タイトル: | 特許公報(B2)_でんぷんの同時の糖化及び醗酵による、乳酸又はその塩の製造のための方法 |
出願番号: | 2004503649 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12P 7/56,C12R 1/07 |
オットー, ロエル JP 4405914 特許公報(B2) 20091113 2004503649 20030513 でんぷんの同時の糖化及び醗酵による、乳酸又はその塩の製造のための方法 ピュラック バイオケム ビー. ブイ. 504421730 松井 光夫 100085545 オットー, ロエル EP 02076954.3 20020514 EP 02077648.0 20020610 20100127 C12P 7/56 20060101AFI20100107BHJP C12R 1/07 20060101ALN20100107BHJP JPC12P7/56C12P7/56C12R1:07 C12P 7/00-7/66 CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/EMBASE(STN) 特開平02−076592(JP,A) 米国特許第05079164(US,A) 特表平09−508013(JP,A) Appl.Environ.Microbiol.,Vol.61,No.2(1995)p.656-659 Int.J.Syst.Bacteriol.,Vol.44,No.4(1994)p.659-664 Appl.Biochem.Bioetchnol.- Part.A Enzyme Engineering and Biotechnology,Vol.70-72(1998)p.895-903 13 EP2003050159 20030513 WO2003095659 20031120 2005525120 20050825 11 20060501 三原 健治 本発明は、でんぷんが同時の糖化及び醗酵の工程に付されるところの、乳酸又はその塩の製造のための方法に関する。 発酵工程は、合成的に生産することが困難である莫大な数の相当な商業的関心の生産物の製造のために開発される。発酵は、単純な化合物例えばアルコール(例えばエタノール及びブタノール);有機酸(例えばクエン酸、イタコン酸、(R)-又は(S)-乳酸及びグルコン酸);ケトン、アミノ酸(例えばグルタミン酸及びリジン)、及びまた抗生物質(例えばペニシリン及びテトラサイクリン);酵素;ビタミン(例えばリボフラビン、ビタミンB12及びベータカロチン)及びホルモンのようなより複雑な化合物を生産するために工業で使用される。また、醸造、ワイン、酪農、革及びタバコ産業では、発酵工程が使用される。 糖は、乳酸の製造原価への最も重要な一因である。それ故に、製造工程が安い糖を供給されるならば、乳酸の製造原価における大きな削減が達成されうる。でんぷん及びでんぷんの部分的水解物(後者はまた液化でんぷんとして知られ、それはまた、生産物例えばマルトオリゴ糖又はマルトデキストリンに精製されうる)は、そのような安価な供給源を代表する。用語「液化でんぷん」は、溶解された又は可溶性の形状に導くでんぷんの酸、酵素的又は熱機械的液体化を意味するところの液化の工程に付されたでんぷんを意味する。用語「マルトオリゴ糖」は、2〜50(n)の重合度(DPn)を有する無水グルコース単位のα-1,4-グルコシド結合からなるマルトサッカライド(例えばマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース又はマルトペンタオースなど)を意味する。用語「重合度」すなわちDPnは、所与の糖類中の無水グルコピラノース単位の数を意味する。2つのα-1,4-グルコシド結合されたグルコース残基を有するマルトースは、DP2と言われてよい;3つのα-1,4-グルコシド結合されたグルコース残基を有するマルトトリオースは、DP3といわれてよい(以下同様)。用語「マルトデキストリン」は、20未満のDEを有するでんぷん加水分解生成物を意味する。用語「DE」(デキストロース当量)は、乾燥基準でD-グルコースとして表される還元力(カルボニル官能性の存在による電子の喪失)を意味する。用語「乾燥基準」は、水の不存在に基づく組成物を意味する。例えば、25重量%の成分A、25重量%の成分B及び50重量%の水を含む製品は、乾燥基準に基づき50重量%の成分A(又はB)を含む。用語「乳酸」は、その遊離酸形又は塩形のいずれかでの2-ヒドロキシプロピオン酸を意味する。乳酸の塩形は特に、乳酸塩(例えば乳酸のカルシウム塩又は乳酸カルシウムのいずれかとして)と言われる。乳酸のアルカリ塩及びアルカリ土類金属塩が好ましい。乳酸は、キラル炭素原子を含み、そしてその理由のために(R)及び(S)鏡像異性体として存在しうる。本明細書で使用される用語「乳酸」は、純粋の(R)及び(S)異性体、及びラセミ混合物を包含するそれらの混合物を含む。過剰(S)-異性体について用語「鏡像体純度」は、鏡像体純度=100% x {((S)-異性体)/((R)-異性体 + (S)-異性体)}を意味する。過剰(R)-異性体についての用語「鏡像体純度」は、鏡像体純度=100% x {((R)-異性体)/((R)-異性体 + (S)-異性体)}を意味する。 発酵工程のために使用される多くの微生物は、それらがでんぷんを液化するための酵素的機構若しくは糖化のための酵素的機構のいずれかを欠如しているか又はそれらがいずれも欠如している故に、でんぷん、液化でんぷん、マルトデキストリン又はマルトオリゴ糖を発酵することができない。用語「糖化」は、でんぷん又は液化でんぷん又はマルトデキストリン又はマルトオリゴ糖の酸加水分解又は酵素的加水分解を意味し、これは究極的にはD-グルコース又はマルトース又は小さいマルトオリゴ糖又はそれらの混合物を生じる。α−アミラーゼ又はグルコアミラーゼ又はプルラナーゼ又はそれらの混合物の調製物でこれらの微生物の培養を強化することは、この非相溶性問題を簡便に解決しうる。用語「α-アミラーゼ」は、EC番号3.2.1.1を有する機能的クラスに属する酵素及び慣用名グリコゲナーゼ、ジアスターゼ、真菌のα-アミラーゼ、又は細菌のα-アミラーゼ並びに分類名1,4-α-D-グルカングルカノヒドロラーゼを意味する。α-アミラーゼは、1,4-α-D-グルコシド結合の末端加水分解によって、3又はそれ以上の1,4-α-結合されたD-グルコース単位を含む多糖類を部分的に解重合する。用語「グルコアミラーゼ」は、EC番号3.2.1.3を有する機能的クラスに属する酵素及び慣用名グルコアミラーゼ、γ−アミラーゼ、リソソームのα-グルコシダーゼ、酸マルターゼ、エクソ-1,4-α-グルコシダーゼ、グルコザイム、AMG又はGAM並びに分類名1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼを意味する。グルコアミラーゼは、β-D-グルコースの放出を伴って鎖の非還元性末端から順次に、末端の1,4-結合されたα-D-グルコース残基を加水分解し、そしてそれらはα-1,6-結合を加水分解する。用語「プルラナーゼ」は、EC番号3.2.1.41を有する機能的クラスに属する酵素及び慣用名限界デキストリナーゼ、脱分岐酵素又はアミロペクチン 6-グルカノヒドロラーゼ並びに分類名α-デキストリン-6-グルカノヒドロラーゼ又はプルラン 6-グルカノヒドロラーゼを意味する。プルラナーゼは、α-1,6-結合を加水分解することによってでんぷんを脱分岐した。用語「でんぷん」は、任意の精製された又は粗でんぷん若しくは液化でんぷん又は任意のでんぷん含有物質若しくは液化でんぷん含有物質を意味する。小麦、トウモロコシ、ライ麦及びジャガイモでんぷんが、本発明において有用に適用されることができるでんぷんの例である。 でんぷん又は液化でんぷんの糖化と糖化生産物(グルコース、マルトース、小さいマルトオリゴ糖)の発酵とを組み合わせるシステムは、「同時の糖化及び発酵」(SSF:simultaneous saccharificationand fermentation)工程として知られている。SSFシステムは、相当な期待ができる。 でんぷん又は液化でんぷんの乳酸への発酵は、従来技術例えば欧州特許出願公開EP354828A1で知られており、そこでは、液化小麦でんぷん及びグルコアミラーゼの調製物を含むブロス中でラクトバチルス・デルブルエッキィ・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp lactis)又はラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)をインキュベーションして、乳酸塩含有発酵ブロスを生産することを含むところの、乳酸を生産するための工程が開示される。Appl. Biochem. Biotechnol.、第52巻:第163〜169頁(1999年)においてHofvendahl等は、小麦でんぷんを含む発酵ブロス中で、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)でのSSF-システムを記載する。Enz. Microb. Technol.、第19巻:第118〜123頁(1996年)においてLinko等は、大麦でんぷんを含む発酵ブロス中で、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacilluscasei)でのSSF-システムを記載する。米国特許第2,588,460号は、液化とうもろこしでんぷん及びグルコアミラーゼ調製物を含む発酵ブロス中でラクトバチルス・デルブルエッキィをインキュベーションして、乳酸塩を含む発酵ブロスを生産することを含むところの、乳酸を生産するための工程を記載する。J. Chem. Technol. Biotechnol.、第55巻:第111〜121頁(1992年)においてMercier等は、液化とうもろこしでんぷんを含む発酵ブロス中でのラクトバチルス・アミロフィラス(Lactobacillus amylophilus)でのSSF-システムを記載する。J. Indust.Microbiol.、第7巻:第27〜34頁(1991年)においてCheng等は及びBiotechnol. Letters、第13巻:第733-738頁(1991年)においてZhang等は、液化とうもろこしでんぷんを含む発酵ブロス中でラクトバチルス・アミロヴォルス(Lactobacillus amylovorus)でのSSF-システムを記載する。米国特許5,464,760号及び国際特許WO 94/13826号では、液化馬鈴薯でんぷんを含む発酵ブロス中で(R)-及び(S)-乳酸を生産するラクトバチルス種の混合培養物をインキュベーションすること及び乳酸塩を含む発酵ブロスを生産するためにグルコアミラーゼを調製することを含むところの、乳酸を生産するための工程が記載される。Appl. Biochem. Biotechnol.、第70/72巻:第417〜428頁(1998年)においてTsai等は、馬鈴薯でんぷんを含む発酵ブロス中でのラクトバチルス種でのSSF-システムを記載する。用語「発酵ブロス」は、栄養素、成長因子及び炭水化物の供給源として微生物に元々提供される形での培地及び元々提供された栄養素、成長因子若しくは炭水化物の幾つか又は全てが消費された後に生産された培地の両方を言い、そして乳酸を含む発酵生産物は、微生物によって培地内に分泌された。 微生物、例えばラクトバチルス種、ラクトコッカス種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種及びスポロラクトバチルス(Sporolactobacillus)種は、乳酸の生産者であるけれども、30〜50℃の範囲(30〜37℃で最適である)で成長温度を有するという事実(それは、工業的規模発酵システムにおいて感染を避けることをより困難にし、これはより高い温度が使用されうる場合よりも発酵の間に乳酸の鏡像体純度を危うくする)を含むある特性が、これらの有機体を乳酸の工業的製造に、比較的低度に適切とする。 本発明の1つの目的は、既知のSSF工程のこの不利点のない方法を提供することである。 その上、これらの微生物の成長温度範囲は、グルコアミラーゼ及びプルラナーゼの適用温度範囲(それは50〜70℃の範囲である)及びα-アミラーゼの適用温度範囲(80〜105℃である)と一致しない。これらの微生物に最適である温度でSSFとして働かされる微生物での乳酸発酵は、酵素の活性に関して最適より劣る。これらの低減された活性は、より多くのグルコアミラーゼ、プルラナーゼ若しくはα-アミラーゼ又はそれらの混合物を添加することによって補われうるが、これは費用を増すだろう。その上、これらの有機体は、発酵培地中にかなりの量の有機性窒素ならびに成長促進物質を要求し、従ってブロスがより高価になり、及び乳酸は、単純な発酵培地が使用されうる場合よりも精製することがより困難になる。これらの考察の面で、より好熱性の栄養的により少ない要求性の乳酸生産バクテリアが、より有利であることがわかった。 それ故に、本発明は、でんぷんが同時の糖化及び醗酵の工程に付される乳酸又はその塩の製造のための方法であって、少なくともグルコアミラーゼを含む培地中ででんぷんを糖化すること、及び同時に微生物を使用して該でんぷんを醗酵すること、及び任意的に該培地から乳酸を分離することを含む方法において、中庸に好熱性の乳酸生成微生物が使用され、該微生物がpH 5〜6にに適合されており且つ該微生物がバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーモアミロボランス(Bacillus thermoamylovorans)、バチルス・スミッチイ(Bacillus smithii)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)の菌株から又はそれらの混合物から得られるものであることを特徴とする方法に関する。 単純な糖類、例えばグルコース及びスクロースからの乳酸の製造のための中庸に好熱性のバチルス種の使用は、従来技術で知られている。用語「中庸に好熱性」とは、30〜65℃の間の温度(40〜60℃の間で最適を有する)で、より好ましくは50〜60℃の間の温度で成長することが可能であるバクテリア株を意味する。米国特許第5,002,881号及び独国特許出願第4,000,942号は、乳酸塩含有発酵ブロスを生産するために、炭水化物としてグルコース又はスクロースのいずれかを含む単純な発酵培地中において48〜54℃でバチルス・コアギュランスの株をインキュベートすることを含むところの乳酸を生産するための工程を開示する。独国特許出願第4,000,942号、Kemisk、第25巻:第125〜130頁(1944年)においてOlsen及びEnzyme Microb. Technol.、第24巻:第191〜199頁(1999年)においてPayot等は、乳酸塩を含むブロスを生産するために、炭水化物としてスクロースを有する発酵培地においてバチルス・コアギュランス(すなわち、ラクトバチルス・セレアレ)を使用し、滅菌条件無しに50〜60℃での乳酸発酵を記載する。米国特許第6,022,537号は、中庸に好熱性のアミロース分解性有機体、バチルス・サーモアミロボランスを開示し、これは乳酸を生産するために有益である。 しかしながら、SSF技術での、でんぷん(又は液化でんぷん)からの乳酸の製造のために、中庸に好熱性の乳酸生産株の使用は、まだ開示されていず且つ微生物とグルコアミラーゼ又はプルラナーゼとの間に存在する温度非一致を有利に解決すること及びそれをα-アミラーゼについて改善することが今見つけられた。鏡像体的に純粋な乳酸又はその塩がいま、容易に調製されうることが、本発明の更なる有利点である。用語「鏡像体的に純粋」は、鏡像体純度が少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、及び最も好ましくは少なくとも99%であることを意味する。バチルス・コアギュランス及びバチルス・サーモアミロボランスは、優れた乳酸塩生産者であるが、それらはまた、一見、これら有機体をでんぷん又は液化でんぷんからの鏡像体的に純粋な乳酸の製造のための比較的低度に適切な候補とするある特性を有する。バチルス・サーモアミロボランスはヘテロラクティック(heterolactic)であり、これは、炭水化物基質の一部が乳酸以外の生産物(エタノール、酢酸及び蟻酸)に発酵され、それによって生産物収率(炭水化物モル当たりの乳酸モル)を低下し且つ生産物乳酸を精製することをより難しくすることを意味する。Appl. Environm. Microbiol.、第65巻:第4582〜4585頁(1999年);Appl. Environm. Microbiol.、第61巻:第656〜659頁(1995年)及びInternat. J. System. Bacteriol.、第45巻:第9〜16頁(1995年)においてCombet-Blanc等は、グルコースに対する乳酸塩収率が典型的にほほ88〜92%程度(グルコースモル当たりの乳酸モル)であることを開示する。その上、(S)-乳酸の鏡像体純度は98%であったことがまた開示された。バチルス・コアギュランスはヘモラクティック(hemolactic)であり、これは炭水化物が乳酸のみに発酵されることを意味する。その上、独国特許出願4,000,942号は、乳酸の鏡像体純度が100%に近いことを開示する。一方、バチルス・コアギュランスは、でんぷん若しくは液化でんぷん又はマルトデキストリン若しくはマルトオリゴ糖をほとんど発酵しない。バチルス・コアギュランス及びバチルス・サーモアミロボランスは、乳酸生産のために比較的高いpH最適を有し、これは、グルコアミラーゼの好ましい適用(作用)pH範囲(3.5〜5)よりもpH単位で実質的に高い。従って、グルコアミラーゼの適用pH範囲は、上記微生物のそれと一致しない。該微生物のために最適であるpHで、SSFとして操作される中庸に好熱性のバチルス・コアギュランス及びバチルス・サーモアミロボランスでの乳酸発酵は、グルコアミラーゼの活性を減少する。これは、より多くのグルコアミラーゼを添加することによって補償されうるが、これは費用を増すだろう。それ故に、中庸に好熱性の乳酸生産微生物、例えばバチルス・コアギュランスの使用のために適切なSSFシステムを使用するための方法を提供することが本発明のさらなる目的である。この株は、基質転化の高い速度及び高い生産収率を有する。高い遊離グルコースの濃度でグルコアミラーゼはグルコースからα-1,4、α-1,6及びα-1,3結合を生成する逆反応を与えることができて、糖類、例えばマルトース、イソマルトース及びニゲロースを生産し、それは中庸に好熱性の乳酸バクテリアによってほとんど又は全く発酵されないことが知られている(例えば、Starch Conversion Technology (van Beynum 及びRoels編)、Marcel Dekker Inc、ニューヨーク州、第101〜142頁のReilly(1985年):Enzymic degradation of starch)。中庸に好熱性の乳酸バクテリアでのSSFの適用は、発酵ブロス内の遊離グルコースの蓄積を妨げ、そしてそれによって逆反応の速度を防止し又は減少し且つそれによって非発酵性糖類、例えばイソマルトース及びニゲロースの蓄積を防止する。これは、でんぷん又は液化でんぷんに対する乳酸塩収率を増加し、且つ発酵ブロス内に存在する乳酸を精製することを比較的困難でなくする。 好ましい実施態様では、でんぷんが、グルコアミラーゼと、プルラナーゼ及びα−アミラーゼの少なくとも1つとの混合物内で、糖化され、発酵され、そして任意的に液化される。 本発明の方法は、慣用の発酵工程と比較して実質的により少ない残留の糖類が得られ、乳酸の直接の分離を可能にするという結果を生じる。従って、本発明は容易な且つ安価な仕上げ手順の有利点を提供し、残留の糖類から乳酸を分離するために複雑な抽出ステップをもはや必要としない。低い残留の糖量が開始生産物として精製されたでんぷんの使用をもはや要求としない故に、本発明の方法の追加の有利点は、粗でんぷんを使用する可能性である。通常、5g/lよりも少ない、好ましくは2g/lよりも少ない残留の糖含量は、本発明の方法で容易に得られうる。 上記に示されたように、糖化は、グルコアミラーゼ、又はグルコアミラーゼ及びα−アミラーゼ及び/又はプルラナーゼの混合物によって行われる。グルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3、1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼ)は主に、でんぷん及びα-アミラーゼ加水分解から残されたフラグメントの両方の非還元性末端でα-1,4-グルコシド結合を開裂する。グルコアミラーゼは、エキソヒドロラーゼであり、且つ主にα-1,4-グルコシド結合によって互いに結合されたグルコースを含むジ−、オリゴー、及びポリサッカリドを攻撃するが、α-1,6-グルコシド結合及びα-1,3-グルコシド結合は、より低い速度で攻撃される。許容されるグルコース収率が得られるべきである場合に、α-アミラーゼ処理後のでんぷん加水分解物が、開裂されなければならないα-1,6-グルコシド結合を含む故に、上記は相当な産業的興味である。α-1,6-グルコシド結合に対するグルコアミラーゼの活性は低い故に、ある商業的に入手可能なグルコアミラーゼ調製物はプルラナーゼを含む。プルラナーゼは、でんぷん及び液化でんぷん中に存在するα-1,6-グルコシド結合を開裂する、いわゆる脱分岐酵素である。液化でんぷんを糖化するために、主成分として酵素を含むグルコアミラーゼならびにグルコアミラーゼとプルラナーゼを含む組み合わせ調製物が、本発明に従う方法に適切であると思えた。グルコアミラーゼ及びプルラナーゼのための適用pH範囲は、3.5〜5の間で最適であると見つけられた。適用温度範囲は、55〜70℃の間で最適であると見つけられた。活性並びに酵素の安定性への乳酸カルシウム及びpHの影響が、発酵生産物の蓄積の結果として次第に悪くなっていないことが見つけられた。 たとえそうであっても、プロセスの始めでの1回の添加の代わりに、全般的な発酵機能に関して少なくとも2つの部分に分けて酵素を添加することが好ましい。商業的に入手可能なグルコアミラーゼ/プルラナーゼ調製物(Genecor及びNovo Nordiskより)が試験された。全てが、相当な脱分岐活性を含んでいた。AMG(商標) E(Novo Nordiskより、高い脱分岐活性を有するグルコアミラーゼ)、Dextrozyme(商標) E(グルコアミラーゼ及びプルラナーゼを含む、Novo Nordiskより)、及びOptimax(商標) 7525 HP(グルコアミラーゼ及びプルラナーゼを含む、Genencorより)がまた試験され、そしてやはり大きな相違は、これらの調製物間で観察されなかった。Dextrozyme(商標) Eは、全般的な発酵機能に関してAMG(商標) E及びOptimax(商標) 7525HPよりもわずかに少なく機能した。AMG(商標) E及びOptimax(商標) 7525 HPは、殆ど同一に機能し、そして両酵素調製物が詳細に研究された(実施例参照)。 発酵が、中庸に好熱性の乳酸生産微生物、例えばバチルス・コアギュランス、バチルス・サーモアミロボランス、バチルス・スミッチイ、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラスの株由来の又はそれらの混合物由来の微生物によって実行される。これらの微生物は、30〜65℃の間の温度で成長することができる。従って、これらの微生物は、酵素の最適作用温度で働くようにより良く調整され、及び本発明に従うプロセスは通常、30〜70℃の間の温度で実施される。本発明の方法は通常、pH 3〜8.5で、好ましくは、pH 5〜6で、より好ましくはpH 5.35〜5.80で、最も好ましくはpH 5.50〜5.60で実行される。 該好熱性の乳酸生産微生物を、該プロセスで使用されるpH範囲に適応させることが有利である。pHは、活性に強く影響を及ぼす。該酵素は、低いpH値で次第により活性になる。しかしながら、中庸に好熱性の乳酸生産微生物が最適に機能するところの通常のpH範囲は、6.0〜7の間である。それ故に、低いpH(5〜6の間、好ましくは5.35〜5.80の間、最も好ましくは5.35〜5.80の間)でその最大機能を有するように適合された中庸に好熱性の乳酸生産微生物を使用することが好ましい。微生物を適合させる技術は、従来技術で知られている。pH 5.35〜5.8での実行を改善するように、中庸に好熱性の乳酸菌生産バクテリアの適応又は順応は、pH 5.6の発酵培地中での40〜50の連続的な移し替えを実行することによって遂行された。 同時の糖化及び発酵は、でんぷんスラリー上で又は任意の他のでんぷんを含む組成物上で実行されてよい。前記でんぷんは、液化されていてもよく又は液化されていなくてもよい。非液化でんぷんスラリー又は任意の他のでんぷんを含む組成物が使用される場合、糖化及び発酵は液化と組み合わされてもよく、且つα-アミラーゼがまた発酵培地中に存在してもよい。 糖化工程全体は、72時間まで続けられてよい。しかしながら、典型的に40〜90分間の前糖化を行い、それから発酵の間に、糖化を完了することは可能である。前記前糖化工程は、発酵の直前での、50℃より上の温度で行われてよい。最も広く使用されるプロセスは、糖化のための保持段階がないところの同時の糖化及び発酵(SSF)プロセスであり、これは発酵有機体及び酵素が一緒に添加されることを意味する。本発明に従うプロセスでは、中庸に好熱性の乳酸生産微生物及び酵素がまた同時に添加されてもよい。本発明に従うプロセスはまた、前糖化に引き続き同時の糖化及び発酵によって実行されてもよいことは云うまでもなく、ここで酵素の追加的部分が中庸に好熱性の乳酸生産微生物の添加とともに添加される。 でんぷんスラリー、又は適切なでんぷんを含む物質のスラリー若しくは液化でんぷんが、発酵槽内に入れられる。微生物の接種原及び栄養素がまた発酵槽内に入れられる。発酵の間に、適切な塩基、例えば水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アンモニア、水酸化アンモニウム、又は適切な炭酸塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウムが、pH制御のために添加されてもよい。 適用された場合、本発明の液化プロセスでは、ゼラチン化されたでんぷん又はでんぷんを含む物質が、10〜30の間の平均DEを有するマルトデキストリンに分解される(加水分解される)。用語「ゼラチン化」は、でんぷん顆粒をでんぷん糊に転化する工程を意味する。加水分解は、酸処理によって又は酵素的にα-アミラーゼ処理によって実行されてよい。α-アミラーゼは、微生物又は植物から得られる。好ましいα-アミラーゼは、かび又は細菌起源である。α-アミラーゼの定義は、上に与えられている。酵素的液化工程は、5〜6の間、好ましくは5.35〜5.80の間、及び好より好ましくは5.50〜5.60の間のpHで実行されてよい。従って、酵素的液化は、前糖化若しくは同時の糖化及び発酵のいずれか、又はそれらの両方と有利に組み合わされてよい。酸加水分解の使用は、広く普及していないけれども、使用されてもよい。該原料は、ミルにかけられた(全体)シリアル又はおろされた、寸断された根(じゃがいも、タピオカ)、塊茎、全粒粉、トウモロコシ、トウモロコシの穂軸、小麦、大麦、ライ麦、マイロ、糖を含む原料(例えばモラセス)、フルーツ物質、サトウキビ又はサトウダイコン、じゃがいも、セルロースを含む物質、例えば木又は植物遺物であってよい。 しかしながら、でんぷん処理からのサイドストリーム、たとえばいわゆるB−でんぷんがまた使用されてもよい。液化は、従来技術で知られており、本明細書でさらなる説明は必要でない。上に示されたように、液化はまた、糖化及び発酵と組み合わせて行われてもよい。 本発明の好ましい実施態様では、液化工程は次の工程を含む: 1) 熱いスラリーが、60〜95℃、好ましくは80〜85℃の間で加熱され、そして少なくともα-アミラーゼが添加される; 2) 該スラリーは、該スラリーのゲル化を完了するために、95〜140℃、好ましくは105〜125℃の間の温度でジェットクックされる; 3) 該スラリーが、60〜95℃まで冷やされ、そして更にα-アミラーゼが加水分解を終了するために添加される。 液化工程は、pH 5〜6で、特に5.35〜5.80の間のpHで、最も好ましくはpH 5.50〜5.60で行われてもよい。 組み合わされた糖化及び発酵後に、形成された乳酸は、任意的に発酵培地から単離され、そして必要であれば精製される。乳酸のための慣用的な精製/単離は、蒸留、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、結晶化など、及び上記された精製/単離方法の組み合わせである。蒸留は、最も一般に使用される技術である。しかしながら、上に説明されたように、本発明に従うプロセスで、発酵可能でない糖類の形成が低減される。それ故に、単離又は精製工程が、より複雑でなくてよく且つときどき余分でさえありうる。蒸留をいかに実行するかについての更なる詳細、及び乳酸を回収するための他の技術が当業者によく知られている。本発明は、本発明をそれらに制限することなく含まれるところの、下記の実験によってさらに例示される。実施例SSF実験培地及び培養条件 pH 5.65に適合された培養バチルス・コアギュランスが、温度及びpHコントロール(Applikon、シーダム、オランダ)を装備された、3リットルのガラス製ジャケット付き撹拌付きリアクター中で培養された。該培養は、マルトデキストリン培地の新しく調製されたバッチを含む発酵槽に、活発に発酵している培養物の180〜200mlを24時間毎に移すことによって、定期的に維持された(表1を参照)。発酵は、純粋なマルトデキストリン並びにブレア(ネブラスカ州、米国)にあるCargill Refineryからの液化でんぷん及びまたブレア(ネブラスカ州、米国)にあるCargill Refineryからのグルコースシロップで行われた。(表1を参照)。 該発酵槽の温度は、循環する水の槽によって54〜56℃で制御された。pH設定ポイントは、酵素の最適pHとpH 5.65に適合されたバチルス・コアギュランスのための最適との間の妥協である。該発酵は、pH 6.0で開始され、そして乳酸の形成の結果として下がることが許容された。pH5.55〜5.75に達すると、該pHは水酸化カルシウムの自動添加(250g/l)によって制御された。24時間発酵後に、該培養物は、AMG E(商標)(Novozymes)の第2の部分を受け取った。該発酵は、水酸化カルシウムの需要が終るまで進むことを許された。これは、30〜40時間のインキュベーション後にそうであった。 SSF実験の結果 SSF発酵のためのベンチマークは、基質としてグルコースシロップ(DE 98)での発酵によって設定された。SSF研究は、Roquette Freres からのマルトデキストリン調製物(Glucidex(商標)TM 12, DE 11〜14)で開始され、そして成功裡に終了された。2つのグルコアミラーゼ調製物が広範囲にテストされた:NovozymesからのAMG E(商標)(高分岐活性を有するグルコアラーゼ)及びGenencorからのOptimax(商標) 7525 HP(グルコアミラーゼ/プルラナーゼ)。純粋なマルトデキストリンでの典型的なSSF発酵は、2日以内に残留の糖類がなかった。しかしながら、基質としてDE 98グルコースシロップを受け取った比較培養内よりも一貫してより低い濃度において、存在する主な残留の糖類は、グルコース及びイソマルトースであった。マルトース濃度は、pH 6.4〜6.6で実施される比較可能なDE 98培養物とは対照的に低かった(<50mg/l)。かなりの量のマルトースが、Glucidex 12の添加を伴う発酵において導入された。マルトースが低いpHで発酵されえたという事実は、重要な発見であった。発酵収率(消費されたグルコースモル当たり生産された(S)-乳酸塩モル)は、100%よりもわずかに高かった。糖類のないSSFブロス中の有機酸が解析され、そしてレベルがpH 6.4〜6.6でのバチルス・コアギュランス培養と同等であった。pH 5.55より下では、SSF発酵は比較的遅かった。pH 5.90では、残留の糖類の合計における50%増加が、pH 5.55〜5.75の間で実行された培養と比較して観察された。同様の結果が、粗液化でんぷんを使用して得られた。最終段階では、成功のSSF実験が、粗液化でんぷん加水分解物で実行された。発酵時間に関して、精製されたマルトデキストリンでのSSF発酵とCargill Refineryからの液化でんぷんとの間で観察された違いはない。両方のSSF発酵は、30〜40時間で終了した。基質として、粗液化でんぷん又はマルトデキストリンを含む培養物は、典型的に180〜200g/lの(S)-乳酸を含んだ。乳酸の鏡像体純度は、99.5%よりもよかった。 様々な中庸に好熱性の微生物を使用したSSF実験 SSF実験は、バチルス・コアギュランス、バチルス・サーモアミロボランス、バチルス・スミッチイ、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラス及び4つの全ての混合物で行なわれた。これに関して、上記されたSSF実験でと同じ手続及び条件を使用し、該培養物が液化でんぷんの組み合わされた糖化及び発酵において生長されそして使用された。使用された全ての微生物(該混合培養を含む)は、高い光学的純度を有する乳酸を生産することができた。該結果が、表2にまとめられる。 でんぷんが同時の糖化及び醗酵の工程に付される乳酸又はその塩の製造のための方法であって、少なくともグルコアミラーゼを含む培地中ででんぷんを糖化すること、及び同時に微生物を使用して該でんぷんを醗酵することを含む方法において、中庸に好熱性の乳酸生成微生物が使用され、該微生物がpH 5〜6に適合されており且つ該微生物がバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーモアミロボランス(Bacillus thermoamylovorans)、バチルス・スミッチイ(Bacillus smithii)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)の菌株から又はそれらの混合物から得られるものであることを特徴とする方法。 該培地から乳酸を分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。 該でんぷんが、グルコアミラーゼと、プルラナーゼ及びα−アミラーゼの少なくとも1つとの混合物内で、糖化され及び醗酵される、請求項1又は2に記載の方法。 非液化でんぷんが用いられる場合に、該でんぷんが液化に付される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 乳酸又はその塩が、95%よりもよい鏡像体純度で作られる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 前記工程が、pH 3〜8.5で実行される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 前記工程が、pH 5〜6で実行される、請求項6に記載の方法。 前記工程が、pH 5.35〜5.80で実行される、請求項6に記載の方法。 前記工程が、pH 5.50〜5.60で実行される、請求項6に記載の方法。 前記微生物が、pH 5.35〜5.80に適合されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。 前記微生物が、pH 5.50〜5.60に適合されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。 前記工程が30〜70℃で実行される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。 前記グルコアミラーゼ、又はグルコアミラーゼと、プルラナーゼ及びα−アミラーゼの少なくとも1つとの混合物が、少なくとも2つの部分に分けて添加される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。