生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アルツハイマー病の検査方法
出願番号:2004381800
年次:2010
IPC分類:G01N 33/68,G01N 21/78


特許情報キャッシュ

山田 正仁 小野 賢二郎 内木 宏延 JP 4568840 特許公報(B2) 20100820 2004381800 20041228 アルツハイマー病の検査方法 国立大学法人金沢大学 504160781 国立大学法人福井大学 504145320 木森 有平 100105809 浅野 典子 100126398 山田 正仁 小野 賢二郎 内木 宏延 20101027 G01N 33/68 20060101AFI20101007BHJP G01N 21/78 20060101ALI20101007BHJP JPG01N33/68G01N21/78 C G01N 33/48−98 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2002−193804(JP,A) 特開2004−503748(JP,A) 特開2003−519383(JP,A) 国際公開第2002/001230(WO,A1) 内木宏延、小野賢二郎、長谷川一浩、山田正仁,開放反応系を用いたアルツハイマー病βアミロイド繊維形成及び分解機構の解明,アミロイドーシスに関する研究平成12年度研究報告書,日本,2001年,Page.91-94 内木宏延、中久木和也,アポEおよび抗酸化剤のアルツハイマー病βアミロイド繊維形成阻害機構の比較解析,基礎老化研究,日本,1998年 6月,Page.72 下条文武、内木宏延、中久木和也,アミロイド繊維形成機構の反応速度論的解析 マウス老化アミロイドーシス,アルツハイマー病βアミロイドーシス,及び透析アミロイドーシスにおける一般則,代謝疾患調査研究班アミロイドーシス分科会,日本,1997年,Page.54-57 Thomas Winsniewski et al.,Cerebrospinal Fluid Inhibits Alzheimer β-Amyloid Fibril Formation In Vitro,Annals of Neurology,1993年10月,Vol.34,No.4,Page.631-633 8 2006189265 20060720 13 20071025 草川 貴史 本発明は、アルツハイマー病を正確且つ簡便に検査するためのアルツハイマー病の検査方法に関する。 アルツハイマー病は、先進国における高齢者の進行性精神障害の主な原因であり、神経細胞内構造蛋白の異常やリン酸化タウの出現等の神経原線維変化、アミロイドβ蛋白ペプチドの生成・沈着及び組織の崩壊と炎症反応による老人斑の形成、神経細胞の消失といった神経病理学的な病変を特徴としている。アルツハイマー病の進行の原因としては様々なものが考えられているが、そのうちの1つに、アミロイドβ蛋白の重合、線維化による沈着が挙げられている。アミロイドβ蛋白は、通常細胞内で生産され、アルツハイマー病患者だけでなく健常者の血漿や脳脊髄液(CSF)からも検出可能だが、非アルツハイマー病患者ではアミロイドβ蛋白の沈着は起こらないか、あるいは少量であり、アルツハイマー病患者でのみアミロイドβ蛋白の産生の増加又はアミロイドβ蛋白代謝・排泄の減少が初期段階で起こり、その後アミロイドβ蛋白の重合、アミロイド斑の大量の沈着等が起こり、進行的に痴呆症状が経過する。 アルツハイマー病等の痴呆の検査としては、従来からCTスキャン、MRI等の頭部画像検査が広く行われているが、単独でアルツハイマー病の診断精度と特異性との両者を満足するものは存在しない。そのため、実際の検査では、複数の検査を組み合わせて実施しているのが現状である。また、頭部の脳の形態画像検査は、脳の形態学的変化に基づく間接的なものであり、必ずしも痴呆症を正確に検査することはできず、特に形態学的変化の現れる前のアルツハイマー病の早期発見に対しては全く無力である。 このような事情から、アルツハイマー病を正確且つ早期に発見する技術に注目が集まっている。近年、アミロイドβ蛋白の他、アポリポ蛋白E(apolipoprotein E:apoE)、アポリポ蛋白J(apolipoprotein J:apoJ)、血清アミロイドP成分(serum amyrloid P component:SAP)、トランスサイレチン(transthyretin:TTR)、α1−抗キモトリプシン(α1-antichymotrypsin:ACT)、α−2マクログロブリン(α2-macrogrobulin:α2M)等、アルツハイマー病に関連のある微量分子がCSF中から多数見出され、このような微量分子を検査用マーカーとする研究等も行われている。しかしながら、これら微量分子はCSF中に微量しか含有されないため感度が不十分であり、また、アルツハイマー病との因果関係が現状では必ずしも明確ではない等の問題がある。 そこで、より正確な検査技術の開発が望まれており、例えば、患者から血液等の検体を採取し、該検体中に含まれる痴呆症患者に特異的なポリペプチドと、該ポリペプチドに対する抗体との抗原抗体反応を利用した免疫測定により、検体中に含まれる痴呆症患者に特異的なポリペプチドを測定する痴呆症の検査方法が提案されている(例えば特許文献1等参照)。この方法によれば、少量の検体でアルツハイマー病等の痴呆症を検査できるとされる。また、試料に蛍光標識が共有結合された凝集性アミロイドアミロイドβ蛋白質ペプチドを接触させる段階と、アミロイド凝集を示すものとして該試料に結合した該蛍光標識を検出する段階とを含む試料中のアミロイド凝集を検出又はモニターするための方法が提案され、例えばアルツハイマー病等を診断するために実施されることが提案されている(例えば特許文献2等参照)。 なお、CSFの存在によりβアミロイド線維形成がインビトロで抑制されるとの報告がされている(例えば、非特許文献1等参照。)。この報告においては、人工合成したアミロイドβ蛋白とリン酸塩緩衝液又はCSF(アルツハイマー病患者又は健常者)とを1:1で混合し、室温で最長70時間放置し、チオフラビンTを用いた蛍光分光定量法を利用して線維化したアミロイドβ蛋白を定量している。特開2000−193661号公報特表2001−515044号公報WisniewskiT, Castano E, Ghiso J, Frangione B. Crerobrospinal fluid inhibits Alzheimerbeta-amyloid fibril formation in vitro. Ann Neurol 1993; 34: 631-3 しかしながら、前記特許文献1の検査方法は、痴呆症患者(アルツハイマー病患者)に特異的なポリペプチドとしてアミロイドβ蛋白を挙げているが、アミロイドβ蛋白は健常者にも存在する蛋白であることから、これをアルツハイマー病の検査マーカーに用いることは正確さの面で不十分であると言わざるを得ない。 また、特許文献2の方法では、予め蛍光標識したアミロイドβ蛋白を凝集させているが、結合された蛍光標識がアミロイドβ蛋白の凝集特性に何らかの影響を及ぼしている可能性を否定できず、やはり正確さの面で問題を残している。さらに、特許文献2の方法では、試料として、例えば、大脳皮質、小脳及び海馬組織といった任意の脳組織、血管組織又はニューロン等の組織等の使用を前提としており、試料採取に際し患者の負担が大きく、簡便な検査方法とは言い難い。さらに、検査に先立ち蛍光標識アミロイドβ蛋白の大量合成を必要とし、コストが上昇したり、検査が煩雑となる等の様々な不都合がある。 さらに、非特許文献1においては、アルツハイマー病患者のCSF、非アルツハイマー病患者のCSF、又はリン酸塩緩衝液の存在下でアミロイドβ蛋白を重合させているものの、CSFとリン酸塩緩衝液とでβアミロイド線維形成の程度が異なることを確認するにとどまり、アルツハイマー病患者及び非アルツハイマー病患者のいずれのCSFにおいても得られる結果に差異はなく、アルツハイマー病の検査へ応用することについては記載も示唆もされていない。アルツハイマー病の発症メカニズムの解明・検討等の基礎医学研究分野においては、非特許文献1のように人工合成したアミロイドβ蛋白をリン酸塩緩衝液中で自発的に重合させる実験手法が利用されているが、この実際のアルツハイマー病の検査等の臨床医学研究分野への応用についてはこれまで全く想定されたことがない。 そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、アルツハイマー病を簡便且つ正確に検査し得るアルツハイマー病の検査方法を提供することを目的とする。 アルツハイマー病患者の脳中ではアミロイドβ蛋白の重合及び沈着が進み、非アルツハイマー病患者の脳では沈着しない原因としては諸説あるが、例えばアルツハイマー病患者の脳中でのアミロイドβ蛋白の重合促進因子の濃度又は活性度の上昇、アミロイドβ蛋白の重合抑制因子の濃度又は活性度の減少、アミロイドβ蛋白の重合反応核の存在等が挙げられる。いずれにせよ、アルツハイマー病患者の脳においては、非アルツハイマー病患者の脳に比べ、アミロイドβ蛋白の重合に適した環境が整えられているといえる。そこで本発明者らは、脳脊髄液や血液等の体液が脳組織の環境を反映しているものと考え、検討を進めた結果、被験者から採取した体液に線維化を起こりやすくするために適量(例えば5体積%以上)のリン酸塩緩衝液を混合して検査溶液を調製し、これにアミロイドβ蛋白を含むアミロイドβ蛋白溶液を混合するとともにヒトの体温と同程度に加温・保持してアミロイドβ蛋白の重合反応を促進し、反応が平衡状態に到達するまで反応時間を充分に確保することによって、アルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者との間にアミロイドβ蛋白の重合の程度の差を生じせしめることを可能とした。この差の情報に基づいてアルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者とに対し実際に本発明の検査を実施したところ、アルツハイマー病であるか否かの判断が可能となるという臨床的知見を得、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明に係るアルツハイマー病の検査方法は、アミロイドβ蛋白と被験者から採取した脳脊髄液、血液又は血液成分と、これらのいずれかと緩衝液とを混合した反応溶液を反応させ、生成するβアミロイド線維の長さ、分子量、生成数、生成量等の重合度を調べることを特徴とする。 体液と適量の緩衝液等の存在下でアミロイドβ蛋白の重合反応を進めると、被験者の体液に含まれるアミロイドβ蛋白の重合促進因子、アミロイドβ蛋白の重合抑制因子、アミロイドβ蛋白の重合反応核の存在等に応じてアミロイドβ蛋白の重合(線維化)の程度が異なり、例えばアルツハイマー病患者の体液を用いて反応を進めると、非アルツハイマー病患者の体液に比べて最終的に重合度の高い(長さの長い)βアミロイド線維が形成されたり、大量のβアミロイド線維が生成されたりする。これは、本発明者らによって初めて確認された事実である。ここで、例えば反応初期のアミロイドβ蛋白の重合の程度を調べたとしても、アルツハイマー病患者の体液と非アルツハイマー病患者の体液とで差はほとんどないため、重合反応が平衡状態に到達した後に、最終的に得られるアミロイドβ蛋白の重合の程度(βアミロイド線維の長さ、生成数、生成量等)を調べることが重要である。これにより、被験者の体液がアミロイドβ蛋白の重合が起こりやすい環境か否か、すなわちアルツハイマー病であるか否かが正確に判断される。 また、本発明は、採取が容易な体液を試料として用いるため、アルツハイマー病患者等の被験者の負担が小さく、かつ極めて簡便に検査を実施できる。患者から採取した脳組織等を用いてアミロイドβ蛋白の重合の程度を調べることも考えられるが、脳組織の採取は患者の負担が極めて大きく、簡便さを欠いており、実用的でない。 なお、先にも述べたように、アルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者とを判別するためには、重合反応が平衡状態に到達した後でアミロイドβ蛋白の重合の程度を調べることが極めて重要であり、例えば反応初期や反応の途中で調べたとしても意味はない。ところが、非特許文献1は、この点について全く考慮していない。非特許文献1においては、CSFの存在下でアミロイドβ蛋白を最長で70時間重合反応させているが、アルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者とでは重合の程度に差はなく、CSFにはアミロイドβ蛋白の重合阻害因子が含まれていると結論づけ、重合反応が平衡状態に到達する前に反応試験を中止したものと考えられる。 また、本発明では、アルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者との間にアミロイドβ蛋白の重合の程度の差を生じせしめることを狙って適量の緩衝液を反応溶液に加えているが、前述の非特許文献1においてはCSFとアミロイドβ蛋白とを単純に混合しているのみであり、緩衝液を加えることに関する記載は見あたらない。また、本発明に係るアルツハイマー病の検査方法は、反応後の前記反応溶液と蛍光色素とを混合し、反応溶液の発色の程度を検出することにより、前記アミロイドβ蛋白の重合の程度を調べることが好ましい。アミロイドβ蛋白の重合反応後に蛍光色素を加え、発光の程度を検出することにより、被験者の体液中に含まれるアミロイドβ蛋白の重合抑制因子(例えばアポリポ蛋白Eやアポリポ蛋白J等)の働きが弱まっているか否か等、すなわちアルツハイマー病であるか否かが正確に判断できる。 さらに、本発明に係るアルツハイマー病の検査方法は、前記蛍光色素がチオフラビンT又はその誘導体であることが好ましい。チオフラビンT又はその誘導体は、アミロイドβ蛋白の重合体であるβアミロイド線維に特異的に結合し、アミロイドβ蛋白の重合の程度、例えばβアミロイド線維の分子量や生成量に応じて発色する性質を有する。このため、蛍光色素としてチオフラビンT又はその誘導体を用いることにより、βアミロイド線維の形成の度合いがより正確かつ簡単に計測され、アルツハイマー病の検査の正確さを高めることができる。 本発明に係るアルツハイマー病の検査方法は、従来の検査方法に比べ極めて正確であり、また、試料(検体)採取時の患者への負担が小さいという利点を有する。したがって、本発明によれば、正確且つ簡便であり、アルツハイマー病の早期発見及び早期治療に非常に有用なアルツハイマー病の検査方法を提供することが可能である。さらに、本発明に係るアルツハイマー病の検査方法によれば、痴呆の進行の程度を把握することも可能である。 以下、本発明を適用したアルツハイマー病の検査方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。 本発明を適用したアルツハイマー病の検査方法は、基本的には、アミロイドβ蛋白と被験者から採取した体液と緩衝液とを混合した反応溶液をインキュベートし、アミロイドβ蛋白の重合反応が平衡状態に到達した後、生成したβアミロイド線維、すなわちアミロイドβ蛋白の重合の程度を調べるものである。アミロイドβ蛋白の重合の程度は、例えば、反応後の前記反応溶液と蛍光色素とを混合し、反応溶液の発色の程度を検出するか、又は反応溶液中の反応生成物であるβアミロイド線維を顕微鏡等を用いて観察することにより判断される。このとき、例えば、発色強度等の発色の程度とアルツハイマー病の有無等との相関を予め求めておき、測定した発色強度から前記相関に基づきアルツハイマー病であるか否かを判断できる。 本発明では、先ず、アミロイドβ蛋白と被験者から採取した体液と緩衝液とを混合して反応溶液を調製する。具体的には、被験者から採取した体液と適量の緩衝液とを混合した検査溶液を調製し、この検査溶液とアミロイドβ蛋白を含むアミロイドβ蛋白溶液とを混合することにより、反応溶液を調製することができる。 試料となるヒト体液は、脳組織等に比べ、採取時の侵襲が小さいという利点がある。体液としては、アルツハイマー病患者等の被験者から採取可能なあらゆる体液を使用可能であるが、採取が容易であることから、例えば血液や、脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)等を用いることが好ましい。血液としては、全血の他、全血から分離される血漿や血清等の血液成分でもよい。特に、脳組織に非常に近い環境であると推測され、より正確な検査が実現されることから、脳脊髄液を用いることが好ましい。血液の場合は、全血から分離される血漿や血清等の血液成分を用いることが好ましい。 緩衝液としては、中性から弱アルカリ性の緩衝液、例えばリン酸塩緩衝液等を用いることができる。反応溶液中に緩衝液を含ませることにより、体液とアミロイドβ蛋白の重合反応が起きやすくなり、体液中に含まれる線維化阻害因子の弱まり具合等の体液環境の微小な変化が重合の程度の差として増幅され、より正確な検査を行うことができる。緩衝液と採取した体液とを混合して得られる検査溶液は、緩衝液を5〜50体積%含むことが好ましい。反応溶液中の緩衝液の含有量が5体積%未満である場合、緩衝液が不足し、重合反応が起こりにくくなるおそれがある。また、前記検査溶液中の緩衝液の含有量は、50体積%以下であることが好ましい。反応溶液中の緩衝液の含有量が前記範囲を上回ると、アミロイド線維の生成量が過剰となるおそれがある。なお本発明では重合反応によるβアミロイド線維生成量のバラツキを小さくするため、反応溶液をヒト体温程度に加温・保持しているが、重合反応中の溶液温度をこれより低温にしたい場合には、緩衝液を50体積%以上含有させてもよい。 アミロイドβ蛋白としては、天然アミロイドβ蛋白、合成アミロイドβ蛋白のいずれでもよいが、特に合成アミロイドβ蛋白を用いることが好ましい。アミロイドβ蛋白としては、例えば40個のアミノ酸からなるアミロイドβ蛋白、42個のアミノ酸からなるアミロイドβ蛋白等が知られているが、本発明はいずれを用いてもよい。42個のアミノ酸からなるアミロイドβ蛋白は、40個のアミノ酸からなるアミロイドβ蛋白を用いた場合に比べて、重合反応終了までの時間を1/10程度に短縮できる点で有利である。 アミロイドβ蛋白は、希薄アンモニア水に溶解されることにより例えばpH6〜12に調整されたアミロイドβ蛋白溶液として、前記検査溶液と混合される。希薄アンモニア水は、アミロイドβ蛋白を容易に溶解することができる。また、希薄アンモニア水のような弱アルカリ溶液中ではアミロイドβ蛋白が完全にモノマーの状態で存在するため、アミロイドβ蛋白をアンモニア水溶液に溶解しておくことにより、重合反応過程での結果のばらつきを小さくすることができる。 反応溶液中のアミロイドβ蛋白濃度は5μM〜100μMであることが好ましい。アミロイドβ蛋白含有量が前記範囲未満だとβアミロイド線維生成量が少なすぎ、逆にアミロイドβ蛋白含有量が前記範囲を上回る場合、βアミロイド線維生成量が多すぎて蛍光発光による定量測定が困難になる。ただし、この場合も重合反応温度の低温化によりアミロイドβ蛋白濃度が100μM以上の溶液を使用することは可能であるが、重合反応が平衡状態に達するまでの時間が長くなることやβアミロイド線維生成量のバラツキが大きくなるおそれがある。 次に、アミロイドβ蛋白と被験者から採取した体液と緩衝液とを混合した反応溶液を反応させ、アミロイドβ蛋白の重合反応を進める。アミロイドβ蛋白の重合反応は、例えば体液及び緩衝液を含む検査溶液とアミロイドβ蛋白溶液とを混合することにより調製した反応溶液を、アミロイドβ蛋白が重合可能な条件で、所定時間、インキュベートすることにより行われる。アミロイドβ蛋白の重合反応は、室温でも可能ではあるが、例えば温度37℃程度、pH7.5等の生体に近い条件で反応溶液をインキュベートして行うことが好ましい。重合反応を生体に近い条件で進めることによって、体液中に含まれる線維化阻害因子の弱まり具合等、体液環境の微小な変化が重合の程度の差として増幅され、アルツハイマー病か否かの判断をより正確に行うことができる。また、βアミロイド線維の生成量のバラツキも小さくなる。 なお、βアミロイド線維の生成機構は、例えば、重合核形成反応相と線維伸長相とからなる重合核依存性重合モデルによって説明される。このモデルによると、重合核形成反応は熱力学的に起り難く全体の律速段階となっているが、いったん重合核となる重合体が形成されると、線維伸長反応に移り、一次反応モデル、すなわち重合核又は既に反応溶液中に存在する線維断端にアミロイドβ蛋白が立体構造を変化させながら次々と結合することによって重合が速やかに進行し、βアミロイド線維が形成するとされる。重合核形成反応及び線維伸長反応は、生体内ばかりでなく、試験管内の緩衝液等中でも容易に起こる。 次に、アミロイドβ蛋白の重合反応が平衡状態に到達した後、インキュベートを終了し、反応溶液中のアミロイドβ蛋白の重合の程度を調べる。アミロイドβ蛋白の重合の程度とは、生成するβアミロイド線維の長さ、分子量、生成数、生成量等のことである。アミロイドβ蛋白の重合の程度は、例えば反応後の反応溶液と蛍光色素とを混合し、蛍光色素の発色の程度を検出することによって調べることが好ましい。本発明では、アミロイドβ蛋白の重合反応途上ではなく、反応が平衡状態に到達した後の反応溶液と蛍光色素とを接触させることにより、アミロイドβ蛋白重合速度の影響が排除され、正確な検出が可能となる。なお、アミロイドβ蛋白の重合反応が平衡状態に到達するまでの時間は、反応条件等に応じて異なってくるが、42個のアミノ酸からなるアミロイドβ蛋白を用いた場合には例えば12時間以上、40個のアミノ酸からなるアミロイドβ蛋白を用いた場合には例えば7日間以上とする。 ここで、反応溶液に後述のβアミロイド繊維検出用蛍光色素を加えることにより様々な反応時間における発色強度を測定し、各反応時間での発色強度をプロットすると、発色強度はシグモイド曲線を描き、最終的には例えば反応溶液中のβアミロイド蛋白が消費されることにより、平衡に到達する。この最終的な発色強度は、アミロイドβ蛋白の重合反応により最終的に形成されるβアミロイド線維の重合の程度を示すものであり、例えばアミロイドβ蛋白の重合を抑制する因子やアミロイドβ蛋白の重合を促進する因子等の増減、すなわち体液の環境に応じて変化するものである。つまり、発色強度が平衡に到達したことは、アミロイドβ蛋白の重合反応が平衡状態に到達したことを意味する。したがって、発光強度が平衡に到達する時間以上反応させた後の反応溶液と蛍光色素とを混合してβアミロイド線維に蛍光色素を結合させ、反応溶液の発色の程度を検出すると、アルツハイマー病患者の発色強度は非アルツハイマー病患者の発色強度に比べ有意に高くなるため、この情報に基づきアルツハイマー病であるか否かの判断が可能となる。 βアミロイド線維の検出用蛍光色素としては、チオフラビンTを用いることが好ましい。また、チオフラビンTの一部を任意の基で置換してなるチオフラビンTの誘導体も、βアミロイド線維に対する結合能及び発色能を有するものであれば使用可能である。詳細な理由は必ずしも明確ではないが、チオフラビンT又はその誘導体は、神経細胞に沈着可能なβアミロイド線維、すなわちある程度重合の進んだ状態のアミロイドβ蛋白には結合するが、一方で、モノマー又は重合度の低いオリゴマーの状態のアミロイドβ蛋白には結合しないという特異な性質を有する。したがって、重合反応後に反応溶液等に添加したチオフラビンT又はその誘導体の蛍光強度等を測定することにより、βアミロイド線維の形成レベル、ひいてはアルツハイマー病の有無が正確に判断される。チオフラビンT又はその誘導体以外の蛍光色素を用いた場合、検査の正確性が低下するおそれがある。 また、反応後のアミロイドβ蛋白の重合の程度は、例えば、アミロイドβ蛋白と被験者から採取した体液とを混合した反応溶液を所定時間反応させた後、例えば電子顕微鏡、蛍光顕微鏡等を用いて反応溶液を直接観察する方法によって調べることもできる。アルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者とで最終的に生成するアミロイドβ線維の数や形態等が異なるため、これを観察し、アルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者とで比較することによって、アルツハイマー病であるか否かの判断が可能となる。 以上のように、緩衝液を混合した体液中でアミロイドβ蛋白を重合させ、アミロイドβ蛋白の重合反応が平衡状態に到達した後にアミロイドβ蛋白の重合の程度を調べることにより、検体(体液)中のアミロイドβ蛋白の重合を抑制する因子、アミロイドβ蛋白の重合を促進する因子等、重合を制御する因子の影響等が間接的に把握される。したがって、体液がアミロイドβ蛋白の重合を起こし得る環境であるか否か、すなわち、被験者がアルツハイマー病である否かを正確に検査することができる。 また、本発明の検査方法は、被験者から容易に採取可能な体液を試料とするため、被験者の負担が小さく非常に簡便であり、アルツハイマー病の早期検査及び早期治療のうえで有用である。さらに、緩衝液を混合した体液中でのアミロイドβ蛋白の重合の程度と痴呆の進行の程度との間に相関のあることが臨床試験により確かめられているため、本発明を適用したアルツハイマー病の検査方法により痴呆の進行の程度も把握可能である。 以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。 本実施例では、アルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者とから得た脳脊髄液(CSF)を用いて実験を行った。さらに、臨床痴呆評価(CDR)とβアミロイド線維の形成の程度との相関についても検討した。 アルツハイマー病患者としては、22人の日本人女性及び18人の日本人男性(平均年齢71.7歳、60歳〜86歳)を調査した。なお、これらの患者は、Diagnostic and Statistical Manual-IVの基準とMaclhannその他(1984)により出版されたNINCDS-ADRDA基準を満たしている。また、遺伝連鎖のある患者は除外されている。軽度認識障害(CDR=0.5)患者については、病状が進行し、後で基準を満たした場合にはアルツハイマー病患者に含めた。 非アルツハイマー病患者としては、17人の日本人女性及び23人の日本人男性(平均年齢70.1歳、60歳〜83歳)を調査した。非アルツハイマー病患者は、以下のように診断されている。すなわち、脳梗塞(1名)、パーキンソン病(1名)、大脳皮質基底核変性症(7名)、進行性核上性麻痺(3名)、びまん性レビー小体病(2名)、クロイツフェルト・ヤコブ病(1名)、多系統萎縮症(2名)、筋萎縮性側索硬化症を含む運動ニューロン疾患(6名)、多発性硬化症(1名)、重症筋無力症(1名)、髄膜炎(2名)、筋疼痛(3名)、てんかん(1名)、肝性脳症(1名)、ADH不適切分泌症候群(1名)、悪性リンパ腫(1名)、末梢性ニューロパシー(6名)である。 書面での同意を患者又は家族から得た後、以上のようなアルツハイマー病患者及び非アルツハイマー病患者の両者からCSFを採取した。CSFは、通常の腰椎穿刺によって採取され、1500rpmで10分間遠心分離を行った後、等分され、分析まで−80℃で保存された。 CSF中の42アミノ酸からなるアミロイドβ蛋白(以下、Aβ(1-42)と称する。)のレベルは、サンドイッチ酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定した。捕獲剤としてのAβ(1-42)のC末端に特異的なモノクローナル抗体(Mab)である21F12、及び、検出にビオチン化モノクローナル抗Aβ(1-42)N末端抗体である3D6を用いた(INNOTEST β-amyloid(1-42); Innogenetics,Gent, Belgium)(Vanderstichele等(1998)、Andreasen等(1999))。Aβ(1-40)に交差反応性はなかった。CSF試料及び標準試料は、2重に検定した。 CSF中の総タウ濃度は、Mabを用いた高感度サンドイッチELISAによって決定した。捕獲抗体としてはAT120、検出抗体としては異なるエピトープを認識する2種のMab(HT7及びBT2)を用いた。(INNOTEST hTAU-ag; Innogenetics, Gent, Belgium) (Vanderstichele等(1993);Blennow等(1995))。CSF試料及び標準試料は、2重に検定した。 アミロイドβ蛋白としては、Aβ(1-40)(ロット・ナンバー530108、Peptide Institute Inc,)及びAβ(1-42)(ロット・ナンバー521205、Peptide Institute Inc)を用い、4℃の室内において0.02%アンモニア溶液中に溶解し、それぞれ濃度500μM(2.2mg/mL)及び濃度250μMに調整し、−80℃で保存した。ここで得られた新鮮なAβ(1-40)及びAβ(1-42)を、必要に応じて解凍し、以下の実験に供した。 重合アッセイは、既報(Naiki等(1998))に従い実施した。先ず、50μMのAβ(1-40)又は25μMのAβ(1-42)、50mMのリン酸塩緩衝液(pH7.5)、100mMのNaCl、及び0又は78体積%のCSFを含む反応混合物を調製した。この反応混合物のうち30mLを、オイルフリーのPCRチューブ(サイズ;0.5mL、コードナンバー9046、Takara Shozo Co.Ltd., Otsu Japan)に入れた。反応チューブをDNAサーマルサイクラー(PJ480, Perkin Elmer Cetus,Emeryville, California)中に入れ、4℃から37℃まで最速で昇温させた。0〜9日間インキュベートし、所定時間の経過後、反応チューブを氷冷して反応を停止させた。インキュベート中、反応チューブは静置させた。各反応チューブから5μLを分取し、蛍光分光計で測定を行った。各々3回の測定を行い、平均値を求めた。 蛍光強度の測定は、Naiki及びNakakuki(1996)等によって記述されるように、蛍光分光光度計(日立F−2500)を用いて行った。Aβ(1-40)が重合してなるβアミロイド線維(以下、fAβ(1-40)と称する。)及びAβ(1-42)が重合してなるβアミロイド線維(以下、fAβ(1-42)と称する。)の蛍光強度は、445nmの励起波長及び490nmの蛍光波長を用いて測定した。測定試料溶液は、5μMのチオフラビンT(和光純薬工業、大阪、日本)及び50mMのグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.5)を含むものである。 アルツハイマー病患者及び非アルツハイマー病患者の結果値を用いてROC(receiver operating characteristic)カーブ分析を行い、ROCカーブの下の領域の面積(AUC)を算出し、インキュベート後のfAβ(1-40)及びfAβ(1-42)の最終蛍光平衡値、CSF中のAβ(1-42)及びタウレベルを決定した。なお、fAβ(1-40)及びfAβ(1-42)の最終蛍光平衡値は、形成されたfAβの重合度を示すものである。ROCカーブ分析及びAUCの算出には、Systatversion10.0(SPSS,Chicago,IL)を使用し、Hanley及びMcNeilの手法により、AUC、標準エラー(SE)、感度、特性及び正診率を求めた。 本実施例におけるアルツハイマー病患者と非アルツハイマー病患者とのチオフラビンTの蛍光レベルの比較は、Welch補正したunpaired t testに基づいて行った。Pearson相関係数及びSpearman相関係数を計算し、相関分析を行った。0.05よりp値が小さい場合、有意であるとみなす。 以下、実験結果について説明する。 先ず、図1AにAβ(1-40)のインキュベート時間と反応溶液のチオフラビンTによる蛍光強度との相関図を、図1BにAβ(1-42)の重合時間と反応溶液の蛍光強度との相関図を示す。なお、図1中、黒丸(●)はCSF未添加(0%)の場合(n=10)、白丸(○)は反応混合物中にアルツハイマー病患者のCSFを78体積%含有する場合(n=40)、白角(□)は、反応混合物中に非アルツハイマー病患者のCSFを78体積%含有する場合(n=40)を表す。 図1Aから明らかなように、アルツハイマー病患者から得られたCSF(AD−CSF)及び非アルツハイマー病患者から得られたCSF(non−AD−CSF)の両方とも、fAβ(1-40)形成の最終蛍光平衡値を減少させた。また、図1Bに示すように、CSFによる重合抑制効果は、fAβ(1-42)においても観察された。すなわち、非アルツハイマー病患者のCSF(non−AD−CSF)は、アルツハイマー病患者のCSF(AD−CSF)より、fAβ(1-40)形成及びfAβ(1-42)形成に対する抑制効果は強いものであった。 なお、図1に示すように、Aβ(1-40)又はAβ(1-42)のインキュベート後のチオフラビンTの蛍光強度は、独特のシグモイド曲線を描いていた。この曲線は、重合核依存性重合モデルと一致している(Jarrett及びLansbury(1993);Naiki等(1997))。なお、fAβ(1-40)及びfAβ(1-42)を赤色色素コンゴレッドで染色したところ、偏光顕微鏡での観察では典型的な橙緑色の複偏光を示した。 また、図2に、インキュベート9日目(fAβ(1-40))、又はインキュベート24時間目(fAβ(1-42))のチオフラビンTによる蛍光を、非アルツハイマー病患者(n=40)及びアルツハイマー病患者(n=40)のそれぞれについてプロットした図を示す。 図2Aに示すように、fAβ(1-40)形成におけるチオフラビンTによる最終蛍光平衡値は、アルツハイマー病患者のCSFでは3.25±1.04(平均値±標準偏差)、非アルツハイマー病患者のCSFでは1.63±0.27であり、有意にアルツハイマー病患者の方が高い値を示した(p<0.001)。また、図2Bに示すように、fAβ(1-42)形成についても、アルツハイマー病患者のCSFでは9.00±1.55であり、非アルツハイマー病患者のCSFでは5.69±1.02であり、fAβ(1-40)形成と同様に、有意にアルツハイマー病患者の方が高い値を示した(p<0.001)。 また、ROC分析によって得られるAUC値は、アルツハイマー病患者のCSFのfAβ(1-40)の最終蛍光平衡値は0.966(SE=0.018)、fAβ(1-42)の最終蛍光平衡値は0.980(SE=0.017)であり、Aβ(1-42)(0.867、SE=0.042)及びタウ(0.81、SE=0.049)で得られるAUC値より高値であった。fAβ(1-40)形成の最終蛍光平衡値のカットオフ値を2.11に設定すると、感度、特異性及び正診率は、それぞれ95%、90%及び92.5%であった。同様に、fAβ(1-42)形成の最終蛍光平衡値のカットオフ値を7.36に設定すると、感度、特異性及び正診率は、それぞれ92.5%、92.5%及び92.5%であった。 以上のように、CSF存在下でアミロイドβ蛋白の重合を進め、形成したβアミロイド線維をチオフラビンT等の蛍光色素で検出することによって、精度、特異性及び正診率のいずれにおいても優れ、アルツハイマー病の正確な検査が可能となることが明らかとなった。すなわち、本発明による検査方法は、例えば近年アルツハイマー病の補助診断法として利用されているCSF中のAβ(1-42)レベルの測定やタウレベルの測定法に比べ、アルツハイマー病の検査及び診断上優れていることが示された。 また、図3にアルツハイマー病患者のCSFを用いたインキュベート後のfAβ形成の最終蛍光平衡値と臨床痴呆評価(CDR)との相関を示す。図3に示すように、アルツハイマー病患者のCSFを用いたインキュベート後のfAβ(1-42)形成の最終蛍光平衡値とCDRとの間には有意な相関があった(rs=0.398、p<0.05)。以上のように、痴呆の全般的な進行度の評価の1つであるCDRと、アルツハイマー病患者のCSFを用いたインキュベート後のfAβ(1-42)形成の最終蛍光平衡値との間に相関があることから、本発明のアルツハイマー病の検査方法によれば、痴呆の進行の程度も測定可能であることが明らかとなった。 次に、重合アッセイ後の反応溶液を電子顕微鏡で分析した結果について、図4を参照しながら説明する。50μMのAβ(1-40)、50mMのリン酸塩緩衝液(pH7.5)、及び100mMのNaClを含む反応混合物を調製し、37℃で9日間インキュベートした後の反応溶液の電子顕微鏡写真を、図4Aに示す。CSF未添加でインキュベートした場合、図4Aに示すように明瞭な小線維が観察された。この小線維は、周期約220nm、幅約7nmの無分枝らせん状フィラメント構造であると考えられる。 また、50μMのAβ(1-40)、50mMのリン酸塩緩衝液(pH7.5)、100mMのNaCl、及びアルツハイマー病患者又は非アルツハイマー病患者のCSF(78%)を含む反応混合物を調製し、37℃で9日間インキュベートした。アルツハイマー病患者のCSFを用いた場合の電子顕微鏡写真を図4Bに、非アルツハイマー病患者のCSFを用いた場合の電子顕微鏡写真を図4Cに示す。アルツハイマー病患者のCSFを添加しインキュベートした場合、図4Bに示すように、短くせん断された多数の小線維が観察された。同様の形態は、他の2名のアルツハイマー病患者のCSFを用いた場合にも観察された。一方、非アルツハイマー病患者のCSFを添加しインキュベートした場合、図4Cに示すように、小さい不定形の凝集体が時折観察されたが、小線維はほとんど観察されなかった。同様の形態は、他の2名の非アルツハイマー病患者のCSFを用いた場合にも観察された。なお、データは示さないが、Aβ(1-42)を用いて検討を行ったところ、Aβ(1-40)と同じ結果が得られた。図4Dは、アルツハイマー病患者のCSFを含む反応溶液の重合アッセイ前の写真である。非アルツハイマー病患者のCSFの場合も、図4Dと同様の形態が見られた。 以上のように、アルツハイマー病患者のCSFを用いてアミロイドβ蛋白の重合を進めた場合と非アルツハイマー病患者のCSFを用いてアミロイドβ蛋白の重合を進めた場合とで最終的に異なる形態の線維が形成され、電子顕微鏡で程度を調べた結果をアルツハイマー病の検査に利用可能であるとわかった。アミロイドβ蛋白の重合反応の進行と反応溶液のチオフラビンTによる蛍光強度との関係を示す特性図であり、図1Aはアミロイドβ蛋白としてAβ(1-40)を用いた場合の特性図、図1Bはアミロイドβ蛋白としてAβ(1-42)を用いた場合の特性図である。アルツハイマー病患者(n=40)及び非アルツハイマー病患者(n=40)のCSF存在下でAβ(1-40)又はAβ(1-42)を重合させたときの最終蛍光平衡値をプロットした図であり、図2Aはインキュベート9日目のfAβ(1-40)の形成レベルを示す図、図2Bはインキュベート24時間目のfAβ(1-42)の形成レベルを示す図である。横棒は夫々の平均値であり、p<0.001である。アルツハイマー病患者のCSFを用いてインキュベートした後のfAβ形成の最終蛍光平衡値と臨床痴呆評価(CDR)との相関を示す特性図である。重合アッセイ前又は後の反応溶液の電子顕微鏡写真であり、AはCSFを含まない反応溶液のアッセイ後の写真、Bはアルツハイマー病患者のCSFを含む反応溶液の重合アッセイ後の写真、Cは非アルツハイマー病患者のCSFを含む反応溶液の重合アッセイ後の写真、Dはアルツハイマー病患者のCSFを含む反応溶液の重合アッセイ前の写真である。写真中の横棒は長さ250nmを表す。アミロイドβ蛋白と被験者から採取した脳脊髄液、血液又は血液成分と、これらのいずれかと緩衝液とを混合して反応溶液を調製し、前記反応溶液中で前記アミロイドβ蛋白を重合反応させ、前記重合反応が平衡状態に到達した後、生成するβアミロイド線維の長さ、分子量、生成数、生成量等の重合度を調べることを特徴とするアルツハイマー病の検査方法。平衡状態に到達した後の前記反応溶液と蛍光色素とを混合し、当該反応溶液の発色の程度を検出することにより、生成するβアミロイド線維の長さ、分子量、生成数、生成量等の重合度を調べることを特徴とする請求項1記載のアルツハイマー病の検査方法。前記蛍光色素がチオフラビンT又はその誘導体であることを特徴とする請求項2記載のアルツハイマー病の検査方法。前記反応溶液中の前記アミロイドβ蛋白濃度が5μM〜100μMであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のアルツハイマー病の検査方法。前記脳脊髄液、血液又は血液成分と、前記緩衝液とを混合した検査溶液に前記アミロイドβ蛋白を含むアミロイドβ蛋白溶液を混合して前記反応溶液を調製することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のアルツハイマー病の検査方法。前記検査溶液が前記緩衝液を5〜50体積%含むことを特徴とする請求項5記載のアルツハイマー病の検査方法。前記アミロイドβ蛋白溶液がアンモニア水溶液にアミロイドβ蛋白を溶解したものであることを特徴とする請求項5又は6記載のアルツハイマー病の検査方法。前記重合反応の際、前記反応溶液を温度37℃程度に加温することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のアルツハイマー病の検査方法。


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