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タイトル:公開特許公報(A)_ラメラ構造再生剤及び皮膚外用剤
出願番号:2004338292
年次:2006
IPC分類:A61K 8/00,A61Q 19/00,A61K 8/60,A61K 31/7004,A61K 31/7016,A61K 31/702,A61P 17/16


特許情報キャッシュ

坂谷 志織 櫃田 廣子 桜井 哲人 JP 2006045186 公開特許公報(A) 20060216 2004338292 20041124 ラメラ構造再生剤及び皮膚外用剤 株式会社ファンケル 593106918 児玉 喜博 100105061 長谷部 善太郎 100122954 坂谷 志織 櫃田 廣子 桜井 哲人 JP 2004198563 20040705 A61K 8/00 20060101AFI20060120BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20060120BHJP A61K 8/60 20060101ALI20060120BHJP A61K 31/7004 20060101ALI20060120BHJP A61K 31/7016 20060101ALI20060120BHJP A61K 31/702 20060101ALI20060120BHJP A61P 17/16 20060101ALI20060120BHJP JPA61K7/48A61K7/00 FA61K31/7004A61K31/7016A61K31/702A61P17/16 6 OL 19 4C083 4C086 4C083AA122 4C083AB032 4C083AC022 4C083AC122 4C083AC242 4C083AC352 4C083AC422 4C083AD092 4C083AD152 4C083AD202 4C083AD212 4C083AD242 4C083AD532 4C083BB51 4C083CC02 4C083CC04 4C083CC05 4C083DD23 4C083DD31 4C083EE06 4C083EE07 4C083EE12 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA01 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA63 4C086NA14 4C086ZA89 本発明は、保湿効果に優れ、皮膚の乾燥や老化を防ぎ、皮膚にうるおいを与える外用剤に係わり、さらに詳しくは、皮膚表層部における角層細胞間脂質のラメラ構造を再生して皮膚の水分保持機能を高めることができる皮膚外用剤に関するものである。 角層細胞間脂質は角層細胞間にラメラ構造をとって存在し、角層水分保持機構に深く関与している。従って、このラメラ構造が正常に形成されていることが皮膚の潤いや、角層の柔軟性を維持するために必要不可欠である(非特許文献1 日本化粧品科学研究会編集、「機能性化粧品」、第1版、株式会社ジスク、1991年7月12日第2刷発行、p.235−252)。 ラメラ構造を有する皮膚外用剤を適用することにより、肌荒れを改善し、さらには皮膚外用剤を浸透させて皮膚のラメラ構造を正常化することを目的とする発明が知られている。例えば、ラメラ液晶を形成するステリン誘導体(特許文献1 特開平05−294989号公報)、脂質二分子膜とアミノ酸、高級脂肪酸、あるいは高級アルコールを含有するラメラ層を形成する皮膚外用剤(特許文献2 特開平07−285827号公報)、脂質二分子膜と脂肪族アルコールを含有する皮膚外用剤(特許文献3 特開2003−081809号公報)、ベタイン、S−アデノシルメチオニンを含有し、ラメラ構造を形成する美容用組成物(特許文献4 特表2004−501069号公報)、中性脂質と二重層成分を含有する組成物(特許文献5 特表2000−513706号公報)、脂質成分を角層の脂質ラメラに供給することを目的とするセラミド等とヒドロキシカルボン酸等を含有する組成物(特許文献6 特開平06−157283号公報)、ラメラ性液晶相を持つ水中油型エマルジョン(特許文献7 特表2001−518886号公報)が挙げられる。 また、ラメラ構造形成を促進・安定化する湿潤組成物としてコラーゲン・トリペプチドと2−ピロリドン−5−カルボン酸及び乳酸を含有する組成物が知られている(特許文献8 特開2001−064154号公報)。 本発明者らは、角層細胞間脂質のラメラ構造を再生することができれば、角層水分保持機能を回復して、皮膚にうるおいを与え、肌荒れや敏感肌を解消することができるものと考え、このようなラメラ構造の再生に関して鋭意研究を継続しており、皮膚の角層細胞におけるラメラ構造の再生機能を有する親水性ポリマーを配合した皮膚外用剤を開示している(特許文献9 特開2003−238341号公報)。特開平05−294989号公報特開平07−285827号公報特開2003−081809号公報特表2004−501069号公報特表2000−513706号公報特開平06−157283号公報特表2001−518886号公報特開2001−064154号公報特開2003−238341号公報日本化粧品科学研究会編集、「機能性化粧品」、第1版、株式会社ジスク、1991年7月12日第2刷発行、p.235−252 角層細胞間には、ラメラ構造を有する角層細胞間脂質が存在しており、水分保持や外部からの異物の侵入を防ぐバリア機能に深く係わっていることが明らかとなっている。すなわち、肌荒れ状態の皮膚や、肌への刺激に対してトラブルを起しやすい、いわゆる「敏感肌」には、このような角層細胞間のラメラ構造が消失したり、損傷を受けたりしていることが確認されており、角層細胞間脂質のラメラ構造のダメージが角層水分保持機能の減少を招き、皮膚の乾燥や肌荒れなどを生じさせるものと考えられる。 したがって、角層細胞間脂質のラメラ構造を再生することができれば、角層水分保持機能を回復して、皮膚にうるおいを与え、肌荒れや敏感肌を解消することができるものと考えられる。このようなラメラ構造の再生に関する検討については、本発明者等は研究開発を継続している。なお、上記のようなラメラ構造の損傷に基づく角層水分量の低下については、典型的な保湿剤であるグリセリンでは回復できないことが判明している。 本発明は、皮膚表層部における角層細胞間脂質のラメラ構造の上記のような機能に着目してなされたものであって、皮膚の水分保持機能を高めることができる角層細胞間脂質のラメラ構造を再生する剤及び新たな皮膚外用剤を提供することを目的としている。 本発明の主な構成は、次のとおりである。(1) グルコース及び/又はラフィノースを含有することを特徴とする皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。(2)グルコースと少糖類を含有することを特徴とする皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。(3)グルコースと少糖類の配合比率がモル濃度比で13:1〜1:1.2である(2)に記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。(4)グルコースの配合量が0.1〜10質量%、少糖類の配合量が0.1〜10質量%である(2)又は(3)に記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。(5)少糖類がメリビオース、トレハロース、ラフィノースから選ばれる1以上の少糖である(2)乃至(4)のいずれかに記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。(6)(2)乃至(5)のいずれかに記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤を含有する皮膚外用剤。 グルコースと少糖類を併用することにより、使用感に優れ、実用性の高い角層細胞におけるラメラ構造再生剤を実現した。皮膚外用剤、化粧料として実用性に優れている。ラメラ構造再生作用は、特定の配合量、配合比あるいは特定の少糖類を選択することにより顕著となる。 皮膚は様々な外的刺激から体を守るとともに、内側の水分の蒸発を防ぐバリア機能を有している。角層におけるバリア機能は、角層細胞間脂質から構成されるラメラ構造が大きく関与しており、剥離角層からラメラ構造を簡便に観察する手法を確立し、乾燥した肌状態においてラメラ構造が減少していることを実証した。角層細胞間脂質を構成するセラミド、コレステロールなどの成分と水の混合物をからラメラ構造(マルターゼクロス像)を観察できることは知られており、本手法を用いて角層のバリア機能に対して有効な成分がいくつか見出されている。 そこで、乾燥してバリア機能の低下した肌に対して有効な成分を探索することを目的として、保湿性の高い糖にターゲットを絞り、人工角層細胞間脂質による評価法を用いて有用な成分を探索した。結果、グルコースとラフィノースに優れた効果を見出し、ヒト試験においてもバリア機能回復効果を実証することができた。更に本成分の乾燥環境下における培養表皮細胞へのバリア効果にも有用な結果を得たので提案する。 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 本発明に係わる皮膚外用剤は、グルコース及び/又はラフィノース、あるいはグルコースと少糖類を配合してなるものである。 グルコースあるいはラフィノースの配合量としては、0.1〜10質量%、さらには0.5〜5質量%の範囲とすることがより好ましい。0.1質量%以下では角層細胞間脂質のラメラ構造の再生効果が十分ではなく、10質量%以上では、べたつきが大きくなるので使用感が悪い。 少糖類の配合量としては、0.1〜10質量%、さらには0.5〜5質量%の範囲とすることがより好ましい。0.1質量%以下では角層細胞間脂質のラメラ構造の再生効果が十分ではなく、10質量%以上では、べたつきが大きくなるので使用感が悪い。 グルコースと少糖類の配合比率はモル濃度比で13:1〜1:1.2が好ましく、その比率において角層細胞間脂質のラメラ構造の再生効果が相乗的に大きくなる。 また、グルコースを単独で使用すると、保湿感は高くなるが、「べたつき」も強くなり、使用感が悪い。少糖類を単独で使用すると、保湿感はあまり高くないが、さっぱりしている。グルコースと少糖類、特にグルコースとメリビオース、トレハロース、ラフィノースを併用することにより、保湿感が高く、かつ「べたつき」の少ない使用感を得ることができる。 少糖類としては、例えば、メリビオース、トレハロース、ラフィノース、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、ゲンチアノース、スタキオース、シクロデキストリン等が上げられる。少糖類は1種を単独で、あるいは2種以上を複合的に使用することができる。なお、少糖類の中でメリビオース、トレハロース、ラフィノースが特に角層細胞間脂質のラメラ構造の再生効果に優れている。 本発明に係わる皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、例えば洗顔料類、ローション類、乳液類、クリーム類、パック類などの皮膚外用剤に適用することができる。 本発明に係る上皮膚外用剤においては、上記親水性ポリマーに加えて、保湿剤、アミノ酸、ビタミン類、炭化水素、高級脂肪酸、エステル類、シリコン、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、pH調整剤、水等を必要に応じて適宜配合することができる。これらの成分はそれぞれ一種を用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。 保湿剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、乳酸ナトリウム、dl− ピロリドンカルボン酸塩、ヨクイニン抽出物、黒糖抽出物、大豆レシチン等が挙げられる。 アミノ酸として、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、トリプトファン、シスチン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルタミン、アスパラギン等の中性アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、及びアルギニン、ヒスチジン、リジン、ヒドロキシリジン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。 ビタミン類としては、ビタミンA,B1,B2,B6,C及びその誘導体、E及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン等が挙げられる。 炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィン、スクワラン、ワセリン等が挙げられる。 高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。 エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、2−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2− ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2− ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。 シリコンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状ポリシロキサン、3次元網目構造を形成しているシリコン樹脂等が挙げられる。 アニオン性界面活性剤としては、例えば、アシルグルタミン酸塩などのアシルアミノ酸塩、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸セッケン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩等が挙げられる。 カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム),塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体等が挙げられる。 両性界面活性剤としては、例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミタゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等の、イミダゾリン系両性界面活性剤、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。 非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリン、α, α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POE−ソルビタンモノステアレート、POE−ソルビタンモノオエレート、POE−ソルビタンテトラオレエート等の POEソルビタン脂肪酸エステル類、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビットペンタオレエート、POE−ソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POE−グリセリンモノステアレート、POE−グリセリンモノイソステアレート、POE−グリセリントリイソステアレート等の POEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEモノジオレエート、システアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、が挙げられる。 pH調整剤としては乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン−リン酸2水素ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。[試験1]1.糖類を単独で用いた場合のラメラ構造再生試験試験方法 人工細胞間脂質を作成し、そこに糖水溶液を加えてラメラ構造を再生させた。偏光顕微鏡にて観察した画像を二値化してラメラ構造の面積を求め、糖の種類ごとの再生効果を評価した。人工細胞間脂質 A セラミド 0.12g 水 0.72g B コレステロール 0.08g ステアリン酸 0.08gA、Bをそれぞれ80℃で溶解させた後、混合し、10℃に冷却して超音波を10分照射した。再度80℃で溶解、混合し、10℃に冷却して超音波を10分照射した。糖水溶液 0.25Mの各種糖水溶液を作成した。ラメラ構造を安定化させる機構として、ラメラ界面に糖が配向することを推測し、ラメラ再生効果は分子数に依存すると仮定し、同一のモル濃度で比較した。ラメラ構造の生成 人工細胞間脂質を10mg採取し、糖水溶液を20μl添加し、80℃のウォーターバスで加熱し、よく混合した。その後、10℃で超音波を10分間と80℃のウォーターバスでの加熱10分間を4回繰り返すことでラメラ構造を生成させた。偏光顕微鏡観察 偏光顕微鏡:γ=530nm,BX50, OLYMPUS、倍率:100倍、観察範囲:約220μm×164μm、画像解析ソフト:WinROOF, 三谷商事社製結果 偏光顕微鏡観察画像を解析して、ラメラ液晶の面積を測定した。面積が1500μm2以上を◎、1000μm2以上1500μm2未満を○、1000μm2未満を△として、ラメラ液晶の再生効果を3段階で評価した。結果を表1に示す。また、リボースとラフィノースの偏光顕微鏡画像を図1、2に示す。 単糖の中でラメラ構造再生効果が大きいのはグルコースであった。グルコースは表中の他の単糖と比べてe−OH値(エクアトリアルOH基の数を溶液中に存在する種々のコンホメーションの割合から比例配分によって求めた値)が大きい。スクロース、メリビオース、トレハロース(二糖類)、ラフィノース(三糖類)で比較すると、ラメラ構造再生効果が大きいものから順番に並べるとラフィノース、トレハロース、メリビオース、スクロースとなり、e−OHの大きさの順番と一致している。従って、e−OHの値が大きいほどラメラ構造再生効果が大きい。α−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンは分子量が大きいので、分子内のOHのうちでラメラ構造に配向できるOHの比率が低下する。そのために、同じモル濃度では、e−OHの値が大きいのにもかかわらず、二糖類、三糖類と比べてラメラ構造再生効果が小さい。[試験2]2.糖のラメラ構造再生試験人工細胞間脂質を用いた評価方法を検討した。試験方法人工細胞間脂質を作成し、そこに糖水溶液を加えてラメラ構造を再生させた。偏光顕微鏡にて観察した画像を二値化してラメラ構造の面積を求め、糖の種類ごとの再生効果を評価した。 人工細胞間脂質 A セラミド(セラミドII、III、VI) 0.12g(各0.04g) 硫酸コレステロール 0.02g 水 0.25g B コレステロール 0.08g ステアリン酸 0.08g AとBをそれぞれ80℃で融解させた後、混合し10℃で10分間の超音波処理を行った。再度80℃で融解、混合し、10℃で10分間の超音波処理を行った。糖水溶液の条件 ラメラ構造を安定化させる機構として、ラメラ界面の安定化に構成単糖が持つe‐OH基の配向が寄与すると仮定し、同一の重量パーセント濃度で比較した。ラメラ構造の生成 20%の糖水溶液を調整し、人工細胞間脂質60mgに15μlを添加し、糖の終濃度を1%とした。80℃のウォーターバスで加熱し、よく混合した。その後、10℃で超音波を10分間と80℃のウォーターバスでの加熱10分間を2回繰り返すことでラメラ構造を生成させた。偏光顕微鏡観察 偏光顕微鏡:γ=530nm,BX50, OLYMPUS、倍率:200倍、観察範囲:約110μm×82μm、画像解析ソフト:WinROOF, 三谷商事社製評価方法 人工細胞間脂質を2mg採取してカバーガラスで均一に広げ、偏光顕微鏡にて観察した。偏光顕微鏡観察画像中の30μm×30μm(約110μm×82μmの画像を2枚使用し、マルターゼクロス像以外の異物を避けて10ヶ所選択した)を解析して、ラメラ構造の面積を測定した。10ヶ所の面積の平均値をラメラ構造面積とした。 更に以下の式を用いてラメラ構造再生促進率を求めた。ラメラ構造再生促進率(%)=100×[(糖のラメラ構造面積)−(糖無添加のラメラ構造面積)]/[糖無添加のラメラ構造面積] その結果を表7に示す。 構成単糖当たりのe-OH基の数による比較を行ったところ、二糖類以上の多糖類において、ラメラ構造再生効果は構成単糖当たりのe-OH基の数に依存してはいなかった。これは二糖類以上の多糖類において糖の立体構造によってラメラ界面に与える影響が異なることを示していると考えられた。 糖無添加(図4)と比較してリボースを除く全ての糖についてラメラ構造の形成が促進され、その効果はラフィノース(図5)が最も優れ、続いてグルコースである。[試験3]3.乾燥環境下における水分量変化試験試験方法 65℃に設定した乾燥機内で一晩乾燥させたラフィノースまたはグルコースを用いてそれぞれ5%の水溶液を調整した。細胞培養用ディッシュ(35mm2×10mm 、FALCON)の風体重量を測定し、水溶液を2ml加えてから再度、重量を測定、その重量差を水溶液の重量とした。このディッシュを室温50〜55℃、相対湿度28〜38%の比較的安定した環境下に置き、1、2、3、4時間後に重量を測定した。結果 ラフィノースおよびグルコース水溶液の重量は3時間で半分まで減少した(図6)。両者に統計的有意差は認められなかった。[試験4]4. 乾燥環境下における表皮角化細胞の細胞致死抑制試験試験方法 培養ヒト表皮角化細胞にラフィノースまたはグルコースを4%添加し、37℃で培養した。培養30分後に培養上清を除去することで気相曝露(0〜60分)を行い37℃で培養することで、乾燥環境下においた。MTTアッセイ法により細胞生存率を求め、細胞致死抑制効果を評価した。結果を図7に示す。結果 糖を添加しないとき、乾燥時間の増加に伴って表皮角化細胞の細胞生存率は低下した。ラフィノース添加培地で培養した細胞では、細胞生存率は約85%、グルコースでは約60%であり、ラフィノースによって乾燥による表皮角化細胞の障害を抑制された。[試験5]5. 乾燥荒れ肌のバリア機能回復試験試験方法 健常肌の男女ボランティア9名を対象とし、アセトン/エーテル処理(1:1、10分×2回)により、前腕内側部に人工的な乾燥荒れ肌状態を作成した。荒れ肌部位にはラフィノース無配合およびラフィノース3%配合化粧水を6日間、それぞれ連用した。連用前、3日後、6日後に角層水分量(SKICON−200EX、I.B.S.社)、経皮水分蒸散量(2ch水分蒸散モニターAS-TW、アサヒバイオメッド社)を測定して肌のバリア機能の回復を評価した。なお、角層水分量は荒れ肌処理後の値を、経皮水分蒸散量の評価は処理前の値に対する変化量を指標とした。結果 乾燥による荒れ肌状態に化粧水を連用すると肌の回復が促進された。角層水分量は2種の化粧水いずれについても同程度に増加し(図8 角層水分量)、経皮水分蒸散量はラフィノース3%配合化粧水を連用した場合、無配合化粧水と比較して有意に回復が促進された(図9 経皮水分蒸散量変化量)。 [試験6]6. ラフィノースの刺激防御試験試験方法 敏感肌男女14名を対象とし、ラフィノース無配合およびラフィノース3%配合化粧水を10日間、半顔ずつ連用した後、刺激感受性を比較した。刺激感受性の試験は1%乳酸を染み込ませた不織布を5分間左右に貼付し、被験者が30秒ごとに刺激の強さを7段階でスコアづけし(刺激スコア)、スコアの合計を比較した。結果 ラフィノース3%配合化粧水連用前後の刺激スコア合計の差は無配合化粧水と比較して有意に低くなっており(図10)、平均値は11.5と16.6であった。これらの結果から外的刺激に対して防御力の低い敏感肌者において、ラフィノースの有用性が示唆された。 [試験2〜6の評価] 化粧品において主に保湿剤として用いられている糖は、そのものの水分保持能力に関する研究が多くなされているが、糖のバリア機能に関連する作用を確認した発明は少ない。本試験2〜6によって次のことを知見し、確認することができた。人工角層細胞間脂質と水で構成されるラメラ構造の形成過程への糖の寄与を評価した結果、ラフィノースに優れたラメラ構造再生促進効果を認めた。乾燥荒れ肌状態に対してラフィノースを配合した化粧水を連用したとき、角層水分量の回復はラフィノース無配合と同程度にあった。一方、経皮水分蒸散量の回復はラフィノース配合品に有意な効果を認め、糖の中でもラフィノースが角層バリア機能の回復効果への寄与が高いことが示唆された。 また、乾燥環境下における表皮細胞の細胞生存率は、グルコースと比較して高い生存率を示しており、ラフィノースが角層のみならず、表皮における乾燥環境への防御効果においても有用であることを示唆している。このことはラフィノースを配合した化粧水を連用時の外的刺激に対する防御効果を裏付けていると考える。 以上の点から、特に、ラフィノースは乾燥によるバリア機能の低下した肌において有用な成分であることが確認できた。[試験7]7.グルコースとラフィノースを組み合わせて用いた場合のラメラ構造再生試験試験方法 実施例1と同様の試験を行った。添加する糖をグルコースとラフィノースとし、その配合比を変えて評価を行った。結果 偏光顕微鏡観察画像を解析して、ラメラ液晶の面積を測定した。面積が2000μm2以上を◎、1500μm2以上2000μm2未満を○、1500μm2未満を△として、ラメラ液晶の再生効果を3段階で評価した。結果を表2に示す。 グルコースとラフィノースを濃度比で4:1〜1:4、モル濃度比で13:1〜1:1.2の範囲内で組み合わせることにより、その範囲外で組み合わせて使用するよりも相乗的にラメラ構造再生効果が大きくなることがわかった。2週間連用試験による保湿効果試験方法 グルコースとラフィノースを重量比で5:3の比率で含有する処方例1とグルコースを含有するが、ラフィノースを含有しない比較例1を半顔ずつ二週間連用させた。また、グルコースとラフィノースを重量比で1:4の比率で含有する処方例2とグルコースを含有するが、ラフィノースを含有しない比較例2を半顔ずつ二週間連用させた。処方例1、比較例1を用いた連用試験(女性90名)において、使用前後のキメの評価と使用後のアンケートを実施した。処方例2、比較例2を用いた連用試験(女性62名)においては、使用後のアンケートのみ実施した。処方を表3に示す。 処方例1、比較例1の半顔ずつ2週間連用試験における使用前後のキメの評価 2週間連用試験前後の被験者の左右の頬のレプリカを山田粧業社製スキンキャストで採取した。 LED光源を仰角30°でレプリカに照射し、その陰影画像を実態顕微鏡(SZ-PT, OLYMPUS社製)で観察し、デジタル画像を取得した。その画像を白黒2値化し、エッジ処理を施し、皮溝で囲まれた部分の数(キメの数)を計数した。 2週間連用試験前後のキメの数の平均値を表4に示す。2週間連用試験後のキメの増加数を図3に示す。処方例1、比較例1ともにキメの数が増加したが、処方例1の方が、キメの数の増加が大きい。グルコースとラフィノースを組み合わせて配合した処方例1はグルコースのみ配合した比較例1よりも皮膚の角層細胞におけるラメラ構造を再生する効果が大きく、肌状態が改善した結果、キメの数が増大したと考えられる。処方例1、比較例1を半顔ずつ2週間連用した後のアンケート結果 以下の評価基準により、アンケートを実施した。(肌なじみ) 1点:悪い 2点:やや悪い 3点:どちらともいえない 4点:やや良い 5点:良い(しっとり感) 1点:しっとりしない 2点:あまりしっとりしない 3点:どちらともいえない 4点:ややしっとりした 5点:しっとりした(ふっくら感) 1点:ふっくらしない 2点:あまりふっくらしない 3点:どちらともいえない 4点:ややふっくらした 5点:ふっくらした(しっとり感の持続性) 1点:持続しない 2点:あまり持続しない 3点:どちらともいえない 4点:やや持続する 5点:持続する(総合評価) 1点:悪い 2点:やや悪い 3点:どちらともいえない 4点:やや良い 5点:良い アンケート結果を表5に示す。 グルコースとラフィノースを組み合わせて配合した処方例1はグルコースのみ配合した比較例1よりも「肌なじみ」、「しっとり感」、「ふっくら感」、「しっとり感の持続性」、「総合評価」のすべてにおいて優れていた。処方例2、比較例2を半顔ずつ2週間連用した後のアンケート結果前記処方例1、比較例1と同一の評価基準により、処方例2、比較例2を半顔ずつ2週間連用した後にアンケートを実施した。アンケート結果を表6に示す。 グルコースとラフィノースを組み合わせて配合した処方例2はグルコースのみ配合した比較例2よりも「肌なじみ」、「しっとり感」、「ふっくら感」、「しっとり感の持続性」、「総合評価」のすべてにおいて優れていた。 化粧水としての処方例を次に示す。 処方例3 化粧水 (成分) 配合量(質量%) グルコース 2.0 トレハロース 2.0 グリセリン 5.0 1,3−ブチレングリコール 10.0 カルボキシメチルデキストリンナトリウム 0.1 グリチルリチン酸ジカリウム 0.1 精製水 残余 乳液としての処方例を次に示す。 処方例4 乳液 (成分) 配合量(質量%) グルコース 4.0 メリビオース 1.0 グリセリン 8.0 1,3−ブチレングリコール 5.0 スクワラン 3.0 オリーブオイル 1.0 オクタン酸セチル 5.0 ステアリン酸 0.3 ポリジメチルシロキサン 0.5 ポリソルベート60 0.5 モノステアリン酸グリセリル 1.0 カルボキシビニルポリマー 0.1 水酸化カリウム 0.01 精製水 残余リボース水溶液を添加したときのラメラ液晶再生を示す偏光顕微鏡写真ラフィノース水溶液を添加したときのラメラ液晶再生を示す偏光顕微鏡写真処方例1及び比較例1の2週間連用試験後のキメの増加を示すグラフラメラ構造の形成促進効果(A:糖無添加)を示す偏光顕微鏡写真ラメラ構造の形成促進効果(B:ラフィノース1%添加)を示す偏光顕微鏡写真乾燥環境下における水分量変化を示すグラフ乾燥環境下における細胞致死抑制効果を示すグラフ角層水分量を示すグラフ経皮水分蒸散量変化量を示すグラフモデル化粧水連用後の刺激スコアの比較するグラフ グルコース及び/又はラフィノースを含有することを特徴とする皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。 グルコースと少糖類を含有することを特徴とする皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。 グルコースと少糖類の配合比率がモル濃度比で13:1〜1:1.2である請求項2に記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。 グルコースの配合量が0.1〜10質量%、少糖類の配合量が0.1〜10質量%である請求項2又は3に記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。 少糖類がメリビオース、トレハロース、ラフィノースから選ばれる1以上の少糖である請求項2乃至4のいずれかに記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。 請求項2乃至5のいずれかに記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤を含有する皮膚外用剤。 【課題】 皮膚角質細胞間脂質のラメラ構造を再生する。【解決手段】グルコース及び/又はラフィノース、あるいはグルコースと少糖類を含有する皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤【選択図】 なし


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特許公報(B2)_ラメラ構造再生剤及び皮膚外用剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ラメラ構造再生剤及び皮膚外用剤
出願番号:2004338292
年次:2012
IPC分類:A61K 8/60,A61Q 19/00,A61K 31/7004,A61K 31/702,A61P 17/16


特許情報キャッシュ

坂谷 志織 櫃田 廣子 桜井 哲人 JP 4854194 特許公報(B2) 20111104 2004338292 20041124 ラメラ構造再生剤及び皮膚外用剤 株式会社ファンケル 593106918 児玉 喜博 100105061 長谷部 善太郎 100122954 坂谷 志織 櫃田 廣子 桜井 哲人 JP 2004198563 20040705 20120118 A61K 8/60 20060101AFI20111221BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20111221BHJP A61K 31/7004 20060101ALI20111221BHJP A61K 31/702 20060101ALI20111221BHJP A61P 17/16 20060101ALI20111221BHJP JPA61K8/60A61Q19/00A61K31/7004A61K31/702A61P17/16 A61K 8/00−8/99 A61Q 1/00−99/00 CA/REGISTRY(STN) 特表2001−518886(JP,A) 特表2004−501069(JP,A) 特開2003−238336(JP,A) 特開平09−077650(JP,A) 特開平11−322574(JP,A) 特開2003−238341(JP,A) II. 化粧品の有効成分,化粧品ハンドブック,441-454 桜井 哲人 Tetsuhito Sakurai,特集 香粧品の新原料・新技術 (1), FRAGRANCE JOURNAL Vol.31, No.11,津野田 勲 ▲C▼フレグランス ジャーナル社,第31巻,41-46 3 2006045186 20060216 19 20070726 川合 理恵 本発明は、保湿効果に優れ、皮膚の乾燥や老化を防ぎ、皮膚にうるおいを与える外用剤に係わり、さらに詳しくは、皮膚表層部における角層細胞間脂質のラメラ構造を再生して皮膚の水分保持機能を高めることができる皮膚外用剤に関するものである。 角層細胞間脂質は角層細胞間にラメラ構造をとって存在し、角層水分保持機構に深く関与している。従って、このラメラ構造が正常に形成されていることが皮膚の潤いや、角層の柔軟性を維持するために必要不可欠である(非特許文献1 日本化粧品科学研究会編集、「機能性化粧品」、第1版、株式会社ジスク、1991年7月12日第2刷発行、p.235−252)。 ラメラ構造を有する皮膚外用剤を適用することにより、肌荒れを改善し、さらには皮膚外用剤を浸透させて皮膚のラメラ構造を正常化することを目的とする発明が知られている。例えば、ラメラ液晶を形成するステリン誘導体(特許文献1 特開平05−294989号公報)、脂質二分子膜とアミノ酸、高級脂肪酸、あるいは高級アルコールを含有するラメラ層を形成する皮膚外用剤(特許文献2 特開平07−285827号公報)、脂質二分子膜と脂肪族アルコールを含有する皮膚外用剤(特許文献3 特開2003−081809号公報)、ベタイン、S−アデノシルメチオニンを含有し、ラメラ構造を形成する美容用組成物(特許文献4 特表2004−501069号公報)、中性脂質と二重層成分を含有する組成物(特許文献5 特表2000−513706号公報)、脂質成分を角層の脂質ラメラに供給することを目的とするセラミド等とヒドロキシカルボン酸等を含有する組成物(特許文献6 特開平06−157283号公報)、ラメラ性液晶相を持つ水中油型エマルジョン(特許文献7 特表2001−518886号公報)が挙げられる。 また、ラメラ構造形成を促進・安定化する湿潤組成物としてコラーゲン・トリペプチドと2−ピロリドン−5−カルボン酸及び乳酸を含有する組成物が知られている(特許文献8 特開2001−064154号公報)。 本発明者らは、角層細胞間脂質のラメラ構造を再生することができれば、角層水分保持機能を回復して、皮膚にうるおいを与え、肌荒れや敏感肌を解消することができるものと考え、このようなラメラ構造の再生に関して鋭意研究を継続しており、皮膚の角層細胞におけるラメラ構造の再生機能を有する親水性ポリマーを配合した皮膚外用剤を開示している(特許文献9 特開2003−238341号公報)。特開平05−294989号公報特開平07−285827号公報特開2003−081809号公報特表2004−501069号公報特表2000−513706号公報特開平06−157283号公報特表2001−518886号公報特開2001−064154号公報特開2003−238341号公報日本化粧品科学研究会編集、「機能性化粧品」、第1版、株式会社ジスク、1991年7月12日第2刷発行、p.235−252 角層細胞間には、ラメラ構造を有する角層細胞間脂質が存在しており、水分保持や外部からの異物の侵入を防ぐバリア機能に深く係わっていることが明らかとなっている。すなわち、肌荒れ状態の皮膚や、肌への刺激に対してトラブルを起しやすい、いわゆる「敏感肌」には、このような角層細胞間のラメラ構造が消失したり、損傷を受けたりしていることが確認されており、角層細胞間脂質のラメラ構造のダメージが角層水分保持機能の減少を招き、皮膚の乾燥や肌荒れなどを生じさせるものと考えられる。 したがって、角層細胞間脂質のラメラ構造を再生することができれば、角層水分保持機能を回復して、皮膚にうるおいを与え、肌荒れや敏感肌を解消することができるものと考えられる。このようなラメラ構造の再生に関する検討については、本発明者等は研究開発を継続している。なお、上記のようなラメラ構造の損傷に基づく角層水分量の低下については、典型的な保湿剤であるグリセリンでは回復できないことが判明している。 本発明は、皮膚表層部における角層細胞間脂質のラメラ構造の上記のような機能に着目してなされたものであって、皮膚の水分保持機能を高めることができる角層細胞間脂質のラメラ構造を再生する剤及び新たな皮膚外用剤を提供することを目的としている。 本発明の主な構成は、次のとおりである。(1)グルコース及びラフィノースを含有し、グルコースとラフィノースの配合比率が濃度比で4:1〜1:4であることを特徴とする皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。(2)グルコースの配合量が0.1〜10質量%、ラフィノースの配合量が0.1〜10質量%である(1)に記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。(3)(1)又は(2)に記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤を含有する皮膚外用剤。 グルコースと少糖類を併用することにより、使用感に優れ、実用性の高い角層細胞におけるラメラ構造再生剤を実現した。皮膚外用剤、化粧料として実用性に優れている。ラメラ構造再生作用は、特定の配合量、配合比あるいは特定の少糖類を選択することにより顕著となる。 皮膚は様々な外的刺激から体を守るとともに、内側の水分の蒸発を防ぐバリア機能を有している。角層におけるバリア機能は、角層細胞間脂質から構成されるラメラ構造が大きく関与しており、剥離角層からラメラ構造を簡便に観察する手法を確立し、乾燥した肌状態においてラメラ構造が減少していることを実証した。角層細胞間脂質を構成するセラミド、コレステロールなどの成分と水の混合物をからラメラ構造(マルターゼクロス像)を観察できることは知られており、本手法を用いて角層のバリア機能に対して有効な成分がいくつか見出されている。 そこで、乾燥してバリア機能の低下した肌に対して有効な成分を探索することを目的として、保湿性の高い糖にターゲットを絞り、人工角層細胞間脂質による評価法を用いて有用な成分を探索した。結果、グルコースとラフィノースに優れた効果を見出し、ヒト試験においてもバリア機能回復効果を実証することができた。更に本成分の乾燥環境下における培養表皮細胞へのバリア効果にも有用な結果を得たので提案する。 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 本発明に係わる皮膚外用剤は、グルコース及び/又はラフィノース、あるいはグルコースと少糖類を配合してなるものである。 グルコースあるいはラフィノースの配合量としては、0.1〜10質量%、さらには0.5〜5質量%の範囲とすることがより好ましい。0.1質量%以下では角層細胞間脂質のラメラ構造の再生効果が十分ではなく、10質量%以上では、べたつきが大きくなるので使用感が悪い。 少糖類の配合量としては、0.1〜10質量%、さらには0.5〜5質量%の範囲とすることがより好ましい。0.1質量%以下では角層細胞間脂質のラメラ構造の再生効果が十分ではなく、10質量%以上では、べたつきが大きくなるので使用感が悪い。 グルコースと少糖類の配合比率はモル濃度比で13:1〜1:1.2が好ましく、その比率において角層細胞間脂質のラメラ構造の再生効果が相乗的に大きくなる。 また、グルコースを単独で使用すると、保湿感は高くなるが、「べたつき」も強くなり、使用感が悪い。少糖類を単独で使用すると、保湿感はあまり高くないが、さっぱりしている。グルコースと少糖類、特にグルコースとメリビオース、トレハロース、ラフィノースを併用することにより、保湿感が高く、かつ「べたつき」の少ない使用感を得ることができる。 少糖類としては、例えば、メリビオース、トレハロース、ラフィノース、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、ゲンチアノース、スタキオース、シクロデキストリン等が上げられる。少糖類は1種を単独で、あるいは2種以上を複合的に使用することができる。なお、少糖類の中でメリビオース、トレハロース、ラフィノースが特に角層細胞間脂質のラメラ構造の再生効果に優れている。 本発明に係わる皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、例えば洗顔料類、ローション類、乳液類、クリーム類、パック類などの皮膚外用剤に適用することができる。 本発明に係る上皮膚外用剤においては、上記親水性ポリマーに加えて、保湿剤、アミノ酸、ビタミン類、炭化水素、高級脂肪酸、エステル類、シリコン、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、pH調整剤、水等を必要に応じて適宜配合することができる。これらの成分はそれぞれ一種を用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。 保湿剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、乳酸ナトリウム、dl− ピロリドンカルボン酸塩、ヨクイニン抽出物、黒糖抽出物、大豆レシチン等が挙げられる。 アミノ酸として、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、トリプトファン、シスチン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルタミン、アスパラギン等の中性アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、及びアルギニン、ヒスチジン、リジン、ヒドロキシリジン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。 ビタミン類としては、ビタミンA,B1,B2,B6,C及びその誘導体、E及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン等が挙げられる。 炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィン、スクワラン、ワセリン等が挙げられる。 高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。 エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、2−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2− ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2− ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。 シリコンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状ポリシロキサン、3次元網目構造を形成しているシリコン樹脂等が挙げられる。 アニオン性界面活性剤としては、例えば、アシルグルタミン酸塩などのアシルアミノ酸塩、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸セッケン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩等が挙げられる。 カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム),塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体等が挙げられる。 両性界面活性剤としては、例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミタゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等の、イミダゾリン系両性界面活性剤、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。 非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリン、α, α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POE−ソルビタンモノステアレート、POE−ソルビタンモノオエレート、POE−ソルビタンテトラオレエート等の POEソルビタン脂肪酸エステル類、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビットペンタオレエート、POE−ソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POE−グリセリンモノステアレート、POE−グリセリンモノイソステアレート、POE−グリセリントリイソステアレート等の POEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEモノジオレエート、システアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、が挙げられる。 pH調整剤としては乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン−リン酸2水素ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。[試験1]1.糖類を単独で用いた場合のラメラ構造再生試験試験方法 人工細胞間脂質を作成し、そこに糖水溶液を加えてラメラ構造を再生させた。偏光顕微鏡にて観察した画像を二値化してラメラ構造の面積を求め、糖の種類ごとの再生効果を評価した。人工細胞間脂質 A セラミド 0.12g 水 0.72g B コレステロール 0.08g ステアリン酸 0.08gA、Bをそれぞれ80℃で溶解させた後、混合し、10℃に冷却して超音波を10分照射した。再度80℃で溶解、混合し、10℃に冷却して超音波を10分照射した。糖水溶液 0.25Mの各種糖水溶液を作成した。ラメラ構造を安定化させる機構として、ラメラ界面に糖が配向することを推測し、ラメラ再生効果は分子数に依存すると仮定し、同一のモル濃度で比較した。ラメラ構造の生成 人工細胞間脂質を10mg採取し、糖水溶液を20μl添加し、80℃のウォーターバスで加熱し、よく混合した。その後、10℃で超音波を10分間と80℃のウォーターバスでの加熱10分間を4回繰り返すことでラメラ構造を生成させた。偏光顕微鏡観察 偏光顕微鏡:γ=530nm,BX50, OLYMPUS、倍率:100倍、観察範囲:約220μm×164μm、画像解析ソフト:WinROOF, 三谷商事社製結果 偏光顕微鏡観察画像を解析して、ラメラ液晶の面積を測定した。面積が1500μm2以上を◎、1000μm2以上1500μm2未満を○、1000μm2未満を△として、ラメラ液晶の再生効果を3段階で評価した。結果を表1に示す。また、リボースとラフィノースの偏光顕微鏡画像を図1、2に示す。 単糖の中でラメラ構造再生効果が大きいのはグルコースであった。グルコースは表中の他の単糖と比べてe−OH値(エクアトリアルOH基の数を溶液中に存在する種々のコンホメーションの割合から比例配分によって求めた値)が大きい。スクロース、メリビオース、トレハロース(二糖類)、ラフィノース(三糖類)で比較すると、ラメラ構造再生効果が大きいものから順番に並べるとラフィノース、トレハロース、メリビオース、スクロースとなり、e−OHの大きさの順番と一致している。従って、e−OHの値が大きいほどラメラ構造再生効果が大きい。α−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンは分子量が大きいので、分子内のOHのうちでラメラ構造に配向できるOHの比率が低下する。そのために、同じモル濃度では、e−OHの値が大きいのにもかかわらず、二糖類、三糖類と比べてラメラ構造再生効果が小さい。[試験2]2.糖のラメラ構造再生試験人工細胞間脂質を用いた評価方法を検討した。試験方法人工細胞間脂質を作成し、そこに糖水溶液を加えてラメラ構造を再生させた。偏光顕微鏡にて観察した画像を二値化してラメラ構造の面積を求め、糖の種類ごとの再生効果を評価した。 人工細胞間脂質 A セラミド(セラミドII、III、VI) 0.12g(各0.04g) 硫酸コレステロール 0.02g 水 0.25g B コレステロール 0.08g ステアリン酸 0.08g AとBをそれぞれ80℃で融解させた後、混合し10℃で10分間の超音波処理を行った。再度80℃で融解、混合し、10℃で10分間の超音波処理を行った。糖水溶液の条件 ラメラ構造を安定化させる機構として、ラメラ界面の安定化に構成単糖が持つe‐OH基の配向が寄与すると仮定し、同一の重量パーセント濃度で比較した。ラメラ構造の生成 20%の糖水溶液を調整し、人工細胞間脂質60mgに15μlを添加し、糖の終濃度を1%とした。80℃のウォーターバスで加熱し、よく混合した。その後、10℃で超音波を10分間と80℃のウォーターバスでの加熱10分間を2回繰り返すことでラメラ構造を生成させた。偏光顕微鏡観察 偏光顕微鏡:γ=530nm,BX50, OLYMPUS、倍率:200倍、観察範囲:約110μm×82μm、画像解析ソフト:WinROOF, 三谷商事社製評価方法 人工細胞間脂質を2mg採取してカバーガラスで均一に広げ、偏光顕微鏡にて観察した。偏光顕微鏡観察画像中の30μm×30μm(約110μm×82μmの画像を2枚使用し、マルターゼクロス像以外の異物を避けて10ヶ所選択した)を解析して、ラメラ構造の面積を測定した。10ヶ所の面積の平均値をラメラ構造面積とした。 更に以下の式を用いてラメラ構造再生促進率を求めた。ラメラ構造再生促進率(%)=100×[(糖のラメラ構造面積)−(糖無添加のラメラ構造面積)]/[糖無添加のラメラ構造面積] その結果を表7に示す。 構成単糖当たりのe-OH基の数による比較を行ったところ、二糖類以上の多糖類において、ラメラ構造再生効果は構成単糖当たりのe-OH基の数に依存してはいなかった。これは二糖類以上の多糖類において糖の立体構造によってラメラ界面に与える影響が異なることを示していると考えられた。 糖無添加(図4)と比較してリボースを除く全ての糖についてラメラ構造の形成が促進され、その効果はラフィノース(図5)が最も優れ、続いてグルコースである。[試験3]3.乾燥環境下における水分量変化試験試験方法 65℃に設定した乾燥機内で一晩乾燥させたラフィノースまたはグルコースを用いてそれぞれ5%の水溶液を調整した。細胞培養用ディッシュ(35mm2×10mm 、FALCON)の風体重量を測定し、水溶液を2ml加えてから再度、重量を測定、その重量差を水溶液の重量とした。このディッシュを室温50〜55℃、相対湿度28〜38%の比較的安定した環境下に置き、1、2、3、4時間後に重量を測定した。結果 ラフィノースおよびグルコース水溶液の重量は3時間で半分まで減少した(図6)。両者に統計的有意差は認められなかった。[試験4]4. 乾燥環境下における表皮角化細胞の細胞致死抑制試験試験方法 培養ヒト表皮角化細胞にラフィノースまたはグルコースを4%添加し、37℃で培養した。培養30分後に培養上清を除去することで気相曝露(0〜60分)を行い37℃で培養することで、乾燥環境下においた。MTTアッセイ法により細胞生存率を求め、細胞致死抑制効果を評価した。結果を図7に示す。結果 糖を添加しないとき、乾燥時間の増加に伴って表皮角化細胞の細胞生存率は低下した。ラフィノース添加培地で培養した細胞では、細胞生存率は約85%、グルコースでは約60%であり、ラフィノースによって乾燥による表皮角化細胞の障害を抑制された。[試験5]5. 乾燥荒れ肌のバリア機能回復試験試験方法 健常肌の男女ボランティア9名を対象とし、アセトン/エーテル処理(1:1、10分×2回)により、前腕内側部に人工的な乾燥荒れ肌状態を作成した。荒れ肌部位にはラフィノース無配合およびラフィノース3%配合化粧水を6日間、それぞれ連用した。連用前、3日後、6日後に角層水分量(SKICON−200EX、I.B.S.社)、経皮水分蒸散量(2ch水分蒸散モニターAS-TW、アサヒバイオメッド社)を測定して肌のバリア機能の回復を評価した。なお、角層水分量は荒れ肌処理後の値を、経皮水分蒸散量の評価は処理前の値に対する変化量を指標とした。結果 乾燥による荒れ肌状態に化粧水を連用すると肌の回復が促進された。角層水分量は2種の化粧水いずれについても同程度に増加し(図8 角層水分量)、経皮水分蒸散量はラフィノース3%配合化粧水を連用した場合、無配合化粧水と比較して有意に回復が促進された(図9 経皮水分蒸散量変化量)。 [試験6]6. ラフィノースの刺激防御試験試験方法 敏感肌男女14名を対象とし、ラフィノース無配合およびラフィノース3%配合化粧水を10日間、半顔ずつ連用した後、刺激感受性を比較した。刺激感受性の試験は1%乳酸を染み込ませた不織布を5分間左右に貼付し、被験者が30秒ごとに刺激の強さを7段階でスコアづけし(刺激スコア)、スコアの合計を比較した。結果 ラフィノース3%配合化粧水連用前後の刺激スコア合計の差は無配合化粧水と比較して有意に低くなっており(図10)、平均値は11.5と16.6であった。これらの結果から外的刺激に対して防御力の低い敏感肌者において、ラフィノースの有用性が示唆された。 [試験2〜6の評価] 化粧品において主に保湿剤として用いられている糖は、そのものの水分保持能力に関する研究が多くなされているが、糖のバリア機能に関連する作用を確認した発明は少ない。本試験2〜6によって次のことを知見し、確認することができた。人工角層細胞間脂質と水で構成されるラメラ構造の形成過程への糖の寄与を評価した結果、ラフィノースに優れたラメラ構造再生促進効果を認めた。乾燥荒れ肌状態に対してラフィノースを配合した化粧水を連用したとき、角層水分量の回復はラフィノース無配合と同程度にあった。一方、経皮水分蒸散量の回復はラフィノース配合品に有意な効果を認め、糖の中でもラフィノースが角層バリア機能の回復効果への寄与が高いことが示唆された。 また、乾燥環境下における表皮細胞の細胞生存率は、グルコースと比較して高い生存率を示しており、ラフィノースが角層のみならず、表皮における乾燥環境への防御効果においても有用であることを示唆している。このことはラフィノースを配合した化粧水を連用時の外的刺激に対する防御効果を裏付けていると考える。 以上の点から、特に、ラフィノースは乾燥によるバリア機能の低下した肌において有用な成分であることが確認できた。[試験7]7.グルコースとラフィノースを組み合わせて用いた場合のラメラ構造再生試験試験方法 実施例1と同様の試験を行った。添加する糖をグルコースとラフィノースとし、その配合比を変えて評価を行った。結果 偏光顕微鏡観察画像を解析して、ラメラ液晶の面積を測定した。面積が2000μm2以上を◎、1500μm2以上2000μm2未満を○、1500μm2未満を△として、ラメラ液晶の再生効果を3段階で評価した。結果を表2に示す。 グルコースとラフィノースを濃度比で4:1〜1:4、モル濃度比で13:1〜1:1.2の範囲内で組み合わせることにより、その範囲外で組み合わせて使用するよりも相乗的にラメラ構造再生効果が大きくなることがわかった。2週間連用試験による保湿効果試験方法 グルコースとラフィノースを重量比で5:3の比率で含有する処方例1とグルコースを含有するが、ラフィノースを含有しない比較例1を半顔ずつ二週間連用させた。また、グルコースとラフィノースを重量比で1:4の比率で含有する処方例2とグルコースを含有するが、ラフィノースを含有しない比較例2を半顔ずつ二週間連用させた。処方例1、比較例1を用いた連用試験(女性90名)において、使用前後のキメの評価と使用後のアンケートを実施した。処方例2、比較例2を用いた連用試験(女性62名)においては、使用後のアンケートのみ実施した。処方を表3に示す。 処方例1、比較例1の半顔ずつ2週間連用試験における使用前後のキメの評価 2週間連用試験前後の被験者の左右の頬のレプリカを山田粧業社製スキンキャストで採取した。 LED光源を仰角30°でレプリカに照射し、その陰影画像を実態顕微鏡(SZ-PT, OLYMPUS社製)で観察し、デジタル画像を取得した。その画像を白黒2値化し、エッジ処理を施し、皮溝で囲まれた部分の数(キメの数)を計数した。 2週間連用試験前後のキメの数の平均値を表4に示す。2週間連用試験後のキメの増加数を図3に示す。処方例1、比較例1ともにキメの数が増加したが、処方例1の方が、キメの数の増加が大きい。グルコースとラフィノースを組み合わせて配合した処方例1はグルコースのみ配合した比較例1よりも皮膚の角層細胞におけるラメラ構造を再生する効果が大きく、肌状態が改善した結果、キメの数が増大したと考えられる。処方例1、比較例1を半顔ずつ2週間連用した後のアンケート結果 以下の評価基準により、アンケートを実施した。(肌なじみ) 1点:悪い 2点:やや悪い 3点:どちらともいえない 4点:やや良い 5点:良い(しっとり感) 1点:しっとりしない 2点:あまりしっとりしない 3点:どちらともいえない 4点:ややしっとりした 5点:しっとりした(ふっくら感) 1点:ふっくらしない 2点:あまりふっくらしない 3点:どちらともいえない 4点:ややふっくらした 5点:ふっくらした(しっとり感の持続性) 1点:持続しない 2点:あまり持続しない 3点:どちらともいえない 4点:やや持続する 5点:持続する(総合評価) 1点:悪い 2点:やや悪い 3点:どちらともいえない 4点:やや良い 5点:良い アンケート結果を表5に示す。 グルコースとラフィノースを組み合わせて配合した処方例1はグルコースのみ配合した比較例1よりも「肌なじみ」、「しっとり感」、「ふっくら感」、「しっとり感の持続性」、「総合評価」のすべてにおいて優れていた。処方例2、比較例2を半顔ずつ2週間連用した後のアンケート結果前記処方例1、比較例1と同一の評価基準により、処方例2、比較例2を半顔ずつ2週間連用した後にアンケートを実施した。アンケート結果を表6に示す。 グルコースとラフィノースを組み合わせて配合した処方例2はグルコースのみ配合した比較例2よりも「肌なじみ」、「しっとり感」、「ふっくら感」、「しっとり感の持続性」、「総合評価」のすべてにおいて優れていた。 化粧水としての処方例を次に示す。 処方例3 化粧水 (成分) 配合量(質量%) グルコース 2.0 トレハロース 2.0 グリセリン 5.0 1,3−ブチレングリコール 10.0 カルボキシメチルデキストリンナトリウム 0.1 グリチルリチン酸ジカリウム 0.1 精製水 残余 乳液としての処方例を次に示す。 処方例4 乳液 (成分) 配合量(質量%) グルコース 4.0 メリビオース 1.0 グリセリン 8.0 1,3−ブチレングリコール 5.0 スクワラン 3.0 オリーブオイル 1.0 オクタン酸セチル 5.0 ステアリン酸 0.3 ポリジメチルシロキサン 0.5 ポリソルベート60 0.5 モノステアリン酸グリセリル 1.0 カルボキシビニルポリマー 0.1 水酸化カリウム 0.01 精製水 残余リボース水溶液を添加したときのラメラ液晶再生を示す偏光顕微鏡写真ラフィノース水溶液を添加したときのラメラ液晶再生を示す偏光顕微鏡写真処方例1及び比較例1の2週間連用試験後のキメの増加を示すグラフラメラ構造の形成促進効果(A:糖無添加)を示す偏光顕微鏡写真ラメラ構造の形成促進効果(B:ラフィノース1%添加)を示す偏光顕微鏡写真乾燥環境下における水分量変化を示すグラフ乾燥環境下における細胞致死抑制効果を示すグラフ角層水分量を示すグラフ経皮水分蒸散量変化量を示すグラフモデル化粧水連用後の刺激スコアの比較するグラフ グルコース及びラフィノースを含有し、グルコースとラフィノースの配合比率が濃度比で4:1〜1:4であることを特徴とする皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。 グルコースの配合量が0.1〜10質量%、ラフィノースの配合量が0.1〜10質量%である請求項1に記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤。 請求項1又は2に記載の皮膚の角層細胞におけるラメラ構造再生剤を含有する皮膚外用剤。


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