タイトル: | 公開特許公報(A)_ヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法 |
出願番号: | 2004303607 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07B 35/06,A62D 3/00,B01J 23/44,B01J 23/46,C07C 23/12,C07B 61/00 |
浮須 祐二 宮寺 達雄 JP 2006117533 公開特許公報(A) 20060511 2004303607 20041019 ヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 浮須 祐二 宮寺 達雄 C07B 35/06 20060101AFI20060407BHJP A62D 3/00 20060101ALI20060407BHJP B01J 23/44 20060101ALI20060407BHJP B01J 23/46 20060101ALI20060407BHJP C07C 23/12 20060101ALI20060407BHJP C07B 61/00 20060101ALN20060407BHJP JPC07B35/06A62D3/00 330A62D3/00 651A62D3/00B01J23/44 MB01J23/46 311MC07C23/12C07B61/00 300 6 OL 7 2E191 4G069 4G169 4H006 4H039 2E191BC01 2E191BC05 2E191BD13 4G069AA03 4G069AA08 4G069BA08B 4G069BB02A 4G069BB02B 4G069BB04A 4G069BC67A 4G069BC70A 4G069BC71A 4G069BC72A 4G069BC72B 4G069BC75A 4G069CA01 4G069CA10 4G069EA01Y 4G169AA03 4G169AA08 4G169BA08B 4G169BB02A 4G169BB02B 4G169BB04A 4G169BC67A 4G169BC70A 4G169BC71A 4G169BC72A 4G169BC72B 4G169BC75A 4G169CA01 4G169CA10 4G169EA01Y 4H006AA05 4H006BA22 4H006BA25 4H006BC10 4H006BC31 4H006BC34 4H006EA12 4H039CA41 4H039CD20 本発明は、ヘキサクロロシクロヘキサンを脱塩素・無害化する分解方法に関する。 ヘキサクロロシクロヘキサンは有機塩素系農薬として長年広く用いられてきた。しかし、人体に対する毒性が高く、環境中での残留性も高い化学物質であるため、昭和46年に販売が禁止され、日本全国各地で埋設による保管が行われた。それから約30年が経過し、埋設したヘキサクロロシクロヘキサンの適切な処理が求められている。 ヘキサクロロシクロヘキサンの無害化処理の主な方法としては従来、焼却処理、生物処理、化学処理等が提案されている。しかし、焼却処理では1100℃以上の高温を必要とし、塩素化物の分解時に発生する塩酸等の強酸による装置の腐食に対する対策を講じなければならないのに加え、ダイオキシン類等の毒性の高い化学物質が生成する危険性がある。また、微生物を用いる生物処理では、分解が完了するまでに長時間を要するという欠点がある。 これに対し化学処理法は、短時間で、しかも比較的低温でヘキサクロロシクロヘキサンを分解できるという特徴を有する。主な化学処理法としては、水素添加法、光照射法、超臨界水法などが提案されている。水素添加法は、貴金属触媒等の存在下で水素ガスを添加して脱塩素する方法であるが、水素ガスを用いるため爆発の危険があるのに加え、触媒の活性劣化の問題もある。光照射法は、常温で分解反応が進行するという利点はあるものの、反応の効率が低いという問題があり、生成物として有害な塩素化合物の重合体が生成する可能性もある。超臨界水法は、水を374℃、218気圧以上の超臨界状態にして加水分解する方法であるが、高温、高圧を必要とするため安全性に問題があり、装置の大型化も困難である。 本発明者等は、先に芳香族ハロゲン化合物、又はハロゲン化脂肪族炭化水素を、2−プロパノールと、触媒及びアルカリ化合物の存在下に反応させることにより、脱ハロゲン、無害化する方法を提案した。(特許文献1及び2参照)特開平8−266888号公報特開平11−226399号公報 ヘキサクロロシクロヘキサンは、ベントナイト等の他の粉体成分と混合した粉剤として農薬等に用いられてており、使用禁止後はこのような粉剤として埋設されている。したがって、このようなヘキサクロロシクロヘキサン粉剤を低コストで安全に処理する方法が求められている。 したがって本発明は、ヘキサクロロシクロヘキサン、特にベントナイト等の他の粉体成分と混合したヘキサクロロシクロヘキサン粉剤を、温和な条件で効率よく分解する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは鋭意研究した結果、アルカリによる脱塩素ならびに2−プロパノ−ルを用いた水素移行反応を利用すると、温和な条件で、かつ、短時間でヘキサクロロシクロヘキサン粉剤を分解しうること見い出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。 すなわち本発明は、次の1〜6の構成を採用するものである。1.ヘキサクロロシクロヘキサンを2−プロパノ−ルと、触媒及びアルカリ化合物の存在下に反応させて脱塩素・無害化することを特徴とするヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。2.前記触媒が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル又はそれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種を担体に担持させたものであることを特徴とする1に記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。3.前記アルカリ化合物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする1又は2に記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。4.ヘキサクロロシクロヘキサンをアルカリと反応させた後、触媒を添加して脱塩素・無害化することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。5.2−プロパノ−ルに水を添加することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。6.他の粉体成分を含むヘキサクロロシクロヘキサン粉剤をアルカリと反応させた後に、他の粉体成分を除去し、触媒を添加して脱塩素・無害化することを特徴とする1〜5のいずれかに記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。 本発明によれば、安価な2−プロパノ−ルを水素供与体として用いて、常圧、83℃以下という温和な条件でヘキサクロロシクロヘキサンを脱塩素化して無害化することができる。そのため、省エネルギ−並びにランニングコストの低減を達成することができる。本発明においては、装置を腐食させる強酸の生成もなく、また、高価で爆発の危険性がある水素ガスを使用しないので、安全に、かつ低コストで実施できる。また本発明では、容易に触媒を分離、再使用できる。 ヘキサクロロシクロヘキサンには、塩素の立体配置の違いから、α-体、β-体、γ-体、δ-体等の異性体が存在する。農薬として用いられるのは、通常、γ-体のみ精製したもの、または各種異性体の混合物であり、それらをベントナイト等の粉体と混合した粉剤として用いられる。本発明において分解しうるヘキサクロロシクロヘキサンは、いずれの異性体又はそれら混合物でもよく、また粉剤の形状でもよい。 次に本発明を詳細に説明する。アルカリ化合物を溶解した2−プロパノ−ルにヘキサクロロシクロヘキサンと触媒を添加した後、スタ−ラ−と攪拌子により攪拌しながら反応を行う。反応温度は室温近傍でよいが、必要に応じて反応溶液は2−プロパノ−ルの沸点(83℃)以下に加熱される。2−プロパノ−ル中のヘキサクロロシクロヘキサン濃度は特に制限はないが、通常5%(重量%、以下同様)以下であり、好ましくは0.1〜1%である。アルカリ化合物の添加量は、ヘキサクロロシクロヘキサンとのモル比で6.0以上であればよいが、10〜20程度が好適である。アルカリ化合物は反応開始前に全量を2−プロパノ−ルに溶解させておくことが望ましいが、常にアルカリ化合物が飽和濃度に近い状態になるように適宜添加してもよく、あるいは完全に溶解しない場合には固体のまま添加してもよい。触媒の添加量は特に制限はないが、1〜50g/Lが好適である。 また、ヘキサクロロシクロヘキサンのうち特に粉剤を処理する場合、アルカリ化合物との反応と触媒を用いた反応を分けて行ってもよい。すなわち、アルカリ化合物を溶解した2−プロパノ−ルにヘキサクロロシクロヘキサン粉剤を加え、スタ−ラ−と攪拌子により攪拌しながら反応を行い、ベントナイト等の不溶物をろ別後、反応溶液に触媒を加えてさらに撹拌しながら反応を行う。触媒添加前の段階で、ヘキサクロロシクロヘキサンは2−プロパノ−ルに溶解し、アルカリ化合物との反応によりヘキサクロロシクロヘキサンの3個の塩素が脱塩素してトリクロロベンゼンが生成する。さらに触媒を添加すると、触媒の作用によりトリクロロベンゼン塩素が脱塩素する。この方法によれば、触媒はベントナイト等の不溶物と混合されることなく回収されるため、容易に触媒を再使用することができる。さらに、ベントナイト等の不溶物を取り除くことにより、触媒と反応物の接触が良好になり、反応時間を短縮することができる。 本発明において2−プロパノ−ルは、ただ単に反応試薬を溶解するだけでなく水素供与体として作用し、重要な役割を果たしている。溶媒としては純粋の2−プロパノ−ルのほか、アルカリ化合物の溶解度を上げるため水を添加してもよい。水の添加量は、1〜30%程度が好ましく、5〜15%がさらに好ましい。 前記分解法において、触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル又はそれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種からなるものが使用できる。通常、触媒には上記金属成分を担体に担持したものを用いる。担体としては、シリカゲル、アルミナ等の金属酸化物や活性炭を用いることができる。上記担体のなかでは、特に大きな表面積を有する活性炭が好ましい。金属の担持量には特に制限はないが、0.1〜10%担持したものが好適である。 アルカリ化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができるが、特に安価で2−プロパノ−ルに対して溶解度が高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。反応温度は2−プロパノ−ルの沸点である83℃を越えることはないが、室温(25℃程度)でも十分に反応が進行する。反応雰囲気には特に制限はないが、反応温度が高い場合には、安全性を考慮して窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。また、この分解反応は常圧で行うことができる。反応時間は、ヘキサクロロシクロヘキサン濃度、触媒量、反応温度等の反応条件により異なるが、通常30〜240分である。 本発明における分解反応は、例えばアルカリ化合物として水酸化ナトリウムを用い、Pd/C触媒の存在下でヘキサクロロシクロヘキサン(C6H6Cl6)を分解する場合、次に示す反応式に従って進行するものと考えられる。 ヘキサクロロシクロヘキサンは水酸化ナトリウムと反応し、トリクロロベンゼン、塩化ナトリウム、水が生成する(上記反応式(1))。さらに、トリクロロベンゼンはPd/C触媒上で2−プロパノ−ルの水素と置換反応を起こし、ベンゼン、アセトン、塩化ナトリウム、水が生成する(上記反応式(2))。このように、本発明におけるヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法は、アルカリ処理と触媒上での水素移行反応を利用して脱塩素を行い、ヘキサクロロシクロヘキサンの脱塩素・無害化を行うものである。一般に、脂環族塩素化合物は芳香族塩素化合物に比べて、触媒による脱塩素を受けにくいが、本発明では、脂環族塩素化合物を芳香族塩素化合物に変換してから触媒で脱塩素を行うので、短時間かつ少ないエネルギー投与量で脱塩素・無害化できる。 以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例では、%は重量%を表す。(実施例1) 水酸化ナトリウム23mgを溶解した2−プロパノ−ル5mLを、上部に凝縮器を付けた試験管に採り、ヘキサクロロシクロヘキサン粉剤(組成:ベントナイト66%、α-ヘキサロロシクロヘキサン22%,β-ヘキサクロロシクロヘキサン3%,γ-ヘキサクロロシクロヘキサン7%,δ-ヘキサクロロシクロヘキサン2%)45mgを加えた。さらに、触媒として活性炭上に5%のパラジウムを担持させたもの(Pd/C)を20mg加え、スタ−ラ−で撹拌しながら、55℃に加温し3時間反応させた。反応後の溶液をガスクロマトグラフ−質量分析計で分析したところ、ヘキサクロロシクロヘキサンは検出されず、脱塩素生成物としてベンゼンのみが検出された。(実施例2) 水酸化ナトリウム23mgを溶解した2−プロパノ−ル5mLを、上部に凝縮器を付けた試験管に採り、実施例1で用いたヘキサクロロシクロヘキサン粉剤45mgを加え、スタ−ラ−で撹拌しながら、55℃に加温し15分間反応させた。ベントナイトを濾別後、触媒として活性炭上に5%のパラジウムを担持させたもの(Pd/C)を20mg加え、スタ−ラ−で撹拌しながら、55℃に加温し2時間反応させた。反応後の溶液をガスクロマトグラフ−質量分析計で分析したところ、ヘキサクロロシクロヘキサンは検出されず、脱塩素生成物としてベンゼンのみが検出された。(実施例3) 水0.5mLに水酸化ナトリウム50mgを溶解し、2−プロパノ−ル4.5mLを加えた。この溶液を上部に凝縮器を付けた試験管に採り、実施例1で用いたヘキサクロロシクロヘキサン粉剤100mgを加え、スターラーで撹拌しながら、55℃に加温し15分間反応させた。ベントナイトを濾別後、触媒として活性炭上に5%のパラジウムを担持させたもの(Pd/C)を20mg加え、スタ−ラ−で撹拌しながら、55℃に加温し4時間反応させた。反応後の溶液をガスクロマトグラフ−質量分析計で分析したところ、ヘキサクロロシクロヘキサンは検出されず、脱塩素生成物としてベンゼンのみが検出された。(実施例4) 水酸化ナトリウム20mgを溶解した2−プロパノ−ル5mLを、上部に凝縮器を付けた試験管に採り、γーヘキサクロロシクロヘキサン15mgを加え、スタ−ラ−で撹拌しながら、室温で15分間反応させた。さらに、触媒として活性炭上に5%のロジウムを担持させたもの(Rh/C)を10mg加え、スターラーで撹拌しながら、55℃に加温し2時間反応させた。反応後の溶液をガスクロマトグラフ−質量分析計で分析したところ、γーヘキサクロロシクロヘキサンは検出されず、脱塩素生成物としてベンゼンのみが検出された。 ヘキサクロロシクロヘキサンは農薬として用いられたが、使用が制限され、大量のヘキサクロロシクロヘキサンが粉剤の形態で埋設保管されている。本発明方法によれば、このようなヘキサクロロシクロヘキサンを温和な条件で効率よく脱塩素・無害化することができる。 ヘキサクロロシクロヘキサンを2−プロパノ−ルと、触媒及びアルカリ化合物の存在下に反応させて脱塩素・無害化することを特徴とするヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。 前記触媒が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル又はそれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種を担体に担持させたものであることを特徴とする請求項1に記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。 前記アルカリ化合物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。 ヘキサクロロシクロヘキサンをアルカリと反応させた後、触媒を添加して脱塩素・無害化することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。 2−プロパノ−ルに水を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。 他の粉体成分を含むヘキサクロロシクロヘキサン粉剤をアルカリと反応させた後に、他の粉体成分を除去し、触媒を添加して脱塩素・無害化することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヘキサクロロシクロヘキサンの分解方法。 【課題】 ヘキサクロロシクロヘキサン、特にベントナイト等の他の粉体成分と混合したヘキサクロロシクロヘキサン粉剤を、温和な条件で効率よく分解する方法を提供する。【解決手段】 ヘキサクロロシクロヘキサンを2−プロパノ−ルと、触媒及びアルカリ化合物の存在下に反応させて脱塩素・無害化する。好ましくは、他の粉体成分を含むヘキサクロロシクロヘキサン粉剤をアルカリと反応させた後に、他の粉体成分を除去し、触媒を添加して脱塩素・無害化する。【選択図】 なし