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タイトル:特許公報(B2)_染毛剤組成物
出願番号:2004355055
年次:2012
IPC分類:A61K 8/49,A61Q 5/10


特許情報キャッシュ

小池 謙造 斉藤 芳紀 小畑 浩 中村 幸宏 秦 洋二 JP 4955920 特許公報(B2) 20120323 2004355055 20041208 染毛剤組成物 花王株式会社 000000918 月桂冠株式会社 000165251 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 小池 謙造 斉藤 芳紀 小畑 浩 中村 幸宏 秦 洋二 20120620 A61K 8/49 20060101AFI20120531BHJP A61Q 5/10 20060101ALI20120531BHJP JPA61K8/49A61Q5/10 A61K 8/00−8/99 A61Q 1/00−99/00 特開平03−077813(JP,A) 特開2002−191366(JP,A) 特開2004−201545(JP,A) 特開平01−233210(JP,A) 特表平07−506359(JP,A) Fujita, Y., et al.,Biochim. Biophys. Acta,1995年,Vol.1261,p.151-154 新井泰裕,最新ヘアカラー技術−特許にみる開発動向,フレグランスジャーナル社,2004年 8月25日,第1版第1刷,pp.9−17,191−210 8 2006160669 20060622 18 20070313 川合 理恵 本発明は、酵素を用いて効率的に製造されたメラニン前駆体を含有し、染色性、安定性、安全性に優れる染毛剤組成物、特に一剤式空気酸化型染毛剤組成物に関する。 5,6-ジヒドロキシインドリンなどのメラニン前駆体は、空気中の酸素によりメラニン色素に変換することが知られており、これを利用して空気酸化型染毛剤に使用されている。 染毛剤に使用されるメラニン前駆体の入手方法としては、化学合成反応による製造があるが、副反応による収率の低下、目的反応性生物の単離等による時間的負担、コスト高、溶剤の残留による影響の懸念などの問題がある。また、酵素反応によるメラニン前駆体の製造技術として、ラッカーゼを用いたインドール類又はインドリン類の製造方法が知られている(特許文献1)。しかし、使用するラッカーゼは、漆等の植物から精製等することが必要であった。また、製造の効率性、並びに得られるメラニン前駆体の染色性及び安定性を兼ね備えたものでないという点において、十分ではなかった。 一方、特許文献2には、新規な麹菌由来のチロシナーゼ遺伝子としてMelBが開示されている。特開2002-291496号公報特開2002-191366号公報 従って本発明は、チロシン又はその誘導体から、酵素反応により効率良くメラニン前駆体を製造し、これを空気酸化型染毛剤に使用することによって、染色性あるいは製造の簡便性などの性能を向上させることを目的とする。 本発明者らは、特定の方法を用いて酵素あるいは酵素を含有する菌体により製造したメラニン前駆体を含有する空気酸化型染毛剤が優れた性能を示すことを見出した。 すなわち本発明は、チロシン又はその誘導体を出発物質とし、アスペルギルス(Aspergillus)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、トリコデルマ(Trichoderma)属及びペニシリウム(Penicillium)属からなる群より選ばれる糸状菌に由来するカテコールオキシダーゼ活性を示す酵素又細胞を用いて、メラニン前駆体に変換する酸化工程(A)を含む方法により製造されたメラニン前駆体を含有する空気酸化型染毛剤組成物を提供するものである。 本発明の空気酸化型染毛剤は、効率良く簡便に製造でき、染色性等に優れるものである。 本発明で使用するメラニン前駆体とは、チロシン又はその誘導体から製造され、かつ空気酸化型染毛剤に利用できる染料、すなわち空気中の酸素ですみやかに酸化重合しメラニンを形成する物質であり、具体例としては、5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸等のインドリン誘導体、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸等のインドール誘導体などを示す。DOPAはその酸化重合速度が遅いため、本発明にいうメラニン前駆体に含まない。また、チロシンからの酸化反応中間体として、ドーパクロム、インドールキノン等が存在するが、これらは短期間しか安定でなく長期間(例えば1ヶ月)の安定性を有しないため、染毛剤用染料としては利用できない。従って、これらも本発明にいうメラニン前駆体には含まない。ただし、それらの中間体から一般的な化学処理等により上記の空気酸化型染毛剤としての要件を持つ安定な化合物が製造できたときは、そのような安定な化合物は本発明にいうメラニン前駆体に含まれる。更に、本発明におけるメラニン前駆体は、必ずしもモノマーに限られるものではなく、上記の空気酸化型の染料の要件を満たす二量体以上のオリゴマーをも含むものとする。本発明で使用するメラニン前駆体は、以下の方法により製造される。−酸化工程(A)−<出発物質> 出発物質(基質化合物)としては、チロシン又はその誘導体が使用される。具体例としては、(1)D体又はL体のチロシン、(2)D体又はL体のドーパ〔DOPA;3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アラニン〕、(3)ドーパミン(Dopamine;3,4-ジヒドロキシフェネチルアミン)、(4)チロシンの低級(C1-4)アルキルエステル、(5)DOPAの低級(C1-4)アルキルエステル、(6)N-アルコキシ(例;アセトキシ)化又はN-アルキル(例;エチル)化されたDOPA又はチロシン等が挙げられ、これらの異性体であってもよい。中でも、天然型メラニン前駆体が得られる点で、L-チロシン及びL-DOPAが好ましく、酵素に対する親和性の点で、L-DOPAがより好ましい。これらチロシン又はその誘導体は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。<カテコールオキシダーゼ活性を示す酵素> カテコールオキシダーゼ活性とは、カテコールの酸化によるo-キノンの生成を触媒する活性をいう。カテコールオキシダーゼ活性を有する酵素(以下、「カテコールオキシダーゼ」と略称する)には、カテコールオキシダーゼ、モノフェノールオキシダーゼ、ジフェノールオキシダーゼ、o-ジフェノラーゼ、チロシナーゼ等と称されている酵素が含まれる。これらは、通常、モノフェノールオキシダーゼ活性を有する。このほかモノフェノールオキシダーゼは有していないが、ポリフェノールオキシダーゼ活性を有しているラッカーゼ、ペルオキシダーゼもカテコールオキシダーゼ活性を有する酵素に含まれる。これらのうち、L-DOPAに対して親和性が高いために天然型メラニン前駆体を効率よく製造できる点で、チロシナーゼを使用することが好ましい。なお、基質化合物としてチロシンを用いる場合は、チロシナーゼを用いることが好ましい。 カテコールオキシダーゼは、どのような生物に由来する酵素であってもよいが、特に、発現効率が良く、かつ宿主細胞内で安定であることから、糸状菌由来のチロシナーゼが好ましい。また、チロシン誘導体からメラニン前躯体に酸化反応を行う工程において、出発物質を残存させないために、反応収率(基質に対する酸化生成物の比率)が高い酵素が好ましい。このような糸状菌としては、アスペルギルス(Aspergillus)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、トリコデルマ(Trichoderma)属及びペニシリウム(Penicillium)属等が挙げられる。中でも、熱に対して比較的安定であり、かつ安全性が確かめられている点で、アスペルギルス属糸状菌のチロシナーゼが好ましく、具体的には、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のmelB遺伝子(特開2002-191366号公報)、melD遺伝子(特開2004-201545号公報)又はmelO遺伝子(Molecular cloning and nucleotide sequence of the protyrosinase gene, melO, from Aspergillus oryzae and expression of the gene in yeast cells.Biochim Biophys Acta. 1995 Mar 14;1261(1):151-154)にコードされるチロシナーゼと実質的に同一である酵素を挙げることができる。 本発明において、上記遺伝子(melB遺伝子、melD遺伝子又はmelO遺伝子)と「実質的に同一」とは、これらのうちいずれか1以上の遺伝子と、アミノ酸配列として70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上の相同性を有し、かつチロシナーゼ活性又はモノフェノールオキシダーゼ活性を有していることをいう。このような酵素は、ドーパからドーパクロムへの反応収率が高く、効率的に酸化反応を行うことができ酸化工程での最終ドーパ濃度を低くすることができる。 上記酵素は、そのまま反応液に添加して使用することができる。また、酵素の安定性向上、使用後の分離の容易さ、反応系へのタンパク質混入の回避の点から、固定化酵素とすることも好ましい。酵素の固定化方法は特に限定されず、例えば、固定化担体により酵素分子間を架橋する方法、アルギン酸ゲルのようなゲルに内包させる方法等の公知の固定化方法が挙げられる。酵素は、生物由来の夾雑物を含む粗標品でもよく、精製酵素でもよいが、固定化する場合は精製されたものであることが望ましい。<カテコールオキシダーゼ活性を示す細胞> カテコールオキシダーゼ活性を示す細胞としては、以下の(a)〜(d)の1以上に該当する細胞を用いる。 (a) カテコールオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を本来発現させているプロモーターより高活性のプロモーターの下でこの遺伝子を発現させている細胞。 (b) カテコールオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を複数コピー有する細胞。 (c) カテコールオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする変異した遺伝子を有することにより高いカテコールオキシダーゼ活性を示す細胞。 (d) チロシナーゼ活性化処理されることにより高いカテコールオキシダーゼ活性を示す細胞。 (a)については、例えば、タンパク質の大量発現用に通常用いられているベクターにカテコールオキシダーゼ遺伝子をクローニングしたものを宿主細胞に導入し、宿主染色体に組み込むか又はこれをプラスミド状態で有する宿主細胞を培養することにより、カテコールオキシダーゼを大量に産生させることができる。これにより、その遺伝子を本来発現させているプロモーターより高活性のプロモーターの下でこの遺伝子を発現させればよい。 (b)については、例えば、カテコールオキシダーゼ遺伝子を複数コピー保持する可能性のある2倍体以上の細胞にカテコールオキシダーゼ遺伝子を導入したものを用いればよい。また、例えば実用酵母の中には、3倍体や4倍体の細胞も存在するため、これらも好適に使用できる。このようにして、その遺伝子本来よりコピー数を多くすることにより、高いカテコールオキシダーゼ活性を示す細胞とすることができる。 (c)については、カテコールオキシダーゼ遺伝子の変異により、カテコールオキシダーゼ活性が高くなった細胞又はこのような変異カテコールオキシダーゼ遺伝子を導入した細胞も使用できる。このようにして、天然型酵素より高い活性を示す変異型酵素とすることにより、高いカテコールオキシダーゼ活性を示す細胞とすることができる。 (d)については、2価銅イオンを配位させる処理や、pH2.8〜3.2程度の酸性溶液での処理などを施すことにより、そのカテコールオキシダーゼ活性を高めた細胞を用いることもできる。 中でも、(a)のカテコールオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を本来発現させているプロモーターより高活性のプロモーターの下でこの遺伝子を発現させている細胞が好ましい。 カテコールオキシダーゼを産生させる細胞の種類は、特に限定されないが、大量培養が容易である点で微生物であることが好ましい。使用し易い微生物としては、大腸菌、酵母及び糸状菌を挙げることができる。中でも、安全で、カテコールオキシダーゼの産生効率が良く、更に単細胞であり、かつ細胞の沈降速度が速いため、反応後に比較的低速回転の遠心分離で分離できる点で、酵母を用いることが好ましい。中でも、菌体が堅牢であるために菌体由来のタンパク質の反応液中への流出が抑えられ、かつ遺伝子操作が容易である点で、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が好ましい。 なお、細胞は、効率的な利用、使用後の分離の容易さの点から、担体結合法、包括法、架橋法、光架橋法等の公知の方法で固定化したものを用いることもできる。<活性化処理> カテコールオキシダーゼ、特にチロシナーゼが活性を示すためには、触媒活性中心に2価銅イオンが配位することが必要である。野生型細胞ではカテコールオキシダーゼの発現量が少ないため、その細胞内に存在する2価銅イオンの配位により十分な活性を示すが、形質転換等によりカテコールオキシダーゼの発現量が向上している細胞では十分なカテコールオキシダーゼ活性が得られない場合がある。従って、カテコールオキシダーゼ活性を示す酵素、細胞のいずれを用いる場合も、酵素又は細胞を、予め2価銅イオンで処理することにより、カテコールオキシダーゼの触媒活性中心に2価銅イオンを配位させることが好ましい。具体的には、酵素又は形質転換体を0.1〜2mM程度の硫酸銅溶液等に懸濁し、30〜40℃程度で0.5〜2時間程度静置することにより、細胞内のカテコールオキシダーゼに十分に2価銅イオンを配位させることが好ましい。 また、カテコールオキシダーゼの中でもチロシナーゼ、特にアスペルギルス・オリゼ由来のチロシナーゼは、pH2.8〜3.2程度の酸性溶液で処理することにより、成熟化し、活性化する。従って、カテコールオキシダーゼ活性を示す酵素、細胞のいずれを用いる場合も、例えば、20〜200mM程度の酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH=3)に懸濁し、0〜40℃程度で0.5〜1時間程度静置することにより、カテコールオキシダーゼ活性を一層向上させることが好ましい。 また、カテコールオキシダーゼは、トリプシン等の特定のペプチド結合を選択的に切断するエンドペプチダーゼのようなプロテアーゼで処理することによっても活性化することができる。プロテアーゼ処理することにより、酵素のN末端及び/又はC末端側の配列が取り除かれ、酵素活性が向上する。 細胞が酵母である場合において、L-DOPAを基質として用いたときは、0.1 U/OD600以上、更には0.5 U/OD600以上、特に1U/OD600以上のカテコールオキシダーゼ活性を有する細胞を用いることが好ましい。酵母以外の細胞の場合も、同様のカテコールオキシダーゼ活性を有する細胞を用いればよい。細胞のカテコールオキシダーゼ活性の上限は特に限定されないが、通常5U/OD600程度である。 更に、カテコールオキシダーゼ活性を示す酵素、細胞のいずれを用いる場合も、1molのL-DOPAを基質として用いた場合に、通常5×105 U/mol以上、好ましくは5×106 U/mol以上となるようにすることが好ましい。L-DOPA 1mol当たりのカテコールオキシダーゼ活性の上限は特に限定されないが、通常5×107 U/mol程度もあれば十分であり、それ以上はコスト高となる。 なお、本発明において、酵素又は細胞のカテコールオキシダーゼ活性は、酵素又は細胞と0.8μmolのDOPAを含む溶液1mLを30℃で5分間反応させた場合の475nmにおける吸光度を1増加させる活性を1Uとし、細胞のカテコールオキシダーゼ活性は、これを反応に用いた菌体の密度(600nmにおける吸光度;OD600)で除したもの(U/OD600)とする。 本発明方法においては、基質に対してカテコールオキシダーゼが過剰に存在する状態とすることにより、基質化合物から生成したメラニン前駆体が更に重合してメラニンが生成する速度より速く基質化合物からメラニン前駆体が生成し、反応系にメラニン前駆体が効率良く蓄積する。<反応> 反応開始時の出発物質(基質化合物)の濃度は、通常10〜60mM程度、特に15〜25mM程度とすることが好ましい。上記範囲であれば、十分量のメラニン前駆体を得ることができるとともに、メラニン生成量が増加し過ぎることによるメラニン前駆体の収率低下や未反応基質の残存が生じない。特に、出発物質としてDOPA、Dopamine等を用いた場合は、染毛剤の原料としては安全性上好ましくない。そのため、出発物質又は中間体であるDOPA又はDopamineを実質的に染毛剤中に含まれないように、本酸化工程で消費するのが好ましい。より好ましい態様としては、L-DOPAを出発物質とし、その濃度が反応開始時に15mM以上、反応終了時に0.1mM以下となるような酸化工程が挙げられる。また、酵素によるDOPAからの反応工程におけるドーパクロム等の酸化生成物の収率は、おおよそ30〜70%の範囲とするのが経済的であり好ましい。 また反応液のpHは、酵素が基質の酸化反応を触媒できる範囲であればよいが、メラニンの生成を抑えて反応液中に効率良くメラニン前駆体を蓄積させる点から、通常4〜9程度、特に5〜7程度に維持することが好ましい。反応液のpHは、反応液として緩衝液を用いることにより上記範囲に維持することもできるが、塩濃度が高いとメラニン前駆体の重合によるメラニンの生成が促進される場合があるため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の強アルカリ又は硫酸、塩酸等の強酸を少量添加することにより調整することが好ましい。 反応液中の細胞量は、反応後の菌体分離を容易とし、メラニン前駆体の収率を向上する点から、前述のカテコールオキシダーゼ活性となる範囲内で、少なければ少ないほど良く、細胞投入量は、反応液に対して20容量%以下、特に10容量%以下が好ましい。 反応温度は、酵素が基質の酸化反応を触媒できる範囲であればよいが、十分な酸化反応の進行、酵素の失活防止、メラニン化の抑制の点から、5〜40℃、更には15〜35℃、特に20〜30℃に維持することがより好ましい。 反応開始直後は、酸化反応に大量の酸素が必要であるため、反応液を攪拌することにより大量に通気することが好ましい。ただし、攪拌速度が速すぎると細胞の損傷等を引き起こすため、反応液中の酸素濃度を監視し、酸素濃度が低下しなくなれば通気量及び攪拌速度を減少することが好ましい。反応液中の酸素濃度は0.1〜8ppm程度、特に1〜2ppm程度に維持することが好ましい。通気や撹拌により反応液中に大量の泡が生じる場合は、シリコーン樹脂のような消泡剤を添加してもよい。 反応は、バッチ式及び連続式の何れでもよいが、未反応の基質と生成物を分離できる点でバッチ式が好ましい。バッチ式の場合の反応時間は、メラニン前駆体の重合反応を最小限に抑えつつ基質化合物を十分メラニン前駆体に変換する点から、通常10分〜2時間程度、特に30分〜1時間程度とするのが好ましい。 連続式の場合は、基質濃度が10〜60mM程度、特に15〜25mM程度になるように細胞を含む反応容器に基質を供給しつつ反応液を連続的に回収すればよい。あるいは酵素又は細胞を固定化した担体を充填したカラムに1〜10mM程度、特に3〜6mM程度になるような基質と、電子供与体として基質の2倍濃度の過酸化水素とを添加すればよい。 基質化合物としてチロシン又はDOPAを用いる場合は、上記酵素反応により基質化合物が酸化されてドーパクロム(Dopachrome)が生成する。ここで、アスコルビン酸、亜二チオン酸等の還元剤を用いて反応を停止及び還元させれば、メラニン前駆体として、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸が得られる。また、この反応液を更に保持すれば、ドーパクロムの自発的な脱炭酸により5,6-ジヒドロキシインドールが生成し、あるいは、細胞中に含まれるドーパクロムトートメラーゼにより、あるいは非酵素的な異性化により、ドーパクロムから5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸が生成する。これにより、ドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を含むメラニン前駆体が得られる。これらのメラニン前躯体の反応収率は、好ましくは20〜70%、更に好ましくは40〜70%である。 また基質化合物として、例えばドーパミン(Dopamine)を用いる場合は、基質化合物の酸化によりドーパミンのキノン体が生成する。ここで、亜二チオン酸などの還元剤を用いて反応を停止及び還元させれば、5,6-ジヒドロキシインドリンが得られる。また、この反応液を更に保持すればジヒドロキシインドールが生成する。更に、メラニン前駆体には、これらが2〜5分子程度重合した水溶性オリゴマーが含まれる場合もある。 基質化合物として、アルキルエステルを用いると、黒色以外のメラニンを生成するメラニン前駆体を調製することが可能となる。具体的な例としては、チロシンエチルエステル、DOPAエチルエステル等を出発物質として使用すると、生成したメラニン前駆体から重合したメラニンは黄色となり、染毛剤の調色に使用することができる。−後処理工程(B)− 本発明の染毛剤に用いるメラニン前駆体の製造方法としての酸化工程(A)は、上に示した酵素あるいは菌体による反応である。以下に、染毛剤に使用するための後処理工程(B)を記載する。(1) メラニン前駆体の回収 酸化工程(A)により得られたメラニン前駆体を含む反応液には、メラニン前駆体のほかに、使用した酵素又は細胞、更には通気及び撹拌により細胞が破損して生じたタンパク質又は細胞から流出したタンパク質や、メラニン前駆体が重合したメラニンも含まれる。従って、染毛剤用の染料として利用するためには、これらを反応液から除去する必要がある。酵素又は細胞の除去は、限外ろ過、ろ過、遠心分離等の手段により行うことができ、回収された酵素又は細胞は、酸化工程用の容器に戻すことにより、再利用することができる。また、タンパク質やメラニンの除去は、限外ろ過、ゲルろ過クロマトグラフィー等の手段により行うことができる。 酸化工程(A)で得られたメラニン前駆体は、分子量3000以上の高分子体(メラニン)となる以前の状態、すなわちインドールあるいはインドリン骨格を持つ種々のモノマーからオリゴマーの状態(分子量3000未満)であり、主としてドーパクロムあるいは5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸を含んでいる。本発明においては、この粗メラニン前駆体を空気酸化型染毛剤の染料として配合し、組成物を調製してもよい。 また、本発明の酸化工程で得られたメラニン前躯体を酸化重合し、分子量3000以上のみのメラニンとして、毛髪用化粧料(リーブオンタイプ、あるいは洗い流しタイプ)に配合することも可能である。たとえば、シャンプー、リンス、コンディショナー、スタイリング剤、セット剤、パーマ剤、ワックス、艶出し剤、育毛剤等が挙げられる。(2) メラニン前駆体組成の調整 本発明では、目的に応じて、以下に示すメラニン前駆体溶液中の5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸のいずれかの濃度を高める工程(I)を経た上で、染毛剤に配合することが好ましい。本工程は、上記の回収工程(反応液からの酵素、細胞、タンパク質、メラニン等の除去)の前に行っても、後に行ってもよく、更には両者を兼ねて、以下に示す工程(I)の環境下で回収工程を行い、工程(I)の処理時間に回収工程の時間を含めてもよい。5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸の濃度を高める工程を経て、染毛剤に配合することが好ましい。特に、5,6-ジヒドロキシインドールを主成分とし、それに対し少量の5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を含む状態であると、染毛剤にした場合により自然な色合いに染めることができる。 工程(I)における上記いずれかの化合物濃度を高める手段としては、(i)pH調整処理、(ii)水溶性有機溶媒の添加、(iii)無機塩の添加、(iv)緩衝液による処理、(v)酸化防止剤の添加等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いてもよく、特に上記(i)pH調整時に(ii)〜(v)のいずれか1以上を組み合わせると、より効率的に本工程を完了することができる。 (i) pHの調整範囲としては、pH5〜11、更にはpH5〜10、特にpH6〜9が好ましく、この範囲であると効率よくインドール誘導体への変換が進行する。それに対し、強酸性では沈殿がおこり、強アルカリ性では酸化重合が加速されメラニンが生成してしまう。また、処理は嫌気条件下で行うことが好ましいが、工程(I)において十分な収量が得られるのであれば、必ずしも酸素の存在は否定されるものではない。 ここで、pHを中性〜弱酸性側に、又はアルカリ性側に調整することによって、所望の化合物の比率が高まるようにメラニン前駆体の組成を調整することができる。例えば、ドーパクロムあるいは5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸から5,6-ジヒドロキシインドールへの変換はpH5以上8未満で起こりやすく、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸から5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸への変換はpH8以上11以下で起こりやすい。すなわち、中性〜酸性領域では5,6-ジヒドロキシインドールが生成し、アルカリ領域では、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸が効率良く生成する。 pH調整時の温度は、5〜40℃、特に15〜30℃が好ましく、通常室温状態でpH調整を行えばよい。処理時間も5,6-ジヒドロキシインドリン誘導体が変化する時間を指標に保持すればよい。温度にもよるが30分以上であればよく、変換物(5,6-ジヒドロキシインドール誘導体)は比較的安定であるので、工程(I)の後、酸素遮断状態であれば長期間、例えば1週間以上放置しても差し支えない。 (ii) 水溶性有機溶媒としては、水に10重量%以上相溶性を有する(水90gに10g以上溶解する)有機溶媒を用いることができ、例えばメタノール、エタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、乳酸、クエン酸等の有機酸類、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類、アルキルアミン類、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン類などが使用できる。特に、安全性の点で、エタノール、アセトンがより好ましい。 特にアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、有機酸類又は脂肪酸類の添加により、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸から5,6-ジヒドロキシインドールへの変換を促進することができる。例えば、エタノールの50重量%の添加で、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸から5,6-ジヒドロキシインドールへの変換が約2倍に促進される。また、上記アルキルアミン類又はアルカノールアミン類の添加により、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸から5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸への変換を促進することができる。例えば、モノエタノールアミンの5〜50重量%の添加により、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸から5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸へ70%以上の選択性で変換することが可能となる。 水溶液有機溶媒は、反応液に全量中の5〜70重量%程度、特に30〜60重量%程度の濃度となるように添加することが好ましい。溶媒添加量は、多くても特に問題はなく、逆に変換速度が速くなる、生成してしまったメラニンを除去できるという効果があるが、上記範囲であれば、実用上十分に5,6-ジヒドロキシインドール誘導体の比率を向上させることができるとともに安全に後処理を行うことができる。 (iii) 無機塩としては、塩酸、硝酸、硫酸及び炭酸から選ばれる酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は銅(II)塩を使用することができる。これらのうち、銅(II)塩は5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸の5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸への変換を促進することができ、また銅(II)塩以外の無機塩は5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸の5,6-ジヒドロキシインドールへの変換を促進することができる。反応液中の無機塩濃度は、変換の効率性、塩やメラニンの析出防止の点から、40重量%以下、更には0.1〜20重量%、特に1〜5重量%が好ましい。 無機塩の添加として、例えば硫酸銅による処理を挙げると、反応液に0.1〜20mM程度、好ましくは5〜10mM程度となるように硫酸銅を添加し、例えば10〜30分間程度保存することにより、メラニン前駆体中の5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸の5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸への変換が促進される。 (iv) 緩衝液としては、リン酸緩衝液が挙げられる。リン酸緩衝液としては、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、クエン酸−リン酸ナトリウム緩衝液、トリス−リン酸緩衝液が挙げられる。リン酸緩衝液による処理で、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸の5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸への変換を促進することができる。 (v) 酸化防止剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が使用でき、アスコルビン酸ナトリウムを2.5重量%添加すると5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸から5,6-ジヒドロキシインドールへの変換速度が促進される。(3) メラニン前駆体の濃縮・保存 メラニン前駆体を含む液は、逆浸透濃縮、スプレードライ、凍結濃縮等の公知の方法で水分を除去してメラニン前駆体を濃縮することが好ましい。更に、メラニン前駆体の単品又は混合物は、そのまま、濃縮状態、乾燥粉末状態等のいずれの形態でも保存することができる。 更に、特定のメラニン前駆体の保存方法を例示すると、5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸等のインドリン誘導体は、粉末状の塩の状態(好ましくは塩酸塩、臭素酸塩等)で、好ましくは酸素非存在下で保存するのが好ましい。また、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸等のインドール誘導体は、実質的な酸素非存在下で溶液あるいは粉末状態で保存できる。 染毛剤として利用する形態としては、5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸等のインドリン誘導体は、使用時まで非酸素状態かつ水とは遮断された状態(粉末状、油剤への懸濁状態を含む)で保管するのが好ましく、使用直前に、水、アルカリ剤等一般的な染毛剤基剤と混合し、直ちに毛髪に塗布し、染毛剤として使用するのが好ましい。この場合には、空気酸化型染毛剤ではあるが、混合等の操作を伴う二剤式又は三剤式とすることが、メラニン前駆体の安定性から好ましい。 一方、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸等のインドール誘導体は、非酸素状態であれば水溶液中でも安定であるので、一剤式の空気酸化型染毛剤とすることができ、使用が簡単である点で好ましい。製造のしやすさ、安定性及び染毛性能からは、5,6-ジヒドロキシインドールが最も好ましく、メラニン前駆体中の5,6-ジヒドロキシインドールの比率が、280nmにおける吸光度の面積比で60%以上であることが好ましい。一方、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸は、重合して得られるメラニンの水溶性が高いため、一時染め用の染毛剤組成物に利用することができる。−染毛剤組成物− 以上のようにして得られたメラニン前駆体を染毛剤に配合することによって、容器から出して髪に着けてしばらく放置するだけの簡便な一剤式の空気酸化型の染毛剤が可能となり、白髪をメラニンの自然な色合いに染めることができる。一剤式の染毛剤とするためには、5,6-ジヒドロキシインドールがメラニン前駆体の中で最も好ましいが、染毛性能が発揮されれば、他のメラニン前駆体が半分程度まで含まれていてもよい。 本発明の染毛剤組成物におけるメラニン前駆体の含有量は、染毛性能の観点から、0.01〜10重量%、更には0.05〜5重量%、特に0.1〜1重量%が好ましい。この含有量は、染毛剤の使用目的によって適宜変えることができ、一回の染毛で目的のレベルまで濃く(黒く)染毛する場合は、0.5〜1重量%程度が好ましく、徐々に繰り返し染毛して、白髪を目立たせなくするような染毛剤の場合には、0.1〜0.4重量%が好ましい。また、配合量が0.01重量%以上あれば、ごくわずかずつではあるが染毛が可能であるため、手で扱う様な染毛剤あるいはカラーリンス用染料、毛髪用化粧料の場合等に使用できる。 本発明において使用されるメラニン前駆体の製造においては、生体内と同様の酵素反応を用いることによって、触媒による化学反応などで生じる副生成物を除去するための複雑な精製操作を必要としないというメリットがある。メラニン関連物質以外の副生成物がほとんど存在しないことや天然に存在するものと同じメラニン前駆体を用いるため、他の化学合成による製造法あるいは一般的な酸化染毛剤と比べて、安全面でも優れた効果が期待される。 本発明の染毛剤組成物のpHは6〜11、特に7〜10.5に調整することが好ましい。pH調整には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、グアニジン、アルキルアミン、塩基性アミノ酸、炭酸塩等のアルカリ剤が用いられる。アルキルアミンとしてはモノエタノールアミンが挙げられ、塩基性アミノ酸の具体例としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン等が挙げられ、炭酸塩の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸グアニジン、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。また、アルカリ剤と併用して、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、乳酸等の無機あるいは有機酸を適宜用いることができる。pH調整剤は、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、全組成の0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%が好ましい。 染毛剤の補完成分として、水相溶性有機溶剤を含有させることができる。水相溶性有機溶剤としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノエーテル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のカルビトール類;ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコール等が挙げられ、なかでも上記低級アルコール及びグリコール類が好ましい。水相溶性有機溶剤は、2種以上を併用することもでき、特にベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコールを使用する場合は、他の溶剤、特に低級アルコール、グリコール類と併用するのが好ましい。水相溶性有機溶剤の含有量は、染色性の点から、全組成の5〜50重量%、更には10〜40重量%、特に15〜30重量%が好ましい。 本発明の染毛剤には、調色成分として、アミノ酸(特にシステイン)や、既存の酸化染料、直接染料(酸性染料、塩基性染料、解離型染料)を添加することができる。それらの含有量は、目的にもよるが0.001〜5重量%、更には0.01〜2重量%、特に0.05〜1重量%が好ましい。 本発明の染毛剤組成物は、増粘剤の添加による粘度の調整によってクリーム、ゲル、ローション、フォーム等の形態をとることができる。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースとグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドとのエーテル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;キサンタンガム、グアーガム等の天然ガム類;ポリビニルピロリドン、架橋型ポリアクリル酸又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド等の合成高分子が挙げられる。これらの配合する種類や配合量は、目的粘度によって決定することができ、粘度は100〜50000mPa・sが好ましい。本発明の染毛剤組成物は、増粘しない場合には軽い使用感が得られるが、増粘剤を添加して増粘させることにより、染色力を損なうことなく、また液だれの心配なく使用することができる。 また、本発明の染毛剤組成物には、起泡剤及び/又は均一化剤として、非イオン界面活性剤を含有させることができる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリオキシエチレン-sec-テトラデシルエーテル等が挙げられる。非イオン界面活性剤の含有量は、0.01〜30重量%、特に0.1〜10重量%が好ましい。 また、本発明の染毛剤組成物には、安定性確保のためには酸化防止剤の添加が望ましい。酸化防止剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸エステル等のアスコルビン酸類、亜硫酸ナトリウム等の無機塩類、システイン、Nアセチルシステイン等のシステイン誘導体、ローズマリーエキス、茶エキス等の抗酸化作用を示す植物エキス、トコフェロール、酢酸トコフェロール等のビタミン類、BHT等のスカベンジャー類などが挙げられる。特にアスコルビン酸類が好ましく、使用pHを考慮すると、特にアスコルビン酸ナトリウムが好ましい。そのほか安定性を向上させる成分として、EDTA又はその塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸又はその塩等のキレート剤を使用することもできる。 本発明の染毛剤組成物には、上記成分以外に、通常の染毛剤に用いられる成分、例えば上記以外の界面活性剤、安定化剤、緩衝剤、香料、感触向上剤、キレート剤、可溶化剤、防腐剤等を、目的に応じ、適宜配合することができる。 本発明の染毛剤組成物の好ましい形態としては、繰り返し使用する徐染型染毛剤が挙げられる。また、エアゾールの形態が好ましい。 本発明の染毛剤組成物をエアゾール型とするには、耐圧容器(エアゾール缶等)に、染毛剤組成物と共に噴射剤を充填すればよい。噴射剤としては、一般にエアゾール製品に用いられる圧縮ガス、液化ガス等が使用でき、圧縮ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス等が、液化ガスとしては、液化石油ガス、低級飽和炭化水素類、ジメチルエーテル等が挙げられる。これらの噴射剤は、2種以上を併用することもでき、適度な噴射速度を得るために、全組成中に1〜20重量%、特に3〜15重量%含有させるのが好ましい。また充填後のエアゾール缶の内圧が3〜5kg/cm2G(25℃)となるように調整するのが好ましい。 また、本発明の酸化工程で得られたメラニン前躯体を酸化重合し、分子量3000以上のみのメラニンとして、毛髪用化粧料(リーブオンタイプ、あるいは洗い流しタイプ)に配合可能である。このような毛髪化粧料としては、例えばシャンプー、リンス、コンディショナー、スタイリング剤、セット剤、パーマ剤、ワックス、艶出し剤、育毛剤等が挙げられる。剤型としては、エアゾール、フォーム、クリーム、液状、ペースト等が挙げられる。製造例1 メラニン前駆体の製造1.アスペルギルス・オリゼのチロシナーゼ遺伝子のクローニング 麹菌Aspergillus oryzaeのmelBチロシナーゼ遺伝子をクローニングした。 麹菌Aspergillus oryzae OSI-1013株(FERM P-16528)を蒸米に接種し、製麹した麹を1.5g秤量し、液体窒素中で完全に破砕した。日本ジーン社製ISOGENを用いて、240μgの全RNAを抽出した。120μgの全RNAからタカラバイオ株式会社製Oligotex-dT30<Super>を用いて、1μgのmRNAを精製した。このmRNAを、Clontech社製SMART cDNA Library Construction KitによりcDNAライブラリーを作成し、PCRによりmelB cDNAのみを増幅した。 得られたPCR産物はアガロースゲル電気泳動で、目的の約1.8Kbpのバンドのみが増幅されていることを確認した。また、塩基配列解析の結果、正常にイントロン配列が取り除かれていることも確認した。2.酵母への組み込み 上記1により得られたcDNAを、Invitrogen社製大腸菌用発現ベクターpET23b、酵母Saccharomyces cerevisiae用発現ベクター(特開2003-265177号公報)、麹菌Aspergillus oryzae発現ベクター(特開2001-224381号公報)に発現可能な状態で接続することにより、各菌体内でのチロシナーゼの大量発現が可能となる。 特に、酵母における発現例(特開2003-265177号公報に準じる)を示すと、SED1プロモーターとADH1ターミネーターを持つ発現ベクターのプロモーター直下のSmaI部位に、PCRにより増幅したmelB cDNAを挿入した。URA3マーカー内部に存在するStuI部位で切断することにより得られるmelB cDNAを含む断片を導入用カセットとして精製した。このとき、宿主としての酵母は、清酒の醸造に用いられる実用酵母・協会9号由来のウラシル要求性株を用いた。3.組換え酵母のチロシナーゼ活性化と測定(3-1) チロシナーゼ活性測定 菌体のチロシナーゼ活性の測定は次のようにして行った。菌体の一部を水に懸濁し、その0.1mLに30℃の10mM L-DOPA(0.005Nの塩酸に溶解)0.8mL及び1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)0.1mLを添加し、30℃で5分間反応させた後、15,000rpmで30秒間遠心分離を行うことにより菌体を取り除き、DOPAの吸収極大波長である475nmにおける吸光度を測定した。菌体量は、反応後の反応液の475nmにおける吸光度が0.1〜0.3に収まるように調整した。(3-2) チロシナーゼの活性化処理 前記2で得られた組替え酵母を常法により培養し、遠心分離によって菌体を回収し、次いで蒸留水で洗浄した。菌体を、菌体重量の10倍程度の、2mMの硫酸銅を含む50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)に懸濁し、4℃で一晩静置した。菌体を遠心分離により回収し、過剰な銅イオンを除去するため0.1MのEDTA溶液で洗浄した。洗浄した後の菌体を0.2Mの酢酸緩衝液(pH3.0)に懸濁し、室温で1時間静置した。活性化後の菌体は遠心分離で回収し、活性化菌体とした。 活性化菌体のチロシナーゼ活性を上記(3-1)の測定方法により測定したところ、1.9〜4.4 U/OD600であった。このようにして測定した各形質転換株を以下に用いた。4.ドーパクロムの蓄積反応 上記3で得られた酵母の形質転換体を用いて、L-DOPAを基質としてメラニン前駆体であるドーパクロムの蓄積反応を行った。 7.9gのL-DOPAを0.03Nの硫酸500mLに溶解させた後、2Nの水酸化カリウムを用いてpH5.5に調整した。このL-DOPA溶液に、手順3により得られた組換え酵母菌体を2.7×105 U/L(反応液1Lあたり菌体の活性値が1.35×105 U/Lとなる量)を、5L容反応槽に投入し、反応液量を2Lとして反応を開始した。 反応温度は25℃となるように、調節した。反応開始直後は大量の酸素が必要であるため、通気量及び攪拌速度を最大とした。硫酸及び水酸化カリウムの添加によってpHを5.5に調節した。40分間反応を行った。 反応液中の撹拌及び通気量はDO(容存酸素量)を指標に2〜7ppmに調節した。反応中に適宜サンプリングを行い、下記に示す定量方法でドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドールを測定した。反応液中のL-DOPA濃度及びメラニン前駆体濃度の推移を図1に示す。 この反応条件では5,6-ジヒドロキシインドールカルボン酸の生成はごくわずかであることから、前駆体濃度はドーパクロム濃度と5,6-ジヒドロキシインドール濃度の合計で示した。条件により多少異なるが、反応終了時のドーパクロム濃度は、5,6-ジヒドロキシインドール濃度よりも3〜5倍高く、主成分はドーパクロムといえる。なお、L-DOPAを完全に消費した(HPLCによる測定の検出限界以下)状態をもって、反応終了の判断基準を設定した。この検出限界以下の状態をもって、実質的に含まれないと定義する。 メラニン前駆体濃度の経時的変化と、記録しておいた酸素濃度及びpH維持のための酸、アルカリ添加量の経時的変化などを照合し、なお、DOPAを完全に消費するために、40分間反応を行った。<メラニン前駆体の各成分の定量方法> メラニン前駆体は、Waters社製HPLC Alliance2695-2996を用いて、以下の条件で各成分を検出及び定量した。 成分の分離にはImtakt社製逆相カラムUnison UK-C18(4.6×150mm)を用い、移動相として1.5%リン酸溶液(A液)及び99.9%メタノール(B液)を用い、移動相中のB液が初発0%、5分後に50%となるようにグラジエントを設けた。流速は1.0mL/minとした。 注入するサンプルは、サンプル10μLに対し、20mMの亜二チオン酸ナトリウム(Na2S2O4)を100μL及び1.5%のリン酸(H3PO4)溶液を890μL添加し、0.45μmのフィルターで濾過することにより調製した。これを上記カラムに20μL注入して測定を行った。 ドーパの検出は、極大吸収波長である280nmにおける吸光度でモニターした。ドーパクロムは上記測定条件では還元されたロイコドーパクロム(5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸)として定量される。5,6-ジヒドロキシインドールは標準物質(5,6-ジアセトキシインドールのアルカリ加水分解物)を元に定量し、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸は280nmにおけるピークエリア面積の比率で比較した。5,6-ジヒドロキシインドールの極大吸収波長は300nmであり、5,6-ジヒドロキシインドールカルボン酸の極大吸収波長は320nmである。5.メラニン前駆体溶液の除タンパク 上記4の工程で得たメラニン前駆体溶液は、強固な細胞壁を有する酵母細胞を用いているため、メラニン前駆体溶液中に存在する菌体の破片や菌体から流出したタンパク質は存在しないか、又はほとんど存在しない。しかし、染毛剤として用いる場合、微量に含有するタンパク質がアレルゲンとなる可能性があるため、限外ろ過によりタンパク質除去を行った。 限外ろ過装置として、ダイセンメンブラン社製限外濾過モジュール・モルセップFS10-FUS0181(分画分子量1万)を用いた。ろ過により得られた溶液をSDS-PAGEに供し、銀染色を行うことにより、除タンパクされていることを確認した。一般に行われているように280nmにおける吸光度を測定する方法を採用しなかったのは、ドーパクロム自身が280nm付近に吸収を持つこと、及び、インドールの反応性が高いため呈色試薬と反応し易いなどの理由による。銀染色の結果、限外濾過後はタンパク質と考えられるバンドは検出されなかった。6.ドーパクロムから5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸への変換(メラニン前駆体の変換方法) 上記5の工程で得られた溶液に含まれるメラニン前駆体は主にドーパクロム、すなわち5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸であるが、染毛剤として染毛性能あるいは保存安定性に優れている5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を生成するために、非酵素的にメラニン前駆体を変換する処理を行った。方法は、pH調整、有機溶媒の添加、リン酸緩衝液の添加、金属イオン処理などであり、いずれの方法でも効率的に変換できた。 なお、以下に示すメラニン前駆体の存在比率は、280nmにおける吸光度の面積比によるものである。(6-1) pH調整による前駆体溶液の組成コントロール 上記5の工程で得られたメラニン前駆体溶液(主にドーパクロムを含む)についてpHによる前駆体の調整を行った。酸素が存在しない状態とし、40℃で2時間保存した。酸性〜中性付近(pH5以上8未満)で処理すると、5,6-ジヒドロキシインドールの比率が高まり(前駆体中の50%以上、最適条件では80%以上)、pH8〜11で処理すると、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸の比率が高まった。なお、pH2〜4では沈殿が生成し、処理には不適であった。(6-2) 有機溶媒の添加によるメラニン前駆体溶液の組成コントロール 上記5の工程で得られたメラニン前駆体溶液(ドーパクロムを主に含む)に対し、全量の50容量%になるようにエタノールを添加し、室温で2時間処理した。ドーパクロムが効率的に5,6-ジヒドロキシインドールに変換された(5,6-ジヒドロキシインドールの5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸に対する比率10倍以上)。エタノールに代え、メタノール、アセトン、アセトン、2-プロパノール又はアセトニトリルを使用した場合にも、同様の効果が認められた。 また、上記5の工程で得られたメラニン前駆体溶液に対し、全量の50容量%になるように、2-アミノエタノールを添加し、室温で2時間処理した。ドーパクロムが効率的に5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸に変換された(5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸の5,6-ジヒドロキシインドールに対する比率5倍以上)。(6-3) リン酸緩衝液による前駆体溶液の組成コントロール 上記5の工程で得られたメラニン前駆体溶液(ドーパクロムを主に含む)に、1Mリン酸緩衝液を添加することにより、メラニン前駆体を含むpH6.0の0.1Mリン酸緩衝液とした。この前駆体溶液を−20℃程度で7日間保存した。酸成分としてリン酸を含むリン酸緩衝液中で低温保存することにより、ドーパクロムが効率よく5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸に変換された(5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸の5,6-ジヒドロキシインドールに対する比率5倍以上)。(6-4) 塩化ナトリウム又はアスコルビン酸ナトリウムによる前駆体溶液の組成コントロール 上記5の工程で得られたメラニン前駆体溶液(ドーパクロムを主に含む)に、最終濃度2.5%になるように塩化ナトリウムを添加し室温で45分間静置すると、ドーパクロムの5,6-ジヒドロキシインドールへの変換が無添加系に比べ促進した。また、塩化ナトリウムの代わりに、アスコルビン酸ナトリウム溶液を添加すると、著量の5,6-ジヒドロキシインドールが蓄積した(メラニン前駆体中の5,6-ジヒドロキシインドールの存在比率90%)。(6-5) 銅(II)塩によるメラニン前駆体溶液の組成コントロール 上記5の工程で得られたメラニン前駆体溶液(ドーパクロムを主に含む)に最終1mMとなるように硫酸銅を添加して、室温で15分間静置し、ドーパクロムの5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸への変換が促進された(5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸の5,6-ジヒドロキシインドールに対する比率3倍以上)。7.メラニン前駆体溶液の濃縮 メラニン前駆体溶液(ドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸など)は以下のようにして濃縮できた。濃縮には、海水から純水を製造するのに用いられるクロスフロー型逆浸透濃縮装置(日東電工マテックス社製)を用いた。この装置は、メラニン前駆体溶液を入れた密閉タンクと逆浸透濃縮モジュールNTR7410-HG-S4Fとの間で溶液を循環させるものであり、逆浸透濃縮モジュールにより生成する純水は、このモジュールから透過水タンクに導かれる。純水の生成に伴い、タンク内にメラニン前駆体が濃縮される。循環はポンプにより圧力2MPaで行った。約30分間の操作により手順5で得られた約31Lのメラニン前駆体溶液が約4Lに濃縮された。この濃縮操作中にメラニン前駆体透過液中には高分子メラニンはほとんど生成しておらず、指標とした5,6-ジヒドロキシインドール濃度は約9mMから約67mMに上昇し、回収率は極めて高かった。実施例11.染毛剤組成物の調製(1) 染毛剤用のメラニン前駆体組成物として以下のものを用いた。 チロシナーゼ活性:1.9〜4.4 U/OD600を有する麹菌由来のチロシナーゼ遺伝子(melB)を導入した組換え酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いた酸化工程で約20mMのL-DOPAより生成したドーパクロム(約10〜15mM)を遠心分離の上清として回収した(工程収率:約50〜65%)。 更に、pH6付近での処理及び限外濾過、逆浸透膜濃縮により約1重量%のメラニン前駆体溶液1を得た。本溶液は、HPLC法にて280nmでメラニン前躯体として検出されるものは、その90%以上が5,6-ジヒドロキシインドールであり、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸はその10%以下であった。インドリン類は1%以下であった。出発物質のL-DOPAは検出されなかった。インドリン類は1%以下であった。出発物質のL-DOPAは検出されなかった。タンパク質が含まれていないことは、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動法により確認した。本方法により染毛剤に適した5,6-ジヒドロキシインドールを主成分(メラニン前躯体含有量の90%以上)とするメラニン前躯体を効率的にメラニン前躯体を製造することができた。(2) 上記メラニン前駆体溶液1を30g(メラニン前駆体として約0.3gを含む)用いて下記組成の染毛剤(本発明品1)100gを調製した。調製に当たっては酸素の混入を防ぐため、嫌気条件下で行った。これを原液とし、それぞれを噴射剤(LPG)と共にエアゾール容器に充填した(原液:噴射剤=90:10,重量比)。 メラニン前駆体溶液1 30g(メラニン前駆体として約0.3g) キサンタンガム 0.2g アンモニア水(28重量%) 0.5g エタノール 10g ソフタノール90(日本触媒社製) 0.5g 水 バランス 酸化防止剤 適量 合計 100g2.染毛試験(測色計による評価) 1で得られた染毛剤1gを白髪トレス1gに適用し、30℃で15分間染色した。その後、水洗、シャンプー、ヘアリンス、次いで乾燥した。7日おきにこの操作を計5回繰り返した。染色したトレスを分光測色計(ミノルタ社製CM-2002)により測色し、下式に従って算出した色差(ΔE)により評価した。 ΔE={(L1−L0)2+(a1−a0)2+(b1−b0)2}1/2 (L0,a0,b0):染色前の白髪トレスの測色値 (L1,a1,b1):染色後の白髪トレスの測色値 白髪トレスのΔE値は、1回目:15、3回目:28、5回目:38となり、徐々に黒くなった。3.安定性 40℃保存、2週間後のHPLCによるメインピークの定量値はほとんど変化せず、高い安定性が確認された。実施例3 染毛剤組成物(フォームタイプ) メラニン前駆体溶液1を5g(メラニン前駆体として約0.05gを含む)、ソフタノール90を0.5g、キサンタンガムを0.1g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを0.3g、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を0.01g、エタノールを10g及び残部の水を混合し、染毛剤100gを調製した。調製に当たっては酸素の混入を防ぐため、嫌気条件下で行った。これを原液とし、それぞれを噴射剤(LPG)と共にエアゾール容器に充填した(原液:噴射剤=90:10,重量比)。製造例1におけるチロシナーゼ産生細胞によるL-DOPAの酸化反応の反応液中のL-DOPA濃度及びメラニン前駆体濃度の推移を示す図である。 D体又はL体のチロシン、D体又はL体のドーパ、ドーパミン、チロシンの低級(C1-4)アルキルエステル、DOPAの低級(C1-4)アルキルエステル、及びN-アルコキシ化又はN-アルキル化されたDOPA又はチロシンからなる群より選ばれるチロシン又はその誘導体を出発物質とし、アスペルギルス(Aspergillus)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、トリコデルマ(Trichoderma)属及びペニシリウム(Penicillium)属からなる群より選ばれる糸状菌に由来するカテコールオキシダーゼ活性を示す酵素又は細胞を用いて、メラニン前駆体に変換する酸化工程(A)を含む方法によりメラニン前駆体溶液を製造し、これを溶液状態のまま染毛剤組成物に配合する空気酸化型染毛剤組成物の製造方法。 カテコールオキシダーゼ活性を示す酵素として、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のmelBチロシナーゼ遺伝子、melDチロシナーゼ遺伝子又はmelOチロシナーゼ遺伝子にコードされるチロシナーゼと実質的に同一である酵素を用いる請求項1記載の空気酸化型染毛剤組成物の製造方法。 カテコールオキシダーゼ活性を示す細胞として、大腸菌(Escherichia coli)、酵母又は糸状菌を用いる請求項1記載の空気酸化型染毛剤組成物の製造方法。 酸化工程(A)が、L-ドーパ(L-DOPA)を出発物質とし、その濃度が反応開始時に15mM以上、反応終了時に0.1mM以下となる工程である請求項1〜3のいずれかに記載の空気酸化型染毛剤組成物の製造方法。 メラニン前駆体中の5,6-ジヒドロキシインドールの比率が、280nmにおける吸光度の面積比で60%以上となるようにする請求項1〜4のいずれかに記載の空気酸化型染毛剤組成物の製造方法。 DOPAエチルエステル又はチロシンエチルエステルを出発物質として用いて製造されたメラニン前駆体を染毛剤組成物に配合する請求項1〜5のいずれかに記載の空気酸化型染毛剤組成物の製造方法。 空気酸化型染毛剤組成物のpHを6〜11に調整する請求項1〜6のいずれかに記載の空気酸化型染毛剤組成物の製造方法。 出発物質又は中間体であるドーパ(DOPA)又はドーパミン(Dopamin)を、実質的に含有しないように、酸化工程(A)で消費する請求項1〜7のいずれかに記載の空気酸化型染毛剤組成物の製造方法。


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