タイトル: | 特許公報(B2)_骨格筋細胞の分化誘導方法 |
出願番号: | 2004372656 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 5/10,C12N 15/09,A61K 35/28,A61K 35/34,A61P 21/00,A61P 21/04,A61P 41/00,A61P 43/00 |
出澤 真理 鍋島 陽一 星野 幹雄 JP 4581085 特許公報(B2) 20100910 2004372656 20041224 骨格筋細胞の分化誘導方法 国立大学法人京都大学 504132272 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 出澤 真理 鍋島 陽一 星野 幹雄 20101117 C12N 5/10 20060101AFI20101028BHJP C12N 15/09 20060101ALI20101028BHJP A61K 35/28 20060101ALN20101028BHJP A61K 35/34 20060101ALN20101028BHJP A61P 21/00 20060101ALN20101028BHJP A61P 21/04 20060101ALN20101028BHJP A61P 41/00 20060101ALN20101028BHJP A61P 43/00 20060101ALN20101028BHJP JPC12N5/00 102C12N15/00 AA61K35/28A61K35/34A61P21/00A61P21/04A61P41/00A61P43/00 105 C12N 1/00−7/08 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2003−144155(JP,A) The Journal of Clinical Investigation,June 2004,Vol.113,No.12,p.1701-1710 3 2006174784 20060706 7 20070605 六笠 紀子 本発明は骨髄間質細胞から骨格筋細胞を分化誘導する方法に関するものである。 筋疾患、とくに骨格筋の変性疾患である筋ジストロフィーなどに対しては現時点では有効な治療手段がない。患者自身の骨髄間質細胞から骨格筋細胞を作成することができれば自家移植が可能であり、有効な治療方法になるものと考えられる。また、上記の再生医療などの治療面だけではなく、今後開発が予想される人工臓器などの工学的な方面においても患者自身の骨髄間質細胞から生成させた骨格筋細胞の利用が考えられる。培養レベルで筋肉細胞を容易に作成できることから、ハイブリッド型の人工臓器などの作成において使用も考えられる。 骨髄間質細胞から骨格筋を分化誘導させる方法としては、特開2003-144155号公報に記載された方法が知られている。この方法は、(1)骨髄から骨髄間質細胞を単離して培養する工程;(2)脱メチル化剤(5-アザシチジン)を添加する工程;(3)cAMP上昇作用性薬剤又はcAMPアナログ(フォルスコリン)、及び/又は細胞分化生存作用性因子(bFGF、PDGF-AA、ヘレグリン)を添加する工程;(4)細胞にNotch遺伝子及び/又はNotchシグナリング関連遺伝子を導入して培養する工程;(5)遺伝子導入された細胞と未導入細胞とを共培養する工程;及び(6)cAMP上昇作用性薬剤又はcAMPアナログ(フォルスコリン)を添加する工程を必須の工程として含んでいる。 しかしながら、上記の方法は6工程を含むものであり、操作が非常に煩雑であるという問題点を有している。煩雑な操作で多数の工程を行なうと不確定要素が増加し、誘導効率の低下につながる。また、この方法は基本的に神経細胞を分化誘導する方法として提案されており、骨格筋誘導を選択的に分化誘導するために最適化された方法ではない。さらに、この方法では筋細胞以外の要素を含む混合系を用いていることから、誘導された骨格筋細胞を臨床応用する際に安全性の観点で問題を有している。特開2003-144155号公報 本発明の課題は、骨髄間質細胞から骨格筋細胞を分化誘導する方法を提供することにある。より具体的には、特開2003-144155号公報に開示された方法よりも効率的かつ簡便に、再現性よく骨髄間質細胞から骨格筋細胞を分化誘導する方法を提供することが本発明の課題である。 本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、骨髄間質細胞から骨格筋細胞を分化誘導するにあたり、特開2003-144155号公報に開示された方法では必須の工程とされていた(2)脱メチル化剤(5-アザシチジン)を添加する工程、(5)遺伝子導入された細胞と未導入細胞とを共培養する工程;及び(6)cAMP上昇作用性薬剤又はcAMPアナログ(フォルスコリン)を添加する工程を省略することができること、及びそのようにして全工程の操作を簡略化することにより、分化誘導効率を飛躍的に高めることができ、骨格筋細胞を効率的に作出できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。 すなわち、本発明により、骨髄間質細胞から骨格筋細胞を分化誘導する方法であって、以下の工程:(a)骨髄間質細胞(ただし、該骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない細胞である)の培養物に、サイクリックAMP(以下、「cAMP」と略す場合がある。)上昇作用性薬剤、cAMPアナログ、及び細胞分化生存作用性因子からなる群から選ばれる1以上の物質を添加して培養する工程;(b)上記工程(a)で得られた細胞にNotch遺伝子及び/又はNotchシグナリング関連遺伝子を導入して培養し筋芽細胞培養物を得る工程(ただし、上記培養は、遺伝子導入された細胞と未導入細胞との共培養を含まない);及び、(c)上記工程(b)で得られた筋芽細胞培養物にNotchリガンドを添加して培養する工程を含む方法が提供される。 上記発明の好ましい態様によれば、上記工程(c)においてNotchリガンドとしてJagged1蛋白を用いる上記の方法;及び上記工程(c)を無血清培地で行なう上記の方法が提供される。 また、別の観点からは、本発明により、骨髄間質細胞から筋芽細胞を分化誘導する方法であって、以下の工程:(a)骨髄間質細胞(ただし、該骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない細胞である)の培養物に、cAMP上昇作用性薬剤、cAMPアナログ、及び細胞分化生存作用性因子からなる群から選ばれる1以上の物質を添加して培養する工程;及び(b)上記工程(a)で得られた細胞にNotch遺伝子及び/又はNotchシグナリング関連遺伝子を導入して培養する工程(ただし、上記培養は、遺伝子導入された細胞と未導入細胞との共培養を含まない)を含む方法が提供される。 さらに別の観点からは、本発明により、筋芽細胞から骨格筋細胞を分化誘導する方法であって、筋芽細胞培養物にNotchリガンドを添加して培養する工程を含む方法が提供される。 また、本発明により、上記の方法により得ることができる骨格筋細胞又は筋芽細胞、及び該骨格筋細胞又は筋芽細胞を含む筋疾患の治療のための医薬組成物、及び上記医薬組成物の製造のための上記骨格筋細胞又は筋芽細胞の使用が提供される。さらに、本発明により、筋疾患の治療方法であって、骨格筋細胞又は筋芽細胞の投与を必要とする患者に対して、上記の方法により得ることができる骨格筋細胞又は筋芽細胞を局所投与又は全身投与により治療有効量投与する工程を含む方法;骨格筋細胞又は筋芽細胞が患者自身又は他家由来の骨髄間質細胞から分化誘導された細胞である上記方法が提供される。 本発明の方法によれば、特開2003-144155号公報に記載された骨格筋細胞の分化誘導方法に比べて全工程が簡略化されており、簡便かつ効率的に骨格筋細胞を調製することができる。また、本発明の方法では、工程(b)により骨格筋細胞の前駆細胞となる筋芽細胞を分化誘導した後、その筋芽細胞を成熟骨格筋細胞へと段階的に分化誘導することができるので、分化段階及び細胞増殖などを制御することができる。さらに、本発明の方法では、筋芽細胞又は骨格筋細胞以外の細胞を含む混合系を用いておらず、実質的に純粋な骨格筋細胞集団を効率的に調製できるので、得られた骨格筋細胞は筋疾患の治療に際して安全な医薬として使用できる。 本発明の方法は、骨髄間質細胞から骨格筋細胞を分化誘導する方法であって、(a)骨髄間質細胞(ただし、該骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない細胞である)の培養物に、cAMP上昇作用性薬剤、cAMPアナログ、及び細胞分化生存作用性因子からなる群から選ばれる1以上の物質を添加して培養する工程;(b)上記工程(a)で得られた細胞にNotch遺伝子及び/又はNotchシグナリング関連遺伝子を導入して培養し筋芽細胞培養物を得る工程(ただし、上記培養は、遺伝子導入された細胞と未導入細胞との共培養を含まない);及び、(c)上記工程(b)で得られた筋芽細胞培養物にNotchリガンドを添加して培養する工程を含んでいる。 本発明の方法は、記載された骨格筋細胞の分化誘導方法(同公報第[0022]段落などに記載されている6工程を含む方法)において必須工程とされている(2)脱メチル化剤(5-アザシチジン)を添加する工程、(5)遺伝子導入された細胞と未導入細胞とを共培養する工程;及び(6)cAMP上昇作用性薬剤又はcAMPアナログ(フォルスコリン)を添加する工程を含まないことを特徴としている。特に、遺伝子導入された細胞と未導入細胞とを共培養する工程を含まないことは本発明の方法の主たる特徴である。本発明の方法は、ヒトを含む哺乳類動物の骨格筋細胞の調製に用いることができるが、好ましい対象はヒトである。本発明の各工程の細部については、上記特開2003-144155号公報を参照することにより、理解を深めることができる。上記公報の開示の全てを参照により本明細書の開示に含める。 本発明の方法で用いる骨髄間質細胞は骨髄中に存在する造血系以外の間葉系細胞のことを意味しており、骨、軟骨、又は脂肪細胞等の細胞に分化できる細胞であると考えられている。骨髄間質細胞は、Thy1及び2が「+」、β1-インテグリンが「+」、並びにCD34が「−」であることにより識別しうる。骨髄間質細胞の調製方法については特開2003-144155号公報に詳細かつ具体的に説明されているので、当業者は容易に骨髄間質細胞を入手することが可能である。例えば、骨髄から骨髄間質細胞を採取し、標準的な基礎培地に血清を加えた培地中で上記細胞を培養することにより骨髄間質細胞の培養物を調製することができる。例えば、骨髄間質細胞を3〜4代継代培養した後、例えば1700細胞/cm2程度の細胞密度に調節した培養物を調製することが望ましい。標準的な基礎培地としては、例えば、イーグルス(Eagle's)アルファ修飾最小必須培地などを用いることができ、血清としてはウシ胎児血清あるいはヒトの場合にはヒト血清を用いることができる。本発明の方法で用いる骨髄間質細胞は、特開2003-144155号公報に記載の方法で採用されている脱メチル化剤での処理を行なう必要はない。本発明の特徴の一つは、従来は必須と考えられていた脱メチル化剤による処理を省略しても効率的に骨格筋細胞を分化誘導することができることを見出した点にある。 cAMP上昇作用性剤又はcAMPアナログとしては、例えばフォルスコリン(Forskolin)を用いることができるが、これに限定されることはなく、1種又は2種以上のcAMP上昇作用性剤又はcAMPアナログを適宜用いることが可能である。cAMP上昇作用性剤又はcAMPアナログの濃度は特に限定されないが、例えば、0.001nM〜100μM程度であり、好ましくは500nM〜50μM程度である。細胞分化生存作用性因子としては、例えば、塩基性線維芽細胞成長因子(basic-Fibroblast growth factor (bFGF))、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor-AA (PDGF-AA))、又はNeuregulin(商品名Heregulin)などを用いることができ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。細胞分化生存作用性因子の濃度は特に限定されないが、例えば、0.001ng/ml〜100μg/ml程度であり、好ましくは0.5ng/ml〜2μg/ml程度である。cAMP上昇作用性剤又はcAMPアナログと細胞分化生存作用性因子とを組み合わせて用いることも好ましい。例えば、フォルスコリン(5μM)、bFGF(10 ng/ml)、PDGF-AA (5 ng/ml)、Neuregulin (200 ng/ml)を10% ウシ胎児血清(FBS)を含むMEM Eagle Modification培地に加えて骨髄間質細胞を培養する。この段階で、骨格筋幹細胞のマーカーであるPax7が発現されてくるので、これを指標として上記の薬剤の添加及び培養を行なえばよい。 Notch遺伝子及び/又はNotchシグナリング関連遺伝子の導入は、例えば哺乳動物発現ベクターを用いたリポフェクションにより行なうことができるが、この方法に限定されることはなく、適宜の遺伝子導入手段を採用することができる。例えば、Notch細胞質ドメイン(NICD)cDNAを含むpCI-neo-NICDプラスミド(特開2003-144155号公報の実施例1に記載されたプラスミド)を導入することができる。上記の遺伝子導入の後、好ましくは遺伝子が導入された細胞の選択を行うことができる。この選択は、例えば硫酸G418の添加によるネオマイシン耐性に基づいて行なうことができ、通常は10〜14日程度で完了する。選択された細胞を100%コンフルエントに達するまで培養することが望ましい。このようにして得られた細胞は筋芽細胞集団であり、細胞の形質が変化して、骨格筋マーカーであるMyoD、Myogeninなどの転写因子が検出されるようになる。特開2003-144155号公報に記載の方法では、遺伝子導入又は上記選択の後、遺伝子導入後の細胞と遺伝子未導入細胞とを共培養する工程を採用しているが、本発明の方法では上記共培養は行なわない。本発明のもう一つの特徴は、従来は必須と考えられていた上記共培養を省略しても効率的に骨格筋細胞を分化誘導できることを見出した点にある。従って、本発明の方法では、上記遺伝子導入又は上記選択の後、共培養を行うことなく工程(c)を行なう。 続いて、工程(c)に従って、得られた筋芽細胞から成熟骨格筋細胞を誘導するためのフュージョン・インダクションを行なう。この工程は筋芽細胞の培養物にNotchリガンドを添加して培養することにより行なうことができるが、Notchリガンドとしては、例えば、Jagged1蛋白(Lindsell, C.E. et al., Cell, 80, pp.909-917, 1995)を用いることができる。Jagged1蛋白の濃度は特に限定されないが、例えば1〜20μg/ml程度、好ましくは5μg/ml程度である。培地の種類は特に限定されず、通常の基礎培地を用いることができ、例えばMEM Eagle Modification培地などを用いることができる。培地にはFBSなどの血清を10%程度添加することもできるが、好ましくは無血清培地を用いることができる。例えばTTS-serum free medium (Yoshida, N. et al., J. Cell Sci., 111, pp.769-779, 1998)などの無血清培地を用いることにより臨床応用に適した骨格筋細胞を調製することができる。上記のフュージョン・インダクションにより、Myf6/MRF4などの成熟マーカーを発現し、かつMyosin heavy chainやskeletal myosinに陽性の多核の骨格筋細胞が誘導される。この骨格筋細胞は培養下で自発的な収縮運動を示す。特開2003-144155号公報に記載の方法では、遺伝子導入後の細胞と遺伝子未導入細胞とを共培養した後、cAMP上昇作用性薬剤又はcAMPアナログを培養物に加えて成熟骨格筋細胞への分化誘導を行っているが、本発明の方法では、cAMP上昇作用性薬剤又はcAMPアナログの培養物への添加を行なう必要はない。本発明のさらにもう一つの特徴は、従来は必須と考えられていたcAMP上昇作用性薬剤又はcAMPアナログの添加を省略しても十分に機能的に成熟した骨格筋細胞を分化誘導できることを見出した点にある。 その後、得られた骨格筋細胞培養物を1ウェルあたり1細胞の割合で限界希釈することによって骨格筋細胞をクローン化することができ、通常は約90%程度の生存クローンから再び多核で収縮能を有する骨格筋細胞集団を得ることができる。この細胞集団は他の要素を含まない実質的に純粋な筋肉細胞から構成される集団であり、筋疾患などの治療目的に特に好適に用いることができる。さらに、得られた細胞集団は骨格筋幹細胞を含んでおり、度重なる継代培養を行なっても安定に筋肉細胞を調製することが可能である。 本発明の方法により得られた骨格筋細胞は、例えば、筋ジストロフィーなどの筋疾患の患者への局所又は全身投与;交通外傷や熱傷などによる筋肉欠損又は損傷時の筋肉補填;脳血管障害、脊髄損傷、神経変性疾患による廃用性筋萎縮症における筋肉再建;又は腕神経叢マヒなどの神経障害に伴う筋萎縮の治療などに用いることができるが、本発明により得られた骨格筋細胞の用途は上記に例示した特定の用途に限定されることはない。例えば、患者自身から採取した骨髄間質細胞を用いて本発明の方法により骨格筋細胞を作成し、患部に自家移植することができる。また、同様の手法によりHLAを適合させた他家移植も可能である。本発明の方法により得られる骨格筋細胞は、幹細胞を含む実質的に純粋な骨格筋細胞集団であり、移植を行なうことにより幹細胞が生体に生着し、繰り返される筋傷害に対応して再生することができるので、臨床応用に大きな利点を有している。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。例1 特開2003-144155号公報に記載の方法に従って、骨格筋誘導成体ラット(Wister種)及びヒトの骨髄より間質細胞を採取して培養した。培地としてはMinimum Essential Medium (MEM)Eagle Modification (Sigma社、M4526)に15%のウシ胎児血清 (Biowhittaker社、14-501F、Lot#61-1012)を加えたものを用いた。4代まで継代培養し、80-90%の細胞密度に達した時点で1800〜1900 cells/cm2の密度に調節して細胞をまき、その翌日よりForskolin 5μM (Calbiochem、344273)、basic-Fibroblast growth factor 10ng/ml (Peprotech EC LTD、100-18B)、Platelet-derived growth factor-AA 5ng/ml(Peprotech EC LTD、396-HB)、Heregulin 200ng/ml(R&D Systems、396-HB)を添加した培地に切り替えて3日間培養した。その後、特開2003-144155号公報の実施例1の方法に従ってNotch細胞内ドメインの遺伝子を細胞に導入した。 導入の翌日にG418 sulfate (GibcoBRL、83-5027)を200 ng/mlの濃度で添加して導入細胞の選択を10日間行った。細胞数が回復してほぼ100%コンフルエントに達した後、10% FBSを含むMEM Eagle Modification 培地にJagged1蛋白 5μg/ml (recombinant Rat Jagged1/Fc Chimera、GT TECHNE社、3599)を添加して5日間培養することによりフュージョンインダクションを行なった。この培養中、細胞が融合し多核の骨格筋細胞が局所的に出現し経時的に増加し、Myosin heavy chain及びskeletal myosinに陽性の多核の骨格筋細胞が形成され、培養下で自発的な収縮運動を示すことが顕微鏡レベルにおいて観察された。これらの細胞ではMyf6/MRF4などの成熟マーカーの発現が確認された。骨格筋細胞への誘導効率はフュージョンインダクション14日目において約40%であった。対照として、特開2003-144155号公報に記載された脱メチル化処理、共培養、及びその後のForskolin添加を伴う方法により骨格筋細胞の分化誘導を行なったところ、骨格筋細胞への誘導率は20.8±3.5%であった。例2 上記例1と同様の方法により骨格筋細胞の分化誘導を行なった。ただし、フュージョンインダクションにおいて無血清培地を用いた。無血清培地としては、インスリン 10 μg/ml、トランスフェリン 5 μg/ml、sodium selenite 10 nmol、BSA 1mg/ml、カナマイシン 60 μg/mlを含むDMEM(この培地を「ITS-serum free medium」と呼ぶ)にJagged1蛋白 (recombinant Rat Jagged1/Fc Chimera、GT TECHNE社、3599)を最終濃度が5μg/mlとなるように添加したものを用いた。この結果、培養1日目には多核の骨格筋細胞の数が35ミリ培養皿1枚あたり16となり、培養5日目には664となった。一方、対照として上記無血清培地のみ(Jagged1蛋白無添加)で培養した場合には、培養1日目に13、培養5日目には487であった。この結果から、無血清培地にJagged1蛋白を添加することによっても成熟した骨格筋細胞を分化誘導できることが示された。骨髄間質細胞から骨格筋細胞を分化誘導する方法であって、以下の工程:(a)骨髄間質細胞(ただし、該骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない細胞である)の培養物に、フォルスコリン、並びに細胞分化生存作用性因子である塩基性線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、及びニューレグリンを添加して培養する工程;(b)上記工程(a)で得られた細胞にNotch細胞内ドメインの遺伝子を導入して培養し筋芽細胞培養物を得る工程(ただし、上記培養は、遺伝子導入された細胞と未導入細胞との共培養を含まない培養である);及び、(c)上記工程(b)で得られた筋芽細胞培養物にJagged1蛋白を添加して培養する工程を含む方法。上記工程(c)を無血清培地で行なう請求項1に記載の方法。骨髄間質細胞から筋芽細胞を分化誘導する方法であって、以下の工程:(a)骨髄間質細胞(ただし、該骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない細胞である)の培養物に、フォルスコリン、並びに細胞分化生存作用性因子である塩基性線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、及びニューレグリンを添加して培養する工程;及び(b)上記工程(a)で得られた細胞にNotch細胞内ドメインの遺伝子を導入して培養し筋芽細胞培養物を得る工程(ただし、上記培養は、遺伝子導入された細胞と未導入細胞との共培養を含まない培養である)を含む方法。