タイトル: | 特許公報(B2)_N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶 |
出願番号: | 2004366309 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 233/47,C07C 231/00,C07C 231/24,C07C 233/49,C11D 1/10,C11D 17/06,A61K 8/42 |
飛田 和彦 服部 達也 後藤 友美 JP 4600030 特許公報(B2) 20101008 2004366309 20041217 N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶 味の素株式会社 000000066 高島 一 100080791 飛田 和彦 服部 達也 後藤 友美 JP 2003423839 20031219 20101215 C07C 233/47 20060101AFI20101125BHJP C07C 231/00 20060101ALI20101125BHJP C07C 231/24 20060101ALI20101125BHJP C07C 233/49 20060101ALI20101125BHJP C11D 1/10 20060101ALN20101125BHJP C11D 17/06 20060101ALN20101125BHJP A61K 8/42 20060101ALN20101125BHJP JPC07C233/47C07C231/00C07C231/24C07C233/49C11D1/10C11D17/06A61K8/42 C07C 231/00−237/52 CA/REGISTRY(STN) 特開平10−279546(JP,A) 特開平03−285995(JP,A) 特開平11−228527(JP,A) 特許第3472314(JP,B2) 特開平11−012241(JP,A) 8 2005200413 20050728 15 20070726 藤原 浩子 本発明は、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶及びその製造方法、並びに、該N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶、又はその粉砕物を含有する洗浄剤組成物及び化粧料組成物に関する。 界面活性剤は、各種の洗浄料や化粧料等の原料成分として用いられるものであるが、その性質や用途に応じ、液体状または固体状のものが使用されている。固体状のもので粉末状の界面活性剤は、主に洗顔パウダー、粉石鹸などの粉末洗浄料(パウダー製品)として、また、それを液体に溶解してボディシャンプーのような液状洗浄料として用いられる。 N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩は、アミノ酸系アニオン界面活性剤として「アミソフト」(登録商標)の商品名で市販されているものもあるが、これらの化合物におけるN−長鎖アシル基には、ヤシ油脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、硬化牛脂とヤシ油との混合脂肪酸、パーム脂肪酸等に由来するアシル基が含まれ、アミノ酸には、L−グルタミン酸等が含まれ、そして、塩には、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、及びトリエタノールアミン塩などの有機アミン塩が含まれることはすでに知られている。また、アミノ酸が酸性アミノ酸である「アミソフト」は、皮膚と同じ弱酸性で、極めて刺激性が少ないなど皮膚に対する安全性が高く、石鹸、シャンプーなどの洗浄料のほか、絹、毛織物等の工業用洗剤に使用されていることも既に知られている。 通常、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩、特にN−長鎖アシルグルタミン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の粉末状のものは、その溶液の噴霧乾燥(スプレードライ)によって製造され、洗顔パウダー、入浴剤等の粉末状洗浄料等の原材料としてよく使用されていた。しかし、粉末状洗浄料を実際に使用する際に、スプレードライ品は非晶質であるため、水に溶解しようとするときダマを形成し易くて溶解がスムーズにいかず、そのために容易に泡立てることができないという問題があった。また、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の粉末は、長期保存時に固結してしまうため、粉末としての機能を失うという問題があった。 下記の特許文献1では、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の飛散性や溶解性の悪さを、噴霧乾燥によって得られた従来品における「過度の乾燥に起因する」とした上、通常1重量%強程度の水分量である市販品を調湿により水分含量3.5〜10重量%に調整した粉末が記載されている。しかし、該技術によって飛散性及び溶解性はある程度改善されたが、依然として長期保存時の固結性の課題は解決されず残されていた。 また、下記の特許文献2では、水分率を10〜16重量%にすることで、N−長鎖アシルグルタミン酸及びその塩の調製時の飛散性、水に対する分散性と溶解性、及び溶解時の発泡性が改善されたことが開示されている。しかし、その固結性については室温における30日程度でのデータのみであり、水分量が多いほど固結性の可能性を示唆していることからも、長期保存安定性については十分に改善されたものではなかった。 したがって、容易に製造することができ、洗顔パウダー使用時などに溶解性に優れていること、製造時のホッパーから包装容器への投入の際に閉塞がなく、扱いが容易であること、また長期保存時の耐固結性に優れるような粉末状の界面活性剤の開発が切に望まれていた。特許第3472314号公報特開平11−12241号公報 本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その解決しようとする課題は、水への溶解性が極めて良好で、更には長期保存時の耐固結性に優れたN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶及びその製造方法、並びに、そのようなN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶、又はその粉砕物を含有する洗浄剤組成物及び化粧料組成物を提供することにある。 本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の粉末は、結晶化によって水への溶解性が顕著に改善されること、また、結晶中の水分含量が少ないものほどより優れた溶解性を示すとともに、保存時の耐固結性が改善されることを見出し、さらには、該結晶を極めて安定的かつ効率的に製造する方法を見出して本発明を完成した。 すなわち、本発明は以下のとおりである。(1)CuKα線による粉末X線回折において、20.0〜23.0°の回折角度(2θ±0.3°)に主ピークを有し、水分含量が0.01〜3.4重量%であるN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶。(2)N−長鎖アシルグルタミン酸のアシル基が、カプリル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上を由来とするアシル基である、(1)に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶。(3)塩がナトリウム塩、カリウム塩、アルギニン塩又はリジン塩である、(1)又は(2)に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶。(4)水分含量が3.5〜20重量%のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩を、結晶質から非晶質への相転移温度以下の温度で乾燥することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。(5)N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩を含有する溶液を可及的に乾燥した後、該乾燥品を水分含量が3.5〜20重量%まで吸水させ、ついで、結晶質から非晶質への相転移温度以下の温度で乾燥することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。(6)(1)〜(3)のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶、又はその粉砕物を含有する洗浄料組成物。(7)粉末状の洗浄料組成物である、(6)に記載の洗浄料組成物。(8)(1)〜(3)のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶、又はその粉砕物を含有する皮膚及び/又は毛髪用の化粧料組成物。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶は、従来公知のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の粉末に比べて水への溶解性及び耐固結性に優れた粉末を与える。従って、当該粉末を原材料にして各種の洗浄料組成物を調製すると、得られた各種洗浄料は溶解性(分散性)に優れ、特に、粉末洗浄料である場合には、保存によって固結することがなく、また、泡立ち性が良い等の優れた効果を奏する。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法によれば、含水量が少なく、溶解性、泡立ち性、さらには耐固結性にも優れる結晶を、簡便に、極めて効率的に製造することができる。 以下、本発明を詳しく説明する。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩は、単一種類のアシル基を有する化合物及び/又はその塩の結晶であっても、複数の異種アシル基を有する化合物の混合物及び/又はその塩の結晶であってもよい。すなわち、アシル基としては、例えば、カプリル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上を由来とするアシル基が挙げられるが、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、パーム脂肪酸、及びヤシ油脂肪酸に由来するアシル基が好ましい。 また、本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶に使用されるグルタミン酸は、L体、D体又はDL体のいずれでもよく、また、これらから選ばれる2種以上の混合物であってもよい。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶における塩は特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛などの無機塩、あるいはアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンやアルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等の有機塩が挙げられるが、乾燥のしやすさ、入手の容易性、取り扱い性等の点から、アルカリ金属塩又は塩基性アミノ酸塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、アルギニン塩、リジン塩が特に好ましい。 本発明におけるN−長鎖アシルグルタミン酸は、自体公知の方法により、例えば、脂肪酸ハライドとグルタミン酸をアルカリの存在下に縮合させ、得られた反応液に有機酸または無機酸を加えてN−長鎖アシルグルタミン酸を沈殿させることによって製造することができる。得られたN−長鎖アシルグルタミン酸は、所望によりアルカリ性下に塩基性物質と反応させて所望の塩とすることができる。得られたN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩は、製造時の反応溶液のまま、又は一旦分離乾燥させた後に再溶解した溶液又は調湿物として、本発明の結晶化方法に使用することができる。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶は、例えば、以下の製法(A)又は(B)の方法によって製造される。 製法(A):常法に従って、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の水溶液を調製し、該水溶液をスプレードライヤー、或いはドラムドライヤー等を用いて可及的に乾燥してN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の粉末を得た後、該粉末に水を噴霧する等の加水処理を施して水分含量を3.5〜20重量%とし、その後、例えば流動乾燥機等の通気式乾燥機、或いは、コニカルドライヤー等の真空間接加熱式乾燥機によって、該粉末を当該N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の相転移温度以下の温度で乾燥する。 該製法(A)において、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の水溶液をスプレードライヤー、ドラムドライヤー等で、乾燥して粉末を得るまでの工程は従来のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩(粉末)の製法と同じであり、乾燥時の乾燥温度は乾燥効率、高含水品の装置への付着又は閉塞を回避する等の点から従来と同様に100〜250℃程度の高温域で行われる。こうして得られるN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩(粉末)は非晶質であるが、次工程の粉末への加湿処理によってN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩は結晶化(転移晶析)する。加湿処理は、例えば、粉末に水を噴霧する、加湿エアの吹き込み、高湿度下における保存等の操作によって行い、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩(粉末)の水分含量が通常は3.5〜20重量%が使用される。再乾燥工程の製造上の負荷を軽減できるという観点からは、好ましくは3.5〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%となるように行うのがよい。水分含量が3.5重量%未満では、転移晶析に必要な水分量が得られず、結晶への転移が十分に起らないおそれがあり、20重量%を超えると粉体の付着や固結、最終乾燥工程の負担が大きくなり、好ましくない。 加湿処理後に行うN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶(粉末)の相転移温度以下の温度での乾燥は、水分含量が最終的に0.01〜3.4重量%にしなくてはならない。上限値は、水分含量が少なければ少ないほどより長期保存に耐えうるという観点から、好ましくは3.0重量%、より好ましくは2.5重量%、更に好ましくは2.0重量%となるように行う。また、下限値は、製造上の負荷を軽減できるという観点から、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.1重量%、更に好ましくは0.2重量%、特に好ましくは0.5重量%である。これにより、水への溶解性がより一層向上し、かつ、耐固結性に優れるN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶(粉末)が得られる。当該N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶(粉末)の相転移温度以下の温度での乾燥は、コニカルドライヤー等の真空間接加熱式乾燥機を用いて真空状態で乾燥するのが好ましい。真空状態で乾燥することで、転移点温度以下を確保しながら、水分含量を速やかに減じることができ、効率的である。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶を製造するための相転移温度測定方法について説明する。予め結晶を上記A法により実験室レベルで調製し、温度をかけないような真空乾燥機等の効率的な乾燥装置を用いて、水分量の殆ど無い結晶を得る。こうして得られた結晶を、示差走査熱量計(DSC)により予め測定する。この相転移点温度はアシル基鎖長や塩の種類により異なるので、異なる組合せのものについては、データを新たに採取する必要がある。 製法(B):常法に従って、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の水溶液を調製し、該水溶液を流動造粒乾燥機等を用いて乾燥するに際し、完全には乾燥させずに、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の含水状態の粉末を得、該粉末を流動乾燥機等の通気式乾燥機、或いは、コニカルドライヤー等の真空間接加熱式乾燥機によって、当該N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の相転移温度以下の温度で乾燥する。こうして得られるN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の含水状態の粉末は結晶化しており、水への優れた溶解性を示す。 該製法(B)は、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の水溶液を調製し、流動造粒乾燥機等で造粒、乾燥して粉末を得る方法であり、従来のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩(粉末)の製法と基本的に同じであるが、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又は塩を完全に乾燥させずに、含水状態の粉末にして得る点で従来法と相違する。すなわち、従来法では、流動造粒乾燥機等で造粒、乾燥してN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の粉末を得る際に、100℃以上の温度下で乾燥して、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩(粉末)の水分含量が概ね2.0重量%以下になるまで十分に乾燥していたが、本発明の方法においては、一定の水分含量が残存する段階で一旦乾燥を停止し、ついで、結晶質から非晶質への相転移温度以下の温度で所望の水分含量となるまで乾燥する。 相転移温度以下の温度による乾燥に移行する目安としての水分含量は、3.5〜20重量%程度が通常選ばれ、乾燥効率の向上と発泡性を低減できる等の観点から3.5〜15重量%とするのが好ましく、3.5〜10重量%がより好ましい。該製法においては、造粒、乾燥も50〜100℃程度の温度下で行うのが好ましい。温度が100℃を超えると、非晶質への転移を生じやすくなり、温度が50℃未満では、乾燥効率が低く、付着等を生じるため好ましくない。 含水状態のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶(粉末)の、当該N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の相転移温度以下の温度での乾燥は、水分含量を最終的に0.01〜3.4重量%にしなければならない。上限値は、水分含量が少なければ少ないほどより長期保存に耐えうるという観点から、好ましくは3.0重量%、より好ましくは2.5重量%、更に好ましくは2.0重量%となるよう行う。また、下限値は、製造上の負荷を軽減できるという観点から、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.1重量%、更に好ましくは0.2重量%、特に好ましくは0.5重量%である。これにより、水への溶解性がより一層向上し、かつ、耐固結性に優れるN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶(粉末)が得られる。 上記(A)または(B)の製法で水分含量0.01〜3.4重量%にした本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶は平均粒径が通常10〜2000μmの粉末として取得される。製造装置は通常の温度管理をできる乾燥・造粒設備を使用できるが、特にスプレードライヤー流動乾燥機等を用いた場合は、粒子の形状、粒径のバラツキが少ない粉末が得られるという利点を有する。 用途に応じた所望の粒径とするために、必要に応じて粉砕して用いることができる。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶は、CuKα線による粉末X線回折法において、20.0〜23.0°の回折角度(2θ±0.3°)に強い特有のX線回折ピーク(主ピーク)を持つ。それは、アシル基の種類や塩の種類により異なるが、本発明の結晶特有の主ピークとして2θ±0.3°の再現性を示す。汎用的に用いられる化合物群を包括しているという観点で、好ましくは21.2〜22.1°の回折角度に主ピークを持つ結晶であり、更に好ましくは21.5〜21.8°の回折角度に主ピークを持つ結晶である。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の水分含量は、上記(A),(B)の製法により相転移温度以下で、0.01〜3.4重量%に管理することにより長期保存時の固結性が大幅に改善される。上限値は、水分含量が少なければ少ないほどより長期保存に耐えうるという観点から、好ましくは水分含量が3.0重量%、より好ましくは水分含量が2.5重量%、更に好ましくは2.0重量%の結晶である。また、下限値は、製造上の負荷を軽減できるという観点から、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.1重量%、更に好ましくは0.2重量%、特に好ましくは0.5重量%の結晶である。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶は、各種洗浄料組成物の洗浄成分として使用することができる。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶を洗浄成分として構成される洗浄料組成物の形態は特に限定されず、液状、固形状等の各種形態の組成物にして使用できる。具体的には、例えば、洗顔パウダー、粉石鹸、ボディシャンプー、ヘアシャンプー(粉シャンプー、液体シャンプー)、固形石鹸、歯磨き等の口腔内洗浄料、シェービングホーム、メイク落とし、クレンジング料、洗顔フォーム等が挙げられる。 本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶は、粉末状で、優れた水への溶解性を示し、泡立ちが良く、しかも耐固結性に優れることから、溶解性(分散性)、泡立ち性及び耐固結性に優れた洗顔パウダー、粉石鹸等の粉末状の洗浄料組成物を与える。 また、本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶は、リンス、トリートメント等の毛髪化粧料、マッサージクリーム等の皮膚及び/又は毛髪用の化粧料にも配合することができる。 本発明における洗浄料組成物及び化粧料組成物には、その効果を阻害しない程度に通常洗浄料や化粧料に用いられる成分等を配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、生理活性成分、酸化防止剤、抗炎症剤、抗菌剤、制汗剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤等の成分であり、洗浄料や化粧料の具体的用途や剤形態に応じ配合することができる。 本明細書中の特性(物性)は以下の方法で測定した。[CuKα線による粉末X線回折分析] 粉末X線回折装置(フィリップス社製、PW3050)により、対陰極CuKα(1.5405Å)、40KV、55mA(電圧、電流)、サンプリング幅0.020°、走査速度3.0°/min、測定回折角範囲(2θ):5〜50°の条件で測定した。ピークサーチは、回折装置付属のソフトウエアのピークサーチ機能を利用し、「最小有意度=1.00、最小ピークチップ=0.01°、最大ピークチップ=1.00°、ピークベース幅=2.00°、方法=2次微分の最小値」の条件で行った。[結晶質から非晶質への相転移温度] 示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツルメンツ社製、DSC6200)により、25℃〜140℃まで2℃/分で昇温したときの吸熱ピーク温度(相転移温度)を測定した。セルは銀製の完全密閉セルを使用した。[N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の水分含量] N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の粉末の水分含量を、カール・フィッシャー法(三菱化学(株)製、水分気化装置VA−06型)により測定して求めた。 以下、実施例と比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下の記載中、特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。実施例1(カプロイルグルタミン酸ナトリウム) 水170gにL-グルタミン酸ナトリウム1水和物175g(0.94mol)を加え、27%NaOH水溶液でpH11に調整し、そこにアセトン150gを加え、さらに、この溶液にカプロイルクロライド171.0g(0.90mol)をゆっくり添加した。この時、反応液のpHは11を維持するように27%NaOH水溶液を同時に添加し、反応温度は10℃を保つようにした。酸クロライド添加後、温度、pHを更に維持しながら30分攪拌した。その後、反応液に75%硫酸を加え、カプロイルグルタミン酸を析出させ、減圧濾過して取り上げた。得られた結晶は、595g(約55%含水)であった。次に、この結晶をNaOH、水で溶解し(酸価120に調整)、濃度30%の水溶液とした。この液をスプレードライヤーで乾燥し(液入口温度:140℃、粉出口温度:90℃)、次いで温度40℃、湿度60%下で粉末の水分含量が7%程度になるまで吸湿させた。その後、吸湿粉体を50℃以下で真空乾燥し、水分含量1.1%の白色固体粉末約290gを得た。 この白色固体粉末につき、CuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ回折角度21.8°において特徴的な回折ピークを示した。また、示差走査熱量計(DSC)による相転移温度(吸熱ピーク温度)は89.9℃であった。実施例2〜5 実施例1と同様の操作でヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム(実施例2)、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム(実施例3)、ミリストイルグルタミン酸カリウム(実施例4)、パルミトイル/ステアロイル(3/7)グルタミン酸ナトリウム(実施例5)を得た。得られた白色固体粉末につき、水分含量の測定、CuKα線による粉末X線回折分析、平均粒径の測定及び示差走査熱量計(DSC)による相転移温度(吸熱ピーク温度)の測定を行った。実施例6(パーム脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム) 実施例1と同様の操作でパーム脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム液を調製(但し、アシル化反応は15℃で行った)した後、流動造粒乾燥機で水分含量が7%程度となるまで乾燥した。その後、この粉末を50℃で真空乾燥して目的物を得た。この水分含量の測定とCuKα線による粉末X線回折分析を行った。また、示差走査熱量計(DSC)による相転移温度(吸熱ピーク温度)の測定を行った。比較例1(カプロイルグルタミン酸ナトリウム) 実施例1のスプレードライヤー乾燥品。 水分含量の測定とCuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、回折ピークは認められず、水分含量1.4%の非晶質粉末であった。比較例2(ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム) 実施例2のスプレードライヤー乾燥品。 水分含量の測定とCuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、回折ピークは認められず、水分含量0.9%の非晶質粉末であった。比較例3(ミリストイルグルタミン酸ナトリウム) 市販のN−ミリストイルグルタミン酸ナトリウム(味の素(株)製「アミソフト」MS-11 スプレードライ品)。 水分含量の測定とCuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、回折ピークは認められず、水分含量1.5%の非晶質粉末であった。比較例4(ミリストイルグルタミン酸カリウム) 市販のN−ミリストイルグルタミン酸カリウム(味の素(株)製「アミソフト」MK-11 スプレードライ品)。 水分含量の測定とCuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、回折ピークは認められず、水分含量0.5%の非晶質粉末であった。比較例5(パルミトイル/ステアロイル(3/7)グルタミン酸ナトリウム) 市販のN−パルミトイル/ステアロイル(3/7)グルタミン酸ナトリウム(味の素(株)製「アミソフト」HS-11P スプレードライ品)。 水分含量の測定とCuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、回折ピークは認められず、水分含量1.3%の非晶質粉末であった。比較例6(パーム脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム) 市販のパーム脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム(味の素(株)製「アミソフト」GS-11P スプレードライ品)。 水分含量の測定とCuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、回折ピークは認められず、水分含量2.0%の非晶質粉末であった。比較例7(パーム脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム) 比較例6の「アミソフト」GS-11Pを、シャーレに入れ、温度40℃、湿度60%RHの恒温恒湿下で5時間保存した。 水分含量の測定とCuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、水分含量は6.9%で、回折角度21.6°において特徴的な回折ピークを示した。比較例8(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム) 市販のN―ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(味の素(株)製「アミソフト」LS-11 スプレードライ品)をシャーレに入れ、温度40℃、湿度60%RHの恒温恒湿下で10分間保存した。 水分含量の測定と、CuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、水分含量は3.6%で、回折角度21.8°において特徴的な回折ピークを示した。比較例9(パルミトイル/ステアロイル(3/7)グルタミン酸ナトリウム) 市販のパルミトイル/ステアロイルグルタミン酸ナトリウム(味の素(株)製「アミソフト」HS-11P スプレードライ品)をシャーレに入れ、温度40℃、湿度60%RHの恒温恒湿下で8分間保存した。 水分含量の測定と、CuKα線による粉末X線回折分析を行ったところ、回折ピークは認められず、水分含量は3.3%の非晶質粉末であった。 実施例1〜6及び比較例1〜9で得られた粉体の水への溶解性、泡立ち、固結性及び崩壊圧力を測定し(但し、比較例2、4で得られた粉体については崩壊圧力は測定せず。)、これらを下記の表1にその結晶性(回折ピーク)とともに記載した。また、実施例1と比較例1の粉末X線回折図を図1に、実施例2と比較例2の粉末X線回折図を図2に、実施例3と比較例3の粉末X線回折図を図3に、実施例4と比較例4の粉末X線回折図を図4に、実施例5と比較例5の粉末X線回折図を図5に、実施例6と比較例6の粉末X線回折図を図6に、それぞれ示した。(溶解性の評価) 評価サンプル0.2gを手のひらにとり、水道水2.0gを加え、指で20回混合した後の状態を目視により評価した。専門パネル3名が下記の評価基準で評価し、3名の評価点の平均値を算出し、1点以上2点未満を×、2点以上3点未満を△、3点以上4点未満を○、4点を◎として表1に示した。<評価基準> 1点:大きな凝集物が残る 2点:やや溶け残る 3点:均一に溶解する 4点:素早く溶解する(泡立ちの評価) 評価サンプル0.2gを手のひらにとり、水道水2.0gを加え、指で20回混合した後の状態を目視により評価した。専門パネル3名が下記の評価基準で評価し、3名の評価点の平均値を算出し、1点以上2点未満を×、2点以上3点未満を△、3点を○として表1に示した。<評価基準> 1点:泡立たない 2点:泡立つが量・質ともに十分でない 3点:満足する泡立ちが得られる(固結性の評価) 目視による観察および崩壊圧の測定から行った。 内径40mmの円柱に試料粉末25gを入れ、770gの錘を乗せた後、装置一式をビニールに入れて恒温槽(50℃)で24時間保存した。24時間後の粉の状態を目視により観察し、固結が認められたものを×、固結が認められなかったものを○で評価した。 観察を行った粉体に硬度計((株)藤原製作所社製、FRUIT HARDNESS TESTER)を用いて崩壊時の圧力を測定した(※崩壊圧力が大きいほど固結していることを意味する)。(水分量の測定) 水分量の測定は、カール・フィッシャー法により測定した。装置は、三菱化学(株)製、水分気化装置(VA−06型)を使用した。 表1より、従来市販品のような非晶質のものは悉く溶解性、泡立ち、耐固結性が悪い(比較例1〜6、9)のに対して、本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶は、溶解性、泡立ちに優れ、かつ耐固結性に優れた粉末を与えることが分かる(実施例1〜6)。特に特許文献1を忠実にトレースして調湿を行った場合、目視観察によれば固体の凝集を示すことが分かり、その固結試験では少なくとも崩壊圧0.1kgを示すなど、耐固結性が満足いくものではないことが分かった(比較例7、8)。すなわち耐固結性に関しては、特に結晶質でかつ水分含量が3.4重量%以下である本発明のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩が優れていることが示された。 以下の処方例による洗顔パウダー、粉シャンプーを調製した。下記の数値の単位は重量部である。処方例1(洗顔パウダー)N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 18.0N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム 12.0タルク 10.0マンニトール 20.0でんぷん 40.0 合計 100.0処方例2(洗顔パウダー)N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 6.0N−パーム脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム 4.0ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム 20.0タルク 10.0マンニトール 20.0でんぷん 40.0 合計 100.0処方例3(洗顔パウダー)N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 12.0N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム 8.0ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム 10.0タルク 10.0マンニトール 20.0でんぷん 39.8メチルパラベン 0.2 合計 100.0処方例4(粉シャンプー)N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム 23.0N−ラウロイル−L−グルタミン酸カリウム 4.0塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.2タルク 10.0ソルビトール 20.0でんぷん 39.5アラントイン 0.1メチルパラベン 0.2 合計 100.0 これら何れの製品も、製造時(調製時)の取扱い物性において優れ、また、製品の溶解性、泡立ち等も良好であった。実施例1及び比較例1のカプロイルグルタミン酸ナトリウムの粉末X線回折図である。実施例2及び比較例2のヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウムの粉末X線回折図である。実施例3及び比較例3のミリストイルグルタミン酸ナトリウムの粉末X線回折図である。実施例4及び比較例4のミリストイルグルタミン酸カリウムの粉末X線回折図である。実施例5及び比較例5のパルミトイル/ステアロイル(3/7)グルタミン酸ナトリウムの粉末X線回折図である。実施例6及び比較例6のパーム脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウムの粉末X線回折図である。 N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の非晶質粉末を、水分含量が3.5〜20重量%となるまで加水処理して吸水させ、ついで、結晶質から非晶質への相転移温度以下の温度で、最終的に水分含量が0.01〜3.4重量%となるまで乾燥する、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。 N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の非晶質粉末が、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩を含有する溶液を可及的に乾燥して得られるものである、請求項1に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。 N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の非晶質粉末が、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩を含有する溶液を、スプレードライヤー又はドラムドライヤーを用いて乾燥して得られるものである、請求項1又は2に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。 N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の非晶質粉末が、N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩を含有する溶液を、100〜250℃の高温域で乾燥して得られるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。 加水処理が加湿処理であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。 結晶質から非晶質への相転移温度以下の温度で乾燥する工程を、真空乾燥により行うことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。 N−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶が、CuKα線による粉末X線回折において、20.0〜23.0°の回折角度(2θ±0.3°)に主ピークを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。 N−長鎖アシルグルタミン酸のアシル基が、カプリル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上を由来とするアシル基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のN−長鎖アシルグルタミン酸及び/又はその塩の結晶の製造方法。