タイトル: | 特許公報(B2)_芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法 |
出願番号: | 2004351020 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 51/15,C07C 65/10,C07B 61/00 |
山口 達明 佐藤 浩一 JP 4759666 特許公報(B2) 20110617 2004351020 20041203 芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法 学校法人千葉工業大学 598163064 JX日鉱日石エネルギー株式会社 000004444 森田 順之 100103285 山口 達明 佐藤 浩一 20110831 C07C 51/15 20060101AFI20110811BHJP C07C 65/10 20060101ALI20110811BHJP C07B 61/00 20060101ALN20110811BHJP JPC07C51/15C07C65/10C07B61/00 300 C07C 51/15 C07C 65/10 特開平01−113340(JP,A) 特開平02−235844(JP,A) 日本化学会誌,1989年,(7),p.1164-1165 第34回石油・石油化学討論会,2004年,34,p.123 5 2006160624 20060622 5 20071121 安田 周史 本発明は、芳香族ヒドロキシカルボン酸の改善された製造方法に関する。 芳香族ヒドロキシカルボン酸は食品、化粧品などの防腐・保存料として、また顔料・染料・液晶・液晶高分子あるいは医薬・農薬の原料あるいは中間体として重要であり、一般にはフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物のアルカリ金属塩と二酸化炭素を固気相反応させる、いわゆるコルベ・シュミット反応により製造される。 しかしながら、この反応を一段の反応で行う場合、副生物の生成が問題になっている。例えば、サリチル酸合成においては、p−ヒドロキシ安息香酸および4−ヒドロキシイソフタル酸が副反応生成物として合計0.4モル%程度生成する(特許文献1)。そのため、純度の高い芳香族ヒドロキシカルボン酸を得るには、例えば、昇華プロセスなどの精製工程を組み入れて副生物を除去するなどの処理が必要であり、多工程のプロセスとなっている。米国特許第4376867号明細書 本発明は、副生物の生成を抑制して目的物の選択率を高め、精製工程の不要な芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、前記課題について鋭意検討した結果、本発明を完成したものである。 すなわち、本発明は、芳香族ヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩と二酸化炭素を、固体塩基触媒の存在下、非プロトン性極性溶剤中で反応させて、芳香族ヒドロキシカルボン酸を得ることを特徴とする芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法に関する。 以下に本発明を詳述する。 本発明において用いる芳香族ヒドロキシ化合物としては、芳香環(芳香族炭化水素環、芳香族性複素環)にヒドロキシル基を1個または2個以上有する化合物であればよく、例えば、フェノール、クレゾール(o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール)、キシレノール(2,3−キシレノール、3,5−キシレノールなど)、カルバクロール、チモール、ナフトール(α−ナフトール、β−ナフトール)、アントロール、フェナントロール、2,5−ジフェニルフェノール、8−キノリノール、インドール−5−オール、3−ヒドロキシチオフェンなどの一価フェノール;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2’−ビフェニルジオール、4,4’−ビフェニルジオールなどの二価フェノール;ピロガロール、フロログルシノールなどの三価フェノールなどが挙げられる。原料として用いる芳香族ヒドロキシ化合物としては、一般に市販されているもの(例えば、純度98%品など)を使用できるが、不純物の種類、含量の少ないことが好ましい。 芳香族ヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩に使用されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどが挙げられる。 芳香族ヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。 また、本発明において用いる二酸化炭素も特に限定されるものではなく、市販品を使用することができ、また不活性ガスで希釈したものも使用することができるが、反応を阻害する不純物が少ないものが好ましい。 固体塩基触媒としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物;酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物;酸化ランタン、酸化イットリウムなどの希土類酸化物;ハイドロタルサイト類、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。これらの中でも、アルカリ土類金属酸化物が好ましく、さらに好ましくは酸化マグネシウム、酸化カルシウムであり、特に酸化マグネシウムが好ましい。 原料の芳香族ヒドロキシ化合物と固体塩基触媒の比率(仕込みモル比)は、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物/固体塩基触媒=10〜1000であり、好ましくは15〜500、さらに好ましくは18〜100である。 非プロトン性極性溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのカーボネート類;ニトロベンゼン、ニトロトルエン、ニトロアニソールなどのニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホラン、ジメチルスルホランなどの有機硫黄酸化物などが挙げられる。これらの中でもアセトニトリルが特に好ましい。 非プロトン性極性溶剤の使用量は、該溶剤の種類、原料芳香族ヒドロキシ化合物の種類、固体塩基触媒の種類、前記芳香族ヒドロキシ化合物と固体塩基触媒の比率などによっても異なるが、一般には芳香族ヒドロキシ化合物100重量に対して、50〜5000重量部、好ましくは100〜2000重量部、さらに好ましくは200〜1000重量部である。 反応温度としては80〜250℃が好ましく、より好ましくは150〜220℃である。反応温度が80℃未満のときは反応が進まず、また250℃を超えると副生成物が生成するため好ましくない。また反応圧力は0.05〜25MPaが好ましく、より好ましくは0.5〜10MPa、さらに好ましくは2〜5MPaである。また反応時間は10分〜300分が好ましく、より好ましくは60分〜180分である。反応時間が10分未満のときは収率が低く、また300分を超えると副生成物が生成するため好ましくない。 反応装置としては、通常、加圧が可能な金属製の反応装置が用いられる。 反応により、原料で用いた芳香族ヒドロキシ化合物に対応する芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその塩が生成する。芳香族ヒドロキシカルボン酸の塩は慣用の方法により遊離の芳香族ヒドロキシカルボン酸に変換できる。生成物である芳香族ヒドロキシカルボン酸(またはその塩)におけるカルボキシル基の位置は、反応条件(反応温度や溶剤の種類など)によっても異なるが、通常、ヒドロキシル基に対してオルト位またはパラ位であり、特にオルト位であることが多い。 反応終了後、反応生成物は、例えば、中和(塩の遊離化など)、ろ過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。 本発明の製造方法によれば、副生成物の生成を抑えて選択的に芳香族ヒドロキシカルボン酸を得ることができる。特に、原料の芳香族ヒドロキシ化合物としてフェノールを用い、固体塩基触媒として酸化マグネシウムを、非プロトン性極性溶剤としてアセトニトリルを用いて反応させた場合、ほぼ100%の選択率でサリチル酸を得ることができる。 以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、「%」はモル%を示す。(実施例1) フェノール9.6g(100mmol)を1N−水酸化カリウム水溶液100mLに溶解させフェノールカリウム水溶液を作成した。これをロータリーエバポレーターで脱水し、180℃で真空乾燥して無水粉末のカリウムフェノキシドを得た。 前述したカリウムフェノキシド1.32g(10mmol)をアセトニトリル10mLで溶解し、酸化マグネシウム0.02gを加え、内容積50mLの電磁誘導回転翼式オートクレーブに入れた。次いで、二酸化炭素を3MPaまで導入し、攪拌しながら200℃まで昇温させ、その後2時間反応を行った。反応終了後、反応容器を急冷し、反応混合物はロータリーエバポレーターにて乾燥し、水溶液として回収した。反応混合物はHPLCを用いて定性・定量を行った。サリチル酸の収率は40%であり、カリウムフェノキシドのサリチル酸への選択率は100%であった。(比較例1) カリウムフェノキシド1.32g(10mmol)をアセトニトリル10mLで溶解し、内容積50mLの電磁誘導回転翼式オートクレーブに入れた。次いで、二酸化炭素を3MPaまで導入し、攪拌しながら200℃まで昇温させ、その後2時間反応を行った。反応終了後、反応容器を急冷し、反応混合物はロータリーエバポレーターにて乾燥し、水溶液として回収した。反応混合物はHPLCを用いて定性・定量を行った。サリチル酸の収率は14%であり、カリウムフェノキシドのサリチル酸への選択率は45%であった。(実施例2) カリウムフェノキシド1.32g(10mmol)をテトラヒドロフラン10mLで溶解し、酸化マグネシウム0.02gを加え、内容積50mLの電磁誘導回転翼式オートクレーブに入れた。次いで、二酸化炭素を3MPaまで導入し、攪拌しながら200℃まで昇温させ、その後2時間反応を行った。反応終了後、反応容器を急冷し、反応混合物はロータリーエバポレーターにて乾燥し、水溶液として回収した。反応混合物はHPLCを用いて定性・定量を行った。サリチル酸の収率は68%であり、カリウムフェノキシドのサリチル酸への選択率は91%であった。 芳香族ヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩と二酸化炭素を、固体塩基触媒の存在下、非プロトン性極性溶剤中で反応させて、芳香族ヒドロキシカルボン酸を得ることを特徴とする芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法。 芳香族ヒドロキシ化合物がフェノールであることを特徴とする請求項1記載の芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法。 固体塩基触媒が酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1記載の芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法。 非プロトン性極性溶剤がアセトニトリルであることを特徴とする請求項1記載の芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法。 芳香族ヒドロキシカルボン酸がサリチル酸であることを特徴とする請求項1記載の芳香族ヒドロキシカルボン酸の製造方法。