タイトル: | 特許公報(B2)_海苔エキスの製造法 |
出願番号: | 2004339883 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A23L 1/337,A23L 1/30,A61K 8/60 |
奥薗 一彦 大崎 弘幸 JP 4679887 特許公報(B2) 20110210 2004339883 20041125 海苔エキスの製造法 第一製網株式会社 000208787 奥薗 一彦 大崎 弘幸 20110511 A23L 1/337 20060101AFI20110414BHJP A23L 1/30 20060101ALI20110414BHJP A61K 8/60 20060101ALI20110414BHJP JPA23L1/337 103AA23L1/30 BA61K8/60 A23L 1/337 A23L 1/30 A61K 8/60 特開平10−060002(JP,A) 特開平10−060003(JP,A) 国際公開第00/069285(WO,A1) 国際公開第91/017674(WO,A1) 特開平10−191940(JP,A) 特開2002−220402(JP,A) 3 2006149206 20060615 7 20071119 冨士 良宏 本発明は、抽出率が高く、ポルフィランを高含量で含む海苔エキスを抽出する方法に関する。 海苔には、タンパク質、糖質及びミネラル等が多量に含まれており、特に糖質であるポルフィランは、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす効果があるため食品特に健康食品原料としての利用が注目されている。また、ポルフィランは、保湿性も有しているため、化粧料の原料としても以前から注目されていた。ポルフィランは、紅藻由来の酸性多糖であり、寒天やカラギーナンと類似した構造を持っている。特にポルフィランを高含量するエキスを抽出することができれば、ヒアルロン酸・コンドロチン硫酸に代わる有用な保湿剤、カラギーナンに代わる増粘剤としての使用も期待できる。 ポルフィランは、海苔の品質が低いものに多く含まれるため、廃棄されている下級品の海苔を使用すことができるため、利用方法が確立できれば海苔業界にとっても大きなメリットとなりうる。 ポルフィランを抽出する方法としては、熱水抽出する方法が一般的であるが、実施例にも記載しているように、抽出率が15〜20%と小さく効率的な方法ではない。 本発明者等は、海苔の酵素分解法を用いる抽出法を検討し採用したが、ポルフィラン含有量が低く、満足できる方法を見出すことができなかった。 我々は、海苔に対し酵素による分解を行い海苔エキスを製造する技術を開発し、そのエキスの利用法として、海藻飲料の製造法(特公昭63−39224号)、海藻酒の製造法(特公昭63−61913号、特開昭61−78372号)、化粧料(特開昭61−87614号)、調味料(特公昭62−282566号)、海苔の冷凍芽痛み防止剤(特公平7−12262号)、液状有機肥料の製造法(特公平8−29996号)等を考案している。 海苔のポルフィランを抽出する方法に関する先行技術には、次のようなものがある。 例えば、特許文献1には、「アマノリ属の藻体乾燥物に含水アルコールを加えて洗浄処理し、残留した固形分に水を加えて加熱沸騰させた後、濾過し、その濾液を濃縮し、その濃縮液に塩酸又は乳酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を添加後、エチルアルコールによる分別沈殿を行い、アルコール濃度50%(V/V)までの画分の沈殿物を回収し、洗浄乾燥することを特徴とするポルフィランの製造法」が開示されている。 特許文献2には、「海苔を熱水で抽出し、得られた海苔抽出液を沈殿剤で処理することを特徴とするポルフィランの製造方法」が開示されている。 特許文献3には、「海苔を熱水で抽出し、得られた海苔熱水抽出液を酢酸及び/又は酢酸塩で処理した後、エタノールで処理することを特徴とするポルフィランの製造方法」が開示されている。特開2004−27192号公報特開平10−60002号公報特開平10−60003号公報(第2−3頁) 本発明の目的は、海苔に多量に含まるポルフィランを、高含量で効率よく抽出できる方法を見出すことにより、化粧品・食品原料として使用できる海苔エキスを安価に製造することに関する。 そこで、使用する海苔について検討した結果、前処理として二酸化塩素等の漂白剤で処理した海苔を用いて酵素分解を行うことにより、保湿性の高いポルフィラン高含量の海苔エキスが得られることを見いだし本発明に至った。すなわち、本発明は次の通りである。(1)二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウムの中の1種以上を用い、50〜5000ppmの濃度で海苔を処理した後、酵素処理による分解を行うことを特徴とするポルフィラン含有海苔エキスの製造法。(2)化粧品原料・食品原料として使用することを特徴とする(1)記載のポルフィラン含有海苔エキスの製造法。(3)化粧品用の保湿剤として使用することを特徴とする(2)記載のポルフィラン含有海苔エキスの製造法。 本発明のポルフィラン抽出技術を用いることにより、ポルフィラン含有量が高く、かつべたつきのないエキスを製造することができ、食品・健康食品及び化粧品の原料としての利用が可能となる。 以下、本発明の形態を詳しく説明する。本発明のポルフィラン含有海苔エキスは、二酸化塩素・次亜塩素酸ナトリウムの中の1種以上の漂白剤で処理をした海苔を水または緩衝液中で酵素分解することにより得られる。 試験1の結果からわかるように、二酸化塩素等の漂白剤で漂白処理した後、酵素分解処理によるポルフィランの抽出を行うことにより、従来の熱水抽出等と比較して、純度の高いポルフィランを高収率で抽出することができる。 海苔の漂白処理は、漂白剤濃度を20ppm以上、好ましくは50〜5000ppmに調整した液に、生海苔または乾海苔を浸漬することにより完了する。浸漬時間は特に限定されないが、漂白剤の濃度、処理液の温度及び使用する海苔により数分から1日を要する。浸漬終了後、水洗し海苔に付着した漂白剤を除去し酵素分解工程に移る。 漂白剤としては、何でも使用できるものではない。試験2よりわかるように、過酸化水素は生海苔の漂白には使用できず、二酸化塩素と次亜塩素酸ナトリウムのみが使用することができるのである。二酸化塩素は、漂白処理後、水洗・乾燥の行程で、すぐに臭いがなくなってしまうが、次亜塩素酸ナトリウムは塩素臭を除くのに時間がかかりすぎるし僅かだが臭いが残存してしまうという欠点がある。食品・化粧品の原料目的及び作業性を考慮すると二酸化塩素の使用の方が好ましいと言える。 酵素としては、例えば繊維素分解酵素、蛋白分解酵素、澱粉分解酵素、ペクチン分解酵素などが用いられる。海苔の酵素分解エキスを製造するに際しては、海苔を細断し、酵素及び水又は緩衝液を加え、20〜60℃に保ち酵素分解を行う。酵素を2種類以上用いる場合は、酵素分解の途中又は終了後に別の酵素を加え、さらに分解してもよい。 緩衝液としては酢酸、乳酸、くえん酸、りんご酸、こはく酸、酒石酸、フマル酸などの有機酸及びその塩、燐酸などの無機酸及びその塩、苛性ソーダ、苛性カリ、重炭酸ソーダなどのアルカリの1種又は2種以上の水溶液が用いられる。 緩衝液を用いない場合は、有機酸、無機酸及びアルカリによって酵素反応の至適pHに調整することが好ましい。水又は緩衝液の使用量は、海苔(乾物)1重量部に対し、20〜100重量部が好ましい。また酵素の使用量は、海苔(乾物)1重量部に対し、0.02〜0.15重量部が好ましい。 酵素分解は通常1〜10時間で終了する。分解終了後、分解後を熱処理して酵素を不活性化し、濾過して不溶物を除去すると、ポルフィラン高含有の酵素分解エキスが得られる。液状で使用しても良いし、使用に応じてスプレードライ・凍結乾燥等の乾燥法にて粉末化しても良い。(試験1) 「海苔の熱水抽出物[比較例1]」と「海苔の酵素分解物[比較例2]」及び「漂白処理した海苔の酵素分解物[実施例1]」を下記に示す方法にて製造した。製造したエキスの収率とポルフィラン含量を定量した。ポルフィランの定量は、酸分解し還元糖を求める方法にて定量した。 結果を、表1に示す。[比較例1]生海苔700g(乾重量60g)に、水1000mlを加え、1時間煮沸加熱処理しポルフィランを抽出した。濾過後、スプレードライで乾燥し、海苔エキス9g(収率15%)を得た。[比較例2]生海苔700g(乾重量60g)に、水1000mlを加え、45℃に加温する。この混合物にくえん酸を加えpH5に調整した後、繊維素分解酵素のセルラーゼA「アマノ」3及びマセレイトエンザイム「アマノ」1(共に天野エンザイム社製)を各1.5gずつ添加し、45℃で撹拌下に6時間酵素分解を行った。次いで90℃で30分間加熱処理をして酵素を不活性化し、冷却した。濾過後、スプレードライで乾燥し、海苔エキス48g(収率80%)を得た。 [実施例1]二酸化塩素濃度を100ppmに調整した液10Lに、水道水で水洗、十分水切りを行った生海苔1400g(乾重量120g)を加え、12時間浸漬処理を行った。その後、水洗、天日乾燥を行い100gの乾海苔を得た。この乾海苔60gに水1640mlを加え、45℃に加温する。この混合物にくえん酸を加えpH5に調整した後、繊維素分解酵素のセルラーゼA「アマノ」3及びマセレイトエンザイム「アマノ」1(共に天野エンザイム社製)を各1.5gずつ添加し、45℃で撹拌下に6時間酵素分解を行った。次いで90℃で30分間加熱処理をして酵素を不活性化し、冷却したのち濾過した。濾過後、スプレードライで乾燥し、海苔エキス45g(収率75%、乾物原料からの収率63%)を得た。 熱水抽出法で抽出するとエキスの抽出率が低く効率的ではない。 又、酵素分解法で抽出すると、エキスの収率は高くなるが、ポルフィラン含有率は低い。 本発明の酵素分解の前処理として海苔を漂白剤で処理することにより、エキス及びポルフィランの収率が共に高くなることがわかる。(試験2) 表2に示すように、各種漂白剤(二酸化塩素・次亜塩素酸ナトリウム・過酸化水素)の各濃度に調整した液5Lをそれぞれ調整した。 水道水で水洗し十分水切りした生海苔700g(乾重量60g)を加え、12時間浸漬処理を行った。生海苔の漂白の状態を調査した。結果は、表2に示す。 生海苔を漂白する作用は、過酸化水素にはなく、二酸化塩素と次亜塩素酸ナトリウムにあることがわかる。特に二酸化塩素の方が、漂白力が高い。(試験3) 実施例1と比較例1で得られた海苔エキス、及びヒアルロン酸について、GASorp装置により水分の吸脱着試験を行い、吸水率を測定して保水性を調査した。 1%に溶解したエキスを手に塗布し、べたつき度合いも調査した。 結果を、表3に示す。 本発明の海苔エキスの吸水率は80%であり、ヒアルロン酸・熱水抽出エキスよりも非常に高く、ヒアルロン酸と同様に手に塗布したときのべたつきもない。従って、本発明のポルフィラン含有海苔エキスは、化粧品の保湿剤としてヒアルロン酸より優れていることがわかった。 ポルフィランを高含有する海苔エキスを高収率で製造することができ、食品・健康食品及び化粧品の原料としての利用が可能となった。二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウムの中の1種以上を用い、50〜5000ppmの濃度で海苔を処理した後、酵素処理による分解を行うことを特徴とするポルフィラン含有海苔エキスの製造法。化粧品原料・食品原料として使用することを特徴とする請求項1記載のポルフィラン含有海苔エキスの製造法。化粧品用の保湿剤として使用することを特徴とする請求項2記載のポルフィラン含有海苔エキスの製造法。