タイトル: | 特許公報(B2)_テレフタル酸の製造方法 |
出願番号: | 2004304394 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 51/43,C07C 63/26 |
中尾 藤正 山本 大祐 JP 4657674 特許公報(B2) 20110107 2004304394 20041019 テレフタル酸の製造方法 三井化学株式会社 000005887 特許業務法人SSINPAT 110001070 中尾 藤正 山本 大祐 JP 2003421776 20031219 20110323 C07C 51/43 20060101AFI20110303BHJP C07C 63/26 20060101ALI20110303BHJP JPC07C51/43C07C63/26 J C07C 51/43−51/46 C07C 63/26 国際公開第02/098836(WO,A1) 特開平04−279549(JP,A) 7 2005200402 20050728 8 20070904 江間 正起 本発明は、テレフタル酸の製造時に使用する水溶媒の再使用方法に関するものである。 高純度テレフタル酸は、粗テレフタル酸を水に加圧下で昇温することにより溶解し、水素の存在下に触媒、例えばパラジウムと接触させ粗テレフタル酸中の主要不純物である酸化中間体4-カルボキシベンズアルデヒドを晶析で除去されやすいパラトルイル酸に還元し続いて晶析し不純物を取り除いた後、固液分離することにより製造される。このとき溶媒として使用される水は、多くの不純物を含んでいるため排水として捨てられ大きな排水処理装置を必要としている。 この水から不純物を除く方法としては、例えば特許2899927号に示されている。これは前記において晶析させたテレフタル酸を固液分離した後の水を、パラキシレンで抽出するという方法である。しかし、この方法では、粗テレフタル酸を精製するのに再使用する水として必要な純度まで不純物を除去することはできない。 また、テレフタル酸を晶析させる手段として、減圧により水をフラッシュさせ降温させる手段をとることができる。この工程において発生する蒸発水中には、固液分離後の排水に含まれるような高沸点不純物がないため、凝縮させた水を晶析槽に戻さず抜き出し、再び直接粗テレフタル酸を精製するための水として使用することが考えられる。しかし、蒸発水中には大量のパラトルイル酸が含まれているため、この方法では最終製品中のパラトルイル酸濃度が高くなる。従って、予め粗テレフタル酸中の4-カルボキシベンズアルデヒド濃度を低下させることにより、最終製品である高純度テレフタル酸中のパラトルイル酸濃度を維持する必要があり、粗テレフタル酸の製造コストが高くなるという問題が発生する。特許2899927号公報 従来の固液分離後の排水からパラキシレンにより不純物を抽出する方法では、パラキシレン抽出後も排水中に多くの不純物が含まれ、粗テレフタル酸を精製するための水として再使用できない。また、粗テレフタル酸を晶析させる工程において発生する蒸発水を凝縮させた後、直接循環する方法では、高純度テレフタル酸の純度を維持するために粗テレフタル酸中の4-カルボキシベンズアルデヒド濃度を低下させる必要があり粗テレフタル酸の製造コストが高くなるという課題がある。 更には、酸化すれば最終製品のテレフタル酸とすることができるパラトルイル酸が排水とともに捨てられるのみならず、大きな排水処理装置が必要となるという課題がある。 本発明は、粗テレフタル酸を精製する工程から出てくる排水を、例えば粗テレフタル酸を精製する水に再使用でき、更にはテレフタル酸の収率を上げることができる方法を提供する。 本発明は、パラキシレンを酸化し得られた粗テレフタル酸を加圧下で昇温することにより水に溶解させた後、減圧により水を蒸発させテレフタル酸を晶析し、このとき発生する蒸発水を凝縮させた凝縮水をパラキシレンと接触させた後、分離した凝縮水をテレフタル酸製造の何れかの工程で再使用するテレフタル酸の製造方法に関する。 本発明は凝縮水を粗テレフタル酸を溶解する水として再使用する方法や、粗テレフタル酸を5MPa―G以上の圧力下で温度を225℃以上に昇温することにより溶解させた後、一段階或いは多段で減圧することにより粗テレフタル酸を溶解するのに使用した水の30から70重量%を蒸発させる方法、また蒸発水を凝縮する工程において凝縮温度を70℃以上とする方法を提供する。 蒸発する水を凝縮させた凝縮水は、40から200℃でパラキシレンと接触させることが好ましい。 また本発明は、パラキシレンと接触させた後分離した凝縮水を気体状物質でバブリングする方法を提供する。気体状の物質としては、窒素や水蒸気が好ましい。 また、凝縮水と接触させ分離した後のパラキシレンを酸化工程に送り、粗テレフタルを製造するための原料として使用する方法や、バブリングした気体状物質中に含まれるパラキシレンを酸化工程に供給し粗テレフタル酸を製造するための原料とする方法を提供する。 抽出剤としてテレフタル酸の原料であるパラキシレンを使用することにより、通常大きな設備とエネルギーが必要となる抽出剤の再生工程無しで、従来排水として捨てられ大きな排水処理装置を必要としていた粗テレフタル酸の精製工程からの排水を、再び粗テレフタル酸を精製するための水に再使用できるものとすることができる。 更に、捨てられていた排水中のパラトルイル酸を、目的生産物であるテレフタル酸として回収することができる。 パラキシレンを酢酸溶媒下、触媒としてコバルト化合物とマンガン化合物、臭素化合物を用いて、反応圧力0.4から5MPa-G、反応温度160から260℃において、空気で酸化し粗テレフタル酸を製造する。この粗テレフタル酸中の主要な不純物は、酸化中間体である4-カルボキシベンズアルデヒド500から5000重量ppmと、パラトルイル酸100から1000重量ppmである。その他の不純物としては、安息香酸、ヒドロキシルメチル安息香酸、イソフタル酸等と、これらが種々の形で結合した高沸点不純物や分解した低沸点不純物がある。 このようにして得られた粗テレフタル酸を、5MPa―G以上、好ましくは7から9MPa―Gの圧力下で温度を225℃以上、好ましくは250から310℃に昇温することにより水に溶解する。このとき水中のテレフタル酸濃度は、10から40重量%、好ましくは20から35重量%となるように調整する。テレフタル酸濃度が薄いと使用する水の量が多くなり、水を再利用する上において後述する装置が大きくなり好ましくない。また、テレフタル酸濃度が濃い場合には、後述するように水の30から70重量%を蒸発させると蒸発させなかった母液中の不純物濃度が高くなり、製品高純度テレフタル酸中の不純物が高くなり好ましくない。 続いて、水素の存在下に触媒例えばパラジウムと接触させ、粗テレフタル酸中の主要不純物である酸化中間体4-カルボキシベンズアルデヒドを晶析で除去しやすいパラトルイル酸に還元した後、一段或いは多段、好ましくは3段から7段で減圧し水を蒸発させる。本発明では、蒸発後の水を精製し再利用するため蒸発量が多い方が望ましいが、蒸発量が多くなると蒸発させなかった母液中の不純物濃度が高くなり、製品高純度テレフタル酸中の不純物濃度が高なり好ましくない。よって、水の30から70重量%、好ましくは35から60重量%が蒸発するように、減圧を調整する。蒸発による気化熱により温度を100から175℃まで低下させ、テレフタル酸結晶を析出させる。パラトルイル酸の5から50重量%が蒸発水側に行くが、その他の殆どの不純物は母液中に残る。また、微量に存在する低沸点不純物が蒸発水側に行くと考えられるが、これらは蒸発水を温度70℃以上、好ましくは80から100℃で凝縮すれば取り除くことができる。低沸点不純物を取り除くためには、凝縮温度が高い方が望ましいが、後述する抽出とバブリング操作を大気圧下で行えば安価な装置で実施できるため、100℃が好ましい温度の上限となる。 こうして高沸点不純物と低沸点不純物を除去した凝縮水中の主要不純物はパラトルイル酸となり、その濃度は100から5000重量ppmである。この凝縮水100重量部に対して3から200重量部、好ましくは5から100重量部、より好ましくは10から35重量部のパラキシレンと接触させ、凝縮水中のパラトルイル酸を除去する。パラキシレンの量は多い方が、パラトルイル酸の除去率が高くなり好ましい。しかし、パラキシレンは抽出後粗テレフタル酸の原料として使用されるため、パラキシレン量の上限は、全体のバランスから必然的に決まってくる。 凝縮水とパラキシレンとを接触させる温度は、通常40から200℃、好ましくは60から150℃、更に好ましくは80から100℃である。 抽出を向流多段とすることによりパラトルイル酸の除去率を高くすることができるため、2から10段、好ましくは2から4段の向流多段抽出とするのが好ましい。本発明においてはパラトルイル酸を完全に除去する必要はなく、例えば70%以上が除去できれば良い。よって、抽出段は10段以下で十分となる。また、通常、抽出剤の量を削減するために抽出段を高くするが、本発明では抽出剤であるパラキシレンは、粗テレフタル酸の原料として使用されるため、通常の抽出操作で必要となる抽出剤の再生装置がない。凝縮水100重量部に対して10重量部以上のパラキシレンが抽出剤として使用でき、抽出段数は4段以下で十分な除去率が達成できる。例えば、向流抽出段数2段、凝縮水100重量部に対してパラキシレン25重量部で、凝縮水中のパラトルイル酸を90重量%以上除去できる。 大型テレフタル酸プラントでは凝縮水量が50t/hr以上となり、抽出搭では偏流の問題を避けるため大型の一搭とせず多搭化し並列処理した方が良くなる。従って、大型テレフタル酸プラントで50t/hr以上の凝縮水量となる場合は、攪拌機と静置分離器を組合せたミキサー・セトラー型を直列に接続し、多段抽出とするのが好ましい。攪拌機の翼先端速度は0.25m/秒以上、好ましくは0.5から5m/秒である。高速で攪拌する方が抽出の効率が高くなり装置が小型化でき好ましいが、攪拌速度が早いとパラキシレンが微粒子化し2層に分離する静置時間が長くなるため、5m/秒以下とするのが良い。攪拌機の翼先端速度が0.5から5m/秒の場合の静置時間は、向流多段抽出の中間段では1から30分、好ましくは2から5分、向流多段抽出の両端末段では2から60分、好ましくは5から15分である。 向流多段抽出の最終段から出てきた水中に残存するパラキシレンを回収するため、気体状の物質で抽出後の水をバブリングする。このとき、気体状の物質として窒素を使用することができるが窒素からパラキシレンを回収することは困難であり、水蒸気を用いて凝縮させることによりパラキシレンを回収するのが好ましい。このとき水蒸気の量は、凝縮水100重量部に対して0.05から10重量部、好ましくは0.5から5.0重量部、より好ましくは1.0から2.0重量部である。水蒸気量は多い方がパラキシレンの除去率を良くできるが、少量残存しても製品高純度テレフタル酸の品質に影響を与えず、混入したパラキシレンの95%以上が晶析槽で蒸発し、抽出装置に戻ってくるため凝縮水100重量部に対して水蒸気量は0.5重量部以上あれば良い。また、凝縮水100重量部に対して水蒸気量1.0重量部以上で、パラキシレンの臭気がなくなるため特殊なベント臭気対策が不必要となり、より好ましい。 また、パラキシレンを除去するためコアレッサーを用いても良い。コアレッサーとしては、例えば日本ポール株式会社のフッ素系樹脂である商品名フェーズセップコアレッサーがある。この場合は、飛沫同伴したテレフタル酸が含まれる場合があるので、晶析の蒸発面における蒸発速度を単位平方メートル当たり3000kg/hr以下、好ましく2000kg/hr以下とすることにより飛沫同伴するテレフタル酸量を下げると同時に、コアレッサーにかける前の温度を70℃以上、好ましくは90℃から100℃としテレフタル酸が析出しないようにする必要がある。 不純物を抽出したパラキシレンは、高沸点不純物を含んでおらず品質に影響を与えることがないため、粗テレフタル酸を生産するため条件を変更することなく原料として使用することができる。 以下に本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 図1は、本発明装置の一実施例である。粗テレフタル酸1を水14及び精製水15と共に、加熱溶解工程8において10MPa-G下で300℃まで昇温することにより溶解させた。水の合計量は、粗テレフタル酸1.0重量部に対して、3.0重量部である。溶解した後、水素添加工程9で粗テレフタル酸中の4-カルボキシベンズアルデヒドをパラトルイル酸に還元し、晶析工程10でテレフタル酸を析出させた。このとき、最終の晶析槽の圧力を0.5MPa-Gとし、水の50重量%を蒸発させた。析出したテレフタル酸を固液分離工程11で分離し、乾燥工程12で乾燥したのち製品の高純度テレフタル酸2として取り出した。 晶析工程蒸発水5は凝縮器3に送り95℃で凝縮した。このとき凝縮水中のパラトルイル酸濃度は700重量ppmであった。この後抽出工程13に送り、2段の向流抽出操作を行った。即ち、凝縮水100重量部に対して25重量部のパラキシレンと2分間第1段攪拌機13-1で接触させた。この後第1段静置分離機13-2で3分間静置したのち分離し、再び凝縮水100重量部に対して25重量部のパラキシレンと2分間第2段攪拌機13-3で接触させ、第2段静置分離機13-4で5分間静置した後、分離した。このときパラキシレンと水は向流で流している。攪拌機は4枚傾斜パドル翼であり、翼先端速度3.0m/秒でまわした。 こうして得られた水中のパラトルイル酸濃度は30重量ppm、パラキシレン濃度は500重量ppmであった。これをストリッピング搭16に送り水100重量部に対して1.0重量部の水蒸気量でバブリングした。このバブリング後の水中のパラトルイル酸濃度は30重量ppm、パラキシレン濃度は1重量ppm以下であった。 抽出後のパラキシレンは、パラキシレン供給路18からの酸化原料用のパラキシレンと共に酸化工程7に送り、粗テレフタル酸を製造するための原料として使用した。 本操作により、粗テレフタル酸中の不純物濃度を予め下げることなく、粗テレフタル酸の精製に使用した水の50%を再使用することができた。 排水を多大なエネルギーを消費せずに精製し再使用できる状態にし、従来廃棄されていたパラトルイル酸を最終製品のテレフタル酸として回収することを可能とする。本発明の排水の精製の実施方法を示した説明図である。(実施例1)符号の説明 1 粗テレフタル酸供給路 2 精製テレフタル酸 3 凝縮器 4 排水 5 晶析工程蒸発水 6 パラキシレン 7 酸化工程 8 加熱溶解工程 9 水素添加工程 10 晶析工程 11 固液分離工程 12 乾燥工程 13 抽出工程 13-1 第1段攪拌 13-2 第1段静置分離 13-3 第2段攪拌 13-4 第2段静置分離 14 水 15 精製水 16 ストリッピング搭 17 低沸点不純物 18 パラキシレン パラキシレンを酸化して得られた粗テレフタル酸を、加圧下で昇温し水に溶解させた後、減圧によりテレフタル酸を晶析する工程において、蒸発する水を凝縮させた凝縮水をパラキシレンと接触させた後、分離した凝縮水を前記粗テレフタル酸を溶解する水として再使用するテレフタル酸の製造方法。 粗テレフタル酸を5MPa―G以上の圧力下で温度を225℃以上に昇温し水に溶解させた後、一段或いは多段で減圧することにより粗テレフタル酸を溶解するのに使用した水の30から70重量%を蒸発させることを特徴とする、請求項1に記載のテレフタル酸の製造方法。 蒸発水を凝縮する工程において、凝縮温度を70℃以上とすることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。 蒸発する水を凝縮させた凝縮水を、40から200℃でパラキシレンと接触させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。 パラキシレンと接触させた後分離した凝縮水を、気体状物質でバブリングすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。 バブリングする気体状の物質が、窒素或いは水蒸気であることを特徴とする、請求項5に記載のテレフタル酸の製造方法。 凝縮水と接触させた後分離したパラキシレンを酸化工程に供給し、粗テレフタル酸を製造するための原料とすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。