タイトル: | 特許公報(B2)_皮膚水分向上剤 |
出願番号: | 2004309339 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/702,A61P 17/16,A61K 8/60,A61Q 19/00,A23L 1/30,A23L 2/52,C07H 3/06 |
福森 保則 竹田 博幸 池田 隆幸 JP 4704007 特許公報(B2) 20110318 2004309339 20041025 皮膚水分向上剤 ホクレン農業協同組合連合会 390022954 物産フードサイエンス株式会社 000226415 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 福森 保則 竹田 博幸 池田 隆幸 JP 2004141826 20040512 20110615 A61K 31/702 20060101AFI20110526BHJP A61P 17/16 20060101ALI20110526BHJP A61K 8/60 20060101ALI20110526BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20110526BHJP A23L 1/30 20060101ALI20110526BHJP A23L 2/52 20060101ALI20110526BHJP C07H 3/06 20060101ALN20110526BHJP JPA61K31/702A61P17/16A61K8/60A61Q19/00A23L1/30 BA23L2/00 FC07H3/06 A61K 31/702 A61P 17/16 A61K 8/60 A61Q 19/00 A23L 1/30 A23L 2/00 C07H 3/06 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開昭61−115014(JP,A) 第102回精糖技術研究会講演要旨,2004年,16−19 精糖技術研究会誌,2004年,52,13−18 J. Agric. Food Chem.,2000年,48,5326−5330 食品と科学,2004年 1月10日,46,81−87 2 2005350444 20051222 7 20070522 特許法第30条第1項適用 平成16年5月13日 精糖技術研究会主催の「第102回精糖技術研究会大会(東京)」において文書をもって発表 早川 裕之 本発明は、皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚の表面の水分を保持し、さらに、皮膚の水分割合を高めるための皮膚水分向上剤に関する。技術背景 従来から、皮膚の乾燥は、ドライスキンなどの症状を呈し、さまざまな皮膚のトラブルの原因となることが知られている。そこで、従来から様々な皮膚水分向上剤が検討されている。 例えば、特許文献1には、30重量%以上の油分及びフラクトオリゴ糖粉末を含有する固型ないし半固型状の油性化粧料が開示されている。さらに、特許文献1には、フラクトオリゴ糖粉末が保湿効果及び製品の乾燥防止効果を有すると記載されている。しかしながら、特許文献1には、具体的にどのような種類のフラクトオリゴ糖が皮膚水分向上に有効であるかについて全く述べられていない。特に、フラクトオリゴ糖は、特許文献1にも記載の通り、フルクトースを主要構成糖とするオリゴ糖がすべて含まれることからその種類は無限に近く、すべてのフラクトオリゴ糖が等しく顕著な皮膚水分向上効果を有するとは言えない。さらに、フラクトオリゴ糖の種類によっては、下痢を引き起こしたり、悪玉菌の発生を誘発するものもあり、内用剤として用いるには問題のあるもの多い。 また、特許文献2には、麦門冬抽出糖類からなる皮膚保湿剤が、特許文献3には、柿の葉又は柿の葉抽出物の少なくとも1種を含有する皮膚の保湿用食品が、それぞれ開示されている。しかしながら、これらは特定の混合物が保湿に有効であることが記載されているに過ぎない。言い換えれば、具体的な有効成分が特定されておらず、当然に、ケストースが有効成分であることは記載されていない。 ところで、皮膚に対して何らかの効果をもたらす成分(薬剤)は、該成分を皮膚に直接塗布したり、入浴により補給するなどの外用剤として、投与されるのが効果的であるとされている。しかしながら、成分によっては、かぶれや炎症等副作用を引き起こすことも多い。特に、他の成分と混合した場合に、このような副作用は生じやすい。また、においが強いもの、色彩が濃いものについては、使用者に抵抗がある場合も多い。 逆に、内用剤でも、経口投与等により直接体内に入るため、さらに多数の制約が存在する。 一方、外用剤として有効な成分が、内用剤として必ずしも有効であるとはいえない。例えば、外用剤は局部に直接塗布して作用させるものであるため、その効果も局所的であり、体の内部の原因に起因するものには対処できない。また、食習慣が無いものや体の内部に取り入れることに問題があるものも存在する。これらは、当然に、内用剤として用いることには問題がある。さらに、例えば、分子量の大きい成分は、塗布等による外用剤としては有効であっても、内用剤としては、分子量が大きすぎて吸収できず利用できないという場合もある。 加えて、内用剤として用いても何ら副作用の生じないものであっても、外用剤として用いると副作用を生じる場合があることは、よく知られている事実である。もちろん、逆の場合も考えられる。従って、上記特許文献のように、具体的な有効成分が特定されていない混合物は、副成分等によって副作用を起こすことも懸念される。特開平5−97626号公報昭62−81305号公報特開2003−135026号公報 本発明は、上記課題を解決することを目的としたものである。すなわち、第1に、皮膚水分向上剤として特に有効な皮膚水分向上剤を提供することである。第2に、内用剤/外用剤として用いることが可能な皮膚水分向上剤を提供することである。 上記課題に基づき、本発明者が鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、ケストースが顕著な皮膚水分向上効果を有することを見出したものである。上述のとおり、ケストースは、食経験が長く安全性の高いオリゴ糖であり、また、直接塗布しても副作用もないことから、本発明の課題を解決するのに極めて有効である。具体的には、ケストースを含む皮膚水分向上剤;ケストースを有効成分とする皮膚水分向上剤;1−ケストースである皮膚水分向上剤;内用剤である前記いずれかの皮膚水分向上剤;を採用した。 本発明の皮膚水分向上剤は、皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚の表面の水分を保持し、さらに、皮膚の水分割合を高めるという効果を有する。さらに、ケストースは、食経験も長いため、安全性が高く、内用剤としても十分に採用することができる。 以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。本発明でいう、「外用剤」とは、皮膚に直接塗布する等体の外部に用いるものをいい、「内用剤」とは、外用剤以外のもの、例えば、経口や体内への注射等によって投与するものをいう。 本発明で採用するケストースは、グルコースにフルクトースが2分子結合した3糖類のオリゴ糖である。本発明で採用するケストースは、その種類を特定するものではないが、1−ケストースおよび6−ケストース等を好ましい例として挙げることができ、この中でも、1−ケストースがより好ましい。 さらに、本発明の皮膚水分向上剤は、本発明の趣旨を逸脱しない限りで、他のオリゴ糖を含んでいても良い。この場合、ケストースの含有量が最も多いこと、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、もっとも好ましくは98%以上を占めることが好ましい。他のオリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖が好ましく、ニストースおよび/またはフラクトシラノシルニトースがより好ましい。 さらに、本発明で採用するケストースは、その一部又は全部が結晶であることが好ましい。特に、結晶純度は、98%以上であるのが好ましい。結晶の割合は、ケストースの好ましくは80%以上、より好ましくは100%である。このように純度の高いケストースを採用することにより、さらに皮膚水分向上効果が高くなる。結晶化する方法としては、例えば、特公平6−70075号公報に記載の方法を採用できる。具体的には、純度70%以上のケストースを主成分として含む水溶液を用意し、前記ケストースを主成分として含む水溶液をBx85以上に濃縮し、得られた濃縮物の温度を80℃以上に上昇させ、この濃縮物にケストース微細結晶の懸濁液を加えて混合物を調製し、前記混合物の温度を65〜75℃に降下させながらケストースの結晶を析出させ、次いで、温度を60〜80℃に維持しながら析出するケストース結晶を回収する方法が挙げられる。 本発明で採用するケストースは、本発明の趣旨を逸脱しない限り、公知のものを広く採用できるが、好ましくは、タマネギ、穀類、ガーリック等自然界の植物から分取する。 本発明の皮膚水分向上剤は、医薬品、医薬部外品、化粧料、飲食品などとして有用である。 医薬品若しくは医薬部外品としての皮膚水分向上剤として利用する場合、本発明の皮膚水分向上剤をそれ自体で投与してもよいが、好ましくは、当業者に周知の方法によって製造可能な医薬組成物として投与することができる。医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等をあげることができる。上記の医薬組成物は、薬理学的、製剤学的に許容し得る添加物を加えて製造することができる。薬理学的、製剤学的に許容し得る添加物の例としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし崩壊補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等をあげることができる。上記の医薬組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、他の皮膚水分向上剤を1種又は2種以上配合してもよい。本発明の皮膚水分向上剤の投与方法は特に限定されず、内用剤および外用剤のいずれでもよく、内用剤が好ましい。内用剤は、注射剤、輸液剤等として、静脈注射により投与してもよいし、経口的に投与してもよい。また、本発明の医薬の投与量は特に限定されず、有効成分の種類などに応じて適宜選択することができ、さらに患者の体重や年齢、疾患の種類や症状、投与経路など通常考慮すべき種々の要因に応じて、適宜増減することができる。一般的には、内用剤として用いる場合、成人一日あたり1〜10g、好ましくは3〜5gの範囲で用いることができる。また、外用剤として用いる場合、成人一日あたり0.05〜30g、好ましくは1〜20gの範囲で用いることができる。 また、皮膚水分向上効果を有する化粧料としては、化粧水、美容液、水系ファンデーション、水系チーク、水系アイシャドー、水系マスカラ、水系リップ、クレンジング、洗顔料、シャンプー、メイクアップリムーバ、乳液、マッサージ剤およびパック剤等を好ましい例として挙げることができる。 皮膚水分向上効果を有する飲食品としては、健康食品、即席食品類、嗜好飲料類、小麦粉製品、菓子類、基礎調味料、複合調味料、乳製品、冷凍食品、水産加工品、畜産加工品および農産加工品その他の市販食品などが好ましい例として挙げられる。 本発明の皮膚水分向上剤は、ケストースの特徴として、味質が砂糖に近い良質な甘さであり、かつカロリーが砂糖の半分であることから、砂糖の代替あるいは一部代替として利用することもできる。従って、本発明の皮膚水分向上剤は、食品への利用の際には砂糖と同じ様に用いることができるという、優れた物性及び加工上の特徴があり、利用価値が高い。 さらに、本発明の皮膚水分向上剤は、一般に、医薬品又は医薬部外品、飲食品等に用いられる各種担体や添加剤を含んでいてもよい。各種担体としては、各種キャリアー担体、イクステンダー剤、希釈剤、増量剤、分散剤、賦形剤、結合剤溶媒、溶解補助剤、緩衝剤、溶解促進剤、ゲル化剤、懸濁化剤、小麦粉、米粉、でん粉、コーンスターチ、プリサッカライド、ミルクタンパク質、コラーゲン、米油、レシチンなどが挙げられる。添加剤としては、例えば、ビタミン類、甘味料、有機酸、着色剤、香料、湿化防止剤、ファイバー、電解質、ミネラル、栄養素、抗酸化剤、保存剤、芳香剤、湿潤剤、天然の植物抽出物、コーヒー抽出物、ココア抽出物、フルーツ抽出物、野菜抽出物などが挙げられる。 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。(実施例1) 皮膚が乾燥傾向にあると考える10代または20代の女性27名に、3gの1−ケストース(ホクレン製、純度98.0%)を1日1回食後に摂取させた。試験期間は、2週間とした。その間、オリゴ糖や乳酸菌などプレバイオティクス及びプロバイオティクス健康食品の摂取は控えることとした。皮膚水分率は、ナショナル皮膚水分計DM−R2−Aを用い、左眼下を対象部位とし、ケストース摂取前日と、摂取2週間後に測定した。その結果を表1に示す。ここで、皮膚水分率の向上は、摂取2週間目の皮膚の含水分率(%)とケストース摂取前日の水分率(%)との差を示しており、向上人数は、それぞれの皮膚水分率の向上に含まれる人数(%)を示す。 その結果、27名すべてにおいて、ケストース摂取により摂取前に比べ、皮膚水分向上効果が見られ、一方で、副作用は認められなかった。(実施例2) 特に、皮膚の乾燥傾向が激しい部位を有すると考える10代〜20代の女性25名に1−ケストース(ホクレン製、純度98.0%)3gを1日1回食後に摂取させた。ここで、乾燥部位が、顔の人11名、腕の人6名、足の人8名について、ぞれぞれ、各人が最も乾燥を感じる箇所を測定した。ケストース摂取の間、オリゴ糖や乳酸菌などプレバイオティクス及びプロバイオティクス健康食品の摂取は控えることとした。試験期間は、28日間とし、それぞれ皮膚水分率の測定(皮膚水分計DM−R2−A)を行い、結果を表2に示した。ここで、皮膚水分率は、ケストースの摂取開始前日の水分率(%)、ケストース摂取28日目の水分率(%)と、両者の差の平均値をそれぞれ示している。 その結果、顔、腕、足、すべての部位において、ケストース摂取前より摂取後の方が、水分率が向上した。(実施例3) 実施例2の試験を行った女性25名の、ケストース摂取前7日間、ケストース摂取期間中及び摂取終了後7日間の皮膚の状態について評価した。評価は、それぞれの女性が自身の皮膚について、触診および肉眼による観察により行った。結果、48%(12名)が、ケストース摂取により皮膚の状態が改善したと答えた。さらに、摂取終了後、皮膚の状態ケストース摂取中より悪化したと答えたものが、16%(4名)であった。一方、ケストース摂取後に摂取前より皮膚の状態が悪化したと答え人は0%(0名)であった。(実施例4) 1−ケストース(ホクレン製、純度98.0%)1gを、水10mLに溶解し、皮膚に塗布した。一日後の、皮膚の状態を触診および肉眼により観察した。その結果、皮膚の表面の乾燥から来るざらざら感が改善した。また、副作用は認められなかった。(比較例1) 実施例1において、1−ケストースを、イヌリン(和光純薬製)に代えて、実施例1と同様に行った。その結果、実施例1のような良好な水分向上効果は得られなかった。(比較例2) 日常、通院治療や毎日薬を服用するほどではないアレルギー性皮膚炎を示し、乾燥肌傾向の女性4名(平均年齢35.8歳)に1−ケストース(ホクレン製、純度98.0%)3gを1日1回食後に摂取させた。 摂取に際し、事前に1週間の1−ケストースの非摂取期を設け、その後の2週間摂取させた。 また、フラクトオリゴ糖(明治製菓(株)、メイオリゴW)についても同様のサイクルで試験を行った。使用したフラクトオリゴ糖は、市販品であり、ニストース51%、ケストース36%を含む、ニストースを主成分とするオリゴ糖である。 被験者は、試験期間中、他のオリゴ糖や乳酸菌などプレバイオティクス及びプロバイオティクス健康食品の摂取は控えることとした。その間、1週間に2回、入浴30分後に肌水分の測定を各自行った。水分率測定はナショナル肌水分計DM−R2−Aを用い、測定部位は左眼下とうなじの左側、左上腕部と指定した。この結果を、表3および4に示した。 表3から明らかな通り、ケストース摂取により摂取前に比べ、肌水分が上昇し、ケストース摂取の効果が見られたが、フラクトオリゴ糖では効果が見られなかった。 表4は、測定部位別に比較した結果である。部位毎に効果の程度は異なるが、ほぼ同様にケストース摂取の効果が認められた。 上記に併せ、毎日の排便回数を被験者各自が調査し記録することとした。ケストース及びフラクトオリゴ糖摂取2週間後の測定結果(全体の平均)を表5に示した。表5では、排便回数を摂取または非摂取期間1週間(7日間)当りに換算して比較した結果である。 表5では、 ケストース摂取により、排便回数が増加したが、フラクトオリゴ糖では増加しなかった。オリゴ糖を含む皮膚水分向上剤であって、前記オリゴ糖の98%以上が1−ケストースであり、かつ、内用剤である皮膚水分向上剤。1−ケストースを有効成分とする、請求項1に記載の皮膚水分向上剤。