タイトル: | 公開特許公報(A)_近赤外スペクトルを用いた判別方法 |
出願番号: | 2004317434 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 21/35 |
森田 尚喜 小島 達也 JP 2006126100 公開特許公報(A) 20060518 2004317434 20041101 近赤外スペクトルを用いた判別方法 花王株式会社 000000918 細田 芳徳 100095832 森田 尚喜 小島 達也 G01N 21/35 20060101AFI20060414BHJP JPG01N21/35 Z 4 4 OL 8 2G059 2G059BB04 2G059BB09 2G059BB11 2G059CC12 2G059EE01 2G059EE02 2G059HH01 2G059MM01 2G059MM02 2G059MM04 2G059MM05 2G059MM10 本発明は、近赤外スペクトルを用いて異常品を判別するための判別ラインの作成方法および当該判別ラインを用いた異常品の判別方法に関する。 近年、近赤外分光法による評価方法は非破壊測定方法として注目され、過去20年間に数多くの研究がなされ、実用化が進められている。例えば、食品業界では正常肉と異常肉との判別に近赤外分光法を利用する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。 また、製造業において、原料の異常が原因で、異常品ができてしまうことが少なくない。製造業においては製品化することによりコストが大きくなるため、製品化する前に原料の異常を検知することは重要である。しかし、受入検査項目をクリアした原料でも異常品ができてしまうことがあるため、原料の異常を検知する方法が求められていた。特開2002−328088号公報 しかしながら、近赤外分光法で一般的に用いられる判別分析の手法では、必ずその品種の正常品だけでなく異常品を用いて判別モデルを作成する必要があるため、この方法を、多くの品種を用いる産業において判別のために用いるためには、全ての品種の異常品を準備する必要があり、事実上不可能である。 また、仮に異常品を準備することができて判別モデルを作成したとしても、別の原因による異常品が出現した場合には、従来の方法では検知できないという問題があった。 さらに、正常品と異常品を用いて判別モデルが作成されたが、正常品と異常品との差が小さい場合は、誰にでも正確に判別できるわけではないという問題もあった。 従って、本発明は、異常品がない場合でも作成でき、簡便にかつ正確に、誰にでも異常品と正常品とを判別できる判別ラインの作成方法および当該判別ラインを用いた判別方法を提供することを目的とする。 すなわち、本発明は、〔1〕a)正常品の近赤外スペクトルを測定する工程、b)工程a)で得られた近赤外スペクトルをもとに標準スペクトルおよび標準偏差(σ)を算出する工程、ならびにc)工程b)で得られた標準偏差(σ)をもとに判別ラインを作成する工程を含む、異常品を判別するための判別ラインの作成方法、ならびに〔2〕d)判別対象サンプルの近赤外スペクトルを測定する工程、およびe)前記〔1〕の工程b)で得られた標準スペクトルに対する工程d)で得られた近赤外スペクトルとの偏差の絶対値と、前記〔1〕記載の方法により作成された判別ラインとを比較する工程を含む、異常品の判別方法に関する。 本発明により、異常品がない場合でも作成でき、簡便にかつ正確に異常品と正常品とを判別できる判別ラインの作成方法および当該判別ラインを用いた判別方法を提供することができる。 本発明の異常品を判別するための判別ラインの作成方法は、a)正常品の近赤外スペクトルを測定する工程、b)工程a)で得られた近赤外スペクトルをもとに標準スペクトルおよび標準偏差(σ)を算出する工程、ならびにc)工程b)で得られた標準偏差(σ)をもとに判別ラインを作成する工程を含むことに一つの大きな特徴を有する。 かかる特徴を有することにより、従来のように正常品および異常品を用いて判別モデルを作成した後でなければサンプルを判別できないといった欠点が解消され、品質検査試験、原料の受入れ試験にかかる手間が顕著に減少され、種々の原因による異常品を判別することができる。 本発明において「判別ライン」とは、正常品と異常品との閾値のことをいう。 本発明において「正常品」とは判別ラインを用いて判断した場合に、判別ライン以内のものをいい、「異常品」とは正常品以外の全てのものをいう。 「判別ライン以内」とは、判別ラインから全波数において逸脱していないことをいう。 本発明により判別ラインを作成することができる物質としては、近赤外スペクトルが測定できる物質であれば特に限定されないが、各種有機化合物が挙げられる。各種有機化合物としては、各種界面活性剤に用いられる化合物、食油などの油脂類、農作物、調味料などが挙げられる。具体的には、N-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマー硫酸モノエチル塩液、シリコン被覆酸化亜鉛などが挙げられる。 工程a)において近赤外スペクトルを測定するために用いられる測定装置としては、例えば、フーリエ変換型近赤外分析装置(例えば、ブラン・ルーベ社製;Infra Prover II)、分散型近赤外分析装置などが挙げられる。 測定方法としては、例えば、粉体サンプルの場合は反射法、液体サンプルの場合は透過法などが挙げられる。例えば、サンプル測定にフーリエ変換型近赤外分析装置の1つであるブラン・ルーベ社製インフラプルーバーIIを用いる場合、粉体サンプルを測定する場合は固体測定ユニットSPA(Solid Presentation Accessory)を使用して反射法でサンプルの近赤外スペクトルを測定することができ、液体サンプルを測定する場合は液体測定ユニットLPA(Liquid Presentation Accessory)を使用して透過法でサンプルの近赤外スペクトルを測定することができる。 測定に使用される近赤外光の波数は、4000〜12000cm-1の波数が一般に用いられるが、サンプルの種類によって適宜設定すればよい。また、測定における分解能としては、用いられる装置の能力によっても異なるが、好ましくは16cm-1以下、より好ましくは8cm-1以下である。積算回数は、精度を高くする観点から、多い方が好ましいが、例えば、3回以上が好ましく、5回以上がより好ましく、100回以上がさらに好ましい。 工程a)の測定に必要な正常品のロット数は、判別ラインを正確にするという観点から、好ましくは少なくとも3ロット、より好ましくは少なくとも5ロット、さらに好ましくは少なくとも10ロットである。 工程a)で得られる近赤外スペクトルとしては、前記波数における吸光度スペクトル、正規化スペクトル、一次微分スペクトルまたは二次微分スペクトルが挙げられ、工程b)で使用される近赤外スペクトルは、サンプルによって適宜選択すればよいが、ベースラインの変動の影響を抑えるという観点から、二次微分スペクトルが好ましい。 本発明において「標準スペクトル」とは、所定のロット数のサンプルをそれぞれ所定の積算回数で測定して得られた近赤外スペクトルの各測定波数での平均値を用いて描かれた近赤外スペクトルをいう。「標準偏差(σ)」とは、各測定波数での標準偏差をいい、かかる標準偏差は当該分野で公知の方法により算出される。 工程c)において、前記工程b)で算出された標準偏差(σ)をもとに判別ラインを作成する方法を説明する。 工程b)で算出された標準偏差(σ)を用いて各波数におけるKσのラインを描き、そのラインを判別ラインとする。 ここで、「K」は、標準偏差に乗する係数を表し、正常品と異常品とを十分判別できるように統計学的に考慮すると、3が好ましい。正常品と異常品とをさらに確実に判別する観点から、Kは、工程a)で測定された正常品の近赤外スペクトルの標準スペクトルに対する偏差の絶対値が全てKσ以下となるような最小の係数(Kmin)以上であることがより好ましい。Kminは、サンプルによって異なるので一概にはいえず、適宜設定されればよく、正常品の近赤外スペクトルが非常に安定している場合は3より小さくなることもあり得る。 以上のように本発明の異常品の判別方法に使用される判別ラインが作成される。 次に、本発明の異常品の判別方法について説明する。 本発明の異常品の判別方法は、d)判別対象サンプルの近赤外スペクトルを測定する工程、およびe)前記工程b)で得られた標準スペクトルに対する工程d)で得られた近赤外スペクトルの偏差の絶対値と、前記の方法により作成された判別ラインとを比較する工程を含むことに1つの大きな特徴を有する。 工程d)は、正常品の代わりに判別対象サンプルを測定すること以外は前記工程a)と同様に行うことができる。 工程e)における比較方法は、標準スペクトルに対する工程d)で得られた近赤外スペクトルとの偏差の絶対値が、前記で得られた判別ラインから全波数において逸脱していないかを確認し、全く逸脱していない場合は正常品、1つの波数でも判別ラインから逸脱している場合は異常品と判断される。 以下の実施例に先立ち、実施例に使用した原料、装置、測定方法および測定条件をまとめて記載する。(1)原料 N-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド(粉体); ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマー硫酸モノエチル塩液(液体);または シリコン被覆酸化亜鉛(使用シリコン:メチルハイドロジェンポリシロキサンとメチルポリシロキサン、粉体)(2)装置フーリエ変換型近赤外分析装置(ブラン・ルーベ社製;Infra Prover II)(3)測定方法粉体試料:固体測定ユニットSPAによる反射法液体試料:液体測定ユニットLPAによる透過法(4)測定条件測定波数:6500〜10000cm-1分解能 :16cm-1実施例1 N-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドについての判別ラインの作成 N-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドの正常品6ロットの近赤外スペクトルをそれぞれ3回ずつ測定し、得られた二次微分スペクトルの全測定波数における平均値および標準偏差(σ)を算出し、Kσ(K=3)を描いたが、3σを逸脱する正常品が幾らか見られたので、正常品が全く逸脱しなくなるまでKを変動させたところK=3.2以上で判別ラインを逸脱する正常品はなくなった(図1参照)。従って、N-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドにおいては、3.2σを判別ライン(図1における太線)とした。実施例2 ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマー硫酸モノエチル塩液についての判別ラインの作成 ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマー硫酸モノエチル塩液の正常品5ロットの近赤外スペクトルをそれぞれ5回ずつ測定し、得られた二次微分スペクトルの全測定波数における平均値および標準偏差(σ)を算出し、Kσ(K=3)を描いたが、3σを逸脱する正常品が幾らか見られたので、正常品が全く逸脱しなくなるまでKを変動させたところK=4.5以上で判別ラインを逸脱する正常品はなくなった(図2参照)。従って、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマー硫酸モノエチル塩液においては、4.5σを判別ライン(図2における太線)とした。実施例3 シリコン被覆酸化亜鉛についての判別ラインの作成 シリコン被覆酸化亜鉛の正常品3ロットの近赤外スペクトルをそれぞれ12回ずつ測定し、得られた二次微分スペクトルの全測定波数における平均値および標準偏差(σ)を算出し、Kσ(K=3)を描いたが、3σを逸脱する正常品が幾らか見られたので、正常品が全く逸脱しなくなるまでKを変動させたところK=3.7以上で判別ラインを逸脱する正常品はなくなった(図3参照)。従って、シリコン被覆酸化亜鉛においては、3.7σを判別ライン(図3における太線)とした。実施例4 N-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドについての異常品の判別 予め異常品とわかっているN-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドを1ロット用意し、その近赤外スペクトルを測定して、実施例1で作製した判別ラインと比較した。その結果を図4に示す。図4において、正常品の標準スペクトルに対する異常品の偏差の絶対値を実線、判別ラインを太線で示す。 図4より、異常品は複数の波数において判別ラインを逸脱しており、異常品と正常品とを正しく判別できることがわかる。実施例5 ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマー硫酸モノエチル塩液についての異常品の判別 実施例4と同様に異常品と判別ラインとを比較した。その結果を図5に示す。 図5より、異常品は複数の波数において判別ラインを逸脱しており、異常品と正常品とを正しく判別できることがわかる。実施例6 シリコン被覆酸化亜鉛についての異常品の判別 実施例4と同様に異常品と判別ラインとを比較した。その結果を図6に示す。 図6より、異常品は複数の波数において判別ラインを逸脱しており、異常品と正常品とを正しく判別できることがわかる。 本発明は、製品製造工程の品質管理や原料受入れ試験の必要な産業に広く利用することができる。N-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドの正常品の近赤外スペクトルの偏差の絶対値および本発明により作製された判別ラインを示す図である。ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマー硫酸モノエチル塩液の正常品の近赤外スペクトルの偏差の絶対値および本発明により作製された判別ラインを示す図である。シリコン被覆酸化亜鉛の正常品の近赤外スペクトルの偏差の絶対値および本発明により作製された判別ラインを示す図である。N-(3-ヘキサデシロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドの判別ラインおよび標準スペクトルと異常品の近赤外スペクトルとの偏差の絶対値を示す図である。ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサンコポリマー硫酸モノエチル塩液の判別ラインおよび標準スペクトルと異常品の近赤外スペクトルとの偏差の絶対値を示す図である。シリコン被覆酸化亜鉛の判別ラインおよび標準スペクトルと異常品の近赤外スペクトルとの偏差の絶対値を示す図である。 a)正常品の近赤外スペクトルを測定する工程、b)工程a)で得られた近赤外スペクトルをもとに標準スペクトルおよび標準偏差(σ)を算出する工程、ならびにc)工程b)で得られた標準偏差(σ)をもとに判別ラインを作成する工程を含む、異常品を判別するための判別ラインの作成方法。 工程b)で使用される近赤外スペクトルが二次微分スペクトルである請求項1記載の判別ラインの作成方法。 工程c)で作成される判別ラインがKminσである請求項1または2記載の判別ラインの作成方法。 d)判別対象サンプルの近赤外スペクトルを測定する工程、およびe)請求項1の工程b)で得られた標準スペクトルに対する工程d)で得られた近赤外スペクトルとの偏差の絶対値と、請求項1〜3いずれか記載の方法により作成された判別ラインとを比較する工程を含む、異常品の判別方法。 【課題】異常品がない場合でも作成でき、簡便にかつ正確に、誰にでも異常品と正常品とを判別できる判別ラインの作成方法および当該判別ラインを用いた判別方法を提供すること。【解決手段】〔1〕a)正常品の近赤外スペクトルを測定する工程、b)工程a)で得られた近赤外スペクトルをもとに標準スペクトルおよび標準偏差(σ)を算出する工程、ならびにc)工程b)で得られた標準偏差(σ)をもとに判別ラインを作成する工程を含む、異常品を判別するための判別ラインの作成方法;ならびにd)判別対象サンプルの近赤外スペクトルを測定する工程、およびe)前記〔1〕の工程b)で得られた標準スペクトルに対する工程d)で得られた近赤外スペクトルとの偏差の絶対値と、前記〔1〕記載の方法により作成された判別ラインとを比較する工程を含む、異常品の判別方法。【選択図】図4