タイトル: | 公開特許公報(A)_内分泌攪乱化学物質モニタリング植物、その生産に使用するDNA、発現ベクター、同植物の生産方法、および、同植物を用いたモニタリング方法 |
出願番号: | 2004319828 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 15/09,A01H 1/00,A01H 5/00,G01N 33/15,G01N 33/50 |
乾 秀之 下村 直史 大川 秀郎 JP 2006129733 公開特許公報(A) 20060525 2004319828 20041102 内分泌攪乱化学物質モニタリング植物、その生産に使用するDNA、発現ベクター、同植物の生産方法、および、同植物を用いたモニタリング方法 国立大学法人神戸大学 504150450 圓谷 徹 100115026 乾 秀之 下村 直史 大川 秀郎 C12N 15/09 20060101AFI20060421BHJP A01H 1/00 20060101ALI20060421BHJP A01H 5/00 20060101ALI20060421BHJP G01N 33/15 20060101ALI20060421BHJP G01N 33/50 20060101ALI20060421BHJP JPC12N15/00 AA01H1/00 AA01H5/00 AG01N33/15 ZG01N33/50 Z 10 1 OL 18 特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年11月10日 財団法人地球環境産業技術研究機構主催の「平成16年度 プログラム研究開発・優秀研究企画成果報告会」において文書をもって発表 2B030 2G045 4B024 2B030AA02 2B030AD20 2B030CA06 2B030CA17 2B030CA19 2B030CB02 2G045AA34 2G045AA35 2G045CB20 2G045DA13 2G045DA36 4B024AA08 4B024AA11 4B024BA63 4B024BA80 4B024CA04 4B024DA01 4B024EA04 4B024FA02 4B024FA10 4B024GA11 本発明は、環境ホルモンと呼ばれる内分泌攪乱化学物質(Endocrine disruptor:ED)を高感度で感受する形質転換植物、その生産に使用する組換え転写因子をコードするDNA、発現ベクター、同植物の生産方法、および、同植物を用いたモニタリング方法に関するものである。 産業の発展と生活習慣の変化に伴い、さまざまな化学物質による環境の汚染が拡大している。これら化学物質の中でも、いわゆる環境ホルモンと呼ばれる内分泌攪乱化学物質は、極低濃度で、生態系および人体の健康に影響を及ぼすことが心配されている。内分泌攪乱化学物質には、ダイオキシン類、工業化学品やある種の残留農薬などが含まれており、環境汚染のレベルは極低濃度である。 これら環境を汚染している内分泌攪乱化学物質のモニタリングは、従来、機器分析により行われてきた。確かに、機器分析は感度や精度に優れているが、高価な設備と熟練技術を必要とするため時間と経費がかかる。そこで、迅速かつ簡便に、汚染現場をモニタリングする方法の開発が求められている。 ところで、植物は発達した根系を利用して、広範囲から極低濃度の化学物質を吸収・蓄積することができる。また、植物は環境下での管理が容易で、環境安全性が高いという利点がある。さらに、生物機能に基づく新技術の開発はパブリックアクセプタンスを得やすい。 内分泌攪乱化学物質のうち、エストロジェン様作用を示す化合物は動物体内に取り込まれるとエストロジェン受容体(Estrogen Receptor:ER)と結合し、核内で遺伝子上流の標的配列に結合することによって標的遺伝子を誘導発現する。 これまでに、ヒトのエストロジェン受容体(hER)のリガンド結合領域と、大腸菌由来のLexAタンパク質のDNA結合に関与する領域の一部であるLexA DNA結合領域(LexA)、および、ヘルペスシンプレックスウイルス由来のVP16タンパク質の遺伝子転写に関与する領域の一部であるVP16転写活性化領域(VP16)を組み合わせた組換え型転写因子をコードするDNAが創製されている。そして、これと共にレポーター遺伝子として、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をシロイヌナズナ植物に導入した組換え植物XVEが作出された(下記の非特許文献1)。この形質転換シロイヌナズナ植物XVEは、17β−エストラジオール(E2)を根から吸収することにより、GFP遺伝子の転写を誘導し、発現した。 上記形質転換シロイヌナズナ植物XVEは、LexA−VP16−hER(XVE)の順に融合した転写因子の遺伝子を恒常的に発現し、これにリガンドである内分泌攪乱化学物質が細胞内に取り込まれて結合するとレポーター遺伝子であるGFP遺伝子の上流部分の標的配列に結合し、一過的な遺伝子誘導発現を引き起こす(図9参照)。本形質転換シロイヌナズナ植物は、環境中およそ2ppbのE2の存在下でGFP遺伝子の転写を誘導し、GFPに基づく蛍光を発した。 一方、同様にLexA−VP16−hER(XVE)を恒常的に発現するが、リガンド存在下で特異的にCre組換え酵素(Creレコンビナーゼ)遺伝子を誘導発現する形質転換シロイヌナズナ植物CLXが作出された(下記の非特許文献2)。本形質転換植物は、リガンド存在下でバクテリオファージP1由来の遺伝子組換え酵素Creを発現し、loxP部位を特異的に切断することによってGFP遺伝子を恒常的に発現させる機能を有する(図10参照)。その際、カナマイシン耐性遺伝子が特異的に切断されることから、誘導後、マーカーフリーの形質転換植物となる。 これまでにE2に関しては、蒸散が活発になると考えられる鉢上げ条件で組換え植物XVEおよび組換え植物CLXをE2を含むバーミキュライトで育成したところ、それぞれ0.001ppbおよび0.1ppbのE2を検出し、従来の検出限界に比べて約2,000倍の感度向上を達成した。 一方、環境中においては環境ホルモン類の一種である工業化学品の4‐t‐オクチルフェノール(OP)や4‐ノニルフェノール(NP)といったアルキルフェノール類が頻繁に検出される(表1)。 したがって、上記アルキルフェノール類をモニタリングすることは非常に重要である。固形培地上で、4‐t‐オクチルフェノールに対しては組換え植物XVEで1,000ppb、組換え植物CLXで100ppbを検出し、4‐ノニルフェノールに対しては植物XVEで1,000ppb、植物CLXで1,000ppbを検出できた。しかしながら、実際に環境中で検出されている濃度は、4‐t‐オクチルフェノールで0.92ppb、4‐ノニルフェノールで8.4ppbとさらに低濃度であり、これらのアルキルフェノール類をモニターする為には検出感度を向上させる必要があった。 これまで用いたヒトER(hER)は、E2などの内分泌攪乱化学物質に対する結合親和性は高いものの、実際に環境下で高頻度に検出されるアルキルフェノール類に対しては親和性が低いという問題があった。Zuo et al., The Plant Journal (2000) 24(2) 265-273.Zuo et al., Nature Biotechnology (2000) 19 157-161. 本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、環境中に極微量に存在する内分泌攪乱化学物質を高感度で感受するモニタリング用植物、その生産に使用するDNA、発現ベクター等を提供することにある。 本発明者らは、従来のヒト・エストロジェン受容体(hER)に比してより高感度の内分泌攪乱化学物質に対する受容体の探索を行った結果、魚類の内分泌攪乱化学物質に対する受容体遺伝子、特にメダカ由来のエストロジェン受容体(mER)遺伝子を組み込んだトランスジェニック植物は、内分泌攪乱化学物質に対して極めて高い感受性を有し、環境中に極微量に存在する内分泌攪乱化学物質を高感度で検出できること等を見出し、本発明を完成させるに至った。 即ち、本発明は、産業上有用な発明として、下記A)〜J)の発明を包含するものである。 A) DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域の3つの領域を有する組換え転写因子をコードするDNA。本発明のDNAは、組換え転写因子コード配列(組換え転写因子遺伝子)として、後述の第一構築物の要素となるものである。 B) 魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域が、メダカ由来のエストロジェン受容体アルファのリガンド結合に関与する領域であることを特徴とする上記A)記載のDNA。メダカ由来のエストロジェン受容体(medaka Estrogen Receptor:以下、略して「mER」という場合がある。)は、アルキルフェノール類に対する結合親和性が高いので、本発明の組換え転写因子にmERのリガンド結合領域を用いることで、アルキルフェノール類などの内分泌攪乱化学物質を高感度でモニタリングすることができる。 C) DNA結合領域が、大腸菌由来のLexAタンパク質のDNA結合領域であり、転写活性化領域が、ヘルペスシンプレックスウイルス由来のVP16タンパク質の遺伝子転写に関与する領域であることを特徴とする上記A)記載のDNA。 D) 組換え転写因子が、さらに核移行シグナルを有することを特徴とする上記A)記載のDNA。核移行シグナルは、本発明の組換え転写因子においてmERなど魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域のN末端側に配置されることが好ましい(図1参照)。 E) プロモーター配列の下流に配置された、DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域からなる組換え転写因子コード配列、並びにターミネーター配列を含む第一構築物と、 レポーター遺伝子配列を有し、細胞内で内分泌攪乱化学物質と上記第一構築物の翻訳産物との複合体によりレポーター遺伝子の転写が開始され、当該遺伝子を細胞内で発現させる第二構築物と、を備えた発現ベクター。 F) 内分泌攪乱化学物質と第一構築物の翻訳産物との複合体によりCreレコンビナーゼ遺伝子が発現され、当該遺伝子発現を介して、レポーター遺伝子の転写が細胞内で恒常的に行われるように構築されていることを特徴とする上記E)記載の発現ベクター。 G) プロモーター配列の下流に配置された、DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域からなる組換え転写因子コード配列、並びにターミネーター配列からなる第一構築物と、レポーター遺伝子配列を有し、細胞内で内分泌攪乱化学物質と上記第一構築物の翻訳産物との複合体によりレポーター遺伝子の転写が開始され、当該遺伝子を細胞内で発現させる第二構築物と、を備えた発現ベクターにより形質転換され、植物内に侵入した内分泌攪乱化学物質を感受してレポーター遺伝子を発現する形質転換植物。したがって、本発明の形質転換植物(トランスジェニック植物・組換え植物)は、内分泌攪乱化学物質のモニタリング(用)植物として利用できる。 H) 上記G)記載の形質転換植物の生産方法であって、上記発現ベクターでアグロバクテリウムを形質転換し、このアグロバクテリウムを植物細胞に感染させ、その後、植物体に再分化させる工程を含む生産方法。 I) 上記G)記載の形質転換植物を用いた、環境中の内分泌攪乱化学物質のモニタリング方法。 J) アルキルフェノール類化合物のモニタリングに使用することを特徴とする、上記I)記載のモニタリング方法。 上記のように、本発明の形質転換植物は、第一構築物と第二構築物を有する発現ベクターにより形質転換され、植物内に内分泌攪乱化学物質が侵入するとレポーター遺伝子の転写が開始されるので、当該遺伝子の転写・発現を任意の方法で検出することにより、環境中に存在するアルキルフェノール類などの内分泌攪乱化学物質を高感度でモニタリングすることができる。 また、上記モニタリング用植物の生産に使用されるDNA、発現ベクター、同植物の生産方法、および、同植物を用いたモニタリング方法が提供される。 以下、本発明の好ましい態様について説明する。なお、本明細書および図面において、アミノ酸等を略号で表記する場合、その表記はIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、例えば以下のとおりである。また、アミノ酸に関し光学異性体があり得る場合、特に明示しなければL体を表すものとする。 アミノ酸については、GまたはGly:グリシン、AまたはAla:アラニン、VまたはVal:バリン、LまたはLeu:ロイシン、IまたはIle:イソロイシン、SまたはSer:セリン、TまたはThr:スレオニン、CまたはCys:システイン、MまたはMet:メチオニン、EまたはGlu:グルタミン酸、DまたはAsp:アスパラギン酸、KまたはLys:リジン、RまたはArg:アルギニン、HまたはHis:ヒスチジン、FまたはPhe:フェニルアラニン、YまたはTyr:チロシン、WまたはTrp:トリプトファン、PまたはPro:プロリン、NまたはAsn:アスパラギン、QまたはGln:グルタミンである。また、塩基については、Aまたはa:アデニン、Gまたはg:グアニン、Tまたはt:チミン、Cまたはc:シトシンである。[1]本発明の形質転換植物の生産に使用するDNAと発現ベクター 本発明は、上述のように、プロモーター配列の下流に配置された、DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域からなる組換え転写因子コード配列、並びにターミネーター配列からなる第一構築物と、レポーター遺伝子配列を有し、細胞内で内分泌攪乱化学物質と上記第一構築物の翻訳産物(発現産物)との複合体によりレポーター遺伝子の転写が開始され、当該遺伝子を細胞内で発現させる第二構築物と、を備えた発現ベクターにより形質転換され、植物内に侵入した内分泌攪乱化学物質を感受してレポーター遺伝子を発現する、内分泌攪乱化学物質モニタリング用形質転換植物を提供する。以下ではまず、本発明の形質転換植物の生産に使用するDNAと発現ベクターについて説明する。 本発明の形質転換植物に使用される発現ベクターは、第一構築物と第二構築物とを有し、第一構築物は、(1)プロモーター配列、(2)当該プロモーター配列の下流に配置された、本発明の組換え転写因子をコードするDNA(すなわち、DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域の3つの領域を有する組換え転写因子コード配列)、並びに、(3)ターミネーター配列を含むよう構築されている。 第一構築物において用いられるプロモーター配列としては、植物発現ベクターに通常用いられるプロモーターを用いることができ、特に制限はない。例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの−90領域とGCCACGTGCC配列を4つ結合した合成プロモーター(G10-90プロモーター)、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子プロモーターなどを用いることができる。 DNA結合領域としては、第二構築物のプロモーター配列に結合する配列であればよく、例えば、大腸菌由来のLexAタンパク質のDNA結合に関与する領域(LexA)、GAL4DNA結合領域、アリルハイドロカーボンレセプターのDNA結合領域、エストロジェンレセプターのDNA結合領域などを用いることができる。 LexAのDNA結合に関与する領域としては、全長202アミノ酸からなるLexAのうち87アミノ酸(図7(b)下線部)をDNA結合領域の最小単位として使用することができる。 魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域(以下、単に「リガンド結合領域」という場合がある。)としては、魚類のアリルハイドロカーボン受容体のリガンド結合領域の使用なども考えられるが、特にメダカ由来のエストロジェン受容体のリガンド結合領域が、内分泌攪乱化学物質に対して極めて高い感受性を有し、環境中に極微量に存在する内分泌攪乱化学物質を高感度で検出でき好適である。 より具体的には、メダカ(Oryzias latipes)由来のエストロジェン受容体(mER)アルファのリガンド結合に関与する領域を用いることができる。mERのリガンド結合領域としては、アミノ酸配列の第282番目から第620番目までの領域、あるいは、第301番目から第582番目までの領域を好適に使用することができる(図6参照)。mERのリガンド結合領域を本発明の組換え転写因子に使用することで、環境汚染等で問題となる各種の内分泌攪乱化学物質、例えば、環境ホルモン類の一種である工業化学品の4‐t‐オクチルフェノール(OP)や4‐ノニルフェノール(NP)等のアルキルフェノール類およびビスフェノールAなどの内分泌攪乱化学物質を高感度でモニタリングすることができる。換言すれば、mERに対して、リガンドとして高い親和性で結合する物質を高感度でモニタリングすることができる。 また、メダカのほかに、ゼブラフィッシュ、コイ、トーチなど、他の魚類のエストロジェン受容体のリガンド結合領域を使用した場合にも、内分泌攪乱化学物質を良好にモニタリングできると考えられる。 転写活性化領域としては、ヘルペスシンプレックスウイルス由来のVP16タンパク質の遺伝子転写に関与する領域(VP16)、アリルハイドロカーボンレセプターの転写活性化領域、エストロジェンレセプターの転写活性化領域などを用いることができる。例えば、VP16は全長490アミノ酸からなるが、そのうち78アミノ酸を転写活性化領域の最小単位として使用することができる(図8(b)下線部)。 第一構築物では、プロモーターの下流に、5’側から、(1)DNA結合領域、(2)リガンド結合領域、(3)転写活性化領域、の順番に各領域をコードするDNAが配置され、あるいは、5’側から、(1)DNA結合領域、(2)転写活性化領域、(3)リガンド結合領域、の順番に各領域をコードするDNAが配置され、最後にターミネーターが配置される。このような第一構築物の配置上の相違に応じて、本発明の組換え転写因子の構造も互いに異なるものとなる(図1参照)。 ターミネーターとしては、植物用発現ベクターで使用される公知のもの、例えば、エンドウrbcS E9 polyA付加配列、エンドウrbcS 3A polyA付加配列、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターなどを用いることができる。 また、第一構築物では、核移行シグナル(NLS)コード配列、例えば、タンパク質を核内へ移行させるためのアミノ酸配列「PKKKRKV」をコードする配列をリガンド結合領域の上流に、すなわち、DNA結合領域、これに続いて核移行シグナル→リガンド結合領域→転写活性化領域(図1参照)、あるいは、転写活性化領域→核移行シグナル→リガンド結合領域の順番に、各領域をコードするDNAを配置することが好ましい。 第二構築物は、リガンドとなる内分泌攪乱化学物質と、第一構築物の発現によって生産される転写因子との複合体によって、転写が開始されるレポーター遺伝子を含むDNA配列である。具体的には、第一構築物の翻訳産物(発現産物)であるDNA結合領域と特異的に結合し、転写活性化領域によってその支配下にある遺伝子を転写させるプロモーター配列と、この下流に配置されたレポーター遺伝子とを含むDNA配列である。 上記プロモーター配列としては、DNA結合領域と特異的に結合し、転写活性化領域によってその支配下にある遺伝子を転写させるプロモーターであれば特に制限はなく、当業者に知られた組み合わせを適宜選択して使用できる。例えば、DNA結合領域がLexAタンパク質のDNA結合領域の場合には、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター−46領域にLexAオペレーター配列(CTGTA及びTACAGを最小単位として)を8個連結したプロモーター配列(8×OLexA−46)の組み合わせを用いることができる。また、GAL4DNA結合領域とGAL4標的配列、アリルハイドロカーボン受容体のDNA結合領域と薬物応答エレメント(XRE)、エストロジェン受容体のDNA結合領域とエストロジェン応答エレメント(ERE)などの組み合わせを用いることができる。 レポーター遺伝子としては、その転写・発現を検出できるものであれば特に制限はなく、例えば、GFP遺伝子、β−グルクロニダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、チトクロームP450遺伝子CYP75AやCYP75B遺伝子などを使用することができる。そして、レポーター遺伝子の発現による蛍光、染色、発光、花色などの変化の検出、あるいは、レポーター遺伝子のmRNAの定量、タンパク質の検出などによりレポーター遺伝子の転写・発現を評価することによって、対象とする内分泌攪乱化学物質をモニタリングすることができる。 本発明の発現ベクターは、好ましくは前記第一構築物および第二構築物を同一DNA分子内に含むものであるが、植物細胞内で第一構築物の翻訳産物が第二構築物と上述のように協働し、レポーター遺伝子を転写・発現させることができる限りにおいて、本発明の発現ベクターを独立した複数のベクターによって構成してもよい。 また、本発明の発現ベクターは、プロモーター配列とその下流に配置されて当該配列の支配下で転写される薬剤耐性遺伝子などの選抜マーカーの遺伝子を含む第三構築物を、前記第一構築物および/又は第二構築物と同一DNA分子内に含むものであってもよい。例えば、選抜マーカー遺伝子としては、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に抗生物質ハイグロマイシンに耐性を付与する遺伝子およびノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターを持つHPT unit、ノパリン合成酵素遺伝子プロモーターの下流に抗生物質カナマイシンに耐性を付与する遺伝子およびノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターを持つNPT II unitなどを用いることができる(図2・3参照)。また、ビアラフォス耐性遺伝子、フォスフィノスリシンアセチル基転移酵素遺伝子などを用いることができる。 本発明の発現ベクターに、バクテリオファージP1由来の遺伝子組換え酵素Cre(Creレコンビナーゼ)遺伝子配列およびloxP配列を適切に配置し、リガンド存在下で遺伝子組換え酵素Creを発現させ、loxP部位を特異的に認識して切断することによってレポーター遺伝子を恒常的に発現させるようにしてもよい(図10参照)。その際、カナマイシン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子が特異的に切断されるように各配列を配置すれば、誘導後、マーカーフリーの形質転換植物とすることができる(図2・3参照)。 また、本発明のDNAおよび発現ベクターの塩基配列について、常法に従って1個または数個の塩基を置換、欠失、挿入、及び/又は付加させ、改変蛋白を発現させるようにしてもよい。このような改変およびそれによって得られた物は、当然に本発明の技術的範囲に属するものと解釈されるべきである。[2]本発明の形質転換植物の生産方法と同植物を用いたモニタリング方法生産方法(形質転換方法) 本発明のモニタリング用植物は、上記発現ベクターにより形質転換することによって生産することができる。形質転換方法としては、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法などを使用することができる。アグロバクテリウム法を使用する場合、例えば、土壌微生物であるアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に、エレクトロポレーション法により発現ベクター(発現プラスミド等)を導入する。導入の成否は、アガロースゲル電気泳動等により発現ベクターの一部を検出することで確認できる。次に、発現ベクターを保有するアグロバクテリウムを、植物体、植物片(葉、根、茎など)、カルス、もしくは、培養植物細胞などに感染させ、その後、抗生物質を添加した培地において、培養、選抜を経て植物体へ再分化させることにより、本発明の組換え植物を生産する。対象植物 本発明の形質転換植物の種類に特に制限はなく、双子葉植物であっても、単子葉植物であってもよいが、シロイヌナズナ、タバコ、イネ、ペチュニアなどの植物を好適に使用することができる。 なお、本発明における「植物」の範疇には、植物個体のほか、根、茎、葉、生殖器官(花器官および種子を含む)などの各種器官、各種組織、植物細胞などが含まれ、さらにはプロトプラスト、誘導カルス、再生個体およびその子孫、なども含まれるものとする。モニタリング方法 本発明のモニタリング用植物は、土壌中、廃水中など環境中における内分泌攪乱化学物質による汚染可能性がある地域に通常の栽培方法で例えば数週間栽培後、導入したレポーター遺伝子に応じて、蛍光、染色、発光、花色などの変化の検出、あるいは、レポーター遺伝子のmRNAの定量、タンパク質の検出などを行うことによってモニタリングする。本発明の組換え植物は、このように、環境中の内分泌攪乱化学物質による汚染の程度を検出するためのバイオセンサーとして利用可能である。 例えば、本発明の組換え植物は、環境を汚染しているアルキルフェノール類を汚染現場でモニタリングするために使用することができる。後述の実施例に示すように、本発明の実施例に係る組換え植物は0.01ppbレベルのアルキルフェノール類を検出することができ、また、従来のヒトERを用いた組換え植物では100ppbが検出限界であったが、本発明の実施例に係るmERを用いた組換え植物は、約10,000倍の感度の向上を達成した。 以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。 なお、配列表の各配列番号は、以下の配列を表す。[配列番号1] mERのリガンド結合領域(282−620番目のアミノ酸)を有する新規組換え転写因子XVmEをコードする遺伝子(DNA)構築のために使用したフォワードプライマー配列。[配列番号2] 組換え転写因子XVmEをコードする遺伝子(DNA)構築のために使用したリバースプライマー配列。[配列番号3] mERのリガンド結合領域(301−582番目のアミノ酸)を有する新規組換え転写因子XmEVをコードする遺伝子(DNA)構築のために使用したフォワードプライマー配列。[配列番号4] 組換え転写因子XmEVをコードする遺伝子(DNA)構築のために使用したリバースプライマー配列。[配列番号5] mERをコードするcDNA配列およびそのアミノ酸配列。[配列番号6] mERのアミノ酸配列。[配列番号7] 組換え転写因子XmEVが有する核移行シグナル(NLS)のアミノ酸配列。[配列番号8] 大腸菌由来のLexAタンパク質をコードするcDNA配列およびそのアミノ酸配列。[配列番号9] 大腸菌由来のLexAタンパク質のアミノ酸配列。[配列番号10] ヘルペスシンプレックスウイルス由来のVP16タンパク質をコードするcDNA配列およびそのアミノ酸配列。[配列番号11] ヘルペスシンプレックスウイルス由来のVP16タンパク質のアミノ酸配列。[配列番号12] バクテリオファージP1由来のloxP配列。[配列番号13] 組換え転写因子XVmEをコードする塩基配列およびそのアミノ酸配列。[配列番号14] 組換え転写因子XVmEのアミノ酸配列。[配列番号15] 組換え転写因子XmEVをコードする塩基配列およびそのアミノ酸配列。[配列番号16] 組換え転写因子XmEVのアミノ酸配列。〔実施例1:メダカER(mER)遺伝子のクローニング〕 mERの発現を誘導するため、成熟したメスのメダカ(Oryzias latipes)を1ppmの17β−エストラジオール(溶媒として0.1%のジメチルスルフォキシド(DMSO)を使用)を含む水で1日間育てた。その後、採取したメダカを液体窒素により凍結し、磨砕後、セパゾール(ナカライテスク)を用いたCTAB法により総RNAを抽出し、DNaseI処理後、RT−PCRに供することにより、mERのリガンド結合領域をコードする2種類のcDNAを得た。 RT−PCRには、ThermoScript RT-PCR System(インビトロジェン)を使用した。ヒトERのリガンド結合領域と対応する配列をクローニングするため、日本DNAデータバンクに登録されているメダカ属ER(mER)遺伝子の配列(アクセッション番号:D28954)をもとに、以下のプライマーを設計した。XVmE 5’:5’-GTCGACGGTCAGGAGCATAAAACGGT-3’(配列番号1)XVmE 3’:5’-GTCGACCTAGTCTTGAAGGGCCGGGGTGC-3’(配列番号2)XmEV 5’:5’-CTCGAGCCAAAAAAGAAGAGAAAGGTCGGAGGAGGAGGAGGAGGAGG-3’(配列番号3)XmEV 3’:5’-CTCGAGGGGAGCGATTCCACCCCCGC-3’(配列番号4) プライマー「XVmE 5’」「XVmE 3’」は、組換え転写因子XVmEに用いるmERリガンド結合領域(282−620番目のアミノ酸)をコードするDNA増幅用であり、プライマー「XmEV 5’」「XmEV 3’」は、組換え転写因子XmEVに用いるmERリガンド結合領域(301−582番目のアミノ酸)をコードするDNA増幅用である。図4に示すように、各プライマーは、mERリガンド結合領域のコード配列のほか、制限酵素切断部位の配列を含んでいる。さらにプライマー「XmEV 5’」は、核移行シグナル(NLS)コード配列を含んでいる。 上記RT−PCRによって、長さの異なる2種類のDNA配列(1026bp、879bp)を増幅させ、それぞれpT7Blue Vector(ノバジェン)に挿入した。次に、ABI PRISMTM 310(アプライドバイオシステムズ)を用いて、得られたDNA配列の確認を行い、その配列が日本DNAデータバンクに登録されているmER遺伝子の配列と一致することを確認した(図5・6参照)。なお、図5は、mERの全cDNA配列を示し、下線部は、リガンド結合領域(282−620番目のアミノ酸)をコードする部分、斜字部は、リガンド結合領域(301−582番目のアミノ酸)をコードする部分である。図6は、mERの全アミノ酸配列、転写因子XVmEの有するアミノ酸配列(mERリガンド結合領域(282−620番目のアミノ酸)を含む領域)、転写因子XmEVの有するアミノ酸配列(mERリガンド結合領域(301−582番目のアミノ酸)を含む領域)、を比較して示したものである。〔実施例2:組換え転写因子をコードする遺伝子の調製と発現ベクターの構築〕 上記方法によりクローニングしたmERリガンド結合領域のcDNA配列を使用して、2種類の組換え転写因子(XVmE・XmEV)をコードする遺伝子(DNA)を調製した。図1に示すように、XVmEは、LexA−VP16−mERをこの順番に連結したもの、XmEVは、LexA−mER−VP16をこの順番に連結したものである。XmEVにおいては、核内により移行しやすくなるように、核移行シグナル(NLS)をLexAとmERとの間に連結している。NLSのアミノ酸配列は「PKKKRKV(配列番号7)」とした。図1において、「mER」は、上記のように、mERリガンド結合領域を表す。また、「LexA」は、大腸菌由来のLexAタンパク質のDNA結合領域(図7(b)下線部)を表し、「VP16」は、ヘルペスシンプレックスウイルス由来のVP16タンパク質の転写活性化領域(図8(b)下線部)を表す。以下、特に断りのない限り、同じ意味でこれらの語を使用する。 図1の各数字は、それぞれのタンパク質のアミノ酸番号を示し、図中のアルファベットはアミノ酸を1文字表記したものである。 図2・3には、これら2種類の組換え転写因子(XVmE・XmEV)をそれぞれコードする遺伝子発現ベクター(プラスミド)の調製方法、および、これらのプラスミドを使用して、本発明に係る4種類の発現ベクター(pER8−XVmE、pX6−XVmE、pER8−XmEV、pX6−XmEVの4種類の植物発現用プラスミド)を構築する方法の概略が示される。 なお、図2・3において使用される各略語の意味は以下のとおりである(但し、既に説明した略語は除く)。RB:ライトボーダーLB:レフトボーダーP:プロモーター配列T1・T2・T3:ターミネーター配列lox:loxP配列「ATAACTTCGTATAGCATACATATACGAAGTTAT(配列番号12)」Pac I・Sal I・Xho I・Asc I:各制限酵素の切断部位pXV・pXVasc・pSmES・pXVmE・pXVA・pXmEX・pmEV・pPLS・pPLSasc・pXmEV:各プラスミドの名称pER8PAS:GFPレポーター遺伝子を保有する発現ベクター。前記の非特許文献1参照。一過的な遺伝子誘導発現を引き起こす。pX6PAS:GFPレポーター遺伝子を保有する発現ベクター。前記の非特許文献2参照。恒常的な遺伝子誘導発現を引き起こす。 上記4種類の発現ベクターは、図2・3に示すように、各制限酵素の切断部位における切断・連結、およびリンカーの挿入などの各処理を経て構築した。こうして得られた4種類の発現ベクターのうち、「pER8−XVmE」「pER8−XmEV」は、図9に示すように、植物細胞内で一過的な遺伝子誘導発現を引き起こす。また、「pX6−XVmE」「pX6−XmEV」は、図10に示すように、植物細胞内で恒常的な遺伝子誘導発現を引き起こす。(図9・10においては、LexA−VP16−mERの順に連結された転写因子XVmEを模式的に示す。図中、「EDs」は内分泌撹乱化学物質、「hsp90」は熱ショックタンパク質90を表す。)〔実施例3:形質転換植物の生産〕 上記4種類の発現ベクターをそれぞれアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens strain LBA4404)に導入し、その後、各発現ベクターを保有するアグロバクテリウムを、減圧浸潤法によりシロイヌナズナのコロンビア株(Arabidopsis thaliana (L.) Heynh. ecotype Columbia)に感染させた。感染一ヶ月後、T1種子を収穫した。 植物の培養にはMS培地を用い、播種後2日間、暗所において低温処理(4℃)を行った後、明所(23℃)にて密閉環境下で培養を行った。「pER8−XVmE」および「pER8−XmEV」の各ベクターを用いた植物にはハイグロマイシンを40μg/mL添加し、「pX6−XVmE」および「pX6−XmEV」の各ベクターを用いた植物にはカナマイシンを50μg/mL、MS培地に添加した。 抗生物質耐性を示したT1植物を鉢上げし、T2種子を得た。抗生物質耐性の分離比が3:1を示す個体についてさらに鉢上げを行い、T3種子を得た。100%の抗生物質耐性を示したT3植物をホモ個体とした。選抜結果を下記表2に示す。 表2中、形質転換植物「ER8−XVmE」、「ER8−XmEV」、「X6−XVmE」および「X6−XmEV」は、それぞれ、発現ベクター「pER8−XVmE」、「pER8−XmEV」、「pX6−XVmE」および「pX6−XmEV」によって形質転換されたシロイヌナズナである。〔実施例4:形質転換シロイヌナズナの評価〕 上記形質転換シロイヌナズナが環境中の内分泌撹乱化学物質に応答し、そのモニタリング用植物として適しているかどうかを評価するため、次の実験を行った。 実験には、上記「X6−XmEV」形質転換植物のT2世代(X6-XmEV-2 plant)を使用した。すなわち、T2種子をカナマイシン含有MS培地に播種したのち10日後に3:1検定を行い、1コピーの抗生物質耐性遺伝子を保有すると考えられる個体を4‐t‐オクチルフェノール(OP)を含むMS培地上に移植した。OP濃度は「0.001」、「0.01」、「0.1」、「1」、「10」、「100」、「1000」ppbとし、溶媒としてDMSO(終濃度0.1%)を用いた。移植後7日目に植物体を液体窒素により凍結し、磨砕後、Plant Total RNA Mini(バイオジーン)を用いて総RNAを抽出した。 総RNAをDNaseI処理後、ThermoScript RT-PCR Systemを用いてcDNAを合成し、PCRに用いた。PCRにおいて、レポーターであるGFPおよび内部標準としてチューブリンの各遺伝子増幅を行い、OP濃度に応じて形質転換シロイヌナズナ(X6-XmEV-2 plant)におけるレポーター(GFP)遺伝子の転写量がどのように変化するかを評価した。その結果を図11(a)に示す。図中、各数字はOP濃度(ppb)を表す。「D」は培地にOPを含まない場合である。 1000ppbの4‐t‐オクチルフェノールを含むMS培地上に移植した個体は数日で全て枯死したが、それ以下の濃度の場合は、図11(a)に示すように、4‐t−オクチルフェノールの濃度が増加するにしたがって、レポーター遺伝子であるGFP遺伝子の転写量も増加した。 このように、本発明の形質転換植物は、4‐t‐オクチルフェノール濃度依存的にレポーター遺伝子(GFP)が転写誘導され、0.01ppbを検出できた。これらの検出感度は、水系を汚染している4‐t‐オクチルフェノールなどのアルキルフェノール類を汚染現場でモニタリングするのに十分であると考えられる。 対照として、非特許文献2記載のヒトERを用いた形質転換植物(CLX plant with hER)についても同様の実験を行った。その結果を図11(b)に示す。このCLX植物では100ppbが検出限界であったことから、本発明の形質転換植物は、従来のものと比較して、約10,000倍の感度の向上を達成した。 以上のように、本発明は、環境中に存在するアルキルフェノール類などの内分泌攪乱化学物質を高感度でモニタリングすることができる形質転換植物、その生産に使用するDNA、発現ベクター等を提供するものであり、例えば、水質調査、土壌汚染調査といった各種環境調査などに非常に有用である。本発明に係る2種類の組換え転写因子の構造を模式的に示す図である。本発明に係る発現ベクター(pER8−XVmE、pX6−XVmE)の構築手順を説明する図である。本発明に係る発現ベクター(pER8−XmEV、pX6−XmEV)の構築手順を説明する図である。mERリガンド結合領域をコードする遺伝子増幅用に使用した各PCRプライマーの配列を示す図である。mERの全長cDNA配列を示す図である。数字は塩基番号を示す。mERの全アミノ酸配列、転写因子XVmEの有するmERリガンド結合領域のアミノ酸配列、転写因子XmEVの有するmERリガンド結合領域のアミノ酸配列、を比較して示す図である。数字はアミノ酸番号を示す。(a)はLexAの全長cDNA配列を、(b)はそのアミノ酸配列を示す図であり、下線部はXVmEおよびXmEVで用いた領域である。数字は塩基番号またはアミノ酸番号である。(a)はVP16の全長cDNA配列を、(b)はそのアミノ酸配列を示す図であり、下線部はXVmEおよびXmEVで用いた領域である。数字は塩基番号またはアミノ酸番号である。本発明の発現ベクター(pER8−XVmE、pER8−XmEV)により形質転換された植物細胞内で、内分泌攪乱化学物質により一過的にレポーター遺伝子の転写・発現が誘導されることを説明する図である。本発明の発現ベクター(pX6−XVmE、pX6−XmEV)により形質転換された植物細胞内で、内分泌攪乱化学物質により恒常的にレポーター遺伝子の転写・発現が誘導されることを説明する図である。(a)は、4−t−オクチルフェノール処理した形質転換シロイヌナズナ(X6−XmEV系統のT2植物)のRT−PCR解析の結果を示す図であり、(b)は、比較のため行った、ヒトERを用いた形質転換シロイヌナズナCLXの結果を示す図である。 DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域の3つの領域を有する組換え転写因子をコードするDNA。 魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域が、メダカ由来のエストロジェン受容体アルファのリガンド結合に関与する領域であることを特徴とする請求項1記載のDNA。 DNA結合領域が、大腸菌由来のLexAタンパク質のDNA結合領域であり、転写活性化領域が、ヘルペスシンプレックスウイルス由来のVP16タンパク質の遺伝子転写に関与する領域であることを特徴とする請求項1記載のDNA。 組換え転写因子が、さらに核移行シグナルを有することを特徴とする請求項1記載のDNA。 プロモーター配列の下流に配置された、DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域からなる組換え転写因子コード配列、並びにターミネーター配列を含む第一構築物と、 レポーター遺伝子配列を有し、細胞内で内分泌攪乱化学物質と上記第一構築物の翻訳産物との複合体によりレポーター遺伝子の転写が開始され、当該遺伝子を細胞内で発現させる第二構築物と、を備えた発現ベクター。 内分泌攪乱化学物質と第一構築物の翻訳産物との複合体によりCreレコンビナーゼ遺伝子が発現され、当該遺伝子発現を介して、レポーター遺伝子の転写が細胞内で恒常的に行われるように構築されていることを特徴とする請求項5記載の発現ベクター。 プロモーター配列の下流に配置された、DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域からなる組換え転写因子コード配列、並びにターミネーター配列からなる第一構築物と、レポーター遺伝子配列を有し、細胞内で内分泌攪乱化学物質と上記第一構築物の翻訳産物との複合体によりレポーター遺伝子の転写が開始され、当該遺伝子を細胞内で発現させる第二構築物と、を備えた発現ベクターにより形質転換され、植物内に侵入した内分泌攪乱化学物質を感受してレポーター遺伝子を発現する形質転換植物。 請求項7記載の形質転換植物の生産方法であって、上記発現ベクターでアグロバクテリウムを形質転換し、このアグロバクテリウムを植物細胞に感染させ、その後、植物体に再分化させる工程を含む生産方法。 請求項7記載の形質転換植物を用いた、環境中の内分泌攪乱化学物質のモニタリング方法。 アルキルフェノール類化合物のモニタリングに使用することを特徴とする、請求項9記載のモニタリング方法。 【課題】 環境中に極微量に存在する内分泌攪乱化学物質を高感度で感受するモニタリング用植物、その生産に使用するDNA、発現ベクター等を提供すること。【解決手段】 本発明の形質転換植物は、プロモーター配列の下流に配置された、DNA結合領域、魚類の内分泌攪乱化学物質受容体のリガンド結合領域、および転写活性化領域からなる組換え転写因子コード配列、並びにターミネーター配列からなる第一構築物と、レポーター遺伝子配列を有し、細胞内で内分泌攪乱化学物質と上記第一構築物の翻訳産物との複合体によりレポーター遺伝子の転写が開始され、当該遺伝子を細胞内で発現させる第二構築物と、を備えた発現ベクターにより形質転換され、植物内に侵入した内分泌攪乱化学物質を感受してレポーター遺伝子を発現するため、内分泌攪乱化学物質のモニタリング用植物として有用である。【選択図】図1配列表