タイトル: | 特許公報(B2)_アントラニル酸誘導体の水和物の製造方法 |
出願番号: | 2004503463 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07D 401/12 |
デイビッド・フランク・ヘイマン マイケル・ライト JP 4464814 特許公報(B2) 20100226 2004503463 20030513 アントラニル酸誘導体の水和物の製造方法 アバーント・ファーマシューティカルズ・(インディア)・リミテッド 507268330 AVAANT PHARMACEUTICALS (INDIA) LIMITED 田中 光雄 100081422 山田 卓二 100101454 岩崎 光隆 100067035 デイビッド・フランク・ヘイマン マイケル・ライト US 60/379,759 20020514 20100519 C07D 401/12 20060101AFI20100422BHJP JPC07D401/12 C07D 215/00-227/12 C07D 401/00-421/14 特表2001−502683(JP,A) 特開平08−337584(JP,A) 特開昭64−038096(JP,A) 1 GB2003002060 20030513 WO2003095447 20031120 2005538051 20051215 23 20060425 福井 悟発明の詳細な説明 本発明は、P−グリコプロテイン(P-gp)の阻害剤としての活性を有するアントラニル酸誘導体の酸付加塩の水和形態物、その製造およびそれらを含有する医薬用および獣医薬用組成物に関する。 WO-A-98/07648は、アントラニル酸を基にした構造を有する一連の塩基性化合物、およびその酸付加塩を記載している。これらの化合物は、P-グリコプロテイン(P-gp)の阻害剤としての活性を有し、多剤耐性の調節剤として、例えば腫瘍および病原体の多剤耐性を克服する際に、使用され得る。また、該化合物は、ある種の薬物の吸収、分布、代謝および排除特徴を改良する際に潜在的な有用性を示す。 WO-A-98/07648の多くの化合物は、2つの塩基性中心(basic centres)を有し、塩形成酸とともに酸付加ビス塩を最終的に形成する。このビス塩は水和されるが、特定の水和物として存在しない。どちらかといえば、それらは、吸湿性であるという欠点を有する変化し得る水分含量を伴う不確定な水和物として得られる。 驚くべきことに、二塩基性出発化合物および塩形成酸を含む系への過剰な水添加は、二塩基性化合物の溶解を促進し、定義された水和物として所望の酸付加ビス塩の形成を導く。この水和物は、制御された乾燥条件下で安定である。 従って、本発明は、式(I):[式中、R11およびR21は、同一または異なっていてもよく、各々水素またはCl-C6アルコキシであり、 R31およびR41は、同一または異なっていてもよく、各々独立して、H、Cl-C6アルキル、CF3、ハロゲン、NH2、NO2、NHOH、Cl-C6アルコキシ、ヒドロキシおよびフェニルから選択されるか、または R31およびR41は、隣接炭素原子上に位置する場合、それらが結合している炭素原子と一体となって、ベンゼン環またはメチレンジオキシ置換基を形成し、 R51は、ピリジン、キノリン、イソキノリン、5,6,7,8−テトラヒドロキノリンおよび5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリンから選択される基であり、該基はCl-C6アルキルまたはCl-C6アルコキシによって置換されていてもよい、 rは0または1であり、 sは1、2または3である。]の化合物の酸付加ビス塩水和物の製造方法であって、 (a)任意の順で、上記に定義した式(I)の化合物、医薬的に許容し得る有機溶媒、過剰な水および医薬的に許容し得る強酸を組み合わせて、混合物を形成すること、 (b)透明な溶液を形成するまで混合物を温めること、 (c)温いうちに該溶液を濾過し、濾液を得ること、そして (d)上記に定義した該水和物を濾液から回収すること、を含む製造方法を提供する。 すなわち、本発明の方法によって製造された水和物は新規化合物として定義される。従って、本発明は、医薬的に許容し得る強酸と共に、上記に定義した式(I)の化合物の酸付加塩の水和物を提供し、該水和物は化合物の1モルあたりx モル(xは1〜6の整数である。)の結晶水を含む。 整数xは、1、2、3、4、5または6であってよい。 Cl-C6アルキル基は、直鎖または分枝であってよい。Cl-C6アルキル基は、通常、C1-C4アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチル基である。ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIである。好ましくは、F、ClまたはBrである。 Cl-C6アルコキシ基は、直鎖または分枝であってよい。それは、通常、C1-C4アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i-プロポキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシまたはtert-ブトキシ基である。 該整数は1〜3であり、好ましくは、1または2である。好ましい一連の式(I)の化合物において、rは1であり、sは2であり,RllおよびR21は、共にメトキシであり、R51はキノリンまたはテトラヒドロキノリン環系である。R51は、全てのその利用できる環位置、例えば、1、2、3または4-位を介して結合される。通常、2または3位を介して結合される。好ましくは、R51は2−キノリンまたは3−キノリン基である。基R11およびR21は、好ましくは、テトラヒドロイソキノリン系の6位および7位である。 式(I)の化合物の例示は下記のようなものである: 式(I)の化合物の製造は、WO-A-98/17648に記載されている。 本発明の方法に用いられる医薬的に許容し得る強酸は、式(I)の化合物中に2つの塩基中心を有する塩を形成し得る酸である。これらは、テトラヒドロイソキノリンの窒素原子およびヘテロ環基R51中の窒素原子である。これらの2つの中心のpKa値は顕著に異なっており、該酸は両方に陽子を供与するに十分強くなければならない。本発明の方法に使用するのに適当な強酸の例には、アリールスルホン酸(例えば、トルエン-パラ-スルホン酸)、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸)、塩酸および有機ジカルボン酸、例えばマロン酸およびコハク酸が包含される。 本発明の方法に用いられる医薬的に許容し得る有機溶媒は、通常、アルコール、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールまたはプロピレングリコールである。 本発明の方法に用いられる過剰な水は、医薬的に許容し得る有機溶媒とは別に、あるいは一緒に、ステップ(a)における反応混合物に導入されうる。例えば、水性アルコール溶液は、有機溶媒および水の両方を同時に提供する。適当な水性アルコール溶液は、3:1(v/v)の比のアルコール対水を含む。75%のエタノール溶液が特に好ましい。本発明の方法に用いられる水は、通常脱ミネラル水である。薬事規制上、水は精製水がより好ましい。 本発明の方法の範囲において、用語「過剰な水」は、式(I)の化合物の酸付加ビス塩を可溶化するため、そして該ビス塩の水和に関する至適レベルを達成するための両方について、十分な水を意味する。そのため、過剰な水は、最終水和物中の結晶水のモル数に比して1モル以上の過剰であることを意味する。 水和のレベルは、ビス塩中の結晶水のモル数であり、1〜6の整数である。その数は1、2、3、4、5または6であってよい。すなわち、通常、本発明の水和物は、結晶水の実質的なモル整数を持つ。固体状態での水和のレベルは、式(I)の化合物の構造およびその能力、とりわけ、水分子への結合を形成するための、例えば、水素結合を介する能力を包含する要因に依存する。 本発明の方法のステップ(b)において、該混合物は、透明な溶液を形成するまで加熱される。これは、通常、該混合物を、35℃から有機溶媒の還流温度、例えば、35℃〜70℃、より好ましくは45℃〜60℃の温度に加熱することを必要とする。 本発明の方法のステップ(c)において、該溶液は温いうちに濾過される。これは、溶液が、所望の生成物の早すぎる沈殿をさけるために十分な温度に保たれている間に濾過されることを意味する。これは、通常、温められたガラス器具、例えば、ステップ(b)で形成される溶液の温度またはそれ以上の温度で維持されるガラス器具を用いて達成される。 所望の水和物は、いずれかの便利な手段によって本発明の方法のステップ(d)で回収される。例えば、濾液は、貧溶媒、例えばアセトンまたはテトラヒドロフランで希釈され得る。薬事規制上、該貧溶媒は、医薬的に許容し得るものが好ましい。医薬的に許容し得る貧溶媒の好ましい例はアセトンである。本発明の方法の一つの実施態様において、ステップ(d)は、さらに、ステップ(c)において製造された温かい濾液を還流アセトン、好ましくは予め濾過された還流アセトンに添加することによって実施される。 本発明の方法は、40%〜80%、より好ましくは、50%〜80%の相対湿度を有する雰囲気中で実施されるのが好ましい。 本発明の方法によって製造される水和物は、吸湿性試験において、真空下での加熱により水を失うが、湿雰囲気中では原水和水準に復帰し得るということが示された。該水和物は、従前の方法によって得られた従来の不特定水和物以上に、より高い保存安定性(例えば、保存期間)および医薬製剤用媒体におけるより良好な溶解特性(すなわち、高い溶解速度)を有する。 本発明の水和物は、キノリン-3-カルボン酸(2-{4-[2-(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-エチル]-フェニルカルバモイル}-4,5-ジメトキシフェニル)-アミドのビスメシル酸塩の六水和物が好ましい。この化合物は、上記表中の化合物34であり、次の構造を有する。 上記六水和物は、 (a’)温めながら、キノリン-3-カルボン酸(2-{4-[2-(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-エチル]-フェニルカルバモイル}-4,5-ジメトキシ-フェニル)-アミド、エタノールおよび過剰な水を混合し、メタンスルホン酸を該混合物に添加すること、 (b’)透明な溶液を形成するまで該混合物を温めること、 (c’)温かいうちに該溶液を濾過し、濾液を得ること、そして (d’)所望の六水和物を濾液から回収すること、を含む方法によって製造されるのが好ましい。 ステップ(a’)において、水性エタノール溶液が使用され得る。あるいは、絶対エタノールおよび水を、別々に反応系に導入してもよい。いずれの場合も、エタノールと水の容積比は、約3:1が好ましい。水は、通常脱ミネラル水である。 ステップ(b’)において、該混合物は、通常35℃〜還流温度、好ましくは、約55℃に温められる。 ステップ(c’)において、該溶液は、温められたガラス器具によって濾過され、およそ濾液の温度に維持された滴加漏斗に、エタノールおよび水の混合物によって洗浄されるのが好ましい。 ステップ(d’)は、通常、濾液を、攪拌下に還流中の貧溶媒、好ましくは濾過されたアセトンに添加することによって実施される。次いで、得られる懸濁液は、数時間還流され、冷却されて、六水和物が固体として集められる。 本発明の水和物の別の特定の例は、化合物31のビスメシル酸塩の一水和物、すなわち、キノリン-3-カルボン酸(2-{4-{2-(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-エチル}-フェニルカルバモイル}-フェニル)アミドのビスメシル酸塩の一水和物である。 本発明の水和物は、式(I)の化合物のビス塩を医薬組成物に製剤するための便宜的手段を提供する。好ましい組成物は、経口または非経腸送達のための液体組成物である。すなわち、該水和物は、WO-A-98/07648に記載されている式(I)の化合物およびそれらの塩について考慮されている全ての医薬的用途に使用され得る。これらの応用は下記に説明される。 多剤耐性を示す癌細胞は、MDR細胞と呼ばれ、対応する薬剤感受性細胞と比較して細胞内の薬物蓄積の低下を示す。イン・ビトロ誘導MDR細胞系を用いる試験は、MDRが薬物結合特性を有する原形質膜グリコプロテイン(P-gp)の発現増加としばしば関連することを示した。P-gpは、多くの疎水性化合物に対する排出ポンプとして機能すると考えられており、クローン化P-gpを用いるトランスフェクション試験は、その過剰発現が細胞に対するMDR表現型を付与し得ることを示した:例えば、Ann. Rev. Biochem 58 137-171 (1989)を参照されたい。 正常組織におけるP-gpの主な機能は、細胞からの細胞内毒素を搬出することである。P-gpの過剰発現が多剤耐性における臨床的役割を果たし得ることを示唆する証拠がある。P-gpのmRNAまたはタンパク質の増加したレベルは、多くの種類のヒト癌、すなわち白血病、リンパ腫、肉腫および癌腫において検出されている。 実際に、いくつかの場合において、P-gpレベルは、化学療法からの再発後に行われる腫瘍生検において増加が見られている。 P-gp媒介MDRにおけるP-gp機能の阻害は、細胞における抗ガン剤の正味の蓄積に導くことが示されている。例えば、カルシウムチャンネルブロッカーとして知られるベラパミルは、MDR細胞をイン・ビトロおよびイン・ビボでビンカ・アルカロイドに感作することを示した:Cancer Res., 41,1967-1972 (1981)。提案された作用のメカニズムは、P-gpに対する結合について抗ガン剤との競合を包含する。このメカニズムによって作用する構造的に関連がない耐性−修飾剤の範囲が記載されており、例えば、タモキシフェン(Nolvadex:ICI)および関連化合物およびシクロスポリンAおよび誘導体を記載している。 上記に定義した式Iの化合物およびその医薬的に許容される塩は、生物学的試験において、P-gpの阻害剤としての活性を有することがわかった。それらは、MDR、特にP-gp媒介MDRを調節するのに使用され得る。該結果は後の実施例1に述べる。該化合物は、P-gp阻害剤として、多剤耐性修飾剤として使用され、また耐性-修飾剤、あるいはRMAと呼ばれ得る。該化合物は、多剤耐性、特にP-gpに媒介されるものを調節、例えば低下もしくは排除し得るものである。 該化合物は、腫瘍細胞に対して細胞毒性である薬剤の細胞毒性を増強する方法において使用され得る。かかる方法は、例えば、腫瘍細胞が問題の細胞毒性薬剤に暴露されている間、腫瘍細胞に該化合物の1つを投与することを包含する。こうして、化学療法用または抗新生物用薬剤の治療効果が増強され得る。化学療法中の細胞毒性薬剤に対する腫瘍細胞の多剤耐性は、低下もしくは排除され得る。 また、該化合物は、原因となる病原体が多剤耐性を示す疾患、特にP-gp媒介多剤耐性、例えば、マラリア (Plasmodium falciparum)、結核、リーシュマニア症およびアメーバー性赤痢の多剤-薬物耐性を示す病原体による疾患を処置する方法において使用され得る。かかる方法は、該化合物の1つを、例えば、病原体に関連のある薬物と共に(別々に、同時的にもしくは連続的に)投与することを含む。多剤耐性病原体を標的とする薬物の治療効果は、その結果増強され得る。 ヒトまたは動物患者の腫瘍保持対象は、上記に定義した式(I)の化合物の1つをそこに投与することを含む方法によって化学療法用薬剤に対する耐性について処置されうる。該化合物は、有効量で投与され、該化学療法用薬剤の細胞毒性を増強する。本発明の範囲内で好ましい化学療法用または抗新生物薬剤の例には、ビンカ・アルカノイド、例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン;アンスラサイクリン抗生物質、例えばダウノルビシンおよびドキソルビシン;ミトキサントロン;アクチノマイシンD;タキサン、例えば、タキソール;エピポドフィル(epipodophyllo)毒素、例えば、エトポシドおよびプリカマイシンが包含される。 上記に定義した式(I)の化合物は、治療剤の吸収、分布、代謝および/または排除の特性を増強する方法において使用することができ、この方法には、対象に該化合物のひとつおよび該治療剤を、別々に、同時にまたは連続投与することが含まれる。特に、この方法は、中枢神経系への治療薬剤の浸透を増強するため、または治療剤の経口吸収を増強するために使用される。 例えば、該化合物は、血液脳関門を通過する薬物の送達を容易にする方法において、そしてAIDSまたはAIDS関連合併症の処置において使用されうる。かかる処置を必要とするヒトまたは動物患者の対象は、本化合物の1つを対象に投与することを含む方法によって処置され得る。 本発明の水和物は、多様な用量形態、例えば経口的な、例えば溶液または懸濁液など、または例えば非経腸的な、例えば筋肉内、静脈内、または皮下への用量形態で投与するために製剤化され得る。さらに、本化合物は注射または吸入によっても投与される。 該用量は、対象の年齢、体重および症状を包含する多様なファクターに依存する。しかし、通常、各投与ルートに採用される用量は、式(I)の化合物を、例えば、0.001〜50mg/kg体重、最も一般的な範囲で0.01〜5mg/kgの送達を達成するような量である。かかる用量は、例えば、ボーラス注射によって1〜5回/日、数時間にわたる点滴および/または反復投与によって与えられる。 本発明の水和物は、医薬的にまたは獣医薬的に許容し得る担体または希釈剤を含む医薬用または獣医薬用組成物としての使用のために製剤される。該組成物は、通常、次の従来法によって製造され、そして医薬的にまたは獣医薬的に適当な形態で投与される。本発明の水和物を含む多剤耐性の調節剤として使用するための薬剤が提供される。 本発明の水和物は、任意の従来の形態、例えば次のように投与され得る: A)経口的な形態、例えば、水性または油性の懸濁液、液体溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシル。経口使用を意図する組成物は、医薬組成物の製造のために当業者に既知のすべての方法に従って製造され、かかる組成物は、医薬的に美的で味のよい製剤を提供するために甘味剤、風味剤、着色剤および保存剤から選択される1以上の剤を含有し得る。 水性懸濁液は、水性懸濁液の製造のために適当な賦形剤との混合物中に活性物質を含有する。かかる賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムを包含する。分散または湿潤剤は、天然のリン脂質、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物、例えばポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである。 当該水性懸濁液は、1以上の保存剤、例えばエチルまたはn-プロピル p-ヒドロキシ安息香酸塩、1以上の着色剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含み得る。 油性懸濁液は、活性成分を植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油、または無機油、例えば液体パラフィンに懸濁することによって製剤される。油性懸濁液は、粘性剤、例えば、蜜ロウ、硬化パラフィンまたはセチルアルコールを含有してもよい。 甘味剤、例えば上記のようなもの、および香料は嗜好的経口製剤を提供するために添加されてもよい。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸の添加によって保存され得る。水の添加によって水性懸濁液の製造に適当である分散可能な粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁剤および1以上の保存剤との、混合物中の活性成分を提供する。適当な分散または湿潤剤および懸濁剤は、すでに上記したものによって例示される。別の賦形剤、例えば甘味剤、香料および着色剤も存在してよい。 本発明の医薬組成物は、油中水型エマルジョンの形態であってもよい。該油相は、植物油例えば、オリーブ油またはラッカセイ油または無機油、例えば液体パラフィンまたはこれらの混合物であり得る。適当な乳化剤は、天然ゴム、例えばアカシアゴムまたはトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えばダイズレシチン、または脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されたエステルもしくは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、および該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってよい。エマルジョンは、甘味剤および香料を含有してもよい。シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えばグリセロール、ソルビトールまたはスクロースとともに製剤され得る。特に、糖尿病患者のためのシロップは、坦体として、グルコースに代謝されないか、非常に少量のグルコースにしか代謝されない製品、例えばソルビトールのみを含有し得る。 かかる製剤は、刺激緩和剤、保存剤および香料および着色剤を含有し得る。 B)非経腸用形態、皮下、静脈内または筋肉内または胸骨内(intrasternally)のいずれか、あるいは滅菌注入し得る水性または油性の懸濁液の形態における点滴技術による。この懸濁液は、上に記載された湿潤剤および懸濁剤の適当な分散を用いて、当業者には既知の技術に従って製剤される。該滅菌注射製剤は、非毒性の非経腸的に許容し得る希釈剤または溶媒、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような、滅菌注入し得る溶液または懸濁液であってよい。 用い得る許容し得る坦体および溶媒には、水、リンゲル溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌された油、固定油は、溶媒または懸濁媒質として、従来から用いられている。この目的のために、全ての低刺激の固定油は、合成のモノまたはジグリセリドを含むものも用いられ得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注入し得る製剤において使用され得る。 C)ネブライザー用のエアローゾルまたは溶液の形態における吸入。 D)直腸用、薬物と、通常温度で固体であるが直腸温度で液体であり、そのため薬剤を放出する直腸内で溶融する適当な刺激のない賦形剤との混合によって製造される座薬の形態における使用。かかる物質はココアバターおよびポリ-エチレングリコールである; E)局所用、クリーム、軟膏、ゼリー、洗眼剤、溶液または懸濁液の形態における使用。 一日用量は、広い範囲で変えることができ、それぞれ特定の場合において、個々の要求に調整され得る。一般的には、成人に投与するためには、適切な一日用量は、式(I)の化合物の約5mg〜約500mgの範囲内であるが、この上限は、都合がよければ超えてもよい。一日用量は、単回でまたは分割して投与され得る。 本発明は、次の実施例でさらに説明される。 実施例1:化合物34のビスメシル酸塩六水和物の製造 キノリン-3-カルボン酸(2-{4-[2-(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-エチル]-フェニルカルバモイル}-4,5-ジメトキシ-フェニル)-アミド (10.33g, 16mmol)を、エタノール(62 ml, 6 volumes)および脱ミネラル水(20.6 ml, 2 volumes)の混合物中で攪拌し、メタンスルホン酸(3.38g, 35.2 mmol)を添加した。該混合物を、55℃に加熱し、透明なオレンジ色の溶液を得、予め加熱した漏斗から約55℃で維持した滴加漏斗に真空下で濾過した。これを、約55℃で1:1のエタノールおよび純水(2x20 ml, 4 volumes)の洗浄に供した。 濾液および洗液を合わせたものを、約20分間かけて、攪拌された還流アセトン(310 ml, 30 volumes)に添加し、粘着性の黄色固体を得た。さらに1時間、該混合物を還流した後、該黄色懸濁液を、2時間、約−5℃に氷浴中で冷却した。該生成物を、濾過により回収し、濾過したアセトン(3 x 50ml)で洗浄し、約30分間吸引乾燥した。淡黄色固体を、開放皿に移し、周囲温度と湿度を持つ空気を穏やかに流して一晩乾燥させ、表題化合物を得た。 重量:13.86g;収率:91.5%、六水和物に対する理論値。 Karl Fischer法による水分含量は、12.54%(六水和物に対する理論値:11.41%)であった。 1H NMRによるメタンスルホン酸と塩基の比率は、1.93:1(理論的には2:1が必要である。)であった。 HPLCによる純度は99.7%a/aであった。 元素分析は、C38H38N4O6・2CH3SO3H,12.54%の水に一致した。 実測値:C=50.35%;H=6.15%;N=5.85%;S=6.71%[C40H46N4012S2,12.54%H2Oとして理論値:C=50.09%;H=6.24%;N=5.84%;S=6.68%]。 実施例2:化合物31のビスメシル酸塩一水和物の製造 エタノール(18 ml, 6 volumes)および水(6 ml, 2 volumes)の混合物中のキノリン-3-カルボン酸(2-{4-2-(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-エチル]-フェニルカルバモイル}-フェニル)-アミド(3.0g, 5.11 mmol)の懸濁液を、約50℃に温め、メタンスルホン酸(1.08g, 11.2 mmol)を添加し、淡いオレンジ色の溶液を得た。これを濾過し、急速攪拌した還流アセトン(60 ml, 20 volumes)に添加した。この容器とフィルターを、約50℃で、エタノールと脱ミネラル水の1:1の混合物(6 ml, 2 回)で洗浄し、これを還流アセトンに添加した。混合物を2時間還流した後、該懸濁液を周囲温度に冷却し、淡黄色の生成物を濾過により回収し、アセトン(9ml)で洗浄し、周囲温度で真空下に乾燥した。 収量は3.8g(一水和物として93.3%)であった。 Karl Fischerによる水分含量は、2.42%(一水和物に対する理論値:2.26%)であった。 HPLCによる純度は100%a/aであった。 実施例3:吸湿性および脱水/再水和試験 実施例1で製造した六水和物を次のように分析した。4つのデシケーターキャビネットを、下記飽和塩溶液の開放皿を含むように用意し、次のような相対湿度(RH)を実現した。 周囲温度での%RH 飽和塩溶液 33% MgCl2・6H2O 60% NaBr 75% NaCl 95% KNO3 試料の脱水を、減圧下(65mm Hg)において、試料をシリカゲル上で保持するか、またはP205中で保持するかのいずれかで行った。全ての試験を、実験室の周囲温度(15-22℃)で行った。 吸湿性試験 予め平衡化した秤量ビンとフタ(最低24時間33%RHに保持したもの)を、風袋込み5ケタ分析用化学天秤上で秤量し、重量を記録した。これらに水和物を添加し(約2g)、重量を記録し、重量差(薬物の正確な重量)を計算した。秤量ボトル、フタおよび内容物を、次いで33%RHキャビネットに移し、フタを取って横に置いた。 適当な時間でフタを戻して重量を測定した。秤量後、試料をおだやかにかき混ぜ、33%RHキャビネットに戻して、再びフタを取って、横に置いた。全試料についての全ての重量%の変化が、安定したエンド・ポイントに到達したことを見られるまでこの過程を継続した。安定したエンド・ポイントが観察されたら、予め平衡化した秤量ビンに該薬物を移すことによって、該試料を次の%RHキャビネットにステップアップさせ、前記のとおりにそれらの重量を記録した。試料を、33%RH、60%RH、75%RHおよび95%RHで段階的に保持した。 脱水/再水和試験 この試験中に、試料を、予め平衡化した秤量ビンに吸湿性試験と同様に分配し、次いで、減圧しないでシリカゲル上で保持し、その後、減圧下(65mm Hg)にシリカゲル上に保持し、水和物を脱水した。P205上で一旦安定な重量に達成してから、上記の吸湿性試験と同様にして、試料を33%RH〜95%RHに保持することによって再水和させた。 水分含量の測定 水分含量を電量KF法(Karl Fischer)により測定した。 IR分析 水和物の試料を、脱水試験の終了時および再水和および吸湿性試験の終了時にIR分析(ATR)に供した。 結果 重量変化 吸湿性試験および脱水/再水和試験についての試験結果を表1に示した。 表1:60%RHまでの脱水/再水和および吸湿結果 (カッコ内はKF湿度試験結果、%w/w) *吸湿性試験試料の実際の累積保持時間は、表示した数値より1144時間少ない。 IR結果 再水和および吸湿性試験の終了時で採取した試料についてのIRスペクトルは、主なバンドの波数および相対強度において有意な差を示さなかった。 脱水試験の終了時に採取した試料のIRスペクトルは、約3500cm−1で、大きく、幅の広い水のバンドの予測された損失を示した。これ以外のスペクトルは、相対強度および分離でいくつかの小さな差を示したが、再水和および吸湿試験後に記録した値と類似していた。相対強度における主な差違は、約1650、1200および850cm−1で生じた。 結論 乾燥条件を増強していくと実施例1の水和物の脱水は、相対的に急速な水分消失を生じた。最終の重量変化(-11.5%)は、試料の初期水分含量(12.5%)と近似する。33%RHでの再水和は、重量損失の急速な回復を生じる。再水和した物質と非処置物質を、段階的に上昇するRH値で保持した場合、非常にわずかな試料重量の増加を生じるだけである。両試料は、33%RH保持および75%RH保存のエンドポイントの間で、2%(絶対値)より低い重量増加を示す。 すなわち、実施例1の水和物は、安定な水和物としての存在と一致する脱水/再水和特性を示した。これは、再水和に際して、その脱水で失ったのとほぼ同量の水を急速に取り戻すことによって特徴づけられる。段階的に高めて行くRH値に保持したとき、それは吸湿性の証拠を示さず、これはまた安定な水和物としての存在と一致する。 得られたデータから、本物質の挙動は、六水和物としての存在に一致する。実施例1の水和物の理論的な水分含量は11.4%w/wである。従って、脱水前の初期値である約12.5%w/wの水分含量は、湿気を飽和させた六水和物に相当し得る。(12.5%w/wの水分含量はビスメシル酸塩のモルあたりの水6.7 モルに対応する。) 該物質が脱水され、次いで33%RHで再水和されたとき、正味の重量変化は約−1%であり、約11.5%の理論的水分含量に対応する。これは、脱水された物質が6モルの水のみを取り戻し、過剰な、非特異的弱結合性の水分と結合していないことと一致する。再水和後に、本物質が、重量変化およびIRスペクトルに関して、脱水処理しなかった物質と実質的に同一の特性を示すことは、脱水が、崩壊または転位を伴わない「隙間のある」脱水結晶構造を生じるであろうことを示している。 従って、この結果は、実施例1の水和物が少量の付加的、弱結合性の水を持つ安定な六水和物であることを示す。この水和形状物において、該物質は、従来技術、例えばW098/07648に記載されている技術によって製造される化合物34のビスメシル酸塩が示した吸湿性特性を示さない。 実施例4:MDRの調節剤としての式(I)の化合物およびその塩に関する試験 物質および方法 EMT6マウスの乳ガン細胞系およびMDR耐性亜系AR1.0を、5%CO2中37℃で10%胎児ウシ血清および2mMグルタミンを含有するRPMI1640培地中で培養した。細胞を、トリプシン処理後 (0.25%トリプシン、0.2gl−1 EDTA)に、親細胞系の場合は、1/200〜1/2000、そしてMDR耐性亜細胞系の場合は1/20〜1/200で継代した。 1.薬物蓄積アッセイ AR1.0細胞を、96ウェルの乳白色の培養プレート(Canberra Packard)中でアッセイの48時間前に播種した。このアッセイ培地は、トリチウム化したダウノルビシン(DNR)(0.3 mCi/Ml)、細胞毒性剤および非標識DNR(2mM)の混合物を含有した。 式Iの化合物を、0.508nM〜10mMの濃度範囲でアッセイ媒質中で連続希釈した。該細胞を、37℃で1時間、インキュベートして、洗浄し、放射活性のある細胞を測定した。結果を蓄積についてのIC50として表現し、これは100%の蓄積が既知のRMAベラパミルが100mMの濃度で存在するときに観察されるものとした数値である。 結果を下記表Aに示した。 2.ドキソルビシン毒性の増強 (a)式(I)の選択された化合物を、AR1.0細胞におけるドキソルビシンの毒性を増強するその能力について試験した。初期増殖アッセイにおいて、化合物を、単独ではAR1.0細胞について毒性ではない固定濃度のドキソルビシン(0.34mm)に対してタイトレートした。ドキソルビシンによるインキュベーション4日後、増殖を、比色計を用いるスルホローダミンBアッセイ(Skehan et al ; J Natl. Cancer Inst. 82 pp 1107-1112 (1990)で測定した。この結果を表Bに示した。 (b)細胞を、各化合物の固定濃度の存在下でドキソルビシン (0.263nM−17.24mM)をタイトレーションしながら4日間培養した。増殖を、Skehenet al, loc citに記載のように定量した。ドキソルビシン単独および各化合物の処置についてのIC50(非処置コントロールの50%まで増殖を低下するために必要な濃度)を決定し、増強指標(PI)を計算するために使用した: この結果を表C1およびC2に示した。 表B 3.種々の細胞毒性剤の増強毒性 ドキソルビシン以外の各種細胞系および各種細胞毒性を用いる化合物の増強指標を、ドキソルビシンについての上記記載のプロトコールに従って測定し、結果を表Dに示した。 キノリン-3-カルボン酸(2-{4−[2-(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-エチル]-フェニルカルバモイル}-4,5-ジメトキシフェニル)アミドのビスメシル酸塩の六水和物。