば、0.001〜5%、好ましくは、0.01〜1%が望ましい。その他、本発明の医薬組成物においては、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、塩化ナトリウム、マンニトールなどの等張化剤;安息香酸ナトリウムなどの防腐剤;亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸などの抗酸化剤;塩酸リドカイン、塩酸メプリルカインなどの無痛化剤などを、「医薬品添加物事典2000(薬事日報社、日本医薬品添加剤協会編集)」に掲載されているもの等から、適宜選択し使用することができる。本発明により提供される医薬組成物の製造は、製剤学上慣用される製造法によって行うことができる。例えば、凍結乾燥品として提供される原薬としてのグレリン類を精製水により溶解し、一方で、緩衝剤や吸着抑制剤およびその他の添加剤を精製水で溶解する。その後、これらの原薬溶解液および添加剤溶解液を混合し、適宜、滅菌濾過などの工程を施した後、アンプルやバイアル等に分注してグレリン類を含有する製剤を得ることができる。また、注射剤のとり得る形態に用時溶解型の製剤がある。これは溶液中で長期間にわたる安定性の確保が困難な場合に適した剤型である。したがって、本発明にあっては、水などの溶媒に溶解した場合に、上述した水溶液の形態をとる組成物、すなわち、グレリン類を含有する水溶液の医薬組成物となるような、用時溶解型の医薬組成物も本発明の1つの形態である。用時溶解型の医薬組成物は、例えば、粉末品等の固体組成物として供給される原薬に、目的に応じて前述の各種添加剤を適宜選択し、必要量添加して得ることができる。あるいは、グレリン類を含有する水溶液に、目的に応じて前述の各種添加剤を適宜選択し、必要量添加した液体組成物を乾燥することにより固体組成物として得ることもできる。その乾燥方法としては、例えば凍結乾燥法や噴霧乾燥法等が挙げられるが、凍結乾燥法を用いることが好ましい。これら固体組成物を用時、水などの溶媒に溶解して使用することができる。本発明に係るグレリン類含有医薬組成物は、哺乳動物(ヒト、サル、イヌ、ラット、マウス等)に対して医薬品として投与することができる。当該医薬組成物の適用可能な疾患またはその効果は、GH欠損または低下が関係するものとして、例えば、小人症、正常人での骨芽細胞および骨再構成の活性化、GH欠乏症成人での筋肉量および筋力の増強、GH欠乏症成人での運動能力の向上、小児の重度火傷治癒、排卵誘発におけるゴナンドトロピンとの併用、プレドニゾン投与によるタンパク質代謝異常の予防、重度免疫不全症におけるT細胞「教育」の促進、老人性の体重減少、脂肪組織拡大および皮膚萎縮を抑制する効果などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、GH欠損または低下と直接関係しない疾患または効果としては、例えば当該医薬組成物は拍動量の増加効果があることから、心不全等の心疾患の治療に効果がある。当該医薬組成物の効果はヒトには限らない。すなわち、動物の成長促進、食肉中の脂身の低減等、GH投与と同等以上の効果がある。また、例えば本発明に係る医薬組成物は脳室内投与および静脈内投与によって食欲増進作用があることから、食欲不振や拒食症を治療するための食欲増進剤として用いることもできる。更に、例えば、本発明に係る医薬組成物は胃運動および胃酸分泌を促進する作用があることから、非潰瘍性消化不良、突発性軽症胃アトニー、機能性消化不良および逆流性食道炎等の胃機能性疾患の治療剤として用いることもできる。加えて、例えば本発明に係る医薬組成物は静脈内投与により、骨髄、十二指腸および空腸において細胞増殖促進作用が認められたことから、腸管粘膜保護剤、経静脈栄養時の小腸粘膜障害予防剤及び骨粗鬆症治療剤として用いることができる。また、上記医薬組成物は以下のような疾患の治療または身体状態の改善に効果がある。例えば、高齢者における成長ホルモン放出の刺激処置、糖質コルチコイドの異化副作用の予防、オステオポローシスの予防と治療、免疫系の刺激、損傷治癒の促進、骨折修復の促進、成長遅滞の治療、成長遅滞に起因する腎不全もしくは機能不全の治療、成長ホルモン欠損児童を含む生理学的不足状態および慢性疾患に関連した不足状態の治療、肥満および肥満に関連した成長遅滞の治療、プラーダー−ヴィリ症候群およびターナー症候群に関連した成長遅滞の治療、火傷患者の回復の促進および入院の削減、子宮内発育遅滞、骨格形成異常、高コルチコイド症およびクッシング症候群の治療、拍動性成長ホルモン放出の誘導、ストレス患者における成長ホルモンの代用、骨軟骨形成異常、ヌーナン症候群、精神分裂病、うつ病、アルツハイマー病、遅延損傷治癒および心理社会的剥奪の治療、肺機能不全および呼吸器依存症の治療、大手術後のタンパク質異化反応の減衰、癌やエイズ(AIDS)のような慢性疾患によるタンパク損失および悪液質の減少、膵島細胞症を含む高インスリン血症の治療、排卵誘発のためのアジュバント療法、胸腺の発育を刺激するため、および加齢に伴う胸腺機能の衰退を防ぐため、免疫抑制患者の治療、筋肉強度、運動性の向上、高齢者における皮膚の厚さ、代謝恒常性、腎恒常性の維持、骨芽細胞、骨再造形および軟骨成長の刺激等が挙げられる。また動物においても以下のような効果が期待される。例えば、動物の成長の速度増加、動物の乳生産もしくは獣毛生産増加、ペット動物における免疫系の刺激、ペット動物における高齢疾患の治療、家畜の成長促進並びにヒツジにおける増毛などが挙げられる。上述した本発明のグレリン類を含有する医薬品の剤型は、水に溶解した状態であれば、各種経路によって投与することができる。例えば、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、点滴静脈注射などの注射剤として投与することができる。また、経鼻あるいは経肺、さらには経皮あるいは経粘膜、点眼製剤等の形態で非経口的に投与することができる。また液剤あるいはこれをカプセル内に封入したカプセル剤の形態で経口的に投与することもできる。実施例以下に本発明を、グレリン類の安定性に関する試験例である実施例を説明することにより、さらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例により限定されるものでない。本実施例において使用する主な略号は、それぞれ以下の意味を有する。また、用いた試験法と機器は、特に記載しない限り以下に記載のものを使用した。[主な略号]Dha:デヒドロアラニン(dehydroalanine)TFA:トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)HBTU:2−(1H−benzotriazole−1−yl)−1,1,3,3,−tetramethyluronium HexafluorophosphateHOBt:1−hydroxybezotriazoleTIPS:triisopropylsilaneDIPEA:diisopropylethylamineFmoc:fluorenylmethoxycarbonylBoc:t−butyloxycarbonyltBu:t−butylTrt:tritylDMAP:4−dimethylaminopyridineEDC:1−ethtyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimidePmc:2,2,5,7,8−pentamethylchroman−6−sulfonyl[使用機器](A)ペプチド自動合成機アプライドバイオシステム社製:433A合成機(B)分析用HPLCシステム機器:島津LC−10Aシステムカラム:YMC−Pack PROTEIN−RP(4.6mmΦ×150mm)またはYMC−Pack ODS−AM(4.6mmΦ×250mm)カラム温度:40℃溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸中、アセトニトリル濃度を最高50%まで直線的に変化させた。流速:1mL/分検出:UV(210nm)注入量:10〜500μL(C)分取用HPLCシステム機器:Waters 600 Multisolvent Delivery Systemカラム:YMC−Pack ODS−A(20mmΦ×250mm)またはYMC−Pack PROTEIN−RP(20mmΦ×250mm)溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸または5%酢酸中、適宜アセトニトリル濃度を直線的に変化させた。流速:10mL/分検出:210nmおよび260nm流入量:1〜2mL(2mL以上はポンプにより注入)(D)保存庫ナガノ科学(株)製 恒温恒湿器LH−30型(5℃・40℃)ナガノ科学(株)製 プレハブ式恒温恒湿室LH−20型(25℃)(E)質量分析機機器:フィニガンMAT TSQ700イオン源:ESI検出イオンモード:positiveスプレー電圧:4.5kVキャピラリー温度:250℃移動相:0.2%酢酸・メタノール混液(1:1)流速:0.2mL/分スキャン範囲:m/z 300〜1500(F)アミノ酸配列分析機器:パーキンエルマー社製 アプライドバイオシステム477A型シークエンサー(G)アミノ酸組成分析機器:日立製作所(株)製 L−8500型アミノ酸分析機計試料:封管中、0.1%フェノールを含む6M塩酸で110℃、24時間加水分解した。参考例:ヒトグレリンの合成ペプチド自動合成機を用いて、Fmoc−Arg(Pmc)−HMP−樹脂(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製、472mg、0.25mmol)に、ピペリジンによる脱FmocとHBTU/HOBtによるFmoc−アミノ酸(ただしN末グリシンのみBoc−グリシン)導入とを繰り返し、Boc−Gly−Ser(tBu)−Ser(Trt)−Phe−Leu−Ser(tBu)−Pro−Glu(OtBu)−His(Boc)−Gln(Trt)−Arg(Pmc)−Val−Gln(Trt)−Gln(Trt)−Arg(Pmc)−Lys(Boc)−Glu(OtBu)−Ser(tBu)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Pro−Pro−Ala−Lys(Boc)−Leu−Gln(Trt)−Pro−Arg(Pmc)−HMP樹脂を構築した。得られた保護ペプチド樹脂(1.7g)を1%TFA−5%TIPS−塩化メチレン溶液(15mL)で30分間処理した。ペプチド樹脂を濾取し、塩化メチレン(30mL)で数回洗浄した後、1%DIPEA(30mL)、ついで塩化メチレン(30mL)で洗浄した。得られた脱Trtペプチド樹脂をN−メチルピロリドン(10mL)に膨潤させ、DMAP(31mg、0.25mmol)存在下、オクタン酸(144.2mg,1.0mmol)、EDC・HCl(192mg,1.0mmol)を加え16時間反応させた。樹脂を濾取し、N−メチルピロリドン、塩化メチレンで洗浄し減圧下乾燥して、3位セリン側鎖がオクタノイル化された保護ペプチド樹脂を得た。このものに、88% TFA−5% Phenol−2% TIPS−5% H2Oからなる脱保護試薬(15mL)を加え、室温で2時間攪拌した。樹脂を濾去し、濾液を濃縮後、残査にエーテルを加え沈澱物を得た。沈殿を濾取、乾燥し、粗ペプチド900mgを得た。本品200mgを水10mLに溶かし、YMC−Pack ODS−A(20mmΦ×250mm)に添加し、5%酢酸中、アセトニトリル0%から60%までの60分間直線グラジエント(流速:10mL/min)で溶出させた。目的画分を分取後、凍結乾燥し、60mgの目的物(ヒトグレリン酢酸塩:酢酸含量10.9%)を得た。ESI−MS:3371(理論値3370.9)、ロイシン基準アミノ酸組成比:Ser;3.43(4),Glx;5.93(6),Gly;1.01(1),Ala;1.00(1),Val;0.98(1),Leu;2(2),Phe;1.00(1),Lys;4.02(4),His;1.00(1),Arg;2.98(3),Pro;3.93(4)(括弧内は理論値)、アミノ酸配列分析:ヒトグレリンの配列と一致(3位オクタノイルセリンは検出せず)。ラットグレリンなど他のグレリン類も、同様の製造方法により得ることができる。なお、以下の実施例では参考例で調製したグレリンを使用した。実施例1:グレリン分解物の構造解析グレリン類の溶液中での安定性を確保するためには、溶液中での分解反応について把握する必要がある。そこで、グレリン類の一つであるヒトグレリンを用いて、溶液中での主要な分解物の構造解析を行い、その生成機構を推定した。ヒトグレリン約5.0μmol(=17mg)をBritton−Robinson緩衝液(pH7.0)(0.04Mリン酸・酢酸・ホウ酸水溶液と、0.2M水酸化ナトリウム水溶液を適当な割合で混合してpHを調整した)34mLに溶解し、ヒトグレリン濃度約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)の水溶液を調製した。これを褐色ガラスアンプルに分注して熔閉した後、40(±1)℃で4日間または14日間保存した。保存後の水溶液をHPLCで分析した結果を、第1図(a)および(b)に示した。第1図(a)に示したように、40℃/4日間保存後のHPLCチャートには24〜28分付近に2つの主要な分解物のピークが認められた(分解物Bおよび分解物C)。これらの2つピークをそれぞれ分取して構造解析を実施した。分解物B:ESI−MS上、3245の質量数を示し、この値はヒトグレリンのオクタノイル基が加水分解により脱離したデスアシルヒトグレリン(以下、デスアシル体)の質量に一致した。さらに分解物Bをアミノ酸組成分析およびアミノ酸配列分析により解析したところ、アミノ酸組成比、アミノ酸配列分析ともにデスアシル体の理論値と一致した。このことから、分解物Bは、デスアシル体であることを確認した。分解物C:ESI−MS上、3227の質量数を示し、この値はヒトグレリンのオクタノイル基がβ脱離した[3位デヒドロアラニン]ヒトグレリン(以下、Dha体)と一致した。本推定構造を検証するために、分解物Cの水溶液に過剰量のエタンチオールを加え、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を適量加えて中性にして得られた反応物を、質量分析、アミノ酸組成分析、アミノ酸配列分析により解析したところ、この反応物は[3位エチルシステイン]ヒトグレリンであることが示された。すなわち、ESI−MS:3289は、Dha体(3227)+エタンチオール(62)に一致し、アミノ酸組成分析、アミノ酸配列分析ともにエチルシステインが検出された。これは、Dha体の3位デヒドロアラニンにエタンチオールが求核反応して[3位エチルシステイン]ヒトグレリンが生成したことを示す。以上より、分解物Cは、Dha体であることが確認された。以上の結果から、グレリン類の一種であるヒトグレリンを中性水溶液に溶解した際の主要な分解物は、オクタノイル基が加水分解を受けたデスアシル体、およびβ脱離したDha体であることが判明した。また、14日保存後のチャートである第1図(b)では、分解物Bおよび分解物Cの他に、いくつかのピークが認められた(分解物Dおよび分解物Eなど)。これらの生成機構を調べる目的で、デスアシル体(分解物B)あるいはDha体(分解物C)を水溶液中で保存した。デスアシル体あるいはDha体を、前述のBritton−Robinson緩衝液(pH7.0)にそれぞれ溶解し、デスアシル体あるいはDha体の濃度が約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)の水溶液を調製した。これらを褐色ガラスアンプルに分注して熔閉した後、40(±1)℃で、デスアシル体は14日間、Dha体は3日間保存した。保存後の水溶液をHPLCで分析した結果を、第1図(c)および(d)に示した。第1図(c)に示すように、デスアシル体を40℃14日間保存後のHPLCチャートでは、第1図(b)の分解物Dと同じ保持時間(26分付近)に1つの主要な分解物のピークが認められた。このピークを分取して質量分析、アミノ酸組成分析、およびアミノ酸配列分析を行ったところ、この分解物はデスアシルヒトグレリン(3−28)であることが示された(ESI−MS:3101(理論値3100.5)、アミノ酸組成分析、アミノ酸配列分析ともにデスアシルヒトグレリン(3−28)と一致)。また、第1図(d)に示すように、Dha体を40℃/3日間保存後のHPLCチャートでは、第1図(b)の分解物Eと同じ保持時間(36分付近)に分解物の幅広いピークが認められた。このピークを分取して質量分析、アミノ酸組成分析、およびアミノ酸配列分析を行ったところ、この分解物は(Nα−CO−C(=CH2)−OH)ヒトグレリン(4−28)(以下、Dha体2次分解物)であると推測された(ESI−MS:3083(理論値3083.5)、アミノ酸組成分析は推定構造と一致、アミノ酸配列分析は1残基目から反応進行せず。)また、第1図(d)には、30〜35分付近に小さい分解物のピークが数個認められたが、第1図(b)にもこれらのピークが認められおり、ヒトグレリンからDha体を介してこれらの分解物が生成すると考えられた。以上より、ヒトグレリンを中性水溶液に溶解した際の分解は、まず、ヒトグレリンからデスアシル体またはDha体が生成する。さらに、デスアシル体から断片化が起こり、デスアシルヒトグレリン(3−28)が生成する。また、Dha体からは断片化によってDha体2次分解物や更なる分解物が生成することが判った。したがって、グレリン類の水溶液中で安定性を確保するためには、グレリン類の特徴的構造である疎水性修飾構造における各種反応が生じないように留意する必要があることが判った。実施例2:各pH値を有する緩衝液中でのグレリンの安定性(その1)グレリン類の一種であるヒトグレリンを用いて、溶液のpHが安定性に及ぼす影響について評価した。ヒトグレリンを以下の水溶液に、ヒトグレリン濃度約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)となるように溶解した。0.1M塩酸水溶液(pH1.1)McIlvaine緩衝液(pH2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0)(0.1Mクエン酸水溶液と0.2Mリン酸水素二ナトリウム水溶液を適当な割合で混合してpHを調整した)この水溶液を25(±2)℃で8時間、24時間、48時間、72時間保存した。保存前後の水溶液をHPLCで分析し、総ピーク面積に対するヒトグレリン、デスアシル体、Dha体のピーク面積比をそれぞれ算出した。保存前後のpHを測定することにより、pHの大きな変動が無いことを確認した。その結果を第2表に示した。第2表に示す結果から、pH1.0および8.0の水溶液に溶解した場合、8時間という短時間でデスアシル体が3%以上生成することが判明した。また、24時間後においてpH7.0の水溶液で、48時間後においてpH2.0およびpH6.0の水溶液でデスアシル体の生成量が1%を超えており、かつ、ヒトグレリンの割合が98%を下回っていた。一方、pH3.0〜5.0の水溶液に溶解した場合は、デスアシル体およびデヒドロアラニン体の生成が抑制されていた。以上より、グレリン類の一種であるヒトグレリンの水溶液においては、デスアシル体、Dha体の生成を抑制するためには、pH2〜7の範囲の水溶液、特に、pH3〜6の範囲の水溶液にすることが好ましいことが理解される。したがって、疎水性修飾構造が特徴であるグレリン類において、疎水性修飾構造における各種反応を抑制して、水溶液中で安定性を確保するためには、pHを2〜7の範囲、より好ましくは、pHを3〜6の範囲に制御することが有効であることが判明する。実施例3:各pH値を有する緩衝液中でのグレリンの安定性(その2)実施例2で使用した緩衝液とは異なる緩衝液を使用して、各種のpH値を有する水溶液中でのグレリン類の安定性を比較、検討した。グレリン類の一種であるヒトグレリンを、各pHのBritton−Robinson緩衝液(pH2.1、3.1、4.0、5.0、6.0、7.0、7.9)(0.04Mリン酸・酢酸・ホウ酸水溶液と0.2M水酸化ナトリウム水溶液を適当な割合で混合してpHを調整した)に溶解し、ヒトグレリン濃度約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)の水溶液を調製した。これらをそれぞれ褐色ガラスアンプルに分注して熔閉した。分解速度定数を算出するにはある程度分解させる必要があるため、苛酷な保存温度である40(±1)℃で保存した。経時的にサンプリングし、HPLCによりヒトグレリン濃度(残存率)を測定した。また、その際にpHを測定し、pHの顕著な変動が起こっていないことを確認した。ヒトグレリンの経時的残存率の変化から各pHにおける分解速度定数を算出し、その結果を第2図に示した。また、各pHの水溶液について、40℃/1日保存後の総ピーク面積に対するデスアシル体およびDha体のピーク面積比を示したものを第3図に示した。第2図に示すとおり、ヒトグレリンを溶解した際に特に安定なpHは3〜6であった。これらのpH3.1、4.0、5.0、6.0の水溶液については、40℃/1週間保存後において残存率は全て87%以上であり、目標値(85%)を上回った。また、第3図から、デスアシル体の生成は、pHが3〜6の範囲で抑制され、Dha体の生成は、pH2〜7の範囲で抑制されていることが判明した。以上より、Britton−Robinson緩衝液においても、グレリン類の1種であるヒトグレリンから、デスアシル体あるいはDha体の生成を抑制するためには、pH2〜7の範囲の水溶液、特にpH3〜6の範囲の水溶液にすることが好ましいことが判明した。したがって、疎水性修飾構造が特徴であるグレリン類において、疎水性修飾構造における各種分解反応を抑制して、水溶液中でグレリンの安定性を確保するためには、緩衝液の種類にかかわらず、その水溶液のpHを2〜7、より好ましくは、pHを3〜6の範囲内に制御することが有効であることが確認された。実施例4:緩衝液の種類の影響(その1)緩衝液としてクエン酸緩衝液を使用し、グレリン類の安定性を評価した。グレリン類の一種であるヒトグレリンを、各pHの0.05Mクエン酸緩衝液(pH3.6、4.0、4.5、5.0)に溶解し、ヒトグレリン濃度約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)の水溶液を調製した。これらをそれぞれ褐色ガラスアンプルに分注して熔閉した後、40(±1)℃で保存した。2週間後にサンプリングしてHPLC測定を行い、ヒトグレリン濃度から残存率を算出した。また、その際にpHを測定した。それらの結果を第3表に示した。第3表に示した結果からも判明するように、クエン酸緩衝液にグレリンを溶解した場合、pH3.5〜5.0の各水溶液の残存率は85〜89%であり、目標値(85%)を上回った。また、保存前後においてpHの変動は認められなかった。したがって、クエン酸緩衝液中においても、グレリン類は本実施例で検討したpHの範囲、すなわちpH3.5〜5.0の範囲で安定なものであった。実施例5:緩衝液の種類の影響(その2)緩衝液としてグリシン塩酸緩衝液、または酢酸緩衝液を使用して、グレリン類の安定性を評価した。すなわち、グレリン類の一種であるヒトグレリンを、各pHの0.05Mグリシン塩酸緩衝液(pH2.5、3.1、3.6、4.2、4.6、4.8)、または0.05M酢酸緩衝液(pH3.1、3.5、4.0、4.5、5.0)に溶解し、ヒトグレリン濃度が約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)の水溶液を調製した。これらをそれぞれ褐色ガラスアンプルに分注して熔閉した後、40(±1)℃で保存した。2週間後にサンプリングし、HPLCにより純度を測定した。また、その際に水溶液のpHを測定し、pHの顕著な変動が起こっていないことを確認した。各緩衝液の各pHにおける保存2週間後のヒトグレリン純度についてまとめた結果を図4に示した。その結果、グリシン塩酸緩衝液、または酢酸緩衝液にグレリンを溶解した場合には、本実施例で検討したpHの範囲、すなわちpH2.5から5.0の範囲においては、ヒトグレリンの純度は87〜97%であり、目標値(85%)以上であった。以上の実施例2(McIlvaine緩衝液中での安定性)、実施例3(Britton−Robinson緩衝液中での安定性)および実施例4(クエン酸緩衝液中での安定性)ならびに実施例5(グリシン塩酸緩衝液、および酢酸緩衝液中での安定性)の各結果をあわせて考慮すると、水溶液に溶解したグレリン類を安定化させるにはpHを制御することが重要であり、これは緩衝液の種類によって大きくは影響されないことが判明した。実施例6:各濃度を有するグレリン水溶液の安定性グレリンを含有する水溶液として、各種濃度でのグレリン類の安定性を評価した。すなわち、グレリン類の一種であるヒトグレリンをpH3.5の0.05Mグリシン塩酸緩衝液に溶解し、各種濃度のヒトグレリン水溶液を調製した。ヒトグレリン水溶液の濃度は、医薬品として使用される可能性のある範囲である、0.03nmol/mL(=0.1μg/mL)、0.3nmol/mL(=1.0μg/mL)、3.0nmol/mL(=10.0μg/mL)、0.3μmol/mL(=1.0mg/mL)および3μmol/mL(=10mg/mL)の5段階の濃度とした。25℃(±2℃)で24時間保存した後、HPLCによりヒトグレリン濃度(残存率)を測定した。また、その際にpHを測定し、pHの顕著な変動が起こっていないことを確認した。保存開始前を100としたときの各濃度における保存前後の残存率、およびpH変化についての結果を第4表に示した。表中に示した結果からも判明するように、25℃/24時間保存後において、グレリン含量の高い4種の水溶液(0.3nmol/mL、3nmol/mL、0.3μmol/mLおよび3μmol/mL)では、グレリンの残存率の低下やpHの変化は認められず、水溶液は安定なものであった。一方、グレリン含量が最も低い水溶液(0.03nmol/mL)では、25℃/24時間保存後の残存率は62%と低いものであったが、pHの変動はなく、チャート上、デスアシル体やDha体など分解物のピークは認めらなかったことから、分解は起こっておらず、この残存率の低下は、容器へのグレリンの吸着による含有量の低下であると判断された。したがって、グレリン含量の最も低い水溶液(0.03nmol/mL)についても安定であったと判断した。以上より、pHを制御した緩衝液中において、ヒトグレリンは、約0.03nmol/mL〜約3μmol/mLの濃度範囲で安定であることが判明した。実施例7:各pH値を有する水溶液中でのグレリン類の安定性(その1)グレリン類の一種であるヒトグレリンを用いて、溶液のpHが安定性に及ぼす影響について評価した。ヒトグレリンを精製水に、ヒトグレリン濃度約0.03μmol/mL(=0.1mg/mL)となるように溶解した。この水溶液のpHは4.7であった。この水溶液を4等分し、1つはそのままとし、残りの3つの水溶液に、塩酸あるいは水酸化ナトリウムの水溶液を加えて、それぞれpH1.8(塩酸濃度17mM)、pH3.9(塩酸濃度0.20mM)、pH7.8(水酸化ナトリウム濃度0.24mM)の水溶液を調製した。これらの水溶液を25(±2)℃で1日間、3日間保存した。保存前後の水溶液をHPLCで分析し、総ピーク面積に対するヒトグレリン、デスアシル体、Dha体のピーク面積比をそれぞれ算出した。その結果を第5表に示した。第5表に示す結果から、pH1.8および7.8の水溶液に溶解した場合、保存開始から1日後で、デスアシル体が1%以上生成し、かつ、ヒトグレリンの割合が98%を下回っていた。また、3日後においてpH7.8の水溶液でデヒドロアラニン体の生成量が1%を超えた。一方、pH3.9および4.7の水溶液に溶解した場合は、デスアシル体およびデヒドロアラニン体の生成が抑制されていた。以上より、グレリン類の一種であるヒトグレリンの水溶液においては、デスアシル体、Dha体の生成を抑制するためには、pHを2〜7の範囲に調節することが好ましいことが理解される。したがって、疎水性修飾構造が特徴であるグレリン類において、疎水性修飾構造における各種反応を抑制して、水溶液中で安定性を確保するためには、pHを2〜7の範囲に制御することが有効であることが判明する。実施例8:各pH値を有する水溶液中でのグレリン類の安定性(その2)グレリン類の一種であるヒトグレリン(1−7)アミドを用いて、溶液のpHが安定性に及ぼす影響について評価した。ヒトグレリン(1−7)アミドはほとんどの哺乳類、鳥類、魚類などに共通のアミノ酸配列であり(第1表参照)、またこの化合物自体がヒトグレリンと同等の活性を有することが知られている(国際公開WO01/07475号公報)。ヒトグレリン(1−7)アミドを、濃度が約0.12μmol/mL(=0.1mg/mL)となるように精製水に溶解した。この水溶液のpHは5.0であった。この水溶液を4等分し、1つはそのままとし、残りの3つの水溶液に、塩酸あるいは水酸化ナトリウムの水溶液を加えて、それぞれpH1.8(塩酸濃度17mM)、pH4.1(塩酸濃度0.05mM)、pH7.9(水酸化ナトリウム濃度0.20mM)の水溶液を調製した。これらの水溶液を25(±2)℃で1日間、3日間保存した。保存前後の水溶液をHPLCで分析し、総ピーク面積に対するヒトグレリン(1−7)アミド、デスアシルヒトグレリン(1−7)アミド、[3位デヒドロアラニン]ヒトグレリン(1−7)アミドのピーク面積比をそれぞれ算出した。その結果を第6表に示した。第6表に示す結果から、pH1.8および7.9の水溶液に溶解した場合、保存開始から1日後で、ヒトグレリン(1−7)アミドの割合が98%を下回っていた。一方、pH4.1および5.0の水溶液に溶解した場合は、分解が抑制されていた。以上より、グレリン類の一種であるヒトグレリン(1−7)アミドの水溶液においては、pHを2〜7の範囲に調節することが好ましいことが理解される。したがって、疎水性修飾構造が特徴であるグレリン類において、疎水性修飾構造における各種反応を抑制して、水溶液中で安定性を確保するためには、pHを2〜7の範囲に制御することが有効であることが判明した。実施例9:ヒトグレリン低濃度水溶液に吸着抑制剤を添加したときのグレリンの吸着抑制に及ぼす影響実施例6において、医薬品として使用される濃度の範囲で、グレリン類が容器等へ吸着する性質があることが示された。そこで、吸着抑制剤の効果について調べた。吸着抑制剤として、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(以下、Tween80)および塩化ベンザルコニウムについて検討した。ヒトグレリン濃度を医薬品として使用されるグレリン類の濃度範囲内である、約0.3nmol/mL(=1.0μg/mL)となるように、5%マンニトール、0.05Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)に溶解した。なお、コントロールとして吸着抑制剤を含まない水溶液を用いた。吸着抑制剤の濃度は、0.01%および0.1%の2段階とした。これら5種の試験水溶液のそれぞれについて、調整直後のヒトグレリンの濃度をHPLCにより測定した後、各試験溶液をそれぞれ、ガラス製の試験管に移し替えた。その後、ガラス製の試験管に移し替える操作を繰り返し、5回および10回操作後のグレリンの残存率を、HPLCで測定した。同じ実験をポリプロピレン製の試験管についても実施した。それらの結果を第7表にまとめて示した。第7表に示した結果からも判明するように、吸着抑制剤を添加しない場合は、ガラス製試験管、ポリプロピレン製試験管のいずれに対しても、移し替え操作によりグレリンの濃度が大きく低下した。特に、ガラス製試験管ではヒトグレリン濃度がHPLC分析で検出されないレベルまで低下した。一方、吸着抑制剤としてTween80を添加した場合は、いずれの濃度でもポリプロピレン製試験管に対しては高い吸着抑制効果が示された。また、吸着抑制剤として塩化ベンザルコニウムを添加した場合は、いずれの濃度でもガラス製試験管およびポリプロピレン製試験管ともに、高い吸着抑制効果が示された。以上より、医薬品として使用される濃度の範囲のグレリン類を含有する水溶液においては、Tween80および塩化ベンザルコニウムは、グレリン類の容器等への吸着を抑制するのに有効であることが判った。したがって、本発明の医薬組成物の製造時、長期保存時および投与時において、これら吸着抑制剤が有用であることが理解される。実施例10:ヒトグレリン低濃度水溶液に糖類を添加したときのグレリンの吸着抑制に及ぼす影響実施例9において、吸着抑制剤の添加により、グレリン類が容器等へ吸着する性質が抑えられることが示された。ここでは、糖類の吸着抑制効果について調べた。糖類の水溶液として5%マンニトール水溶液を用い、これにヒトグレリンを溶解した際の容器等への吸着を評価した。なお、コントロールとして生理食塩水を用いた。ヒトグレリン濃度は、医薬品として使用されるグレリン類の濃度範囲内である、約3nmol/mL(=10μg/mL)および約30nmol/mL(=100μg/mL)の2段階について調べた。これら4種の試験水溶液のそれぞれについて、調整直後のヒトグレリンの濃度をHPLCにより測定した後、各試験溶液をそれぞれ、ポリプロピレン製の試験管に移し替えた。その後、ポリプロピレン製の試験管に移し替える操作を繰り返し、5回操作後のグレリンの残存率を、HPLCで測定した。それらの結果を第8表にまとめて示した。第8表に示した結果からも判明するように、生理食塩水に溶解した場合は、ポリプロピレン製試験管に対して、移し替え操作によりグレリンの濃度が大きく低下した。特に、10μg/mLとした場合ではヒトグレリン濃度が元の32%にまで低下した。一方、5%マンニトール水溶液に溶解した場合は、いずれのヒトグレリン濃度の場合でもポリプロピレン製試験管に対して高い吸着抑制効果が示された。以上より、医薬品として使用される濃度の範囲のグレリン類を含有する水溶液においては、糖類はグレリン類の容器等への吸着を抑制するのに有効であることが判った。したがって、本発明の医薬組成物の製造時、長期保存時および投与時において、糖類が有用であることが理解される。実施例11:用時溶解型製剤の製造およびその安定性の評価本発明が提供する医薬組成物のひとつの形態として、用時溶解型の製剤を凍結乾燥法により製造し、その溶解性等を評価した。0.1%塩化ベンザルコニウム、5%マンニトール、0.05Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)にヒトグレリンを溶解して、ヒトグレリン濃度が約0.3nmol/mL(=1.0μg/mL)となる水溶液を調製した。この水溶液の調整直後のヒトグレリン濃度をHPLCにより測定し、またpHを測定した。その結果、ヒトグレリン濃度は1.0μg/mL、pHは3.5であった。次いで、この水溶液を凍結乾燥した。凍結乾燥の条件は、−25℃で24時間減圧乾燥した後、さらに20℃で24時間減圧乾燥した。得られた凍結乾燥品は、良好な形状の白色固形物であった。得られた凍結乾燥品について、凍結乾燥の操作開始前からの質量減少分に相当する精製水を加えて、溶解性、ヒトグレリン濃度およびそのpHを評価した。その結果、溶解性は速やかであり、また沈殿等の不溶物は認められなかった。したがって、用時溶解型の製剤として、好ましい溶解性を有することがわかった。また、この水溶液のヒトグレリン濃度の測定結果は1.0μg/mLとなり、これは凍結乾燥前、調製直後の水溶液のヒトグレリン濃度と等しく、凍結乾燥による含量の低下がないことが示された。また、pH測定結果は、pH3.5となり、これは凍結乾燥前、調製直後の水溶液のpHと等しかったことから、本発明の凍結乾燥品は水に溶解後、ヒトグレリンの安定性が確保されうる水溶液であることが判明した。以上より、本発明のグレリンを含有する凍結乾燥品は、グレリン含有するpHを調節した緩衝液を凍結乾燥することにより得られること、および当該凍結乾燥品は、用時溶解製剤として有用であることが示された。製造例1:pHを調節したヒトグレリン含有の医薬組成物の調製グレリン類の一つである、ヒトグレリンを精製水に溶解してヒトグレリンの濃度が約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)となる水溶液を調製した。この水溶液のpHを測定しながら0.1M塩酸水溶液を少量加え、最終pHを4.0に調節し、ヒトグレリンを含有する水溶液として、医薬組成物を得た。製造例2:ラットグレリンをグリシン塩酸緩衝液に溶解した医薬組成物の調製グレリン類の一つである、ラットグレリンを0.05Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)に溶解して、ラットグレリンの濃度が約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)となる水溶液としての医薬組成物を調製した。この水溶液のpHを測定したところ、pH3.5であった。製造例3:[3位セリン(アセチル)]ヒトグレリンをグリシン塩酸緩衝液に溶解した医薬組成物の調製グレリン類の一つである、[3位セリン(アセチル)]ヒトグレリンを0.05Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)に溶解して、[3位セリン(アセチル)]ヒトグレリンの濃度が約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)となる水溶液としての医薬組成物を調製した。この水溶液のpHを測定したところ、pH3.5であった。製造例4:[3位セリン(フェニルプロピオニル)]ヒトグレリンをグリシン塩酸緩衝液に溶解した医薬組成物の調製グレリン類のひとつである、[3位セリン(フェニルプロピオニル)]ヒトグレリンを0.05Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)に溶解して、[3位セリン(フェニルプロピオニル)]ヒトグレリンの濃度が約0.15μmol/mL(=0.5mg/mL)となる水溶液としての医薬組成物を調製した。この水溶液のpHを測定したところ、pH3.5であった。製造例5:ヒトグレリン(1−5)アミドをグリシン塩酸緩衝液に溶解した医薬組成物の調製グレリン類のひとつである、ヒトグレリン(1−5)アミドを0.05Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)に溶解して、ヒトグレリン(1−5)アミドの濃度が約0.15μmol/mL(=0.1mg/mL)となる水溶液としての医薬組成物を調製した。この水溶液のpHを測定したところ、pH3.5であった。産業上の利用可能性以上記載のように、本発明により、グレリン類を含有するとともに化学的な安定性を確保した医薬組成物を提供することができる。また、含有されるグレリン類の容器等への吸着を抑制し、製造時、長期保存時および投与時において、含有量の低下が認められない医薬組成物を提供することができ、その医療上の価値は多大なものである。【配列表】【図面の簡単な説明】第1図は、実施例1で検討したグレリン含有水溶液中でのグレリンおよびデスアシル体およびDha体の分解パターンを示すHPLCチャート図である。第2図は、グレリンのpH−分解速度定数プロファイルを示すグラフである第3図は、各pHの水溶液中におけるグレリンの分解物の生成量を示すグラフである。第4図は、各緩衝液中におけるグレリンのpH安定性を示すグラフである。 pH調節剤または緩衝剤を添加し、グレリン類を溶解した緩衝能を有する水溶液のpHを3〜6の範囲にしたことを特徴とする、グレリン類の疎水性修飾構造の分解を抑制させてグレリン類を安定に含有する医薬組成物。 pH調節剤が塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、重炭酸、グルコン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、クエン酸、モノエタノールアミン、乳酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、またはこれらの塩からなる群から選択される一つまたはそれ以上である請求項1に記載の医薬組成物。 緩衝剤がグリシン、酢酸、クエン酸、ホウ酸、フタル酸、リン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、炭酸、塩酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの塩からなる群から選択される一つまたはそれ以上である請求項1に記載の医薬組成物。 水溶液中のpH調節剤または緩衝剤の濃度が0.01〜1000mMである請求項1に記載の医薬組成物。 水溶液が緩衝液であり、当該緩衝液が、グリシン塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、リン酸−酢酸−ホウ酸緩衝液またはフタル酸緩衝液である請求項1に記載の医薬組成物。 水溶液中のグレリン類の濃度が、0.03nmol/mL〜6μmol/mLである請求項1に記載の医薬組成物。 グレリン類が酢酸塩である請求項1に記載の医薬組成物。 グレリン類がヒトグレリンである請求項1に記載の医薬組成物。 吸着抑制剤を含有する請求項1ないし8の何れかに記載の医薬組成物。 吸着抑制剤が界面活性剤であり、その濃度が0.001〜5%である請求項9に記載の医薬組成物。 請求項1ないし10に記載の水溶液を凍結乾燥して得られる粉末を含有することを特徴とするグレリン類を含有する医薬組成物。 pH調節剤または緩衝剤を添加し、グレリン類を溶解した緩衝能を有する水溶液のpHを3〜6の範囲にしたことを特徴とする、グレリン類の疎水性修飾構造の分解を抑制する方法。 pH調節剤が塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、重炭酸、グルコン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、クエン酸、モノエタノールアミン、乳酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、またはこれらの塩からなる群から選択される一つまたはそれ以上である請求項12に記載の方法。 緩衝剤がグリシン、酢酸、クエン酸、ホウ酸、フタル酸、リン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、炭酸、塩酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの塩からなる群から選択される一つまたはそれ以上である請求項12に記載の方法。 水溶液中のpH調節剤または緩衝剤の濃度が0.01〜1000mMである請求項12に記載の方法。 水溶液が緩衝液であり、当該緩衝液がグリシン塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、リン酸−酢酸−ホウ酸緩衝液またはフタル酸緩衝液である請求項12に記載の方法。 水溶液中のグレリン類の濃度が、0.03nmol/mL〜6μmol/mLである請求項12に記載の方法。 グレリン類が酢酸塩である請求項12に記載の方法。 グレリン類がヒトグレリンである請求項12に記載の方法。


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