生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_マッピング方法
出願番号:2004374395
年次:2012
IPC分類:C12N 15/09,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

井内 聖 井内 敦子 JP 4919597 特許公報(B2) 20120210 2004374395 20041224 マッピング方法 独立行政法人理化学研究所 503359821 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 井内 聖 井内 敦子 20120418 C12N 15/09 20060101AFI20120329BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20120329BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A C12N15/ C12Q1/ CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2003−289885(JP,A) GENOMICS, 19(1994) p.137-144 Plant J., 14[2](1998) p.259-271 Applied Biosystems,GeneMapperTM ID Software Version 3.1 Human Identification Analysis User Guide,Applied Biosystems,2003年,p.i〜viii,B-1〜B-36 化学と生物, 37[5](1999) p.345-351 9 2006180714 20060713 18 20071218 小暮 道明 本発明は、目的表現型に寄与する変異をマッピングする方法及びそのためのマッピング用プライマーセットに関する。 生物の機能を明らかにするために、大きく二つの方法が存在すると考えられる。一つは遺伝学的手法で、他方は逆遺伝学手法である。逆遺伝学的な手法は、はじめに目的とする遺伝子に着目し、それがどのような機能を行っているのかを明らかにする手法である。遺伝学的手法では、はじめに表現型に着目し、その表現型を規定する遺伝子を探し出し解析する手法である。目的の表現型から遺伝子同定に至る手法をポジショナルマッピングあるいはポジショナルクローニングなどという(非特許文献1)。この手法は、目的表現型を示す個体を得た後、その個体を他の系統の個体と掛け合わせF2雑種を取得するところからはじまる。F2雑種の各個体から染色体DNAを単離し、分子マーカーを用いて表現型とマーカー間での相関を調べる(ラフマッピング)。この場合、相関が高いほど原因遺伝子に近い領域である。通常はこの領域を狭めて原因遺伝子を同定する(ファインマッピング)。 ラフマッピングは、シロイヌナズナを用いた場合には通常以下のようにして行う。すなわち、変異処理を行ったシロイヌナズナのコロンビア株(Col)から、目的の表現型を示す変異体を取得する。この変異体をシロイヌナズナのランズバーグ株(Ler)と交配し、F2雑種集団を作製する。このF2雑種集団の中から目的表現型を示す個体を取得する。ラフマッピングには通常32個体以上を取得するが、このおのおのから染色体DNAを単離する。得られたDNAを用いて各染色体上にあるColとLerの間で多型を示す分子マーカーを用いてどちらの型を示すのかを調べる。シロイヌナズナは2n=10なので分子マーカーは最低でも5つ(1染色体に1つ)は使用する。通常は各染色体に3個で15個について調べる。つまり、少なくとも32個体の15マーカーについてPCR産物の解析を行う必要がある(計480のPCR反応を行う)。これらの結果から原因遺伝子の大まかな領域を特定し、ファインマッピングへと移行していく。 一般的には、ラフマッピングが成功すれば、時間的、経済的負担を要するもののファインマッピングによる遺伝子同定は可能である。しかしながら、上述の通り時間や労力がかかるにもかかわらず、ラフマッピングが失敗すると表現型が明らかでも原因遺伝子を同定することは不可能である。そのため、ラフマッピングの結果が成功したか否かを簡便に知ることができれば、変異遺伝子のマッピングの時間的・労力的負担を改善することができると考えられる。島本ら監修、「新版 モデル植物の実験プロトコール」、株式会社秀潤社、第3章、第55〜74頁、2001年 そこで、本発明は、簡便かつ迅速に変異をマッピングすることができる方法及びそのための手段を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、SSLPマーカーを用いた変異のマッピング方法において、F2生物のゲノムDNA上のSSLPマーカーの検出を、増幅産物の標識のシグナル強度の比を求めて行うことにより、選抜したF2生物のゲノムDNAごとに増幅反応を行ってSSLPマーカーを検出する必要がなく、また迅速に結果を得られるという知見を得、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下のステップを含む、SSLPマーカーを利用して目的表現型に寄与する変異をマッピングする方法である。(a)一の系統の目的表現型を示す変異生物と、別の系統の生物とを交配してF1生物を作出し、F1生物の交配からF2生物を作出するステップ、(b)F2生物の中から目的表現型を示す個体を選抜するステップ、(c)選抜した個体からゲノムDNAを抽出するステップ、(d)一の系統と別の系統のSSLPマーカーを含む領域を増幅することができるプライマーセットを用いて、前記ゲノムDNAを鋳型とした増幅反応を行うステップ、(e)得られる増幅産物を標識するステップ、(f)一の系統に特異的なSSLPマーカーを含む増幅産物と別の系統に特異的なSSLPマーカーを含む増幅産物の長さと量を標識のシグナルにより解析し、ゲノムDNA上のSSLPマーカーの存在比をシグナル強度の比から計算するステップ、(g)(f)の結果に基づいて、上記目的表現型に寄与する変異の染色体上の位置をマッピングするステップ 上記マッピング方法においては、ステップ(c)において、選抜した複数の個体からまとめてゲノムDNAを抽出することができる。また、上記マッピング方法においては、ステップ(d)において、選抜した各個体からのゲノムDNAが混合された状態で増幅反応を行うことができる。 上記マッピング方法において、使用する標識としては、限定するものではないが、蛍光標識が挙げられる。 また上記マッピング方法において、生物としては、限定するものではないが、シロイヌナズナが挙げられる。また、その系統としては、例えばシロイヌナズナコロンビア系統及びランズバーグ系統が挙げられる。 上記マッピング方法において、プライマーセットとしては、配列番号2n−1(nは1〜32の整数を表す)に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号2n(nは1〜32の整数を表す)に示される塩基配列を有するリバースプライマーを含むプライマーセットからなる群より選択される少なくとも1つを使用することができる。また、プライマーセットとしては、以下の(a)〜(e)を含むものが好ましい。(a)配列番号7に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号8に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(b)配列番号21に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号22に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(c)配列番号37に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号38に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(d)配列番号45に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号46に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(e)配列番号55に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号56に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット 上記マッピング方法において、SSLPマーカーとしては、以下の(a)〜(e)群の各群より少なくとも1つ選択されるものが挙げられる。(a)CER459703、CER465666、CER451993、CER449727、CER462442、CER449191、CER449060、及びCER452147、(b)CER461179、CER460586、CER458959、CER453292、及びCER450196、(c)CER465080、CER465128、CER455537、CER456478、CER456622、CER457720、及びCER458674、(d)CER452871、CER453525、CER466582、及びCER452238、(e)CER457340、CER456831、CER456809、CER451883、CER457770、CER455854、CER457827、及びCER456732 また本発明は、配列番号2n−1(nは1〜32の整数を表す)に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号2n(nは1〜32の整数を表す)に示される塩基配列を有するリバースプライマーを含む、シロイヌナズナのマッピング用プライマーセットである。 さらに本発明は、以下の(a)〜(e)を含む、シロイヌナズナのマッピング用プライマーセットである。(a)配列番号7に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号8に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(b)配列番号21に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号22に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(c)配列番号37に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号38に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(d)配列番号45に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号46に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(e)配列番号55に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号56に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット 本発明により、変異のマッピング方法が提供される。該方法は、生物における目的表現型に寄与する変異を簡便かつ迅速にマッピングすることができるため、変異遺伝子の探索などに有用である。 また、本発明に係るマッピング用プライマーセットにより、特にシロイヌナズナの変異を簡便かつ迅速にマッピングすることが可能である。 以下、本発明を詳細に説明する。1.本マッピング方法の概要 マーカーを利用したマッピング方法は、相同染色体間の組換え時におけるマッピング対象の遺伝子とマーカーとの連鎖がその遺伝子とマーカーとの距離に依存するという原理に基づくものである。従って、すでに染色体上の位置が決められているマーカーの中から、マッピング対象の遺伝子の近くに存在する、すなわち該遺伝子と強く連鎖するものを検出し、その間の距離を求めることによって、その遺伝子の染色体上の位置を決めることができる。 図1に示すように、2種類の異なる系統由来の生物の染色体のうち1つに変異mが生じ(図1A)、この変異mが有用な表現型を示していると仮定する。本発明のマッピング方法は、上記変異mが染色体上のどの位置に存在するかを調べるものである。 本発明において、マッピング対象となる生物としては、相同染色体を有する生物であれば限定されるものではなく、動物、植物、真菌類などが含まれる。植物としては、遺伝子多型(SSLPマーカー)についての研究がなされている、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、イネ(Oryza sativa)、アブラナ(Brassica napus)、トマト(Lycopersicon esculentum)、トウモロコシ(Zea mays)などが挙げられる。特に、ゲノム配列データが公開されているシロイヌナズナ及びイネが好ましい。また、動物としては、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ラット(Rattus norvegicus)などが好ましい。 また系統とは、同一種が異なる環境に生育するために環境条件に適応して分化した性質が、遺伝的に固定して生じた型を指し、例えばシロイヌナズナの系統としては、Columbia(Col)、Landsberg erecta(Ler)、Wassilewskija(Ws)、Niederzenz(Nd)、Nossen(No)、Rld(RLD)、C24(C24)、Cape Verdi Islands(Cvi)、Enkheim(En)、Bensheim(Be)などが知られている。このうち、シロイヌナズナの系統としては全ゲノム配列が公開されているColumbia(Col)及び全配列ではないが一部の配列が公開されているLandsberg erecta(Ler)が好ましい。 以下、シロイヌナズナを例に、本発明のマッピング方法について説明する。 まず、変異遺伝子をホモに持つ、すなわち目的表現型を示す個体(例えばコロンビア(Col))を、異なる系統(例えばランズバーグ(Ler))と交配してF1を作出し(図1B)、その自殖であるF2を得る(図1C)。そして、F2のうち変異遺伝子をホモに持つ個体をいくつか集めてみる。F2が変異遺伝子をホモに持つことは、表現型(すなわち変異形質)が他の遺伝子型のものと異なるため識別することが可能である。ここで、選抜するF2個体は、少なくとも8個体、好ましくは少なくとも32個体である。図1Dでは、簡便性のため5個体分を例示する。相同染色体が対合すると組換えを起こすため、F2個体の各染色体は、親(F1)のColに由来する部分とLerに由来する部分のキメラになっている。そして、変異個体の遺伝形質は変異部位がホモであるため、変異遺伝子mの領域は、2本の染色体のいずれもColに由来する(図1D)。そこで、これらの変異型F2個体からゲノムDNAを調製してマーカーのパターンを調べてみる。 本発明においては、染色体上のマーカーa、b及びcを選択した場合の例を示している。ここで、染色体上における遺伝子間の距離が近い場合は連鎖する確率、すなわち2つの遺伝子座が連動して組換えが起こる確率は高く、遠くなれば連鎖する確率は低くなる。従って、図1Dに示すように、染色体上に適当な間隔となるようにマーカーを決めておくと、連鎖との関係で変異mの位置を知ることができる(マーカーの選択については後述する)。すなわち、図1Dにおいてマーカーがa、b及びcの3種類存在し(Col由来のマーカーを○印、Ler由来のマーカーを△印で示す)、マーカーaの近傍に変異mが生じているとすると、Col由来のマーカーaとmとは連鎖する確率が高くなるため、Col由来のマーカーa(○)とLer由来のマーカーa(△)との比は例えば9:1となる。また、マーカーbについては、mと連鎖する確率がやや少なくなるためColとLerとの比は例えば7:3に、同様に、マーカーcについては例えば5:5となる。従って、変異部位に近いマーカーほど、最初の変異株であるCol由来のものの割合が高くなる。そのため、変異部位に近いマーカーは変異株であるColのゲノム由来である割合が高くなる。このように、変異の存在位置によってマーカーのパターンが異なる。そして、マーカーの位置は予め分かっているため、これらの結果によって変異部位のおおまかな位置を知ることができる(ラフマッピング)。変異部位が複数存在しなければ目的表現型(形質)を表さないような場合であっても、上記方法に準じて複数箇所の変異部位をマッピングすることが可能である。 本マッピング方法は、マーカーとしてSSLPマーカーを使用する。そのため、マーカーの検出には、マーカーの検出対象となるゲノムDNAを鋳型とした増幅反応により得られる増幅産物の長さの違いを利用する。従来は、F2個体の各々からゲノムDNAを調製し、それぞれを鋳型とした増幅反応から得られる産物の長さを、例えば電気泳動などを行って確認していた。本マッピング方法においては、増幅産物を標識し、その標識のシグナル強度を利用して増幅産物の長さ(すなわちSSLPマーカーの種類)を確認し、またシグナル強度の比を利用してF2個体におけるSSLPマーカーの存在比を計算する。具体的に説明すると、Col系統とLer系統とを交配したF1個体からのゲノムDNAを鋳型として増幅反応を行った場合、F1個体は全てSSLPマーカーについてヘテロ型であるため、Col系統に特異的なSSLPマーカーを含む増幅産物と、Ler系統に特異的なSSLPマーカーを含む増幅産物とが、1:1で得られるはずである。本マッピング方法においては、増幅産物の標識シグナルに基づいて、図2Aに示すように、増幅産物の長さの違いにより2つのピークが得られ、またそのピークが同程度である(すなわちシグナル比が1:1である)ことから、F1個体のSSLPマーカーの存在比が1:1であることを検出することができる。また、F2個体についてSSLPマーカーを検出する場合には、図2Aのように同程度のピークが得られることもあれば、図2Bに示すようにピークに顕著な差があることもある。図2Aのように同程度のピークを示す場合には、F2個体のゲノムにおけるSSLPマーカーの存在比が1:1であることを表し、図2Bのようにピークに差がある場合には、ピークの比(シグナル比)を求めることにより、複数のF2個体のゲノムにおけるSSLPマーカーの存在比がそのシグナル比に相当することがわかる。このように本マッピング方法においてはSSLPマーカーの存在比を増幅産物の標識シグナル比により求めるため、F2個体の各個体についてそれぞれSSLPマーカーを検出する必要がなく、F2個体からまとめてDNAを調製し、SSLPマーカーの存在比(シグナル比)を求めることによりマッピングを行うことができる。 従って、本マッピング方法においては、図1DにおけるCol由来のマーカーとLer由来のマーカーの存在比は、例えばマーカーaについては9(9/1)であり、マーカーbについては約2.3(7/3)であり、マーカーcについては1(5/5)と計算することができる。このように、変異部位に近いマーカーはCol由来のものの割合が高くなるため、マーカーの存在比(すなわちシグナル比)は変異部位に近いほどその値が大きくなる。このようにして、マーカーの存在比をシグナル比で求めることによって、変異部位がどのマーカーの近傍に存在するかを簡便かつ迅速に判断することが可能となる。2.SSLPマーカーの選択 本マッピング方法においては、マッピングに使用するマーカーとして核酸増幅法により増幅される断片の長さの違いに基づく多型(単純配列長多型;SSLP)を選択する。それにより、SSLPマーカー領域を含む断片を増幅した場合に、得られる増幅産物の大きさが異なることに基づいてそのマーカーを検出することができる。また、そのマーカーの検出結果から、F2植物の当該マーカー部位が、どの系統に由来するのかを判定することができる。 上記方法に使用するSSLPマーカーの選択には、公開されているSSLPのデータベースを利用することができ、例えば、シロイヌナズナ(The Arabidopsis Information Resource;http://www.arabidopsis.org/など)、ヒト(http://ratmap.ims.u-tokyo.ac.jp/menu/RH.htmlなど)、マウス(Mouse Microsatellite Database;http://www.shigen.nig.ac.jp/mouse/mmdbj/top.jspなど)、ラット(http://www.well.ox.ac.uk/rat_mapping_resources/rat_RH_comprehensive_maps.htmlなど)のデータベースなどが公知である。 本発明においては、SSLPマーカーの中から、マッピング対象の生物の染色体1本当たり少なくとも1個のSSLPマーカー、好ましくは染色体1本当たり約3〜100個のSSLPマーカーがほぼ均等に存在するように選択することが好ましい。「均等」とは、染色体上の一定領域にSSLPマーカーが集中しないように、染色体上にほぼ万遍なくマーカーが存在していることをいう。 また、公知のSSLPマーカーの中には、増幅産物の長さが系統間で大きく異なっているものがある。この場合、増幅反応は、存在する鋳型の量が同量であっても、増幅産物が短い反応を優先的に行う傾向があり、その結果、SSLPマーカーを高精度で解析することが困難なこともある。そのため、選択するSSLPマーカーは、得られる増幅産物の長さが系統間であまり異なっていないものであることが好ましい。例えば、増幅産物の長さの違いが、約1〜30塩基、好ましくは1塩基〜20塩基、より好ましくは2塩基〜10塩基となるSSLPを選択する。このようなSSLPマーカーの選択は、当業者であれば上記SSLPマーカーのデータベースなどを利用することにより容易に行うことができる。 本発明のマッピング方法を適用するのに好ましいシロイヌナズナの2つの系統、すなわちColとLerとのSSLPマーカーとしては、図3及び4に示すものが挙げられる。図中、SSLPマーカーの名称、例えばCER459703、CER465666などは、国際的に共通に使用されている名称であり、詳細に関しては、上述したSSLPマーカーのデータベースを参照することができる(例えば、http://www.arabidopsis.org/Cereon/index.jsp参照)。 図3及び4に示す32個のSSLPマーカーは、上記基準を満たすものであり、染色体1本当たり4〜8個で配置されるものである。 図4の「マーカー」の欄にはSSLPマーカーを記載し、「染色体」の欄にはそのSSLPマーカーの存在する染色体の番号を、また「位置」の欄には当該染色体上の位置を記載した。 本発明を用いてシロイヌナズナのマッピングを行う場合、図3及び4に示すSSLPマーカーのうち、少なくとも染色体1本に1つのマーカーを用いることが好ましい。例えば、各染色体の中央領域に位置するSSLPマーカー、すなわちCER449727、CER458959、CER457720、CER466582、及びCER451883を使用することが好ましい。 本発明のマッピング方法に好適なSSLPマーカーは、特定の生物種、系統、上記例示したものなどに限定されず、上記SSLPマーカーの選択手順に従って選択される全てのSSLPマーカーが含まれる。 このようにして選択したSSLPマーカーは、本発明のマッピング方法において、マッピング対象の遺伝子を簡便かつ迅速にマッピングするのに役立つものである。3.SSLPマーカーを検出するためのプライマーの設計 本発明では、上述のように選択されたSSLPマーカーに基づいてプライマーセットを設計する。本発明において設計するプライマーセットは、SSLPマーカーを含む領域を増幅することができるように、フォワードプライマーとリバースプライマーを含むものである。すなわち、一の系統に特異的なSSLPマーカーと別の系統に特異的なSSLPマーカーの両方を増幅できるように、一の系統と別の系統に共通するゲノムDNA(鋳型)の配列に基づいて設計する。SSLPマーカーを含む領域を増幅することができるようなプライマーセットの設計は当技術分野で公知である。 簡単に説明すると、プライマーは、鋳型に対してアニーリング可能な配列を含む。ここで「アニーリング可能な配列」とは、鋳型の配列に対して完全に相同な又は相補的な配列、及び鋳型の配列に対して完全には相同又は相補的ではないが、増幅反応において増幅しようとする鋳型の標的領域と特異的にアニーリングすることができる程度に部分的に相同又は相補的な配列も含む。また、プライマーは、特異的なアニーリングが可能な条件を満たす、例えば特異的なアニーリングが可能な長さ及び塩基組成(融解温度)を有する必要がある。そのため、プライマーは、増幅対象の核酸(DNA又はRNA)と特異的にアニーリングする配列を含む必要があり、その配列の長さが短いために又はその塩基組成が適切ではないために非特異的なアニーリングを頻繁に起こし、非特異的な増幅が起こらないようにする。 例えば、プライマーの長さとしては、10塩基以上が好ましく、さらに好ましくは16〜50塩基であり、さらに好ましくは20〜30塩基である。また設計の際には、プライマーの融解温度(Tm)を確認することが好ましい。Tmとは、任意の核酸鎖の50%がその相補鎖とハイブリッドを形成する温度を意味し、鋳型とプライマーとが二本鎖を形成してアニーリングするためには、アニーリングの温度を最適化する必要がある。一方、この温度を下げすぎると非特異的な反応が起こるため、温度は可能な限り高いことが望ましい。従って、設計しようとするプライマーのTmは、増幅反応を行う上で重要な因子である。Tmの確認は、当業者に公知の計算法により又は公知のプライマー設計用ソフトウエア、例えばドナシス(日立ソフトウェアー)により行うことができる。 また、DNAポリメラーゼの性質から条件によっては、増幅産物の3’に「A」の配列が付加されたりすることがある。そのため、そのような付加により得られる増幅産物長が変化しないようにするため、付加を促進する配列(GTGTCTT(5’-3’))を各フォワードプライマーに付加してもよい(http://www.cidr.jhmi.edu/mouse/mmset.html)。 また本発明において、プライマーは、DNA若しくはRNA又はDNA類縁体(例えばLocked Nucleic Acid(LNA))のいずれであってもよいし、DNA、RNA及びDNA類縁体のハイブリッド核酸であってもよい。 さらに、本方法においては、増幅産物が標識されるように、標識を付加したプライマーを使用してもよい。増幅産物を標識するためにプライマーを標識する方法は当技術分野で周知である。本発明において使用可能な標識は特に限定されるものではなく、例えば、蛍光物質、放射性同位体、発光物質などを用いることができる。蛍光物質としては、限定するものではないが、フルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン、ローダミン、スルホローダミン、テトラメチルローダミン、6−カルボキシローダミン、N,N,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸、アントラニルアミド、クマリン、テルビウムキレート誘導体、マラカイトグリーン、リアクティブレッド4などが挙げられる。放射性同位体としては、32P、125I、35Sなどを用いることができる。また発光物質としてはルシフェリンなどを用いることができる。本発明においては、その取り扱い及び検出の簡便性の点から蛍光物質を使用することが好ましい。また、2種類の蛍光を使用して増幅産物を区別して標識し、可視的に区別して検出することもできる。例えば、検出対象のSSLPマーカーの種類ごとにプライマーを異なる蛍光で標識すると、増幅反応を行った後、一度に複数の増幅産物を用いてSSLPマーカーを検出することが可能となる。 これら標識の種類や標識の導入方法等に関しては、特に制限されることはなく、従来公知の各種手段を用いることができる。例えば標識の導入方法としては、放射性同位体を用いるエンドラベリング法が挙げられる。 また本方法においては、プライマーセットのうち少なくとも1つに、増幅反応時に標識を取り込むためのタグ配列を付加してもよい。「タグ配列」とは、タグ配列に対して相補的な増幅産物が生成された場合に、後述する標識を付加した共通オリゴヌクレオチドがその増幅産物に対して結合可能なように、当該共通オリゴヌクレオチドの配列と実質的に同一の配列を有するものである。ここで「実質的に同一」とは、完全に同一の配列のみならず、生成される増幅産物に対して共通オリゴヌクレオチドが特異的に結合可能な程度の同一性を有する配列が含まれる。このようなタグ配列は、特に限定されるものではないが、標的の鋳型と直接アニーリングするような配列であってはならない。従って、タグ配列は、できる限り短く、かつ増幅対象の鋳型には存在しない配列を含むように設計することが好ましい。例えば、タグ配列の塩基長は、約15〜30bp、好ましくは約17〜25bpであることが好ましい。また、タグ配列の塩基組成は、結合の強度の点からGC含量が多いことが好ましい。上記基準を満たすタグ配列として、cccccccccccccctga(配列番号65)を例示することができる。配列番号65に示される塩基配列を有するタグ配列は、特にシロイヌナズナのDNAを鋳型とした増幅反応を行うマッピング法において好ましい。 上記のようにプライマーにタグ配列を付加した場合には、増幅反応において共通オリゴヌクレオチドを使用する。共通オリゴヌクレオチドとは、増幅産物に結合し、増幅産物を標識するために使用することができるものである。従って、共通オリゴヌクレオチドは、上記プライマーのタグ配列と実質的に同一の配列を有する。これにより、プライマーのタグ配列に基づく増幅産物が生成された場合に、そのタグ配列に相補的な配列を含む増幅産物に対して、共通オリゴヌクレオチドは結合することができる。共通オリゴヌクレオチドは、タグ配列を含むものであれば、さらに別の塩基が付加されたものであってもよく、全体として塩基長が約15〜30bp、好ましくは約17〜25bpとなるように設計する。 また、共通オリゴヌクレオチドは標識を含む。本発明において使用可能な標識は上述した通りであり、またその標識の共通オリゴヌクレオチドの導入は当技術分野で公知の方法により行うことができる。 本発明者は、シロイヌナズナの2つの系統(Col及びLer)に特異的で好ましいプライマーセットを設計した。そのプライマーセットを図4に示す。図4において、「マーカー」の欄には、プライマーセットにより増幅されるSSLPマーカー名を示す。「位置」の欄に記載されている記号はSSLPマーカーの染色体上の位置を示す。また、「フォワードプライマー」及び「リバースプライマー」の欄には、プライマーの塩基配列を示す。リバースプライマー中の「n」は、なし又は任意の数の任意の塩基(例えばタグ配列など)を表す。さらに「増幅産物長の差」の欄に記載の数字は、上記各プライマーを用いてCol系統又はLer系統を鋳型として増幅反応を行った場合に得られる産物の長さの差を意味する。 本方法においては、上記プライマーセットを用いて、SSLPマーカーを含む領域を増幅し、得られる増幅産物の長さの違いに基づいて、SSLPマーカーを検出することができる。しかしながら、上記プライマーセットの各プライマーは、それが鋳型のゲノムDNAとアニーリングして目的のSSLPマーカーを含む領域を増幅することができるものであれば、配列番号1〜64に示される塩基配列において1若しくは複数の塩基が置換、欠失、付加などされた配列を有するものであってもよい。 上記プライマーセットのうち、本マッピング方法においては、染色体1本につき少なくとも1つのプライマーセットを使用することが好ましい。また好ましくは、以下のプライマーセットを使用することが好ましい。(a)配列番号7に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号8に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(b)配列番号21に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号22に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(c)配列番号37に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号38に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(d)配列番号45に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号46に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(e)配列番号55に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号56に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット 上記設計したプライマーは、当技術分野で公知のオリゴヌクレオチド合成法、例えば、ホスホロアミダイト法などにより容易に調製することができる。4.増幅反応 「1.マッピング方法の概要」に記載したように、一の系統の目的表現型を示す変異生物と、別の系統の生物とを交配してF1生物を作出し、F1生物からF2生物を作出した後、F2生物の中から目的表現型を示す個体を選抜し、選抜した個体からゲノムDNAを抽出する。この抽出したゲノムDNAを鋳型として、上述の通り設計したプライマーセットを用いた増幅反応を行う。 ゲノムDNAの抽出は、当技術分野で公知の方法(フェノール・クロロホルム法など)又は市販のキットを用いて行うことができる。F2生物の中からは、目的表現型を示す個体を少なくとも8個体、好ましくは少なくとも32個体を選抜するが、それらの選抜した個体からまとめてゲノムDNAを抽出することも可能である。これにより、個々の個体からゲノムDNAを抽出する必要がなく、簡便である。 続いて、ゲノムDNAを鋳型として、「3.SSLPマーカーを検出するためのプライマーの設計」の項に記載のように作製したプライマーセットを用いた増幅反応を行う。 増幅手法としては、特に限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の原理を利用した公知の方法を挙げることができる。例えば、PCR法、LAMP(Loop-mediated isothermal AMPlification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法、RCA(Rolling Circle Amplification)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等を挙げることができる。 増幅反応の条件もまた特に限定されるものではなく、当業者であれば、採用する増幅手法に最適な増幅条件を設定することができる。例えば、PCRを使用する場合、その反応温度条件は、95℃にて5分の後、(94℃15秒、55℃15秒、72℃30秒)を40サイクル行い、60℃45分、4℃10分の後、10℃で解析まで保持する条件とすることができる。 増幅産物の標識には、当技術分野で公知の方法を利用することができる。例えば、「3.SSLPマーカーを検出するためのプライマーの設計」の項に記載のようにプライマーに標識を付加した場合には、プライマーが伸張して得られる増幅産物にはその標識が含まれる。また、プライマーにタグ配列を付加し、タグ配列と同じ配列を有する標識共通オリゴヌクレオチドを使用する場合には、増幅過程において増幅産物中に標識が取り込まれることになる。その他、増幅反応において基質として使用するdNTPを標識する手法も公知である。 標識に基づいて増幅産物を検出するには、上述した標識を検出するための当技術分野で公知の方法を使用することができる。例えば、標識として蛍光を用いた場合には、その蛍光を蛍光顕微鏡、蛍光プレートリーダーなどを用いて検出することができる。また標識として放射性同位体を用いた場合には、放射活性を、例えば液体シンチレーションカウンター、γ−カウンターなどにより計測することができる。本マッピング方法においては、標識のシグナルに基づいて増幅産物の長さを区別することができ、また異なる長さの増幅産物に由来するシグナル比を求めるために、DNA鎖長解析が可能であることが好ましい。そのため、例えば、蛍光DNAシーケンサー(ABI社モデル3100)のDNA鎖長解析機能を利用することができる。 増幅産物の標識のシグナル強度に基づいて、一の系統に特異的な増幅産物と別の系統に特異的な増幅産物の長さを区別し、各増幅産物に由来するシグナルの比を求める。具体的には、一の系統に特異的な増幅産物に由来するシグナル強度を、別の系統に特異的な増幅産物に由来するシグナル強度で除した値を算出する。ここで、各増幅産物量が同程度、すなわちF2生物に存在するSSLPマーカーの存在比が同程度であれば、そのシグナル比の値は約1となる。一方、一の系統に特異的な増幅産物量が多い場合には、すなわちF2生物に存在するSSLPマーカーの多くが一の系統に由来する場合には、そのシグナル比は1以上となる。また一の系統に特異的な増幅産物しか存在しない場合、すなわちF2生物に存在するSSLPマーカーの全てが一の系統に由来する場合には、そのシグナル比は無限大となる。 以上のようにして、シグナル強度に基づいて、F2生物におけるSSLPマーカーの存在比を求めることが可能となる。5.マッピング 「1.本マッピング方法の概要」の項に記載したように、本マッピング方法においては、SSLPマーカーの存在比をシグナル比から求め、シグナル比が1より大きい場合には、そのSSLPマーカーが変異部位の近傍に存在することがわかる。多くのSSLPマーカーを利用することにより、変異部位をさらに狭い領域に特定してマッピングすることができる。また、検出したSSLPマーカーの存在比を統計学的に処理して組換え率を計算し、変異部位(目的表現型に寄与する変異)の染色体上の位置をマッピングすることも可能である。 上述のようにして、マッピング対象の遺伝子を高速かつ簡便にマッピングすることができる。 以下、実施例を用いて本方法をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。 なお、以下の実施例においては、本発明者が作製した高温感受性変異体(H32S1007)を用いて実験を行ったが、この変異体は、野性型col株をEMS処理によって変異を導入した種子集団から高温ストレスに対して高感受性になる変異体として取得したものである。 本実施例においては、染色体DNA(gDNA)の単離を行った。具体的には、Col株の変異体(H32S1007)とLer株を掛け合わせF1を作出した後、F2雑種集団を作製した。そのF2雑種集団からH32S1007と同じ表現型(高温感受性)を示す個体を選別した。本実験では、F2雑種集団から96個体を選別した。また、本実施例では、本方法を行った後のファインマッピングのことも考えて、この個体それぞれからgDNAを単離した。しかしながら、本方法においては、全個体からまとめてgDNAを単離して使用してもよいし、全個体由来のgDNAを混合して使用することも可能である。また、複数個体からのgDNAの解析について調べるため、単離したgDNAを、8個体、32個体、及び96個体ごとに混ぜて3種類のgDNAを作製した。 また、Col株の植物、Ler株の植物、Col株とLer株を掛け合わせたF1の植物からもgDNAを単離した。 gDNAの単離は、以下のようにして行った。すなわち、植物組織(100mg)に抽出液(0.3M NaCl、50mM TrisHCl(pH7.5)、20mM EDTA(pH8.0)、0.5%SDS)0.1mlを加えホモジナイザーで組織を破砕した。抽出液0.5mlをさらに加え、フェノール・クロロホルム(1:1)0.5mlを添加し、良く撹拌した後、遠心分離(15000rpm、10分)した。上清を新しいチューブに移し、等量のイソプロパノールを加えて良く撹拌し、10分放置した。遠心分離(15000rpm、10分)を行い、上清を捨てて70%エタノール(0.5ml)を加え、再度遠心分離(15000rpm、5分)を行って上清を捨てた。ペレットを乾燥させて滅菌水(0.1ml)を加え撹拌し、gDNA溶液を得た。 本実施例においては、SSLPマーカーの選択とプライマーの設計を行った。 公知のSSLPマーカーの中から、得られる増幅産物の長さがCol系統とLer系統であまり異なっていないもの、すなわち、得られる増幅産物長の差が10塩基以内のSSLPマーカーを選択した。具体的には、モンサント社のデータベース(http://www.arabidopsis.org/Cereon/index.jsp)を参考にしながら、シロイヌナズナの5本の染色体上に適当な間隔を空けてSSLPマーカーを選択した(図3)。選択したSSLPマーカーは、1番染色体のCER459703、CER465666、CER451993、CER449727、CER462442、CER449191、CER449060、CER452147、2番染色体のCER461179、CER460586、CER458959、CER453292、CER450196、3番染色体のCER465080、CER465128、CER455537、CER456478、CER456622、CER457720、CER458674、4番染色体のCER452871、CER453525、CER466582、CER452238、5番染色体のCER457340、CER456831、CER456809、CER451883、CER457770、CER455854、CER457827、CER456732である。 また、上記SSLPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセット32セットを設計した(図4)。プライマーの設計にはドナシス(日立ソフトウェアー)を用いた。ここで得られた配列を蛍光標識法で反応できるように各リバース(R)プライマー(図4)にタグ配列(cccccccccccccctga(5’-3’);配列番号65)を付加した(図4中、nで表す)。また、DNAポリメラーゼの性質から条件によっては3’に「A」の配列が付加されたりすることがある。そのため、付加を促進する配列(GTGTCTT(5’-3’))を各フォワード(F)プライマー(図4)に付加した(http://www.cidr.jhmi.edu/mouse/mmset.html)。 このようにしてPCRプライマーをSSLPマーカーごとに作製した(北海道システムサイエンス株式会社へ合成依頼)。また、リバースプライマーに付加したタグ配列を利用して増幅産物を蛍光標識するために、上記タグ配列と同一の配列(配列番号65)を有する共通オリゴヌクレオチドを作製し、これに蛍光標識(FAM)を行った(ABI社へ合成依頼)。 上記の通り設計したプライマーセットを用いて、鋳型としてColとLerを用いた場合にそれぞれに特有のマーカーが検出されるか否かを確認した。ここで、PCRの反応温度条件は、95℃にて5分の後、(94℃15秒、55℃15秒、72℃30秒)を40サイクル行い、60℃45分、4℃10分の後、10℃で解析まで保持した。反応液組成は、鋳型0.5マイクロリットル、Amplitag gold PCR Master Mix(ABI社製)5マイクロリットル、フォワードプライマー100ピコモル、リバースプライマー1ピコモル、及び標識した共通オリゴヌクレオチド100ピコモルを加えて10マイクロリットルとした。この増幅反応により、共通オリゴヌクレオチドによって増幅産物が蛍光標識される。反応後、増幅産物を、蛍光DNAシーケンサー(ABI社モデル3100)のDNA鎖長解析機能を用いて鎖長を解析した。その結果、設計したプライマーセットを用いて、ColとLerのSSLPマーカーをそれぞれ検出できることがわかった。 本実施例においては、実施例2において設計したプライマーセットを用いて、ColとLerを掛け合わせたF1植物4個体について解析を行った。その結果を図2A及び5に示す。図2Aに示すように、各マーカーからのColとLerのピーク比(シグナル比)は概ね1であり、一定であった(図5の平均及び標準誤差を参照)。このことから、実施例2で設計したプライマーセットを用いて増幅した産物の標識シグナルにより、増幅産物の長さ(すなわちSSLPの種類)を識別し、またシグナルの比からSSLPマーカーの存在比を求めることができ、SSLPマーカーを検出できることがわかった。 本実施例においては、実施例2において設計したプライマーを用いて、サンプルとの反応を行った。 その結果を図2B及び図6に示す。図2Bに示すように、SSLPマーカーの中には、シグナル比が異なるところがあった。このシグナル比(Colシグナル/Lerシグナル)を図6にまとめる。図6において、スコアが1の場合にはそのサンプルのSSLPマーカーがF1(Col/Ler)と同じこと、すなわちSSLPマーカーの存在比が約1:1であることを意味する。また、数字が大きければ、F2個体のゲノムDNAが、最初の変異株の系統(Col)からのSSLPマーカーを有する確率が高く、従って、変異の原因遺伝子座に近いことを示す。 実施例1で調製した、変異株H32S1007から得たF2植物のgDNAを用いて解析を行ったところ、ほとんどのマーカーのピーク比はColとLerの掛け合わせたF1植物のものとほぼ同じ(約1)であった。8個体及び32個体を混ぜたgDNAでは2番染色体上腕及び5番染色体下腕でスコアーが変化している(図6、マーカー9、10、12、29〜32)。96個体を混ぜたgDNAでは5番染色体下腕でスコアーの有意な変化が認められた(図6、マーカー29〜32)。このことから、5番染色体下腕付近が原因遺伝子座であると示唆された。F2雑種から取得する変異型表現系を示す個体の数は、多い方が安定したデータを示すことが分かった。 その後ファインマッピングを行った結果、原因遺伝子座内に存在する遺伝子に塩基置換が認められた(図7)。この変異は、5番染色体の20.5Mb上に存在し、マーカーCER455854(マーカー30)とCER457827(マーカー31)との間に存在する。従って、実際の変異の位置は、上記実験の結果(図6)、すなわちマーカー29〜32の付近でスコアーの有意な変化が認められ、特にマーカー30及び31付近ではスコアーが顕著に変化しているという結果と一致するものであり、本方法によって変異の原因遺伝子座を簡便、迅速かつ効率的に特定することができることが証明された。 本発明により、変異のマッピング方法が提供される。該方法は、生物における目的表現型に寄与する変異を簡便かつ迅速にマッピングすることができるため、変異遺伝子の探索などに有用である。 また、本発明に係るマッピング用プライマーセットにより、特にシロイヌナズナの変異を簡便かつ迅速にマッピングすることが可能である。本マッピング方法の概要を示す。本マッピング方法において、増幅産物のシグナルからSSLPマーカーの種類と存在比を求める例を示す。シロイヌナズナの変異をマッピングするために使用するのに好ましいSSLPマーカーの位置を示す。シロイヌナズナの変異をマッピングするために使用するのに好ましいSSLPマーカーとプライマーセットを示す。F1個体について設計したプライマーセットを用いて得られた結果を示す。F2個体について設計したプライマーセットを用いて得られた結果を示す。H32S1007株の変異部位の染色体上の位置を示す。 配列番号1〜65:合成オリゴヌクレオチド(nはなし又は任意の数の任意の塩基を表す) SSLPマーカーを利用して目的表現型に寄与する変異をマッピングする方法であって、以下のステップ:(a)一の系統の目的表現型を示す変異非ヒト生物と、別の系統の非ヒト生物とを交配してF1非ヒト生物を作出し、F1非ヒト生物の交配からF2非ヒト生物を作出するステップ、(b)F2非ヒト生物の中から目的表現型を示す複数の個体を選抜するステップ、(c)選抜した複数の個体からゲノムDNAを抽出するステップ、(d)一の系統と別の系統のSSLPマーカーを含む領域を増幅することができるプライマーセットを用いて、選抜した各個体からの前記ゲノムDNAが混合された状態でゲノムDNAを鋳型とした増幅反応を行うステップ、(e)得られる増幅産物を標識するステップ、(f)一の系統に特異的なSSLPマーカーを含む増幅産物と別の系統に特異的なSSLPマーカーを含む増幅産物の長さと量を標識のシグナルにより解析し、ゲノムDNA上のSSLPマーカーの存在比をシグナル強度の比から計算するステップ、(g)(f)の結果に基づいて、上記目的表現型に寄与する変異の染色体上の位置をマッピングするステップ、を含む、前記マッピング方法。 ステップ(c)において、選抜した複数の個体からまとめてゲノムDNAを抽出するものである、請求項1記載のマッピング方法。 標識が蛍光標識である、請求項1又は2に記載のマッピング方法。 非ヒト生物がシロイヌナズナである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマッピング方法。 系統がシロイヌナズナコロンビア系統及びランズバーグ系統である、請求項4記載のマッピング方法。 プライマーセットが、配列番号2n−1(nは1〜32の整数を表す)に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号2n(nは1〜32の整数を表す)に示される塩基配列を有するリバースプライマーを含むプライマーセットからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項5に記載のマッピング方法。 プライマーセットが、以下の(a)〜(e)を含むものである、請求項6記載のマッピング方法。(a)配列番号7に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号8に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(b)配列番号21に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号22に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(c)配列番号37に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号38に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(d)配列番号45に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号46に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(e)配列番号55に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号56に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット 配列番号2n−1(nは1〜32の整数を表す)に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号2n(nは1〜32の整数を表す)に示される塩基配列を有するリバースプライマーを含む、請求項6に記載のマッピング方法で使用するための、シロイヌナズナのマッピング用プライマーセット。 以下の(a)〜(e)を含む、請求項7に記載のマッピング方法で使用するための、シロイヌナズナのマッピング用プライマーセット。(a)配列番号7に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号8に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(b)配列番号21に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号22に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(c)配列番号37に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号38に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(d)配列番号45に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号46に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット、(e)配列番号55に示される塩基配列を有するフォワードプライマー、及び配列番号56に示されるリバースプライマーを含むプライマーセット配列表


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